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【柊】ナイトウィザードクロスSSスレ【NW!】Vol.13

1 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/03(月) 03:11:32 ID:QqQqIgDF
アニメでも大活躍し、過去リプレイ作品で異世界慣れした我らが“下がる男”柊蓮司……
そんな彼や他の登場人物達がもしも○○の世界に飛ばされたらor○○キャラが第八世界にやって来たら…?
そんなナイトウィザードのifストーリーを語るスレです。

■ 注意事項 ■
・不要な荒れを防ぐ為に、sage進行で御願い致します。
・冥魔(荒らし)に反応するあなたも冥魔です、スルーしましょう。
・次スレは>>975を踏んだ方、若しくは475kbyteを超えたのを確認した方に御願い致します。
 また、重複防止の為に次スレを立てる人は立てる前に宣言を御願い致します。
・荒らし、カッコ悪い。
・Q.ナイトウィザードって○○のパクリ?
 A.とりあえずほぼ全て何かのパクりです。初版が2002年3月発売なのでそこから判断してください。

■ SSを投下する方へのお願い ■
・NWキャラをクロスさせたい作品世界に送り込むも良し、
 逆にクロスさせたい作品のキャラをファー=ジ=アースを中心とした
 きくたけワールドに招いてNWキャラ達と掛け合い活躍させるも良し、
 SS創作者の想像の赴く儘に楽しめる物語を書き込んで下さいませ。
 但し、NW関連スレと云う事で片方は「ナイトウィザード」で御願い致します。
・801等、特殊なものは好まない人も居るので投下する場合は投下前にその旨を伝えましょう。
・各作品の初投下時は、クロスする作品名を最初に御願い致します。
 そうすれば読者も読み易いでしょう。
・SSの内容が18禁の場合は地下スレ(検索ワードは「卓上ゲーム」)へ。
・NW側からのホストキャラはNW公式作品に登場しているキャラを主軸として、
 SS創作者オリジナルのキャラをストーリーに絡める場合はあくまで脇役としての
 立場で参加させて下さいませ。
・御互いの作品を尊重しましょう。一方的なクロスは荒れる原因ですよ。

■前スレ
【柊】ナイトウィザードクロスSSスレ【NW!】Vol.12
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1221979917/
■関連スレ
ナイトウィザード -Night Wizard!- セッション42
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1222441326/
【ネタバレ】ナイトウィザードその16【卓ゲ雑談】
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/asaloon/1214298480/
菊池たけし セブンフォートレス ナイトウィザード74
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/cgame/1224684508/

■関連リンク
http://www.fear.co.jp/nw/(原作ナイトウィザード公式)
http://www.nightwizard.jp/(TVアニメ公式)
http://www42.atwiki.jp/nightwizard/(アニメ版まとめWiki)
http://www32.atwiki.jp/nwxss/(過去SS保管庫)

2 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/03(月) 03:41:38 ID:2U+AJWhd
>1さんお疲れさまです。

3 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/03(月) 06:03:24 ID:OsSu9bpL
>>1

4 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/03(月) 09:20:41 ID:NMyJL0/S
>1乙、そのスレでの柊の下がりっぷりに期待

5 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/04(火) 03:13:25 ID:fgw1Hr5F
てすと

6 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/04(火) 09:54:41 ID:wqMJ480W
わっほぅ!

7 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/04(火) 16:38:30 ID:hUGgsqtQ
へっへっへ、>>1乙しちゃうぜ!

8 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/04(火) 17:27:37 ID:H54s6vwL
さて、帰ったら>1乙代わりに適当に投下でもしようか。
バイト数は前スレでも十分なんだけどさ。


9 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 01:01:52 ID:0SwnRobW
 
  俄然として覚むれば、則ち遽遽然として周なり。
  知らず、周の夢に胡蝶と為れるか、胡蝶の夢に周と為れるか。

                      ―― 荘子


夢とも現ともつかない世界。1頭の蝶がまどろみの空を舞う。
その行く先は ――



# OPENING 01 現の夢
#      Scene Player:志宝エリス



昼休みの鐘が鳴った。

「エリスちゃんの制服姿も、だいぶ似合ってきたよねー? 前の服も良かったけど」

新学期特有の慌しさも治まり、暦の上ではそろそろ春も終わろうとしている頃。
志宝エリスは、去年(と言っても最後の1ヵ月半だけだが)からクラスメイトの友人たちと弁当を広げ始める。

「あ、この玉子焼きちょーだい」
「うん、いいよ」
「相変わらずエリスちゃんのお弁当は美味しいねー。そうだ、私の家に来てよ。お嫁に貰ってあげるから」
「……エリスはお嫁になんか行かせない。私が護る……」
「ちょっとぉー、珠美ちゃん! それに灯ちゃんもー!」

エリスの人柄の良さもあってか、昼休みにはいつも周りに人垣ができる。もちろん、一番の親友である緋室灯も一緒だ。
灯は決して人付き合いの上手いタイプではないが、半ばエリスを中心とした輪に巻き込まれるような形で、
以前よりも着実に友人の数を増やしていった。

日常の話、恋の話、ファッションの話、好きな芸能人の話。彼女たちの話題は実に様々で尽きることが無い。
エリスと灯は少し浮世離れしているせいか、聞き手に回ることが多いようだが。


10 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 01:03:34 ID:0SwnRobW
 
「じゃあ今度、エリスちゃんや灯ちゃんにも私のオススメの曲を――」
『♪♪♪』
「あっ」
「ゴメン、ちょっとケータイ鳴った……っと、はーい、もしもーし?」

おしゃべりを遮るかのように、先ほど玉子焼きを取っていった友人の携帯電話が着信を知らせた。
特に会話の内容を聞くつもりは無かったが、目の前で話されているのでどうしても耳に入ってしまう。
彼女の口振りから察するに、どうやら所属する新聞部の後輩が相手らしい。

電話が終わるのを待って、エリスは途切れてしまった会話を続けようと試みる。
流行には余り明るくないが、それでも今の着メロには確かに聞き覚えがあったからだ。

「今のメロディって確か…、歌唄ちゃんの曲だよね!?」
「……ほしな歌唄の、迷宮バタフライ」

正解、と友人が頷く。
ちょっと前にヒットしたアイドル歌手のデビュー曲である。元々は後輩が好きで、その影響で着メロをダウンロードしたらしい。
今では少し流行が遅れてしまったが、特に聴きたい曲も無かったのでそのままにしていたというのが本当のところのようだが。

「最近ほとんどテレビに出てないみたいだけどね。事務所を移籍したって言うし、何か関係あるのかも〜?」
「へぇ〜、珠美ちゃんって何でも詳しいんだね!」
「まーね! 世間様のことも知らないと、新聞部の説得力ないでしょ?」

芸能人の話題に食いついてきた2人の姿が珍しかったのか、友人は更に話を続ける。

「それで思い出したけど、今度この近所ののライブハウスのイベントに出るらしいよ、ほしな歌唄」
「へ〜♪ ライブかぁ……」
「……ライブ……よく分からない。行ったことが無いから……」

ライブという未知の領域にエリスの心が惹かれる。
それと同時に、自分には関係の無い世界の話かなとも考えていた。

(あまりお金を使ってもいられないしね。節約、節約)

ライブイベントなんて柄じゃない、そう自分を納得させる。
ふと教室の壁に掛かっている時計を見やれば、いつの間にか休み時間も終わりかけ。

「きゃ、もうすぐお昼休み終わっちゃう! 次は体育だし、早く行こうっ!」
「……あれ? エリス……?」

不意に話題を逸らしたエリスに、何となく違和感を覚える灯であった。




11 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 01:06:32 ID:OP06BOb7
ワォ!久しぶりに支援しちゃう、ぜ!?

12 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 01:10:11 ID:0SwnRobW
かなり短いですが、最初はこんなもんということで。
クロス先のキャラはまだ出てませんけどね。

なお、あかりん&珠美は脇役です。


>11
残念ですが、支援は無駄ということに……!

13 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 07:46:10 ID:/uWY3tDY
>>12
言われなくても冒頭とキャラの名前でクロス先わかったwwww
続きも楽しみにしています。

14 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 14:02:55 ID:EiZaRCNH
クロス先はしゅごキャラ?
このフリで全く違ったら「何ィッ!?」なんだがw

15 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 21:38:55 ID:o5WrV3q7
実はDear・・・と、マネージャーやってるメルトダウンだったり
(最初の頃のスレで出たネタ)

16 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 22:04:46 ID:fGZiYDZP
ペルソナかと思った俺は間違ってますかッ!!

17 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 22:20:15 ID:Keg0kTQk
ベルソナだと!?

18 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 23:42:21 ID:I3nmsD58
しゅごキャラなら、まとめにハンドアウトか何かがあったと思ったけど、同じ人かな?

19 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/06(木) 17:45:58 ID:ZPwaNlUZ
なんだか保管庫のカオスフレアとのクロスを読んだらミーム:ナイトウィザードの妄想が止まらない……

《月衣》種別:自動習得 タイミング:常時 対象:自身
    武具や所持品をを隠蔽して所持できる。また、防御属性【肉体】【技術】を得る。
    これによって得た防御属性は《月衣》を持つキャラクター、及びカオスフレアからの攻撃に対しては無効になる。

とか《※幻夢神》とか

ブランチ:魔剣使い
《魔器所持》種別:自動習得 タイミング:常時 対象:自身
      あなたの常備化している武器をひとつ指定し、魔器とする。その武器の属性と基準が【魔術】に変更されるし、
      与えるダメージを常に+差分値する。
《※魔器開放》種別:デイブレイク タイミング:セットアッププロセス 対象:自身
       そのラウンド中、魔器のダメージ属性を【根源】に変更し与えるダメージを+【魔術】×2する。
       1シナリオ1回まで使用可能。

とか。
うん、ここまでくるとさすがにスレ違いか。

20 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/06(木) 19:28:40 ID:vAJhMfg0
>>19
you、FEARに直接投稿しちゃえよ!

21 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/06(木) 20:06:25 ID:xU9DPMDp
いいんじゃない?FERA系は作品間でのクロス多いし。

22 名前:ネギま!×ちびらぎの人:2008/11/06(木) 22:34:46 ID:zHnllFuq
五分後ぐらいからこっそり投下しますー。
どなたかいらしたら支援願います。

23 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 ミドルその2:2008/11/06(木) 22:40:18 ID:zHnllFuq
柊が目を覚ますと、そこは知らない場所だった。

洋風の執務室といった雰囲気の部屋。
一瞬、アンゼロット宮殿なのかとも思った。
しかし、柊が寝ていたソファーから身を起こした時、その正面にあった執務机の向こうに見えた老人の姿はアンゼロットではなかった。
――まさか、アンゼロットが老けたあげく男になったなどということはないだろう。
そんなアンゼロットが聞いたら酷い目にあいそうなことを考える。

「目が覚めたかの?」

起きあがった柊を見た老人が声をかけてくる。
頭が長いというなんとも特徴的な容姿をした老人は、顎から長く伸びた髭をさすっている。
変なライフパスでも引いたのかなーなどとメタなことを考えつつ隣のソファーを見れば、
先ほど柊相手に魔法をぶちかましたり蹴りをいれたりした吸血鬼の少女が不機嫌そうな顔で座っていた。
人造人間の少女はその後ろに慎ましく控えている。
起きたばかりのあまりはっきりとしない頭――むしろ、蹴りを入れられたせいでまだ少し痛む頭でどういう状況なのかを考えようとするが、まったく見当がつかなかった。
そんな柊へ、老人が問いかけてくる。

「どうやら君は『こちら側』の関係者のようだが……名前と所属を教えてはもらえんかのう」

老人の言う『こちら側』とはやはり、ウィザード関係のことだろう。
所属と言われても今は組織に所属しているわけではないし――アンゼロットにこき使われ入るがロンギヌスに入隊したおぼえはない――柊は簡単に名乗った。

「柊蓮司、輝明学園秋葉原分校高等部三年二組――」

そこまで言ったところで、吸血鬼の少女が声を挟む。

「貴様ッ、なにふざけたことを言っている!
 どこが高校生だ、どう見ても小学生だろうがッ!」

「うるせえよっ!
 俺だって好きで年齢下げてるわけじゃねえ!」

「はあ? 年齢を下げるだ? ふざけたことを言うな!」

「ふざけて年齢下げられてたまるか!
 レベル下がるのも学年下がるのも年齢下がるのも大変なんだぞ!」

特に下がった学年を戻すにはかなりの代償が必要だとか言われてるし。

「むっ……確かに下がるのがつらいのは同意する。
 くっ、……私だって中学三年が終わったかと思えば一年に逆戻り――!
 これもすべてあのサウザンドマスターのやつが――」

「……よくわからないが、お前も大変なんだな」

怒鳴りあいを始めたかと思えば、何故か話が下がる方にそれていったあげく、連帯感ムードを漂わせ始める二人。
そのぐだぐだ具合にちょっと頭痛を感じたらしい老人が話を戻す。


24 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 ミドルその2:2008/11/06(木) 22:41:27 ID:zHnllFuq
「あー、話を戻してもいいかの、二人とも。
 それで柊くん、何故この麻帆良学園へ来たのか、目的を聞かせてもらえるかの?」

何気ないように振る舞いながらも、鋭い眼光で柊を見る老人。
しかし、柊からすれば同じウィザードなのにこれだけ警戒される理由がいまいちわからない。
まさかこの学園が秘密の研究施設とか、部外者立ち入り禁止の超お嬢様学校だったりするわけではないだろうし。
いや、それならば最初の問答無用具合に説明はつくが。

「――目的?
 いや、目的も何も、たぶん魔王ぶっ飛ばした余波で飛ばされたんだと思うが……
 そうだ、じーさん、あんたウィザードだろ?」

「……確かにワシは魔法使いじゃが?」

柊の問いに警戒した様子で答える老人。
その返答を確認した柊はのんきに話し出す。

「だったら、アンゼロットに連絡とれないか?
 0-Phoneが壊れて連絡とれないんだよ」

特に魔王がどうなったのかは確認しなければ。
さすがに魔王倒せないままぶっ飛ばされたとかだと問題だし。
そう思っていた柊へと返ってきたのは予想外の言葉だった。

「……アンゼロット? 誰じゃ、それは」

「へ? アンゼロットを知らないのか?」

いつの間にか人望なくしたのか、あいつ。
確かにいろいろと非道なことをするが、こんな反応が返ってくるのは想定外だ。
そう思い首をかしげる柊。
まさか、世界魔術協会の長だとか世界の守護者でありながら、実は割と知られていないのか?

「あー、そこのちっこいのも知らないのか、アンゼロットのこと」

そう吸血鬼の少女に問いかける柊。

「誰がちっこいのだ! だいたいお前の方が小さいだろう!」

柊の台詞に少女はだんっ、とテーブルを強くたたく。
その激しい剣幕にちょっと引く柊。


25 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 ミドルその2:2008/11/06(木) 22:42:52 ID:zHnllFuq
「い、いやだって名前知らねえんだからしょうがないだろ……」

「知らないにしてももっとマシな呼び方があるだろう!」

そう怒鳴ってから、何か悪いことを思いついたような表情になる少女。
そして悪人のような笑みを浮かべて名を名乗った。

「――私の名は、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ」

「エヴァンジェリンか。そっちのじーさんとロボは?」

吸血鬼の少女――エヴァンジェリンの名を聞いたついでに、名前をまだ聞いていない二人について問いかける柊。

「絡繰茶々丸です」

「ワシは……」

老人が名乗ろうとした時。
拳を握りしめて顔を真っ赤にしたエヴァンジェリンが怒鳴った。

「待て、貴様! 私の名を知らないと言うのか!?」

「え、いや、知らねーけど」

その柊の返答にエヴァンジェリンが体を震わせる。
どうやら怒っているようだが、柊にはその理由がわからない。

「な、なんでそんなに怒ってんだ?」

わからなかったので直接訊いてみた。
その瞬間、何かが切れる音が聞こえた気がした。

「――死ねッ!」

「マスター、落ち着いてください」

エヴァンジェリンは柊に飛びかかろうとするが、後ろの茶々丸がそれを羽交い締めにする。
その勢いにこっそりとエヴァンジェリンと距離を置く柊。
ついでに怖いので視線を逸らし、老人の方を向く。

「あー……ワシは近衛近右衛門じゃ。
 この麻帆良学園の学園長にして、関東魔法協会の理事を務めている」

「関東魔法協会?
 それって世界魔術協会の仲間か何かか?
 ならなんでアンゼロットを知らないんだ?」


26 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 ミドルその2:2008/11/06(木) 22:44:37 ID:zHnllFuq
不思議そうに首をかしげる柊。
その発言に少し考えから学園長は聞き返す。

「……その世界魔術協会というのは?」

「あー、なんか魔術師の集まりみたいなのだろ?
 同じウィザードでも俺は魔術師じゃねえから詳しくはしらねーが」

うろ覚えの知識で返答する。
しかし、エヴァンジェリンにはそれよりも後半の発言が気にかかったらしい。

「まて。お前が魔法使い(ウィザード)だと?
 いや、そもそも魔法使い(ウィザード)と魔術師は違うものなのか?」

柊が目をぱちくりさせる。
変な質問するな、と思いながら言う。

「そりゃ違うだろ。何言ってんだ」

訳がわからない質問だ、と思う柊。
同様にエヴァンジェリンも訳がわからないといった顔をしている。

「……それで貴様はウィザードで、魔術師ではない、と?」

「ああ。見ればわかるだろ、魔剣使いだって」

さっき魔剣使って戦ったわけだし。
まさかあれが箒(ウィッチ・ブレード)に見えたとか転生者の遺産と勘違いしたというなら話は別だが。

「それは戦士タイプの魔法使いということか?
 いや、しかしそうだとすると先ほどの剣……魔法使いであり、従者だと?
 またややこしいヤツが……」

ぶつぶつ呟きだし、自分の世界に入ってしまうエヴァンジェリン。
学園長もなにか考えてるようで、放置される柊。
なんだこの状況、と思っていると、制服のポケットに突っ込んでいた0-Phoneが鳴った。
慌てて取り出し、通話ボタンをおす。

「――ッ、もしもし!?」

『柊さん? 聞こえますか?』

聞こえてきた声は、ここ一年くらいで聞き慣れた声。
世界の守護者“真昼の月”アンゼロットの声だ。

「アンゼロットか!
 助かった、連絡がつかなくて困ってたんだよ。
 なんだかしらねえが、あの後日本の麻帆良学園ってとこに飛ばされたらしくてな、それで――」

状況を話そうとする柊を、待ってください、とアンゼロットが制す。


27 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 ミドルその2:2008/11/06(木) 22:46:09 ID:zHnllFuq
『――よく聞いてください、柊さん。
 そこは、貴方の知っている日本――第八世界ファー・ジ・アースの日本ではありません』

「は?」

柊の知っている日本ではない。
その言葉に、柊はとてつもなく危険な予感がした。
過去のいろいろな思い出が脳裏に浮かぶ。
この言い方だと、可能性はほぼ一つしかないだろう。

『そこは間違いなく異世界です』

アンゼロットが断言した。
やはりという思いと信じられない思いが頭の中を回る。

「――マジで?」

『はい、本気と書いてマジです』

「そんなベタな台詞はいい。――本当に異世界なんだな?」

できればここで、実は冗談でしたー♪とか言ってくれると嬉しいんだけど。
その柊の思いも虚しく、アンゼロットが非情にもあっさりと肯定し、説明し始める。

『ええ。あの時、柊さんの魔剣と魔王の力がぶつかり合った結果、時空が不安定になり、異世界へのゲートが開いたのです。
 それにより、柊さんと魔王はそちらの世界へと飛ばされたのです』

「ま、また異世界!? またなのか!?」

走馬燈のように浮かぶ、いきなりクレーターができるような杖で殴られそうになったとか、フルネーム連呼されて追い回されたとか、そんな異世界の思い出。
いや、今回は生死判定してないけど。ああ、でもいきなり戦闘にはなったなあ。

『はい、異世界です♪
 異世界慣れしている柊さんなら問題ないでしょう。
 そっちの世界でちゃちゃっと魔王をぶっ潰しちゃってくださいね』

害虫を退治してね、ぐらいの軽さで言うアンゼロット。
頑張ってくださいねー、と酷いぐらい軽い応援もおまけについてきてる。

「簡単に言うなよ!?
 さっきだってあれだけ苦戦してたんだぞ、回復もなしにどうしろと!?」

実際、魔王との戦闘で消耗していたせいで、さっきのエヴァンジェリンと茶々丸の二人と戦闘した時もあまりダメージを受けていないのに倒れてしまったのだから。
……防御に失敗(ファンブル)したというわけではないはず、たぶん。


28 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 ミドルその2:2008/11/06(木) 22:48:42 ID:zHnllFuq
『あ、回復薬や装備に関しては支援します。
 柊さんの月衣にいろいろ補給物資を送っておきますので、それでなんとかしてください』

「まてっ、ひとの月衣に勝手に物を入れるなよ!?」

いや、前にそういうことした連中いたけど。
そういえばあれも異世界の関係だったなあ。
ちょっと切なくなる柊。
今居る場所も異世界なら、似たようなことをされるのだろうか。

『仕方ないのです、そちらの世界へ物を送るのは困難なことなのですから。
 魔王の影響もあるのでしょうけれど、時空がとてもとても不安定になっているのです。
 だからこそ、こちらの状態に一番近い柊さんの月衣の中に送る。
 これがベストの選択です。
 目印になる0-Phoneもありますし』

「ぐ――」

アンゼロットが比較的真面目な口調になったので、文句が言えなくなった。

『それと、もしかしたら気づいているかもしれませんけれど』

「あ?」

さっきまでのちょっと真面目な口調から、明らかに何かを面白がっている口調に変わるアンゼロット。
その口調に、経験上いい思い出のない柊はちょっと身構える。

『ぶっちゃけ魔王倒さないと時空が安定しません。
 つまり柊さんも帰ってこれないんで、必死こいてがんばってくださいね♪
 もちろん、倒すまで年齢も戻りませんので♪』

「なにぃ!?」

何故かとてもとても楽しそうなアンゼロット。

「まて、アンゼロット!」

それよりも柊には重要なことがあった。必死さを滲ませた声で尋ねる。

「が……学校は!? 学校はどうなるッ!? 俺の単位っ!」

『…………』

「…………」

不自然な沈黙。
何故か、電話の向こうのアンゼロットはとてもイイ笑顔をしているイメージしか浮かばない。
なんとか言えよ、と柊が叫ぶが。

『ああ時空が不安定なせいで回線にも影響が……! ぷち』

無情にも通話が切れた。
あとはツーツー、という電子音だけが聞こえてくるだけ。

「っていうか今、ぷちって自分で言っただろ! 絶対自分で切ったな!?」


29 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 ミドルその2:2008/11/06(木) 22:51:12 ID:zHnllFuq
切れた0-Phoneに向かって叫ぶ柊。
アンゼロットには聞こえていないとわかっていても言わずにいられないらしい。
そして返事を返さない0-Phoneを前に、がっくりとうなだれた。
その様子は、見た目が小学生の状態から考えると不釣り合いなほどに哀愁が漂っていた。
何故かその哀愁漂わせた姿が似合うところが、彼の普段の不遇をよく表していた。

*****

エヴァンジェリンが森で遭遇した少年はまさに謎の人物としか言いようのないほど、訳の分からない少年だった。
柊蓮司と名乗ったその少年は、吸血鬼に遭遇しても平然としているわ、どう見ても小学生のくせに高校三年生だと名乗るわ(自分が見た目小学生のくせに中学生やっていることは棚に上げている)、あげくに年齢が下がったなどとわけのわからないことをほざく。
そして魔法世界で有名な≪不死の魔法使い≫エヴァンジェリンの名も知らなければ、関東魔法協会も知らない様子だ。
これが演技ならば相当なものだが、それにしては明らかに失言が多すぎる。

アンゼロット。

世界魔術協会。

魔法使い(ウィザード)ではあると言うくせに、魔術師ではないという、魔剣使いを名乗る少年。
これらから幾つか推測できることはある。

まず、彼にはおそらく一般的な魔法の知識がないこと。
エヴァンジェリン達の知らない呼称が出ることも、なにか一般的なものとは違う環境で育ち、変わった呼称を教えられたのかもしれない。
例えば、後衛タイプの魔法使いを魔術師と呼び、前衛タイプの魔法使いを魔剣使いと呼ぶのかもしれない。
もしくは、従者を魔剣使いと呼ぶ可能性もある。
どちらにせよ確実なのは、彼が魔法使いの従者であるということ。
先ほどの戦いで使用していた、炎を発する剣。
あれが彼のアーティファクトであることは確実だろう。
仮契約カードは巧妙に隠したようで見つけられなかったが、間違いなく柊蓮司は魔法使いの従者だ。

そうなれば、もうひとつ問題がでてくる。
彼が従者だというならば必ず存在するであろう、彼の主人となる魔法使いの存在だ。
そう、例えば柊蓮司が学園側の人間と遭遇して騒動を起こし、その隙に行動を起こすつもりなのだとしたら。
だとすれば、子供を一人で行かせることも納得がいく。
要は彼はおとりであり、捨て駒なのだとすれば。
ならば事情が飲み込めていない、常識はずれのこの少年にもある程度説明がつく。
自分にとって不利なことがこちらにわたらないように、嘘の知識を教え込んでおく。
それによりこちらを混乱させることもできる。
さらに、立派な魔法使い(マギステル・マギ)を目指す人間ならば、柊のような幼い子供を手荒に扱ったりはしないだろうから、詳しいことを知ろうとすれば時間がかかる。
つまり足止めにもなる。
実際、学園長も彼が起きる前に魔法で彼の記憶を探ることはためらっている。
そして少々アンバランスではあるが、あの戦闘能力。
力ずくでいこうにもあれでは普通の魔法生徒などが相手ならば簡単にはいかないだろう。
さらに、学園の結界をものともせずに柊蓮司を麻帆良まで送り込んだ魔法使いの実力は侮れないものがあるだろう。


30 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/06(木) 22:52:04 ID:y/5X48mW
支援。

31 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 ミドルその2:2008/11/06(木) 22:53:01 ID:zHnllFuq
『おい、ジジイ』

念話で学園長に話しかける。
柊蓮司は突然なり出した携帯電話を慌てて取り出している。
その話している内容も気になるが、茶々丸が記録しているであろう。

『あのガキの話……どう思った?』

『どうもこちらと話がかみ合っておらん感じじゃのう。
 彼の言うアンゼロットという人物や、世界魔術協会も聞いたことがない。
 嘘をついているようには見えんが……』

『――嘘を本当だと信じ込まされている可能性はある、だろう?』

横目で学園長を見れば、無言で頷いている。
おそらくは、エヴァンジェリンと同じ結論を導き出しているのだろう。

『そうなると、本命がどこを狙っているのかが問題だな――』

『彼が出現した近辺を中心に先生方で調査してもらうつもりじゃ』
 後手後手にまわるわけにもいかぬからの』

『ふん、まあ妥当なところだな――』

これだけ得体の知れない相手だ。
学園側としても慎重になるのだろう。
だが、それもエヴァンジェリンからすれば、日々の退屈を紛らわせるための絶好の機会だ。
不敵な笑みを浮かべながら少年、柊蓮司の方を見やる。
――何故か携帯片手にうなだれていた。
そのがっくりと肩を落とし、黄昏れている姿は計り知れないほど哀愁を漂わせている。
むしろ垂れ流しているといってもいいかもしれない。
しかも何故か「学校……単位……」などと小声で繰り返しているため、不気味である。

「……茶々丸、こいつになにがあったんだ」

ひとが真面目な話をしてる間に、どうしたらこんなおかしなことになっているんだ。
片手で頭を押さえながら尋ねる。

「はい、携帯電話による通話終了後、約十八秒間は携帯電話へ文句を言い続けていましたが、その後この状態になりました」

「……わけがわからんな。茶々丸、通話記録を――」


そこで突然、少年が弾かれたように立ち上がった。


*****


突如感じた感覚に、柊は現実へと舞い戻った。
弾かれたように立ち上がり、窓へと向かう。



32 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 ミドルその2:2008/11/06(木) 22:54:00 ID:zHnllFuq
「おい、何をやっている、ガキ?」

エヴァンジェリンが声をかけてくるが、それを無視して柊は窓を開け放つ。
そして、そこにそれを見た。


――紅い月を。


「月匣――エミュレイターか!」

先ほど柊が感じた感覚。
それは月匣のものだった。
紅い月が見えるからには、エミュレイター――この場合、確実に件の魔王だろう――がいる場所はそう遠くないだろう。
月匣が張られたのだから、一般人に気づかれることはない、と柊は月衣から箒(ブルーム)を取り出す。
箒に乗ると、後ろからエヴァンジェリンが柊を呼ぶ。

「待て、どこへ行くつもりだ!?」

そう言われ、柊は少し悩む。
異世界人であるらしいこの二人は魔法使いではあるようだが、エミュレーターの存在は知らないだろう。
そうすると、一から説明しないといけないということだろうか。

「……悪い、説明は後で!」

面倒そうなので投げだした。
後ろから聞こえるエヴァンジェリンの怒鳴り声を聞かなかったことにして、柊は地を蹴り、窓から飛び立った。

――紅い月の昇る空へと。



33 名前:ネギま!×ちびらぎの人:2008/11/06(木) 22:55:29 ID:zHnllFuq
以上、一話ミドルでした。

基本的にギャグしか書けなくて、それで前半がぐだぐだになったから、
後半はなんとかしようとシリアスっぽくしたけれど、後半もぐだぐだになっただけだった。

あっれー?

次回からは一話クライマックス突入です。

34 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/06(木) 23:20:57 ID:xohp7HAa
矢頬おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

35 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/06(木) 23:41:34 ID:WVP2F31y
これは良いアンゼロットですね。
うむ、実に良いアンゼロット。

36 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 00:09:31 ID:LWKEL+3z
ちびらぎの人、おっつーです。

そういえば柊が異世界飛ばされた時、話がかみ合わないまま進んでるSSって珍しい気が。

37 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 00:11:53 ID:coI2ROXG
「ああ、異世界なんだな」で納得するヤツはそんなにいないだろ。

柊と……あとはどこぞのエリさんとか?

38 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 00:41:31 ID:7kxt0Iqv
>>36
そもそもアンゼあたりの説明なしで異世界いくssが少なくないか?
たいていのssはin ナイトウィザードって感じだし。

39 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 01:32:51 ID:eDjK609H
それぞれのスタンスから見た微妙な勘違いが面白いなあw

40 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 07:43:57 ID:RmygTbGn
いいなコレw
クロススレ初期の頃にちと流行った勘違いスパイラルネタを思い出した

41 名前:夜ねこ:2008/11/07(金) 18:06:02 ID:crlHUvd+
こんばんは。奴の誕生記念にこっちでもなにかできないかなと考えて、一日でなんとかしてみた。
……ぐっだぐだになりました。ネタ成分しかありません。


では。
注意:「桃魔」・「ゆにまほ」両方を服用なさった方のみ先に進みください。

42 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 18:07:03 ID:ncEnIRi6
支援か!?

43 名前:居酒屋ろんぎぬす 「ありえないけどありえたかもしれない出会い」:2008/11/07(金) 18:14:54 ID:crlHUvd+
 木枯らしが東京で吹き出した、と天気予報が伝える今日この頃。
 とあるショッピングモールで、同時に声が上がった。

「ノーチェっ!?」
「ノーチェさんっ!?」

 呼ばれた―――ゴシックロリータの銀髪ツインテールに唐草模様の風呂敷を担いだ少女―――ノーチェは、きょろきょろと左右を見回す。
 彼女の立っている十字路の、右と左から同時に声をかけられたのだから当然というべきか。
 右からやってくるのは、黒い短髪の高校生くらいの青年。
 左からやってくるのは、ショートカットを二つに括りブローチをつけた眼鏡の少女。
 目を丸くして、ノーチェは呟く。

「……ベホイミに、隼人?」


***

居酒屋ろんぎぬす 「ありえないけどありえたかもしれない出会い」

***

 居酒屋ろんぎぬす。それはとあるショッピングモールにある(中略)居酒屋。
 そのカウンター席には三人の客が陣取っており、店主は電話の対応をしていた。

「はい、はい。……わかりました。お客様のお名前は―――はい。『風雷神配下懇親会』様ですね?
 はい。ではご来店お待ちしてますー。はい」

 ちん、と音を立てて置かれる今時懐かしい黒電話。
 このショッピングモール内では、特に指定をしないと引かれる電話が黒電話になってしまうのだ。
 小さな居酒屋では、特に子機を使うこともないため店主はこれを愛用しているわけであるが。

「親父さん、なかなか景気いい話してるじゃないか。うらやましいねぇ」

 そう告げるのは、カウンター席向かって右側に位置する黒いボディスーツの男。
 表情は顔も隠れているため読めないが、声からは純粋にうらやましそうな響きが読み取れた。
 店主は人好きのする笑みを浮かべながら返す。

「へい、おかげさまで。お客さんにもご愛顧いただいてますしね、どうです? 今なら忘年会プランなんかも立てられますけど」
「お。いいっすねー。ただ、うちのトップが未成年だから、居酒屋はマズいんですよねぇ……」
「No.37564くんのとこの『ある日の暴君(ワン・デイ・タイラント)』さんはまだ小学生なんだっけ。その若さで大変だねぇ」

 そう言うのは、カウンター席真ん中のとさかつきのカブトをかぶったようなたらこ唇のひげと眉毛が特徴的なモアイローブ。
 ビール片手に枝豆をつまみながら、彼はちょっぴり愚痴る。

「うちの子たちもねー。No.37564くんくらい、とまではいかなくてもレッドさんをなんとかできるくらいまで強くなってくれたら計画にも目鼻がつくんだけどね」
「何言ってんです、フロシャイムさんはクロック(ウチ)と違って怪人たくさんじゃないっすか。
 うちは総統一人、怪人一人、戦闘員が俺含めて20人の弱小規模団体っすよ」
「何を言う。クロックは立派な団体だ、胸を張るといい」

 黒いボディスーツ―――No.37564に諭すようにそう告げたのは、カウンター席左側の、銀髪に深い紺のローブとマント、いわゆるメイジハットに蜘蛛の意匠の青年。
 まったく、とヴァン・ド・ターブルをコップに注ぎながら愚痴る。

「そこへ行くと我が組織は……最近、大首領の奥方が倒れられたからということで敵地に潜入工作をする怪人を作るため、貯金を切り崩したせいでまた、財政が傾いている。
 頭が痛いものです」
「レントくん、仕方ないよ。私たちの活動って、ほら、社会的に認められてないじゃない? どこの組織も資金繰りには困ってるものなんだって」
「そーそー。ウチも正義の味方サマをさくっと片付けたり、昼間のバイトで食いつないだりしてるけどさ。
 どこもかしこも正規の活動じゃない以上は俺らの活動費は俺ら自身で稼ぐのが普通のことだよ。ウチじゃ怪人だってバイトに行くんだぜ?
 シルクの奴が総統閣下の修学旅行の積立金が最優先ですからね、って他の奴黙らせちまったから稼ぎも増やさなくちゃならないしなぁ……」


44 名前:居酒屋ろんぎぬす 「ありえないけどありえたかもしれない出会い」:2008/11/07(金) 18:16:14 ID:crlHUvd+
 カウンターの客三人は、同時に肩を落とす。
 ……この分だと、当分埼玉県所沢市と神奈川県川崎市とエリンディルは平和そうである。

 それを見ていてまぁまぁ、と店主が笑う。

「あ、そうそう。昨日から仕込んでた豚の角煮があるんですよ、頑張ってるみなさんに俺からのエールってことで」
「おぉー、親父さん太っ腹。よ、あんたが大将!」
「角煮かぁ。じゃあご飯が欲しいかな私は」
「豚の角煮―――私の中には該当データがありません。大いに興味があります」

 現金ですね君ら。

 と、店主がカウンターに背を向けて角煮の鍋をとろ火にかけたその時。
 店主にとってはなじみのある声が、勝手口を開くがらがらがらー、という音と共に響く。

「こんばんわー、でありますよ! 席空いてるでありますかっ?」
「……タダ飯なら帰れ、嬢ちゃん」
「冷たっ!? だ、大丈夫でありますよ! 今日はお財布が二人もいるでありますしっ!」
「俺ら財布扱いかよ」
「うーわー。なんとなくそんな気はしてたけど口に出されると改めてキツいもんがあるッスねぇ……」

 ノーチェと短髪少年―――高崎隼人、そして眼鏡地味娘―――ベホイミであった。
 店主は財布があるならまぁいいか、と納得し、火から目を放さぬままに誘導する。

「悪ぃな嬢ちゃん。俺今手が放せねぇんだ、勝手は知ってるだろ、奥の座敷にその二人のお客さん方案内してやってくれ。あとで注文取りに行くから。
 つーか、友達連れてきてタダ飯はないだろうに。せめて注文取りと配膳くらいはやるんだな」
「わかってるでありますよっ! さぁさぁ、こっちでありますよー」

 言いながら、ノーチェは隼人とベホイミの手を引いて奥の座敷へと進んでいくのだった。
 ……店主、命拾いである。



45 名前:居酒屋ろんぎぬす 「ありえないけどありえたかもしれない出会い」:2008/11/07(金) 18:17:20 ID:crlHUvd+
***

 実はろんぎぬす、カウンター席しかないわけではない。
 カウンターと廊下をはさんだところに座敷があり、そこに机が二つ。
 そして完全個室がたの掘りごたつ式座敷間が二つあり、その内の一つはある美人が買い取っている。暇があるとちびちび呑みに来るとのこと。
 勝手知ったるノーチェがそのことを知らないはずもなく、必然的にベホイミと隼人が通されたのは、もうひとつの個室であった。

「……っていうか、久しぶりに会ったから一緒にご飯でも食べようかってなるのは別にいいとしても、なんで居酒屋なんスか。
 これだけ大きなショッピングモールならもっとおしゃれにおいしいお店あるでしょノーチェさん。……あ、軟骨のから揚げと揚げ出し豆腐、それからけんちん汁ッス」

 言う割にはやけに馴染んでないかベホイミよ。
 りょーかいでありますー。と言いながら紙ナフキンにさらさらとオーダーを書いていくノーチェ。彼女は隼人に視線を向ける。

「隼人はなに頼むで……って隼人、どうかしたのでありますか?」

 そう尋ねたのは、なんだか彼が考えこんでいるように見えたからだ。実際何事か考えていただろう彼は、ノーチェの声に気づくとあぁ、とあいまいに笑った。

「いや、なんかあの店長さんどっかで見たような気がしたんだけど……まぁ、そんな気にすることでもないか。
 俺、こういうとこ来るのはじめてなんだけどなに頼めばいいんだ?」
「基本的にこれを頼まないと、というものはないでありますよ。好きなもの頼めばいいであります。個人的にはブラッディマリーとかおいしいでありますよ」
「ノーチェさん、それカクテルッスから。未成年に勧めちゃダメッスから」
「えー……じゃあピンクレディでも」
「カクテルから離れろって言ってるッスよ!?」

 つーか飲んだことあるのかよ、貧乏のくせに。
 ノーチェは相変わらずだなぁ、なんて感想を心の内にしまい、フライドポテトと煮込みハンバーグとご飯(中)を頼む隼人だった。
 ノーチェがオーダーに行っている間、会話の無くなる二人。
 それもそうだ。隼人とベホイミは初対面であり、互いにノーチェの知り合い、ということで半ば強引にあの娘にここに連れてこられたに過ぎない。
 先に話しかけたのは、より対人経験値の高いベホイミだった。

「高崎隼人さん、でしたっけ。さっきは失礼しましたッス。あんまりにも知り合いに似てたもんスから」
「あー、なんだっけ。ヒイズミ、だっけ? 世の中に似たような奴は3人はいるっていうんだし、特に気にしてないって」

 実は出会った直後、ベホイミは隼人を別の知り合いと見間違えた。
 背丈も年格好も似たようなものだったし、髪型も似通っていたというのもあるが、
何よりもなんか厄介事に巻き込まれそうなオーラというか、そういったトラブルに愛される類の雰囲気をその友人も隼人も出していたのだという。否定はしないが。
 隼人と見間違えたその友人の名前は比泉秋名。とある町で生活相談所をしている青年である。
 ベホイミにとっては、いまだに記憶に残る厄介な事件の中心にいた目標の一人で、現在は友人である人物でもある。

『夜桜四重奏(ヨザクラカルテット)』、好評発売中! え、アニメ? なにをおっしゃる夜桜にアニメは存在しませんよはっはっは。


46 名前:居酒屋ろんぎぬす 「ありえないけどありえたかもしれない出会い」:2008/11/07(金) 18:18:38 ID:crlHUvd+
 閑話休題。
 そんな話をしていると、ノーチェがけんちん汁とごはん、フライドポテトを持って戻ってくる。
 
「ただいま戻りましたでありますよっ。
 お? なんだか仲良くなってるでありますな。なにかあったでありますか?」
「いや何にも。
 そういえば、ノーチェとも久し振りだな。夏にあった以来か」
「そうでありますな。生涯初の海、楽しかったでありますよ。椿たちは元気でありますか?」
「元気すぎて相変わらずだ。まったくあいつにはパートナーをいたわろうって気持ちはないのかっての」

 うんうん、と頷きながら隼人はフライドポテトを一口。
 椿に聞かれたらおしおきとまではいかずとも説教フルコースくらいは受けそうな発言である。
 隼人も相変わらずでありますなぁ、と笑いながら、ノーチェはベホイミに視線を移した。

「ベホイミの方はどうでありますか? ちゃんと魔法少女やってるでありますか」

 『まほーしょーじょ』、とあまりに予想外な言葉が出て思わずすすっていた熱いお茶をおもいっきり吹き出す隼人。
 UGNクビになっても人間噴水とかでやってけるんじゃなかろうかという吹きっぷりを見て、事態を引き起こした張本人はあわてた。

「は、隼人なにしてるでありますかっ!? もう、怒られるでありますよ、わたくしのツケ妙なところで増やさないで欲しいでありますよっ!」
「い、いやだってお前……今なんつった?」
「え? でありますから、ちゃんと魔法少女やってるでありますか、って……」
「いいかノーチェ、お前はダマされてる。ウィザードなんてもんが存在する以上、こっちの眼鏡も魔法使いなんだっていうのは許そう。
 でもダメだ。いいか? 魔法少女と魔法使いの間には、深くて暗い溝があるもんだ」
「たいがい失礼ッスね。初対面の人間目の前にしておいて」

 ベホイミさん、青筋青筋。
 基本的に空気を読まないノーチェだが、険悪な空気には敏感らしくまぁまぁ、ととりなす。

「ま、まぁまぁベホイミ。大丈夫でありますよ、ベホイミはちゃんと魔法少女であります。子どもの夢守ってるでありますよ」
「うぅ……そんなこと言ってくれるのノーチェさんだけッスよ、ありがとうッス」
「そ、そんな哀愁こめなくてもいいと思うのでありますが……。あ、メディアとかは元気でありますか?」
「元気すぎてなんとかなんないもんかと思ってるとこッスよ。体はなんだか知らないけど私以上に頑丈ですし。
 あぁ、そういえば柊さんは元気ッスか? どうせ任務漬けなんでしょうけど」

 ベホイミが何気なく言ったことに、ノーチェははい?と首を傾げた。

「蓮司でありますか? 風の噂ではまた異世界に飛ばされたって聞いてるでありますが……今頃何してるのでありましょうな」
「なんだよ、知らないのか?」

 意外そうに隼人がたずねる。
 隼人がいたのはノーチェやベホイミのいるファー・ジ・アースとはまったく異なる世界であり、ウィザードの事情には疎い。
 もぎゅ、と隼人のフライドポテトをつまみつつ、ノーチェは答えた。

「えーと……わたくしたちウィザードはたくさんある組織の中で、一つに身を寄せるものであります。
 わたくしなら絶滅社という傭兵斡旋会社、という具合でありますな。
 その中で蓮司はフリーでありますからな。依頼人がアンゼロットでもない限り、どこで何してるっていうのが耳に届き辛いのでありますよ」
「そーゆーもんか、よくわからん」
「柊さんはどこに所属してても動きが把握し辛いッスよ、自分が納得できなきゃ帰還命令も無視ッスし。
 ……ま、フリーの方が性に合ってるんじゃないッスかね」
「あぁ、確かにな。そりゃ言うこと聞かない部下は上司としちゃ欲しくないよなー」

 頷きながら隼人。
 命令無視の常習犯が言うな。
 でも、とノーチェが笑顔で言う。


47 名前:居酒屋ろんぎぬす 「ありえないけどありえたかもしれない出会い」:2008/11/07(金) 18:19:15 ID:crlHUvd+
「蓮司は、とてもいい仲間でありますよ」
「んー……まぁ、そこは否定しないッスよ。私の勝手な願いをわざわざ叶えるために、町に留まってくれるようなお人よしッスしね」

 照れたように笑いながらベホイミ。
 彼女は理解している。
 町を守るために力を貸してほしい、と言った彼女の願いを二つ返事で快諾して。
 彼女の日常の一部を守るために、ただただその体を張った大バカ者のことを。一人の少女を守るために、後先考えずに飛び込んでいく愚か者を。

「そりゃ否定できないよな。あいつが裏切るってのは想像できない。そんな頭がなさそうだからな」

 にか、と歯を見せて笑う隼人。
 彼は覚えている。
 動けない自分たちを後ろにかばい、それでも一歩も逃げも退きもしなかった背中を。
 自分が誰よりも危険な目にあうのを承知していながら、一点の曇りもなく仲間を信じきれるバカのことを。たった半月の付き合いの人間をそこまで信じられる愚者を。

 そうそう、と頷いてノーチェもまた語る。

「蓮司はちゃんとご飯くれるでありますしな」
「お前の判断基準はそこかよ」
「台無しッス、ノーチェさん」
「えぇぇツッコミ厳しくないでありませんかっ!?」

 そんな風ににぎやかに、ここにいない柊の馬鹿話を肴にして。ろんぎぬすの座敷席の時間は過ぎていくのであった。


***


「あ、そーだヴァンプさん。今度総統が遠足でお弁当必要らしいんですけどなに入れたら喜びますかねあの年頃のガキンチョって」
「へー、そーなんだ。そうだねぇ、この時期だとサンドウィッチとかいいと思いますよNo.37564さん。
 間にね、リンゴはさむの。ハムサンドがこれだけでほんとにおいしくなるから」
「その話、詳しく聞かせてはもらえませんか将軍。我が組織では今度新しい資金稼ぎの手段としてサンドウィッチ屋台を画策中でして―――」


 ……あんたら、ほんとに世界征服する気あんのか。


fin.

48 名前:夜ねこ:2008/11/07(金) 18:21:11 ID:crlHUvd+
よるのある風景番外編でした。
夜桜のアニメ云々はネタ発言ですよ?マジじゃないですよ(汗)?

今はちょっと時間がないのでこのへんで。つか短いな。申し訳ない。

49 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 18:52:56 ID:toDTvdtv
夜桜の作者は元アニメーター……、なぜだ!!

GJ!!
つーか飯くれれば誰でもいいのか、この軍曹カエルは。夜ねこさんの世界観で話がつながってますね。
最後のは誰かわからないのですが。
なんとなくこの話に触発されて、柊×秋名×上条で短編を書きたくなった。
……秋名、原作だと少し影薄いけど。

50 名前:夜ねこ:2008/11/07(金) 20:00:45 ID:7kxt0Iqv
実は近所に「矢野」さんが四件もあったことに最近気付きました(挨拶)。

やっとカキコできるようになったのでちょっとばかり弁解を。
えー……アレです。今日という日になんとか間に合わせたかった話。
なんか悪の組織連中のが目立ってるような気もするが、柊の誕生日祝いフェアの一環です。
柊本人が一台詞すらなくても、柊のための話だと夜ねこは言い張ります(無理がある)。

実は他にもいろいろと書きたいものはあるんですがね。
ベホvs柊のガチバトルとか。「かぶき町一日すいーつぱす」を巡ってガチバトル(木刀同士)をする甘党白髪vs柊とか。伊賀ずきんとイチロの交流記とか。

……おいら、今精神と時の部屋が欲しいな(遠い目)
では。この辺で。

51 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 21:00:10 ID:WN3tb2oF
GJ
しかし、これはゆにまほとかよりもクロスリレーをまず見ておいたほうがいい様な気もしますねw
その執筆速度には呆れるばかりだぜ!
夜桜カルテットとかいつかクロスしてみたいなと思いつつ、GJでしたー!

52 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 21:23:20 ID:mUBZRZxh
>50
こっちも乙。
隼人が気付かないのはそーゆー世界結界なので仕方がないか。

53 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 12:54:27 ID:JY//dWHc
こ、こっちでも投下してたんですかーっ!? どんだけすごいんですか夜ねこさん………GJ!
レントがっ!レントがぁーっ!/// 王子キャラ超☆集結ですね! これは良い柊誕生祝いSSですよ!
………誕生日SSとか言いながら、誕生日に間に合わなかったどこぞの馬鹿は見習おうと思います。

………っていうか、他スレの話ここでするのはどうかと自分でも思うのですが………
KBを気にかけないで投下したせいで、次スレ立つ前にスレ完全に埋めちゃったら………どうすればいいんですか(滝汗)

54 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 13:00:28 ID:cf5A5aJa
>>53
まず君が先に新スレを立てちゃって、誘導書き込みをして、それから投下しちゃえばいいさっ☆
とか思いついたんだがどうよ?

55 名前:53:2008/11/08(土) 13:28:56 ID:JY//dWHc
………ゆ、誘導………って、どうやれば?(汗) そのスレのまとめサイトにリンク張るとかでいいんでしょうか?
スレの立て方は一応、今調べたんですが………

56 名前:53、55:2008/11/08(土) 13:33:08 ID:JY//dWHc
って、思いっきりここで訊くことじゃないですよね、すいませんORL
あまりのアクシデントに少々錯乱してました………失礼しました(汗)

今度、何かSSを手土産にお詫びに来たいと思います………

57 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 13:37:26 ID:ncKoSafB
ここで言うことじゃないのは百も承知だが、ほんのちょっとだけ間借りするぜ

誘導は現スレがもういっぱいいっぱいだから考えなくていい。気にしないでとりあえず新スレ立ててくれ。
俺は無理だった。今立てられんのはあんたしかいない。頼む。

スレ汚しスマン。

58 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 13:39:12 ID:ncKoSafB
PS
そ、それから……ssはむしろ待ってるくらい……な、なんでもないわよバカっ!
こんなことまで言わせないでよ悟りなさいよ!

59 名前:56:2008/11/08(土) 13:46:11 ID:JY//dWHc
>>57-58さん
すみません、自分も立てられなかった………ORL

本当にスレ汚しすいません(汗) ホント、速攻でなんかお詫びSS考えねば………


60 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 13:49:55 ID:w21LGV5k
あまり気に病むよりも
自分が面白そうだと思ったSSを好きなときに好きな場所に投下する事を考えなさいな。
焦って良いことはあんまりないぜ

61 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 14:35:11 ID:cf5A5aJa
>>56
新スレ立ってたな、なんか混乱させちゃったみたいですまん
お詫びにSS書こうなんて考えないで、ここへはクロスSS書きたくなったら気軽に投下してくれよ

62 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 14:36:38 ID:plEawJsd
>>53-60

この一連の流れに全俺が癒された

63 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 16:06:07 ID:YcUyVAZL
しかしなんつうか、フロシャイムの連中「ろんぎぬす」になじむなぁ…
そのうちヴァンプ将軍が厨房で腕をふるいかねんぞ。

64 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 21:25:11 ID:nd0SEedI
ぷりんの連中でも違和感なさそうだな

65 名前:56、59:2008/11/08(土) 21:26:34 ID:JY//dWHc
>>60
あたたかなお言葉、ありがとうございます〜!
何か実際クロス書くのは難しいので、じっくり書かせていただきますです(汗)

>>61
ありがとうございます〜。
書きたいんです! いつでも書きたいんですよ! ………時間とネタを生かす実力が足りないだけでORL
いつか、きちんと書けたら投下させていただきます………

66 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 23:54:40 ID:uK1Fg8rr
と、ゆーわけで。
前スレは、1000までいって終わりました。

……最後の最後でしょーもないミスしたけどなorz

67 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 20:12:17 ID:vkVg+VK/
ふと、料理の魔王に対して(破壊的な)料理バトルするあかりんと言うネタが頭をよぎった。
…クロス先は何がいいんだろうな?破壊的な料理の腕前の持ち主は何人か心当たりがあるけどw

68 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 20:24:20 ID:bqVjtg++
うまい料理食ったとき限定で周辺を破壊しまくるやつにも心当たりがある

69 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 20:26:05 ID:GFJ0P2zy
うまい料理食ったとき巨大化する奴だったのなら心当たりがある

70 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 20:40:09 ID:TTLdopXb
料理は勝負だ! な中華の覇王なら・・・

71 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 21:02:39 ID:Kcbgqtw/
汁の助…じゃなくて味の助だな。

72 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 21:12:29 ID:XiPSceUH
食前絶後!という作品があってだな…

73 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 21:13:17 ID:fQk09lXJ
そういやスレイヤーズで「料理のマズさで相手を倒した方が勝ち」な料理対決やってたなあ。
……あかりん、最強だな。

74 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 21:21:50 ID:fsV95G9V
あかりんの場合は"料理のマズさで相手を倒す"じゃなくて"料理で相手を倒す"だから対決にならないんじゃね?

75 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 21:24:51 ID:vkVg+VK/
>>74
魔界属性持ちの破壊的な料理の腕前だと割と対等にやりあえるよ。
エルシィとか魔界ヨメとか。

76 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 21:53:42 ID:YA+W5LJD
>>73
スレイヤーズで思いついた。
ウィザードがあっちの世界に飛ばされたとして、ジョセフィーヌさんに勝てる者はいるのだろうか。

77 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 21:55:49 ID:wHVD9o35
月衣じゃ常識には勝ててもギャグ補正には勝てないな

78 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 21:57:35 ID:CodVu2lZ
ギャグ補正対決なら、にゃふうでもぶつけて見てはどうか。

79 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 22:19:19 ID:nz2+6ZJ5
>>75
魔界ヨメか。
読んだ後、
 
ヨメ「お前にふさわしいナルバを考えてやったぞ! 『裏界ポンコツ娘』!」
ベル「ムッキャーッ! 何ですってぇーっ!?」
 
とかヘンな場面が脳裏を過ぎったな。

80 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 23:29:44 ID:ZukUFI+N
>76
ジョセフィーヌ……ああ、ジュヌヴィエーヴに見えた。

81 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 23:51:32 ID:RRQAl2yo
>>72
その名をここで見ることになるとはw
あの時代のラノベはとんがってたなあ。

82 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 00:05:35 ID:kToa3b1R
雑談が多すぎる

83 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 00:11:29 ID:dWIb1+2c
>>82
おっ! 次のNWのシナリオ名だね!?

84 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 00:12:49 ID:4AOE0gmS
>>82
雑談魔王シャベ=リーナが世界を滅ぼすんですね、わかります。

85 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 01:15:49 ID:ov36xWhB

少女は何時も孤独だった。
毎日毎日繰り返される日常の日々、されど内気な少女は誰とも言葉を交わせずに、ただ淡々と孤独に時間だけが過ぎていゆく……

ある日、少女は小さな噂話を知った

『リーナさんの雑談』
それが、内気で自分は孤独だと思う少女が、誰とでも気軽に言葉を交わせるようになる始まりであった―――それが全て魔王の策略だとも気付かずに

NWシナリオ『雑談が多すぎる』

「誰かと気軽にお話がしたい」その小さな願いが夜空に紅き月を誘う


酔った勢いでやった、スレ違いだと今は反省している

86 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 10:33:31 ID:+XORy1AF
柊力で心の仕切りを下げるんだ!


【公式シナリオに存在したという】

87 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 07:03:57 ID:qrWinUqL
誰も居ないうちにさくっと投下してみようかなと思います。
短いですので支援は不要。

それと、前回SSタイトルを言い忘れてました。

 だいすきなうた 〜 Project S.D. II 〜

です。
何もかも初めてばかりで緊張していたようです orz


88 名前:だいすきなうた:2008/11/11(火) 07:05:06 ID:qrWinUqL

# OPENING 02 イグニッション
#      Scene Player:ほしな歌唄


ほしな歌唄という少女がいる。
14歳の若さで歌手デビューした実力派の歌姫だ。
デビュー曲の「迷宮バタフライ」は、テレビや雑誌といったメディアでも多く取り上げられ、
瞬く間にトップアイドルへの仲間入りを果たした。

それからしばらくして、彼女は大手芸能プロダクションのイースターミュージック社からの離籍を発表。
当時のマネージャーが設立した新興の事務所に移り、心機一転を計ることになる。
それ以降、彼女がメディアに露出することはほとんど無くなり、やがて大衆から存在を忘れられていく。
悪く言えば一発屋、それが世間一般の印象であろう。

ほしな歌唄とイースターとの間に何があったのか、真実を知る者はあまりに少ない。


   *  *  *


いつものボイストレーニングを終え、歌唄は帰路についていた。

前の事務所とケンカ別れして以来、なかなか歌の仕事は回ってこない。
改めてイースターの影響力の大きさを実感させられる。だがそれは覚悟の上だ、今更そんなことを気にしてなんかいられない。
仕事は無くとも日々のトレーニングだけはきっちりと。それが彼女の信念だった。

ふと見上げると、商業ビルの側面に設置された大きなテレビモニタが目に入った。
少し前まで映っていたはずの場所に、もはや自分の姿はない。
そこにいるのは、かつて同じ歌番組で共演したこともあるアイドル歌手グループだ。

(もう一度。もう一度必ず、あの大きなステージで歌ってみせるんだから)

小さな決意を胸に、歌唄は歩みを速める。向かう先は三条プロダクション。
古いビルの一室を借りて立ち上げた、以前とは比べ物にならないほど小さな会社である。
それが生まれ変わった「ほしな歌唄」の新たな拠点だった。



89 名前:だいすきなうた:2008/11/11(火) 07:05:59 ID:qrWinUqL

事務所に戻ると、社長の三条ゆかりがお茶を煎れて迎えてくれた。
イースター時代からの付き合いで、今も歌唄のマネージメントをしてくれる頼もしい存在である。

「歌唄、お疲れさま。調子はどう?」
「大丈夫。私はいつでも好調よ」
「ふふ、期待通りの答えね」

プロとして当然とばかりに歌唄は答える。

「それより聞いて。秋葉原での仕事が入ったわ、対バンのライブだけど」

秋葉原といえば、今やサブカルの代名詞のような場所。
曰く、まともなメディアに取り上げられないマイナーな自称芸能人が活動していたりもするらしい。
たぶん三条さん自身は、あまりこの仕事を快く思ってはいないだろう。
一度はトップアイドルの座を飾った歌唄に、そんな地下アイドルまがいのことをさせるのだから。
しかし歌唄は全然気にならない。それに仕事を選ぶわけにもいかないし。

「歌唄の実力があればすぐにでもTVにだって出られるのに。イースターのやり方は卑怯すぎるのよ!」
「最初から分かってたことじゃない。お互いにその覚悟はあったはずよ?」

誰かが明言したわけではないが、今の歌唄の歌手活動には間違いなくイースターの圧力がかかっている。
それを確信したのは移籍後すぐのこと。
出演が決まっていたはずのTVの歌番組で、収録直前になって製作会社側から約束を反故にされたのだ。

この手の妨害工作に抗うには、所属タレント単独の力だけでは難しい。
質と量の両方、すなわちプロダクションの持つ総合的な実力が必要なのである。

「それも……そうよね。私と歌唄で天下を取るって決めたんだもの」

三条さんは詳しく語ろうとしなかったが、歌唄を欲しがっているところは幾つか存在するらしい。
彼らにとっても、「ほしな歌唄」はそれだけの稼ぎが見込める商品なんだということか。

例えばつい先日も、中堅の「杜プロダクション」から提携のアプローチがあったばかり。
人気グループ「Dear」らを擁する芸能事務所で、アイドルタレントのマネージメントのノウハウもある。
他にも演歌歌手などの所属も多く、きちんとした歌手活動もさせてもらえるだろう。
提携相手としては申し分ない。歌唄の中の人は元々演歌歌手志望だったというエピソードもあり、そういう意味でも安心だ。

けれど2人はその提案を拒否し、今に至る。
歌唄を知り尽くし、その実力を引き出せるのは社長でもある三条さんだけ、お互いにそう確信していたからだ。

「いつかアイツらにぎゃふんと言わせてやるわよ! だからいつまでもヨロシクね、歌唄」
「ええ、一緒に頑張りましょう」
「じゃあ早速、ライブの仕事について説明するわ。まずは ―― 」

三条さんの眼鏡が、きらりと輝いた。




90 名前:87:2008/11/11(火) 07:12:04 ID:qrWinUqL
以上。
たった2レス分の文章に、何故僕はこんなに時間をかけてるのでしょうか。
このままではキャラが合流する前に師走になってしまいそうです。

>13-14
はい、「しゅごキャラ!」です。バレバレですね(笑)

>15
名前を出してみました。

>18
です。

91 名前:87:2008/11/11(火) 07:40:14 ID:qrWinUqL
では、少し解説を。

■しゅごキャラ!
今回のクロス先。
ローゼンメイデンの人が原作の漫画。現在アニメが放映中。

人は誰しも心の中に「卵」を持っていて、そこから「なりたい自分」が生まれてくる。
そんな「卵」を巡る、現代ファンタジーの物語。


■志宝エリス
進級し、3年生となっている。天文部の部長としても頑張ってるみたい。


■ほしな歌唄(ほしな・うたう)
本名は月詠歌唄(つきよみ・うたう)。14歳で歌手デビューした実力派の女の子。
主人公らのライバルとして登場した。


■その他
緋室灯
  こんだけ重要そうに出てるのに脇役。
香椎珠美
  ヴァリアブルウィッチに登場した新聞部の子。
三条ゆかり
  イースターミュージック時代からの歌唄のマネージャー。今の事務所の社長でもある。
イースターミュージック社
  巨大企業「イースター」の傘下にある芸能プロダクション。
  歌唄や三条が所属していたが、離脱。その経緯については原作を参照。


92 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 11:27:52 ID:PlithU+q
あぶないあぶない
こないだまとめて貯まってた分を消化したから良かったけど
危うくネタばれ食らうとこだったぜw>しゅごキャラ


まぁ、3ヶ月も経っててネタばれがどうのというのは
明らかに間違ってるわけだがw

93 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 13:13:02 ID:oGhW6zTu
おつー。

中の人エピソード、安心に関係ねぇw

94 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 14:35:24 ID:jgY3WHiB
>>91
ちょwww中の人ってwwww
そりゃそうだが話には関係ないってwwww

次回も楽しみに待ってます。

95 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 18:08:15 ID:6lUq7Im+
.         i   ,.......-‐‐‐-.......,   , ,
.       ヽ、| .,..::':::;:::::::::; 、::、::::::::`':.、 / /
       ,...-v':::;:'::ィ::;イ::/ ヾ::i、:i:::i::::、:'、/
     ,...::'~::::::;';'::,t:A;.'、!/   ヾ!,';l';-!::::i:::';:::`'::..、
.    '‐/:::::::::ィイ::イ!ri'O;;.i   "iO;;、tlヾ:|::::}、:::::::::、'、
     '‐''!:/l/!' ''l { lllll !    l.lllll }. i ' r‐、 '.、;-ヾ
      '  .{ { |  `'''´    `''''´   i`.!   ゙
        `'-.!            i´ノ
        /::',    ,' ̄ ̄ヽ    .,'ヾ、
.       '-:::::::;'ヽ、  ' ‐‐‐‐'  , 、':::::::`、
        !‐;:/  ` 't- ... - r '"  '、:; 、!`   保 管
          '   ,..:'、     !、    '
           , '  ヾ`;ー.......':)、       ●前スレ870 よつばと!
         /ヽ      ̄  ヽ      ●前スレ870 フルーツバスケット
        , ':::::::i          i:、     ●前スレ922 NWが一昔前のギャルゲだったら
       ,.'::::::::::::!          i::',    ●よるのある風景 #04
.      /::::::::::::::i           .i:::'、   ●ネギま!×ちびらぎ #01-02
      /:::::::::::::::;'           |:::::',   ●だいすきなうた〜Project S.D. II〜 HO、#01、#02
     'r‐-.、:::::::i         ,.'   !::::::',
.     /  /-、/          , '   |; ‐「

2週間ほど放置してた

96 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/12(水) 00:08:53 ID:i6ot+DtT
>>91
確かに短いけどこれからの展開に期待が湧いてきた……続きを超☆待機して待ってますw

ところで他のプレイヤーで話題には出た「Dear.」から誰か出ないかなぁ……“日本刀相当の歌声”に初仕事持っていった者の一人として期待せざるを得ないw

97 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/12(水) 00:46:34 ID:hWa9AseF
>96
ハンドアウトは既に投下されてるんだぜ?

98 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/12(水) 00:56:09 ID:hWa9AseF
他の人にレスするの忘れてた。

>92
原作コミックスだと第6巻、アニメだと第1期終了時点くらいを目安にしています。
っていうか注意書き遅かったね!

>93-94
こう、シリアスな話を書いていると、どうしてもボケたくなってしまう性分でして・・・…。
実際のセッションでは嫌がられますので注意しましょう。

99 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 22:11:58 ID:muRSPhVX
おお、ひいらぎよ。しんでしまうとはなさけない。

100 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:29:45 ID:VnZyRoKT
柊が死んだのDEATH

101 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 01:00:51 ID:pTPreYDm
あくまで世界の守護者ですから。

102 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 20:58:58 ID:LcbzoWO6
これより、「だいすきなうた 〜 Project S.D. II 〜」を投下します。
支援は不要です。


103 名前:だいすきなうた 1/2:2008/11/14(金) 20:59:58 ID:LcbzoWO6

# OPENING 03 カレイドスコープ
#      Scene Player:赤羽くれは


「はわー……やっぱり落ち着くねー……(ずずず)」
「……(ずずず)……」

私立輝明学園。
全国に分校を持つ神道系の名門校にして、国内でも数少ないウィザードの養成機関だ。

ここ、東京都千代田区の秋葉原校もその1つ。
近隣に位置する陰陽師の名家、赤羽神社が実際の教育現場にも大きく関わっており、
当主の赤羽桐華自らが出向いて学校行事を取り仕切ることも少なくない。

その娘 ―― 赤羽くれはは、母の代理も兼ねて久し振りに母校へと顔を出していた。
と言っても、事務的な用事は午前中にさっさと済ませており、今は天文部の部室でのんびりとコーヒーブレイク中である。

「あかりん、今日はエリスちゃんと一緒じゃないの?」
「……すぐに来ると思う……職員室に用事があるって言ってた……」

今、部室に居るのは緋室灯と2人だけ。部長である志宝エリスも、そのうちやってくるだろう。
しかしよくよく考えれば、くれはは部のOGであり、灯はそもそも天文部の所属ではない。
ぶっちゃけ不法侵入のような気もするが、くれははそんなことを気にするような玉では無かった。

「……エリスが来る前に、くれはにお願いしたいことがある」

コーヒーカップをちゃぶ卓に置くと、灯が話を切り出した。
物静かな彼女が自分から話題を振ってくるというのも珍しい。

「……ここに、エリスと一緒に行って欲しい」
「はわ? ……チケット?」

月衣から取り出したのは2枚のライブチケット。
そこには、学校近くにあるらしいライブハウスの名前と、駅からの簡単な道順が記されている。

「どうしたの? これ」
「……アルバイト先で、貰った」
「了解、エリスちゃん喜んでくれるといいねー」



104 名前:だいすきなうた 2/2:2008/11/14(金) 21:00:46 ID:LcbzoWO6

絶滅社のエージェントとして世界中を飛び回ることも多い灯だが、暇な時間を見つけては“普通の”仕事もしているらしい。
幼い頃から兵士として戦闘訓練を受けてきた彼女にとって、一般社会に触れるのは良いリハビリになるだろう。

灯が働いているのは、学校の正門前の階段を下りて、ちょっと進んだ先の雑居ビルに店舗を構えるメイド喫茶。
少し前から、そこでウェイトレスとして雇われているらしい。
仕事への姿勢は超がつくほど真面目だし、何より美人でスタイルも抜群だ。店にとってはなかなか優秀な人材だろう。
調理場にさえ入らなければ、だが。

何よりもありがたいのは、このメイド喫茶の店長がウィザードに対して理解ある人物だということだ。
前に灯から0-Phoneで送ってもらった写メを見る限り、幼い印象を受ける女性店長である。
あどけない顔立ちに、土管やこいのぼりを連想させる華奢な体型。せいぜい灯と同じくらいか、おそらく少し歳年下だろう。
そんな少女が店のトップを務めているというのも妙な話だが、ウィザード稼業をやっていると気にならなくなるから実に不思議だ。

「で、あかりんの分は?」
「……私は任務があるから。それに、ああいうところは好きじゃない」
「はわー……あかりんも大変だねぇ」
「……大丈夫。それと、エリスには私からってこと……内緒」

七徳の宝玉を巡る事件以来、世界の情勢は一段と厳しくなっている。
いちウィザードでしかない赤羽くれはにも、その空気はひしひしと伝わっていた。
新たな脅威として「冥魔」どもが現れるようになってからは、どうしてもそちらの対処に人が回されしまう。
かと言って、エミュレイター側による世界の侵蝕が止まるわけでもなく。
人間たちにとっては、まさにジリ貧という言葉が相応しい。

この問題に対処するため、ウィザード上層部が企てた作戦は、かなり大胆で思い切ったものだった。
一時的にではあるが、冥魔に対しエミュレイター勢との共同戦線を張ろうというのである。
もちろんそれを心情的に良しとしない者は多いだろう。
しかし目前に共通の敵が迫っている今、敵の敵は味方であると認識するより他は無かったのだ。

灯が就く任務というのも、まさにそれ絡み。
近い将来行われるだろう冥魔との決戦に備え、世界結界の外側に急ピッチで拠点が築かれているのだが、
そこの防衛及び前線の維持が課せられた仕事ということらしい。
万が一大規模な戦闘が始まれば命の保証は出来ない、それほど危険な場所だ。

しかしくれはは、一呼吸だけ置くと、精一杯の笑顔を見せる。

「ちゃんと帰ってくるんだよー、あかりん」
「……ありがとう」

戦地に向かう親友を、くれはは明るく送り出すこと。
それが居場所を護る者の使命だと自分は思っている。

「……くれはも、エリスをお願い」
「どーんと任せておきなさいって! 柊やあかりんがいなくても、エリスちゃんは絶対に護るから!」

絶対に大丈夫。今までだってそうだったし。
なんてったって、赤羽神社の娘によるとびきりのご祈願があるんだしね。
信じる者は救われるのだ。




105 名前:102:2008/11/14(金) 21:05:08 ID:LcbzoWO6
以上。
今回は、はわはわお嬢さんのオープニングでした。
あかりんは別に死亡フラグでも何でもなく、単に依頼人NPCなので退場しただけです。

細切れ(2レス程度)で投下してるのですが、
ある程度まとまった量を投下したほうが良いのでしょうか?


106 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 21:14:09 ID:QZ8BeSut
バイト先、もしかして喫茶ゆにばーすかよ!?
こっちではUGNとウィザード協会は連携してるのかw

107 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 21:19:38 ID:/6/RkisS
個人的にはこのくらいの投下速度&量でもまったく問題は無いよー。
てーか喫茶ゆにばーさるでライブハウスのチケットくれるような洒落た人って…
いや、何も言うまい。

108 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 21:20:59 ID:ZOr11jdT
>>105
オープニング程度ならこれくらいでいいと思うけど、
本格的に話が進むようになったら
ある程度まとまったら投下したほうがいいんじゃないかな?

まあ、そこのところはうp主の好きにしてくれてもいいと思う。

109 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 21:27:10 ID:/cBj453g
>>107
これでライブが高2病の人のバンドだったら暴挙だな。

110 名前: ◆xdkSnUtymI :2008/11/14(金) 22:10:07 ID:oduSmgXj
かぶりがなければ投下したいけど、いいですか?

111 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 22:12:47 ID:LcbzoWO6
らきすたかな? 支援しますよ

112 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 22:12:53 ID:nsP+oMNC
いいですよ

113 名前: ◆xdkSnUtymI :2008/11/14(金) 22:18:02 ID:oduSmgXj
ありがとうございます。
では投下したいと思います。

114 名前:闇祓う光明 ◆xdkSnUtymI :2008/11/14(金) 22:19:11 ID:oduSmgXj
何かが腐ったような臭いが立ちこめる。
くぐもった化け物のうなりと咆哮、剣戟と銃撃の音が響く。
清浄であるべき境内に忌まわしい光景が広がる。

「くふっ……」

かみしめた口元から息が漏れる。

不浄なるものが神域に跋扈する。
こんなことは許されるべきではない。
かがみは怒りに満ちた目で化け物たちを見つめていた。

だが、からだじゅうが熱くなり、とても息苦しい。
視界が歪み、からだがふらつく。

このままでは立っていられそうもない。
つかさを残して倒れたくはない。
でも、もうもたない!

そのときであった。

「かがみ! つかさ!」

その声に、張り詰めていた心がゆるむ。
走ってくる声の主に心当たりがあったから。
安心して頼ることができる、かけがえのない存在。
生まれてからいままで、ずっと自分を支え続けてくれた人。

声の主はかがみとつかさの母、柊みき。
ときおり自分の年齢を17歳だと自称して周囲をわかす、若々しい容貌の女性である。

「あ……」

その姿を見たかがみの目に涙がにじみだす。
足の力が抜けそうになりかけたが、なんとか立ち直る。
なにがあろうと、今は倒れてられないのだから。

「大丈夫? かがみ、つかさ」

問いかける母はなぜか巫女服を着ている。
が、理由を問う気にはならなかった。
もっと異常な事態が、まわりで展開していたから。

神楽殿の屋根の上に立つ女性が、かかえた棒から光の弾丸を撃ち出す。
巨大な刃物を手にした蓮司が斬りかかる。
変質者のような男が奇妙な動きをする。

まるでファンタジー映画の中にでも入りこんだかのようであった。

「ねえかがみ、本当に大丈夫なの?」

その言葉に、少しだけぼうっとしていた気分を立て直す。
だが、作り笑顔で自分は大丈夫だと答えを返したとき、ふと気づく。

抱きついていたつかさの感触がないことに。

「つかさ!」

あわててつかさの姿を探す。
大事な妹が無事であるように祈りながら。

115 名前:闇祓う光明 ◆xdkSnUtymI :2008/11/14(金) 22:20:21 ID:oduSmgXj
18年間、ずっといっしょに生きてきた半身。
家族の中で最も近い場所にいる存在。
それほどまでに大事な妹を失う恐怖。

どこ? どこにいるの?
つかさ! お願い、無事でいて!

心の中に悲鳴が飛びかう。
必死で探すものの、どうしても見つからない。
もしや戦いに巻き込まれてしまったのではないか。
そんな想いが染み出して、ついには叫び声をあげそうになる。

そのとき、探し続けていたつかさの声が聞こえてきた。

「お母さん…… ふええん、怖いよう……」

見ると母の存在に気づいたつかさがみきに抱きついていた。

かがみはホッとする。
と共に、自分のあわてていた様を思い返し顔を赤らめる。
そんなかがみと目があったみきは、無言でほほえむ。
かがみは苦笑いを返すのが精一杯であった。

一方で強く抱きついて泣きじゃくるつかさに、みきは優しく話しかける。

「もう大丈夫。みんな蓮司くんたちがやっつけてくれるわよ」

ふと、みきの腕に見慣れないものがついていることに気づく。

それは腕につけるタイプの弓であった。
普通の弓と違って矢は装備されていない。
代わりに扇のように広げられている札が弓の部分に貼り付けられていた。

だがその弓に疑問を抱く余裕はなかった。
キマイラが蓮司に向けて再び炎を吐いたのだ!

「ダークバリア!」

轟音を切り裂くような声が聞こえた。
同時に、黒い球状の塊が蓮司に向かっていく。

塊は蓮司と炎の間に割り込み、炎を勢いよく吸い込みだす。
わずかながら吸い込みきれずに残った炎はあった。
だがそれを、蓮司はウィッチブレードで蹴散らす。

「くらいやがれ!」

蓮司はそのままキマイラに魔剣をふるう。
重さなど感じていないかのように。
美しい、とかがみは思わずその姿に見とれてしまっていた。



ふと我に返って、頭をふるかがみ。

気を取り直して声の主を探す。
すると、みきの後ろ、少し離れた場所に人影が。
赤羽くれは、かがみたちが幼いころから慕っている人であった。

116 名前:闇祓う光明 ◆xdkSnUtymI :2008/11/14(金) 22:22:14 ID:oduSmgXj
その腕には、みきと同じような奇妙な弓が。

「くれ…… 」

声をかけようとしたそのとき、かがみは気づく。
その目がキマイラに向けられていることに。
そしてその目が怖いほどに真剣であることに。

いま、くれはの気をそらしてはいけない。
そう思ったかがみは、みきに聞いてみた。
ここで、なにが起きているのかを。
くれはたちが、なにをしているのかを。

幼いころ、怖い夢を見た時のように優しい微笑を返すみき。
だが、抱きついているつかさをかがみの元に返すと、くるりと背を向ける。
そしてふりむきもせずに、あとで話すと言うだけだった。

「ああっ、もう。 いったい、何がどうなってるのよ……」

いらだちを抑えきれずにかがみはつぶやく。
噴き出す汗を拭き取ろうともせずに。

目の前では理由もわからない現象が続けざまに起きている。
ただ黙って見ていることしかできないことが悔しい。

ゆえに、みきに問いかけた時、既にかがみには覚悟ができていた。

いま目の前で起こっている事態はかなり異常である。
だから、どんな答えがこようと動揺するつもりはなかった。
たとえこれが、自分たちを引っかけるためのドッキリだったとしても。

だが、これは違う。
ドッキリなどというものでは決してありえない。

そのことにだけは、もう気づいていた。

化け物の吐く炎で周囲は暑くなっている。
爆発が起きるたびに強い風が巻き起こっている。
それらを全て自分の肌で感じている。

これらが作り物ではないことははっきりしていた。

だが、この現象を説明してくれるものはいなかった。
今までは。



この現象を説明してくれるものがいるなら、悪魔だってかまわない。
そうかがみが思いはじめたときである。

「これが私たちの世界の本当の姿よ、かがみ、つかさ」

背後から声がかけられる。
聞き覚えのある声につい、後ろをふりむく。
するとそこには4人姉妹の最も上の姉、柊いのりの姿が。

いのりもまた、みきと同じような奇妙な弓を腕に着けていた。
それは、みきの腕についているものと寸分違わずに同じもの。

かがみもつかさも、その奇妙な弓にひきつけられていた。

117 名前:闇祓う光明 ◆xdkSnUtymI :2008/11/14(金) 22:24:27 ID:oduSmgXj
「なに? ああこれね。
これは私やお母さんたちの武器。
あの化け物たちと戦うための手段の一つよ」

と笑顔で言う。
だが、視界の端に何か見つけたのか、目つきがきつくなった。

「キュア・ウォーター!」

いのりはふいに、弓のついた腕を伸ばして叫んだ。

弓に貼りついた札がひとつ消える。
と同時に、光の弾丸が飛んでいく。
向かう先にはキマイラと戦う、剣を構えた蓮司の姿が。

いきなりなにをするのかと、ふたりは息を飲む。

「きゃあっ!」

直後、輝く閃光にふたりは悲鳴を上げる。

まさか姉が蓮司に攻撃したのか。
そんなことをして、いったい何になるのだろう。

もしかして、いのり姉さんは本当は蓮司のことが嫌いだったのか。
だから、この混乱にまぎれて鬱憤でも晴らそうというのか。
いままであんなに愛想よくしていたはずなのに。

「いのり姉さん! 何をやったのよ、いま!」

かがみは叫ぶ。
無言で強く抱きしめてくるつかさを抱きとめながら。

あせりと共に、目をかばっていた、通学カバンを持つ手を下げる。

「えっ?」

そこにいたのは、ついさっきまで傷だらけだった蓮司ではなかった。
もちろん服は焼けコゲや巨大な引っかきキズ、土まみれではあった。
だが、顔や手などからは一切のキズが消えていたのだ。

いったい、なにが起きたのか。
かがみもつかさも、わけがわからなかった。



「サンキュ! いのりさん!」

短かい時間だけ顔を向け、感謝の言葉を告げる蓮司。
その言葉で、かがみだけはようやく理解に至る。
さっきのは治癒魔法だったと。

「お……お姉ちゃん。
さっきのって、なんだったの?」

いまだ理解し切れていないつかさに自分の解釈を話すかがみ。
いのりの姿を横目で見ながら。

「ゲームで言えば《ヒール》の呪文を唱えたってとこかしらね。
ね、いのり姉さん」

118 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 22:26:55 ID:LcbzoWO6
支援

119 名前:闇祓う光明 ◆xdkSnUtymI :2008/11/14(金) 22:28:22 ID:oduSmgXj
その視線と言葉に、いのりが再び口を開く。

「詳しいことは全部片付いてからにしましょ、かがみ、つかさ。
いま言えるのは、あの化け物たちと戦う力を私たちは持っている。
そんな力を持った私たちはウィザードと呼ばれる存在だってこと。
そしてかがみもつかさも、私たちと同じ力を持っているってこと。
それだけね」

「ちょ、それってどういうことよ!
わたしたちにあんな化け物と戦う力があるですって?
いきなりそんなこと言われて、『はい、そうですか』って言えるわけないでしょ。
第一、私たちのどこに、そんな力があるって言うのよ。
それに…… そんな力が私たちにあるって言うんなら、いったい何をすればいいってのよ!」

暑さでぼうっとなっている頭をふりながら、かがみは叫ぶ。

「かがみ、つかさ、いまのあなたたちにできることは、私たちの戦いを見ることだけ。
さっきも言ったとおり、あなたたちは戦う力は持っている。
けど、まだその力の出し方がわかっていないんだから、ないのと同じこと。
だから、しっかり見なさい、この戦いを。
そして決めなさい。
この戦いに身を投じるか、それともここで見たことを忘れて平凡に暮らしていくのかを」

目を見据えて話しかけてくるいのりを、ふたりは無言で見つめていた。

そんなかがみの視線の先では、1体、また1体とキマイラが消えてゆく。
だが、よく見ると攻撃に参加しているのは蓮司と灯のふたりだけ。
くれは、みき、そしてマント男の3人は、なにやら魔法を使っているようであった。

「ここにこなたがいたら、涙を流して喜びそうね」

ひとりつぶやく。

戦いは蓮司たちが有利に見えた。
だが、1体のキマイラが姿を消すとまた新たに1体が出現。
いつまでたっても敵は減りそうになかった。

このままではマズイ。
怪物たちの狙いはみんなの疲れを待つこと。
そうなったら勝ち目はない。
そして自分たちの命もそこでおしまいになる。

かがみの目から見ても、それは明らかであった。



かがみは自分の無力を痛感していた。
何もできない自分が情けなかった。
つかさを守るどころか、みんなの足手まといになっている。
そんな状況が嫌だった。

その一方でふと気づく。
直接戦っている蓮司たち以外で、汗を大量にかいているのは自分だけだということに。

また足元がふらつく。

だが、かがみは必死の思いで足を踏みしめる。
つかさを抱きしめたまま倒れないように。

120 名前:闇祓う光明 ◆xdkSnUtymI :2008/11/14(金) 22:29:44 ID:oduSmgXj
とはいっても足がふるえることだけは押さえ切れなかった。
死と隣りあわせゆえの恐怖が、かがみの心に忍び寄っていたのだ。
かがみ自身が気づかないうちに。

許されるものなら叫びだしたかった。
幼子が命がけでダダをこねるように。
叫んで逃げ出したかった。
目の前の現実をなかったことにするために。

だけど、見てしまった以上、なかったことにはできない。
それに自分が生まれ育った場所を汚されたまま、黙っていたくない。

見ていることしかできないのが、悔しかった。

力が欲しい。
いのり姉さんの言う、化け物たちと戦う力が本当にあるのなら。
そんな思いが、かがみの胸が熱くする。

 − 力が欲しいの? −

「えっ?」

どこからともなく聞こえてくる声に、驚くかがみ。
思わず周囲に見回す。

「お姉ちゃん、どうしたの?」

「つかさ、いま誰かに話しかけられなかった?」

「え? 話しかけてきた人なんていないよ?」

目を丸くして答えるつかさの言葉に、かがみは確信した。
さっきの言葉は自分にしか聞こえなかったのだと。

(まったく、できそこないのラノベみたいな展開ね。まるで。)

かがみは声に出さずに自嘲した。

 − 力が欲しいの? −

ふたたび声が聞こえる。

 − ねえ、本当に力が欲しいの? −

つづけざまに声が聞こえる。

ふいに、その声に聞き覚えがあることに気づく。
それが自分自身の声であることに。
家族の記録に残されている声が、そのまま聞こえてくることに。

ならば声の主は自分の中にいる。
そう確信したかがみは心の中で断言する。

(もちろんよ。私は力が欲しい。あいつらと戦うための力が!)

次の瞬間、かがみの胸が燃えるように熱くなる!
まるで炎に包まれたかのように!
からだじゅうが弾け飛びそうな勢いで!

121 名前:闇祓う光明 ◆xdkSnUtymI :2008/11/14(金) 22:30:58 ID:oduSmgXj
「あああっ!」

かがみは今まで出したことのないほどの大きな叫び声をあげた。
自分にこれほど出せるとは思わなかったほどの大声を。
大きく目を見開き、背をそらしたまま、からだが硬直する。
生きたまま彫像になったかのように。

「お姉ちゃん!」

かがみを抱きしめて、つかさが叫ぶ。
姉を襲った異常事態に対する恐怖心からであろう。
かがみに負けないほど大きく目を開けながら。

「かがみ!」

キマイラを警戒することも忘れて、いのりが駆け寄る。
まるで今にも死にそうなほどに蒼白な顔で。

みきもくれはも蓮司も、かがみを襲った異常事態には気づいていた。
だが、いま持ち場を離れるわけにはいかない。
その想いが必死で戦線を維持していた。

世界を、ひいてはかがみたちを守るために!



かがみはひとり、襲ってくる、逃げようのない熱さと戦っていた。

熱い、このまま溶けてしまいそうなほどに。
熱い、何も考えられなくなりそうなほどに。
熱い、からだじゅうに針を刺されたような痛みを伴って。

熱い、熱い、熱い、熱い、熱い……

(ごめんね、つかさ。もう一緒にいてあげられなくなるかもしれない。)

家族の顔が浮かんでくる。
いままで仲のよかった友達の顔が浮かんでくる。
ひとり、またひとりと……

そして、ふいに浮かんできたこなたの顔を意識した時、かがみの心に変化が訪れた。

(そうよ…… こんなところで…… こんなことで…… 死ぬわけには…… いかない!)

戦うことを選んだのは自分だからと心に決めた時、それまでの苦痛が嘘のように消えていた。
だが、その反動で意識が消えかける。



「あああ……」

叫び声が止まる。
直後、糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちるかがみ。

「お姉ちゃん!」

「かがみ!」

122 名前:闇祓う光明 ◆xdkSnUtymI :2008/11/14(金) 22:32:43 ID:oduSmgXj
つかさといのりが叫ぶ。
その声が、かがみの失いかけていた意識を取りもどす。
そして次の瞬間、かがみのからだは光に包まれた!
うっすらと輝く、紫色の光に。

「もう大丈夫よ。つかさ」

「お姉…… ちゃん?」

ふらつきながら立ち上がり、閉じた目をふたたび開ける。
最初に飛び込んできたのは驚きの目で自分を見つめるつかさ。
つづいて目にしたのは満面の笑みを浮かべるいのりの姿であった。

「どうかした? つかさ、いのり姉さん」

「どうかしたって…… お姉ちゃん、気づいてないの?」

「気づいてないのって…… なにこれ?」

つかさの瞳に移った自分の姿に、目を丸くする。
自分が、うっすらと紫色に輝いていることに。
立ちくらみをしそうなほどの驚きに襲われながら。

これはいったいなんなのだろうかと思う間もなく、いのりが話しかけてきた。

「どうやら完全に覚醒したようね、かがみ。
うちの中でいちばんの常識の塊だったから心配だったんだけど、なんとかなったみたいね」

笑顔のいのりをかがみは見つめていた。
思いつめた顔で。

一方、いのりはそんなかがみを見て思い出していた。
かがみが歩けるようになった赤ん坊のころを。
ウィザードとして歩みはじめた、いまのかがみと重ね合わせながら。

「いのり姉さん…… ってことは、これで私もあいつらと戦えるようになったってこと?」

いのりは笑顔を絶やすことなくうなずく。
そう、柊かがみはいま、ウィザードになったのだ!



カタカタカタカタカタ……

何かがふるえる音が聞こえてくる。
ふと見ると、その音はいのりの腕、そこについている弓から発せられていた。
いのりはほんの一瞬だけそのことに驚くと、自分の腕からその弓をはずす。
そしてそのままその弓をかがみの腕に取り付けたのだった。

「いのり姉さん?」

「これ、かがみにあげるわ」

かがみの腕に弓を取り付けながら、いのりは話す。
それが、破魔弓であるということ。
呪符で魔法を使うとき呪文を唱えなくてすむようになっていること。
そしてそれゆえに、化け物たちにすばやく対応できるということを。

自分が使い方を教えるといういのりの言葉を信じ、かがみは戦場を見つめる。
これから踏み出す一歩が自分の一生を左右するものだということを思いながら!

123 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 22:35:13 ID:LcbzoWO6
支援

124 名前: ◆xdkSnUtymI :2008/11/14(金) 22:50:22 ID:1WAHhJkg
さるさんに引っかかったので回線をつなぎなおしてきた……orz



以上です。
やっとかがみを覚醒させることができました。
とりあえず、次回で序盤戦は終了の予定です。



今回ボツにしたネタ

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 − ねえ、本当に力が欲しいの? −

つづけざまに声が聞こえる。

ふいに、その声に聞き覚えがあることに気づく。
それが自分自身の声であることに。
家族の記録に残されている声が、そのまま聞こえてくることに。

と、同時にどこからか、聞きなれた親友の声が聞こえてきた。
『大丈夫、私もないから心配すんな!』

かがみはその声を聞かなかったことにした。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

合わせ巫女ネタをやりたかったけど、雰囲気が壊れるんで泣く泣くボツに(笑)

125 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 01:36:32 ID:SXR2KY6M
元々は植木等?


126 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 02:28:27 ID:qScXHaiH
クレイジーキャッツの
「黙って俺について来い」だったかな?

天童よしみのカバーでこち亀のOPで流れてたっけ

127 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 04:23:14 ID:yu+Phuxc
バーレスクを読んでいてふと思った。新型箒の怪しい外人口調とか、箒型になれないとか…
天明さん、もしかして異世界産の人型戦闘兵器in宇宙から技術提供受けたりしましたか?

128 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 05:47:21 ID:jsaXofWv
>>109
*これでライブがヨハネ・クラウザーII世のだったら*



「出たぁ! クラウザーさんの一秒11回ハエ叩きだ〜!」
「クラウザーさんに柊力なんて関係ないんだ!!」

129 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 05:54:00 ID:jsaXofWv
>>128書いて思ったが


クラウザーII世の中の人が天だったら




 ま さ に 大 惨 事

130 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 10:43:08 ID:vhmaQZE2
DMCとしての面白さが軽減してしまう気も>中身が天のクラウザーさん

個人的にDMCは天がGMで、かわたなかキミ君あたりがクラウザーなイメージ

131 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 11:55:23 ID:4B8Zi4vh
あー。中の人がクラウザーやることに躊躇いがないとただのバンドものだからな。

132 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 13:19:10 ID:F+DgGZOm
クラウザーと天はぴったりじゃないかデストロォォォォィ!

133 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 13:42:12 ID:VC43e2b6
>>132
>>131

134 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 14:00:37 ID:nEbVPVFW
中の人の中の人には躊躇いらんとおもう

135 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 20:31:22 ID:yu+Phuxc
ハンドアウトのみなのですが、投下してもよろしいでしょうか?

136 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 20:34:18 ID:VC43e2b6
GO!GO!

137 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 20:40:57 ID:yu+Phuxc
>>136
!?ちょっとびっくりしたナリよw

PC1
推奨クラス :アタッカー/勇者
コネクション:赤羽くれは

君は、大いなる存在によって戦う力を与えられた、伝説の戦士の一員である。
そんな君は、ある夜、夢を見た。
この世界…人間の世界と君の故郷が闇に覆われ、消えてしまう夢。
翌日、最悪の目覚めを迎えた朝に君は見た。その恐るべき闇がこの世界へと現れたのを。
共に戦う仲間を助け、君は闇に飲まれた。そして気がついたとき…君は、まったく知らぬ場所に寝かされていた。

PC2
推奨クラス :キャスター/大いなるもの
コネクション:謎の老人

ある夜、君は夢を見た。
暗き闇に一人たたずむ、小柄な老人。老人は君を見て言う。
「…強大な力にはそれを注ぐに足る器が必要となる。少女よ、今一度力を与えよう。夢の欠片の結晶と共に」
翌朝、目覚めたとき、君は再び手にしていた。失われた箒と、戦うための力を。

そしてその直後、朝の神社の掃除中に君は見つけた。
衰弱した、普通の動物ではありえぬ、二足歩行のピンクのうさぎ。
それを見て君は確信した。
偶然ではありえない。君の双肩に再びのしかかったのだ…この世界の、運命が。

PC3
推奨クラス :ヒーラー/夢使い
コネクション:黒い仮面の男

君は世界を救ったこともあるベテランのウィザードである。
そんな君は今、とある事件を追っている。各地で頻発する仮面をつけた謎の冥魔、その原因を。
そして君は出会った。白昼堂々、ロンギヌスのショッピングモールに現れた…黒い仮面の男。
圧倒的な実力差だった。ロンギヌスの排除結界の発動が遅ければ皆殺しになっていただろう。

次は勝つ。愛する妻と娘のためにも。そう誓う君は出会った。
泡を食って近くの居酒屋から飛び出してきた、1人の男と。

PC4
推奨クラス :ディフェンダー/落し子
コネクション:ルイズ

君は異世界を渡り歩き様々な宝物を収集する、トレジャーハンター組織の一員である。
と言っても入社したのは最近で実績はほぼ0。このままでは再び首になるかも。そう感じた君はこの世界へとやってきた。
ごく最近、何故か強力な結界が弱まって、侵入が可能になった、未知の世界。
意外にも人間の住む世界にそっくりだったこの世界で君は迷走し…異世界人OKの居酒屋で愚痴をこぼしていた。
この世界で知り合った、本気で転職を考える若者と妙にウマの合う店主に慰められながら酒を飲んでいた君は外から聞こえてきた声を聞いて吹き出した。
そう、それは…君にとって非常に聞きなれた叫び声だったのだから。

138 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 22:34:13 ID:SXR2KY6M
何とのクロスだろう

139 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 22:55:43 ID:jsaXofWv
>>137
二足歩行のピンクのうさぎ


やべぇ……


リストラされて衰弱した◎VAうさぎがケツ振って歩くの見て
世界の運命背負うのを確信したと想像して
PC2の人生のあまりの切なさに泣いた

【馬鹿は思わず脳内イメージを口走った!】

140 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 03:24:45 ID:U2rcNy3H
GMが天、クラウザーさんはかわたな、ジャギ様は王子、カミュはきくたけ、社長は社長だな。

141 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 08:26:50 ID:dSECNc/G
>本気で転職を考える若者と妙にウマの合う店主

柊と居酒屋ろんぎぬすで女将やってるシルヴァか

142 名前:137:2008/11/16(日) 09:00:10 ID:Nu5A44G1
本日PC4がえらいことになっていた件について

143 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 09:26:01 ID:5ONUxOzl
というか、紫がPC1という点の方に疑問が。

そして、このPC1〜4がミニスカでポーズ決めてるところを想像して絶望した。

144 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 09:34:41 ID:iixhl6dP
ていうかクロス先がさっぱり分からん

145 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 10:01:59 ID:aDIoKcBm
女児向けという建前の日曜朝のアニメかしら

146 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 12:42:41 ID:X86oyZux
ああ、PC4ブンビーさんか…ってPCかよ!?

147 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 20:14:30 ID:iixhl6dP
プリキュア5でいいのか? いいんだな?
プリキュアで保管しちゃうぞこんちくしょう。

148 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 20:22:21 ID:g2SXROXG
ピンクのウサギという時点でマイメロディだと思ってた自分が居るw

149 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 20:42:37 ID:iixhl6dP
今日のマイメロは赤かったじょー?

150 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 18:16:21 ID:KgfiiSpL
>>137

PC1 プリキュアの誰か?
PC2 不明 魔法少女系で神社の子っていたっけ?
PC3 ナイトメア
PC4 ブンビーさん(プリキュア5)

現時点の情報だとPC1とPC2がよくわからないなぁ

151 名前:150:2008/11/18(火) 18:18:57 ID:KgfiiSpL
神社の娘の変身ヒロインって、
レイちゃん(セラムン)がいたなぁ、そういえば

152 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 19:27:52 ID:gvVMf+4Z
2はてっきり赤羽神社で世話になってるエリスだと思ってたんだが…

153 名前:150:2008/11/18(火) 19:34:30 ID:KgfiiSpL
>>152
ああ、エリスがいましたね!
そっちの可能性が高いですね。

154 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 19:53:59 ID:olihuICX
>>137
保管庫の中の人のためにも、どんな作品とのクロスなのか教えて欲しい。

155 名前:137:2008/11/18(火) 20:10:32 ID:CPwiq8rv
Yes!プリキュア5Go!Go!です。

156 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 20:46:29 ID:af9dyshp
>>150
PC1は「人間の世界と君の故郷」という表現からして、現プリキュアの6人目
ローズことミルクでしょう。

157 名前:150:2008/11/18(火) 21:53:58 ID:KgfiiSpL
>>137

情報を総合すると

PC1 ミルク(プリキュア5)
PC2 エリス
PC3 ナイトメア(鈴木太郎氏の方)
PC4 ブンビーさん(プリキュア5)

でファイナルアンサーかな?

158 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/19(水) 09:19:18 ID:9C9Flp3y
ダブルナイトメアか!w

159 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/19(水) 10:24:14 ID:gRZE4wOB
そういえばプリキュアにも檜山声のが居なかったっけ

160 名前:150:2008/11/20(木) 09:29:47 ID:K6ooos72
>>158
すると、ナイトメアがブンビーさんに
「今夜はお前と俺とでダブルナイトメアだな」
と渋く告げるんですねw


161 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 14:08:14 ID:UzSqLFgJ
渋い……か?

162 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 14:10:25 ID:P62WGLKJ
絵を見なければ渋いんじゃないだろうか

163 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 20:55:27 ID:iRnpW6aj
エクソダス二巻読んだ。

……ちょっくらゆにまほ最終話見てくるよ

164 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 21:14:52 ID:Gh0hvhh4
平和な時間は短いんだよねぇ…>エクソダス2巻

165 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 12:25:07 ID:MnVyDMT3
           ∧V |  l∨ , -―- 、 \
         -―-、V|  lV /。       \ \
        /     Vl l∧l 0         ', ∧      保 管
         /      l l ! l          l/ニハ
       , 0     l丶l|         l/ ハ      ●闇祓う光明 #05
       |         l l |          l  ∧     ●だいすきなうた〜Project S.D. II〜 #03
       l       l   l        ,ィ / / ∧     ●Yes! プリキュア5 >137
         l       l   l     _// ./ / / ∧
       ヽ  、__  l   l   /o //__/ / /  \
         \\_o\l  l   ´ ̄ /∠ _//    \
          \__ ̄_」 丶-‐ '´ 、    \  l   \
            lーt-、   __/ \     } |
            | |\\./ ___/} |    /   l
            l \l\ 丶 二二ン  l  /   l
            \ \ \  -―   l/     l
            /|  ̄  l___/ |      l
           /      l\     l      l     /
     /\   /     l     \\    l      l    /

本日のAAはブンビーさんでした。


166 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 15:53:28 ID:YHer9D2r
ナイトウィザードとセブン=フォートレスとのクロスは、クロスと言っていいのだろうか?

出来れば卓ゲ板の作品スレの方がいいんだろうけど、向こうは規制が厳しいし。

こっちの投稿規制は「1レス 最大60行」「連続5回投稿で、さるさん」で、いいのかな?


167 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 16:16:17 ID:1BjT7CQm
元々繋がってる作品同士だからなぁ

まぁ、例えるなら某型月の某姫と某運命みたいな関係だし、
クロスには違いないんじゃない?

168 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 16:59:07 ID:TMLhuomq
だがフレイスやシェローティアとのクロスは既にクロスじゃない気がする。
NW陣が出現、活躍している場所とのクロスは卓ゲ作品だろう

169 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 17:46:55 ID:3XWIMDPh
>>166
テンプレ読む限り片方がナイトウィザードならクロス先が何でも構わないっぽいからいいんじゃなかろうか
ということで(屮゜Д゜)屮 カモーン

170 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 17:50:56 ID:wWpXjovr
>>169
んー?
嘘予告のフレイスクロスはあんまり歓迎されてなかったような……<ここへの投下

171 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 18:10:52 ID:aALk02tz
10数レス荒れたら避ける事推奨
2,3レスの微妙な反応は誤差のうち、という俺主観。

決めるのは作者

172 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 18:26:30 ID:3XWIMDPh
>170
でも今のローカルルールだと投下前にS=Fとのコラボだから嫌なら読むなって一言書いとけばOKだからしかたない
てか本音をいえば無責任かもしれないが面白いものが読めるなら細かいことはどうでもいいんだよね
ゴールデンルールのあるゲーム大好きだし

173 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 18:44:10 ID:OZ+Bokbc
ちなみに、適当にエロくみえなくもない描写を足して地下に投下するという方法もある

174 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 18:53:26 ID:MnVyDMT3
TRPG同士のクロスなら、卓ゲ板の作品スレの方が反応は良さそうな気もしないではない

175 名前:137 ◆1IXdmMAgHc :2008/11/22(土) 20:57:36 ID:eDC14uWj
書いてたら色々とハンドアウトと矛盾が出まくった件w

176 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 21:36:25 ID:O73QYd1J
来年に始まるテニプリの新章ってついにファー・ジ・アース編らしいな。

177 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 21:56:58 ID:mY2POVt/
>>175
つ【なお、本編の内容は予告なく変更される場合があります。予め御了承下さい】

178 名前: ◆1IXdmMAgHc :2008/11/23(日) 08:55:53 ID:4M1Cg4MY
と、言うわけで9時から投下します。

179 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/11/23(日) 09:02:09 ID:4M1Cg4MY
少女は走っていた。
もうどれだけ走っただろうか…
思い出せない。

目に飛び込んでくる風景が目まぐるしく変わる。
かつて、子供だった頃に見た、平和だった頃の王国。
荒れ果てたけれど、みんなの力でかつての姿を取り戻そうとしている王国。
そして、今少女が暮らす、人間の世界、大切な人たちが住む街の姿。
だが、今その風景は少女にとって一種異様なものに映っていた。なぜならば。

はぁ、はぁ、はぁ…

走り続け、荒くなった呼吸と足音だけが辺りに響く…他の音は聞こえてこない。何一つ。
誰もいない。
動くものは少女以外何一つ無い、道だけが延々と続く、街。

「ココさま〜!ナッツさま〜!」

耐えきれなくなって少女は叫んだ。自分が仕える、パルミエ王国の2人の王子の名を。
「かれん、こまち、うらら、りん、シロップ〜!」
それがきっかけとなって流れるように脳裏をよぎるものたちの名を叫ぶ。
ひしひしと心を侵食していく何かを振り払うように。
だが、返事は無い。少女の叫びだけがゆっくりと辺りに広がり、消えていく。
とうとう少女は立ち止まった。
「のぞみ…」
とうとう最後に浮かんだ、その名前を呼んだ瞬間だった。
辺りが黒く染まる。地面から湧きあがった闇が這い上がるように町並みを包んでいく。
闇に飲まれたものが溶けるように闇と同化して消滅していく。
まるで黒い絵の具で塗りつぶした絵のように辺りは黒一色に、染まった。
そして、闇に閉ざされた空間で。
「みんな…どこなのよ…」
少女の言葉は誰にも届かず、消えていった…

「…ミル!?」
朝、と言ってもいまだ太陽の昇らぬ暗い時間。
ミルクは跳ね起きた。
心臓がどきどき痛いほどに跳ねている。全身、ひどい汗だ。
思わず辺りを見渡す。間違いない。ここはナッツハウスの自分の部屋だ。
「…嫌な夢を見たミル」
それが夢だったことを確認するようにミルクは1人呟く。
そして深呼吸。ようやく少し落ち着いた。
「ちょっと早いけど、今日はもう起きるミル」
正直、寝なおす気にはなれない。ミルクは寝床から這い出すと。

PON!

人間、美々野くるみの姿へと変身する。
「さてと…」
まだ寝ているであろう2人を起こさないように静かに部屋を出る。
「せっかく早起きしたんだし、外の掃除でもしておくとしますか」
爽やかな朝の空気でも吸えばこの嫌な感じもきっと消える。
くるみはそう結論し、箒を持って外へと出た。


180 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/11/23(日) 09:07:16 ID:4M1Cg4MY


(…ちょっと寒いけど、逆にそれが有難いわね)
箒で店の前のゴミを集めながら、くるみは内心思う。
秋の早朝の澄み切った空気がくるみの眠気を完全に振り払う。
太陽の昇り切っていない薄紫の空には雲ひとつ浮いていない。今日は晴れるだろう。
(掃除が終わったら、ちょっとこの辺を散歩でもしようかしら)
最悪まで落ち込んでいた気分がちょっとだけ上向いて来た。
良い感じだ。この調子でいけば2人が起き出す頃にはいつもの調子を取り戻せる。
そんなことを考えていたくるみの顔が緊張に包まれる。
「何か出た!?」
くるみとナッツハウスの周辺一帯が赤く染まる。
「流石は慣れてるわね」
その異常な状況でも慌てず騒がず、ただ静かに辺りを観察するくるみに、声が掛けられる。
「エターナル!…なの?」
その声がした方に向きなおり、そこにいるであろう敵の名を呼んだくるみが眉をひそめる。なぜならば。
「違うわ」
その声の持ち主…それはくるみたちと同じくらい年齢の、銀髪の少女だったのだから。
「あたしの名は、ベール=ゼファー。蠅の女王と人は呼ぶわ」
殺気すら放っているくるみすら何でも無いことのように、紅い月を背負って少女…ベルはその名を告げる。
「そう…それで、その蠅の女王様が私になんの用なの?」
冷汗が背中を流れるのを感じながら、くるみは努めて冷静にベルに問い返す。
油断はできない。コイツの前では一瞬でも気を抜いてはいけない。そう、くるみは感じ取っていた。
「ああ、ちょっとあたしと一緒に来てほしいのよ」
くるみの方を見て、わずかに微笑みながら、ベルは単刀直入に言う。
「…嫌だと言ったら?」
「そうね。その場合は…力の差って奴を思い知ってもらうことになるわね」
くるみの問いに答えた瞬間。ベルから放たれる威圧感が爆発的に高まる。
「…っ!?」
それを感じ取ったくるみが懐からパレットを取り出す。
「はやくしてね。あたし、待つのって嫌いだから」
「言われなくても!」

そう言うと同時にくるみはパレットに薔薇の紋章のボタンを押し高らかに叫ぶ!

「スカイローズ…トランスレイト!」

少女がそう叫んだ瞬間、パレットから青いバラの花びらが舞う。その花びらはくるみを包み、彼女の衣装へと変わっていく。
白と紫を基調としたドレス。所々に刻まれた青いバラを模したアクセサリー。そして青いバラをあしらったティアラ。
一見するとどこぞの姫のようなドレス姿。だがこれこそが彼女の、伝説の戦士の戦闘装束。
「青いバラは秘密の印…」
変身を終え、ゆっくりと名乗りを上げる。目の前の少女に見せつけるように。
「ミルキィローズ!」


181 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/11/23(日) 09:10:27 ID:4M1Cg4MY
「ふふん。ようやく準備完了ってこと…ね!」
最後まで変身したのを確認した瞬間、ベルの姿が掻き消える。
「くっ!?」
対するくるみ…ローズはとっさに腕をクロスさせ、一瞬で間合いをつめたベルの一撃を受け止める。

ズザザザザッ!

無造作な、だが少女とは思えぬ速度と怪力で繰り出された一撃にローズは後退する。
「やるわねっ!」
だがローズの方も負けてはいない。下がった分の間合いを一蹴りで詰めてベルに迫る。
「馬鹿ね!そっちから飛び込んでくるなんて!」
不用意に飛び込んできたくるみにベルが腕を突き出す。
「甘い!」
それを少女とは思えぬ卓越した体術でもって見切り、そのままベルの懐へ飛び込む。
「はぁ!」
そのまま密着し、ゼロ距離からベルの鳩尾へと体重を乗せた体当たりを叩きこむ!
「くぅ!?」
ダッシュの勢いを加えたカウンター。ベルの軽い体重では耐えきることができない。
ベルは吹っ飛ばされた。
「…痛った〜」
空中で強引に体勢を立て直し、ベルはローズから少し離れた所に着地する。
「ちょっとびっくりしたわ。そんな格好してるからてっきり魔法系かと思ってたら、龍使い並みの体術じゃない」
ローズの会心の攻撃を受けてなお、ベルはちょっと驚いただけで余裕を崩さない。
(やっぱりこの子…強い!)
対するローズには余裕はまったくない。むしろ危機感は先ほどより更に強まった。
少し戦いあっただけで分かった。目の前の少女は…恐らく自分が今まで戦ってきた誰よりも、強い。
「でも、あたしもそんなに暇じゃないし、遊びはもう終わりね」
そう宣言すると同時にベルは魔法を起動させる。
「《ディバイン・コロナ》!」
ベルの魔力で生み出された強力無比な破壊の光がローズの方へと飛んでくる。
「きゃああああああああああああ!」
文字通りの意味で光速で迫るそれを、ローズはかわすことが出来ない。
ガード体勢だけは取ったが、それでもダメージは免れない。

ガン!ガン!ゴン!グシャア!

道路で数回バウンドし、とどめとばかりに街路樹にぶち当たってようやく止まる。
「はぁはぁはぁ…」
(駄目、強すぎる…あたし1人じゃあ…)
せめて仲間が一緒ならば少しは違っていたかも知れない。だが、あいにく今は1人。
目の前の少女は1人で戦うには明らかに荷が重い相手だった。
「へえ。流石に丈夫ね。あたしの魔法で倒れないなんて」
ボロボロになったローズを見て、ベルが面白そうに言う。
「でももういいわ。実力の差は分かったでしょ?大人しくついてきなさい。そうすれば、これ以上は痛くしないどいてあげるわよ?」
「誰があんたなんかに!」
ベルの提案をローズは即座に却下し、そして、彼女の武器を取り出す。
彼女が選んだ手は、自らの最大必殺での全力攻撃。
他の手は思いつかなかった。
「邪悪な闇を包み込む…バラの吹雪を咲かせましょう」
目の前の少女へと向けて、構えを取る。
「へえ…まだやるの?」
それをベルはあえて見逃す。どうせなら、ローズの実力を全て見極めるつもりなのだろう。
「ミルキィローズ…ブリザード!」
そして、ローズの最大の必殺技が発動する!
青いバラの花びらがベルを取り囲み、そこへ閉じ込めるように覆っていく。
ベルを中心として生まれたそれは…大輪の青いバラ。
青いバラが咲いた次の瞬間、それは砕け散る。中心に、すさまじい力の渦を巻き起こしながら!
「はぁはぁ…やった…の?」


182 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/11/23(日) 09:13:44 ID:4M1Cg4MY
ミルキィローズブリザード。それはローズの最大の必殺技。これでダメなら、もう打つ手は無い。
「1ついいことを教えてあげる」
だが、無情にもその声はローズの真後ろから聞こえた。
「!?」
その声に振り向いたローズが、最後に見たもの。

「大技を撃つときは、相手を足止めして、逃げられないようにしてから。覚えておきなさい」
それは笑顔で。
「じゃあ、またね。精々頑張るといいわ」
強大な魔力を溜める。
「…あの夢を現実にしたくないのなら、ね」
銀色の髪の少女の姿だった。

その直後、背中に強烈な熱を感じてローズの意識は暗転した。


183 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/11/23(日) 09:15:27 ID:4M1Cg4MY


裏界の大公の居城。
「ただいま、リオン」
自らの城の応接間に、虚空から溶け出すようにベルが現れ、部屋にいる少女に声をかける。
「お帰りなさい。早かったですね。大魔王ベル」
その豪華ながらも調和のとれた部屋で1人黙々と本を読んでいた少女…リオン=グンタが顔を上げ、いつもの微笑みを浮かべてベルに返事をかえした。
「ええ、思ったよりも歯ごたえが無い相手でね。楽勝だったわ。力はベテランウィザード並の癖に経験が伴ってなくて力が使いこなせてないんだもの。
 正直がっかり。もうちょっと楽しませてくれるかと思ったんだけど」
やれやれとばかりに肩をすくめ先ほど戦った少女を酷評する。
「ま、とにかく、あんたの言う通り、あの子はもう1人のところに捨てて来たわよ。あっちもすぐに気づいたみたいだし、大丈夫でしょ…ところで」
一通り報告を終え、ベルはずずいっとリオンに寄る。
「こんどこそその予言に間違いは無いでしょうね?」
前に一度預言書の記述ミスのせいで色々と苦い思いをしたベルが念を押す。
「大丈夫です。間違いありません」
リオンはそれに答えるように大きく頷き、その手に握られた書物…ありとあらゆる秘密の記された秘密の本をめくる。
「修復が完全ではないので読めないところも多いのは確かですが」
元よりこの本のことは完璧に理解している。リオンはすぐに目的の記述を見つける。
「間違いありません。冥魔“たゆたう闇”を倒しうるのはファー・ジ・アースと異世界、2つの世界の青いバラの加護を持つ2人の“青き薔薇の巫女”のみ。
 そのことは、この書物に書いてある通り」
「ま、一応あんたの言うことだから信じては上げるわ。それにマジだったら…」
「はい。青き薔薇の巫女が倒さなければ、たゆたう闇はファー・ジ・アースを飲み込む、そう、書物には記されています」
「…それはやっぱり許せないわ。だってあそこは」
リオンの話を聞きながら、ベルはほほ笑み。
「…あたしが滅ぼすって大昔から決まっているんだから」
傲慢に宣言した。

「…ところでベル?」
「何よ?」
格好よくベルが決めたところでリオンがベルに問いかける。
「監視はつけなくて良かったのですか?」
「ふふん。その辺も抜かりは無いわ」
リオンの指摘にベルはちょっぴり得意げに薄い胸を張る。
「ちゃあんと悪魔の蠅を…あれ?」
そこまで言ったところでベルは気づいた。気絶させた直後、少女の懐に隠した、自らの分身の反応が、無い。
「変ね?このあたしが魔法で偽装した特別製だから、たとえアンゼロットでも見つけるのに手間取るはずなのに?」
「…ベル」
首をかしげるベルに、リオンは教え諭すように言う。
「何よ?」
「世界結界の無いあの世界において、ベルの力は制限されず、ベルはその力を存分に震えます」
「そうね、魔法の切れもファー・ジ・アースとは比べ物にならなかったわね」
「裏界でも屈指の実力者であるベルの魔法、となればその威力はとてつもないもの。並みのウィザードなら1度だって耐えることは出来ないでしょう」
「そうね。当然だわ。あたしの魔法だもの」
「…それで、その魔法を昏倒寸前の状態で受けて、生死判定に成功する確率は?」
「…」
「…」
「…あ''」
リオンの言いたいことに気づいたベルが、間の抜けた声を上げた。

…後にベルは裏界の数少ない友人であるアゼルに語ったと言う。
「…ベル、私はあの娘をもう1人のところへ連れて行くようにと言ったのです。誰が生死判定に失敗するほどボコれと言いましたか?」
そう、微笑みながら言うリオンの、目が全然笑ってない笑顔は、とてつもなく怖かった、と。

184 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/11/23(日) 09:16:12 ID:4M1Cg4MY
今日はここまで

>>177
OK!
ってなわけでハンドアウトと色々食い違いが出る可能性があります。ご注意ください。

185 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 13:41:43 ID:lrlKtz0T
リオン早く《蘇生の光》かけに行ってー

186 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 13:45:53 ID:6FJm0rRb
乙っしたー
そーかエリスちゃんも青薔薇さまなのか。

>>185
案ずるな。悪魔の蠅の効果で生死判定は成功しておる!
だから反応が無くなったわけで。むしろ回復魔法を掛けに行ってあげて、だなこの場合。

187 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 13:59:28 ID:eY+kMtge
           ,へ'´ ̄ ̄ ̄ へ` ヽ.
             / /   ヽ ヽ   ヽ ヽ
         //, '/ {  リ 人ヽハ.  } i
         〃 {_{ノ ヽ ノ ノ }ヽ`|  l| |    ・
         li ィハリ ノ  ` `ヽ リ yxハ     ・
         ヘヾ l ○    ○ 〈. 〈x)从    ・,,
          く≧〉ヘ⊃ ▽ ⊂⊃, 〉 〉≦〕、ゝ  あ
        从〈 〈/⌒l,、 __, イ_〈 イ 从ヽ   
           "/  / ≫≪ / "ヽ、

つまりこうですね、分かりました。

188 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 15:50:45 ID:2MDIkTDu
あ、どこかで見たようなトリだと思ったら赤毛さんか!

189 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 15:52:59 ID:WAs8S7Qj
乙です

薔薇と言われても王子とか某上月兄とかしか思い浮かばないのは、別に正常ですよね?

190 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 21:55:41 ID:dJX/Jsid
>189
●-●-つ < 私、巫女っ!?

191 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 23:44:46 ID:t9qF1NrM
『(秘密をぶちまけられたストレス的要因で)臓物を、ぶちまけなさい』
とか言いだしかねんからなぁ、本当に怒ったリオンは

192 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/24(月) 00:12:29 ID:8jtvqF7+
死因は胃潰瘍か……

193 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/24(月) 00:51:35 ID:g0n6jggJ
そういや、夜桜の主人公の声ってふぃあ通出たことある梶くんなんだよな。

……キャラがTRPGやってるイメージが浮かんだ。

194 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 23:24:25 ID:xG9Zib6j
最近過疎ってるな

195 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 00:35:19 ID:RDC20OsZ
もともと浮き沈みが激しいところだしなぁ……
今は作品スレのほうが繁盛してるよね

196 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 00:42:34 ID:lJJxvqD3
定期的に書いてる人も被ってるとこあるしなぁ<作品スレ
まぁこっちよりレス反る率低いから色々アレだけどさ。書き手かわいそう。


よその話はともかく。
んじゃあ、10月23日付けで一周年だし、これまでの作品についてでも振り返ってみるかい?

197 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 00:47:07 ID:vOUqH7o8
某召喚スレは大変なことになってることを思えば平和だと思っていいのだろうか?

198 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 00:52:49 ID:7eZHFcJc
平和なのは良いことだ

>196
ネギまちびらぎのヤツが好きだな。王道の展開だが丁寧で読んでいて気持ちいい。

199 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 01:14:55 ID:/9z18xx8
ルイズスレもいつも決まった人物しか投下してないんだぜ
前にそこで書いていたからわかる

200 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 01:49:54 ID:OMeb1adQ
あっちはなぁ、コテ同士で感想レスしあっているから
なんか支援レス以外しにくいんだよなぁ。

さすがにシリーズ完結したら出来るだけ感想を書くようにはしているけど

201 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 09:31:57 ID:lJJxvqD3
武装錬金とちびらぎネギまと終わらない〜が好きだ

錬金はホントに丁寧で毎回わくわくするし、ちびネギは展開が楽しい。終わらない〜も予想超えた展開してくれるから好きだな。
特に終わらない〜はこのスレ初の長編だし、思い出深い。

202 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 16:44:46 ID:RqTx1UUx
クロスリレーが凄かった。
あのいつの間にか始まって皆巻き込まれていくような感じがたまらん。
今でもたまに当時のログ読んだりしてる。


203 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 16:57:56 ID:ZZoNQHA/
俺もリレーは度々読み返してるな
あの面白さはテンション最高時の卓のセッション以上だった

あと、アガトラと赤毛の悪魔と居酒屋ろんぎぬすが個人的にお気に入り

204 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 17:28:06 ID:HKA+VLhe
俺はちびらぎネギまとアガトラかな?

前者は展開の面白さもそうだけど、柊が普通のナイトウィザードのキャラとして柊蓮司してるのが凄い良かった。俺の主観では一番王子柊に近いと思ってるし……続きを今でも待ってるんだぜ!

後者については……ブレイクと加護のシーンが大好きだから、具体的には実際のセッションで真似するぐらいw

205 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 22:31:03 ID:b59g2ed3
俺は隙あらば
吼えペン×ナイトウィザードのクロスという
悪魔合体を試みようとしているのだが

吼えペンの最終回がアレだったでなぁ…

「スタジオのなかで、漫画家に勝てると思っているのかぁ!」と炎尾に投げ飛ばされるベルとか考えたのだが。

206 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 23:48:21 ID:Q6M01v8I
リレーはダンジョン編が完結できなかったのが残念だったな。

最後の階まで行ったらグレーターバカ(まよキンモンスター・バカの上位種。つまり
中の人がヤスティとブロウベルと大佐)が出てきてやっと倒したら、
D&Dのモルデンカイネンがラスボスとして出てきて「レベルが10分の一になる魔法」
とかかけてきて「うん?この私専用のサプリに書いてあるよ?」とか厨ネタをかましてくる。
それも倒したら「見事なもんだ。この30年で私が紡ぎあげた幻想の集大成であるこの
ダンジョンを踏破するとは。どうだい、楽しかったかい?」「それじゃあ、名残惜しいが
これでひとまずお別れだ。向うでも訪ねてきてくれよ? ああ、シナリオを作る時間が
いるから60年は来ないでくれ。今回の10倍きついのを用意しとくから」って言って
G・ガイギャックスが扉を開けて去っていく、ってラストを考えてたけど、不謹慎だから
やめろ、って言われて止めた。

207 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 23:49:33 ID:Rtu7oCfj
フルメタ「巨獣の咆哮」を今か今かと街構え続けて幾スレ相
勿論、まだまだ待ち続ける所存であります

208 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 00:48:22 ID:A8DhP83H
同じく俺は仮面舞踏会と折れた魔剣を待っている

……そういや、あかりんがメインのSSってあんまりないな

209 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 00:59:19 ID:CB38VS0S
ダウナー系ヒロインだからね。
よほど内面描写がうまいか、あるいは一発ネタ的な短編でもない限り
彼女をメインに話を膨らませていくのは難しいだろう。

210 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 02:05:43 ID:P+G5WlbM
なんか電波きたが・・・

211 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 06:40:17 ID:D8u17BUi
クリスマスでリレーネタが振ってきた気の早い俺

212 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 08:35:38 ID:Ve7+vCDD
クリスマス>しっと団>そのしっとエネルギィに目をつけてしっと団を落とし子にしてみるルーさまと連想して
=ボンテージファッションに身を包んだしっとエンプレス:ルー=サイファーさま爆誕!というイメージ画像が頭に浮かんだ

…・あるぇー?
ていうかルーさまが担当してるのは傲慢じゃねーか
しっとだとベルさまの担当で…ボンテージロリータ?うーわそれはそれで凄く見たいビジュアルだ…。

213 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 11:49:58 ID:7JEilCoR
しっと団のプラーナをアゼルが吸収したら
柊力よりもひどい拒絶反応起こすだろうなw

ついでに言えばしっと団のプラーナ量は勇者並だと思う

214 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 12:03:01 ID:MEpBRmYw
クリスマスはもっと跳ね上がるんだろうな、プラーナw

215 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 12:07:50 ID:A8DhP83H
いや、しっと団はきっとプラーナとは別に
柊力のいとこのはとこにあたるしっと力を秘めて……ってまんまだなww

216 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 12:53:30 ID:A3AN7f+9
桃月町の魔法使いが好きな俺異端。

しっと系はgdgdで終わるの前提だからリレーには向かないと思う。ネタとしては大好物だが。

217 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 16:20:04 ID:a40AYolF
>213
あんなもん食った日には、丸一日トイレに籠もってえれえれと吐いてしまいそうだな。
顔面蒼白半泣きで、何があったと驚くベルに、
「変な男の人達の、臭くてどろどろしたのをたくさん呑んじゃった……」とか説明し、あらぬ誤解を招いたり。

218 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 19:05:32 ID:u4KdB6Da
ふぅ……

219 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 19:11:30 ID:TrJR8/cB
クリスマスを前に暴れまわるしっと団。アベックに対して容赦ない攻撃を加える彼らに立ち向かうべく、アンゼロットはウィザードの部隊を編成し、送りこむ。

彼女のモットーはただ1つ…毒をもって毒を制す!

しっとマスク1号「嫉妬の心は父心!カップル=すべて撲滅!それが我がしっと団の心意気!」
しっと団員1  「げへへへねーちゃんよおいちゃついてんじゃねえよてめえらなんかぶべら!?」
しっと団員2  「ああ、その1がやられた!?」
しっとマスク1号「ぬう何奴!?」

嫉妬キャンサー 「不死鳥のごとく燃え、何度でも返り咲く嫉妬の炎!嫉妬キャンサー!」
嫉妬サーヴァント「あの方に仕え続けて500年!ポッと出の柊蓮司などには渡さん!嫉妬サーヴァント!」
嫉妬ツインテール「幼馴染がなんぼのもんじゃい!戦場の絆はそんなものより強いのよ!嫉妬ツインテール!」
嫉妬ジェミニ   「妹より優れた姉などいねえ!!邪魔する奴らは焼き滅ぼしちゃえ☆嫉妬ジェミニ!」

そして…

嫉妬メテオ「何度フラグを折られても蘇る。それが大いなる幼馴染ハワー!嫉妬メテオ!」

「「「「「我らウィザード部隊…嫉妬5!!!!!!!!!」」」」」

「「「「「報酬(気になるあの子、あいつと丸1日デート)のために、貴様らにはここで退場してもらう!」」」」」

(つづかない)

220 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 19:48:46 ID:zAZFvVzK
しっと団の制服はタートルズのかパッパラ隊かで揉めそうだ

221 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 21:10:57 ID:Le9N/2k1
>>219
あれ…ツイン…だれ?

222 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 22:20:25 ID:8CEFa/sV
>>219
ツインって……麒麟か?

223 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 22:25:08 ID:Le9N/2k1
なるほど…ツインだったけアレ

224 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 23:12:14 ID:A3AN7f+9
麒麟にツインテのイメージはなかったな、なぜか。

そんなことを思い出させてくれた>>219に乾杯

225 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 23:12:29 ID:Xy8uZhBf
ラース=フェリアとかにもいそうだな嫉妬5w
ただほとんどミスターヒロインのキャラが占めてそうだが。

226 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 23:14:42 ID:D8u17BUi
>225
カリンが筆頭だ
すっげー悲惨だし

227 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 23:22:51 ID:pbbSBO3U
嫉妬ハワー吹いたw

228 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/28(金) 03:32:10 ID:yfttz8zH
そこへ現れる我らが柊蓮司

柊「お前ら、いい加減にしやがれ!」

しっとマスク2号「!1号、あの男!」
しっとマスク1号「うむ、我らが宿敵、水島と同じオーラを感じる」
しっとマスク2号「ならばやはり…」
しっとマスク1号「あの男からゴートゥヘルしてもらうしかあるまい!」
1号・2号「「いくぞ…」」

1・2・蟹・従「「「「死ねい柊蓮司!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」
柊「ちょっと待て!なんでお前らまで一緒に襲ってくる!?」

229 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/28(金) 19:20:21 ID:nOEO/Rzn
嫉妬ゲイザー「17年間蝶よ花よと育ててきた娘を奪われた!絶望した!世界を滅ぼしてやる!嫉妬ゲイザー!」
あとは紅巫女でいつの間にかフェードアウトさせられた嫉妬キリカとか
「目の前でラブレターを破られた!あんな妙な生物のどこがいいのよ!」黒皇子モブとか

230 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/28(金) 19:51:46 ID:5kHVWJCW
ゲイザーは「17年間育ててきた"ことにした"娘」だからダウトだろう。

231 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/28(金) 20:00:53 ID:LFuCf4pO
シャイマールメーカーってネタがあったなあw

232 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/28(金) 20:14:52 ID:njouBxe0
17年間どんな娘がいいか構想し続けてきたのかも知れん

233 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/28(金) 20:30:12 ID:ThZDmtQk
それは妄想ではないのか…パッパラ隊に安藤みつるという隊員がいてな?

234 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/28(金) 20:43:50 ID:OLG1XEPn
おや・・・>>219は仮に嫉妬5が任務に成功しても報酬が・・・

柊 ← 隕 石 ← 蟹

になるので内部分裂するな、これはw

235 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 08:08:56 ID:RH/nmkbU
>>234さんにツッコみを先越されてしまった。読んでまず同じこと思いましたよvv

っていうか、どうしてしっと団の二人まで柊の名前を………?(笑)

236 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 09:53:07 ID:aFX21T5m
>>235
それはもちろん柊だから


237 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 12:46:13 ID:OmmnXi3W
どうせまた危険人物としてブラックリストとかにフルネームで載ったんだろう
柊蓮司にはよくあること

238 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 13:46:13 ID:RH/nmkbU
>>236さん >>237さん
何かそれで納得できてしまう柊って………(笑)

話変わりますが、前自分で振ったネタ差し置いて、脳内にえらい前のゲームとのクロスネタが………ハードPS時代の(汗)
結構賛否両論なゲームだったし、ネタとしても微妙なんで、書こうか書くまいか悩み中なんですが………
宝石が心臓(?)の種族とか、犬の獣人の姉弟とか、幼馴染四人の話とかがごっちゃになってるゲームなんですがね。

239 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 13:49:15 ID:uZi+sfkb
しっと団のことだからきっと『モテ男リスト』とかその類のものがあるに違いない。
んで、古今東西のモテル男の名前がずらりと。具体的にはエロゲやギャルゲの主人公たちの名前がw。
そしてそこに特級とかランクSSとかそんな扱いで柊も載っているんだよ。

フラグを立てるだけ立てておきながらスルーする奴って最上級危険人物にカウントされるよなぁ…w

240 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 15:07:10 ID:IR6IQmqi
LOM!LOM!

241 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 15:19:19 ID:uPAsI75l
落とし神や幻想殺し、戯言使いとかはランク上だな。

242 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 15:57:11 ID:rYuERjVC
いや待てw落とし神はなんか違う気がするぞwww

243 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 16:58:47 ID:aFX21T5m
>>238
攻撃力808の両手斧を作った身としては期待している

244 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 17:15:00 ID:vr+BBRRa
>>238
躊躇うことはないさー!

245 名前:238:2008/11/29(土) 17:17:25 ID:RH/nmkbU
>>240さん
あ、わかってくれる人がいたvv

>>244さん
ち、力強いお言葉が………vv

………うーん………GHとの話よりはまだ書きやすそうなんですが………
今考えているネタって果たしてクロスなのか………自信が………(汗) む、寧ろパラレル?
ぶっちゃけ、柊蓮司がLOMの主人公ポジに据えられたら、的なネタなんですが。
当然ストーリーはほぼLOMの話に被っちゃうし………これはありなのか、と………(汗)

246 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 17:45:30 ID:iqvk+rcu
>>243
両手斧で808は低くないか?

247 名前:238:2008/11/29(土) 17:57:03 ID:RH/nmkbU
>>243さんのお言葉を見逃しスルーしてしまっていた………すみません ORL
自分はあんま武器製作には凝らなかった口なんで………父のデータから買ってたしなぁ………

今OP書き始めてますけど、>>245で述べたような感じでも大丈夫なんでしょうか………?(汗)

248 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 19:07:28 ID:OmmnXi3W
そういや卓ゲ出張所な特質からして、ここって再構成少ないよな、というか初めてかな?
別に、再構成というジャンルが二次に存在する以上、問題ないと思う。

あと、ここの濃い連中は、何を言っても基本一人はわかってくれる人がいると考えていいと思う

249 名前:238:2008/11/29(土) 19:57:42 ID:RH/nmkbU
>>248さん
ありがとうございます。前例ないからどうなんだろうと思ってしまいまして(汗)

どうやら大丈夫そうなので………早ければ今晩中、遅くても明日中にOPパートを投下しまーすvv
………コテ、どうしようかな………(<そこか)

250 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/11/29(土) 20:16:34 ID:ix4UPNp7
8時半から投下します

251 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/11/29(土) 20:30:34 ID:ix4UPNp7

――青い薔薇に愛されし少女よ…

(これは…夢?)
それが夢であると心のどこかで理解しながら志宝エリスはゆっくりと目を開いた。
何も見えない。ただ眼に映るのは、ひたすらに、黒。
なにも無い、漆黒の空間その真ん中にエリスは立っていた。
――少女よ…
普通ではありえぬ、不思議な夢。普通の人間だったならわけも分からず困惑するだけだったかもしれない。
だが、エリスは落ち着いていた。かつての経験…宝玉をあつめていた頃の経験がエリスに次に取るべき行動を教える。
(とにかく、こういうときは…)
「誰、なんですか?」
エリスは闇に向かって声をかける。自らを呼ぶ声に対して。
――私か?私は…
闇が、澱む。

闇の澱みが人の形をとる。
それは、小柄な老人だった。古めかしい外套を羽織り、シルクハットをかぶった老人。
老人はその不機嫌そうな顔のまま、エリスに語り出す。
「私は…この闇の管理者。この永遠に続く絶望の闇と同化した、2つの意思の1つ」
「闇の管理者さん、ですか?」
「そうだ。かつて、この闇と同化する前の名は忘れてしまった。
 今は、ただ闇にただよう…思念の残滓とでも言ったところだな」
そう言って老人は自嘲する。そしてまた、不機嫌そうな無表情へと戻り、エリスを見据え、その言葉を口にする。
「…少女よ。頼みがある」
ぽつりと漏らした、その一言には、強い力が込められていた。そう、まるで彼女の知る、世界の守護者のように。
「頼み…」
「そうだ、少女よ。止めて欲しいのだ。この闇のもう1人の管理者を」
もう1人の管理者。その言葉を老人は苦虫を噛み潰すように言う。
「あの男は、この闇がただそこにあるものであることを捨てようとしている。闇を広げ、全てを闇に変えようとしているのだ」
闇に変える。その言葉の意味を飲み込んだエリスがハッと息を飲む。
「それって、まさか…」
「そう、少女よ。お前の住む世界はこのままいけば闇に包まれ、闇そのものであるこの世界と同じものとなるだろう。
 それは、かつて世界と共に生きる道を選んだお前にとっても本意では無いはず」
老人の言葉にエリスは顔を曇らせる。老人の言ったことに関しては、その通りだ。
今の世界が無くなってしまうのは嫌だ。それを止めるためならば例え戦うことになってもいい。
けれど…
「私には…もうその力が…」
エリスが悲しげにつぶやく。
シャイマールの消失とともに、エリスの力は失われた。存在の消滅こそ免れたものの、今のエリスにはイノセント並みの力しか無い。
世界を救うだけの力は、残っていなかった。

だが、老人はエリスの呟きに、無表情のまま、答える。
「案ずることは無い」
その老人の言葉と共に闇が、再び澱む。
「きゃっ!?」
闇はエリスの周り…左の手首へと集まり、形あるものへと変わる。
7つの板を繋げたような特徴的な形の…漆黒のブレスレット。
「これって…」
エリスが驚きに目を見開いた。
「それは、お前の知る“力”の姿を模した、この闇の一部。それはお前の忠実なる僕。お前が望めば、望んだとおりの力を与えるだろう。
 少女よ。その力を持って、世界へと漏れ出した闇を払い去ってくれ。あの男を倒し、たゆたう闇を再びあるべき姿へ」
老人の言葉と共に、エリスに急激に眠気が襲ってくる。
「頼むぞ。少女よ…青い薔薇に愛された、力の器よ…」
もう、目を開けていられない。エリスはゆっくりと目を閉じた…


252 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/11/29(土) 20:35:29 ID:ix4UPNp7


ふかふかの布団と青い畳。落ち着いた内装の和風の部屋。
エリスが再び目を開けたとき、エリスの目に映ったのは見慣れた赤羽神社の一室、エリスのために用意された部屋だった。
エリスはゆっくりと身を起こし、自らの左手を確認する。
「やっぱり…」
予想通り、そこには漆黒のブレスレット…あの戦いで失ったはずのアインオフソウルが巻かれていた。
「夢じゃ、なかったんだ…」
エリスは思わず身震いする。
あれが夢じゃなかったと言うことは、あそこで起こった出来事も事実であると言うこと。
すなわちエリスは再び力を手にし…戦わなければならなくなったと言うことなのだ。
「どうしよう…」
戦うのが怖くないと言えば、嘘になる。だけど、このまま黙って見過ごすわけには絶対にいかない。
「くれはさんと灯ちゃんに相談してみようかな…」
何とはなしに思いついたことを言いながら、これからのことを考えていたその時だった。

ジリリリリリッ!

「きゃ!?」
目覚まし時計の大きな音が部屋中に響き渡る。時刻は6時。いつもの起きる時間だ。
慌てて目覚まし時計を止めエリスは立ち上がった。
「そうだ。とりあえず、お掃除しなきゃ」
着替えて朝の日課である境内の掃除をするために。

「はわー。エリスちゃんどうしたの?なんか元気ないけど」
くれはが箒を動かしながら、エリスに不思議そうに尋ねる。
「え、あ、いや…その…なんでもありません」
そう言いながらもエリスの顔は相変らず晴れない。
いざこうして面をあわせると、なかなか言い出すタイミングがつかめない。
「んー、ならいいけど、悩みがあるんだったらじゃんじゃん聞いてね?エリスちゃんのためだったら、なんだってしてあげちゃうから」
そう言ってくれはは満面の笑みで笑う。
「あ、はい。それじゃあ…お掃除が終わったら…」
「ん。わかった」
エリスの答えに満足げに笑みを深め、くれはは頷く。
「じゃ、あたしは向こうの方パパッと終わらせてくるから、エリスちゃんはこっちをお願いね」
「はい!」
ようやく言いだせたことに安心して、エリスにようやく笑顔が戻る。そして手早く掃除を終わらせるために2人はお互い別の方向へ歩き出した。

253 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/11/29(土) 20:39:44 ID:ix4UPNp7
「よーし、頑張らなきゃ」
そう言って張り切って本殿のすぐそばの掃除を開始する。
「あれ?」
エリスが掃き集めた落ち葉の中にそれが混じっているのに気づいたのは、それからすぐのことだった。
一枚拾い上げる。シルクのような手触りの青い花びら。
「これって…」
見覚えがある。それも、かなり慣れ親しんだもの。間違いない。
「青い薔薇の…花びら?」
かつて“おじさま”から何度も受け取ったものと同じものだ。
「…なんで?」
あの戦いが終わり“おじさま”がいなくなってから久しく見ていなかったものを見て、エリスは首をかしげ、その青い花びらの飛んできた方向を見る。
「え!?」
その薔薇の花びらの先に、ピンク色の何かが倒れているのを見て、エリスは驚きに目を見開く。
「あれって…」
慌てて駆け寄って抱き上げる。
「ミ…ミル…」
エリスが抱き上げるとそれはうめき声をあげた。
手に伝わるのは生き物特有の温かい感触。
間違いない。これは、ぬいぐるみとかじゃない。
「た、大変!」
その、ピンク色の生き物…うさぎ?は酷い怪我をしていた。瀕死の重傷を負った後生死判定に成功して辛うじて生きている、そんな感じだ。
すぐに治療しなければ、危ない。
「く、くれはさーん!くれはさーん!」
エリスはうさぎを抱きかかえ、優秀なヒーラー兼陰陽師であるくれはの名を呼びながら、走った。

254 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/11/29(土) 20:40:28 ID:ix4UPNp7
短いですが、今日はここまで。

>>185-186
ええ生き残りましたとも。瀕死ですが。
でも大丈夫。くれはがすぐに回復魔法を…あれ?

>>187
ぽんこつですから。

>>188
ええ、また始めました。

>>189
「赤いバラは俺のしるし!ガンズアンドローゼス!ずきゅんずきゅーん!」
そう言って銃弾ばらまく永斗ですね分かります。

255 名前:238:2008/11/29(土) 20:59:34 ID:RH/nmkbU
>>254こと青薔薇さま
乙です〜。続き楽しみにしてますね〜vv ………しかし、くれはのヒール………(汗)

で、こっちの投下は今日は見送りで(汗) 明日の20時にくらいに投下するつもりです〜。

256 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/30(日) 01:58:16 ID:6q8ICsDd
くれはに回復を頼むなwww

てか、アインソフオウルがあるなら
慈愛の玉で回復できるような・・・?
あ、表記がないから宝玉はないのかも

257 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/30(日) 09:33:18 ID:z50r3VDb
なぁにこれでエリスも「くれはに回復を任せるのは危険」って認識するのだろう
エリスはまだくれはの回復と灯の料理の危険度を認識してないはずだからなw

258 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/30(日) 10:23:21 ID:wjsC7vyk
回復でファンぶったかw

259 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/30(日) 15:10:51 ID:dvMwhDMe
>>257
いや…エリスのことだから『そんな危険性を何故か認知できない』という固有結界を張る可能性が…

260 名前:みつやん:2008/11/30(日) 18:06:58 ID:JIUMeNBV
238です。他所では別のコテ持ってますが、ここでは『みつやん』と名乗らせていただくことにしました。
ネーミングセンスない子です(汗) 作品タイトルでも三時間以上悩みます、いつも。

それはともかく、昨日予告していたLOMとのクロス、序章を書いたのですが。
書いてみたら、予想以上に『強引にマイウェイ』って感じの作品になってしまいました(汗)
LOMの世界観・世界設定に関して、かなり独自解釈入ってます。更に言うなら、自分はLOM以降の聖剣伝説知りません(汗)
もしもその後のシリーズと話が矛盾しても、どうかご勘弁を(汗)
NW側はアニメ準拠設定。時間軸的にはアニメ最終話の数日後くらい。アニメでは魔剣折れてないので、箒にカスタマイズしてないと言い張ります。
データも、基本アニメよりで。魔器解放ない柊とか寂しすぎます。………っていうか、空砦の柊のデータが手元にないだけですが(汗)
で、最要注意事項ですが………

自分は、重度のくれ派であり、またかなりの柊×くれはスキーです。

今回はそれがメインの話ではありませんから、カップリング的なものは自重するつもりですが、
端々にそう言った要素が滲んでしまうと思われます(つーか序章の時点で滲んでる)。

そんな感じの初クロスですが、それで大丈夫!といっていただけたなら、昨日の予告通り20時に投下します!

261 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/30(日) 18:28:19 ID:mxN8wdOj
待ってますとも


262 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/30(日) 18:41:46 ID:0T33SeVU
>>260
ああ、分かる。そういうのつけるの悩むよなあ…。
それはそうと出かけるから支援はできんが期待している

263 名前:みつやん:2008/11/30(日) 20:02:29 ID:JIUMeNBV
>>261様、>>262様の暖かいお言葉を受けて投下にきました。
投下前の作品紹介です↓

タイトル:LEGEND OF MANA 〜あるいはある異邦人の物語〜
クロス先:聖剣伝説 LEGEND OF MANA (スクエアエニックス(発売当時はスクエア)発PS1stソフト)
傾向:キャラチェンジ再構成ネタ? 筆者の趣味を反映してカップリング的ネタが滲むかも知れません。
特に柊くれは。あとLOM側では瑠璃真珠(パール)。

というわけで、序章投下、行きます!

264 名前:LEGEND OF MANA 〜あるいはある異邦人の物語〜 【序章】:2008/11/30(日) 20:14:02 ID:JIUMeNBV
《カイタイ 〜Abduction/Collapse〜》

 三日月と共に訪れた宵闇の気配に、街灯がぽつぽつと点り始めた頃。並ぶ家々から夕餉の香り漂ってくる道を並んで歩く二人連れがいた。
「はわわ〜、はわわ〜、今日はエリスちゃんのごっはん〜♪」
「………お前なぁ………」
 片や、上機嫌に鼻唄を口ずさみ、片や、疲れ切った様な声を漏らす。
 鼻唄を口ずさんでいた方―――白い袴に緋袴姿の娘は黒目がちの瞳を瞬き、長い黒髪を揺らして連れへと小首を傾げた。
「はわ、どーしたの? ひーらぎ」
「―――どーしたの? じゃねぇだろこの状況ッ!?」
 疲れきった声を漏らした方―――ごくありふれたシャツとスラックスの上に、薄手のロングコートを羽織った青年は、茶髪の頭を振って叫ぶ。
 青年はもともときつい眦を更に吊り上げ、連れを睨むと、
「こちとら任務から帰ってきたばっかでへろへろだっつーのに、道で会うなり『夕飯の買い出し付き合え』で、しかも買うもんが肉やら野菜やらデカいレジ袋一袋分に、一升瓶のしょうゆに味噌二箱、更に米10キロって鬼かお前!?」
 しかもそれ全部持たせやがって!? と、怒りよりも悲哀を感じさせるニュアンスで叫んだ。その長身の背には米の袋が負われた赤子のように括り付けられ、両手からは重量感たっぷりのレジ袋がぶら下がっている。
 言われた娘はさも心外、という風な様子で頬を膨らませた。
「なーによ、自分で食べる分は自分で持つのが当然でしょ〜?」
「………は?」
 きょとん、と目を見開いて固まる青年の眼前に、娘は指を突きつけて、
「エリスちゃんのご飯、柊も食べてくでしょ? 柊の食べる分も買い足したから、そんな量になっちゃったの」
 娘が告げた名前は、彼女の家に同居している料理上手な少女の名。それがさも当然のように、青年を自宅の夕餉に招く―――否、言うまでもなく、来ると思っている言葉だった。
 青年は一瞬惚けたように連れを見つめて―――はた、と気づいたように叫んだ。
「―――って、俺の分“も”ってことは、それ以外のも含みってことじゃねぇか、これ! 自分の食う分持つってことなら、俺が全部持つのはおかしいだろ!?」
「………ちぇっ………バレたか」
「舌打ちすんな!? せめて一個持てよ、一番軽いのでいいから!?」
 娘は怒鳴る青年に不服そうな眼差しを向けて、
「えー、だってどれも重いしー……… そんなに持つのきついなら月衣に入れちゃえばいいじゃない。周りに人気もないし」
「―――あ」
 告げられた言葉に、青年は再び虚を突かれたように目を見開いた。
 月衣―――それは、世の常識を遮断し、無尽蔵とはいかずとも荷を収めることもできる個人結界。
 世界に住まう大多数の人々が自覚なく保ち続ける、“常識”という名の“世界結界”。それを遮断し、“非常識”の力を纏う者に許す結界。
 それを纏う人々は総じてこう称される―――夜闇の魔法使い(ナイトウィザード)、と。
 彼らはその力でもって、世界の裏、世界の外から来る脅威―――エミュレイターから、人知れず世界を守っているのだ。
 娘は古き陰陽師の血を引く巫女、赤羽くれは。青年は神をも殺せし力を宿す魔剣の主、柊蓮司。幼馴染同士であるこの二人は、それぞれ世界の危機に関わってきた名うてのウィザードである。
 である、はずなのだが―――
「そうか、その手が! ってか、これまでの俺の労力は一体!?」
「まー、人がいるとこじゃ使えないしねぇ〜」
 片や悔しげに、片や能天気に、自身達の異能を日常生活に有効利用とするその様には、威厳もへったくれもない。
「まあ、確かにスーパー出てすぐの人ごみでしまうわけにもいかなかったけどよ………」
 くれはの言葉にぶつぶつと呟きつつも、柊は両手の荷を自身の月衣に突っ込んだ。大衆スーパーのロゴの入ったレジ袋が虚空に溶けるように姿を消す。続いて、背に負った米も。
「さって、身軽になったし、さっさとお前んちでエリスの手料理―――」
 言いながら、柊は軽い足取りで次の一歩を踏み出し―――その足を止める。
「―――はわっ………!」
 その隣で、くれはも呻いて歩みを止めた。
 一歩を踏み出した途端―――世界が一変していたから。
 ただ、並ぶ家々の姿はそのままに。宵闇染める藍の空は、黄昏よりも暗き赤へ。細い爪痕の如き金の三日月は、巨大な真紅の満月へ。
「―――月匣!?」
 険しい声が柊の口から漏れる。
 月匣―――それは、世界の裏から来る侵略者、世界の外から来る破壊者が現れる時、紅い月の下に生み出される異界。

265 名前:LEGEND OF MANA 〜あるいはある異邦人の物語〜 【序章】:2008/11/30(日) 20:15:12 ID:JIUMeNBV
 その異界の主は、果たして二人の前に姿を現した。
「―――私の世界にようこそ、柊蓮司」
 紅い月を背に虚空に浮ぶは、癖のある赤毛に藍の瞳を持つ妙齢の女。均整の取れた豊満な肢体に、妖しくも艶かしい黒のドレスをまとって、歓迎の言葉を紡ぐ。
 しかし―――その言葉とは裏腹に、その声は色濃い憎悪に染まっていた。
「一方的に名前知られてるって状況には慣れちゃいるが、歓迎してくれてるってんなら、自己紹介くらいしてくれてもいんじゃねぇのか?」
 挑発とも取れるような言葉を、何の意図もないような無造作な声で投げつつ、柊は己の武器を月衣より引き抜く。
 紅き宝玉を抱いた柄から伸びる、長大な白刃。―――かつての主の手にあって、己の死を望んだ大いなるものの命を絶ち、当代の主に手にあって、魔性と化した古き神を、絶望せし神の欠片を討った、まさに“神殺し”の名を冠すに相応しき魔剣。
 くれはも、柊に倣って武器を構える。矢の代わりに呪符を番えた漆黒の弓、破魔弓。
 くれはの呪ならば、虚空にある女を撃つ事も可能。しかし、それを知ってか知らずか、女は彼女に目もくれない。
 ただ、憎悪にぎらついた瞳で柊を―――その手の刃を睨み据えながら、壮絶にして妖艶な笑みを浮かべて、彼の言葉に応えた。
「私はグロリア。―――古(いにしえ)の神を讃え謳うもの」
 短いその自己紹介に、柊は嫌そうに眉をしかめ、くれはは驚いたように目を見開いて叫ぶ。
「古の神って………まさかルー=サイファーの―――」
「ウィザード風情があの方の御名を気安く口にするな!」
 かつて柊が退けた、堕ちた古き神―――“金色の魔王”の名に、グロリアの纏う憎悪が吹き上がり―――と、そこで初めて魔性はくれはに気づいたように目を見開いた。
「あら―――余計なのがいるわね。………邪魔よ、貴女」
 言って―――刹那、その姿が掻き消える。
「―――はわ!?」
「どこに―――くれはっ!」
 相手の姿を見失って呻くくれはに、柊が叫ぶ。―――くれはの背後に転移した魔性の姿を見つけて。
 同時に、片手で彼女の手を強く引き、その勢いのまま背後に突き飛ばすようにして、代わりに自身が魔性の方へと飛び込み―――
「―――ベストポジションよ、柊蓮司」
 その眼前で、魔性が妖しく嗤った。瞬間、グロリアと柊の足元に一つの魔方陣が展開する。
「―――な!?」
 柊が思わず漏らした驚愕の声。その声に対する他二人の反応は―――同時だった。
「――― 一緒に行きましょう? 救世の英雄さん」
 魔性が嗤って、魔法陣から魔力の輝きを吹き上げるのと―――
「―――柊ッ!」
 くれはが悲鳴のような声と共に身を翻し、魔法陣の中へと飛び込んだのは。
「小娘―――余計なことを―――!」
 魔性が焦りと驚愕の声を上げる。瞬間、真っ直ぐに天へと伸びていた魔力の輝きが、いびつに歪んだ。
 グロリアが展開した魔法陣の対象は自身と柊の二人。しかし、そこにくれはという三人目が飛び込んできたことで、魔法陣が異常をきたしたための現象。
「―――柊!」
「―――くれは!」
 歪んだ魔力の渦の中、片や必死に相手を引きとめようと、片や何とか相手だけでもこの渦の中から突き出そうと、幼馴染二人は互いに手を伸ばし―――

 その手が互いに届くより早く―――歪んだ輝きは一点に収束し、消える。

 後には、ただ―――細い金の月と街灯に照らされる、夜の道があるだけだった。

266 名前:LEGEND OF MANA 〜あるいはある異邦人の物語〜 【序章】:2008/11/30(日) 20:16:38 ID:JIUMeNBV
《アイガン 〜Entreaty/wish love〜》

 気がつけば、柊は一人、ただ一面の闇の中にいた。
「―――ここ、どこだ………?」
 どこかぼんやりとした意識のまま、柊は呟く。
「―――ここは、ファ・ディールの人間界と妖精界の境界だよ」
 と、一人ごちた言葉に答える声があって、柊は慌ててそちらを見遣る。
 闇の中に浮かぶ、天から射した細い陽だまりのような光の柱。その中に、一人の少年がいた。
 年の頃は、柊より少し下―――十六、七ほどに見える。蜂蜜色、というのが相応しいような金髪の上に、赤い頭巾のような変わった帽子を被っている。小柄な体躯に軽装の鎧を纏っているが、特に武器を帯びているようには見えなかった。
 清んだ空のような青の瞳を笑みの形に細め、少年は言う。
「こんにちは。夢から生まれた現(うつつ)の人」
「………は?」
 よくわからない呼びかけに、柊は首を傾げる。
 ああ、と少年はその様子に呟くと、笑みを困ったような苦笑に変えた。
「ごめん。訳わかんないよね、こんな呼び方。―――実を言うと、僕もよく分かってないし」
「って、なんだそりゃ!?」
 思わず柊がツッコめば、少年は楽しそうに笑う。
「良いツッコみだなぁ、お兄さん。―――あ、怒らないで!」
 露骨に不機嫌な顔になった柊に、少年は慌てて笑みを引っ込める。
「人と話すの久しぶりだから、嬉しくてちょっとふざけすぎちゃった。ごめんなさい」
「―――久しぶりって………」
 しおらしく頭を下げての少年の言葉に、柊は先程までとは違う意味で眉を寄せる。
「お前、まさかずっとこんなとこに一人でいたのか?」
「ううん、ここじゃないよ。っていうか、ここに来ること自体初めてだし」
 少年はそう首を振るが―――ここじゃない、というその言葉は、少年がここ以外のどこかでずっと一人だったのだと、暗に告げていた。
 そのことに、痛ましげな色を見せる柊に、少年は柔らかく笑う。
「―――お兄さんは優しいね。………目つき恐いけど」
「一言余計だ!?」
 少年の言葉に柊は反射のようにツッコんで―――それで、湿っぽい空気が消えた。
 あはは、と少年は楽しげに笑うと、一転して真摯な表情を浮かべる。
「でも、僕の心配より、お兄さん自身の心配した方がいい。ここにあんまり長いこといると、良くないから」
「………そうなのか?」
 そういわれても、柊にはぴんと来ない。確かに居心地の良い場所とは言い難いが、差し迫った危険は感じられなかった。だが、そもそもここがどういう場所だか分からないのだから、自身の感覚だけで判断するのは賢いとはいえない。
「結局、ここはどういうとこなんだ?」
「さっきも言った通り、ここはファ・ディールの人間界と妖精界の境界。………まあ、次元の狭間、って言った方がわかりやすいかな?」
 少年が軽く首を傾げて言い直すのに、柊は小さく頷く。―――そもそも少年の告げる固有名詞が理解できないから、後者の言い方の方が、まだぴんと来る。
「で、ここはどっちでもあって、どっちでもない、カタチのないところ。アイマイなところ。―――だから、ここにずっといると、この場所に溶けてアイマイになっちゃうんだ。自分が何なのかわからなくなって、存在が消えてしまう」
「―――それは………確かにあぶねぇな………」
 ぞっとしない、というように柊は呻いた。
「うん。だから、はやくここから出た方がいいよ」
「って、いわれてもよ、どうやったらここから出れるんだかわかんねぇし………」
 少年に軽く言われて、柊は眉を寄せる。そもそも、どうしてここに来たのかもわからないのに―――そう、思って。
 途端、気づいたその事実に、背筋が冷えた。
 ───もしかして、もう曖昧になってきてんのか? 俺―――
「かもしれない。だから、急いで」
 柊の思考を読んだように少年は言い、手を差し伸べる。
 柊はその手を見つめ、次いで少年の目を見た。少年が笑顔で頷くのを見て、その手を取る。
 少年はその手を引いて、一歩下がった。柊は手を引かれるままに一歩踏み出し、少年が先程までいた光の柱の中に立つ。
「そこからなら、ここから出られるよ」
 笑顔でそう言って、少年は手を離そうとし―――柊が、その手を握って止めた。

267 名前:LEGEND OF MANA 〜あるいはある異邦人の物語〜 【序章】:2008/11/30(日) 20:17:51 ID:JIUMeNBV
「待て。―――お前はどうなるんだ?」
 険しい声で問う柊の視線は、少年の足元に向けられていた。
 少年が立っているのは光の外―――全てを溶かすという闇の中。
 少年は困ったように眉を垂れて、
「えと………手、離して?」
「―――答えろ」
 でなければ離さないという柊の言葉に、少年はますます眉を垂れた。
「………そこに立てるのは、一人だけなんだよ」
「だから、代わりにお前がここに残るってか?―――ざけんな」
 怒気すら孕んだ柊の声に、少年は泣きそうな顔になる。
「だって………それしか方法がない。ここからお兄さんを助けるためには、お兄さんに僕の場所を渡すしかないんだ。―――だから、離して」
「冗談じゃねぇ。消えるってわかってて、離せるか」
 少年は泣きそうな顔のまま、必死に柊を睨むようにして、
「―――どうして!? 会ったばかりの他人だよ!? 見捨てていけばいいじゃない!」
「なら、お前はどうして自分が身代わりになってまで、初対面の俺を助けようとするんだ!?」
 怒鳴るように返した柊の言葉に、少年は息を呑んだ。
 痛いような沈黙の後―――困ったように、しどろもどろの様子で、言葉を紡ぐ。
「それは………それとこれとは、違う。お兄さんは唯一の希望だ。だから、助かってもらわないと困る。僕はもう役目を終えた―――ううん、もう役目を果たせない。役立たずとかけがえのない希望を比べたら、どっちが助かるべきかわかるでしょう?」
 少年の必死の説得を、しかし柊はただ一言で切って捨てる。
「わかんねぇな。―――意地でもわかってやらねぇ、そんな理屈」
「お、お兄さん言ってることめちゃくちゃ………」
「うるせぇ! 俺はやる前から諦めんのが一番嫌いなんだよ!――― 一人しか立てねぇだ? 詰めりゃ二人でも立てるだろ!」
 言うなり、少年の手を引いて、抱かえるような姿勢で立った。一人分のスペースの光に、二人が入る。
「無茶だよ! 前例がない! 何が起こるかわからないよ!?」
「上等じゃねぇか。確かめたことがねぇだけで、両方助かる可能性もあるってことだろ?」
 腕の中でもがくようにして叫ぶ少年に、柊は不敵に笑って言い放つ。
 少年は絶句して―――次いで、泣き笑いのように笑った。
「ほんと―――めちゃくちゃだよ、お兄さん」
 瞬間―――光が辺りの闇を払うように広がって―――視界が白く染められた。

  ◇ ◆ ◇

 墜ちていくような感覚の中、柊は不思議な光景を見た。
 どこか悲しげな色の空に浮かぶ、巨大な樹。本来地中にあるべき根を宙に垂らし、葉を茂らせた枝が、きのこの笠のような輪郭を描いている。

 ───彼方の世より来る、夢より生まれし現(うつつ)の子―――

 と、遙か彼方から響いてくるように、耳元で囁くように、呼ばわる声があった。
 知らない筈の、けれど不思議と懐かしいようなその声は、どこまでも慈愛に満ち、また深い悲哀を感じさせた。

 ───わたしを、求めてください―――

 その声は願う。

 ───わたしは、愛です―――

 その声は告げる。

 ───決して諦めない人の子よ。どうか、その心でこの世界を―――

 その祈るような声を聞きながら―――柊の意識は浮上した。

268 名前:みつやん:2008/11/30(日) 20:23:47 ID:JIUMeNBV
と、序章はここまで!
っていうか、投下予告直後にパソコンフリーズとか心臓と止まるかと思った。
………データ無事でよかった………(汗)

普段投下してるスレがどれだけ改行・字数制限きついのか思い知りましたよ(汗)
こっち、すごい投下しやすい………vv

さて、次いつになるかわかりませんが、続き待ってるぜ! といってくれる人がいたら、ちょっと速度が上がるかも。
では、また〜!

269 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/01(月) 00:45:19 ID:EeV7sWvU
GJ!
続きを楽しみにしています。

270 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/01(月) 16:14:37 ID:gj1Rg7GL
ぐっじょぶ!
配役入れ換えモノで、ちゃんとその辺りを描いてるのはいいねぇ
しかもそれが実に柊らしい対応だし
続きも期待してるさー!

271 名前:みつやん:2008/12/01(月) 21:24:52 ID:yZAfkpMw
>>269様、>>270様、暖かいお言葉、ありがとうございます〜!
できるだけ早く続きを投下できるよう頑張ります!

今日は、昨日の書き込み分の誤りに気づいて慌てて訂正に来ました(汗)
>>260の解説 『アニメ最終話』→『アニメアンソロの最後の話』
>>264の本文中 『白い袴に緋袴姿』→『白い小袖に緋袴姿』

阿呆なミスをしました(汗) お目汚しをしてしまい申し訳ありません………ORL

272 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/02(火) 00:22:39 ID:pObsqWR0


273 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/02(火) 00:38:59 ID:dFTau9ca
>>256
七徳の宝玉だと魔王になっちゃうのでかわり伝説の戦士の力を宿した
「大いなる希望の宝玉」「情熱の赤い宝玉」「弾けるレモンの宝玉」「安らぎの緑の宝玉」「知性の青き宝玉」が・・・って足りねー

274 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/02(火) 01:05:58 ID:i7nd41n9
初代の3人にSSの花鳥風月で7つになるじゃないか

275 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/02(火) 05:31:51 ID:HjBAUldZ
今は6人じゃなかったっけ

276 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/02(火) 13:37:38 ID:x7wOcoe7
>273
待てwww レモン待てwww

277 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/02(火) 13:51:57 ID:/SSz5g/T
美味そうな宝玉だなレモンw


乙。これは正しい、まさしく柊。柊とくれはへの愛がマジ溢れてるな。
問題は俺が原作を知らないということだが、再構成なら事前に調べることなく、むしろ先がわからなくて安心して楽しめる。
やっぱりこういう再構成も必要だと思うわけで…

278 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/02(火) 18:13:09 ID:U/hzmj3J
あほなネタで、別府鉄輪地獄変とのクロスを思いついたり。

何かにつけて殺される柊(でもすぐ生き返る)に、

くれは「なんてこった、柊が殺されちゃったー」
灯「この人でなしー」

とか言うの(もはやクロスでも何でもねえな、これ)w

279 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 19:45:59 ID:+iEgGv4n
前々から書き溜めてきたSSを投下する度胸がやっとついたので、19時50分から投下します。

クロス先は「超女王様伝説 エンシェント・クイーン」。
アンゼロット様が主役だったのは「超女王様伝説 セント・プリンセス」の方だから、なんの問題もなくクロスSSだ! と主張したい。
「セブン=フォートレス メビウス(特に、エル=ネイシア)」とのクロスでもあるけど。

第三世界側の口調は、キャラ立てと台詞の書き分けの為にかなり誇張しています。
あと、マイナーな設定と、独自の解釈が入り混じっているのでご注意を。


280 名前:月と星と柊と ◆rWdFzabV1A :2008/12/03(水) 19:56:23 ID:+iEgGv4n
「ええい、忌々しいぽんこつめ!」

 第三世界エル=ネイシアを掌握した古代神、古女王(エンシェント・クイーン)エルヴィデンスは頼りない盟友を罵倒した。

「百体以上の魔王と四 億を超える侵魔を率いながら、アンゼロット一人の足止めすら出来ぬとは!
あの蝿め、若しや既に天界に寝返り、奴等の為に神の戦士を育てているのではあるまいな!」

 黒ローブに身を包み、額に宝玉を飾った布の帽子を目深に被った古女王は、石壁に囲まれ全き闇に満たされた広い地下通路
を、石畳を踏み砕かんばかりに荒々しい足取りで進みながら怒声を上げた。

「聖姫戦争に敗れ、総ての手駒を失ってから十余年。
人間に成り済ましてエルンシャに仕え、苦心惨憺の末に宰相に迄上り詰め、幼いセフィス女王を傀儡にして実権を握り、漸く奴を、
"世界の守護者"を打ち倒し、この世界を手に入れたのに! 何故、再びアンゼロットと戦わねば為らんのだ!」

 故郷エル=ネイシアが冥界勢力の手に落ちた事に気付いたアンゼロットは、今まさに帰郷の準備を進めていたが、対するエルヴィ
デンスは当初、事態を軽く見ていた。アンゼロットには、裏界を放置して此方に戻ってくる余裕などは無い筈だったのだ。

 それが、帰ってくる。

「アンゼロットが、帰って来る。シャイマールを、ルー=サイファーを討ち取って。人間を率いて、4億の侵魔を退けて。
―――かつて、姉妹たるイクスィムと二人して私に敗れたあの小娘が、随分と腕を上げたものよ・・・・・・」

 アンゼロットの父神によってこの地に封じられて以来、長い間アンゼロットとイクスィムの働きぶりを眺める以外にする事のなかった古
女王は、近づく再会の時を前に感慨を禁じえなかった。
 尤も、アンゼロットの方はエルヴィデンスを見た事もなければ、名前さえも知らないのだが。

「アンゼロットとイクスィムはとても仲が良く、協力してエル=ネイシアを守っていたが・・・ある時、恋に落ちて女神としての勤めを疎かに
する様に成り、其の隙を突いて私は限定的な復活を遂げた」

 そして起こった争いの中で、二柱の女神は力尽き・・・古代神はエルンシャに、二柱の女神が愛した男神によって討たれたのだ。

「一度は倒した相手だが・・・・此度も勝てるとは限らん。戦わずに済ませられるならば、其れに越した事は無い」

 呟きながら進むうちに廊下は終わり、石造りの巨大な扉に突き当たる。
 目を閉じていても分かる程に、圧倒的な威圧感を発する扉に。
 その扉の向こうにあるのは冥界門。
 エルヴィデンスの盟友たる冥魔王、冥姫王プリギュラが用意した次元回廊だ。
 エル=ネイシアを包むエルンシャの力に阻害されて今迄は上手く作動しなかったのだが、柊蓮司がゲイザーを倒した為に幻夢界
が消滅し、人間界全般と冥界の霊的な距離が縮んだ事で漸く冥界と繋がったのだ。
 どのみち、永い勤めに疲れ果て、自分の守っているものに価値を見出せなかったゲイザーは、あまり長くは持たなかっただろうが。

 エルヴィデンスが瘴気渦巻く冥界に続く扉を開けると、“眩い光が差し込んだ”。
触れた者の身を心を魂を侵食し、堕落させ腐敗させ衰滅させる冥界の瘴気の只中に、暖かく柔らかく神々しい光を放つ一振り
の錫杖が見えた。
 冥界を封じる三つのエンシェント・キーの一つ、“星の錫杖”。
 その輝きが、周囲の瘴気を浄化していた。

「全く、何故、この私にあの蝿の不始末のツケが回ってくるのだ」

 星の錫杖が此処にある理由。
 それは、蝿の女王ベール=ゼファーの愚行が原因だった。
 ベルは以前、魔王ディングレイを復活させる際に冥界勢力と手を組んだ。
 ベルは第一世界ラース=フェリアにクリーチャー・ホールを開くとフレイスに冥魔の軍勢を呼び込み、冥魔にとって致命的な光を放
つエンシェント・キーの回収を行い、星の錫杖の使い手・リューナ=セイグラムと接触し・・・・・・放置した。
 そして、実に下らない“ゲーム”を始めた結果、フレイスに攻め込んだ冥魔の軍勢は全滅し、クリーチャー・ホールは封じられ、星の
錫杖は冥界に投じられる事になったのだ。
 冥魔にとって、浄化の光を放つ星の錫杖がどれほどの脅威である事か。
 それが落下して来たのだから、冥界が蒙った被害は甚大だった。
 にもかかわらず、ベルは己の所業を一切省みず、恥じる様子を見せる事もなかった。


281 名前:月と星と柊と ◆rWdFzabV1A :2008/12/03(水) 20:00:14 ID:+iEgGv4n
 冥魔王達は考えた。ベール=ゼファーの幼く未成熟で脆弱な精神は、冥魔が放つ瘴気による汚染に耐えられず、最初に冥界
勢力と接触した時点で錯乱したのだと。それ故に、冥魔王達はベルの責任追求を諦めた。

 だが、その後、ベルがルー=サイファーを失脚させて裏界のトップに立った事で「どうやら瘴気が抜けて正気を取り戻したらしい」と
判断し、エルオース開放計画に参加させたのだが・・・・・・星の錫杖の回収作業については、ベルに頼む気にはなれなかった。
 ベール=ゼファーは、現状、裏界最強の魔王である。
 そのベルが耐えられないのだから、裏界には冥界の瘴気の中で理性を保てる者はいないのだろう。
 しかし、だからといって、星の錫杖をいつまでも冥界に置く訳にはいかない。
困り果てた冥魔王達は実に見苦しい押し付け合いの末、籤引きによって回収作業の責任者を決めた。それがプリギュラだった。

「あの籤には、絶対に不正があったわぁ」

 エルヴィデンスの前に現れたプリギュラは、そんな事を言いながら助力を求めたものだった。

 渦巻く冥界の瘴気も、星の錫杖が放つ浄化の光もものともせず、古代神エルヴィデンスは冥界に踏み込んで錫杖に近づき、手に
取ってその力を収めた。

「ふむ、エルンシャは実に良い仕事をする。アンゼロットの好みは確か、何でも言う事を聞いてくれて、実績のある人、だったか?
女の扱い方を知らん男だが、それ以外は極めて有能と言って良かろう。
客観的に見て、息子としても父親としても、部下としても上司としても、ほぼ理想的だ。恋人にしたいとは思わんが」

 錫杖が光を放つのを止めると同時に、周囲の瘴気がどっと押し寄せたが、それが古女王の心身を傷付ける事はなかった。

「これでプリギュラの用事は終ったか。さて、次は・・・」
 
 冥界の瘴気を心地良さそうに浴びながら、懐から取り出した小箱を瘴気に当てた。
 小箱は瞬く間に侵食され崩れ落ち、掌の上には小箱の中身――親指の爪程の大きさの、内側から発光する水晶だけが残る。
 これこそが"星の欠片"。
 エルヴィデンスによって砕かれた"世界の守護者"星王神エルンシャの力の結晶であり、これを取り込めば神の力を受け継ぎ、数
多の下僕を自在に操る"神姫"となる事が出来る。
 現在、殆どの神姫はエルヴィデンスに騙されてその傘下にあるものの、一部の神姫は神の声を聞いて古女王に敵対していた。

「エルンシャ、エルンシャよ。私の声が聞こえるか?」
『・・・・ああ、聞こえている、エルヴィデンス』

 呼びかけた星の欠片から、暖かく落ち着いた、包容力を感じさせる力強い男性の思念が届き、エルヴィデンスは久しぶりに娘婿に
会った姑のように微笑んだ。

「エルンシャよ。アンゼロットに逢いたくは無いか?」
『・・・・・・・彼女は死んだ。お前の所為でな』
「うむ。私もそう思っていたのだがな。
どうやら、ゲイザーに拾われて第八世界に居る様なのだ。
イクスィムもルー=サイファーに拾われたが・・・アンゼロットと戦わされ、残念な事になったそうだ。
アンゼロットは、さぞや気落ちしているであろうな」

 その言葉に、星の欠片の放つ光が明滅した。

『そうなのか・・・・いや、私は彼女から受け継いだこの世界を守りきれなかった。今は、とても会わせる顔などないな』

 苦渋に満ちた思念が返ってきたが、星の欠片は光を強め、周囲の瘴気を浄化し始めた。
その様子を眺めながら、古代神は優しそうに語りかけた。

「エルンシャよ。アンゼロットはお前にとって災厄でしかなかったな。
 恋に溺れて世界の危機を招き、其の責任を問われたお前は地神に・・・アンゼロットの身贔屓な父親に八つ裂きにされ、聖姫達
を産み出す材料にされた。
 その後、紆余曲折を経て蘇り、私を倒して世界を救ったお前を待って居たのは何だった?
 長き戦乱に荒れ果てた大地と、心の支えを失った民衆、そして"世界の守護者"3人分の仕事の山だ。
 其れなのに、私は正体を隠して十年間お前に仕えて来たが、お前がアンゼロットを悪く言うのを唯の一度も聞いた事が無い」

282 名前:月と星と柊と ◆rWdFzabV1A :2008/12/03(水) 20:02:13 ID:+iEgGv4n
 エルヴィデンスは星の欠片をじっと見つめ、言葉を継いだ。

「愛しているのだろう、アンゼロットを。総てを、許せる程に」
『ああ、そのとおりだ』

 エルンシャは認めた。

『彼女は私にとって大切な、大事な"同胞"だ』

「・・・・・・・・・・・・お前も往生際の悪い男だな」

『かつて私はアンゼロットとイクスィムの二人から同時に求愛されてどちらかを選ぶ事も、両方を幸せにする事も出来なかった。
私の不甲斐無さが、二人を苦しめた』
「いや、会ったばかりの女二人から突然、あたしと付き合え、でないと殺すと迫られては仕方が無いと思うが」

 傍から見ている分には愉快だったが、当事者は堪らんだろう。

『・・・・・そうか。アンゼロットは、生きているのか・・・・・・礼を言わせてくれ、エルヴィデンス。よくぞ知らせてくれた』
「ふふ、嬉しそうだな、エルンシャ」
『ああ、彼女の笑顔を思い浮かべるだけで、胸の奥が暖かくなる』

 いや、今のお前は身体がないだろ、というツッコミを飲み込んで。

「そうか。為らば自分のものにしてしまえ」

 ここぞとばかりに、毒の蜜を流し込む。
 星の欠片の光が、再び明滅した。

「アンゼロットは遠い異郷の地で、ずっと孤独な戦いを続けて来た。
お前との悲恋を忘れる為、世界の守護に身を捧げ、それを見た八大神は使える道具だと考えて次々と無理難題を押し付けた。
八大神はアンゼロットにも心がある事を分かっていない。何れ、アンゼロットは八大神に使い潰されてしまうだろう。
そう成る前に、二人で何処かに隠れてしまえ。そして二人で、静かに暮らせ」

 星の欠片が、弱弱しく瞬いた。

『私達は、"世界の守護者"だ。守るべき世界を放棄し、自分達だけが幸せになる訳にはいかん』
「お前達でなくとも、世界は守れるさ。だがな・・・・・・・・・アンゼロットを救えるのは・・・・・・お前だけだ」

 星の欠片の光が弱まり、瘴気を浄化する勢いが下がるのを認めた古女王は、そっと瘴気を吹き込むと欠片を投げ捨ててエル=ネ
イシアに戻り、扉を閉めた。

「エルンシャよ。お前ならば其の状態でも冥界から生還する事が出来る筈だ。
 尤も、冥界の瘴気の中で自我を保つには少々力が足りまい。
 恐らくは、唯一つの妄執の虜と成り果てる事だろうな」

 何もかも、冥界の腐沼に捨ててしまえ。
 理性も、正気も、"世界の守護者"としての義務感も。

「"世界の守護者"が冥魔と成るなど、主八界を揺るがす大事件だ。
前にエルオースが堕ちた際には、八大神が総出で袋叩きにした程の慌てようであったわ」

 八大神は今、冥界との戦争に忙殺されて身動きが取れない。
 しかし、この新たな冥魔王の脅威には、彼等が腰を上げずに取り除く方法がある。

「アンゼロット。"冥魔王"エルンシャを、速やかに確実に完全に無害化する最善の方法はな、お前自身が"贄"に成る事だ」

 エルヴィデンスは静かに目を閉じ、一人呟いた。

「アンゼロットよ・・・・・お前の恋路を見守るのは、私にとって最高の娯楽であったよ」

283 名前:月と星と柊と ◆rWdFzabV1A :2008/12/03(水) 20:04:08 ID:+iEgGv4n


 生きている。
 生きている。
 生きている。

 アンゼロットが、生きている

 冥界の片隅で瘴気の渦に翻弄されながら、その事だけを考える。
 
 ・・・・・・どんな顔をして、会いに行けばいい?
 自分は彼女の求愛に応えず・・・・・・
 彼女から受け継いだ世界守る事も出来ず・・・・・・・・
 それに・・・・・・それに・・・・・・

 誰かが、囁いた。

『気にする事は何も無い。会いたいならば、会いに行けば良い』

 彼女は、厳しい眼差しの奥に優しき慈愛を秘め、地上に安らぎを与える事を願っていた。
 彼女は、仲間からも忌み嫌われながら仲間を守る為に金色の邪眼を身に付け、その眼を恥じて伸ばした前髪で隠していた。
 彼女は、魔王達を殺す、ただそれだけの為に生みだされた血塗られた戦女神の身でありながら、古代神戦争終結後に、人々を
守り導き慈しむ役目を与えられた事を喜んでいた。 

 彼女は、戦う事しか知らなかった聖姫達を"エルンシャの娘"と呼んで母のように姉のように愛情を注ぎ。
 彼女は、攫われた恋敵を救う為に自分の命を投げ出し。

 彼女は、いつだって率先して自分の身を犠牲にしてきたのだ。
 そんな彼女の、唯一の我儘を

 自分は―



 彼女は常に誇り高く、麗しく神々しく美しかった。

 煙管で煙草を吸って鼻からプハーと煙を吹く姿も
 さきいかをツマミに浴びるようにウオッカを飲む姿も
 イヤフォンで競馬中継を聞きながらスポーツ新聞を読む姿も

 とても、美しかった。



 ・・・・・・・誰かが、囁いた。

『・・・・・其れ程迄に彼女が愛しいのならば、自分のものにしてしまえ』

 だが、自分達は"世界の守護者"だ。
 その心は世界全体に遍く平等に公平に向けられるべきものであり
 特定の誰か一人に向けられる事など決して在り得るべきではなく・・・・・・・・・

 誰かが、囁いた。

『"世界の守護者"としてのお前は死んだ。
此処に居るのは・・・・・・・・・・・・冥魔王だ』

 そして。

 一体の冥魔王が冥界を脱し、ファー・ジ・アースに向かった。

284 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 20:05:19 ID:+iEgGv4n
 今日はここまで。次回から、もう少しクロスらしくなります。
 ではまた。


285 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 20:43:59 ID:jx513U6q
GJだ、GJなんだか、まて最後の「美しい」部分w
それは惚気か、のろけなのか?!
あばたもえくぼにもほどがある!

そこまでわりと保ってたダークでシリアスな緊張感が一発で粉砕されたぞ!?w

286 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 20:48:00 ID:rOlxRanR
>>284様、GJ!
エル=ネイシアのことはアンゼの故郷くらいにしか知りませんでしたが、その知識量でも十分楽しめました!
わかりやすく、かつ、くどすぎない自然な背景説明に感服です。
………ところで、アンゼの好みの男性像「何でも言うこときいてくれて、実績のある男」で、一瞬何故か柊が出てきてしまいましたよ。
言うこときかない(任務嫌がる&命令違反常習犯)男なのに………何故(汗)

287 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 21:02:51 ID:HASDJ1V7
うぅむ……クロスSSと言うより二次創作SSっぽいと言いたいところだがGJ!

アンゼロットがメインヒロインと考えておいて良いんだよな?!
ここまでやって、実は転生したイクスィムがメインヒロインだったりしないよな?!
とりあえず続きを期待

288 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 10:33:30 ID:8rnJY+//
>>286
何でも言うことをきいてくれて――任務は嫌がるがなんだかんだで引き受ける
実績のある男――十二分にある。任務押しつけまくって箔を付けさせたとも言うが

命令無視はするけど、その上でアンゼロットの想定以上の結果を出す事もある。
結構当てはまってるんじゃね?


289 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 12:16:32 ID:NxDzoJNo
アンゼロット=おっさん

つまりこういうことなのか・・・!

290 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 14:51:11 ID:r5JW2D1A
ベルを当てにしちゃいかんぞ、エルヴィデンス
あれは殆ど愉快犯だ

291 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 15:11:46 ID:C72tZqz7
まったくだ。
下手したらバットマンのジョーカー並みに性質の悪い愉快犯だからなベルは!

その分物凄い勢いでぽんこつぶりを発揮したりもするけど。

292 名前:ネギま!×ちびらぎの人:2008/12/05(金) 00:03:18 ID:DXW+0jHt
十分後ぐらいから投下しますー。
どなたかいらしたら支援願います。

293 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 00:06:05 ID:ai/ORbTY
支援準備ならできてるぜー、ってさ。

294 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 クライマックス:2008/12/05(金) 00:10:56 ID:DXW+0jHt

紅い月の輝く空、柊はテンペストに乗って麻帆良上空を飛んでいた。

この世界にも魔法使いが存在することは柊も知っている。
それならば、月衣に護られたエミュレイター、そしてウィザードへも攻撃は通るだろう。
――実際に柊はエヴァンジェリンの攻撃をばっちり喰らったのだから。

それでも、あの魔王――アンゼロットの呼ぶところの魔王ロリショタ(仮名)――に対抗できるだけの低年齢の魔法使いは存在するのか?
ファー・ジ・アースでさえ、アンゼロットがまともに戦力を集められなかった相手だ。
――単に柊で遊びたいから嘘をついた、という可能性が脳裏をよぎるが、なかったことにする。
さすがにそこまでして自分の楽しみをとるヤツが世界の守護者だとは思いたくない。
それでも、アンゼロットの普段の行いを考えると否定しきれないところが嫌だ。

とりあえず月衣の中からとりだしたポーションで体力を回復する。
――本当に知らない間に月衣の中に回復薬が送り込まれていた。
ロンギヌスの技術力は確実に進歩しているらしい――時々、変な方に進歩している気がするが。

とにかく、これから確実に戦闘になるのだから、準備は必要だ。
手早く体力を回復し、エミュレイターの位置を探るため、感覚を研ぎ澄ませ、周囲を見渡す。

「――あそこか!」

感覚でエミュレイターの位置を捉える。

箒を操り、移動しようとすると同時に、背筋に冷たいものがはしった。

その感覚と同時に、箒に一気に加速をかけて旋回する。
その直後、柊がそれまで居た場所を吹雪が吹き荒れた。
通常なら起こりえない、魔力によって引き起こされた現象。
――即ち、魔法。

「どこへ行くつもりだ、小僧?」

長い髪をなびかせて、夜空に君臨する少女――エヴァンジェリン。

夜の闇に浮かぶ、紅い月の光に照らされた姿はまさしく最強と呼ばれる悪の魔法使い。

夜風に吹かれた金色の髪が紅い光を浴びて赤金色の糸のように揺れる。

両手から下げた魔法薬の入った試験管やフラスコは月光を反射し煌めいていた。

そしてその姿から発せられる威圧感は並の魔法使いならば裸足で逃げ出すほどのものであった。

だが。

「わりぃ、急ぐから後でな!」

しかしそんなエヴァンジェリンの姿も柊の目にはろくに映ってなかった。
柊の目的は魔王を倒すことであって、異世界の魔法使いであるエヴァンジェリンが自分が悪の魔法使いだと主張したとしても、全く戦う必要性を感じないだろう。
関係ない戦闘をしている余裕はないとばかりに、さっさと箒を操ってその場を去る。


295 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 クライマックス:2008/12/05(金) 00:12:01 ID:DXW+0jHt
「なっ……またんか、このくそガキがあぁぁぁぁ!」

あっさりとスルーされたエヴァンジェリンは大声で怒鳴った。
いらだちをこめて右手の試験管を強く握るが、柊の乗った箒はすでに光の軌跡だけを残して離れていってしまっている。

「あいつはっ、どこまでっ、私をっ、馬鹿にするつもりだっ!」

そして柊の後を追う。それと同時に、追撃するように氷の矢を放った。
しかし、それも箒がバーニアを吹かし、軽く回避されてしまう。

「ええい、避けるな!」

「無茶言うなっ!」

エヴァンジェリンの台詞の直後に柊がツッコミをいれる。

逃げるなと言われて逃げないやつはいないし、避けるなと言われて避けないやつはいない。
だいたい、この状況で追いつかれたらどうなるかは目に見えている。
きっと、機嫌の悪い幼馴染みを相手している時と同様危険な目に会うに決まっている。
柊はそう確信していた。

次から次へと飛んでくる氷の矢を回避しつつ、目的地を目指す柊。

そしてようやく敵を確認する。

――しかし、こちらから相手を確認できるということは、同時に相手もこちらを確認できるということだ。

魔王が箒の軌跡へと視線を向けると、天属性の魔法を詠唱する。

「げっ」

魔王の詠唱を止めるため、箒を加速させ、魔剣を抜こうとしたところで、背後から迫る氷の矢の存在に気づく。

(ま、またタイミングの悪い!)

このままだと、魔王の詠唱を止めたところで、エヴァンジェリンの魔法が背後から直撃してしまう。

逆にエヴァンジェリンの攻撃を回避すれば魔王に隙を見せることになる。

ならば、柊に残された選択肢はひとつ。

「だああああああ!」

魔王が魔法を放つ。

その光線状の魔法が目前まで迫ったところで、一気に上空へと方向を変える。
回避性能を上げるために搭載されているアポジモーターが悲鳴を上げるようにバーニアを吹く。

柊を追っていた氷の矢と、柊に向けられた光線は互いに打ち合い、空中に水蒸気をまき散らしながら消えていく。


296 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 クライマックス:2008/12/05(金) 00:13:24 ID:DXW+0jHt

視界を埋める蒸気の中から飛び出すように、柊は魔王へと迫る。
魔王との距離が縮まったところで、空中で箒を月衣へしまい込み、魔剣を抜きはなつ。
そして重力に引かれるまま、真下にいる魔王へと刃を振り下ろした。

『グ、ガッ――』

柊の魔剣は魔王を護る世界律を突破し、その左肩を深く切り裂いた。

しかし魔王もやられたままというわけではない。

肩を切り裂かれる痛みに耐えながらも、着地した柊を狙い、右のかぎ爪を振るう。
柊は魔剣でそれを受けようとしたものの、力で押し切られ、吹き飛ばされた。
何本もの樹木をなぎ倒しながら吹き飛ばされ、土煙が舞い上がる。

「――っは、ギリギリセーフってやつだな」

薄れていく土煙の中、柊は碧い光――プラーナを纏って立っていた。

『やはり貴様も来ていたか、柊蓮司……!』

「いちいちフルネームで呼ぶなっ! ……っていうかしゃべれたのかよ」

まあ、しゃべるエミュレイターも珍しくないけど。
むしろデフォルトでしゃべれるものなのか?

『僅かだがプラーナを補充したのでな……』

そう言うと、柊の与えた傷がぼこぼこと泡立つようにして再生していく。

『この地にも結界はあるようだが……ここは世界結界の外』

朗々と唄うように魔王は告げる。絶望を。

『ファー・ジ・アースと違い、世界結界のないこの地であれば、我々は本来の力を発揮できる。
 つまり――お前が勝利することは万に一つもない、柊蓮司』


297 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 クライマックス:2008/12/05(金) 00:14:46 ID:DXW+0jHt
増していくプレッシャー。
だが、それにも臆さずに柊は口を開く。

「はっ……どうだか。
 余裕ぶってる割にはやたら口数が多いじゃねえか」

内心では魔王の放つ力に気圧されてはいるが、表には出さない。

「実際のところ、プラーナの回復もそこまで多くはないんじゃないか?
 世界結界の外とはいっても、前に戦った魔王連中よりかは見劣りするぜ?」

『減らず口をッ……!』

柊の挑発に、魔王へ魔力が集まっていく。
高まる緊張感。柊は魔剣を握る手にさらに力を込め、構える。

『いいだろう……この魔王ローリー=ショ=タ、全力で』

「ちょっと待てっ、それは仮名じゃなかったのかよ!? 本名!?
 っていうかそんな名前拾うなよっ!?」

魔王ローリーの台詞を遮って柊が叫ぶ。
勢いで微妙にメタなことも口走っている。

がらがらと音を立てて崩れる緊張感。

なんというかもう、いろいろと台無しだ。

私の見立てに間違いはなかったでしょう、などと笑顔でサムズアップしながらのたまう脳内世界の守護者をファー・ジ・アースの方へ押し返し、柊は魔剣を構えなおした。

「ああ、もう、細かいことはどうでもいい!
 さっさと終わらせ――」

「ええい、ようやく追いついたぞ、このクソガキ!」

またややこしいのが。
仕切り直そうとしたところで登場したエヴァンジェリンを横目に柊はがっくりと肩を落とした。
柊は面倒くさそうに言う。

「説明してこいつを放っておくわけにもいかねえだろ……」

「ほう、このバケモノは知り合いか?」

「知り合いっつーか、俺がここに飛ばされることになった元凶というか……まあ、敵だな――ッ!」

その言葉が終わると同時に柊は剣を振るった。
それによって魔王の撃った魔法がはじき飛ばされる。


298 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 クライマックス:2008/12/05(金) 00:15:46 ID:DXW+0jHt

「うるせえっ、ふざけた名前してるお前が悪いんだよ!?」

『下がる男などというふざけた二つ名の男に言われたくない!』

「下がる男言うなっ!」

子供のような言い争いを始める柊と魔王ローリー=ショ=タ(本名)。
なんというか、もう、ぐだぐだである。

『とにかく死ねッ、柊蓮司!』

「うおっ!?」

言い争いの延長線上といった感じのまま、なし崩しに戦闘が始まった。
よほどさっきの言い争いが頭にきているのか、魔王と名乗った敵は柊へと連続して魔法を放つ。
柊はその攻撃を回避し、または剣で受け流し、防ぎきっている。

「ええいっ、私を無視するな、貴様ら! まとめて死ねッ! 氷爆ッ!」

そして放置されたことに耐えかねたらしいエヴァンジェリンが柊と魔王の両方を巻き込む勢いで氷魔法を放つ。

「――ッ、≪エア・ダンス≫!」
エヴァンジェリンが魔法を放つと同時に、風属性の魔法で移動力を上げて範囲外へと逃れる。

「この状況で俺を巻き込みかねない範囲で魔法撃つか!?」

これだから異世界は、と呟くが、次の瞬間には元の世界でも似たような扱いだという事実に気づき軽く落ち込む。

魔王ローリーの方はというと、エヴァンジェリンの魔法には抵抗したようで、軽く凍傷を負っているようだが、それほどはダメージは通っていないようだ。

――それでも、世界律を突破しているのだ。

『クッ、我が躯に傷を負わせるとはな――』

そう言ってエヴァンジェリンの方へ目玉をギョロリと動かす魔王。
そして歯をむき出しにして豪快に笑う。

『なるほど――幼女だな!』

「まて、名前のままの性癖なのかよっ!?」

嬉しそうに幼女と言う魔王ローリーに向かって柊が叫ぶ。
魔王の台詞の気持ち悪さに、二の腕に鳥肌が立っている。

一方、エヴァンジェリンはというと。

「誰が幼女だ、誰がッ!
 私はこれでも六百年以上の時を生きる真祖の吸血鬼だ!」

幼女呼ばわりが余程気に入らなかったらしく、顔を真っ赤にして怒鳴っている。


299 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 クライマックス:2008/12/05(金) 00:17:12 ID:DXW+0jHt

『六百歳以上でも幼女。そう……永遠の幼女。
 なんと素晴らしい……!』

「だ、ダメだこいつ……」

ダメな性癖を垂れ流す魔王に、柊もドン引きだ。
そしてその発言にエヴァンジェリンも完全に堪忍袋の緒が切れたようだ。

「ふ、ふふふふふ……殺スッ――!」

どす黒いオーラと殺気をまき散らして魔王ローリーを睨む。

「柊蓮司!」

「お、おう。なんだ?」

迫力に押されつつ返事をする。

「あいつは貴様の敵だと言っていたな……」

「あ、ああ、そうだ」

黒いオーラを辺りに撒き散らすエヴァンジェリンに引きつつ頷く。
そんな柊の様子を気にもとめず、彼女は尊大に言い放った。

「光栄に思え――手を貸してやる」

「は?」

「ヤツを倒すのに手を貸してやると言ったんだ……
 ――何が幼女だ……何が永遠の幼女だ……ふ、ふふふふふ――」

エヴァンジェリンは完全にブチキレていた。
某連邦の黒い悪魔並に。

エヴァンジェリンはありったけの魔法薬を取り出すと、鋭い声で詠唱を開始する。

「リク・ラク ラ・ラック ライラック!
 来たれ、氷精、大気に満ちよ。
 白夜の国の凍土と氷河を……!」

エヴァンジェリンの両手に握られた魔法薬の瓶が、音を立てて砕け散る。
大気中に散った液体は、媒介となり大気へ冷気を呼び込む。

「凍る大地(クリュスタリザティオー・テルストリス)ッ!」

詠唱が終わる。
大気へと呼び込まれた冷気は魔王ローリーの足下へと収束し、瞬間的に爆ぜた。
一瞬にして、地面から花が咲くように氷が突き出した。

『グッ……だが、この程度……!』

魔王ローリーは氷に拘束された腕や足を力ずくで引きはがす。
魔力のほとんどが封じられた状態のエヴァンジェリンの魔法ではこれが限界だった。


300 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 クライマックス:2008/12/05(金) 00:18:45 ID:DXW+0jHt

だがその僅かな隙は、彼にとっては十分過ぎた。

エヴァンジェリンの魔法が着弾した瞬間、柊はプラーナを開放し駆けだした。
プラーナによって強化された脚力で、柊が駆け抜けた後の地面が抉れる。
その足跡は瞬く間に氷に戒められた魔王へと迫る。

「≪魔器解放≫ッ!」

本来の力を解放した魔剣を魔王ローリーへと力任せに叩きつけた。
三日月の様に魔剣の軌跡が弧を描く。
魔剣の生み出した斬撃は魔王を真っ二つに斬り、その衝撃で氷塊を砕き、舞い上がらせる。

それだけの攻撃を行った柊はというと、自分で生み出した攻撃を今の年齢の体重では支えきれず、後方へと転がっていた。

「っくしょ、いってー」

「ふん――片付いたか」

そんな転がる柊を完全に無視し、エヴァンジェリンが制服の裾を払いながら呟く。

「俺のことは完全に無視かよ……」

そんなエヴァンジェリンをいろいろ諦めた視線で見つめた柊は、魔剣で体を支えて立ち上がる。

そこへ。

『よくも……よくもやってくれたな……!』

魔王の声が頭上から響く。

「――ッ!」

「ふん、しぶといやつだ……」

その声に二人が身構え、空を見上げる。

そこには躯が半分になった魔王ローリーが浮かんでいた。
半分欠けた顔が怒りの表情を浮かべている。

『ウィザード風情が……貴様は絶対に許さん、柊蓮司!』

「……だったらなんだってんだ」

魔剣を構え直し、挑発するような態度で言う柊。
魔王は残った片手の指を柊へ向け、まるで呪いをかけるような声で言う。

『……次は、貴様に魔王の真の怖ろしさを味わわせてやる……!』

その言葉と同時に、魔王ローリーの周りの空間が歪む。


301 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 00:19:29 ID:ai/ORbTY
支援

302 名前:ネギま!×ちびらぎ 1話 クライマックス:2008/12/05(金) 00:20:03 ID:DXW+0jHt

「――ッ! 待てッ!」

柊がその言葉の意味に気づいた時には遅かった。
魔王は歪んだ空間へと姿をかき消し、どこかへと消えていった。
月匣が解除され、紅い月は本来の月の色へと戻る。

――つまり、魔王ローリー=ショ=タは逃げたのである。
柊に向けらた言葉も結局のところ、ただの捨て台詞だった。

「に、逃げやがった!?」

辺りの気配を探るが、エミュレイターらしき気配は微塵も感じられない。

「本気で逃げたのかよ……。
 ――まあ、これで一段落つい……た……?」

これで一安心、とばかりに魔剣を月衣にしまい込む。
だが、それと同時に柊はあることに気づいた。

「って一段落じゃねえ!」

そう、ここはファー・ジ・アースではなく異世界である。
この世界の常識にもそぐわないエミュレイターを放置するわけにもいかない。
それに。

「がっ……学校は!?」

これで彼が学校へ行くのも、元の年齢に戻るのも、何時とも知れなくなってしまったのである。

その事実にがくりと膝をつき座り込む柊。
肩を落として黄昏れる柊にエヴァンジェリンが歩み寄る。
そして、彼の首根っこをひっつかみ、

「さて……詳しいことを聞かせてもらおうか、柊蓮司。
 ――もちろん返事は『はい』か『イエス』だ」

凶悪な笑顔で言った。
誰かを思い出すようなその言葉にとどめをさされたかのように、柊はがっくりと項垂れ、力なく頷いた。


303 名前:ネギま!×ちびらぎの人:2008/12/05(金) 00:22:26 ID:DXW+0jHt

祝・シャントット様 ディシディア出場決定&追加シナリオ決定!

と、いうわけで。
以上、大惨事のクライマックスでした。
短くて申し訳ない。
納得がいかなくて何回か書き直して、その度にシリアスから遠のいて
どんどん大惨事っぽくなっていって、どうしようかと弟に相談したら
「汝の為したいように為すが良い」
と言われたので大惨事のままにしました。

実はこの話、リプレイっぽいイメージで書いていたりするので、
大惨事っぽくなるのも仕方ないですよねー。
1話のイメージは『ちゃんと合流しないダメなプレイヤーたち』なので、なんか勘違いっぽく。
いや、さすがにそろそろちゃんと合流しますよ?

プロット的な物体は学祭前ぐらいまでは微妙にできているので、ちまちま進めていこうかと思ってます。
筆はだいぶ遅いので月1で投下できればいい方ですが。
ストックがなくなってきて月1も怪しいのは内緒ですよ?

次回は1話エンディングです。


304 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 17:46:44 ID:FDtL7tuK

…名前、これで決定なのな。
まだ地味に何も始まってないのが微妙に米しにくいが、ネタ的には面白かった

305 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:20:56 ID:2/TCqGQz
GJ!!。
しかしひどい名前の魔王だなw←誉めてます。

プラーナを補給したようですが、魔法先生たちが
「うわー、だめだー」
をやってくれたのでしょうかw。

306 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:32:10 ID:xCBQ6MO+
>>305
何を言ってる?!
ひどい名前だと?!

言動だってひどいじゃないか。(←超ほめ言葉)

さて、話して判ってもらえればよいのですがー。

307 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:57:20 ID:cBxzfrcY
「敵の敵は味方」理論で一時休戦辺りが落とし所かも?

どうなるか次の投下が楽しみだぜw

308 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 00:10:25 ID:luIA8dH+
魔王ローリー=翔太
濃いおひげが魅力のナイスミドル(CV若本)
ライフパス:かつてはショタだったが今は中年である
『六百歳以上でも幼女。そう……永遠の幼女。なんと素晴らしい……!』
                                             まで妄想した

309 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 00:19:16 ID:DlM0bA9v
>ネギまの方
投下乙です。ゆっくりの更新でもよいです、もっとお話読ませて下さい。
しかしヒドいwwこのダイナシ加減は他の作品にないものだと思います。むしろゴーゴー!

しかし、説明の後どうやって柊がネギま本編に近づくのか(男・8才・小学生)。次回更新を楽しみにしています。


それにしても、感想レスつけるなら作者さんへの投下乙は基本的に言うのが礼儀ってもんでないかいみんな?

310 名前:みつやん:2008/12/06(土) 00:43:16 ID:rRaLI57O
ネギまの方、投下乙&GJです!
こういうぐだぐだ具合って、バランス難しくてとても書けません(汗)自分のぐだぐだはホントただぐだぐだなだけになる(汗)


改めまして、どうも。去年プレイしたっきりのゲームでクロス書いてるアフォです。………多分書くためにまたやりますが。
で、よく考えたら、世界観は作中で説明できても、ある程度ゲームシステムも把握してないとわかりにくいストーリー構成であることに気づいて、解説(汗)

「聖剣伝説 LEGEND OF MANA」は、68話の短編イベントをクリアしていくフリーシナリオ形式のアクションRPGです。各イベントは連続性や共通キャラクターでいくつかのシリーズに分かれています。
ランドメイクシステムになっており、特定イベントで入手する「アーティファクト」というアイテムをフィールドに設置することで、個々のアーティファクトに呼応したランド(町やダンジョン)が出現します。
主人公はファ・ディールという世界に住む人間(男女は選択可)です。容姿以外に特に何の設定も持たず、選択肢以外の台詞は言わない(一言だけ例外がありますが)という、完全なプレイヤーの分身です。何せ初期設定の名前が『YOU』ですから(笑)
彼(彼女)が大きな樹に語りかけられる不思議な夢を見て、冒険に出かけるところからお話が始まるのです。
また、別データの主人公を2Pとして召還し、同じファ・ディールを冒険することもできます。

自分のクロスでは、LOM主人公はmy設定で行きます。2P主人公の方も出します。
ゲームでは多かれ少なかれ各シリーズのイベントが混ざってしまいますが、話がわかりにくいので、ゲームと矛盾しても、ある程度各シリーズごとに分けて書きます(汗)
ゲームをやった人で、「この順番のイベントクリアは無理だろ!?」と思っても、流してやってください(汗) できるだけ、矛盾しないよう頑張りますが。
またゲーム本編ではカットされてしまった、アルティマニア(完全攻略本)掲載のエピソードも多少混ぜます。

長々と解説&いい訳すみません(汗)そして、本編も相当長くなります………ORL
初クロスでこれは厳しかったかもと後悔しつつ、時間はかかっても投げないように頑張りますよ!

とりあえず、今からこないだの続き投下します〜!
むっだに長くなった気がするんで、支援欲しいです(汗)………まだ、イベントパート入ってないですけどね!(泣)

311 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 00:45:21 ID:DlM0bA9v
じゃあとりあえず支援撃っとく

312 名前:LEGEND OF MANA 〜あるいはある異邦人の物語〜 【01.ハジマリ】:2008/12/06(土) 00:45:41 ID:rRaLI57O
《キタク 〜Get home/Entrust〜》

 まず、見えたのは木目の天井だった。
「―――ここは………?」
 柊は自分の位置を把握できずに呟いて―――つい最近、同じような言葉を呟いたことを思い出した。
 暗闇の中で会った少年。残るというのを抱えて半ば無理やり連れ出して―――今、仰向けに横たわった身体の上に、重み。
「―――っ! お前、無事っ………!?」
 首を起こして言いかけ、柊は不自然に言葉を切る。―――自身の身体の上にあったものを見て。
「………魔剣………?」
 己の上にあったものを抱えて身を起こす。それはあの金髪の少年ではなく、己の相棒たる魔剣だった。
「―――あいつは………!?」
 少年の姿を探して、辺りを見回す。
 柊が横たわっていたのは、質素な寝台。部屋の一段奥まったところに備え付けられたものらしく、枕元と足元、右手は壁に囲われ、開いているのは左手の空間だけ。
 その唯一開いた方を見遣るも、見える範囲に少年の姿は見当たらない。
「―――どこに………!?」
 まさか、あの闇の中に置いて来てしまったのか。助けられなかったのか。―――そんな焦燥と危惧を抱いて、柊は魔剣を抱いたまま寝台から出て立ち上がる。改めて辺りを見回した。
 カントリー調の部屋。あるのは、寝台とナイトテーブル、寝台のすぐ傍の壁際に観葉植物らしいサボテン。寝台から離れた所の壁に窓が一つ。陽光の角度からして、おそらく今は早朝、覗き見える木の枝の具合からして、ここは二階だろうか、と柊はあたりをつけた。
 その窓のある壁際から寝台の方に向けて下るような形で、階下への階段。寝台のすぐ脇からも、手すり越しに階下が覗ける形だ―――角度的に見えるのは階段だけだが。
 もしや下に―――そんな期待混じりの思いを抱えて、階段口の方へと手すりを回り込もうとして―――
「―――っ!?」
 弾かれたように振り返った。―――誰かの視線を感じて。
 しかし、やはり室内に人影はない。そちらにあるのは鉢に植わったサボテンだけ―――なのに、
 ───目が、合った。
「………は?」
 柊は目を瞬く。そちらに歩み寄り、身を屈めて、まじまじと“それ”を見遣った。
 幼児の背丈ほどのサボテン。丸い茎、その上の丸い瘤には、大輪の赤い花が咲いている。茎の左右から伸びる枝―――それとも、これは平たい瘤なのだろうか。そのフォルムは、まるで、赤い帽子を被り、両手を広げているようにも見える。───と、いうか―――
「………顔?」
 その、帽子を被った頭部に当たる瘤には―――確かに、顔があった。
 つぶらな両の目に、笑みの形に弧を描いた口。どこかユーモラスな、見ようによっては可愛いといえる顔。
 誰かが、人型に見えるフォルムのサボテンに悪戯描きした―――そうとも見える。
 だが―――しかし、落描きの目と視線ががっちりあったまま、ということは、ありえるのか。
「………人面サボテン?」
 思わず、それを指さして柊は呟く。
 瞬間―――左右に延びたその枝の片方が、“動いた”。
 触れる、柊の指先と枝先の指のような棘。―――さながら洋画の少年と地球外生命体のようなコンタクトは───ぷす、とどこかコミカルな効果音を伴った。
「―――っでぇっ!?」
 柊は慌てて指を引く―――というか、痛みで身を仰け反らせる。
「ヒトを指さしちゃ、いけないんですよ」
 幼い子供のような声で、加害者である“それ”はそう言った。
「人を棘で刺すのはいいんかいっ! っていうか、何なんだお前!?」
 痛いやら訳がわからないやらで柊がそう叫べば、“それ”は暢気な口調で答える。
「悪い子にはハリセンボン。ぼく、サボテン君」
「―――って、名前まんまかっ!?」
 わかりやすいといえば聞こえはいいが、あんまりなネーミングに思わず柊はツッコんだ。
 そのツッコミをさらりと流し、サボテンが問う。
「そーゆーきみは、だれですか」
「俺は、柊。柊蓮司」
 と、答えてから、訳のわからない不思議生命体をまともに相手にしている自分に気づいて、思わず凹む。
 ───いや、変な知り合いは、今までにもいたし―――
 柊はそう自分を慰めようとして―――容易に“変な知り合い”が思い描ける自身の交友・対人関係に、余計に凹んだ。

313 名前:LEGEND OF MANA 〜あるいはある異邦人の物語〜 【01.ハジマリ】:2008/12/06(土) 00:47:11 ID:rRaLI57O
 しかし、現状、いつまでも凹んでいられない。
 はあ、と一つ息をついて、気持ちを切り替えた。―――とりあえず、話せるということは、情報を聞きだせるということだ。
「なあ、サボテン。ここ、お前の家なのか?」
「ここは、ユウの家。ぼくはユウの家族、ですよ」
 柊の質問に、サボテンは相変わらず暢気な口調でそう答える。
「その、ユウってやつは今どこに?」
 下か? と問えば、サボテンはその腕―――のような枝だか瘤だか―――で、真っ直ぐに柊を示して、言った。
「―――そこにいる」
 柊は思わず背後を振り返る。しかし、誰もいない。
「………誰もいないじゃねぇか」
「ちがう」
 漏れた呟きに返る、短い否定の言葉。―――何が違うのか。柊は眉をしかめて、サボテンに向き直る。
 と、その視線が、柊の背後ではなく―――柊の抱えたものに向けられていることに気づいた。
 飛び起きた時から抱えたままだった魔剣―――これがどうかしたのかと、柊はまじまじと魔剣を見つめる。
 紛れもなく、自身の半身であり相棒である刃。柄に抱いた赤い宝玉。古き言葉を文様のように刻んだ長大な白刃。―――その刃の柄元に嵌った玉。
「………あ?」
 見慣れた相棒に見慣れぬものを見つけて、柊は思わず呻く。―――この剣の刃に、こんなものはなかったはずだ。
 それは、清んだ空のような青い玉だった。蜂蜜色、というべき金の縁取りが、白金の刃に映える。
 と───つい最近、こんな色を見た、と思い出す。
「―――これ………あいつの………」
 呆然と、柊は呟く。その色は紛れもなく、柊を助けてくれたあの少年の瞳と髪の色。
 そして、仄かにその玉から感じるその気配(プラーナ)―――それは、確かに、あの少年のもの。

 ───何が起こるか、わからないよ!?―――

 光の柱に二人で入った時、少年は確かにそう言っていた。しかし―――
 ───まさか、これ―――
 自身の想像に、柊が凍りついた時―――幼いような声が、暢気な口調で、言った。

「ユウ―――おかえり」

 はっとなって柊が見た先で、サボテンはただ真っ直ぐにその玉を見つめていた。

 ───お兄さんを助けるには、お兄さんに僕の場所を渡すしかないんだ―――

 少年は、そうも言っていた。

 サボテンのその視線に、その言葉に、柊は理解する。普通ならありえないと、思う端から切って捨ててしまうようなその事態を。

 この、金に縁取られた青い玉が―――あの少年なのだと。
 そして、サボテンの言うユウとは、彼のことで―――ここは、彼の家なのだと。

「―――なんで………」
 柊は思わず唇を噛む。鉄の味が、自責と悔しさを伴って、口の中に広がった。
 あの時、少年はリスクを指摘したのに。そのリスクは、それを無視した柊ではなく、彼の方にかかってしまった。―――この事態は紛れもなく柊の咎だ。
 ───なんであの時、もっと別の方法を考えなかった!―――
 あの闇に長くいるのが危険だったとしても―――もう少し何か考えれば、二人とも、もっと安全に脱出する方法があったのではないか。そう、己の短慮を責めずにいられない。
 と、立ち尽くす柊に、のんびりとした声がかかった。
「ありがとう、ですよ」
「―――え?」
 かけられた言葉の意味がわからず、柊は声の主を見つめた。
 見つめる先で、不思議なその生き物は、ぽつぽつと言葉を紡ぐ。
「ユウ、消えなかった。柊が連れて帰ってきてくれた。だから、柊にありがとう、ですよ」
 余りにも単純な―――真っ直ぐな、感謝の言葉。それに、柊は当惑する。
「………こんなんなっちまったのに?」
「どんなカタチでも、ユウはユウ。だからよし」
 なんだか偉そうな口調で、サボテンはそう言い切った。
 ───どんなカタチでも―――
 柊は、手にした魔剣、その青い玉を見つめる。―――仄かに、だが確かに感じる、その存在(プラーナ)。

314 名前:LEGEND OF MANA 〜あるいはある異邦人の物語〜 【01.ハジマリ】:2008/12/06(土) 00:48:08 ID:rRaLI57O
「………そうだな」
 柊は頷く。―――彼は―――ユウは、まだ消えていない。存在を失った訳ではない。ならば、まだ―――何か、方法があるかもしれない。
 やり直せない過去を悔いるより―――今、これからできることを考えよう。
 そう、気持ちを持ち直して―――意識が前を向いて、はた、と気づく。
 目の前の珍妙な生き物。それは、柊の知る、どんな生命、魔性にも当てはまらない。
 と、いうか、そもそも―――
「………ここって………どこだよ?」
「だから、ユウの家」
「いやそういうことじゃなくて」
 呟きに律儀に答えてきたサボテンへツッコみつつ、柊は思い出す。
 ユウがあの闇の中で言っていた「ここはファ・ディールの人間界と妖精界の境界」という言葉を。
 つまり―――ファ・ディールとは、『人間界』と『妖精界』を内包する場所。しかし、仮にも、『界』とつくものを内包する以上、それがただの地名でもあるまい。
 即ち、ファ・ディールとは、一つの世界の名前。―――柊の知らない、異世界の名前。

「―――って、また異世界かよぉぉぉぉぉおおおッ!?」

 思わずそう絶叫した柊に、
「新しい家族は、ちょっとうるさいです。まる」
 サボテンが、呆れたようなニュアンスを滲ませて、そうボソリと呟いた。

315 名前:LEGEND OF MANA 〜あるいはある異邦人の物語〜 【01.ハジマリ】:2008/12/06(土) 00:49:13 ID:rRaLI57O
《キョウリ 〜Hometown/Image〜》

 とりあえず、異世界に来てしまったという状況は理解した。理解したのだが―――
「なんで、いきなり異世界にいんだよ、俺………?」
 柊は寝台に腰掛けて呻く。異世界に来た―――あの闇に落ちたきっかけが、どうしても思い出せない。
 ユウは言っていた。あの闇は、全てを曖昧にする、と。僅かな間ながら、あそこにいたことで、柊の記憶は一部曖昧になってしまったらしい。
 ここ数日の記憶を辿って、思い出そうとするのだが―――
「アンゼロットに拉致られて、依頼こなして………で、家に帰る途中で………?」
 そこで、記憶が切れている。誰かに声をかけられた気がするのだが―――誰だったか。
 引っかかって抜けない棘のような不快感ともどかしさ。―――忘れてはいけないことを忘れているような―――
「―――だぁっ、思い出せねぇぇぇぇえええッ!」
 叫んで頭を掻き毟る。―――ここで悶々と考えても、何かきっかけがない限り、思い出せそうもないと、このことは一時棚上げにする。
「とりあえず―――ここがどういうとこか、知っとかねぇとな」
 ユウを元に戻す術を求めるにしても、元の世界に帰る手段を求めるにしても、この世界のことを知っておかねば話にならない。
「なあ、サボテン。今、ここに住んでるのはお前だけなのか?」
「ちがう」
 即答で否定され、柊は目を瞬く。
「じゃあ―――他のやつは今どこに?どんなやつなんだ?」
 そう訊けば、サボテンは魔剣を抱えた柊の方を見て、
「目の前。一人は青のまん丸になって剣にはまってる。もう一人は目つき悪くて、ちょっとうるさい」
「―――って、ユウと俺かよ!? っていうか、俺も勘定に入ってるのか!?」
 あと、目つき悪いとかうるさいとか余計だ!? とツッコむ柊に、サボテンは一言。
「柊も、家族。ユウが連れて来たから」
 その言葉に、柊はそれ以上の文句を飲み込んだ。代わりに、苦笑気味に言った。
「………そう、か。そうだな。………じゃあ、しばらくやっかいになるぜ」
 どの道、帰り方がわかるまでの住居は必要なのだし、このサボテンの家族―――ユウを魔剣に嵌めたまま何処かへ連れ去るわけにも行かない。少なくとも、彼を元に戻すまでは、ここを拠点に行動するべきだと思った。
「おー、そーしろー」
 サボテンは間延びした声で答える。元々口調が淡々としているので、棒読みにも聞こえるが―――彼なりの歓迎の言葉なのだろう、多分。
「じゃあ、早速、家の中見せてもらっていいか?」
「うむ、許可。―――うむ、とか言うと、ちょっとえらそう、ですよ」
 自分の台詞に、ちょっと感慨深げになるサボテンを、柊は流す。どうツッコんでいいかわからないし。
 とりあえず許可を得たので、早速寝台から立ち上がった。
 二階は先程眺め回したので、とりあえずはまだ見ていない一階を見に行くことにする。
 魔剣を右手に下げたまま、階段を下った。―――別に、何かを警戒しているわけではない。少年の姿が変わったものである玉を嵌めた魔剣。それをそのまま月衣にしまうのを、何となく躊躇っただけである。
 下ってすぐは食堂を兼ねた居間だった。暖炉、積み上げられた薪、ダイニングテーブル、食器棚、カーテンで仕切られたキッチン、ドアが二つ。
 軽く台所を覗くも、あるのは調理道具や食器の類だけだった。
 残るは、二つのドア。―――玄関らしいドアは後回しにして、もう一つの方のドアを開ける。
 その部屋は本棚と机が置かれた書斎だった。全体的に雑然としているのと、ドア脇の棚には本以外のものも並んでいるために、書斎というより物置のようにも見えるが。
 蔵書量はかなりのもの。この世界のことを知る貴重な資料―――と、言いたいところなのだが、
「………文字は翻訳されねぇもんな………」
 思わずぼやく。ウィザードのまとう月衣は、会話だったら異なる言語でもある程度自動的に翻訳してくれるが、さすがに視覚的な情報まではフォローしてくれない。事実、机に置かれた本の表紙のタイトルも、柊には謎の記号にしか見えない。
 と、手にしたままだった魔剣から、同調するような感覚があって―――途端、意味不明の記号の羅列に、柊にも理解できる文字が重なって見えた。
 『世界辞典』―――確かに、そう読めた。
「―――は?」
 いきなりの変化に、柊は面食らう。思わずまじまじと魔剣を―――その刃に嵌った青い玉を見遣った。

316 名前:LEGEND OF MANA 〜あるいはある異邦人の物語〜 【01.ハジマリ】:2008/12/06(土) 00:51:22 ID:rRaLI57O
「………お前が翻訳してくれてんのか?」
 玉に何の変化もなく、響く声もなく、ただ、魔剣越しに肯定する意志のようなものだけを感じた。
「………なおさら、月衣にしまえねぇな、魔剣」
 同調を通じて文字を翻訳してくれるなら、直接身につけていた方が良い。そもそも、僅かながらも意志を残しているらしい彼を、魔剣ごと月衣に放り込むのはかなり気が引ける。―――まあ、意志があるというなら、魔剣自身にも意志はあるのだが。
「となると、鞘がいるよな………」
 背に負うにしろ腰に帯びるにしろ、まさか抜き身のままというわけにはいかない。
 とりあえず、その問題は後で考えるとして、柊は目の前の本―――『世界辞典』を手に取ってみる。
 随分と読み込まれているらしいその本は、開き癖がついていて、ぱらぱらとめくっているうち、自然とあるページで止まった。
 見開きの絵が描かれたページ。―――虚空に浮かぶ、大樹の絵。
「―――これ………!」
 その絵を―――光景を、柊は知っていた。
 あの闇から抜け出したあの時―――墜ちるような感覚の中で、この樹を確かに見た。

 ───わたしを、求めてください―――

 祈るような、その声を確かに聞いた。

「―――“マナの木”………」

 絵に添えられたそのタイトルを、柊は囁くような声音で、呟いた。

  ◇ ◆ ◇

 その、『世界辞典』にざっと目を通してわかったこと。
 やはり、ここは“ファ・ディール”という世界であり、人間界と妖精界の二つに分かれているということ。
 この世界には、“マナ”と呼ばれる力があり、それが全ての根幹だとされていること。―――このマナは、柊の世界で言う、存在の力(プラーナ)のようなものだろう。
 そして、そのマナを源ともいえる存在が、“マナの木”というものだということ。
 このマナの木は、かつてこの世界を創世した“マナの女神”が転じた姿で、しかし、その木は過去の戦乱の最中に焼け落ち、既に存在しないとされているということ。
「………存在しない木、か」
 女神が姿を転じたという聖木。―――もしも、柊が見たあの木がマナの木なら、あの声は―――女神のものだったのだろうか。
「―――って、こんなとこで考えててもわかんねぇか」
 本から顔を上げて、軽く頭を振る。―――と、その拍子に、書斎の奥にある窓の外を、何かが通ったのが、カーテンの隙間から見えた。
「………なんだ?」
 本を閉じて、窓辺に寄る。カーテンを開いて窓の外を見遣れば、玄関のある方向に、緑色の何かがゆったりとした動きで進んでいくのが見えた。
 書斎を出て、玄関へ。その扉は滑らかに開いて、柊を外へと誘った。
 緩やかな風となって、朝霧を含んだ外気が柊の頬を撫でる。―――と、
「こんにちは」
 出てすぐ、そこにいたのは―――緑色の、子供ほどの小さな生き物だった。
 全身を葉に包んだその姿は、童話に出てくる草木の精が、そのまま絵本から飛び出してきたように見える。
「ぼくね、草人」
 その草木の精は、そう名乗り、首を傾けた。
「世界はイメージでできてるんだって。知ってた?」
「………は?」
 無邪気な―――しかし、あまりに唐突な言葉に、柊は思わず間の抜けた声を漏らした。
「………イメージ?」
「そう。そこにあると思うから、あるんだって」
 鸚鵡返しに呟いた柊に、草人はそう答えて、その小さな手に持ったものを柊に差し出す。
 それは、色とりどりの積み木で作られた家々―――質素で小さな町のミニチュア。差し出す草人の様子には、何の意図も窺えない。
「これが、ドミナの町だよ」
 ただ、そうその積み木の町の名を告げた。
 受け取る理由は見当たらないが―――固辞する理由もなかった。目の前のこの相手はこの上なく不可思議だが、邪気や悪意とは無縁の存在だと、そのプラーナから感じ取れたから。
 結局、柊は、逡巡の後、その小さな町を手に取った。───瞬間、

 ───色とりどりの積み木を積み上げたような、質素だが暖かな町並みが脳裏に浮かんだ。


317 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 00:52:11 ID:DlM0bA9v
構え、撃鉄、支援、発射

318 名前:LEGEND OF MANA 〜あるいはある異邦人の物語〜 【01.ハジマリ】:2008/12/06(土) 00:52:20 ID:rRaLI57O
 同時に、風が吹き抜けて、朝霧を辺りから払っていく。
 柊が立っていたのは、小高い丘の上だった。今出てきた玄関から、丘の下へと道が続いている。
 霧が晴れた道の先に、町並みが見えた。
 遠くに、小さく見えるその町は―――まるで、色とりどりの積み木を積み上げたようにも見える。

 その町並みに、何ともいえない感傷が、柊の胸を満たす。

 ───帰ってきた―――

 そんな、帰郷の念と共に、

 ───帰りたい―――

 そう、郷愁を掻き立てる、そんな町並み。

 そこは、多くの人々が交わる町。訪れる所。帰る処。旅立ちの場所。

「―――ドミナ………」

 零れ落ちるように―――柊の唇から、その名が呟かれる。

 それは―――始まりの町の名前。

319 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 00:57:38 ID:DlM0bA9v
支援びーむ?

320 名前:みつやん:2008/12/06(土) 00:58:16 ID:rRaLI57O
………ここは、連投規制も緩かったんですね(汗) びっくりした………
でも、支援くれた方、ありがとうございます!

まだ、マイホーム(主人公の家)から出てないよ………マイホームの敷地すら全部巡ってないし(汗)
えー………次から、ゲーム本編のイベントパート入ります。細かいところうろ覚えなんで、とりあえず明日プレイして思い出す(汗)
………これだけいっぺんに投下できるなら、もっと長く書いても平気ですねっ♪
次の投下は、多分イベント3つ分くらいになるはず………

321 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 01:31:57 ID:+vtmLmO0
うむむ。このままランドメイクのシーンに入っていくんだろうが、
どんな風に描写されるのか楽しみだな。

マイホーム敷地巡りは、工房(予定地)、牧場と回って、果樹園で戦闘だろうか。

322 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 01:38:27 ID:c5ung5oZ
乙でGJ.
そのゲームはやったことないけど、それだけにこれからの展開がワクワクですよー
しかし柊、この世界に引き釣り込んだ張本人を忘れるのはともかく、自分を追ってきた
人のこともわすれてるんですかのー?

323 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 01:49:41 ID:dtU7gTOq
投下乙でー。
変人ばかりの友人関係に凹むとはなんという常識的反応


しかしサボテン、イイキャラだイイキャラだと聞いてはいたがw
ゲーム体力落ちてることを言い訳にしてLOMやってないんだよなぁ、中古で探すかぁ。

324 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 01:49:57 ID:DPVVILD3
正直、『―――』が多すぎて読みづらい。文字数稼ぎじゃないなら控えるべき。

325 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 01:52:46 ID:d9s1H8hc
GJ!
次も期待して待ってますよー

326 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 01:55:10 ID:DlM0bA9v
三点リーダ(…)も三連でなくて二連が普通だわな。細かいこったけど。

327 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 02:05:35 ID:dtU7gTOq
確かに言われてみれば―と…が多いような気もする。読んでる間は気にならなかったけども。

あと突っ込む人が多いのは「!や?の後ろにスペースが無い」あたりか。


どっちも個人的には書き手の勝手で良いとは思ってる。

328 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 02:12:50 ID:CF7fw/sF
これゲーム開始直後か
LOM主人公のユウの名前の由来は
ガンダムのユウ・カジマと同じだな
YOU → ユウ

たしかにデフォルトネームがYOUなんだけどw

329 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 02:14:12 ID:DlM0bA9v
感嘆符・疑問符後の半角空白は読む人のためのもんで、三点二連は文章作法、ダッシュの量は……まぁ好みっちゃ好みだわな。
どこまで作者の好みと言っていいかは判断に任されるけどさ。

内容についてのじゃない改善要望ってことは、逆に言えば「そこだけが気になった」ってことだと思うがね。

330 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 09:21:33 ID:Gg9Sz4Tb
俺はその辺は別に作者の勝手で良いと思うがなー。まあ俺の主観だが。
とりあえずGJと。続きも気になるし。
後細かいことを言うと月衣は言語変換機能は無いぜー。あるのは0−Phoneだ。
いや、それを言い出すと電池切れの時とか、スマートにはそもそもついていないとかの問題があるんだがw

331 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:40:45 ID:iBoa8KMH
                    _ ノ}_/ / /
           __   _ -zニ        厶  ′      保   管
           _>  ̄     ` ヽ.   て_  |_  
   rー--─一' ̄/            \   ノ  フ  ●突撃!パッパラ隊
  く  、      /     |  、\ \ ヽ く ∠_  ●ネギま!×ちびらぎ #01-03
   \ \    ′   / ,イ il  |\ヽ  Yハf_K´  ●青き薔薇の巫女 #01〜#02
    ゝ、 辷_|  /〃 ハ | l  レ´ ヽ 、 |トvハくY   ●LEGEND OF MANA 〜あるいはある異邦人の物語〜 序章〜#01 
      ベ、 ]  | | |/ ̄ヽ| l!| 〃¨ヽ「リ  V⌒ヽ  ●月と星と柊と
           込 |ハ{v≠ベ ヾ| ″  j!   _≧彳L_
            Vnr,!″     _         ア ̄ /⌒i
             〃 ヌ      ヾ'_,   ∠    {_,  |
____    ト--厶 _   ‐'   _,.‐'   , -'´ _,. ┴‐-
.      |`了  ハ二ン____ ニ=一'    厶- '´ __,. --
.   ‐─ォ─\〈_          _ イ }ヽ   _∠ 、 \_
.    、/ |   ヽL __ _.... -‐' ̄ //⌒ヽ'´y─く} 、_
.     X       | `>──---- ´  _|   | /   /  ` ̄
   ∠_ヽ    | 〈          / |   | !  /     ,ィ
.   ─┬U     | /しーv r- r─く  ヽ _い  { _/⌒V
...   |┴       |′   ! i ,ハ   j   〕___`<(  /
. r┴┴ァ     |    ,ハ  ″  V゙ ̄ ̄\ヽ   \ `ーケ
    / O   |  { |     厶     ノ ハ   `ー个

例によって半月放置してましたが、新作多いっすね。
ありがたやありがたや。

質問なんですが、「再構成」とは具体的にどういうジャンルのことなのでしょうか。
公式ストーリーをなぞったようなもの、ifのようなものという認識で合ってます?


>ネギま!×ちびらぎの方へ
ふと http://www32.atwiki.jp/nwxss/pages/251.html を編集してて思ったのですが
ここにある「オープニング」って、「第1話OP」とかに直した方が良いでしょうか?

この扱いが、全体のOP(グランドオープニング)っていうなら別に問題は無いのですが……。



332 名前:みつやん:2008/12/06(土) 13:35:14 ID:7F8G8uV0
様々な感想、アドヴァイスありがとうございます! 嬉しいので早速レス返しに来ました。

>>321様 すいません、ランドメイクのシーンは多分描写できないです……
『アーティファクト』の設定は拾いますが、ランドメイクシステムそのものを話に盛り込むのは難しいんで(汗)

>>322様 ……うひひvv(きくたけ笑い) その辺はこれから書いていきますので、気長にお待ち下さい〜

>>323様 ゲーム本編のサボテンはもっと無口です。……しゃべるとあんな感じですが(笑)
自分の駄文で、ゲームそのものに興味を持っていただけたなら光栄ですvv

>>325様 GJありがとうございますvv その言葉が、一番の促進剤ですvv

>>328様 実は自分、最初『YOU』を英語読みせずローマ字読みして、友達にツッコまれるまで『ヨウ』だと思ってたのは秘密です(笑)

>>330様 すいません、異世界いって言葉通じてる理由が月衣くらいしか思いつかなかったんで(汗)

>>324様、>>326様、>>327様、329様
注意、アドヴァイス、ありがとうございます!
すみません、『―――』が多いのは、昔から心理描写の部分を『―――』で区切る癖があって(汗)
()はルビがわりとか他の部分でも結構使うんで、区別つけたくてやってるんですが……。
他のとこで『―――』が多いのは、単純に文の癖なんですが(汗) 改善できるよう、頑張ります!
まず、せめてこれからは『――』にしようかと(<そーゆー問題か) 『………』も『……』にします。

>>331こと管理人様
乙&ありがとうございます!
再構成、は大体そんな感じであってるかと。少なくとも自分はそういうつもりで書いてます。
……ところでこのAAは何のキャラでしょうか? 多分違うんでしょうが、何かLOMのあるキャラに見えてしょうがない……vv

できるだけ早く続きを上げられるよう、そして読みやすい文に改善できるよう(汗)、頑張ります!!
では、また!

333 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 14:06:35 ID:VP4gM0h/
>331
いつも乙。再構成(本編再構成)は、卓ゲ者には同じシナリオを別キャラでやると言えば通じるはず。
イベントの発生時系列はそのままで、キャラの改変分だけ展開が変化するパターンが多い。
ルイズに召喚されましたスレなんかはまさにこれ。クロス以外だとスーパーシンジもの(エヴァ)とか
強くてニューゲームなアキト(ナデシコ)なんか流行ったなあ。

334 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 14:10:27 ID:iBoa8KMH
>332
>再構成
thxです。

>AA
保管報告の時に貼るAA――ぶっちゃけると、「ここまで保管した」を示す個人的な栞だったり――は、
なるべく、その時に収録した作品に絡めようとしています。

適当なAAが見つからなくて、全然関係なかったり、ダジャレだったりする時もありますけどね。




335 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 14:15:33 ID:iBoa8KMH
すっかり>271を見逃してて、Wiki収録分に適用してなかったんで修正しつつ。

>333
あーあ、あー。なるほど。そういうことね。

336 名前: ◆6H85fs.r4o :2008/12/06(土) 17:47:50 ID:a5JE9aOF
 ねぎまの方、みつやんさん、GJです。続きを楽しみにしています。

 「月と星と柊と」第2回を投下します。
 レスをくれた皆様、ありがとうございました。
 このスレ的に、この内容はどうなのかと不安でしたが、好評なようで安心しました。

 例の「美しい」部分は超女王様伝説で、イラストでカッコ良く描かれていたり、字の文で美しいと明言されていたものです。
コグレさんは「違う! それは私じゃない!」と叫んでいましたが。

アンゼロット様の好みは、某所で「好きな下僕のタイプ:命令に絶対服従する者」「攻略ポイント:やはり実績本位である。
功績をあげればそれだけ注目して貰えるはず」と聞いたので、ああ書きましたが、下僕と伴侶とでは求める物が違うかもしれ
ませんね。

 あと、ベルを当てにするな、との事ですが・・・・・・・・
エルヴィデンスの婆さんは手駒0の状態から始めて、守護者3人倒して世界征服を成功させた訳で。
自分と同じ108の古代神を20体近く含む、100体以上の魔王と4億を超える侵魔を擁する裏界が、アンゼロット様一人の
足止めさえ出来ないというのは、いくら何でも想像の外だと思うのですよ。
 
 では、5時50分から投下します。

・・・・・・・・・すいません。前回使ったトリップを忘れました。
今後は、このトリップを使います。

337 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/06(土) 17:52:35 ID:a5JE9aOF
「さあて、今日はどうやって潜り込もうかしら」

 遥かな高みよりアンゼロット宮殿を見下ろしながら、蝿の女王ベール=ゼファーは呟いた。

「あたしを無視して里帰りしようだなんて、舐めてくれるじゃな――あら? あれは何かしら」

 少し離れた場所に何かが転移してきた気配を感じ、視線を転じれば、そこには錫杖を携えた人の形をした闇・・・・・・・否、瘴気の塊が在った。

「冥魔? 目障りねぇ。消えなさい」

 其方に向けた掌を中心に魔法陣を展開し、攻撃魔法を叩き込む。
 空間の歪みが巨大な槌となり、人型の闇に向けて突き進み・・・・・・ソレが振るった錫杖によって吹き散らされた。

「へえ、少しはやるじゃないの。なら、これはどう?」

 より巨大な魔法陣を多重に展開。
 今度は、太陽の輝きを凝縮した灼熱の槍を撃ち出した。
 巨大な魔力塊が、その進路上の大気を電離させ、光の尾を曳き冥魔に迫る。

 今度こそ仕留めた。

 ベルがそう確信した瞬間、冥魔は全身を鏡面化させ、ベルの自慢のディバインコロナ・ザ・ランスを反射した。

「う゛ぞ?!」

 硬直したベルは自ら放った巨大な火箭が近づくのを、やけにゆっくりとした時の中で凝視した。
 今日、ベルの用意した写し身は柊蓮司との戦いを楽しむ為のもの。
 高位冥魔との戦闘は想定外だったのだ。

(うぁ!? やばっ!)

 ベルが呻いた瞬間、視界が切り替わり、光の槍は遥か下方を通り過ぎて行った。

「危ないトコだったわねぇ、ぽんこつちゃん」
「誰よ、あんた?」

 ベルは自分を転移させた相手を――右目を薔薇の眼帯で覆い、茨のようなレースで飾り立てたドレスを纏い、満面に亀裂
めいた笑みを浮かべた黒髪の少女を――疑わしそうに睨んだ。

「わらわは冥姫王プリギュラ。冥魔王よ」



「な・・・・・・・何なんだよ、アレは・・・・・」

 アンゼロット宮殿 司令室にて。
 柊蓮司は、発すべき言葉を失っていた。

 彼はウィッチブレードに改修した己が魔剣を受け取りに来ていたのだが、宮殿の近くで巨大な魔力反応が観測された為
に冥魔の接近に気付いたアンゼロットと共に、慌てて司令室に駆け込んだのだ。
 そして彼は、モニター越しに目にしたのだ・・・・・・仇敵が、一蹴される光景を。
 ロンギヌス達も大きな混乱に陥っていた。彼らには、ベルが反射された自分の魔法で消し飛んだように見えたのだ。

「ばかな! ベール=ゼファーが!?」「あの蝿の女王がこうも簡単に?!」「こっ、この魔力反応の強さは・・・・・・計測器が
振り切れて、測定出来ません!」「間接的な観測結果から推測される能力は・・・・?! 嘘! この計算絶対間違ってる!」
「はひー!?」「うわーだめだー!」「ああ! 短い一生だったでヤンス!」「冥魔ってこんなに強いの?!」「チートってレベル
じゃねーぞ!」「つか、2ndになってからボスのスペック、インフレし過ぎだろ! 防御力3桁のhp4桁とかどーやって倒すんだ
よ!」「そーだそーだ! 柊先輩でも攻撃力100ちょっとなんだぞ!」「エネミー特殊能力でhpを1にするとかあるけどな!」
「PCは使えないでしょーが!」「召喚魔法でそれを使えるエネミーを―」「レギュレーションで禁止されるだろ。常識で考えて」


338 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/06(土) 17:54:39 ID:a5JE9aOF


           「皆、落ち着きなさい!!」


 アンゼロットに一喝され、うろたえまくっていたロンギヌス達は口を噤んで視線を彼女に集め、次いで、柊をじっと見つめた。


    ああ、そうだ。この二人がいるのだから、怖れるものなど何もないではないか。


 ロンギヌス達の期待に満ちた眼差しを一身に受け、居心地の悪くなった柊は、明後日の方向を向いて軽口を叩いた。

「ベルの奴・・・まるで子供扱いされてるじゃねーか・・・・・直接戦った事はあんまりなかったけど、あいつ結構弱かったんだな」
「当然の結果です。裏界の蝿如きが敵う相手ではありませんわ」
「アレが何だか知ってるのか、アンゼロット!」

 固い声で呟いたアンゼロットを振り返り、柊は再び絶句した。
 その表情を、何と言えばよいのだろう。
 敢えて言うならば―――懐かしさと愛しさと切なさと悲しみと・・・・罪悪感の入り混じった、実に名状し難い表情だった。

「今日はやたらと珍しいもんを見るな・・・・・・いや、まあいい。知ってる事を教えてくれ」

 何度も苦境に立たされた仇敵を容易く退けた未知の敵を前にして尚、柊は恐れる事もなく生まれ変わった愛剣を握り締め
て闘志を漲らせる。一方、アンゼロットは暫し躊躇してから口を開いた。

「柊さん。落ち着いて、よく聞いてください」
「おう」
「今回、貴方は世界を救う運命にありません」
「はあ?」
「寧ろ、貴方がこの件に関わると世界が滅びます。ですから、ここでじっとしていて下さい」
「おいおい、何言ってんだよ? 俺が何度も世界を救ってるのは知ってんだろーが」

 あまりの言い様に困惑し、柊は抗議の声を上げた。
 別に実績を鼻にかける気はないし、自分が行けばどんな危機でも必ず救えると驕っているつもりもない。
 だが、ここまで邪険にしなくても、とは思う。

「説明している暇はありません! この件は、わたくしが一人で対処します!
 総員待機! いいですね! 逆らったら72時間耐久侵魔ハンティングをさせますよ!」

 言い捨てて、勢いよく部屋を飛び出して行くアンゼロットを見送って、柊はボリボリと頭を掻いた。
 訳が分からない。在学中は出席日数がヤバくなるほど任務を押し付けて来たというのに。

「如何致しますか、柊様」

 戸惑う柊に、それまで黙って隅に控えていたロンギヌス・コイズミが、皆を代表して問いかけた。

「んー。あー言われたからって、黙って見てられる訳ねーじゃねーか」
「では、お供致します。他の者には、この場からモニターで冥魔の情報を収集・分析させましょう」


339 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/06(土) 17:56:46 ID:a5JE9aOF
 廊下を駆け抜けた"下がる男"コンビが、テラスに出たアンゼロットに追いつくのとほぼ同時。
 世界の守護者の前に、先程の冥魔が降り立った。

「アンゼロット様!」「待て、コイズミ! 様子が変だ!」

 飛び出そうとしたコイズミを制止して、柊はテラスの出入り口の陰に身を潜めて会話に耳を澄ませた。
 冥魔が、“言葉を発し”、アンゼロットに語りかけていたのだ。
 とても、親しげに。とても、愛しげに。
 そして、アンゼロットもまた、 ―やや、強張った態度ではあったが― まるで旧知の友人に対するかのように、それに応じ
ていた

「久しいな、アンゼロット。また逢えて嬉しいが・・・・此方での生活は随分と厳しいようだな。すっかり、やつれてしまって・・・・・」
「・・・・・・貴方ほどではありませんわ。それで、そのお姿はどうされたのですか?」

 アンゼロットは感情を感じさせない事務的な口調で問いかけ―
 冥魔は、暖かさと優しさを感じさせる声で、その問いに答えた。

「私は身体を砕かれ、世界を奪われた。
 そして冥界に突き落とされ・・・・・・漸く、自分に正直になれたのだ。
 アンゼロット。あのとき言えなかった言葉を今こそ言おう。

   君を愛している。

 私と一緒に来てくれないか。何処かで、二人だけで静かに暮らそう。
 冥界の瘴気の中でもがいている間、君だけが心の支えだった・・・」

 情熱的な、求愛の言葉。だがしかし、それは冷たく拒絶された。

「それは出来ません。わたくしは世界を守護する者です。
 それこそが、いえ、それだけがわたくしの生きる理由なのです」

 柊達の方からはアンゼロットの表情は見えなかったが、冥魔は目に見えて落胆し、空に見える地球を仰いた。

「私よりも、あの青い星の方が大事だと言うのか?」
「わたくしはもう二度と、同じ過ちを繰り返すつもりはないのです」

「そうか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ところでアンゼロット。
 話は変わるが、冥界から天界を守るには、幻夢神の覚醒(=第八世界の滅亡)が不可欠だとは思わないか?」

「痴話喧嘩で世界を滅ぼすんじゃねえ!!!」

 思わず発した柊の怒声に、アンゼロットの肩がビクッと震えた。

「・・・・耳が痛いですわね」
「ん、すまねえ。そんなに大声だったか?」
「そういう意味ではないようですが・・・」

 柊のボケにツッコミを入れるコイズミをスルーして、アンゼロットは苛立たしげに男達の方を振り向いた。

「二人とも下がりなさい! 待機を命じた筈ですよ!」

(アンゼロットは・・・配下には恵まれているようだな・・・・)

 主命に逆らってまで主の身を案じ、この場に駆けつけた二人を頼もしげに見つめた後、エルンシャはアンゼロットに視線を
戻した。

 夜闇の如き黒髪は色を失い、まるで老婆の白髪のようで。
 右目の金色の邪眼は力を失い、左目と同様に澄んだ湖の色となり。
 大いなる母性を象徴する成熟した外見年齢27歳の豊満な肉体は、痩せた幼女のそれへと変わっていた。


340 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:57:27 ID:dtU7gTOq
をいこらロンギヌスどもwwww
本当にアンゼ抜きでだいじょうぶなのかYOふぁ〜じあ〜す。
ああ、言い忘れた支援


341 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/06(土) 17:59:08 ID:a5JE9aOF
(よほど、苦しい日々を過ごして来たのだな・・・・・・)

 誰かが、囁いた。

『あの青い星がお前から彼女を奪い、磨り潰したのだ。
 憎め。壊せ。滅ぼせ。そして、彼女を取り戻せ』

 エルンシャはその声には応えず、力を振るって魂を蝕む瘴気を浄化し・・・・・・急に苦痛を覚えて呻いた。

「ぐっ、が、がはぁっ! な・・・何だ?」
「・・・・・・貴方の本分は瘴気の浄化。その貴方が瘴気で身体を構成すれば・・・・・・自己崩壊を起こすのは必然です」


 錫杖に縋り、膝をついて胸を押さえるエルンシャを見下ろして、アンゼロットは敢えて冷めた顔をして酷薄に告げた。

「そして貴方の魂は、破損した肉体を修復するために大量のプラーナを求める・・・・・・」

 アンゼロットがエルンシャの足元に目を落とすと、床板が塵へと変わりつつあった。


       こんなになってまで・・・わたくしに会いに来てくれたのですか?


 胸を抉られるような心の痛みも、溢れそうになる涙も、氷の仮面を顔に貼り付けて押し殺す。

「わたくし達、世界の守護者が内包するエネルギーの総量は、宇宙開闢に匹敵します。
 つまり、貴方がその状態から完全な復活を遂げるには、世界一つ分のプラーナが必要になるのです。
 ですが、そんな余分なプラーナなど今の主八界のどこにもありはしません。

 冥界の瘴気に蝕まれ、自己保存本能の暴走が制御出来なくなった貴方は、間もなく・・・・・・かの荒廃の魔王と同様に、周
囲のプラーナを無秩序に吸収し、世界を滅ぼすようになります。
 ですから、其の前に」


       せめて、わたくしの手で・・・・・・・


「・・・・・・・・・・・私を・・・・・・・・・・殺すのか? アンゼロット?」

 エルンシャは、自分を愛してくれていた筈の女性が、冷たい表情のまま、魔力を込めた掌を翳すのを呆然と見つめた。

「はい。貴方を殺します。もう・・・・どこにもいない・・・・貴方の、ために・・・・・・」
「ふっ・・・・そうか・・・・・・それも・・・・・・・・・・良いかもしれないな・・・・・・・・・・」

 プラーナを吸い尽くす化け物となった今の自分を見下ろし、自嘲気味に、笑う。

「だが、どうせなら、私のプラーナを吸い尽くしてくれないか? そうすれば私は、君の中で永遠に生き続け―」

「お、おい、アンタ、大丈夫かよ?」
「今、手当てを致します」
「――ッッ! 来るんじゃありません!!」

 心配した下がる男達が慌てて駆け寄って来るのを認めたアンゼロットは蒼白な顔で、横を通り過ぎようとしたロンギヌス・コイ
ズミを殴り倒し、次いで柊の袖を掴もうとして―

「おい、アンタ、しっかりし――?!」

 間に合わなかった。


342 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/06(土) 18:01:56 ID:a5JE9aOF
 エルンシャを助け起こそうとした柊は、その体に触れた瞬間、大量のプラーナを抜かれて昏倒した。

「柊さん!」

 アンゼロットの悲痛な声がテラスに響き―

「アン・・・ゼ・ロット?」

 エルンシャは怪訝そうに、"かつて"彼を愛した女性を見た。


 誰かが、囁いた。

『彼女の心は、もうお前の上には無いのだ。

   実に、身勝手な女でないか?

 世界の危機を招く程に熱烈に迫っておいて、別れの言葉の一つすらも無く一方的に姿を消して。

  お前が思い出を胸に、一人で世界を守っている間に、自分だけは新たな恋を見つけて居たのだ。

   自分だけは新たな恋を見つけて居たのだ。

 しかも、お前を巡って争った恋敵を殺しておいて、だ。

   こんな酷い話が他に有るだろうか? 

  此れでは、殺された恋敵も浮かばれまい。

 此れ程迄に厚顔無恥な女など、魔王の中にも居はしまい。

   こんな女に、誰かに愛される価値が有るだろうか?

 なんと不実な、なんと残酷な、なんと―』

 エルンシャはその囁きから耳を背け、魂を侵食し理性を奪う瘴気を消し去るべく再び力を振るい・・・・自壊した。
 当然だ。彼の魂を蝕む瘴気とは、彼の今の肉体を構成しているものなのだから。

「お゛お゛あ゛、がぁっ!! ア・・・ン・・・・ゼ・・ロッ・ト・・・・」
「エルンシャ様! わたくしは、わたくしはここにいます!」

 崩壊した肉体を修復すべく、無意識に周囲のプラーナを吸収し始めた初恋の相手に縋りつき、アンゼロットは自分のプラーナを分け与えた。

 これで、ひとまずは被害を抑えられる。

 アンゼロットがそう思ったとき、エルンシャは彼女を抱きしめて立ち上がった。

「きゃっ!」

 そして彼はテラスから飛び立ち。

「アンゼロット様!」「コイズミ! 後は任せました!」

 それを止めようとしたロンギヌス・コイズミは、アンゼロットの情報共有魔法により膨大な情報を流し込まれて眩暈を起こし、
倒れた。


343 名前: ◆6H85fs.r4o :2008/12/06(土) 18:06:06 ID:a5JE9aOF
 今日はここまで。
 全国のアンゼロット×柊派にプラーナ全開で喧嘩を売った気がしますが・・・・・・俺は、くれ派だから謝らない!
 そもそも、なんでみんな柊を、他に相手のいる女の子とくっつけたがるのか?
 灯には命が、ベルにはアステートやアゼルが、レンにはガイアのくれはがいるじゃないか! と主張したい。

 エルンシャ様はナイトウィザードだけだと影も形もないので、仕方が無いかもしれませんが。
 全体で見ると、ファルファルロウより出番多いんですけどね。S=Fの公式シナリオに依頼人役で時々出てるんで。
 私的な事は一言も喋りませんが、でっかい神殿に一人で暮らしていたっぽいので、色事に興味はないみたいです。
 超美形で、人々の信仰対象なんだから、望めばよりどりみどりだったでしょうに。ぽぽるちゃ絵の女性の下僕とか。

 世界結界も七砦もない世界を、冥界から湧きあがってくる瘴気から一人で守るのに忙殺されていただけなのか?
 アンゼロット様とイクスィム様の所為で、色事全般に恐怖心を持つようになったのか?
 娘のような存在であるセフィス女王や聖姫達の手前、自重していたのか?
 どうなんですか、きくたけさん?

 次回でパーティが合流します。
 では、また後日。


344 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 18:40:37 ID:7ZGDkNHI
柊(下がる男)のプラーナを吸った…だとっ?!
エルンシャが下がるかどうかはともかく投下乙。

345 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 18:48:16 ID:hRkiM1yy
>>343
投下乙。
緊張感で盛り上がってきた感じですね。

ところで・・・うろたえるロンギヌスの中にどこぞの三下狼が混じってませんでしたかwww
というよりルールブックの解説みたいな会話してどうするんだおまえらww

346 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 19:33:10 ID:wtdIKzCJ
GJ!
こいつらが部下で代理のくれはは大丈夫なのかwww
>「アレが何だか知ってるのか、アンゼロット!」
雷電を連想して吹いたw
世界設定解説でしかエルンシャを知らない新参の俺には、あんまたいしたことない奴って印象しかないw
柊の出番はどうなるのか、これから先の展開が予想つかないぜ!

347 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 20:21:08 ID:VFlmWVvw
柊を他の女とくっつけたい訳でもハーレム展開を望んでいる訳でもない!
ただ、NW的に主役が幼馴染とくっつくのに飽きてるだけであって、また、その方が(ネタ的な意味で)美味しいからだ!
と、柊×魔剣派な俺が主張してみる

……そういや、英魔様度の低いアンゼロットを久しぶりに見たような気分だ

348 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 20:28:52 ID:Tr8OGDeW
乙&GJです!
アンゼ捕らわれのヒロインポジションな引きにワクドキですよ!
でも、色々盛大にツッコみたい(笑)

>「寧ろ、貴方がこの件に関わると世界が滅びます。ですから、ここでじっとしていて下さい」
修羅場発生するからですね! わかります!(笑) ……自分も重度くれ派だけどアンゼ→柊はイケル口(<ぉ)

>夜闇の如き黒髪は色を失い、まるで老婆の白髪のようで。
>右目の金色の邪眼は力を失い、左目と同様に澄んだ湖の色となり。
>大いなる母性を象徴する成熟した外見年齢27歳の豊満な肉体は、痩せた幼女のそれへと変わっていた。
いやそれ別の姿に生まれ変わっただけでやつれてるわけじゃないしvv エルンシャって割と天然?(笑)

シリアスさとおかしさの絶妙なバランスに感服ですよ! 続き楽しみにしてます!

349 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 20:39:08 ID:dtU7gTOq
アンゼがコイズミを撃破したのが
振り向きざまのめり込みボディだったのか、空気の読まないボケ行為への突っ込み的裏拳だったのか、それが一番の問題だ。(そんなわけがない

350 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/12/06(土) 21:39:58 ID:AukzmD2p
10時になったら、投下開始します


351 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/12/06(土) 22:00:09 ID:AukzmD2p
ここで、話はエリスがピンクのうさぎを拾った前日までさかのぼる。

アンゼロット城、ショッピングモール内。そこに、その店はあった。

店の名は、居酒屋『ろんぎぬす』

異世界出身だと言う主人が経営するこの店の方針は、「来るもの拒まず、ただし喧嘩は外でやれ」
訪れたのがどんな人物、否生物であれ、気にせず注文に応える(お代を払わない客を除く)サービス精神。
目の前で異常な光景が起こってもスルーできる肝の太さ。
そしてやたら豊富な人生経験から出てくるアドバイス。
何故か軍人口調の美少女吸血鬼だのハードボイルドな雰囲気の絶滅社のフェレットだのどこぞの魔王の落し子だのと言った怪しげな常連たち。

今やこの店はアンゼロット城の隠れた名所(笑)としてウィザードその他の間でもそれなりの知名度を持っている。
…もっとも、半ば怖いもの見たさといったところだが。

さて、変なもの同士は集まりやすいのか何なのか。この店に訪れる客は、変わり者が多いこの界隈でも特に変な客が多い。
その日もまた、店はそんな変な客を迎えていた。

「おやっさん。おかわり」
その客が店にやって来たのは、まだ日も暮れきっていない、夜の営業を開始した直後のことだった。
黙っていれば金髪碧眼で高級そうなスーツを着たナイスミドル。
およそ居酒屋には似合わないこの男がふらりとやってきて、はや2時間。
延々飲み続け、既に一升瓶を2〜3本は空にしている。
「…大丈夫ですか?飲みすぎは体に毒ですよ?」
「あ〜、い〜のい〜の」
流石に見かねて忠告する店主に男はぷらぷらと手を振って答えた。
「あいつらだってさすがにここまでは追ってこないだろ〜し、ここならプリキュアとばったりなんてことも無いから酔っ払ってても問題ないの」
楽しそうにひとしきり笑ったあと。
「…それに会社も無ければ行くところもない。今さら身体気にしてもしょうがないってね。ハハハ…はぁ」
空元気だったらしく一転してどんより落ち込む。
「考えて見れば、たった1年しかたってないんだよなあ…」
真っ赤な顔をして、ポツリと呟く。
「おやっさん、私はね、ほんの1年前まで出世街道を驀進してたんだよ。文字通り身を粉にして会社に尽くして来たし、成績だっていつもトップクラスだった。
 部署をひとつ任されたのだって他の誰よりも早かったし部下だってちゃんといたんだ…」
遠い目をしながら、苦しかったこの1年を振り返る。
「それがあいつらに関わるようになってから部下は次々殉職、部署は無くなってお茶くみからやりなおし、挙句に会社が丸ごと消滅…ほんと〜にあっという間だった」
微妙に物騒な単語を呟きつつ彼の脳裏によぎるのは、1年の思い出。
すべてはうまく行っていた。あいつらが出てくるまでは。
「心機一転やり直そうとしたらま〜た出てきて、邪魔するし。なんか1人増えてるし。私をリーダーって認めないし」
すっかり愚痴モードに入って男は喋り続ける。
「給料査定ともサービス残業ともリストラとも縁のないガキの癖に夢だの希望だのってきれいごとだけで突っ込んでくるんだもんなあ。
 仕事でやってるだけのこっちはたまったもんじゃないよ。今は人間の世界には迷惑かけてなかったんだから、ほっといてくれってんだよ」
はふう〜と再び溜息をつく。
辺りにどんよりと重い空気が漂う。
その時だった。
「…お客さん、どうぞ」
男の前に小鉢が置かれる。

352 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/12/06(土) 22:03:49 ID:AukzmD2p
「おやっさん?」
「私からの気持ちです。お代は結構ですから、召し上がってください。酒だけじゃあ身体に悪いでしょう」
「しかしだね。私にはもう何にも無いんだ。だから…」
「だからこそ、ですよ」
陰鬱とし始めた男の言葉に重ねるように、店主が言う。
「…私もね、この店始める前はとある組織で働いてましてね」
店主が遠い目をして、言葉を紡ぐ。目の前の、客に対して。
「ガキどもに邪魔されて出世の道がつぶれたり、左遷されたり、慣れない営業やらされたり…色々ありました」
目の前の客は、店主に嫌なことを思い出させた。
それは昔、散々飲まされた、煮え湯の味。愛だの友情だので何度でも立ち上がってくる、常識外れのガキどものこと。
「そんな待遇に嫌気がさして、裸一貫でこの世界に渡って来て…それで、分かったんです」
そう、目の前の客はどこか昔の自分に似ていた。組織を捨て、自暴自棄になってた頃の自分に。
「結局最後にものを言うのは健康な身体です。人間、それさえあれば何度でもやり直せる」
「やりなおす?無理だよ」
店主の言葉を男は自嘲を込めて鼻で笑う。
「私は、負けたんだ。負けた奴には何にも残らない。それはね、私が一番よく知ってるんだ」
そう、知っている。競争に、戦いに負けた奴の末路は、嫌ってほど。
「残りますよ」
だが、その客の言葉を店主は否定してみせた。
「そりゃあお客さんは負けたのかもしれない。けれど、今、こうして生きている。少なくとも、命は残ってるわけです」
目の前の客には頑張ってほしい。そう、素直に思えたから。
「だったら、また始めりゃいいんですよ。勝つまで、何度でも。
 どうせ1回負けてるんだから、また負けたって構わない、どの道勝つまで続けるんだから、て思えば楽なもんです」
そう、客に言うと店主は黙りこんだ。
伝えたいことは、全部伝えたから。
「そうか…そうだよな」
男は心の奥から、じんわりと湧いてきた温かいものに気づく。
そうだ。前に一度だけ、感じたことがある。そう、これは。
「ナイトメアが無くなったときだって、何とかなったもんな」
あの時感じた、開放感。全部なくして、それでも生きていることへの感謝。
「…おやっさん。ご馳走さん、いくら?」
立ち上がって財布を取り出し、店主に問う。
「ツケにしときますよ」
それに店主は笑顔で答える。
「今度は元気な時に来て下さい。お代はその時にいただきます」
「そっか…ありがとう」
店主の言葉に、男は今はありがたく好意を受けておくことにした。
「おいしかった。また、寄らせてもらうよ」
店主への、誓いの言葉とともに。


353 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/12/06(土) 22:10:30 ID:AukzmD2p


「よ〜し、やるっきゃないか。いつまでも無職じゃあ、困るもんな」
店の外に出て伸びをする。
「考えてみりゃあ悪いことばかりじゃあ無いよな」
さっきまでは全然考えられなかったことだが、今は素直にそう思える。
「プリキュアのいない異世界で一からやり直し。うん、悪くない」
うんうんと頷いて見せる。
「ここもエターナルの連中でも躊躇する『閉ざされた世界』だって言うからどんな酷いところかと思ってたけど、なんのこたあない。人間の世界と同じじゃないか」

『閉ざされた世界』…かつていた組織でも誰一人として踏み込んだものがいない魔境。
最近、何故か入れるようにはなったが今はローズパクトの没収が最優先なのと、調査に行こうと言うモノ好きがなかなか見つからなくて放置されている。
そんな話を聞いていたからこそ選んだ世界だった。彼らの追手の掛かりそうのない、逃亡先として。

「ただのブンビーとして、最初から始めるにはちょうどいい世界だ」
これならやっていける。男…ブンビーはそう感じていた。
「そうなると知り合いがいないってのもいかにも新天地って感じで…」
酒で高揚した気分で歩きながら呟いた、その時だった。

どっごおおおおおおおおおおおおおおおおん!

唐突にすぐそばの壁が破壊され、瓦礫と一緒に、ブンビーが吹っ飛ぶ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
空中で体制を立て直しながら、戦闘形態…蜂を思わせる外骨格に包まれた姿へと変え、着地する。
「いったい何がどうなって…ってえ!?」
そして攻撃のあった方を見て、驚きの声を上げた。
なにしろブンビーが見たもの、それは。

コワイナアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!

穴が開いてひび割れてはいるが見間違えようのない仮面をつけ、どっかで聞いたような叫び声を上げる、ある意味非常に慣れ親しんだものだったのだから。


354 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 22:13:13 ID:dtU7gTOq
プリキュアはスルーしてたからさっぱり分からないぜ泣ける私怨

355 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/12/06(土) 22:15:34 ID:AukzmD2p


話はさらにちょっとだけさかのぼる。

コワイナアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!

絶叫と共に巨体から繰り出される一撃が複数の相手…警備任務についている新米ロンギヌスをあっさりなぎ払う。
「こちらロンギヌス警備部隊34号!敵と遭遇。月匣を展開し交戦するも苦戦中!至急応援を求む!」
吹っ飛ばされる前衛を尻目に必死で本隊に連絡を取る後衛のロンギヌス。その声には恐れと焦りが入り混じっていた。
それも無理は無い。
「例の冥魔だ!強すぎる!俺たちじゃあ歯が立たない!このままじゃあ…」
ここ最近、各地で突然出現し、暴れまわっている、かぎ鼻の道化を思わせる仮面をつけた冥魔。
時間も場所も選ばず出現し、その強さは下手な魔王の写し身にも匹敵すると言う奴らの出現。
覚醒して日の浅い、警備程度の任務に回されるロンギヌスたちでは、正直歯が立たない相手だった。
「ぐわあああああ!?」
「ぐっ…強すぎる」
「…くそう、明日は俺の結婚式だってのに…」
必死に支援要請を伝えている間にも、1人、また1人とロンギヌスは倒されていく。
「頼む!このままじゃあ…」
そう言いながら状況を確認したロンギヌスが言葉に詰まる。
「ぜん…めつ?」
気づいてしまったのだ。
既にこの場で立っているのは…自分1人だけだと言う事に。
「あ…あ…」
思わずその場にへたり込む。

コワイナアアアアアアアアア…

冥魔がゆっくりと追い詰めるように近づいてくる。周りには冥魔の攻撃で戦闘不能に陥った他のロンギヌス。
自らの状況を理解した男は絶望し、叫ぶ。
「うわあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!だめだあああああああああああああああああああ!?」
そして、ロンギヌスを嘲笑うように冥魔が腕を振り上げた、その時だった。


356 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/12/06(土) 22:16:38 ID:AukzmD2p

ドシュン!

冥魔の振り上げた右腕が何かに吹き飛ばされて“消失”する。
同時に、足もとから音も無く黒い影が冥魔に迫り、冥魔の直前で飛び上がってその仮面にまっすぐ突っ込んでくる。
それを目…仮面の穴がとらえた瞬間、冥魔はほぼ反射的に残った左腕でその影振り払う。
その左腕は的確に影を捉え、影が大きくくの字に曲がったその瞬間

ボガァン!

大爆発して冥魔をひるませる!
「今だ姫宮!」
それを確認し、冥魔から少し距離を取った影が叫ぶ。それと同時に。
「うん!任せて一狼君!」
建物の屋上から1人の少女が飛び降りて、腕を振り上げる。
「てぇぇぇぇぇぇええええええええええええい!!!!!!!!!!!!」
少女の叫びと共にその腕が爆発的に膨れ上がり、指も手の平も無い、巨大な1本の『杭』と化して、冥魔の仮面に突き刺さる!

ゴヴァイナアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!??????????

その一撃に冥魔は濁った叫び声を上げ、月匣ごと通りの反対側の建物を破壊しながら倒れこむ。

どっごおおおおおおおおおおおん!

「な、何なんだ…」
わずかな時間に起こった出来事についていけず、ロンギヌスが茫然と呟く。
「安心するがいい。ついでだが、助けてやろう。仲間を抱えてすぐにこの場を離れて、後は俺たちに任せるのだ。どりぃ〜む」
そのロンギヌスに答えるように、渋い男の声が聞こえる。
そこには、怪しげな恰好の男が立っていた。眼帯をつけ、ぴったりしたへそ出しの服を着た、年齢不詳の…男。
「お、お前は!」
ロンギヌスはその男のことを知っていた。そう、彼こそはウィザードの中でも屈指の実力を持つ、傭兵ウィザード。
「絶滅社の死の茄子色カブトムシ!」
「…ナイトメア、だ」
ナイトメアが渋い声で訂正した。

357 名前:青き薔薇の巫女 ◆1IXdmMAgHc :2008/12/06(土) 22:18:04 ID:AukzmD2p
今日はここまで。

今日はここまで。前回と一変して親父くさいのは、仕様ですw

>>255-258
だ、大丈夫だよ!幸運の宝石だってあるから!

>>259
純真無垢を地で行くよい子ですからねえ。ゲイザーの趣味なんでしょう。多分。

>>273,>>276,>>277
レモンの浮きっぷりは始まった当初から異常でしたね。
通称も『希望のプリキュア』『情熱のプリキュア』『やすらぎのプリキュア』『知性のプリキュア』と来て『弾けるプリキュア』でしたし。

>>274
そう言えばちょうどそれで7人ですね。SSはラストまさか4人になるとは思ってませんでしたが。

>>275
今回はその6人目が主人公です。ちなみにルール的には夢と友情で恐ろしく戦闘能力が変わるってことで龍使いと勇者のハイブリッド相当。
鬼のような解放力&内包力(回復能力含む)なプラーナを使うと火力その他の瞬間的な爆発力が洒落にならなかったりします。

358 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 22:37:35 ID:r/ESAtU7
GJ!
みんなのアイドル、ブンビーさんキタァァァァ!
プリキュア5が龍使いと勇者のハイブリッドとは!
しかしSSのラストバトルは凄かったぜ!

359 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:01:29 ID:DlM0bA9v
どうしよう、>>348にツッコミ入れるべきなのか……? みんなスルーしてるんだからスルーすべきなのか?

とりあえず、当事者から見ると悲劇でも第三者から見ると喜劇なんて世の中いくらでもあるんだぜ?と言っておく

360 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:12:15 ID:6+htPJcA
このブンビーさんはエターナルを無断退職した後のブンビーさんってことでいいのかしら?

361 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 00:14:40 ID:97LD3ifo
>>343
なんで、って言われてもな……
アンゼでもベルでも魔剣でもおいしく組み合わせられるけどくれはだけはどうしても無理、っていう
俺みたいな奇特な人種だっているんだ、これはもうどうしようもない

362 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 00:50:44 ID:HnRGhXdK
ふ……守護者魔剣同級生同一人物はともかく、幼馴染後輩ぽんこつは何故か受け付けず
明らかに無理がある強化錆び女、挙句の果てに公式でない女化したライバルなどと柊の熱烈な共闘妄想が尽きない俺みたいな奴もいるぜ!

うんゴメン。こればっかりは嗜好の違いでね
どうしようもないほど邪道カプ好きなんだ

363 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 00:59:25 ID:Es8GVjJJ
>361-362
もちろんそれでなんか書いてくれるんだよな?

【イイ笑顔で】

364 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:04:17 ID:HnRGhXdK
正直見せられたもんじゃない妄想の塊で何度も書き直しているうちにどんどん駄目になってくやつだが、一応書いてはいるぞ
柊×トウガで

ちなみに完成しても投下するかは別問題

365 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:21:32 ID:97LD3ifo
マジか。じゃあ俺も柊×茉莉ネタで考えてみるよ!

やっぱり投下するかは別問題だけど

366 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:36:15 ID:72apJoqO
そういえば、柊×トウガって前に見たな。
女の子にトウガが転生してて、柊がフラグを立てた奴。
ただ、掲載していたサイトが掲示板を閉めちゃったんで、もう読めませんが。

367 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:55:11 ID:40HxhGMi
終末の騎士とか連載されてたやつか?

368 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 02:29:49 ID:Gbdtyhan
>>343
自分が好きなものを主張するのはいいけど、マイノリティ(もしくは自分と意見が異なる人)をないがしろにする発言はよくないと思う。
特に、作品を投下してる以上その後もずっとそのレッテルはられちゃうから。作者だと名乗る以上は敵を作る発言を控えることをお勧めする
ここだからまだマシだけど、もっと人の多いとこだとフルボッコくらう可能性もあるよ?とマジレス

>>364-365
大丈夫だって。柊×魔剣で話書けた人間もいたんだから

>>367
え、なにいつの間にNT閉鎖したの?

369 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 04:11:55 ID:MbII71pw
閉鎖したのか…保存しといて正解だった

370 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 10:41:45 ID:hvwQIhrH
――己の萌えを主張するなら、お前さんのペンで語りな。


【読み専が何を言うか】


371 名前: ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 10:48:53 ID:wxTCwpZf
青薔薇の方、GJ!

 「月と星と柊と」第3回を投下します。

 前回は調子に乗りすぎました。ごめんなさい、すいません、謝ります。柊×柊とかいいよね! 投下待ってます!
それから、>>340様 御支援戴きましたのに礼も言わず、大変失礼したしました。・・・・・・・ちゃんと確認しろ、俺。

 お詫びの気持ちも込めて、今日中にもう一度投下できるようにがんばります。

沢山のレスを戴き感謝しています。
何度も推敲した部分より、投下直前に電波受信して書き加えた小ネタの方が反応良いのには複雑な気分ですが。
それと、エルンシャ様は本編だと味方NPCなんであんまり活躍してないのですが、設定をよく読むとけっこう影響力強いんですよ。
ラビリンスシティのルー=サイファー以上に。あと、天然に見えるのは、冥界の瘴気の影響と勘違いスパイラルというやつです。


 では、10時50分から投下します。



372 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 10:52:29 ID:wxTCwpZf
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・で、なんでまたこっちに来たわけ、プリギュラ?」

 裏界の居城に戻り、窓の外で巨大な歯車が回転する部屋でベッドに並んで腰掛けて、ベルはプリギュラと話していた。
 荒い息を吐きながら着衣の乱れを直しつつ問いかけるベルに、此方は息一つ乱さずに、やはり乱れた衣服を直しつつプ
リギュラが答える。

「んー。第一、第三、第五世界はぁとっくに陥落したのにぃ、一番戦力にぃ恵まれてる筈のぉ第八世界の侵略がぁ、全っ然、
進んでないからぁ様子を見に来たのぉ」
「余計なお世話よ。あと、その鬱陶しい喋り方をどーにかなさい」

 二人が服を乱しているのは、プリギュラの物言いにベルが憤慨して取っ組み合いになったからだ。
 帰って来るなり、ベルがプリギュラをベッドに押し倒すのを目撃したリオンが、そこまで餓えていたのか、と思わず書物を取
り落とした一幕もあったが―

「ベル! 気は確かですか?! 
 いくらアステート様を倒されて一人寝が寂しいからと言って、そんな子供を連れ込むなんて!
 しかも! 依りに寄ってエルヴィデンス様の寵童に手を出すなどとは!」
「変な誤解するんじゃないわよ!」
「リオンー、安心していいわよぉ。セルヴィに百合趣味は無いからぁそうゆう心配はいらないわぁ」
「そうですか・・・・・・分かりました。それならごゆっくり」
「誤解だって言ってるでしょーが!」

 その誤解も、たった今解けたところだった。

「世界結界ってのは、ホント厄介よねぇ。ぽんこつちゃんが手こずるのも無理ないと思うわぁ」
「だから、妙な綽名つけないでよ。まあ、あたしの苦労は分かったでしょ。さっさと帰りなさいよ」

 ベルが"苦労"と言った途端、部屋の隅でリオンが肩を震わせた。

(あとで覚えときなさいよ、リオン)

「わらわの用事はぁもう一個あるの。実はセルヴィが、あ、古女王エルヴィデンスって言った方が分かりやすい?」
「エルヴィデンスのババアの事ね。いいわ、セルヴィで分かるから。で、エルヴィデンスのババアがどーしたって?」

「セルヴィはアンタと同い年よぉ、ぽんこつちゃん。
 アンゼロットが第三世界への里帰りの準備をしてるのは知ってるわよね?
 だから、セルヴィはアンゼロットが帰って来ないように刺客を差し向けたの。
 さっき、ぽんこつちゃんをあっさりボコった冥魔王がそれよぉ。で、その結果も確認したいわけなの」

「さっ、さっきはちょっとびっくりしただけよ!
 それに、あんな冥魔一匹だけでアンゼロットをどうにかできると思ってるなんて、あの婆さん、いくらなんでもアンゼロットを甘
く見すぎなんじゃない?」
「んー。まあ、セルヴィはアンゼロットを倒した事があるからねぇ」
「そ、そうなの?」

 意外な話を聞いたベルは驚きに目を丸くし、そこにリオンが口を挟んだ。

「ベル。天界は、百体以上の魔王を纏めて裏界に封じましたが、あの御方については、第三世界に単独で封印しました。
 しかも、あの御方は私達とは異なり、写し身を作れない程に厳重な封印を施されたのです。
 つまり、天界は私達裏界の魔王全員を合わせたよりも、あの御方唯一柱の方が危険だと看做したのです。

 そして実際に、私達はアンゼロットを倒す事も、世界を奪う事も出来ませんが、エルヴィデンス様はそれらを実現しています。
 貴女とエルヴィデンス様とでは、幼児用プラレールと“俺、参上!”な時の列車以上の差があるのです。
 そして、プリギュラは、そのエルヴィデンス様の側近です。
 いつものノリでパールや他の誰かと同じように扱い、もしもエルヴィデンス様のお怒りに触れるような事になれば―」

「うっさいわね! そんなにあのババアの方がいいなら、アイツの部下になればいいじゃないの!」
「いーわねぁ。歓迎するわぁ」「ではお言葉に甘えて」「待ってリオン! 行かないで!」

 ベルは慌ててベッドから飛び降り、リオンに縋りついた。

373 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 10:54:19 ID:wxTCwpZf
「愛されてるわねぇ、リオン」
「まさか。秘密をぶち撒けられたくないだけですよ」

 実際には、リオンには古女王に仕える気は全くなかった。
 何故なら、あの老婆の前で「だって、聞かれなかったし」と呟いた日には、良くて鰻風呂直行、最悪の場合には精神を破
壊され、聞かれた事に答えるだけの人形のような存在にされかねないからだ。

 その老獪さのみならず、部下の扱いの悪さも、性格の苛烈さも奇矯さも、仕草の婆臭さも、総てにおいてアンゼロットを凌
駕する。
 古女王エルヴィデンスとは、そんなお茶目な陰険ババアだ。
 あの老怪を、ベルやパールのように手玉に取る事は絶対不可能。
 
 どんなに有能な部下がどんなに手柄を立てようと、機嫌が悪ければ殴り倒す。
 そんな暴君に仕え、唯々慈悲を乞うだけの日々を送るのは真っ平だった。

 尤も、古女王は飴と鞭の使い方をよく心得ていたし、下僕を処刑する事も滅多にない。
 直属の部下だった闇姫達に呼びかけるときには「私の可愛い闇姫達よ」と言っていたそうだし、ときには部下達に豪華な食
事を振舞う事もある。
 裏界の魔王で、もっと部下を大事にしている者がいるかと聞かれれば返事に困る。
 パールの部下辺りからすれば、慈愛の女神にしか見えないだろう。



 エル=ネイシアの民は被虐癖が強く、身分の高い者に盲従する卑屈な者達だと言われている。
 だが、それは誤解だ。彼等は、自らの意志で仕えるに足る主を選ぶ。

 神の娘にして救世主である聖姫に気に入られ、面と向かって「あたしの下僕にしてやる」と言われて尚、「誰が貴様のよう
な我侭女に仕えるものか!」と叫んだ女王派の下僕もいるのだ。

 彼等は、女王や聖姫の唱える理想に共感し、彼女達の体現する信念に惚れ込んで主と仰ぐ。
 そして、ある者は遠きに在りて自らが生きる上での手本とし、ある者は理想実現の為の汚れ役を買って出る。

 エル=ネイシアの民にとって、女王や聖姫はただの支配階級ではない。
 実現されるべき理想の、貫くべき信念の、守るべき大切な何かの象徴であり、自分に出来ない事を代わりにやってくれる
存在でもあるのだ。

 この世で最も大切な事は何か?
 希望か? 情熱か? やすらぎか? 知性か? 弾けることか?  或いは他の何かだろうか?
 様々な答えがあり、女王も聖姫も、それぞれが別々の事を言っている。
 そしてエル=ネイシアの民は、その中から自分なりの答えを選んでいるのだ。

 エル=ネイシアの民が生きる上での究極の目標。
 それは、自らの総てのプラーナを主に捧げ尽くして消滅し、主と“一つになる”事だ。
 そして共に、その理想の実現を目指すのだ。
 彼等は、それほどの情熱を込めて主を選び、仕えている。

 それほどの忠誠を、古女王エルヴィデンスに捧げる下僕達がいる。
 それだけの魅力が、古女王エルヴィデンスにはあると信じる者達がいる。
 古女王エルヴィデンスとは、そういう存在だ。



 聖姫戦争のある局面において。

 古女王エルヴィデンスは、聖姫のリーダーである聖金姫の率いる軍勢を、たった一人で迎え撃とうとした事があった。
 そして、聖金姫軍の前に単身立ちはだかったエルヴィデンスがいざ戦おうとしたとき、置いていかれた直属の下僕達の軍
勢が大慌てでその場に駆けつけ、敵軍を敗走させた事があった。

374 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 10:55:49 ID:wxTCwpZf
 シャイマールが復活した時。
 ルー=サイファーが双月を掲げた時。
 アスモデートが六柱を起動させようとした時。
 ベール=ゼファーとディングレイが地球とラース=フェリアをぶつけようとした時。

 彼ら彼女らの身を案じ、呼ばれずとも駆けつけた部下がいただろうか。



 秘密侯爵リオン=グンタは、古女王エルヴィデンスに仕えたいとは思わない。

 だが、古女王には、多くの者が忠誠を捧げるに足る“何か”がある事は、否定できない。

 古女王エルヴィデンスとは、そういう存在だ。



「ねえ、ぽんこつちゃん。あの冥魔王が、アンゼロットをどうにかできちゃったらどーするぅ?
 裏界は全戦力を集めても、たった一体の冥魔王に劣るって証明されちゃうわぁ。
 きっと、冥界でウダツの上がらない三下連中が、領地を奪いに押し寄せて来るわよぅ」
「ふん。無理よ。ありえないわ。今頃、柊蓮司に叩っ斬られてるに決まってるわよ」

 プリギュラの揶揄を鼻先で笑い飛ばし、ベルは懐から遠見のコンパクトを取り出して開いた。
 鏡にロンギヌス・コイズミの姿が映り、仮面の上からでもそれと分かる程に鎮痛な表情を浮かべて、搾り出すように言葉を発
した。

「アンゼロット様は・・・・攫われてしまいました」

 ベルの手からコンパクトが滑り落ち、床に当たって乾いた音をたてた。



 柊が目を開くと、視界の総てを、くれはの泣き顔が占めた。

「このばかひーらぎ!」「ぐぼっ!」

 いきなり、鳩尾に肘を落とされた。

「冥魔の心配をするなんて何考えてんのよ! いつもいつもその場のノリだけで動いて心配かけて!
 もうちょっとでプラーナを吸い尽くされて消えちゃうトコだったんだよ!」

 言われて柊も叫び返す。

「目の前に苦しんでる奴がいんだぞ! 放っとけるかよ!!
 それに俺だって何も考えてねーわけじゃねー。
 アイツはアンゼロットの元カレみたいだったし、それに、アイツはプラーナが足りなくて、あのまんまじゃ周りのプラーナを手
当たり次第に吸い尽くしかねなかったんだよ!
 だから、俺のプラーナを分けてやろうとしたんだ!」

 ま、根こそぎ持ってかれたのは予想外だったけどな、と小声で付け加え・・・・・気付く。
 唇に、柔らかい感触が残っていた。

 どうやら、口移しでプラーナを貰ったらしい。

 だが、あの場にいたのは冥魔と大年増とコイズミだ。誰がやったのか、柊は考えない事にした。

(治療行為だ! 気にするな、気にするな、俺!)
「どーしたの、ひーらぎ?」
「・・・・・・・・なんでもねーよ。で、あの後どーなったんだ?」

375 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 10:57:35 ID:wxTCwpZf
 周りを見渡せば、そこはさっきのテラスだった。自分が倒れていた場所の傍にプラーナを吸い尽くされて出来たと思しき直
径約1m深さ10cm程度のクレーターを見つけてゾッとして。
 くれはの顔が赤くて、呼吸が少し荒い事には気付かなかった。

「それが・・・・・・・あの冥魔は柊様のプラーナを吸収した結果、理性が下がったようでして・・・・・急に、飛び出して行きました。
 その後、すぐにくれは様が駆けつけられ、柊様の治療を行ったところです」

 ロンギヌス・コイズミが額を押さえ、ふらつく足取りで歩み寄りながら説明した。

「は、はわ! ひ、ひーらぎが関わると世界が滅ぶってこーゆーことなのかなー?」
「・・・・・・・・・・俺っていったい・・・・・」

 何かを誤魔化すようにくれはが口にした言葉に傷付き、落ち込み掛けた柊は、いつもならここで茶化してくる筈の性悪な外
見だけ小娘の姿がないのに漸く気が付いた。

「おい、コイズミ。アンゼロットはどうしたんだ?」
「アンゼロット様は・・・・攫われてしまいました。追跡部隊も送りしましたが、全員撃退され、見失ってしまいました」
「はわわわ! どーすんのよ、ひーらぎ!」
「ほっとけよ」

 慌てるくれはに、柊は静かに、諭すように告げた。

「あの物好きな莫迦は・・・身体を砕かれて、冥界に突き落とされて、それでも、アンゼロットなんかに会いたい一心で冥魔に
なってまでして、ここに来たんだ。あまり長くないみたいだし、せめて短い間だけでも、好きな女と二人きりで居させてやれよ」

 そして、優しい瞳で、しみじみと言った。

「誰かを好きになるって、凄い事なんだな」
「あの・・・柊様。実は、アンゼロット様からご指示がありまして」

 そんな柊に、コイズミがおずおずと声をかける。

「あの者は、瘴気で体を構成した為に魂を侵食され理性を蝕まれています。
 しかし、プラーナを与えれば瘴気を浄化する事ができ、いずれは―」
「はわ。正気に戻るんだね」

 その言葉に男達は一瞬動きを止め・・・・・・聞かなかった事にした。

「ですが、そのためには膨大なプラーナが必要になります。
 そこでアンゼロット様は、御自分の無限のレべルを活かして暫くプラーナの供給に専念するおつもりなのです。
 留守中の執務については帰省中の対応と合わせ、くれは様にお任せするとの事です」
「はっ、はわっ! あ、あたしに!」
「はい。どうか、よろしくお願いいたします、世界魔術協会代表代行 赤羽くれは様」
「は、はわわわわ。そそそそんな事聞いてないよー!」
「いーじゃねーか、一ヶ月くらい。アンゼロットの里帰りって一ヶ月の予定だよな?」

 突然の事に動揺するくれはを、柊は穏やかに宥めた。

「はい。"里帰りは"一ヶ月の予定です。その前にあの冥魔をどうにかしないといけないのですが。
 今、先程の観測結果から瘴気の浄化に掛かる時間を計算させています」

 それから少しして。鳴り出した0‐Phoneを手に取り、何か話していたコイズミの顔が見る間に蒼くなった。

「おい、どうした、コイズミ?」
「今、計算結果が出たのですが・・・」
「おう。1日か? 3日か? それとも1週間はかかるのか?」
「いいえ、千年です」

 柊とくれはは過去1年間に起きた世界の危機と、それらの事件でアンゼロットが果たした役割に思いを馳せ・・・蒼白になった。


376 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 10:58:37 ID:wxTCwpZf
「はわわわわわわ、どーしよーひーらぎ。あああああああたし、千年もアンゼロットの代わりなんて出来ないよ!」
「せせせっ千年も隠れて二人きりでいるこたあねーじゃねーか! 居場所ぐらいはっきりさせやがれ!」
「どどどーすんのよ、どうやって居場所を探して連れ戻すのよ!」

「ふん、落ち着きなさいよ、二人とも」「「「ベル!!」」」

 意外な声を聞き、驚いて振り向いた3人の視線の先には、最早見慣れてしまったポンチョ姿の魔王が浮いていた。

「このベール=ゼファーが、冥魔なんかに攫われた、情けない守護者の所まで連れてってあげるわ」
「お前ら・・・・・・ホント仲いいんだな」
「誰がよ! か、勘違いしないでよね! あの冥魔が気に入らないから、ぶちのめしたいだけなんだから!」
「ここまでテンプレどおりだとわざとらしいな」
「はわわわわ、そっそれより、どーやって居場所を探るの?」
 
 柊を無視したくれはの問いに、ベルは薄い胸を張って偉そうに答えた。

「そんなの、リオンに聞けば分かるでしょ。ねー、リオン? あら?」
「リオン・・・いないけど」

 懐から0‐Phoneを取り出し、リオンにかける。

「ちょっと、リオン、何処行ったのよ! え、『だって呼ばれなかったし』ですって? 
 とにかく、アンゼロットの居場所を調べなさい! ・・・・・・・・・どう、リオン、分かった? あら?
 リオン、リオン! 返事をしなさいよ! あ、プリギュラ? リオンはどーしちゃのよ? え? そう。
 分かったわ。じゃ、落とし子を呼んで、リオンの手当てをさせて。また後でね」
「お、おい、何があったんだよ」

 心配そうに尋ねる柊に、ベルは悔しそうな表情を浮かべて告げた。

「プリギュラの話だと、書物を読み始めてすぐに、顔から火を噴いて倒れたそうよ」
「ナニをやってんのよ、アンゼロット!」

 その回答に、くれはは思わず叫んだが。

「どうやら、アンゼロット様は、リオンの能力になんらかの対策を採っていらしたようですね」
「当然だな。機密情報が駄々漏れなんて、たまったもんじゃねーぜ」
「だけど、今回ばっかりは、それが裏目に出たわね」
「あ、あれ? 変なこと考えたの、あたしだけ?」

 大真面目な顔でコメントする3人を見て恥じ入った。

「おい、くれは。誰か、探知の得意なウィザードに心当たりねーか?」
「い、一応、あるにはあるけど・・・・・・危険じゃない?」

 いきなり柊に話を振られて戸惑いながら、くれはは答えた。
 アンゼロットの準備した対探知魔法用対抗魔法が、リオンですら倒れる程に強力なものならば、並のウィザードならどうな
ってしまうのか。

「危険だって説明して、受けるかどうかは本人に任せるさ」
「いえ、それではいけません。それでは世界を守れないのです。なんとしてでもやらせなければ」
「けどよ、危険なのはやらせた奴じゃなくてやる奴なんだぜ?」

 反論する柊を、コイズミは真摯な瞳で真っ直ぐに見つめた。

「柊様。もし、誰もが、そんな危険な事はしたくないと言って断ったら、どうするのですか?」
「そ、それは・・・・俺が探知魔法を覚えて―」
「それでは間に合いません。世界を救う為には、時として誰かに危険な事をさせなければならない時もあるのです」
「でもよ・・・・俺は嫌なんだ。何かの為に、誰かを犠牲にするのは・・・」
「は、はわわわわわわ、ふっ、二人とも落ち着いて。し、死ぬって決まったもんでもないでしょーが」

377 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 10:59:37 ID:wxTCwpZf
 対立し始めた下がる男達の間に、くれはは慌てて割って入ったが。

「ふん。アンタも頭が悪いわね、赤羽くれは。リオンですら倒れるほどの対抗魔法よ?
 人間だったら、脳が沸騰して鼻からこぼれ落ちるに決まってるわ」
「はわー!!!」

 ベルの冷酷な発言に悲鳴を上げた。

「現在、ロンギヌスの指揮権は赤羽代表代行に委譲されています。どうか、ご指示を」
「じゃ、じゃあ・・・・・・・・・あ、そうだ! アンゼロットじゃなくって、冥魔の方に探知魔法をかければ―」
「おお! 一瞥すらしていない冥魔の居場所を調べられるのですか! 赤羽家の探知魔法は実に素晴らしいですな!」

 コイズミの発言は心の底から言葉どおりの意味だったが、くれはは頭を殴られたようによろめいた。

「・・・・・ごめん。やっぱ無理」

 やはり、誰かに危険な事をさせなければならないのか。
 アンゼロットは、いつもこんな気持ちだったのか。
 こんな事を、自分達は、ずっと、あの幼女に遣らせて来たのか・・・・

 くれはは、その眼差しに決意を込めて顔を上げた。

「わ、わかったわ。じゃ、出来る限り治癒魔法と防御魔法の使い手を集めて。
 探知魔法を強化するアイテムとか魔法陣はある?
 探知を行うウィザードには、あたしから説明して、納得してもらう。
 納得するまで説得する」
「それでは間に合わないときもあるのです。
 だからこそ、アンゼロット様は仕事を依頼するときはいつも、とても強引なのですよ」



 数刻後、下がる男達は儀式の間の前で、期待と不安を胸に結果が出るのを待っていた。

「・・・・・・・・・なんだか、子供が産まれるのを待ってるみたいですね」
「・・・・・・・・・だな。俺が産まれる時、姉貴もこんな気分だったんだろうな」

 くれはは探知を行うウィザードとバックアップ・スタッフを女性で統一し、儀式魔法を行うときにも男性陣とベルを部屋から排
除した。
 理由を問われると、その方が都合がいい、詳しく説明する時間はない、と早速強引さを発揮した。

 コイズミはロンギヌスを指揮して宮殿内に緘口令を敷き、世界の守護者が冥魔に攫われた事が外部に漏れないよう隠蔽工
作を行い、一通り、遣るべき事を終えて戻って来たところだった。
 既に、宿敵たる蝿の女王に知られているのに何を今更、という気もするが、ベルにはこの件を宣伝する気はないらしかった。
 ベルに出来なかった事を冥魔がやったのだ。この件が外に漏れれば、ベルの評判は世界魔術協会のそれ以上に傷付く事になるのだろう。
 そのベルは待ちくたびれ、腕を組んで壁に背を預けたまま船を漕いでいた。

「・・・・・・柊様。先程は失礼を致しました」
「いや。俺の方こそ悪かった。いくら危険でも、誰かがやらなきゃいけない事だもんな」

 コイズミは柊をじっと見つめた。
 この男は、ウィザードが世界を守る為に、どれ程の犠牲を支払っているか知っているのだろうか。

 強化人間達は、戦闘力を高める為に薬漬けの生活を送り、寿命を削りながら戦っている。緋室灯の余命は、コイズミの見
立てでは、長く見積もって15年、短く見積もれば半年だ。
 赤羽家やドリームマン一族は、小学生の頃から戦場に立っている。
 世界を救う為に、魔王の転生体である子供を殺し、己が所業に耐え切れず自ら槍を折ったロンギヌスは珍しくない。


378 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 11:00:56 ID:wxTCwpZf
 だが、そんな事を教えて何になる?
 この曇りなき無垢なる刃を、悪戯に傷付けるだけではないか。
 彼は何も知らなくてよいのだ。
 この・・・・・・聖なる愚者は。

 世界を救う為に手を汚すのは、自分達だけでいい。

 絶望という言葉すら生ぬるい、圧倒的に不利な、終わりの見えない戦いをこれからもずっと続けていくには、彼のような綺麗
な英雄が必要なのだ。

「おい、あんまじっと見んなよ」
「は、申し訳ありません」

 コイズミに見つめられた柊は照れくさそうに笑い、コイズミは慌てて謝罪した。
 会話はそこで途切れ・・・・・・・・・・ややあって扉が開き、顔を真っ赤にしたくれはが俯きながら出てきた。
 そして、躊躇い勝ちに柊を見ると、すぐに顔を逸らし、小さく呟いた。

「ひーらぎ・・・ごめん」
「くれは・・・まさ―」

「アンゼロット様の居場所が分かったであります!」

 くれはの後ろからひょこっと、鼻にティッシュペーパーを詰めた吸血鬼の少女が顔を出し、巨大な水晶玉を抱えて得意げ
に薄い胸を反らした。

「おいおい、だいじょーぶかよ?」
「ちょっと毛細血管が破裂しただけであります。命に別状はないであります」

 少女はそれだけ言うと、やり遂げた漢の顔で崩れ落ち、ロンギヌス達によって担架で医務室に運ばれていった。

「な・・・何があったんだ?」
「実は・・・捕まってるアンゼロットの姿を男の人に見せるのは忍びなくって、女だけで儀式をやったんだけど・・・アンゼロットが
用意した色々な対抗魔法のなかに対リオン用に特化してあったものがあって・・・それは、探知魔法を利用して術者に余分
な情報を与えて精神的ブラクラを仕掛けるものだったんだけど・・・」
「いったい、何を見たんだ?」「ひーらぎの恥かしい写真」「は?」

 コイズミがポンと手を叩いた。

「ああ、この間、柊様が重症を負って緊急治療室に運ばれたとき、手術が終ってから麻酔が切れるまでの間に、色々写真を
撮っていたのはこのためでしたか。いやはや、さぞやリオンには堪えた事でしょうな」

 以前、リオンに吹き飛ばされた事があるコイズミは、大いに溜飲を下げたが。

「くれは・・・・」「・・・・ごめん」

 儀式の間から、ぞろぞろと出てきた女性陣が、ちらちらと横目で柊を見て行き。

「ええい、いくぞ、ベル! コイズミ! 出発だ!」

 柊は声を張り上げた。



目指すは、狭界の一角に浮かぶ忘却世界。

ラグシア城跡 百階ダンジョン 最深部。

379 名前: ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 11:11:25 ID:wxTCwpZf
 まずはここまで。

 ところで、強さ比較表を作ってみました。
 エルヴィデンスの婆さんは八大神の一角であるアンゼパパのライバルだったらしいので、多分、十六柱神の1柱で。
 悪徳の七王は、堕ちたる守護者エルオースの1/8の神玉から生まれた冥魔七王と同格だそうで。
 守護天使は、守護者の1/12の欠片である聖姫と同格だそうで。
 八大神と十六柱神(アンゼパパと完全体エルヴィデンス)を100%として表に纏めるとこうなると思います。

八大神、十六柱神                       100%
ゲイザー、TIS                       50%?
世界の守護者(アンゼロット、エルンシャ、ジュグラッド、ライム等)10%
冥界最強魔王エンディヴィエ                   6.6666・・・%
神皇姫「私を倒したければ、神をつれて来い!」          3.1666・・・%
聖地姫「私は、世界の守護者の6分の1の欠片だ」         1.6666・・・%
悪徳の七王、冥魔七王「世界を滅ぼすなんて、3日もあれば充分よ」 1.25%
守護天使、聖姫(60レベル)「大陸斬!」              0.8333・・・%
今のエルヴィデンス(精神の一部)                0.6666・・・%(+依り代の能力)

柊蓮司(10レベル)「世界も仲間も、どっちも守る!」       0.1388・・・%
 
 尤も、これは総合能力で「儀式魔法に特化しているので近接戦闘能力は一般人以下です」という例もあるみたいですが。
 また、怪我や封印などの影響で、なかなか全力が出せないらしいケースも多いです。

 この力の差をきちんと表現した上で、説得力をもって逆転させるのが作家の腕の見せ所ですよ!

「世界を救うために必要な資質とは、その実力やレベルなどではありません」by幻導王様


380 名前: ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 11:14:44 ID:wxTCwpZf
 表がずれました。読みにくくてすいません。
 
 では、また午後に。

381 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 12:17:14 ID:CD0Fptrg
投下乙

どことなく全体的に星継がっぽいにおいを感じるですよ
そしてここまで(作中キャラにわかり易く)愛されてる(Love的意味で)柊。どちらもここじゃ始めてかも知れないっすね

382 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 12:20:53 ID:GhM+ebX7
GJ!

合間合間にはさまれる小ネタが楽しい
くれはは耳年増だったんだなw

小ネタの方が反応いいのは反応しやすいし、
本編は物語り途中で感想を書きにくいからどうしても小ネタの感想を書いてしまう

プリギュラをプリキュアの1種だと思ったヤシはオレだけでいい…… orz

383 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 12:46:37 ID:Gbdtyhan
んー……常にテンション高いままでギャグちっくに進んでくから、メリハリがなくてなんかもにょる。
ギャグssになりきれてないギャグssみたいな。次から次に流す感じがすごく惜しいと思う。
ギャグ風味にダイジェスト追ってる気分になる。

384 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 15:51:58 ID:xkrJkccq
GJでした。
ただ、ひとつだけ気になったのは「はわわわわー」なんですが……
くれはってこんなにわをいっぱい言ったっけ?

385 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 16:05:28 ID:72apJoqO
>>367-369
いや、火群の住処なんだが。
あと、サイトは閉鎖したわけじゃなくて、投稿掲示板が無くなっただけ。
まぁ、多くの作品が読めなくなったのは痛いな。

386 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 16:34:05 ID:Es8GVjJJ
>384
アニメ6話ではわはわ言ってたじゃないか

387 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 22:00:18 ID:eJgYblcI
GJ!
>あの冥魔は柊様のプラーナを吸収した結果、理性が下がったようでして
>「は、はわ! ひ、ひーらぎが関わると世界が滅ぶってこーゆーことなのかなー?」

幻砦、エクソダスに続き、王子って人はーっ!www

388 名前: ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 23:54:09 ID:wxTCwpZf
 帰ってきました。
 「月と星と柊と」第4回を投下します。

様々なご意見を戴き、感謝しています。
「はわわわわわわ」は、いつもより動揺しています、という事を表現しようとしたんですが、失敗だったようで。
「はわーーーー!」にしとくんだったかなぁ。それか「はわっはわっはわっはわわー!」か「はわはわはわはわわー!」か。

プリキュアとプリギュラを間違えた方。貴方は悪くない。貴方は悪くないよ。
タイミング的に仕方ないさ。俺も小ネタ拾ったし。

では11時55分から投下します。


389 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 23:57:10 ID:wxTCwpZf
 壁、床、天井にびっしりと刻まれた魔術文字の放つ、仄かな光に照らされた広大な地下空間。
 そこに作られた巨大魔法陣の中央に立つエルンシャは、両腕で抱きしめたアンゼロットの髪に頬を寄せ、何を
するでもなく静かに時を過ごしてした。

 アンゼロットはエルンシャに身を預けたまま、想いを巡らせ続けていた。

 この腕に抱かれる事を望んでいた筈だった。
 この胸に縋ることを願っていた筈だった。
 それなのに。
 いざ、夢が叶ってみれば、罪悪感が胸を灼く。

 こうしている間にも、ウィザード達は魔王と戦い続けているからか。
 他の世界が冥魔に蹂躙されているからか。

 言い訳の余地はある。

 自分は、身を呈して冥魔王の脅威から世界を守っているのだと、言えなくも無い。
 冥界の瘴気に汚染された想い人を大人しくさせるには、これが最善なのだ。
 下手に攻撃すれば、甚大な被害が出るだろう。

 世界の守護者が秘めた力は、宇宙開闢に匹敵する。
 増してや、冥界の瘴気を吸収して理性と引換えに力を高めたのだ。
 その能力は、冥魔七王や悪徳の七王“8”人分を超えるだろう。

 それとも、恋愛とは無関係な理由ではあっても、恋敵を手にかけたからか。
 あるいは、己の愚かさ故に、想い人に多大な苦痛を与えたためか。

 アンゼロットは、自分を抱きしめる瘴気で構成された腕を見下ろした。

 初めて会ったとき、この手はとても綺麗だった。

 一度も血に塗れた事のない手。
 一度も武器を持った事のない手。
 誰かを殺す為ではなく、人々を慈しむ為にある手。
 
 魔王達を殺す為だけに生み出された戦女神達は、その手を美しいと思ったのだ。

 それが、今では冥界の瘴気で形成されていた。

(――――わたくしのせいで・・・・・・・・・・・)

 元々、エルンシャはアンゼロットとイクスィムを手伝う為に遣って来た。
 つまり、二人の戦女神に出来る事は出来なくて良かった。
 戦女神に出来ない事が、出来れば良かったのだ。
 それなのに、二人がファー・ジ・アースに行ってしまった為に、一人で世界を守らなければならなくなった。
 これは例えるならば、後衛型のウィザードが一人でダンジョンに放り込まれたようなものだ。
 後衛としてどんなに有能であっても、生き残れる筈が無い。

 想い人が復活した事は随分前から知っていたが、自分から連絡を取りはしなかった。
 こちらを訪れたエル=ネイシアの民から、もしや先代女王陛下の転生体なのではと問われても、曖昧に笑って
答えなかった。
 会わせる顔がないと、思っていた。
 いつかは会って、謝らなければならないとは思ってはいたが、忙しさを言い訳に先延ばしにしていた。
  
 その結果が、これだ。

(――――わたくしが傍にいれば、こんな事には・・・・・・・・・・・)

 謝りたい。でも、それは出来ない。自分の罪を口に出せば、この方はきっと許してくれる。
 謝罪は、ただ自分が許されるためのものでしかない。相手のためには、ならない。

390 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 23:58:53 ID:wxTCwpZf

 (わたくしは、どうしたらよいのでしょう?)

 思えば、今迄一度でも彼の気持ちを汲んだ事があっただろうか。
 世界の危機を引き起こしながら、その愛を求めたときも。
 聖姫争奪戦に敗れ、身を引く事を決めたときも。
 
 (わたくしは、自分の事しか考えていませんでした)

 彼の事は優柔不断だと、思っていた。でも、逆の立場になって見て分かる。
 彼が、自分達の求愛に応じる事が出来なかった理由が。
 世界の守護者は、世界全体を平等に愛さなければ務まらない。
 恋に溺れては、いけないのだ。

 それに、彼が世界を救う為には、二人の女神双方と力を合わせる必要があったのに。

(わたくしも、イクスも・・・・振られたら、この方を殺すつもりでした・・・)

 彼が女神達の求愛に応じる事が出来なかった理由は、もう一つある。

 彼は、神代の戦さに散ったアンゼロットの6人の姉妹達の残滓より生み出された。
 謂わば、彼女達の姉妹の転生体だ。応じられる訳がない。

 だが、それも、二人の戦女神が彼に惹かれた原因だったのかもしれない。
 彼に、喪った姉妹達の面影を重ねていたのだろう。

 そんな事を考えながら、いつしかアンゼロットは眠りに落ち、七人の姉妹達と共に戦場を駆け抜けた日々を夢
に見ていた。

「エミュ、ルクセクト、ネイ、シェイクリ、イクストラ、アーハルト、イクスィム・・・・・・」

 その寝顔を見つめながら、エルンシャは煩悶した。

「何故、そんなに苦しそうな顔をする」

 誰かが、囁いた。

『彼女の心は、既にお前の上には無いのだ。
 第八世界が、お前から彼女を奪ったのだ。
 さあ、罰せよ。お前を捨てたその女を。
 さあ、滅ぼせ。お前に都合の良くない、この世界を』

「彼女は、私の腕の中にいる。それだけで・・・充分だ」



「エルヴィデンス様、ご依頼の品をお持ちしました」
「おお、エレナ。待ちかねたぞ」

 古女王はエレナの持参した水晶の棺を、その中に納められた美しい幼女を見つめ、愛しげに棺を撫でた。

「こやつはな、とても不幸な一生を送ったのだよ。
 物心付く前に攫われ、世界の敵として育てられ、生き別れの姉妹と戦わされ、自分の父親を愛した女を二人も
死に追いやり、最期には味方に裏切られて殺されるという悲劇だらけの、な」
「ですが、それ全部エルヴィデンス様の所為ですよね?」
「其の通りだが何か?」
「いえ、なんでもありません」

 時々、この面の皮の厚い老獪な古代神が、アンゼロットの母親"ではない"、という事を忘れそうになる。
 いや、もしかするとそうなのか?

391 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/07(日) 23:59:55 ID:wxTCwpZf
「・・・エルヴィデンス様。極めて不躾な事をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「何だ、改まって?」
「エルヴィデンス様は、アンゼロットの父神と好敵手の間柄であったと聞いていますが・・・アンゼロットは天界に
属する者でありながら冥界の魔力を操る力を持ち、古代の暗黒神に近い性質を持っています。
 ですから、もしかして・・・」
「つまり、アンゼロットは、私の娘で地神に攫われたのではないか、と言いたいのか? さて、どうだろうな?」

 韜晦するエルヴィデンスに、エレナは疑念を訴えた。

「アンゼロットは性格面でも、天界の神々よりも寧ろ・・・・古代神に近い。
 天界の住人にしては、極めて例外的な性格をしています」
「確かにな」

 エレナの意見に、エルヴィデンスは首肯した。

「例えば、羊の群れの中に、病気の羊を見つけたとしよう。
 アンゼロットは他の羊に病気がうつる前に、その1頭の羊を処分しようするだろう。
 これは、天界の者の行いとしては、極めて珍しい」
「はい。八大神ならば、群れごと焼却処分して新しい群れを用意する事でしょう。
 ゲイザーがやろうとしたように。
 アンゼロットの性格は、魔王になる前の、本来の古代神のそれに近いのです」
「あやつは優しすぎる。あれでよく世界の守護者が務まるものだと、不思議で仕方がないわ」

 アンゼロットについて語るときのエルヴィデンスの表情を見て、エレナは。

「それでは、アンゼロットはやはり・・・」
「それが、自分でもよく分からぬのだよ。地神に封印される前の事は記憶が曖昧でな。
 エルオースが封印を解けばはっきりするのだろうが。エルオースの復活はまだなのか?」
「申し訳ありません、エルヴィデンス様。復活に必要な生贄を屠る条件がまだ整っていないのです。
 エルオース様の復活は、来年の夏頃になるものと思われます」
「ふっ、エレナよ。お前の言う生贄とは、冥魔七王の事ではないだろうな?」
「まさか。そのような事が在る訳が御座いません」
「どうだかな」

 エレナは棺に目を落とし、誤魔化すように話題を変えた。

「しかし、よろしいのですか? 黄泉返らせた他の姉妹達は皆、冥界を裏切りましたが」
「闇海姫はな、私が育てた5人の闇姫の中で唯一、私を裏切らなかったのだよ」
「しかし、それはエルヴィデンス様の方が先に裏切ったからでは?」
「そう警戒するな。別に重用する訳ではない。アンゼロットの封印の番人にするだけだ」
「そうですか。では、そろそろ失礼させて戴きます。冥魔七王の皆様がお待ちですので」
「おお、誰がフレイスを攻めるかで揉めているのだったな。では公平に決める方法を教えてやろう」

 言って懐から紙とペンを取り出し、何かを書き付け、エレナに渡す。

「これはなんなのですか?」
「これはな、“あみだくじ”というものだ」



 視界の総てを埋め尽くす、冥魔と精霊獣の大軍勢。
 空が三分に敵が七分?
 そんな甘いものじゃない。
 空も海も、まるで見えはしない。

 横を見れば、7人の姉妹達が不敵な笑みを浮かべ。
 後ろでは、彼女達の父神が、古代神と一騎打ちを演じていた。
 八大神と上位の古代神の戦いは、絶大なプラーナと天界の浄化の光と闇界の虚無と冥界の混沌と瘴気が渦巻き、
時間を空間を次元構造を因果律を歪め、操り、崩壊させながら行われ、並の魔王や天使なら、近づいただけで存
在ごと抹消されかねない有様だ。

392 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/08(月) 00:01:09 ID:nfEQBkfZ

「一兵たりとて、ここを通してはなりません。決して、お父様の邪魔をさせてはならないのです」
「ふん、そう気負う事もないだろう。父上の邪魔が出来る程の奴はそうはいない。
あの中では・・・シャイマール、ディングレイ、エンディヴィエ、ハーティ=マナガルム、ルー=サイファー。
そのぐらいか。残りの連中は只の羽虫に過ぎん。わざわざ攻撃せずとも、流れ玉で消し飛ぶさ。
無視していいだろう」

 一拍置いて、姉妹達が噴き出し、笑い出す。困惑して問いかける。

「突然どうしたのだ?」
「ぷっ、くはははは。虫は無視って。あははは。大真面目な顔して変な事言うんだもん」
「わ、わらっちゃダメよ・・・くすくすくす」
「・・・・・いや、そんなにウケなくても」
「ふふふ。貴女が言うから可笑しいのですよ」
「くくくくく。アンタでも、そんな冗談言うんだ、アンゼロット」
「・・・・・心外だな。洒落を言ったつもりはなかったのだが」
「まあまあ、みなさん。アンゼロットのお陰で肩の力も抜けたことですし・・・そろそろ、始めましょうか」

 イクスィムが取り成し、姉妹達が表情を引き締めた。

 ああ、始めよう。殺戮を。蹂躙を。陵辱を。
 我等は八柱の戦女神。
 殺して殺して殺して殺して殺される。
 その為に、ただそれだけの為に生まれ落ち生きて死ぬる者なれば。

 我等の腕は何が為に在る? 赤子を抱き上げんが為か?
 否! 刀金を振るいて、敵を裂くが為に在る。
 我等の身は何が為に在る? 孕みて仔を生すが為か?
 否! 切り裂かれ打ち砕かればら撒かれ、この地の礎と成る為に在る。
 我等の生は何が為に在る? 己が幸福を追い求めんが為か?
 否! 人の世の安らぎを守らんが為、世界を守らんが為に在る。

 我等は八柱の戦女神。魔王達を殺す者。
 敵を打ち据え味方を切り捨て弱者を見捨てて魔王を殺す。

 さあ、往こう、戦場へ。さあ、逝こう、地獄の底へ。
 殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺される為に。
 その為に、ただそれだけの為に産まれ堕ち生きて死ぬる者なれば。



 総てが終ったとき、立っていたのは二人だけだった。
 周囲を埋め尽くす夥しい遺体の向こうに、撤退して行く敵軍を見送る。
 そこに近づく、一つの影があった。

「・・・・・・アンゼロット、イクスィム、お前達は無事じゃったか」
「父上!」「お父様!」

 傷付き、疲れ果てた老人が、よろめきながら歩み寄って来た。
 慌てて駆け寄り、その身を支える。

「古代神は・・・?」
「・・・・・・封印してきた。・・・・・・他の姉妹達はどうしたのじゃ?」
「・・・・・・そこに転がっているのが―の腕で、あっちにあるのが―の脚です。
 それから―の首が落ちているのを向こうの方で見ました」
「おおぉぅ・・・・・・・」

 老人は打ちのめされ、大地に膝を突いた。

「――――すまぬ。出来る事なら、お前達にも人の子らと同じ安らぎを与えてやりたかった・・・・・・・・」

393 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/08(月) 00:02:06 ID:nfEQBkfZ
「嘆く事はありません。人の子らは安らぎ、正の感情に満ちたプラーナを精製するが勤め。
 それを守るが我等の務め。我等はもとより、この為に生まれて来たのです。・・・決して、悲しくなどは・・・・・・・」

 視界がぼやける。熱いものが頬を伝う。

「すまぬ、すまぬ、すまぬ」

 そこに、偉大なる八大神と戦女神の姿は無く、家族を失った父と娘は、泣きながら形見をかき集めた。



 いつの間にか、一人で、砕けたロンギヌスの仮面を集めていた。

「え・・・」

 顔を挙げ、周囲を見回す。地平線まで大地を埋め尽くす遺体はロンギヌスのもの。
 その中に、自分が殺させてきた魔王の転生体の子供達が混ざっていた。
 皆、恨めしそうに、彼女を見つめていた。

 何故、自分達が犠牲にならなければならなかったのか。

 死者達は、一様にそう訴えていた。

「だって、仕方ないじゃないですか! そうしなければ、世界を―」

 嘘だ! 犠牲なんか必要なかった!
 柊蓮司は、そんな犠牲を払わなくても世界を救った!
 世界を救うのに、犠牲なんかいらないんだ!

 耳を塞ぎ、顔を背ける。行くあてもなく走り出す。走って走って逃げて逃げて。

 気がつけば、目の前には緑なす大地が広がっていた。

「―――なんて・・・・・・綺麗・・・・・・・」

 豊かな自然の中で、素朴な人々が、穏やかに幸せそうに暮らしていた。

 そうだ。ここはエル=ネイシアだ。
 もう戦争は終ったのだ。もう敵を殺さなくてよいのだ。もう味方を死なせなくてよいのだ。
 もう自分は戦女神ではないのだ。
 これからは、イクスィムと二人で、慈愛の女神として、この世界を見守っていくのだ。

 イクスィムが遣って来て、横に並んだ。

「魔王達を殺す、ただそれだけのために生みだされたわたくし達が、人々を守り導き慈しむ役目を任されるなん
て、まるで夢のようですわね」
「ああ、まったくだ。だが、この美しい世界を見ていると、あの血塗られた日々の方がむしろ夢のようにさえ思
えてくるな・・・・・・」

 イクスィムの感慨に、心から同意する。

「――――アンゼロット。貴女に聞きたい事があるのですけれど・・・・」
「なんだ、イクス? らしくもなく改まって」

 姉妹の方を見て、凍りつく。
 自分と、同じ顔の少女がそこにいた。
 寸分違わず同じ姿。ただ、髪だけが黒かった。
 自分と同じデザインのドレスを着ていた。
 ただ、色だけが、紅かった。全身の傷口から流れる、血に染まって。


394 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/08(月) 00:02:51 ID:nfEQBkfZ
「イクス・・・・・・」
「何故、貴女がエルンシャ様に抱かれているのですか? わたくしに譲ってくれたのではなかったのですか?
 ねえ、アンゼロット。何故、わたくしを―」

 よせ! 言うな! 止めろ!

「何故、わたくしを殺したのですか?」

 ―――――――――――――ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!

 自分の悲鳴で、目が覚めた。

「怖い夢を見たのだな」

 優しく、落ち着いた、包容力のある力強い男の声が耳を打つ。胸の奥が暖かくなる。その温もりに縋りつく。

「エ、エルンシャ様・・・・わたくしは・・・わたくしは・・・イクスを・・・・」
「彼女の事は聞いた。悲しい事だが、君が背負う事はない。我等とて万能ではないのだからな」
「それに! それに、みんな、みんないなくなるんです! 姉妹達も、聖姫達も。ロンギヌスも。
 みんな、わたくしを残して逝ってしまうんです!」

 感情が高ぶる。涙が溢れ出す。内心をさらけ出す。

「わたくしは、わたくしは誰も救えないんです! どんなに頑張っても、頑張っても、誰も助けられないんです!
 どんなに、どんなに・・・・・・」
「もう止すのだ、アンゼロット」
「みんな、みんないなくなる・・・・わたくしを残して逝ってしまう・・・・」
「私が傍にいる。私が、傍にいる」

 瘴気で構成された腕が、優しく、少女を抱きしめる。身体は瘴気で出来きていたが、その奥にある星の欠片か
ら届けられる、慈愛の念に満ちたプラーナが少女の苦痛を癒していく。

「どうして、どうしてそんなに優しいんですか・・・?
 わたくしは、わたくしは、あんなにもひどいことをしたのに・・・」

 勝手に好きになって、振られたら殺すつもりで迫って。
 世界の危機を招いて、全責任を押し付けて八つ裂きにさせて。
 一度は復活させようとしたものの、欠片の一つが失われ、もう復活しないと聞くや闇姫との戦いを聖姫に丸投
げして勝手に後追い自殺をして。
 ゲイザーに拾われた後、相手が生きていると知っても連絡を取らず。
 裏界に寝返った恋敵を手にかけ。
 その上で、自分だけは、のうのうと新しい恋を見つけた、と受け取られたらしい態度を取ったのに。

 八つ裂きにされて冥界にばら撒かれても、仕方がないだろうことをしたのに。

「なんで・・・・なんで、そんなに優しいんですか・・・・・? わたくしが・・・憎くはないんですか・・・・・・?」
「アンゼロット。私の心にある思いは、一つだけだ」

 瘴気で出来た手が優しく少女の髪を撫で、銀の双眸が少女の瞳を覗き込み、そっと告げた。

「また、君に逢えて嬉しい」
「エ・・・ルン・・シャ・・様・・・・エルンシャ様ァッ!」

 少女は初恋の相手の胸に顔を押し当て、何時までも、何時までも泣き続けた。


395 名前: ◆6H85fs.r4o :2008/12/08(月) 00:03:44 ID:nfEQBkfZ
今日はここまで。
エルヴィデンスとエレナの会話の内容は、俺の妄言なので間に受けないでください。
ではまた。


396 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 09:45:21 ID:kiMS8SRh
エルヴィデンス様マジカリスマ
これはゲボクどもも付いていく
どこぞのポンコツ魔王にも見習って欲しいくらいだ

397 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 12:49:15 ID:5kQpgi+A
最近立ったスレでいきなり柊がベランダにぶら下がってて吹いた

398 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 13:12:49 ID:VjkWvcfn
禁書目録か?(w

それはともかくエルヴィデンス様マジ性質悪ぃw
けどそこに痺れる憧れるぅ!
…そばに寄りたくは無いけどーw

399 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 15:21:45 ID:5kQpgi+A
>>398
うん。
いろんな作品のキャラを上条さん家のベランダにひっかけるスレみたいなやつ。

……まぁ、ネタはここで語られたののオンパレードみたいなもんだったけど
自力でぶら下がってたのは新しいと思った

400 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 15:23:54 ID:s3NIpFg3
触れ得ざる高貴な者としては完璧な存在だよな…
ある種、上に立つ存在として完璧とゆーか

401 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 16:45:50 ID:UluD0vGW
>399
見てきたが
卓ゲ民ばっか目に入ってて吹いた

402 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 21:14:54 ID:TRyoPBZj
おお? 例のあみだくじへと、このように繋げている…実にイイ。
設定的には裏界古代神はみそっかす扱いされているのはわかるが…おのれ世界結界!
裏界四大実力者はもっと…もっと強くても。否、駄目だ、こいつらな古代神が多すぎる。
本来の力では八大神級の古代神もいるだろうしその上もいるだろうきっと。でもぽんこつ。

しかし…究極のさげまんにもほどがあるだろう、いと哀れなりはエルンシャ。
女運を呪うどころの騒ぎじゃない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……

403 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 23:48:30 ID:j81CDxXK
マクロス7というより熱気バサラとのクロスで歌で柊力相殺+プラーナ限界突破

404 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/09(火) 07:26:21 ID:bSgz+fOk
グレンラガンとのクロスで柊力で下がり続けるが、下がり続けても掘り抜いて、
掘り抜けたなら、俺の勝ち!

405 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/09(火) 20:20:05 ID:j5aO+/XU
404を見てなんとなくミスタードリラーが頭に浮かんだ。
ウィザードなら酸素カプセル要らないだろうなぁ。
…クロスオーバーになりゃしねぇ。

406 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/09(火) 21:24:18 ID:cEk3O8Z0
エミュレイターの作り出した月匣なのでプラーナがじりじり減って行ってるんだよ


【デスダンジョンってレベルじゃねえ】

407 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/09(火) 22:18:29 ID:4hl9Au0A
それができるのはアゼル級の実力がないと無理じゃないか>いるだけでプラーナの減る月匣

408 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/09(火) 22:30:49 ID:RNY/6zNt
GMがあるといえばあるんだよ>いるだけでプラーナの減る月匣

409 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/09(火) 23:02:56 ID:OeVzbUXm
マーダーライセンス牙&ブラックエンジェルズ&外道坊&柊蓮司

410 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 07:07:24 ID:sI2/MrRo
>>409
&女犯坊&聖マッスル

411 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 10:32:32 ID:dZvVa6bK
>>403
マクロスの誰かと初音ミクとポリフォニカとS線上のテナの、音楽系クロス
と言うのを妄想したことあるんだが、NWのほうに音楽が絡まなかったんだぜ

412 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 10:46:33 ID:q/q4oy6w
なんでこう手当たり次第にぶち込む人が増えちゃったかな……

いや違うよ? それが悪いって言ってんじゃなくて、リレーとかのが一発キャラは出しやすいよなーとか、
そろそろそういうのやりたいのかなみんなとかそういう意味な?

413 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 11:30:14 ID:jmo3ZC3y
>>411
馬鹿野郎、NWには歌声が日本刀相当の歌い手達がごろごろしてるんだz

414 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 13:43:47 ID:DM0sroJe
レプレキアやハイバネーションは世界滅亡相当の歌に入るな

415 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 13:54:31 ID:DsjnP69z
>411
っサンプル異能者

416 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 13:57:42 ID:l/ThX/dt
日本刀相当の歌声と言われると自分は『怪盗アマリリス』の黒沢ゆかりを思い出す…。
声斬波(ミラクルボイス)という忍者の必殺技を習得してるんだよな彼女…。

417 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 17:44:23 ID:dZvVa6bK
>>413>>415
うむん、それは存じているが、さすがにアニメ未登場キャラばかりでは、はばかられてのー。

418 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 20:15:47 ID:RNBeE3pA
そこでキャラソン出してもらえなかったコグレロット様のリベンジですよ

419 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 20:28:42 ID:Z9doU1cN
キャラソンの出来だけで考えると誰の歌が破壊力高いんだろうか?

にゃふうのFLY INTO THE NIGHT 、CDにならないかな

420 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 21:14:15 ID:dZvVa6bK
全然関係ないけど、異能者ってカタカナでイノーシャって書くと、
ヨーロッパかロシアあたりの純朴な娘さんって感じになるな。

421 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 21:20:25 ID:j+/PWlkc
ほんとに全然関係ねえwwww



チェックのエプロンドレスの似合う、三つ編みの子なら認める。

422 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 21:45:59 ID:pAkrgKDA
>>414
次元昇華を目論んで世界の危機に追いやる魔王ですね

423 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 22:32:55 ID:J/iQQVre
>419
ぴっちの英魔さまと伝説のゴトゥーザさまの二強対決じゃなかろうか

424 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 00:06:11 ID:yULQQG7a
 ロンギヌス・タマ&キュア vs 歌下僕エミー・ザ・クローン

「「わーたーしーのーちーかーらーをみーせまーしょうー。ベタァァァッ! フラッシュ!!」」
「「エルヴィデンス様のうたーー!! ヘイヘイヘイ!!!」」

アンゼロット 「こ、これは!? ふたつの歌が混ざり合い、効果が相殺されています!」
エルヴィデンス「くっくっく。歌下僕エミーはな、7時間連続で歌い続ける事が可能なのだよ。其方は、何十分持つのかな?
        疲れ果て、息が切れたときがお前達の最期だ。謎の怪音波に惑わされ、同士討ちをするがいい」
アンゼロット 「それならッ! タマ&キュアッ! 歌いながらロンギヌス・ビームで攻撃するのです!」
エルヴィデンス「無駄だ! 歌下僕エミーには、あらゆる武器に変形するハイパーブレスレットを持たせてある。
        此れにより、どんな相手にも二回だけ勝つ事が出来るのだ!
        しかも、クローンだから倒されても平気! 我が下僕に隙は無い!」
アンゼロット 「クローン技術ならロンギヌスにもあります! タマ&キュアッ! 気にせず突撃なさい!」

柊      「途中から歌関係ねぇ!」


425 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 00:07:23 ID:yULQQG7a
クロスSSの面白さってさ。
勘違いスパイラルと、似て異なるものを対比させるところにあると思うんだ。


426 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 00:21:00 ID:tJNMsLSF
それもあるが個人的にはそれだけじゃなく
クロス先をNW展開(きくたけ的ストーリー)にするってのもあるとは思う


歌声バトルもいいが、日本刀相当だけでなく、もう少しきくたけ成分が欲しいところだな

427 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 00:28:32 ID:UEVS8MsS
俺は>>425派だなぁ……
きくたけ節やりたいなら勝手にセッションでやれやと思う。声優ネタの乱発とあんま変わらん。

ま。結局はキャラものが好きか再構成ものが好きかくらいの違いしかないんだろうが。
……別に再構成が悪いと言ってるわけじゃないぞ?

428 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 00:52:16 ID:v3IjoXdn
単純にifの楽しさというのもあるだろう。嫌いなモノより好きなモノで語ろうぜ!

429 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:08:57 ID:UEVS8MsS
なんでもぶち込めばいいってのは違うと思うけどね。

胸焼けしない?そーゆーの。
リレー並の勢いがあるならともかく、とりあえずぶち込んでみましたってのは多少なんか萎えるわ、個人的に。

430 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:13:38 ID:cymVrT5H
過程はどうでもいいから最後に世界滅亡のため戦えばいいよ

431 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:19:24 ID:v3IjoXdn
>429
混ぜることで生まれるモノもあるからなあ。
だいたい縛りなんてのは自分につけるもので人に押しつけるもんじゃないだろう。

432 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:37:05 ID:UEVS8MsS
>>431
混ぜることに抵抗あるわけじゃなくてさ
縛りっつーか、ネタだとしても「〇〇って作品に××と△△の作品足してきくたけリプ風にしたらこうなるんじゃね?」
ってのはセッションでやればいいのにと思うわけですよ

普通にss読んだりしてるとさ、あんまりにもたくさんの要素混ぜるのは消化不良になるのわかってくる

実際のセッションなら複数人の思惑とネタが混じりあうのをオマージュとかパロディとか言って(笑)にできるけどさ
リプレイをそのまま小説にしたら面白くないように、きくたけリプのノリを取捨選択せずにSSって形にすると
気持ち悪く感じるし、元の作品にもきくたけにも失礼じゃね?ってだけの話なんだけど……

ってただの愚痴だわな、気に食わなきゃスルーしてくれ。ROMるし。いやROMってた感想なんだが

433 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 03:15:46 ID:2KbwY4+7
というか、そんな「あれもこれも全部ぶちこんできくたけ風味にしてみました!」なんて作品あったか?

434 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 05:28:46 ID:UXTLU5Ts
……色々とブチ込んで、しかも歌ネタで書いてる途中な俺は一体。


435 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 08:19:40 ID:443qbd8Q
>433
つS=F

436 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:48:00 ID:CdQjn/YH
>>433
つ ブレードオブアルカナ きくたけリプ
  ダブルクロス きくたけリプ
  アルシャードフォルテッシモ きくたけリプ
  ファーローズトゥロード きくたけリプ

437 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 01:34:52 ID:gE7s7QQE
>433
ダブルクロスリプレイゆにばーさる

438 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 01:44:31 ID:twb+BHEM
>>434
ほ、ほら元気出せよ!

>>432だって「好み」以上のことは言ってないんだし、だったら逆に>>432を唸らせてやるくらいの気概で挑むとよいのでは、と思うぜ?
過去捏造とか、原作再構成とか、要素だけで嫌われるジャンルだって、人を唸らせるような作品も存在するんだしさ
愚痴聞いてヘコむくらいなら、そいつを見返してやんよ上等!くらい考えられないとそもそも人の目に触れるところにさらすのにも向かないと思う

ともかく、応援してるから頑張れ!

439 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 05:22:30 ID:3ZaER39I
とあるダンジョンでの会話

男「イザナギの転生体です」
女「イザナミの転生体です」

ウィザード「イササカの転生体です」

男・女「…誰?」

440 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 06:55:18 ID:FQpck9GV
>>439
旧約メガテン?

441 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 10:07:20 ID:XSmRwM65
メガテンのPCはみんな侵魔召喚士って感じだなぁ。

442 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 11:50:55 ID:1YINdRDq
ペルソナ使いは魔物使いか

443 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 12:21:49 ID:uP/1Q0g/
クロスSSの面白さについてだが、論点がずれてきてないか?

ごった煮や歌ネタが悪いんじゃなくて、そうしたモノに消化不良なのが目立つってだけだろ?
で、「消化する」「混ぜることで何かを生む」ってコトが「似て異なるものを対比させる」ってコトで
その具体例が「勘違いスパイラル」や再構成なんじゃないか?

再構成物なら、「クロス先の影響で展開が変化する」=「クロス先とクロス元の違いが浮き彫りになる」=「似て異なるものが対比されている」ってワケだ。

要は、共通点と相違点がはっきり分かればいいんだよ。

クロスなのか疑わしいネイシアクロスも、第三がいろいろと第八を誤解してたり、第三と第八の「アンゼの犠牲者」「敵
側トップ」「無慈悲な女王」が対比されてる。それがあるから、ただのネイシア二次創作じゃなくクロスSSなんだろ?


444 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 12:30:20 ID:Myavfz7K
>443
面白ければどうでもいい。

445 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 12:54:27 ID:gE7s7QQE
>>443
結論:>>443が実際に書いて手本を見せればいい

446 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 15:04:09 ID:9caywle3
>>443
人それぞれ何を面白いと思うのか違うんじゃないかな
クロスはわりとニッチなジャンルだし、題材もマニアックなんだから、
分母が少なすぎて「このスレの総意」みたいな考えを作るのは難しいと思うよ

というか自分が面白くないものを他人が面白いといったり、その逆だったりとか別に珍しいことでもあるまいに

447 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 16:11:21 ID:uP/1Q0g/
>>446
いや、俺が言いたいのはさ。

クロス先がクロス元と“ちゃんと絡んでれば”、絡み方はなんでもよくね? ってコトなんだけど…

なんか、歌ネタやごった煮そのものが悪い、みたいな流れだったからさ。

クロス先がクロス元ほったらかしで暴れるのは、クロスSSとして論外だってコトは分かってもらえると思う。

で、歌ネタやごった煮は、どうしてもナイトウィザードとの接点が少なくなる。
だから、クロス先がNW勢をほったらかす危険性が高くなる。
けど、必ずそうなるワケじゃない。

って言いたかったんだが・・・

ごめん。そんなに分かりにくかったかな。


448 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 17:14:10 ID:9caywle3
>>447
「この作品はちゃんと絡んでいる」「この作品はクロス元をないがしろにしてる」
さて、この二つの境界線を定義することは出来るだろうか
そして、その定義を万人が共有できるだろうか

449 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 17:50:36 ID:5oC57OPX
>>448
なんか言ってることが高CQ作家みたいでウザい。

450 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 18:12:53 ID:A2H7grkQ
ぶっちゃけ、読んでる自分が面白いと思えればどんな作品でもいいわ
読者的には

451 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 18:42:11 ID:lLcENXCt
作品の投下を求めるとしか言いようがない
いくら説明しても具体例がなけりゃわからん

452 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 19:14:08 ID:twb+BHEM
>>447は「クロスは混ぜることそのものが目的ではなく、世界の差異や人の交流をきちんと書けてるものの方がより面白くなる」と言いたいのだと思うけど。
最近出るネタがあまりにも「混ぜることそのものを楽しむ」もしくは「ナイトウィザードとの関わりが薄いがそれをセッションとか言ってごまかす」といった流れだったから
俺としても同意したい。作品がどうこうは言わない、ネタがなんかつまらない。

前は「〇〇と〇〇とナイトウィザードのクロス考えたが、力不足だからやめた」みたいに自分の力量をわきまえる発言もあったくらいなのになぁ……

453 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 20:37:37 ID:fdc71g/b
流れぶった切って、ちょっといいかな?

今、ヴァリアブルウィッチの面子と、とあるギャルゲのクロスを考えてるんだが……

どう話を転がしても、クロス先のキャラがあまり面白くない展開になりそうで躊躇してるんだ。
こういうのはここで投下しないほうがいいよね?

454 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 20:54:35 ID:AVYfHAHC
●●という作品に登場する▲▲は、実はNW的に解釈すると○○だ!
とかのネタは?

455 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 20:57:49 ID:TG1zm8Eq
まぁ、クロス先を単に貶めるだけのネタじゃないなら良いんでない?
変に関わらせようとしてどうしても展開がつまらなくなるのなら
いっそ書きたい部分だけ書いて小ネタとして投下するという手もなくはないぞ

456 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 21:04:56 ID:fdc71g/b
んじゃ、軽めの小ネタを投下して、その反応を見てみる。
まずはそれからかな。

457 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 21:42:43 ID:fdc71g/b
できた。今投下大丈夫?

458 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 21:50:30 ID:nzzvgSP8
俺はそれぞれのキャラがちゃんとそれぞれのキャラとして描かれてれば2次創作のファンジンとしては
それでいいと思うけどな
商業の競演物ほど厳密にやる必要はないと思う(どっちかが優れてるように描いちゃいけないとか、
出番やキャラの数は等分にとか)

459 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 21:51:00 ID:nzzvgSP8
>>457
あ、ごめん、もちろんOK

460 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 21:52:58 ID:fdc71g/b
それじゃ投下〜

首だけ殺人?」
「そう、東京を震撼させてる謎の連続首だけ殺人! これの謎を解き明かして、今月の新聞の一面を飾るのよ!」

 香椎珠美の熱い語りを、藤原竜之介は、いつものように机に突っ伏して聞いていた。

 東京で起こる奇怪な連続殺人事件。
 殺人現場に残されているのはおびただしい血の跡と、ころりと転がる被害者の首だけ。
 奇妙なことに胴体はどこを探しても発見されていない。
 動機不明、証拠なし、目撃者なしのまさに謎が謎を呼ぶ事件。

「竜之介、お前、首だけ殺人事件を解決してみんか?」
「はあ?」

 事件の背後に見え隠れする怪異の影。

「私も手を貸そう。この事件、どうやら私たちの領域のようだからな」
「……エミュレイターか」

 集い行く、怪異に立ち向かうものたち。

「何で普通に俺んちにいるんだよマユリ!?」
「竜之介さんのお爺様に、竜之介さんの補佐をしてほしいと頼まれまして」

 事件の謎を追って、夜を駆けるウィザード。

「張り込みの夜食には、やっぱりおむすびですよね」
「……ホント緊迫感ないな、お前」
「食べます?」
「……いただきます」

 しかし影は、容赦なく獲物を狩っていく。

「くそっ、これで5件目か!」
「悔やむのは後だ。今は私たちにできることをしよう」

 足を使い、知恵を使い、少しずつ真相が明らかになっていく。

「二つの殺人事件……首なし殺人と腹を切り裂かれた死体、か……」

 そして忍び寄る影は、ついにもっとも身近なものにまで手を伸ばす。

「助けて、竜之介!」
「お前、珠美にまで手を出すんじゃねえ!!」



ヴァリアブルウィッチクロスSS
「狂える愛は永遠の夢を見るか」



「私はただ……大好きな人と幸せになりたいだけなのに」




なお、本編の内容は予告なく変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください

461 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 21:54:57 ID:fdc71g/b
いじょ。テーマとしては結構地味なつもり。

クロス元は秘密。言った瞬間ネタバレになるからw

462 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 21:56:21 ID:3ZaER39I
niceboat.

463 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 23:14:22 ID:9caywle3
連続猟奇殺人事件は地味じゃねえw


そういや全く無関係だが、主人公達がいなくなったのに極普通に日常が流れていくって描写は、
まさしくプラーナが無くなった演出だな

464 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 23:56:53 ID:se6ZjEpH
NWクロスでミステリーとは!
これはwktk

465 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 09:46:58 ID:xlCqSAsK
>>463
やー、他のSSが世界の危機とか取り扱ってる中、一人連続殺人じゃ、やっぱりねえw

466 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 10:40:51 ID:jkk4JNC0
というか既に盛大にネタばらししているような希ガスw

467 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 10:47:50 ID:+8UqIZ+C
わかっていても言わないのが心意気ってやつだ

468 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:52:49 ID:KcgmaBDf
ある意味、原作から逸脱した方向性ではあるが。
原作でも似たようなことやってンのを公式アニメで更に発展させたもんだし間違ってもないのがなあw

後付設定で「習い事で居合をやってた」ってのがあると聞いた時はホント笑った。

469 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:43:41 ID:pMGMWvlu
あれ? 予想はしてたけど、やっぱクロス先バレバレ?w

470 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:13:33 ID:ORWsBLXW
僕はさっぱり。>462がそうなのかな?

471 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:33:16 ID:Tg05FpDe
俺も分からん。まあ単純にクロス先を知らないだけかもしれんが

472 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 19:05:02 ID:9vuX7XKB
まぁ、首と腹の致死なダメージでこれだとなぁw

473 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 20:57:17 ID:pMGMWvlu
まあ、ぶっちゃけた話をしてしまうと、もともとはクロス先のネタを元に考えたシナリオのつもりだったんだよね。
しかも、ゲームはNWじゃなくてALGだった。

けど、「あれ? このシナリオ、普通にNWでもいけなくね?」と再構成して、いけそうというのと、それを元にNWの面子を絡めようと考えたのがきっかけだったり。

474 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 23:20:08 ID:YGFcrzzu
>465
春日恭二やゾンバルトを何回も殺すのか。一人連続殺人と言う事は。

475 名前: ◆6H85fs.r4o :2008/12/14(日) 23:46:36 ID:mkmdPuIW
「柊さんは、とても不幸な学生生活を送ったのですよ。
 学年を下げられ、毎日のように登校中に攫われ、満足に授業にも出られず、追試を受けるのにも苦労し、
いつも出席日数を気にして落ち着かず、最後には卒業証書を無くすと言う悲劇だらけの、ね」
「はひー! でもでも、それ全部アンゼロット様の所為ですよね?」
「其の通りですが何か?」
「は、はひー・・・な、なんでもないですぅ」

 時々、この面の皮の厚い老獪な世界の守護者が、魔王"ではない"、という事を忘れそうになる。
 いや、もしかするとそうなのか?

「・・・アンゼロット様。極めて不躾な事をお聞きしてもいーでしょーか?」
「駄目です」



 「月と星と柊と」はお休みして、「居酒屋ろんぎぬす/3vs5 宰相編」を投下します。
 今回は「一見シリアスに見せて、実はツッコミ待ち」路線ではなく、なんというか、こう、さるさんの人リスペクトな感じで。

 感想レスくれた方々、有難うございます。大変励みになりました。
 出来ましたら、エルヴィデンス様のどのへんが一番印象が強かったか教えてください。
 俺は、邪悪さと有能さとお茶目さと婆臭さが渾然一体になってるところが大好きです。

 しかし、前回は全力で悲劇のヒロインに仕立て上げたのに、全く同情されなかったアンゼロット様って一体・・・・

 では11時50分から投下します。


476 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 23:51:09 ID:Yu9t/wGK
>>474
愚者の楽園で既に通った道だな

>>475
支援

477 名前:居酒屋ろんぎぬす/3vs5 宰相編 ◆6H85fs.r4o :2008/12/14(日) 23:56:09 ID:mkmdPuIW
 居酒屋ろんぎぬす。

 その一室を借り、二人の(外見だけ)若き美人宰相が極秘の会談を行っていた。

 一人は、第五世界エルフレア最大の国家、エイサー王国宰相ミカエル。38歳独身。

 もう一人は、第三世界エル=ネイシア宰相セルヴィ・エンデ。
 ミカエルは知る由も無い事だが、その正体は百八の古代神が一、古女王エルヴィデンスである。
 年齢は・・・ベール=ゼファーと同い年である。アンゼロットの祖父母の姉だが。

 二人とも、見た目は「大人のお姉さん」。
 ミカエル宰相は銀髪銀瞳の麗人であり、セルヴィ宰相は金髪金瞳で眼鏡をかけた知的な印象の美女。
 共に、冥魔王と盟約を結び、先代の支配者を手にかけ、幼い子供を傀儡の国王に祭り上げて実権を握った、悪
の宰相の見本みたいな行き遅れのおb― 野望に生涯を捧げ、美しく年輪を重ねた大人の女性である。

 そんな二人が激務の合間を縫い、わざわざ異世界まで来て如何なる密談を交わしているのか?
 二人の会話に耳を澄ませてみよう。

「あ”ー。今月もまーた支持率が下がったわー。まったく、人気取りのために税率下げよーにも財源はないし。
 国民は好き勝手なことゆーし、息子(アスヴェル少年王)は家出するし、やってらんないわよ、もー」

 ミカエルは手酌でビールをコップに注ぐと、一息に飲み干し、ぷはぁー、と息を吐いた。
 このミカエル宰相。酒が入るとこの通りだが、素面のときは普通に有能な政治家である。いや、ホントに。

「なかなか良い呑みっぷりですね、ミカエル宰相。
 そうそう。先日はみぱみぱを送って戴き、真に有難う御座いました。
 セフィス女王も大変お喜びでしたよ。『まぐっ、はむはむ、みぱみぱー!』と言った感じで―」
「セルヴィー、アンタも余所行きの言葉使いはやめなさいよねー。
 ここには民衆の目はないんだし、カッコつけるひつよーないでしょー」

 ミカエルに言われて“セルヴィ宰相”も肩の力を抜き、古女王エルヴィデンスとしての態度に戻す。

「うむ。では遠慮なく、地で応対させて貰おう」
「・・・・・なんか、いきなり婆臭くなったわね」
「娘を5人も育てれば老け込みもする。セフィス女王で子育ては6人目になるのだ」
「あー、それ、わかるわー。アスヴェル一人でも、結構、たいへんだったしぃー」

 ヒック、としゃっくりをしつつ、ミカエルはもう一度ビールを注ごうとし、その瓶が空なのに気付いて新しい
瓶を手を伸ばした。

「なあ、ミカエルよ。些か、飲み過ぎなのではないか? 同業者として忠告しておこう。アルコールは脳細胞を
破壊する。この仕事を一日でも長く続けたいのなら―」
「呑まなきゃやってらんないのよ。アンタんトコはいーわよねー。セフィスちゃんは大人しくて、都合がいい子
だし、下僕達は我儘言わないし。国家は統一されてるから外交もしなくていいし。うらやましーわー」

 ミカエルは瓶ビールをラッパ飲みすると、追加のビールをピッチャーで注文した。

「ほら、セルヴィ。アンタもなんか頼みなさいよ。
 ああ。アンタ最近、月下僕の支持を集めるために先代アンゼロット女王をリスペクトしてるんだって?」
「うむ。セフィス女王は陽女王イクスィムの娘だから陽下僕からは強く支持されているが、月下僕は物足りぬも
のがあるようでな。そこは私がフォローしようとしているところだ」
「だったら、さきいかツマミにウオッカ飲みなさいよー」
「確かに、先代アンゼロット女王は大変な酒豪で有名だった。
 かの聖姫争奪戦においても、戦に勝てば勝利の美酒に酔い痴れ、負ければ自棄酒をあおって酔い潰れていた」

「勝っても負けても、つぶれるまで呑むのね・・・・・・・」

「だが、聖姫争奪戦における先代アンゼロット女王の敗因が深酒にあった事は、全下僕が認めている。女王であ
れば至らぬところは下僕が支えるが、女王を支える立場にある私が先代女王の悪いところを真似してどうする」
「・・・・それもそーね。でも、1、2杯ならいーじゃない。ちったぁ付き合いなさいよー」

478 名前:居酒屋ろんぎぬす/3vs5 宰相編 ◆6H85fs.r4o :2008/12/14(日) 23:57:39 ID:mkmdPuIW
「仕方のない奴だな。では、お前と同じものを貰おう。それと、あぶなのおひたしとねるねるめいとを頼む」
「あぶなは分かるけど、もうひとつは何?」
「練れば練るほど色が変わる・・・という怪しげな御菓子を、水の代わりにかろりーめーとこーひー味で溶かして作
るという、それはもう凄まじい味の流動体だ」
「・・・・・・・・なんでまた、そんなもの食べたがるのよ?」
「昔、任務に失敗した部下に罰として喰わせた事が在るのだがな、後で裏切りおったのだよ」
「・・・・・・・そりゃ裏切るわ」
「直接の原因は、奴の妹が私を裏切りそうだったのでこっそり粛清して、敵に倒されたと偽ったのがバレた事だ
ったが、一因ではあったであろうな。故に自戒を込め、時折、食する事にしているのだ。
 懐かしい、思い出の味でもある。あの頃は家族に囲まれ、騒がしくも賑やかで愉しい日々だった・・・」
「家族かぁ・・・・分かるわ、セルヴィ」

 ミカエルはホロリとした表情を見せ・・・急に、泣き崩れた。

「なんで・・・・なんで離反しちゃったのよ、メリース・・・・・」
「泣いて良い。今は泣いて良いぞ、ミカエル。それにな。お互い生きておれば、何時かは和解出来る日も来よう」
「・・・ありがと、セルヴィ。わたし・・・がんばるわ」

 親身になって励ましてみせるエルヴィデンスにミカエルも力強く頷き、注文を受け取った店員が奥に引っ込む
と、再び、話題は互いの国の情勢へと戻った。

「羨ましい、と言うがな。私とて楽をしている訳では無い。
 此方ではラース戦役は、第一世界“救済”の為という事に為っていたのに、ラース=フェリアが冥界落ちする
や撤退した事を不服とする者も居れば、やはり税金が高いとこぼす者も居る。
 エルンシャ派の神姫も、数少ないが居ない訳では無いし、アンゼロットも帰郷の準備を進めている。
 安泰とは言い難いのだ。
 それにだ。外交なら、今まさにしているではないか。
 此れからは裏界とも連絡を取らねば為らんだろうし、エルスゴーラの情勢も気になる。
 身体が一つでは足りぬよ」

 エルヴィデンスがウーロン茶のグラスに手を伸ばすと、調度、そこに店員が戻ってきた。

「へい、ビール、ピッチャー2つ、おまちぃでヤーンス」
「・・・・結構、大きいのだな」

 文化的な理由により、今までピッチャーを見た事がなかったエルヴィデンスは、それをそのまま一気飲みした。

(・・・・こんなものの何が愉しいのやらサッパリ分からんが、まあ、これも外交の一環だ)

 ビールを口に入れるや否や、プラーナ・レベルで分解し、吸収し、何事もなかったようにピッチャーを置く。
 無論、酔いなど全く無い。そして、エルヴィデンスは目を丸くするミカエルと店員を不思議そうに眺めた。

「どうしたのだ?」
「や、やるわねセルヴィ・・・・なら私も―」
「お客さん! 止めとくでヤンス! 一気飲みは身体に毒でヤンス!」

 対抗しようとしたミカエルを店員が慌てて止めるのを余所に、エルヴィデンスはメニューを確認した。

「おお、そうだ。トマトと玉葱のタルトも頼もう。ミカエル。お前も食べるか?」
「・・・・そうね。いただくわ」
「あ、はい。わかったでヤンス」

 マイペースなエルヴィデンスにミカエルは毒気を抜かれ、店員も困惑しながら注文をとった。

「しほーさーん。トマトと玉葱のタルト2人前お願いでヤーンス」
「はーい」
「ああ、それとドンペリも」
「はーい、ドンペリひとつでヤーンス」

479 名前:居酒屋ろんぎぬす/3vs5 宰相編 ◆6H85fs.r4o :2008/12/14(日) 23:58:54 ID:mkmdPuIW
 視界の隅で何かが動き、エルヴィデンスが戸口に目を遣ると一匹のフェレットが部屋を覗き込んでいた。

「おや、これは可愛らしい。この店の看板ペットかな? あぶなは食べるかな?」
「飲食店でペットを放し飼いにするのは、食品衛生上良くないんじゃないかしら?」
「いえ、こちらさんもお客なんでヤンスよ」
「ほうほう」

 エルヴィデンスは手を伸ばしてフェレットを捕まえ、膝に乗せるとあぶなを食べさせ、その背を撫でた。
 一方、ミカエルは、店員が奥に引っ込むの待ってから会話を再開させた。

「に、しても。やっぱ羨ましーわー。アンタんトコ、冥魔王も可愛い女の子じゃない。
 こっちのヘルクストーは脂ぎった親父よ、親父。
 しかも、なんか最近、男装の麗人にベッドマナー習ってるらしーのよ、あのタコ」
「余暇をどう過ごそうが、他人が口出しする事ではなかろう。仕事をしているなら良いではないか。
 こっちのプリギュラなど、口を開けば領地を分けろ、だ。
 あれこれ手伝って遣る等と言っているが、私の面倒事の幾つかは奴が裏で糸を引いておる。
 自作自演で無理矢理恩を着せようとしているのだが、今の私に其れを問い詰める力は無い。
 せめて裏界のぽんこつが、アンゼロットに無視されない程度に有能で在れば、な・・・・・」
「愚痴ってもいーことないけどねー。ね、ちょっち輸出増やしていーい? こっちもよゆーなくってさー」
「生憎と、此方の台所事情も厳しいのだが・・・・そうだな。AKとダークシードなら買っても良いぞ」
「ごめん。それは在庫が厳しいの」
「何か、新たな財源が見つかれば良いのだがなぁ」

 エルンシャの庇護を受けていた頃は、その全知により金の鉱脈やら何やらの場所もすぐ分かったのだが、今は
そうは行かない。それでも、決してやって行けない事はなかったのだ。
 アンゼロットが、帰って来さえしないなら。

「・・・・・・・忌々しいぽんこつめ」

 フェレットはビクッと身体を振るわせると慌てて部屋の外に逃げ出し、エルヴィデンスは名残惜しげにそれを
見送った。

「そーいやーさー。裏界の支配者、ベール=ぽんこつだったっけ? どんなヤツなの?」
「さあ? 私も良くは知らんのだが、アンゼロットに無視される程度の奴らしいな。
ルー=サイファーから代替わりした途端、東方王国の活動が活発化しているあたり、ルーより劣る事は明白だ。
 我等同様、エルオース復活計画の一翼を担ったらしいが、我等とは異なり、冥界から利益を得た様子は全く見
られず、一方で、冥魔への憎しみを見せる事が多いと聞く。
 恐らくは、冥魔王達に騙され、便利に使われて捨てられたのではないかな?
 冥魔王とは、元々は古代神戦争の時に古代神に作られた、使い捨ての戦闘生物が生き延び、進化し、知恵を付
けた存在だ。
 敗戦後、裏界よりも過酷な環境にある冥界に落とされた冥魔王は、裏界の魔王達を妬み、憎んでいても不思議では無いが、ぽんこつにしてみれば、自分に従って当然の相手が自分を騙したとなれば、決して許せんだろう」
「でもさー。いっちゃ悪いけど、わたしらの業界じゃー『騙される方が馬鹿なだけ』なのよねー」
「全くだ。実際どうなのかははっきりせんがな。私はこの後、第八世界で情報を集め、裏界の魔王達がどんな奴
等か調べるつもりだ。何か分かったら連絡しよう。その代わり、輸出の件は待ってもらえるか?」
「むー。仕方ないわねー。なんか、他に財源はないかしら?」

 腕を組んで考え込むミカエルを眺めながら、エルヴィデンスはねるねるめいとを口に運んだ。
 この味が、人によっては美味に感じられる事はあまり知られていない。
 しばしの間、静かに時が流れ、やがてミカエルがある事を思いついた。

「あ、そーだ。合同で官能写真集出すとかどう? うちの人造天使も、そっちの神姫も可愛い娘多いし」
「断る。エル=ネイシアは全年齢対象なのだ」

 ピッピックゥッッっと、ミカエルの眉が引き攣った。

「言うじゃないの。PC版出るほど人気なかっただけのくせに」
「こっちは、掲載紙も年齢制限無しだったのだぞ」
「探さなきゃ見つからないようなマイナー雑誌だったじゃないの」


480 名前:居酒屋ろんぎぬす/3vs5 宰相編 ◆6H85fs.r4o :2008/12/15(月) 00:00:17 ID:mkmdPuIW

 二人の美女宰相の間に、険悪な雰囲気が漂い始めた。

「先王の愛人上がりだけあって、発想が下劣だな、ミカエル」
「アンタだって似たようなもんじゃない。エルンシャに気に入られて宰相になったんでしょ?」
「奴はアンゼロットとイクスィム以外の女に興味はない。私は純粋に、才覚と手腕を認められたのだ」
「あーそー。あまりの婆臭さに、女として認識されなかったわけね」

 “セルヴィ宰相”の正体を知らないミカエルにとって、目の前の女は自分の同類でしかなかった。

「ミカエルよ。お前とは一度、決着を付ける必要があるようだな」
「ええ、いいわよ。セルヴィ」

 ミカエル宰相は色褪せた天使核を握り締め―
 エルヴィデンスは掌に魔力を集め―

 そして二人の身体から絶大なプラーナが吹き上がっ―

「喧嘩は止めるであります!」

 ばーん、と勢い良く襖を開き、ゴスロリ・ファッションの銀髪ツインテール美少女が乱入した。
 誰もが目を奪われるだろう、美しい少女だった。鼻にティッシュペーパーを詰めていたが。

「部屋の外まで殺気がダダ溢れであります! この店は喧嘩厳禁でありますよ?」

「・・・・これは、みっともないところを見られてしまったな」
「・・・・ごめんなさいね、お嬢ちゃん。そのお鼻はどうしたの? ニンニク食べ過ぎたのかしら?」
「吸血鬼がニンニク食べるか! であります。昼間、仕事で怪我したでありますよ。
 それより、気に入らない事があるなら平和的にカラオケで決着を付けるであります!」

「それはいいわね。セルヴィ。そうしましょう」
「む。私は持ち歌が無いのだが・・・」
「あら、逃げるの?」
「分かった。受けて立とう」
「まず、私からいくわよ」

 ミカエルは、エイスエンジェルPC版の主題歌をそれなりに上手く歌って見せた。
 どんな曲なのか、作者は全く知らないが。

「さ、アンタの番よ」
「・・・・・・・・仕方ない。アンゼロットの歌にするか」

 実を言うと、エルヴィデンスには一曲だけ持ち歌があった。
 だが、永劫の眠りへと誘う〈シルフィード・レクイエム〉など、カラオケで歌えるはずもない。
 どうしたものか、と思いつつマイクを受け取ると、脳裏に閃くものがあった。

(おお、そうだ!)

 一計を講じた古女王が口を開くと、凄まじい声量が居酒屋全体を包み込み――1分30秒後、歌声は止んだ。

「ああ、歌った、歌った。さて、得点は・・・・」
「セルヴィ。これはどーゆーことなのかしら?」

 得点を確認しようとしたエルヴィデンスを遮り、ミカエルが隣室との間の襖を開く。
 そこには、マイクを握った歌下僕エミー・ザ・クローンの姿があった。

「む。気付かれたか。酩酊しているから分からないと思っていたのだが」
「ふふん。フルヴァージョンにしたのが敗因ね。ショートヴァージョンなら気付かなかったわ」
「―――何時の間に代役を手配したでありますか・・・・?」
「まあ、其処が私の強みだからな。しかし、ミカエルも素晴らしい」

481 名前:居酒屋ろんぎぬす/3vs5 宰相編 ◆6H85fs.r4o :2008/12/15(月) 00:01:30 ID:iuCR9am4

 満足気な表情で、エルヴィデンスは勝ち誇るミカエルを見直した。

(やはり、ただの酒乱では無い、か。今迄の愚痴も、一見、無警戒に愚痴っている様に見えて、実際には此方の
情報網で把握済の事しか話していない。尤も、そうでなければ我が盟友とする価値も無いが)

 胸の内で一人ごち、エルヴィデンスはミカエルを讃えた。

「酔っているように見えても頭脳は明晰、か。流石、38歳の若さで今の地位を得ただけの事はある」
「38っ! でありますか?! とてもそーは見えないであります!」
「ちょっと! 歳バラさないでよ! 黙ってれば20代で通るんだから。そーゆーアンタは幾つなのよ?!」
「私は14歳っ☆」

      「「寝言は寝て言え!!」であります!」

 古代神の妄言に、美女宰相と吸血鬼少女の声がハモった
 今の身体を使い始めたのは14年前からだから、ある意味、嘘ではないのだが。

「まあ、冗談はさておき、カラオケ対決の事だが」
「どっちみち、そっちのマイク切ってるから得点は0であります」
「ちょっち、予想の左斜め上の展開になったけど、まあ、私の勝ちね」
「ああ、負けてしまったな」

 古代神は鷹揚に頷き、迷走した会談の軌道修正を始めた。
 成すべき事は多く、ミカエルの器は充分に見た。そろそろ、まとめに入るとしよう。
 折角、第八世界まで来たのだ。この後、東方王国や忘却世界を回り、出来る限り多くの災いの種をばら撒いて、
ウィザード達の足止めをしたい。
 エル=ネイシアの民は、冥界に堕ちたラース=フェリアを見捨てた負い目と、異世界に女王の威光を広めたい
という気持ちから、異世界人に対して非常に甘い。
 もし、ウィザード達がエル=ネイシアにやって来れば、色々と面倒な事が起きるだろう。

「今日の勘定は私が払おう。店主。この店で一番高いボトルを二つ頼む。お嬢ちゃんも何か飲むかな?」
「それなら、トマトジュースを貰うであります。奢ってくれるなんて、とってもいい人でありますよ」
「・・・・いい人、か。そんな風に言われたのは初めてだな。邪神だの、陰険ババアだのと呼ばれた事は有ったが」

 歌下僕エミー・ザ・クローンにも好きな物を注文するように伝えたエルヴィデンスは、超☆高級ブランデー(ア
ルコール分98%)のボトルが二つ届くと、片方をひっくり返して底を手で引っぺがし、そのまま一気飲みした。
 ブランデーを口に入れるや否や、プラーナ・レベルで分解し、吸収する。

(アンゼロットもミカエルも、こんなものの何が良いのやら)

 そう思いつつボトルを置く。無論、酔いなど全く無い。目を丸くするミカエルを見て、ニヤリと哂う。

「ん。どうした、ミカエル。呑まんのか?」
「ま、負けるもんですかッッ!」
「真似しちゃいけないでヤンス!」
「自殺行為であります! 考え直すでありますよ!」
「さて、次は何を頼もうか」
「ちったぁ空気読んで手伝うであります!」
「忠告ならさっきした。いい大人が自分の判断でする事だ。他人が口出しするものでもあるまいて」

 もし仮に、本当にミカエルが一気飲みをして倒れたところで、所詮、その程度の輩だったというだけの事。
 エルヴィデンスの古代神としての力で、操り人形にすればいい。面倒臭いのでやりたくないが。
 冷酷に考えていると、ひとしきり騒いだミカエルが落ち着きを取り戻し、銀髪少女と店員を気にしつつも話を
戻した。

「で、さっきの話だけど。なんか、いーもーけ話ないかしらねー」
「そう都合良くはいかんだろう。だがせめて、もう少し使える人材が見つかればなぁ」
「武闘大会を開くとかどうでありますか? 人材発掘と金儲けを同時に出来るでありますよ?」


482 名前:居酒屋ろんぎぬす/3vs5 宰相編 ◆6H85fs.r4o :2008/12/15(月) 00:02:16 ID:mkmdPuIW

 “使える人材”を腕のたつ戦闘員と決め付けて、銀髪少女が提案し―

「「いいな、それ!!」」

 二人の美人宰相は、くわっと目を見開き、異口同音に叫んだ。

「ただ、武闘大会は昔やったことあるけど、結構、運営大変なのよね。途中で乱入してくるヤツもいるし」
「ならば、場所だけ用意してバトルロイヤルかサバイバルラリーにするか」
「他にも出資者を集めましょう。収益は減るけど、コケたときの損害も減るわ」
「ああ。別に大儲けする必要は無いのだ。有能な人材が見つかるなら、逆に金を払っても良いくらいだからな。
 儲かるなら其れに越した事は無いが、態々、博打をする事も無い。手堅く行こうではないか」

「面白そうな話をしていますね」
「私達も混ぜてもらえますか?」

 カウンターで飲んでいた男達が美女達に声をかけ― 悪の組織連合主催・人材発掘バトルロイヤル大会開催案
の話題は大きく盛り上がった。

483 名前:居酒屋ろんぎぬす/3vs5 宰相編 ◆6H85fs.r4o :2008/12/15(月) 00:06:38 ID:iuCR9am4
 以上です。支援ありがとうございました。

 居酒屋ろんぎぬすって、始めるのは簡単ですが、オチをつけるのが難しいですね。いつまでもダラダラと続いてしまう。
 あと、書いてて気付いたんですけど、ナイトウィザードのアニメに出たキャラを常駐させとかないと、店主とゲストだけで話が進ん
でしまう危険性が高いですね。
 俺は店主の原作を知らないので、危うくゲストだけで話が閉じるところでした。ノーチェ便利だよノーチェ。アニメに出てないけど。

 それから、次のリレーSSですが、本文中にも書いた悪の組織連合主催・人材発掘バトルロイヤル大会とかどうでしょう。

 バトルロイヤルを切り抜けながら、イベントを生き延び、クエストをクリアして自分の実力を見せ付けろ!
 見事活躍すればエンディングで、悪の組織にスカウトされるぞ!
 良い者側は、独自の理由で乱入だ!

 ナイトウィザードそっちのけで暴れる人対策として、「参加条件として、ナイトウィザードのアニメに登場したキャラ
をパーティに加える事」を徹底させよう。
 これを守れない人は、「クエスト:ターゲットを倒せ」の対象にする。
 参加キャラが増えすぎたら、シーン全体攻撃で篩いにかける。
 主催者代表はベルにしとこう。

 関係したい組織は、必ずベルまたアンゼロットに挨拶に行く。

 当面の目的は、タイムリミットまでに冥界門の開門を阻止する事。
 オチが思いつかなければ、天界が冥界門に滅びの光を打ち込んで会場ごと吹き飛ばして終わり。

 もっといいアイディアがあれば、これに拘る理由はありませんが、どうでしょうか?

484 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 00:52:12 ID:f8ZsWDMr
>>483
GJです〜。

なんというか、ダイナストカバルからなら参加してもおk?w

485 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 02:39:12 ID:qKyrDbgE
>>483
はい先生!
バナナはおやつに……もとい、エセ外人ヴァルキリーはアニメ登場人物に入りますかー?

486 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 19:56:01 ID:ZHJY7bE8
いいえ、それはトムです

487 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 21:14:01 ID:Igy6OH7t
えぶりわん!
りびーとあふたみぃ。

ひぃ いず だうん。

488 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 21:22:47 ID:h1fx6VmB
アニメキャラというと

ロンギヌスコイズミとか、ロンギヌスコジマメとか、現場監督コイズミとかか
後名前のある脇役って誰がいたっけ

むしろ雑魚魔王の連中の方が使いやすいか?

489 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 23:40:42 ID:RhrxPBBJ
アニメ準拠とはいえ、ゲームオリジナルの望月チハヤはギリギリでアウトなんだろうなw

490 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 23:44:07 ID:Exx5/YC8
ぎりぎりセーフのような気もするかなー?

491 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/16(火) 00:19:05 ID:GYBeZvq3
裏界勢力に一人クロスさせて参加させたいが、裏界側でパーティーとして出せそうなのはアニメオリジナル魔王とアニメで出番のあった魔王くらいか?流石に骸骨やベルキマイラ、ゴーレムあたりは駄目だろうし

492 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/16(火) 01:13:42 ID:AvMcDguR
>>490
それを認めると「かわたな」に乗艦してた2人もOKという事になるぞw

493 名前:490:2008/12/16(火) 01:22:38 ID:24lvH7kx
>492
うん。ラインとしては同じくらいの位置にいる。
チハヤがNGラインならベルゲームもNGだけど、チハヤがOKならこっちもOK、みたいな。

でもデス様は微妙。

494 名前:だいすきなうた:2008/12/16(火) 19:59:04 ID:ZJlZDCJq
お久しぶりです。
「だいすきなうた 〜Project S.D. II〜」の続きを投下させていただきます。

歌ネタで、かつ吟味もせずに色々とぶち込んでしまったようなSSですが(笑)

495 名前:だいすきなうた 1/3:2008/12/16(火) 20:01:10 ID:ZJlZDCJq

# OPENING 04 闇翔ける殺意
#      Scene Player:露木椎果


少し時間を巻き戻そう。

そこは都内某所にある「テレビ関東」本社併設の映像スタジオ。
ちょうど、1週間後にオンエアされる人気歌番組の収録が終わろうとしているところだった。

「カット、……お疲れさまでした!」
「お疲れさまでしたー!」

スタッフの告げる終了の一言が、場のピリピリした雰囲気を和らげる。
カメラが回ってる間は気付かなかった疲れが、どっと心身に押し寄せてきた。
この適度な疲労感が逆に心地良い。TVに出るようになって数年、そう思うことも少なくない。

ここで一段落なのはあくまで出演者たちだけで、番組スタッフにはまだまだ仕事が山積みだ。
つい先ほどまで司会進行役が居たセットの中央部では、もう片付けの作業が始まっている。

「出演者のお帰りです。拍手でお送りください……まずは、Dearの皆さんでした!」

アイドル歌手グループ「Dear」。
聖音学苑という同じ養成学校を卒業した5人の少女たちによって結成されたユニットだ。
所属事務所のプッシュもあってか、メジャーデビュー直後から今に至るまで安定した人気を誇る。

そのメンバーの中に、露木椎果という少女がいる。
黒いセミロングヘアとオッドアイが印象的な、クールビューティ。
デビューの少し前まで米国で暮らしていたこともあり、垣間見える知性も彼女に華を添えている。

「椎果ちゃんもお疲れっ☆」
「お疲れさま、Minato」

そんな椎果に声をかけてきたのは、グループの中心的存在である鷹羽みなと。
笑顔とポジティブ思考が取り柄の女の子で、彼女が微笑みかけてくれるだけで誰もが心の底から元気になれる。
そう、かつて心を閉ざしていた椎果を解放してくれたのも、目の前にいる少女だった。

「今日はこれで上がりっ! ……あっ、みんな、そこ段差になってるから気をつけ ―― 」

つるっ!
ずんばらぶきょぼこずごぐぼっ!
ずどどどどん!

「……」
「………」

ステージ上に設置された階段を、みなとは盛大に転げ落ちていく。

鷹羽みなと。
おそらく彼女の宣材資料(キャラクターシート)にはこう書かれていることだろう ―― すっとこどっこい、と。


496 名前:だいすきなうた 2/3:2008/12/16(火) 20:02:54 ID:ZJlZDCJq

「さっすが、みなとちゃん」
「まあ、みなとだし」

椎果とは対照的に、同じDearの仲間である萌と祥子は、驚きもせずに友人を見守っている。
性格的なものもあるが、自分よりも付き合いが長い分だけ、みなとの突飛な行動にも耐性が出来ているのだろう。

他の4人は聖音学苑入学当初からの付き合いなのに対し、自分は米国支部からの転入。
色々な事情もあり、当初は対立することが多かった。
しかし、今ではお互いに強い絆で結ばれた、まさに戦友とも言うべき存在だ。
そしてその中心には、いつもみなとが居たのである。

「いい加減、あきれるわよ?」

ため息をつく椎果。
口調こそキツめだが、その表情は柔らかい。

「……みなと、椎果。早く戻りましょう。楠さんも待っていますよ」
「あはは……ごめんね。雪ちゃん、椎果ちゃん」

転んだみなとに手を差し伸べたのは、彼女の一番の親友である雪だった。
これもやはり見慣れた光景である。

いつまでもこんな日々を過ごして居たい、皆と一緒に笑って居たい。
それは椎果の本心からの願いだった。
もちろん、この芸能界において、そんな想いが簡単に叶えられるとは思っていない。
しかしこの5人なら、どんな運命が待ち受けていようとも大丈夫なはずだ。絶対に。

みなとを立ち上がらせ、そそくさとスタジオを後にする。
いつまでも舞台上にいては、片付けをする大道具さんたちにも迷惑だろう。
分厚い扉を開けるとすぐに、一足先に楽屋へ向かった祥子と萌、それとマネージャーの楠さんの背中が見えた。

窓に目をやれば、そろそろ太陽も沈もうかという頃。
タイミング的なものもあるのかもしれないが、局の廊下をパタパタと色々な人が行き交っている。
芸能人の顔もあれば、ベテランのアナウンサーもいる。動きやすい格好をしているのは裏方のスタッフだろう。

「――!?」

突然、椎果の背中を悪寒が走った。
今まで浸っていた幸福感という酩酊状態から、一気に現実へと引き戻される。
彼女のちょっとした異変を敏感に汲み取った雪が声をかけた。



497 名前:だいすきなうた 3/3:2008/12/16(火) 20:04:48 ID:ZJlZDCJq

「椎果?」

椎果はある一点を見つめたまま硬直していた。
視線の先には、ブラウンのスーツに身を包んだ1人の男性が見える。

「あれは……」

椎果がそう口にした瞬間には、廊下の角を曲がったのか、もう彼の姿は見えなくなっていた。

この業界ではかなり名の知れた音楽プロデューサー、南条隆一。
かつて自分がアメリカで暮らしていたとき、歌の才能を見出して、芸能界という舞台へと導いてくれた男。
結果として自分は利用されているだけだったとしても、そこだけは感謝している。
あの“事件”以来、てっきり日本を出たとばかり思っていたのだけれど。

「椎果ちゃん?」
「……No Problemよ。心配してくれてありがとう」

椎果は何事も無かったかのように取り繕う。
みなとや雪は怪訝な顔をしていたが、それ以上は何も追及しないでくれた。

やはり気のせいだったのだろうか?
いや、そんなことは無いはずだ。後ろ姿とはいえ、自分が彼を見間違えることなんてあり得ない。
だとしたら何故こんなところにいるのか。嫌な予感がする。
いずれにせよ、調べてみる価値はありそうだ。

万が一、仲間たちに危害が及ぶようなことがあれば、今度は自分が彼女たちを護る番だ。
あの時のように、たとえ己の歌手生命を賭けてでも。

(Mr.Nanjo、あなたには感謝してるわ。でも、もう貴方の思惑通りにはならない)

Dearの仲間たちにこのことを話せば、おそらく喜んで協力してくれるだろう。
だが彼女たちを巻き込むわけにはいかない。それこそ本末転倒である。
とはいえ、1人では出来ることも限られてくる。
アイドルとしての仕事は休めないし、そもそもこちらの動向が監視されている可能性も否定できない。

まずは冷静に、情報収集から始めよう。それなら良いアテがある。



498 名前:だいすきなうた:2008/12/16(火) 20:07:03 ID:ZJlZDCJq
以上です。
「だいすきなうた 〜Project S.D. II〜」OP4をお送りしました。

これでオープニングフェイズは終了です。
何とか年内にオープニングを終わらせることが出来ました。
リサーチフェイズは……いつだろう?


今回のクロス先は、きくたけ大先生が以前に連載していた読者参加ゲーム、
「Dear... 〜この歌をあなたに〜」でした。
いわゆるアイドル物ッス。最後はいつものきくたけコースでしたが(笑)

>106
お遊びとして触れてみました。もう一つのメイド喫茶でも良かったんですけどね(笑)
たぶんもう登場しません。

>107
そもそも喫茶ゆにばーさるだとは一言も! ……ええ。

>108
はい、じゃあ好きにします。
初SSなもので、単純に長い話が書けないだけとも言います。

>109
じゃあそれで。

>128
じゃあそれd……って、無理だ! 自分にはそこまではっちゃけるのは無理だっっ!

499 名前:だいすきなうた:2008/12/16(火) 20:09:42 ID:ZJlZDCJq
解説コーナーを設けてみたいと思います。
ちなみに芸能人は基本的に芸名で。


●赤羽くれは
ご存知、ナイトウィザードより、はわはわ娘。
アンゼロットが実家に帰省する前という設定。そうじゃないと動かしづらいんだもの!

●露木椎果(つゆき・しいか)
「Dear...この歌をあなたへ」より登場。
アイドル歌手グループ「Dear」のメンバーの1人。
実はウィザードであり、「天使の声(Angelic Voice)」と呼ばれる特殊なプラーナを操る。
連載時は、鷹羽みなと達のライバル(ぶっちゃけ敵キャラ)として登場した。
NW第1版のルールブックを持っている方は157ページを参照。

●Dear
芸能事務所「杜プロダクション」に所属するアイドル歌手ユニット。
芸能人養成学校である「私立聖音学苑」の卒業生5人によって構成されている。
構成メンバーは椎果の他に以下の4人。
 ・鷹羽みなと(たかば・みなと):すっとこどっこいな不幸少女。C/Vは英魔さま。
 ・川澄雪(かわすみ・ゆき):物静かな少女。でも親友のことになると我を忘れる。
 ・風奈祥子(かざな・しょうこ):サバサバした姉貴分。ソロで歌手活動経験あり。
 ・伊吹萌(いぶき・もえ):IQ200なメガネロリ。元は声優志望だった。

●テレビ関東
今回の小ネタその1。
「しゅごキャラ!」に登場した架空のテレビ局。コミックス8巻に登場。

●サブタイトル
今回の小ネタその2。そろそろ分かりやすそうな物を選んでみた。
ちなみに、ほしな歌唄(C/V水樹奈々)のOPシーンの副題が「イグニッション」だったのは確信犯。



500 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/17(水) 14:19:28 ID:BZSHjlII
0-Phoneがフォンブレイバーになって柊が事件に巻き込まれるというクロスを思いついたのだが
俺自身、ケータイ捜査官7をよく知らないという問題が発覚してしまったw

501 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/17(水) 21:00:57 ID:qJgOBQdq
う〜む、セブンは結構ボケキャラだからなぁ。柊も突っ込みがいがありそうだ。

502 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/17(水) 21:20:30 ID:4phsCM72
0−Phoneがファイズフォンになって変身とか、来年のプリキュアとか

503 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/17(水) 22:53:23 ID:BEEg0WYu
      r――/{__/   l     l:::::::::::::/___
      |:::::::::::{_    /{      `ー'}/:::::::::::::::::::}     【保管】
     / \::/ 丶---‐' 丶--ゝ ___ノ::::::::::::::::::/、
    /    /     、__   __,      \::::::/   \    ●月と星と柊と #02〜#04
  /    / 、.ゝ==ミ      彡== 、ノ   Y       l    ●青き薔薇の巫女 #03
  ,'    lー{:::{__ノ::}      {:::{__ノ:::}ー  l        l    ●居酒屋ろんぎぬす3vs5 宰相編
  l     /  ゝ二 ソ        ゝ二 ソ   |        l   ●だいすきなうた〜Project S.D. II〜 #04
  |    l r− 、 .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. r‐− 、  /|         l   ●>424 歌ネタ
  |    、ー '     {\      ー一'   l: :         l
 /       \        ̄          l: :       l
./         : :`>  .. ______   イ : :        l  【保留(クロス先不明など)】
      : :/    丶---人__人-' \: :: :: :: :       l
     . :r'´   _     {/ \} l  \: :: :: :      l\  ●>460 スクイズ?
     : : 丶-' T´             l\  l: : : :        \●>475の前半
   : :: :: :r'⌒リ                l|ゝノ: : : : :         ●>439 メガテン?
  : :: :: : ノ  {                 l 丶: : : : : : : :



504 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/17(水) 23:57:08 ID:DvDkCOQP
・・・・・・アンタら・・・・・・折角、作品の投下があったんだから、投下乙くらい言ってやれよ・・・・・・

>>499
投下乙です。歌ネタでクロス先多数だと纏めるのが大変だと思いますが、続きを楽しみにしているので頑張って下さい。

歌声バトルはレシオ調整すると、そっから状況を変化させる方法がなくて、千日戦争化するか歌関係なくなるかどっちかな気が
しますが、きっと上手く調理して見せてくれるものと信じています。


505 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 00:00:57 ID:hYdj7rUe
もともとここの住人は投下に乙なんかほとんど言わないじゃん、何を今更
投下されたSSの感想なんかより自分のネタのほうが大事な人間ばっかだぜ?

506 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 00:53:48 ID:g8WUKtPQ
柊がいる場合といない場合ではレスの数が倍以上違う、気がする。

507 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 00:57:28 ID:0fu/6e68
ネタが判らんとレスを付けにくいのはあるね

508 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 00:59:51 ID:hYdj7rUe
いてもいなくても3人くらい乙って言えばいいほう、他は自分のネタ語りたいだけみたいに見えるが
そりゃ書く人間もいなくなるわな

509 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 01:24:17 ID:g8WUKtPQ
>508
投下した時乙しなくてすまなかった。
もしかしたら乙したかもしれないが、自演してでも山ほど乙るべきだったんだな。足りなくてすまない


今後メ欄あたりにこっそり乙要求を仕込まれているのを見たら、君だと思って連投規制かかるまで乙することにしようと思う。

510 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 02:07:40 ID:Y0uYtPT+
寂しいときは、ケータイから自分に乙すればいいんですよ。
もしくは日付を跨いで。

>504
すいません、ちょっと嘘つきました。「歌ネタ」ではなく「歌手ネタ」が正解です(笑)
と言っても歌手なのは半分だけで、NW組は全く関係ないですけど。

今のところ、歌で戦ったりする予定はありません。


>506-507
確かにそうかもしれませんねー。
柊は出すつもりが無かったので、他のNWキャラで引っかかってくれればいいなあと。

いやほんと、露木椎果なんて誰が知ってるんだよと。
もう一人のクロスキャラ、歌唄もあんまり人気があるとは言えないし……。

511 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 10:17:57 ID:hYdj7rUe
自己申告で信じてもらえるかは知らんが書いたことはない
いろんな場所見てまわってると、やっぱり感想もらえるところの方が活気があるから、もらえないところは書く人少なくなるのは当然じゃね?って言ってるんだけど

なにか気に障ったか?

512 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 10:49:54 ID:xQko/tLG
単純に人数が少ないって思えないのか
作品投下から次のレスまで半日以上開いてるし

>>510
椎果は一応リプレイに登場してるだけまだマシだよきっと!
同じ天属性のコネクションなら明らかにルチアの知名度よりはマシだよ!

513 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 16:55:28 ID:Y0uYtPT+
>512
出て……たっけ?(笑)

514 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 17:09:00 ID:3rEGr5RK
>512-513
そういやフレイスでちろっと出てたなw
最終決戦前の歴代キャラのとこで


そしてそれとは関係ないが、いつの間にかVIPのやる夫系にアンゼ様が出てるのも存在して吹いたw

515 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 17:23:45 ID:OrEa5R3s
Dearもナイトウィザードもマイナー作品だからレスが少なくて当然。
ELOGINの読者参加ゲームなんて誰が知ってるんだよと。

あと、作者は書きたいから書いてるだけであって>>511を楽しませるためにじゃない。
住人少ないところは逆に利点もある。原作破壊だヘイトだ劣化だと騒ぐ奴も少ないからある程度自由に書ける。

以上マイナークロスSS書いてる者の意見でした。

516 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 18:32:35 ID:Y0uYtPT+
>514
あー、居たような、居なかったような。
V3のルルブだかサプリだかの後書きに、みなとが載ってたのは覚えてたんだけど。

>515
確かに、有名作品に比べて気が楽なのはあるかも。

某ねこさんみたいに、自分の好きなキャラを
(このスレ限定かもしれないけど)人気キャラに押し上げた例もあるしね!

517 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 19:09:51 ID:3awBe+yd
管理人さん、乙っす。

>460のSSのクロス先はそれで合ってます。

自分がクロス先を公開するのがいやだった理由が、「クロス先を公開すると、動機がモロバレになる」だったんですが、「まあ、なんとかなるか」と思い直し、ここに公表するっす。

518 名前:439:2008/12/18(木) 19:32:04 ID:KKDoKpfH
>>490
私の方も正解です。

>>514
やる夫が本物の魔法使いになったようです

ってのはクロスオーバーに含まれるんだろうか…?
やたらAAが充実してるのもナイトウィザードの特徴だけど。

519 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 19:52:09 ID:Y0uYtPT+
>やる夫
個人的には興味アリなんですが
AA連打するとなると、レス数がそれだけでヤバいことになりそうな

520 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 20:35:20 ID:mhh34lo2
AAは携帯派には厳しいしな

521 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/19(金) 00:13:21 ID:8EBb47L6
ここでやると容量がきつそうだから
VIP等の別の板でやってここは報告だけの方が良いかなぁ
もしやる夫シリーズのNWをやるとしたら

522 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/19(金) 22:45:38 ID:jEI7BadC
柊の0-Phoneが魔法ケータイマージフォンに!
……アニキはディフェンダーなのだろうか

523 名前: ◆6H85fs.r4o :2008/12/19(金) 23:35:51 ID:5MrJzxTF
 「月と星と柊と」第5回を投下します。

リレーSS案は、あんまし盛り上がりませんでしたね。
そもそも人が少ないようで。
名作SSが頻繁に投下されれば、人も集まってくるんでしょうけれどね。

では11時50分から投下します。


524 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/19(金) 23:54:18 ID:5MrJzxTF
「俺の魔剣は、誰かを斬る為のもんじゃねぇ! 進むべき道を、切り開く為のもんなんだ!」
「我が槍は我が栄光の為に在るに在らず! 大義を貫く為の物なり!」

 煮えた台詞を吐きながら、下がる男達は落とし穴に飛び込んでは底をぶち抜き、下へ下へと下がって行った。

「・・・・・・・ダンジョンの設計者が見たら、泣きそうな光景ね」

   「おーい、ベル。早く来い。道が開いたぞ」

 呟くベルに柊が、下の階から呼びかけた。

「今、行くわ。上を向いたら殺すわよ?」
「ふん。下着を見られるのが嫌なら、ミニスカートなど穿かずにジャージでも着てくるのだな」
「むかっ! アンタは後で殺してあげるわ、ロンギヌス!」
「喧嘩すんなよ、お前ら」

 時折、ベルとコイズミが衝突するのを柊が宥めつつ、奥へと進む。
 普段は礼儀正しいコイズミも、魔王相手に尽くす礼節の持ち合わせはないらしくベルへの嫌悪感を隠そうとも
しないのだ。

 ここは狭界の一角に浮かぶ忘却世界・ラグシア城跡 百階ダンジョン。
 もとは第一世界にあったこの次元の歪みは、第一世界が冥界に堕ちたときに第八世界へと漂って来ていた。
 ノーチェの探知魔法によれば、アンゼロットはこの迷宮の最深部に囚われているらしい。

 世界の守護者が、たった一体の冥魔に攫われた。

 これは、何としても隠し通さなければならない大事件だ。
 ウィザードにとっても。裏界にとっても。ベル個人にとっても。

 この事が露見した場合の被害は、寧ろ、自分の方が深刻だ、とベルは感じていた。

 ロンギヌスがどう思っていようと、ウィザード・ユニオンにとってのアンゼロットは一ウィザード組織の指導
者に過ぎない。
 アンゼロットが冥魔に倒されたところで、他のウィザード組織の指導者達はアンゼロットを殉教者に仕立て上
げ、自らはその精神的後継者であると宣言してウィザード社会の実権を握るために利用するだけだろう。
 つまり、アンゼロットが冥魔に倒されてもウィザード・ユニオンは全く困らないのだ。寧ろ、その方が都合が
良いとさえ言える。実際はどうあれ、彼らの主観では。

 だが、裏界にとってはそうではない。自分達が倒すならいい。だが、他の者に倒されるのは非常に困る。
 何故ならば、裏界がその総力を持ってしても出来なかった事を冥魔一匹が易々と成し遂げたとなれば、古代神
陣営における裏界の立場は完全に消滅するからだ。最早、誰も裏界を、ベルを対等の盟友とは看做すまい。
 ただでさえ、未だに世界征服が出来ないために冥魔王達から軽んじられているのだ。

 裏界内でも、ベルを見限り冥魔王と手を結ぼうという動きが出始めている。
 既に、魔王カミーユ=カイムンは第五世界エルフレアの冥魔王、冥蛙王ヘルクストーと通じているし、他にも
独自に冥魔王との同盟を模索している魔王は何人もいる。
 この事件が公になれば多くの魔王達がベルから離れ、冥魔王達はこぞって裏界侵略に乗り出すことだろう。

 つまり、アンゼロットが冥魔に倒されると、一番困るのはベルなのだ!

 プリギュラによれば、冥界陣営最大の戦果を持つ古女王エルヴィデンスは、裏界を評してこう言ったらしい。

「駒としては有能だが、指し手としては論外」

 裏界と表界を入れ替える手段を持ちながら。
 世界から魔法を消し去る方法を知りながら。
 世界を丸ごと吹き飛ばす力を持ちながら。

 たかが人間如きに敗れ続けるのが裏界の魔王だ。


525 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/19(金) 23:55:36 ID:5MrJzxTF
 そう公言して憚らないのだとか。
 アンゼロットを倒した事があるエルヴィデンスは、アンゼロットに勝てない裏界を全く評価していないのだ。

 エルヴィデンスはベルに一言の断りもなく計画を進め、直前になってプリギュラを寄越した。
 一応、通知はした、という言い訳のためだけに。
 あの陰険ババアは、ベルの面目を叩き潰し、その無能さを主八界中に宣伝し、失脚させ、代わりに自分の息の
かかった者に裏界を支配させるつもりに違いない。

(そうは行くもんですか!)

 リオンによれば、最近のエルヴィデンスは戦わずに勝とうとする傾向が強いらしい。
 古女王にとって、戦闘とは娯楽として行うものであり、勝つための手段として用いるにはリスクが割りに合わ
ないと感じているのだとか。

 あのババアがそこまで慎重ならば、ベルが予想よりも有能だと知れば裏界への侵攻を諦めるだろう。
 そう考えたベルはプリギュラに遠見のコンパクトを貸し与え、一部始終を見物させる事にした。

(見てなさいよ、プリギュラ! あたしの実力を目に焼き付けて震え上がりなさい!
 そして、あのババアのところに泣きながら逃げ帰るがいいわ!)

 あの冥魔はアンゼロットを捕獲出来たにもかかわらず、その場で止めを刺さずに連れ去った。
 エルヴィデンスは古代神戦争でアンゼロットの父神に倒されたそうだから、きっと、自分の手でアンゼロット
に止めを刺したいに違いない。
 だから、あの冥魔は今、エルヴィデンスと合流するためにエル=ネイシアに向かっているか、もしくは、どこ
かでエルヴィデンスが来るのを待っているのだろう。
 ファー・ジ・アースとエル=ネイシアは結構離れている。合流するまでには、まだ時間がある筈だ。
 そして、慎重なエルヴィデンスは、実際にアンゼロットに止めを刺すまでこの件を宣伝したりはしないだろう。
 よって、当面はエルヴィデンスからこの件が漏れる心配はしなくていい。問題はウィザード達だ。

 ロンギヌスは必死で隠蔽工作を続けているが、アンゼロットは里帰りの前に他のウィザード組織との会談を予
定していた。不在が露見するのは時間の問題だろう。
 その前に、何としてでもアンゼロットの身柄を冥魔から奪わなければならない。

 アンゼロットの首をとるのは、自分でなければならない。絶対に、他の者に渡してはならない。
 そして、事件の発覚を少しでも遅らせるには、動く人数は出来るだけ少ない方がいい。
 だからベルは、見届け人として柊一人を連れて、自ら冥魔との再戦に挑むことにした。

 一方、くれはは決してベルを信用しなかったが、その性格と能力を考慮し、ベルは利用できると判断した。

「ダンジョンでの露払いだけベルに遣らせて、アンゼロットの元カレはひーらぎとコイズミさんに説得させよう。
 こーゆーのは男の人同士で話したほーがいーよねー。
 ベルは戦う気満々だけど、そこはひーらぎがなんとかするってことで」

 くれはは、そのように考えて3人を送り出した。
 柊は戦闘力に秀でる一方で隠蔽工作能力を持たず、コイズミは情報共有魔法によりアンゼロットからあの冥魔
に関する情報を与えられていた事による人選だ。

 そして、冒頭に繋がる。

 途中、冥魔化したプリンセス・モンスターに襲われて

 柊がサラマンダーの変種に熱湯をぶっ掛けられたり
 柊が歩く茸を引き連れたトータスに踏まれたり
 柊が枯れかけたトレントに哀愁を感じたり
 柊が白虎マントを羽織って仮面を被りシャドウブレードを持ったメタルゴーレムに懐かしさを感じたり
 柊が00の字型の光の翼を背負ったマッドマンに武力介入されたり

 色々あったが、大事無く地下98階まで順調に下がって来ていた。

「なんか、俺一人で戦ってないか?」

526 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/19(金) 23:56:55 ID:5MrJzxTF
「なんであたしが、あんな雑魚どもと戦わなきゃならないのよ?」
「申し訳ありません、柊様。私のレべルでは冥魔には歯が立たず・・・」
「・・・まあいいか。次行くぞ、次!」
「はい! 行きましょう、柊様」

 二人の下がる男は並んで奥の通路に向かい、そして、揃って落とし穴に落ちた。

「・・・・・・・・相変わらずねー」

 遠くで、水音が上がった。

  「うわっ、なんだこれ? う、鰻?」
  「お気をつけ下さい、柊様! これは体内にもぐり込み内臓を食い荒らす、きちくうなぎという、ぬお!?」
  「や、やべ、服の中に入ってきやがった!」

「何やってるのよ、あんたたちは・・・」

 落とし穴の底で鰻と格闘する下がる男達を見捨て、ベルは一人歩みを進めた。



「自分が何やってるか、わかってるのかしらね、あのぽんこつは」

 ベルのベッドに寝そべり、遠見のコンパクトを覗きこみ。
 ベルがウィザード達と一緒にラグシア城跡に突撃するのを見たプリギュラは、心底呆れ返っていた。

 これは古女王エルヴィデンスに対する明白な敵対行為だ。

 だからこそプリギュラも、自分の手を汚さぬようにベルを焚きつけたのだ。
 しかし、ベルだってスパイを通してウィザード達を導いてアンゼロットを助けさせるものだとばかり思ってい
たのに、自分で直接乗り込むとは予想外にも程がある。

「いったい、セルヴィになんて言い訳するつもりなのかしら?」

 この計画が成功すればベルの失脚は免れないとはいえ、堂々と味方の妨害をするとはどういう了見だろう?
 ベルは、プリギュラを古女王の忠実な部下だと考えていると思っていたが、冥魔王の忠誠心を軽く見て買収す
る気なのだろうか? 
 まあ、今回に限り、口裏を合わせるぐらいはしてやってもいいが。

 或いは、プリギュラの纏った瘴気に当てられて錯乱したのか?
 今のエルヴィデンスに裏界を粛清する余力がない事を見抜いて、好き勝手我侭し放題に振舞っているのか?
 それとも、ベルは既に天界に寝返っているのだろうか?

「見極めさせてもらうわ、ぽんこつちゃん」

 エル=ネイシアの独占に拘る古女王から分け前をせしめるには、アンゼロットに帰って来て貰い、エルヴィデ
ンスを困らせて貰わなければならない。
 そして、そこで自分が手を貸してやれば、あの老婆も世界一つを独り占めする事を諦めるだろう。
 だが、ベルがあの調子ではあまりにも心許無い。

「まぁ、いいわぁ。もしダメだったら、別の手を考えればいいし」

 プリギュラは見物を続け・・・・・・“それ”に気付いた。

「あらぁ。セルヴィったら、難易度上げ過ぎよぅ。これじゃクリアできないわぁ」

 少し動こうか。プリギュラは呟き、ベッドから身を起こした。




527 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/19(金) 23:58:16 ID:5MrJzxTF
「仮面がなければ即死でした」「いや、仮面かんけーねーし」

 鰻風呂の底をぶち抜いて脱出した下がる男達は、エンチャント・フレイムをかけた魔剣で鰻を焼きながら服を
乾かしていた。
 
―主よ・・・我は調理器具ではないのだぞ―「お前、“我を継承せよ”以外の台詞も言えたんだな」

 魔剣のぼやきを聞き流し、食事に勤しむ。

「ほら、焼けたぜ」「は、有り難く戴きます」「一緒に仕留めたんじゃねーか。そーしゃちほこばるなよ」

 暫し無言で鰻を頬張り・・・・・・柊が尋ねた。

「なあ、コイズミ。アンゼロットは、なんで俺にばかり任務を押し付けるんだ?
 他にもウィザードは沢山いるだろうに」
「それは勿論、柊様が優秀なウィザードだからです」

 ここぞとばかりに、コイズミは敬愛する英雄を持ち上げた。

「普段、柊様が日常時にこなしている任務ですが・・・あれを一般のロンギヌスに遣らせたら、毎回必ず犠牲者が出
ます。柊様が単位を一つ落とす度に、延べ千人の命が救われているのですよ」
「んな言い方されても嬉しくねーよ!!」

 手放しに賞賛され、気恥ずかしくなった柊は別の話題を探し・・・・・・思いついた事を口にした。

「に、しても物好きな莫迦がいるもんだよな。アンゼロットなんかのドコがいーんだか」
「柊様は、アンゼロット様の事を御自分の娘のように語るのですね」
「そーか?」

 苦笑するコイズミに、柊は不思議そうな目を向けた。

「はい。アンゼロット様だけではありません。エリス様の事も、他の女性の事も。
 くれは様以外の女性に対する柊様の態度は、娘を思いやる父親のそれとしか思えません」
「そっかぁ? ま、ガキんときからくれはと一緒に、近所のちっせえのの世話してたかんな。
 トオルとかユリとか。んで癖になってんのかもな。
 つか、俺があのおばはん相手に父親ぶってるって? 止してくれよ」

 恥ずかしそうに顔を背け、天井から降ってきた金ダライを受け止めた柊は、それを奥の廊下に放った。
 カラカラカラと転がっていった金ダライが、遠くの方でガコンと言う音と共に落とし穴に落ちた。

「おし。今度はあっこから降りようぜ」
「はい、柊様」

 そんな柊を暖かい眼差しで見つめつつ、今度はコイズミが問いかけた。

「前から気になっていたのですが・・・・・・柊様は何故、あんなにも学校に行く事に拘っていたのですか?
 たまに登校しても、授業中は寝ていたそうですが」
「―――ああ、それは・・・・・・」

 柊は答えかけ・・・・・・二人は同時に"それ"に気付いた。弾けるように、天井の一角に視線を向ける。
 その先から感じられるこの感覚は・・・・

「くっ、なんという巨大な小宇―」「プラーナ」「なんという巨大なプラーナだ!!」

 来る! 来る!! 来る!!!

 巨大なプラーナを持つ何者かが、来る。
 絶大な魔力を持つ何者かが、来る。
 迷宮の壁を床を天井を突き破りて、来る。
 空間を歪ませながら、来る。

528 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/19(金) 23:59:51 ID:5MrJzxTF

 額の内側に電流が走る。首筋の毛が逆立つ。
 魂が悲鳴を上げ、本能が此処から逃げろと絶叫する。

 それら総てを意志の力で押さえ込み、武器を構え、備える。

 そして、“それ”は来た。超高密度に圧縮された水流が。
 魔力の篭ったそれが天井を撃ち抜き、床を穿つ前に雲散霧消し、潮の香りが部屋を満たす。

「海・・水・・・・?」
 
 そして“彼女”が降臨する。開いた穴から、舞い降りる。

 伸ばした薄桃色の髪をリボンでポニーテールに束ね、三叉の銛を携え、海魔を象った鎧で未成熟な体を包み、
肩に蛸のマスコットを載せた幼き戦姫が。

 どこかアンゼロットを思わせる、有無を言わせぬ威圧感に。
 その身に纏った、命令する事に慣れた支配者の威厳に。
 発散される強烈なカリスマに。
 男達は、思わず頭を下げそうになった。

 その足元に這い蹲り、その靴に接吻し、武器を己が胸に向け、我が忠誠を受け取り給えと叫びたくなった。
 プライドも自我も捨て、彼女に盲従する一介の下僕に成り下がりたくなった。

 その衝動を、柊は意地で、コイズミはアンゼロットへの忠義で押し下げる。
 
 この幼姫こそが、アレイシア大陸を震撼させた五人の闇姫の一人。
 古代神エルヴィデンスの寵児。
 世界の守護者の12分の1。
 星王神エルンシャの欠片より生まれし、“エルンシャの娘”の一人。

 闇海姫(シャドウ★ネプチューン)。

「下がりなさい!」
「ぐあっ!」「うおっ!」
 
 彼女が一声発するだけで、男達の戦意が一気に下がる。

「な、なんだ・・・・この・・・プレッシャーは・・・」
「この感じは…アンゼロットが任務を押し付ける時の…けど、これは……アイツなんか……メじゃねぇ…」
「そう? アンゼロットはアンタ達が萎縮しないように、よっぽど気を使ってたのねー。
ホントなら、あたしの12倍凄い筈なんだけど」
「「!?」」

 驚愕に声を失った男達が言葉を取り戻すより早く、幼姫は高らかに宣言した。

「パパの邪魔はさせないわ! アンゼロットには、ママになってもらうんだから!」
「―――アイツ子持ちだったのか・・・・・・」
「柊様。彼女は闇海姫と言って、古代神エルヴィデンスが星王神エルンシャの欠片より生み出した戦姫です。
決して御油断なされ―」
「するかよ!」

 柊は咆哮し、幼姫に剣を向けた。



 ラグシア城跡 百階ダンジョン最深部。
 その巨大な地下空間は、数年前までは封印の間であった。
 冥界最強と呼ばれながらも八人の守護天使に敗れ分断された魔王・・・今は亡き"星降る夜の王"エンディヴィエ
の欠片の一つが封じられていた場所だった。

529 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/20(土) 00:02:21 ID:dNT/L4RN

 ベルが広間に入ると、床一面に描かれた巨大魔法陣の中央に立った人型の闇― 冥魔が"世界の守護者"の身体
を抱え込み、そのプラーナを啜っていた。
 アンゼロットは気を失っているのか、ぐったりとして抗う気配もなかった。
 ベルは油断なく周囲を見遣り、封印用の魔法陣が書き換えられ、アンゼロットに無限のレベルを与える幻夢神
との繋がりを断ち切ろうとしているのに気が付いた。

「あたしの獲物を返してもらうわよ」

 長年に渡って裏界の魔王達を退けてきたアンゼロットが、他の者に倒される。
 そんな事は、決して許す訳にはいかないのだ。

「久しぶりに"絶対の主"形態を使うわ。前と同じと思わない事ね」

 この冥魔は攻撃魔法を反射する。ならば物理攻撃で仕留めるまでだ。

 ベルは拳を固めると、空間転移で間合いを詰めて腕を振り上げ―
 ベルに気付いた冥魔は目を開き、その前面に七行の魔術文字を展開した。

「何?!」

 眼前に浮かぶそれは、かつてのゲイザーを思わせたが・・・・・・数が多い!!

 E MY エミュ
 L XECHUT ルクセクト
 N EY ネイ
 S YEIKURI シェイクリ
 Y XTRA イクストラ
 A RHARUT アーハルト

 ELNSYA エルンシャ

 逆側から見たベルにはその文字が読めなかったが、守護者の名前だという事だけは分かった。

(この冥魔・・・・まさか、倒した守護者の力を取り込んでいるの?!)

 ベルが驚愕から立ち直るよりも早く。

 タンブリング・ダウンが意識を刈り取り
 召喚された守護者の幻影が、エネミー特殊能力でベルのhpを1にして
 天井から降ってきた金ダライが頭頂部に激突し

 裏界第2位の実力を持つ魔王"蝿の女王"ベール=ゼファーは、巨大なたんこぶを作って床に転がった。

「この者は何なのだ?」
「・・・・・・・ただの蝿です。お気に為さらず」

 困惑するエルンシャに、アンゼロットは無情に告げた。

 魔王は守護者に敵わない。だから、裏界に封じられたのだ。
 分かっていたつもりだったが、個々まであっさりボコられる姿を見ると、こんなのに振り回されてきた自分達
が莫迦みたいに思えてくる。

 魔王エンディヴィエは守護天使8人に倒されたが、守護者の能力は守護天使と同格の聖姫12人分だ。
 それに対してベルの"絶対の主"形態は、高く見積もってもエンディヴィエの6割程度の能力しかなかった。

(そもそも、裏界の魔王の長所は大規模な儀式魔法を行使能力できる点にあり、単体での戦闘力は“神の世界で
は”低い方。それでも、戦い方次第ではなんとかならなくもなかったでしょうが、無力な人間を嬲る事に慣れき
り、その事を完全に忘れたベルに勝ち目などあるはずがありませんわ)


530 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/20(土) 00:03:05 ID:KpYneHu4
ちょっぴりいい雰囲気ちょっぴりいい雰囲気・・・・(謎支援

531 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/20(土) 00:03:51 ID:dNT/L4RN

 アンゼロットは、ベルの写し身が蝿の死骸の山に変わるのを見届けてから再びエルンシャの胸に顔を埋め、エ
ルンシャもまた目を閉じた。
 二人とも、蝿の死骸の山の中に、水晶で出来た蝿の彫刻が埋まっている事には気付かなかった。



「ふーん、ここで退場するかー。ま、潮時よね。これなら、自分はとっ捕まったアンゼの間抜け面をウィザード
達に見せようとして冥魔に襲われただけで、結果的にウィザードの露払いをした事になったけど、わざとやった
わけじゃないって言い張れるわよね。
 でも、闇海姫の事はどうするつもりなのかしら? あのウィザード二人だけで闇姫に勝てると、本気で思って
るの、ぽんこつちゃん?」



 同刻。すぐ上の階では、下がる男達と闇姫の激戦が行われていた。

 超高密度に圧縮された海水が、超高速で飛来した。
 長さ1mの水の槍がドリルのように回転しながら―
 超高速回転する水の円盤が丸鋸となって―
 サッカーボール大の水球が眼前で4つに分裂して、襲い来た。
 それら総てを、或いは避け、或いは打ち払い、或いはプラーナを開放して耐え凌ぐ。

 その猛攻の隙間を縫って、コイズミが槍から魔力の篭った光線を放ったが、幼姫が軽く目を閉じて僅かに首を
傾けると光線は一瞬前まで頭があった空間を虚しく通り過ぎ、背後の壁で火花を散らした。

「おおっ、かっこいい! あたしかっこいい!?」
「いい気になりやがって!」

 柊がジグザクに走って間合いを詰める。ウィッチブレードの機能を起動する。宙を滑り、勢い良く突進する。

「ブレードアサルト!」「海盾!」

 幼姫の翳した左手の先に海水が集まり、固められ圧縮され大盾となり、斜めに突き出されたそれが魔剣の切っ
先を逸らし、柊の体が横に流れて体勢を崩す。がら空きになった柊の左脇下に幼姫の銛が押し当てられて―

「とったよ!」「俺達が、な!」「?!」

 柊の陰から姿を現したコイズミが、槍を突き出し闇姫の顔に光線を撃ち込んだ。

「うおっ、まぶし!」

 溜まらず、幼姫は攻撃を中断して間合いを外す。そして、盾の裏に顔を映して怪我の具合を調べ・・・安堵した。

「ふう、前髪焦げちゃったかと思ったけど、そんな事はなかったわ」
「そんだけかよ!」
「・・・・・申し訳ありません、柊様」

 余裕の構えを崩さない闇姫の態度に、次第に、胸の奥から無力感が込み上げてくる。

「こっちは死力を振り絞ってんのに、向こうはまるで、仔犬とじゃれてるみてぇじゃねーか。
 あれでアンゼロットの12分の1だと? 人間と天界の連中とじゃ、そこまで力の差があるってのかよ・・・」

 考えてみれば当然の事なのかもしれない。魔王達を裏界に閉じ込めたのは天界なのだ。
 天界が魔王達への対処を人間に丸投げしているのは、つまり、天界にとって魔王達は脅威ではない、という事
なのだろう。
 ゲイザーも裏界の事は全く気にしていなかったし、実際、裏界最強のシャイマールですら、ゲイザーの支配下
に堕ちたのだ。

「まだまだ、いくよ! 聖なる水の爆烈!」「ぐぉっ!!」「っくぁ!!」

532 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/20(土) 00:05:08 ID:dNT/L4RN

 聖水で作られた巨大な水弾が着弾し爆発。男達はプラーナを解放して耐えるが―

「水竜爆降!」

 次いで、幼姫は自らの頭上に大量の水を巻き上げ、竜の姿を作り上げた。

「あの技は!」

 柊は、その技を知っていた。
 フレイスの炎砦で見た、柱の騎士の技を。人の身で魔王に匹敵すると言われた者の技を。

(俺に防げるのか?
 精霊獣の突撃を止めたおっさんを一撃で瀕死に追い込んだ技を、人間じゃない奴が撃って来るのに!)

 自問する柊に、手の中の魔剣が語りかける。

―怖れるな。主よ、我は運命すら切り裂く魔剣。我らに切り開けぬ道はない―

「!? ・・・ああ、そうだ! どんな壁にぶち当たったって、俺達に切り開けない筈はないんだ!」

 迷いを、切り捨てる。腕に、力を込める。魔剣に、ありったけの魔力と命とプラーナを注ぎ込む。
 巨大な竜が、顎を開いて柊を睨み。幼姫が片手を振り上げ・・・振り下ろす。

「潰れちゃえ!」「生命の刃・魔器開放・護法剣ッッッ!!」

 迫り来る超☆高圧の水流に、刀身から魔力を吹き上げる魔剣を、真っ向から叩きつける。

「ぐ・・・・くぉッッッ、・・・・・ぉぉぉぉッッッ!!」

 体の両側を、縦に二つに切り裂かれた超高密度・超高速の水流が流れ行く中、痺れる両腕を気力で支え―

「であぁぁぁぁ!!!」

 気合一閃! ついに総ての水流が床を穿って総て階下に消えるまで、見事、柊は耐え切った。

「きゃはっ! なかなかやるじゃん。アンゼロットは、いー下僕飼ってんのねー。羨ましいわー。
 5、6人分けてほしーなー」
「お褒めに預かり恐悦至極ですな!」
「いや、アンタの事じゃないから」
「・・・・・そうですか」
「俺は誰の下僕でもねぇ!!」

 吼える柊を面白そうに見つめながら、幼姫はポニーテールのリボンに手をかけた。

「プリギュラが言ってたっけ。まだ、本調子じゃあ、ないんだからぁ、油断しちゃ、だめよぉって。
 アンタ達が相手じゃーいらないとは思うけど、一応、全力全開でいくよ!」

 闇海姫がリボンを解く。その身体から、より膨大な魔力が迸る。

「なんと! まだ魔力が上がるとは!」
「きゃははははっ! この姿になったあたしは最強ってゆーかー、超☆無敵ってカンジー、みたいなー!」

 哄笑を上げる闇姫の姿が成長を始め、そして―――

   めぎぃッッッッ

 その体内で、何かが軋む異音が響いた。



533 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/20(土) 00:08:01 ID:dNT/L4RN
「あらぁ、やっぱりデスノートの能力じゃあ、完全な性能を復元できないみたいねぇ。
 巨大な魔力に、身体が耐えられないみたいだわぁ」


「あ、あれ? 身体が、崩れ・・る・・・・?」
「おい、大丈夫か? しっかりしろ!」
「柊様?! この者は敵ですぞ!?」

 急に動きを止め、白い顔で力無く崩れ落ちる幼姫に、慌てて駆け寄ろうとする柊をコイズミが呼び止めたが―

「死にかけてる子供を見捨てられるか!」

 柊はコイズミを一喝し、倒れた幼姫を抱き起こした。
 コイズミは闇海姫がアンゼロットの敵だった事を知っているが、柊にとっては“あの物好きな莫迦”の娘に過
ぎない、という事もあるだろう。
 だが普通なら、ついさっきまで自分を虫のように殺そうとした相手の身を此処まで案じるものだろうか?

「おい、しっかりしろ! 今、ヒールポーションを―」
「やだ・・・やだよう・・・死にたく、ないよう・・・助けて、助けてよ・・・・ネメシス・・ウラヌス・・・プルート・・エア・・・
 もう・・我侭言わないからぁ・・・意地悪とか、悪戯もしないから・・・だから、助けてよう・・・」

 柊の腕の中、ここにいない誰かに助けを求める幼姫の姿は、コイズミの目にもただの死にかけた子供に見えた。

「分かりました。この者の事は、このコイズミに任せて柊様はアンゼロット様のところへお急ぎください。
 少々、時間を取られ過ぎました。あの蝿めに先を越されますと、厄介な事になるやもしれません」
「分かった。任せたぜ、コイズミ!」

 柊から幼姫を預かったコイズミは、柊が床に開いた穴に飛び込んで下の階に消えるのを見送って・・・謝罪した。

「柊様、下がる男の称号はお返しいたします。私は・・・・貴方のようには、なれません」

 言って闇海姫の身体を床に横たえて………槍を、向けた。

「我はロンギヌス。世界の守護者の槍にして、罪無き者の血もて世界を救う者。
 いかに幼女の姿をしていようとも・・・・世界の敵に、古代神の走狗にかける情けはありません」

 コイズミは死に掛けた子供に槍を突きつけ、そして・・・・そして・・・・・そして・・・・・


 どれほどの間、そうしていただろうか?


 ついにロンギヌス(盲いた槍兵)は目を瞑り、ロンギヌス(無垢なる者を刺し貫く者)はその槍を突き出―

「やめときなさいよぁ」
「誰だ!」

 突然響いた少女の声に驚いて目を開き、そちらを向くと同時に凄まじい閃光が部屋を満たしてコイズミから視
力を奪いさった。

「めっ、目が・・・・・!」
「この子は、もらっていくわぁ」
「ま、待て・・・・」

 これで少しはぁ恩が、売れるわねぇ。少女の声がそう呟くと、すぐ前にあった幼姫の気配が消え失せた。

「くっ! 逃がしたか!」

 悔しげに叫びながら。
 コイズミは、どこか、ほっとしている自分に気付いていた。

534 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/20(土) 00:08:25 ID:CtC/fYLZ
久々に出くわしたので支援


しかしいろんな意味で仕方がないとは言え、ぽんこつにも程が…おや? こんな寒い時期に蝿が飛んでいr――

535 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/20(土) 00:15:33 ID:dNT/L4RN
 今日はここまで。御支援ありがとうございました。ネタも分かってもらえたようで。

 プリンセス・オーラの描写には凝りました。某泥の人の冥魔の描写に対抗するつもりで。全く届きませんでしたが。

 絶対の主対策は以前どこかのスレで出てた戦法ですが、今日、いや、もう昨日か、本スレ見たら滅茶苦茶評判悪いですね、絶
対の主。
 まともに戦ったら、まず勝てない。勝てるように戦うと、詰まらない。戦って愉しい敵を作るのも大変だ。

 アンゼロット様の姉妹の綴りは頭文字以外は捏造です。本気にしないでください。
 あと、エルンシャ様の名前の由来がエル=ネイシアのもじりだと、今回初めて気がつきました。
 アンゼロット様の姉妹の頭文字は、アルファベットだとエルンシャですが、カタカナだとエルネシイアなんですね。

 次回はいよいよ柊vsエルンシャ戦です。ではまた。


536 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/20(土) 00:18:01 ID:KpYneHu4
>>535
GJ〜
うぉ、まぶし! を地でやるとは、コイズミ出世しすぎだろとw

537 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/20(土) 00:26:34 ID:2jF9SroL
乙です。

なんですか、作者さんより溢れ出すこのコイズミ愛はw
まさか普通に格好良いなんて!

ところで。
>503でも少し触れましたが、>475の前半部分ってどう扱いましょう?
このままだと保管されずに冥界落ちになるんですが。

538 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/20(土) 00:39:10 ID:ZvFlIrkm
GJ!
お父さんな柊吹いたww

539 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/20(土) 01:47:39 ID:WkdEjvzP
GJ!しかし奴はナイトウィッチ達の面倒も見ていたのかw

540 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/20(土) 07:45:02 ID:yWQLELVR
↑ナイトウォッチな。
GJ!愛は運命〜で確かそんな小ネタあったなw


541 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/20(土) 13:24:28 ID:P0o6+Uka
カリスマすげえええ!!
ていうか、敵強いw そして、ポンコツさすがw
奪われた幼姫が、熟女になって参上ですね? わかります!
もう、カリスマ度合いがやばくなって。

>それに見られると
呼吸が止まる、存在が止まる、細胞が震えを止める、注目されるだけで鼓動が止まった。
歓喜に、喜びに、劣情に、肉欲に、見られること事体がこの世の如何なる歓喜よりも尊いものであり、殉教者として捧げたい。
死ぬことすらも歓喜、生きることすらも歓喜、存在することすらも歓喜。
歓喜であれ、喝采を上げよ、喜びに満ちよ、涙を零し、絶叫を上げよ、痛みにも似た愛に満たされよ。
嗚呼、嗚呼、素晴らしきかな。
死ぬだけが彼女への供物であり、祝祭である。

とか、って感じでモブが即死ですね? 分かります!

ああもう、泥な下僕としては期待に満ち満ちてます! 次回も期待してますよ!!!

542 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/20(土) 15:09:13 ID:etdsyEA1
素晴らしい。GJ!!柊お父さん発言はなんつーか納得した。
確かにあの無私っぷりは我が子を護らんとする父なら然も有りなんと言えるかも。
コイズミのキャラ立ちもいいですね。
ベルは味方に回るとかっこいいからきっと最後に美味しいところ持っていってくれると思います。
ぽんこつだけど。

543 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/20(土) 20:31:54 ID:54Kpc62M
味方になるとカッコ何だって?

544 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 00:13:14 ID:Q40f2Ty8
「敵にまわすと面白いが、味方にすると鬱陶しい」じゃなかったっけ?

545 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 00:16:14 ID:KCtMl3OU
橘さんみたいなもんか。

546 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 02:56:34 ID:dHk/Px8s
「なんという小宇・・・」のネタはもはやお約束ですなw

547 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 03:18:37 ID:TloMPw6s
白蛇のナーガよりはマシだよ? よ?

548 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 10:45:36 ID:g6gsjF0V
>>544
vipperのことかとオモタ

549 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 10:50:25 ID:sK595AY/
つまりベルはvipperなのか

550 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 15:55:05 ID:4+5ARHg/
まあ、厨二病を発病してるし案外間違ってないかもな

551 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 20:19:10 ID:hmjuOJpY
しかし冥魔陣営や天界陣営がここまで裏界陣営を軽んじるのも珍しい気がするな

いちおー幻夢神が眠って作られた世界結界やらウィザードやらと他の世界に比べて攻め難い中での戦いの気がするが……でも逆にここまで格下に見られる描写があると後半逆転するための布石に思えてきた俺がいるww

552 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 20:27:14 ID:g6gsjF0V
>>551
ベルがエルヴィデンスをエロエロに調教しちゃう話とな。

【馬鹿は曲解した挙げ句地下に落ちていった】

553 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 23:03:47 ID:AP8ltSBW
>>551
キリヒト「君は弱いんだから、さっさと逃げなよ」
メイオルティス「私を倒したかったら、シャイマールでも連れてきなさいよね」

天界も冥界も、めっちゃ裏界を蔑視してると思うぞ。

超女王様伝説やエイスエンジェルは敵も味方も推定60レベルで、人間に倒されるにしても軍隊相手とか、200人がかりで
やっと刺し違えた、とかだし、例え負けても逃げ延びて再起したり、敵側が勝って主人公側が逆襲する展開もあった。
けど、裏界はもっと弱い相手に完敗しっぱなしだし、ベルとパール以外は敗走さえ出来ずに討ち取られてる。

そもそも、エルヴィデンスに負けたアンゼに完封されてるし、高く評価する理由がないんじゃないかな。

>>552
あの婆さん、殺したくなるほど百合が嫌いなんだぜ。
あと、エルヴィデンスに負けたアンゼに負けたベルがうなぎ風呂に放り込まれるところは想像できるが、逆は無理だ。


554 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 23:23:46 ID:sK595AY/
世界結界がすごいんだと解釈してやろうよ、な

555 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 23:33:54 ID:2mLDJomI
管理職の保養所を現役バリバリのNAGOYAが軽視するのは当然の成り行きだろう

556 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 23:36:04 ID:g6gsjF0V
>>553
はっはっは、そーいう性癖がない女を調教するのが楽しいのではないか

【きらきらとした笑みでまた落ちていった】

557 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 23:36:24 ID:JyvRKzoj
まぁ世界結界の減衰を知らずないから(キリヒトは把握してるからこそ?)言えるセリフかもしれないけどな。
ベルの場合は負けるの楽しんでるマゾにしか最近見えないんだけど。

558 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/22(月) 00:32:43 ID:AnycprkC
囲碁だとか将棋だとかゴルフだとかまあ何でもいいけど、
実力差がある場合ハンデをつけないとゲームとして楽しめない、ってのは普通にあるぞ

559 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/22(月) 00:42:52 ID:/Cyqgx1z
世界結界があるからエミュレーターは弱いんだよ
魔法や超能力が使える外の世界だと神や守護者と対等に戦えたりするんだよ、たぶん

ベルがいつも失敗してるのは縛りゲーマーだからだと思う
昔、ファージアースは裏界のものだったと記述があるし
恐らく、過去に一度以上クリアしてしまって、普通のプレイじゃ物足りないんだ

これこれは設定的に最強で勝てないとか決め付けるてSS読んだり書いたりするとつまらなくなってしまうよ
そういうのは最強スレやVSスレでやればいい

560 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/22(月) 00:50:23 ID:yQVYVyzh
>559
クリボーだと思ったらメットだった!みたいなもん?

561 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/22(月) 01:27:41 ID:r/dfZGOD
そもそもナイトウィザードは絶対勝てないはずの相手をノリと勢いとシナリオギミックで倒したりする話だしな!

562 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/22(月) 02:03:15 ID:Ng5COZlT
っつーか、表界の戦力を鑑みて裏界を軽く評価するって、あれじゃね?
ヒーローと戦って負け続きの悪の幹部が他の幹部にねちねち言われるアレだろ。
そして「じゃあやってみろ!」となったところで嫌味言ってた幹部が最初優位→ボッコボコのあの伝統的流れ。

563 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/22(月) 04:24:24 ID:wody1yZw
メタなこと言っちまえば裏界の魔王だろうと冥魔王だろうと、あるいは世界を滅ぼさんとする天界の誰かだろーと
PCに倒されるべき存在であると言うのは変わらない。

564 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/22(月) 07:32:37 ID:4WeDPhSO
>562
負け続きのやつは最終回付近ではヒーローと共闘たりするのも伝統だな
って、ベルそのものじゃねーか

565 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/22(月) 10:22:12 ID:baVIrcVW
>553
超女王様伝説とかエイスエンジェルとか、今となっては知ってる奴のが少ないゲームを引き合いに出して
ネガティブなこと断言されてもなあ、単に気分悪いというか。
あとよく知らないんだが、それって読者参加ゲームとかエロゲADVとかの類で、
ヒーローになるPCがいるナイトウィザードとは全くジャンル違うんじゃねーの?

566 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/22(月) 16:15:22 ID:jcYnV6Gm
落ち着こーぜ、皆の衆
各SSは言ってみれば各鳥取相当なんだから、そこまで厳密に論議するこったないだろう
それに作中での強弱設定はクライマックでカタルシスを発生する為のフラグですよ?

567 名前: ◆1IXdmMAgHc :2008/12/22(月) 17:33:52 ID:3PSe4z7B
そう言えばクリスマスとか正月とかの特別編って俺以外にやる人はいんのかな?

568 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/23(火) 00:03:12 ID:40qjj59q
エルスゴーラがすごく面白そうなんだがここに出すとオリキャラになってしまうのがアレだな

569 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/23(火) 00:23:29 ID:HlCHozSQ
つか戦力比較でそこら中の情報色々使ってるのに、
ベルの遊び相手のディングレイ守護天使64人分や
エルオースの守護者八柱出張る羽目になったとかって情報は何処に…

570 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/23(火) 08:35:23 ID:HwstcGnN
そのうち使われるに決まってるだろ
後付設定はNWやS=Fの得意技だぜ

571 名前: ◆1IXdmMAgHc :2008/12/24(水) 02:45:34 ID:vsCBntom
メリークリスマス。本日はクリスマスイブにちなんだ特別編をお送りいたします。

タイトルは「要いのりのクリスマス」
3時より、投下を開始します。

572 名前:要いのりのクリスマス ◆1IXdmMAgHc :2008/12/24(水) 03:01:11 ID:vsCBntom
12月24日 3:00PM

「はぁ〜」
その日、要いのりは特に何をするでもなく、秋葉原の街をさまよっていた。
辺りの浮かれ具合とは対照的などんよりとした空気が辺りに漂っている。

「こうして3人で出かけるのも久しぶりね」
「最近仕事が立て込んでいてな…すまん。家のことは俺も手伝うと言う約束だったのにな」
「ううん。いいのよ。あなたが頑張っている姿、私、大好きだもの」
「…だけど、今日くらいは、一緒にいて欲しいな。3人で迎える、初めてのクリスマスなんだもの」
「ああ。もちろんだとも。例え世界が危機に瀕していたとしても今日はずっと一緒だ。どりぃ〜む」
「もう、ちょっと大げさじゃない?でも、そうね。今日はずっと一緒よ。あ・な・た」

「ずいぶん買い込んだね。でも良かったのかい?ずっと貯めてた箒の拡張用資金、使っちゃって」
「え〜のえ〜の。こういうお祭りんときくらいぱ〜っと使わんと。
 それにな、クリスマスってうちじゃやらんかったから、ちょっと憧れてたんよ」
「そっか。じゃあ、今日は盛大にお祝いしないとね」
「うん!どうせ明日から冬休みやし、お姉ちゃんも友達連れて来る言うとったからパ〜ッとさわご!」

「…え〜っとここで良いかな?すいませ〜ん。クリスマス用ケーキ1つ下さい」
「は〜い。3000円です…はい。確かに。ありがとうございました〜」
「ふぅ、ケーキも買ったし、天明さんの所に行こうか…ん?どうしたんだ姫宮?」
「…ごめんね。昨日、ケーキは私が作るって言ってたのに」
「…い、いやほら、ケーキって初心者には難しいって言うから、失敗だってよくあることさ」
「…調理室ごと爆発するのも?」
「う…いや…それはその」
「ちゃんとレシピも灯さんに教わって、その通り作ったのに…何がダメだったのかな」
「まあほら、たまたま運が悪かったとか材料に問題が…ってちょっと待って。誰から教わったって?」
「灯さん。お料理、得意だって聞いたから。丁寧に教えてくれたんだよ。命さんって人に作っていくために、調べたって」
「…ごめん。多分原因それだ」

「ふぅ…さっきので8個目。ノルマ達成でバイト代アップまであと12個!頑張ろう!おー!」
「うむ。頑張るのは構わんが…なんでこんなバイトなぞやってるんだ?昔ならいざ知らず、今はウィザードの仕事で金もあるだろうに」
「いやいや冬休みと言う稼ぎ時をのんべんだらりと遊んで暮らすなんて、私にはもったいなくて出来ないよ!」
「そう言うものか」
「うん!だから、時雨も一緒に頑張ろ。店長さんがバイト終わったら売れ残ったケーキくれるって言ってたから、今年のクリスマスはちょっぴり豪華に送れるよ」
「豪華なクリスマスが売れ残りのケーキか…いや、お前と一緒に過ごせると言うだけでもこの上なく豪華なクリスマスだな」

街のあちこちから聞こえてくるカップルの甘い会話がいのりの心に冷たい隙間風になって吹きこむ。
「…ったく、そんなに浮かれてんじゃないわよ!クリスマスってのはもっとこう、殺伐としてるべきなの!
 いつ異世界からやってきたマスクメンに殴りかかられてもしょうがない!ってくらいに!」
勢いに任せて適当なことを1人で言ってみて、余計に空しくなって落ち込む。
「…はぁ〜」
思いっきり溜息。

『…ごめん。今日はちょっと用事があるの…京介君と一緒に』
『えっと、その、まあ、クリスマスだしな…っつーわけですまん』

終業式のあと、遊びに行こうと誘って言われた言葉が頭から離れない。
「ど〜せ出かけたりしないと思って予定を確認しとかなかったあたしも悪いんだけどさ…」
きっと今頃、あの2人もこの街にあふれているカップルみたいに甘い一時を過ごしているんだろう。
「結局今年も1人かぁ…」
去年のクリスマスは最悪だった。3ヶ月前に死んだ(と思っていた)姉のこともあって祝う気にはなれず、死んだように過ごした。
その時のことまで思い出してしまい、思わず身震いして、それを誤魔化すようにいのりは不満をぶちまけた。


573 名前:要いのりのクリスマス ◆1IXdmMAgHc :2008/12/24(水) 03:04:31 ID:vsCBntom
「大体お姉ちゃんは勝手過ぎるのよ」
「そうなんですか?」
「そうよ。いっつもパソコンばっかりやってて外でないし、家事は手伝わないし、そのくせご飯の注文は人一倍うるさいし…」
「なるほど〜」
「あたしはお姉ちゃんのお母さんじゃないの。せめて自分のことくらいは自分でやって欲しいわ」
「あれ?でも9月にはお姉さんは1人で暮らしてたんじゃないんですか?」
「それがさ〜1人にしたら少しはマシになるかと思ったけど、ダメダメだったわ。ご飯は全部コンビニのお弁当かインスタント。
 お掃除と洗濯はまったくしない。下着なんてサイズ同じだからって私のタンスに入ってるとっておきまで
 全部引っ張り出して着てたのよ?そこまでするならちゃんと洗濯しろっての」
「へえ…いのりさんもお姉ちゃんには苦労させられているんですね」
「そうそう。って“も”ってことは…ってあ〜そう言えば部長かあ。お姉ちゃんって」
「はい。それともう1人、TV局で働いてるお姉ちゃんがいるんですけどこれがまた濃い人で。
 この前なんて『吸血鬼と狼男のダブルボケコンビなんて面白そうじゃないですか?』って言って駒犬先輩のところに勧誘に行ったんですよ」
「…うわあ。目に浮かぶわ。やっぱりそっちのお姉ちゃんもそっくりなの?」
「はい。普段はコンタクトでメガネかけてない分はあかぬけてますけど、そっくりですよ。たま〜に三つ子に間違われたりしますし」
「そっくりだもんね〜…ん?」
つらつらと世間話をしていてふと、いのりは気づいた。何かが、おかしい。
っていうか…ヤバい。
そんな直感を感じながら錆びついたドアの様にゆっくりと首を動かし、さっきまで話をしていた相手を確認する。
「どうしましたいのりさん?」
そこに立っていたのは予想通りの人物。明るい茶髪のおかっぱに、牛乳瓶の底のようなぐるぐるメガネ。
この辺じゃあ見ないデザインの緑色の制服を着た、その少女は…
「…春美ちゃん?」
「はい♪」
にっこりと笑顔で答える少女、三石春美を見て。
いのりは瞬間的にずざっと飛びすさる。
「ふぁ、ファイアーワーク…!」
「ストップストップ。大丈夫ですよ〜」
反射的に自分の相棒である魔物を召喚しようとしたいのりに春美はひらひらと手を振って答える。
「…大丈夫?」
あくまでも余裕の態度を崩さない春美に、冷汗をかきながらいのりは問い返す。
三石春美。人間界に潜入する仮の姿として作り出しされた、かりそめの存在。
その真の姿は…


574 名前:要いのりのクリスマス ◆1IXdmMAgHc :2008/12/24(水) 03:05:50 ID:vsCBntom
「今日は“告発者”ファルファルロウのお仕事はお休みですから」
裏界でも名の知れた、魔王の一柱である。
「…それで、なんでそのお休みしてる魔王が秋葉原にいるのよ?」
緊張感を保ったまま、いのりが春美に問う。
「ああ、今日は取材のために来たんです」
「取材?」
「はい。実はですね。今日、このあたりに魔王候補見習いの子が来てるらしいんですよ」
「魔王はともかく、候補見習いって…何それ?」
あまり聞きなれない言葉に思わず聞き返したいのりに、春美は懐から手帳を取り出して読み上げる。
「え〜っと、なんでも異世界の出身で異世界の征服を狙ってるらしいんです。まあ今は色々あって封印されてるんですけどね。
 それで、裏界のとある公爵様がその子にその世界を征服したら裏界の魔王って公認するって言ってたって聞いたんで、
 折角だから色々聞こうかなって。いのりさん、知りませんか?ベアトリーチェって言う、黒い服着た小学生くらいの女の子なんですけど」
「いや、知らないけど」
「そうですか。う〜ん何処に行ったのかなあ?」
いまだにいつでもファイアーワークスを呼び出せる体勢を保ったままのいのりの前でも、春美の態度は変わらない。
「まあいっか。見かけたら教えてくださいね。ケータイの番号は、変えてないんで」
少しだけ考えたあと、にこやかにいのりにそう言うと、春美は小走りで魔王候補見習いを探しに行ってしまう。
「…びっくりした〜」
春美がいなくなったのを確認し、いのりは緊張から解き放たれて大きく息を吐く。
「最近はこの辺りも物騒だって聞いてたけど…」
まさか街中で普通に魔王と出会うとは思っていなかったし、彼女の話が本当なら今この街には他にも魔王(候補見習い)がいるらしいのだ。
ただでさえ最近は冥魔だのなんだのが暴れまわっていると言うのに。
「こう、身近でああいう事が起こると、実感するわマジで」
うんうんと頷きながら歩く。

ドンッ

「きゃ!?」
「っと、ごめんなさい!」
考え事をしながら歩いていたせいで、うっかり人にぶつかってしまい、いのりは反射的に謝る。
「ああ、大丈夫よ。気にしないで…あら?」
ぶつかったのはいのりとは一回り年の離れた大人の女性だった。白いコートと青い髪、目もとの泣きボクロが印象的な美女。
その女性はいのりの方を見て、不思議そうな顔をする。
「…あの、どうしました?あたしの顔に何かついてます?」
「う〜ん。いえねよく似た知り合いがいるんだけど…あ、もしかしてあなたが要いのりさんかしら?」
「へ!?何で知ってるんですか!?」
見知らぬ女の人に、名前を言い当てられ、いのりは思わず問い返す。
「ああ、やっぱり。ねがいちゃんにそっくりだったから、すぐに分かったわ」
その問いにその女性は朗らかに笑って答えた。

575 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/24(水) 03:16:26 ID:9Rr5TKOo
そういえばどなたかの誕生日は終わったんでしたっけ支援。

後七日で大晦日とは一年は早いものだ

576 名前:要いのりのクリスマス ◆1IXdmMAgHc :2008/12/24(水) 03:18:20 ID:vsCBntom

4:00PM

「はじめまして。ジニー・マックスです。ジニーって呼んでね」
近くにあった喫茶店に入り、女性は気さくに自己紹介をする。
「あ、はい。こちらこそはじめまして。要いのりです」
それに答えるように自己紹介を返したいのりに、女性…ジニーは笑って答える。
「そんなにかしこまらなくてもいいわ。敬語もなし。じゃないと私も落ち着かないし」
「あ、はい分りました、じゃなくて分かった…えっと、それで何でジニーはお姉ちゃんのことを知ってるの?」
いのりの当然と言えば当然の疑問に、ジニーは相変わらずの笑顔で答える。
「ああ、私はねがいちゃんとパーティー組んでるギルメンなの。一応ギルマスなんだけど、正直知識じゃベアちゃんには敵わないし、
 レアアイテム収集じゃあアン様に勝てないから、そんなにえばれたものでもないんだけどね」
「…え〜っと、ごめんなさい。さっぱり分かりません」
「え?あ、そう言えばいのりちゃんはやらないんだっけ。お姉さん、失敗しちゃった」
てへっとばかりに自分の頭を小突く。普通の大人の女性がやったら非常に痛々しいのだが、
ジニーから漂うほんわかした雰囲気のお陰か可愛らしい印象を与えていた。
「え〜っと、分かりやすく言うと…ねがいちゃんがネットでやってるゲームの友達ってところかしら?」
いのりにも分かるように言いかえる。
「ネットでの…あ、そう言えばお姉ちゃんが『今日はジニーさんとネームド狩り行くからご飯のとき呼ばないで』とか
 言ってたのを聞いたことがあるような…あれってゲームの話だったんだ」
「そうそう。でまあ、それで前にねがいちゃんが双子の妹がいるって話してたのを思い出して、ああこの子だなって」
分かってもらえてよかったわ〜と微笑みを浮かべたままジニーが言う。
「ま、そんなわけで改めてよろしくね。いのりちゃん」
「うん。よろしく」
つられていのりも笑顔で、答えた。

それから小一時間、いのりとジニーは楽しくおしゃべりをする。
「それでね。私もクリスマスにお祝いするって言うのは初めてだからせっかくだし盛大にしようかなって思ってベアちゃんと2人で来たんだけどはぐれちゃって困ってたのよ」
「ベアちゃん?」
「うん。お姉さんのコンビの突っ込みの方。多分この街のどこかにいるとは思うんだけど、
 お姉さんここには1回しか来たこと無いから、地理とかさっぱりでね。2人ともケータイ持ってないから連絡も取れないし。
 いのりちゃんは知らないかしら?黒い服を着た、小学生くらいの女の子なんだけど」
「う〜ん。あたしもそんなに詳しいわけじゃないから、ちょっと分かんないな」
ジニーの説明にちょっぴりデジャヴを感じながらもいのりは首を横に振る。
「そっか〜」
ちょっぴり残念そうに肩を落とすジニー。
「ごめん…あ、そうだ知り合いのウィザ…友達に電話して聞いてみよっか?」
「いいの、そんなに気にしないで。夕方に待ち合わせしてるから、その時までには会えるだろ〜から」
「そう?」
「とはいえドンキでの買出し用のメモはベアちゃんが持ってるのよね〜」
困ったな〜とばかりにジニーが腕を組んでいたその時だった。
隣の席からの会話が聞こえてくる。座っているのはいかにも…な感じの男が2人。


577 名前:要いのりのクリスマス ◆1IXdmMAgHc :2008/12/24(水) 03:21:55 ID:vsCBntom
「いや〜凄かったな。まさかあの“赤毛のロリっ子”が負けるとは思わなかったよ」
「ああ、しかも勝った方もロリっ子だったもんな。アキバの美少女ゲーマー史に燦然と輝けるくらいの」
「2D(内容)でも3D(見た目)でも名勝負だった。俺ももう(ピー)年はアキバに生息してるけど、5本の指に入る名勝負だね」
「個人的には“銀髪の双璧(胸的な意味で)頂上決戦”を超えたね。ロリ度が違う」
「小学生同士の対決…しかも赤毛の方はどうみても低学年。それでガチゲーマー顔負けのバトルだもんな」
「野生動物並みの反射速度で迫る赤毛にシステムを知りつくした先読みで反撃する黒髪とか、死ぬほど熱かったな」
「ああ、俺も思わず手に汗握っちまったよ。2本目は先読みすら超えた入力速度で赤毛が取って、
 3本目も小パン1発差くらいのところで絶妙なタイミングで超必殺発動で終わりだったもんな」
「あんな才能が埋もれてたなんて、世界は本当に広いな」
「そういやさ、さっきの黒髪の子、噂じゃあ“くまっこ”だってさ」
「くまっこって…“あがとらの孔明”かよ!?」
「ああ、あくまで噂だが…あれを見せられたら、信じるしかなくね?」
「だな…」

「…ジニーさん?」
いのりにはさっぱり分からぬ会話を繰り広げる男たちの話を、興味しんしんで聞いているジニーに、いのりが声をかける。
「う〜ん。ほぼ間違いないわね」
一言そう呟くと、ジニーはテーブルに代金を置いて立ち上がる。
「ごめんなさい。多分ベアちゃんがどこにいるか分かったから、ちょっと行ってくるわね」
「え?そうなんですか」
「ええ。さっきの人たちが話してたのが、ベアちゃんだと思うわ」
「ええ!?」
そう言うとジニーはさっさと隣の席へと行ってしまう。
「すいませ〜ん。さっきの話、詳しく聴かせてもらえませんか?」

「ああ、やっぱり」
さっきの男たちに教えてもらったゲーセンの対戦筺体には、黒山の人だかりが出来ていた。
筺体の上の部分には3桁を軽く超える勝ち抜き数を表すカウンターが輝いている。
筺体の影と人だかりに隠れて本人は見えないが、それでもジニーは確信したらしい。
「ベアちゃんだわあれ。と言うわけで、私はこれからベアちゃんと合流するから、ここで失礼するわね」
そう言うとジニーは黒山の人だかりのほうに向かっていく。
「と、そうだったわ。その前に…」
途中で振り返り、ジニーがいのりに言う。
「日が暮れる頃に帰ってきてね。みんな待ってるから」
「は?それってどういう…」
それだけ言うといのりの返事は聞かずにジニーは人ゴミの中へと入っていってしまい、見えなくなった。
「ど〜ゆう意味なんだろ?日が暮れる頃って…それにみんなって」
去り際、ジニーの残した言葉に、いのりは首をかしげていると声をかけられる。
「あれ?いのりじゃない。なんでこんなところにいるの?」
幼い少女の声。
いのりには、聞きなれた、知り合いの声。
「サフィーちゃん?サフィーちゃんこそなんで?」
赤毛の小さな少女の名を、いのりは呼ぶ。
「なんでって…この店はアタシの行きつけだもの」
そこにいるのが当然だって顔をして少女…サファイアは答えた。


578 名前:要いのりのクリスマス ◆1IXdmMAgHc :2008/12/24(水) 03:27:55 ID:vsCBntom
5:00 PM

「へぇ…姉貴がいのりの片思いの幼馴染とラブラブで、それで傷心してあてもなく、ねえ…
 ぶっちゃけ、いのりのキャラじゃあ無いわね」
いのりから事情を聴き、サフィーはケラケラと笑いながら言う。
「も〜、笑わないでよ。これでも結構傷ついてんだから」
そう言いながらも憮然として言い返すいのりに、さっきまでの暗い影はもう無い。
「ごめんごめん。いのりってどっちかって言うと悩む前に突っ込む子かと思ってたんだけど、恋が絡むとえらく奥手なのね」
「…だって、京介が選んだのはお姉ちゃんなんだもん」
昔のこと、と言っても9か月前のことを思い出し、いのりは唇を噛む。
あのとき、自分が後押ししたとはいえ、最後の最後で京介が選んだのはいのりではなくねがいの方だった。
そしてそれからずっと、2人は恋人のままだ。
「う〜ん。アタシは何があったか知らないし、聞かないけど」
いのりのそんな様子を見て、サフィーは腕を組んで答える。
「アンタの姉貴とそのキョースケってのはもうやっちゃってんの?」
直球ど真ん中。しかも剛速球。
「なななななやややややっちゃってるってなななななにを!?」
そんなサフィーの言葉にいのりは顔を真っ赤にして答える。
「なにってそりゃあもう自然の摂理って言うか男と女が好き合ってたら行きつく先って言うか…まあ、具体的に言うと」
「具体的に言っちゃ駄目!まだ高校生なんだよ!?そんなの早すぎでしょ〜が!」
ぶんぶんと手を振りながら全力で否定する。
「だいたいなんでそ〜ゆう話になんのよ!?」
その様子を見て、サフィーは目を細め、にやりと笑った。
「そりゃあ…まだなら逆転のチャンスはいくらでもあるってことだからよ」
「へ!?」
「ま、いのりがもう少し大人だったらやることやってても関係ないんだけどね?」
「ななななな!?」
真っ赤な顔のまま、壊れた人形のように叫び続けるいのりを見て、サフィーは溜息をつく。
「つってもそんな反応してるようじゃあ、しばらくは無理ね。だったら、2人が既成事実を積み上げる前に…」
「ちょ、ちょっとタンマ!」
手をつきだし、サフィーの話を遮って、きっぱりと言う。
「京介は好きだけど。お姉ちゃんも同じくらい好き。だから、2人を悲しませるような真似、あたしにはできないし、したくない」
「…そう」
いのりの目にきっぱりはっきりと見えてる決意って奴を見て、サフィーはふぅ…とアンニュイな溜息をつく。
「それならアタシは良いんだけど…いのりは、それで本当にいいの?好きな人を他の奴に取られて、黙って見てるのって辛くない?」
「…そりゃあ。でも、いいの。あたしが我慢すれば済むんだし、しょうがないよ…」
サフィーの質問にどきっとして、それから消沈して答える。
いのりの心にまた、どんよりとした暗い影が落ちる。
「あちゃ〜、やりすぎたわね…よし」
その様子を見てサフィーはちょっと考えたあと、ぐいっといのりの腕をつかむ。
「サフィーちゃん?」
「ちょっと付き合って欲しいところがあるの」
そう言うとサフィーは月匣を展開し、ついでふわりと浮きあがる。
「付き合うって、どこに?」
困惑した表情でいのりがサフィーに尋ねる。
「ちょっとした気分転換ってところね。あと、ついでに落ち着いて話せる場所。飛ばすからしっかりつかまってて」
そう、いのりに声をかけると同時に。
サフィーは全力で空を駆けた。


579 名前:要いのりのクリスマス ◆1IXdmMAgHc :2008/12/24(水) 03:36:13 ID:vsCBntom
5:30 PM

「うわあ…キレイ…」
サフィーに連れてこられた場所で、いのりは感嘆の声を上げる。
日が沈む直前の黄昏時。オレンジ色に染まった街と薄い紫色に染まった空のコントラストが美しい。
東京に無数にある高層ビルのうちの1つの屋上。
そこに2人はいた。
「でしょ?前に偶然見つけたの」
ちょっと得意げに胸をはったサフィーが落下防止用の柵に腰かけて遠くの方を見る。
「落ち込んだ時にはこうして高いところから下を見下ろすと心が晴れる。そう、妹が良く言ってたわ」
遠くの風景と一緒に遠い昔の記憶を掘り出しながら、サフィーが呟く。
「妹?サフィーちゃん、妹がいるの?」
「ああ、そう言えばいのりには話して無かったっけ?そうよ。アタシには妹が1人いるの。300歳年下の、ね。
 …一応言っとくけど、見た目だけはアタシより10歳くらい年上よ?」
多分いのりは自分より一回り小さいガキを思い浮かべてるんだろうな〜と思い、サフィーはすかさず釘をさす。
「へ!?え、あ、そうなの?」
先回りして図星って奴を撃墜されたいのりが狼狽する。
「え〜と、じゃあサフィーちゃん、妹さん置いてこっちに来て良かったの?」
そしてふと、気になったことをサフィーに尋ねる。
「大丈夫でしょ。ここ最近は半年に1回顔あわせるかどうかってくらいだったし…今はあの子の隣にはあいつがいるもの」
「あいつ?」
「そ、あいつ。妹の旦那。超がつくほどのお人好しですっごい馬鹿でいっつも能天気な…アタシの初恋の相手」
そう答えるサフィーの声には、たっぷりの懐かしさと…ほんのちょっぴりの苦味が混じっていた。
「初恋?」
サフィーの言葉にピクンと反応していのりが問い返す。
「そ。昔…って言ってもまだ7年しか経ってないのよね。うわーほんっと最近だわ」
吸血鬼の感覚だとホンの数か月前くらいな出来事であることを再確認し、自分の言葉に驚く。
「人間と暮らしてるからかしら?ま、いいわ。とにかく、アタシにはシズクの前に好きな男がいたの」
口に出すと蘇ってくるのは、7年前の記憶。
「出会ったのがちょうど今頃。で、好きになったのは…ああ、そういや今日だったわね。クリスマスイブ」
そうだった、落ちていく自分を見て、考えも無く飛び出し、抱きかかえて一緒に落ちた馬鹿がいなかったら…
「…命の恩人ってことにもなるかしら?ま、そ〜ゆ〜奴よ」
「そうなんだ…でも、先生と一緒にいるってことは…実らなかったの?」
いのりのおずおずとした問いに苦笑して答える。
「そうなるわね」
「どうして?」
「まあ色々要因はあるわね。アタシの禁断の果実的な魅力がさっぱり分からない朴念仁だったとか、色々ね。
 けれど、一番の要因は…アタシが出会った時点で、もう好きな子がいたことかしら」
「好きな子?」
「言ったでしょ。あいつは妹の旦那だって。そう、あいつは…アタシが出会った頃にはもう、妹と出来てたの」
そう言うサフィーの言葉は…ちょっとだけ、寂しげだった。
「妹…?」
「そう、妹。アタシが出会うちょっと前から、ちょっと命がけの色々があって2人でそれを乗り越えた、そう言ってたわ」
不思議そうに尋ねるいのりにサフィーは笑いながら答える。
「じゃあ、あたしと同じ…なの?」
「アタシは妹でいのりは姉って差はあるけど、そ〜ゆうことになるのかしら。家族の彼氏寝取る気になれなかったってのも同じだし…時々思うわ。本当に良かったのかってね」
「後悔してるってこと?」
「さあ?よく分からないわ。家族がいて、好きな奴も出来て、ここで面白おかしく暮らしてる今も、悪くないもの」
真面目な顔になっていのりに言う。
「どっちを選ぶかってとき、選ばなかった方を選んだらどうなってたか、なんて知りようがない。 だったら、悩めるうちは思いっきり悩んどきなさい。
あんだけ悩んで決めたんだから間違ってるはずがない。後で思い返した時、そう思えるようにね」
ぴょんと柵から飛び降り、宙に浮いたままいのりに顔を寄せる。
「けどま、あいつらならどう転んでもそんなに悪くはならないとは思うけどね」
にっこりと、今度は天使のように無邪気な笑顔で伝える。
「え?ど〜ゆ〜こと?」
いのりの問いには答えず、再び手をつかむ。
「さ、行きましょ。日も暮れたし、そろそろ良い頃合いだわ」
「え?ちょっと?行くってどこへ?」
「ちょっと遅くなったから、飛ばすわよ。しっかり捕まってなさい!」
そしてそのまま弾丸のように加速した。

580 名前:要いのりのクリスマス ◆1IXdmMAgHc :2008/12/24(水) 03:52:01 ID:vsCBntom
6:00 PM

「あれ?ここって…」
「そうよ。アンタのうち。さっさと行きましょ。待たせっぱなしにするのも悪いし」
「え、待たせるってど〜いう」
「い〜から。入れば分かる」
そう言ってサフィーはずかずかと要家の敷地へはいって行く。そして、玄関のドアを開けた瞬間…

パンッ!パンッ!

「「「「「メリークリスマス!」」」」」
「おー。しっかり準備終わってるわね。そっちがねがいが言ってたお友達?…なんか微妙にいや〜なのが混ざってるけど」
「え?あれ?ど〜ゆ〜こと?」
家に入った瞬間に鳴らされたクラッカーに呆然としながら、いのりがそこにいるみんな…ねがい、京介、静に尋ねる。
「私が、頼んだの…」
それにねがいが答える。
「いのりのためにクリスマスパーティーをやりたいってな」
「そう、それで3人とサフィーちゃん、それにねがいくんの友達だって言う2人に来てもらって準備してたのさ、今までね」
京介と静が後の言葉を引き継ぐ。
「他ならぬねがいちゃんの頼みだから、お姉さんも頑張っちゃったわ♪」
「…後半はアンタ迷子になってただけでしょうが」
柔らかな笑みの白い服の美女と彼女に突っ込みを入れるちょっぴり不機嫌そうな黒い服の美少女。
その2人の1人にいのりは見覚えがあった。それは先ほど会った…
「…ジニーさん?」
「そう。改めてよろしくね。あ、そうそう、それとこっちがさっき話したベアちゃん」
「だからその名前で呼ぶなって…いや、今日はいいわ。あのメガネの話もあるし。とにかく、よろしくお願いするわ」
「うん。よろしくね。ベアちゃん」
握手を交わす。
「さ〜て、お互い自己紹介も終わったところで始めましょっか」
パンと手を打ち鳴らしてジニーが提案する。

そしてパーティーが始まった。



581 名前:要いのりのクリスマス ◆1IXdmMAgHc :2008/12/24(水) 03:53:11 ID:vsCBntom
10:00 PM

「今日は本当に楽しかったな…ありがと、お姉ちゃん」
パーティーも終わり、後片付けも済んですっかりいつもの静けさを取り戻した要家で、いのりがねがいに話しかける。
…疲れて眠ってしまったねがいを起こさないよう、静かに髪の毛をなでながら。
「まさかお姉ちゃんがこういうことしてくれると思ってなかったから、余計にうれしかったよ」
聞けば今日、学校から帰ってきてすぐからずっとねがいはパーティーの準備をしていたと言う。
京介が物置から引っ張り出してきたツリーに飾り付けをしたり、静の指導でクイーンズイングリッシュのクリスマスソングの練習をしたり、
ジニーから教わってケーキを焼いたり(ちょっぴりデコレーションが不格好だったけど、味は良かった)…
いつもの引きこもりっぷりからは想像もつかないほどの頑張りっぷりだったと言う。
「う〜んいのりぃ…」
「うん。なぁに?」
むにゃむにゃと寝ぼけながらいのりの名前を呼ぶねがいに、いのりが微笑んで答える。
「いつも、ごめんね。お手伝いとか、しないといけないのに。おうちのことまかせっきりで…それと、ありがと。駄目なお姉ちゃんを見捨てないでくれて」
それは、普段だったら照れくさくて言えないような、ねがいの本音。
「う〜ん。いいよ。あたし、結構家事するの、好きだし、お姉ちゃんの世話してないと落ち着かないから。それに…」
いのりもまた、相手が寝ぼけてなければ照れくさくて言えないような、本音で返す。
「お姉ちゃんがこうしてあたしのことを考えてくれるようになったってだけでもすごくうれしいもん」
「…そっかあ…よかったぁ…すぅ〜」
いのりの答えを聞いて満足したのか、ねがいは再び夢の世界へと旅立つ。
「…ファイアーワークス。お姉ちゃんをベッドまで運んで上げて。起こさないようにね」
主の命令を受け、ファイアーワークスが静かにねがいを運んで行く。
「前は、あんなに我がままな引きこもりだったのに…」
だれもいなくなった部屋で、いのりはこの1年…帰って来てから徐々に変わっていった姉のことを思う。
「いつの間に、あんなにやさしくなったんだろ?」
苦笑する。そうだ、ホンの少し前まで、わがままで、ぬいぐるみの熊しか友達がいなくて、周りのことなんて考えない子だったんだなんてなことを考えながら。
「でも、うれしいな」
心を満たすのは温かい感情。これが家族がいるってこと。
いのりはしみじみとそれを噛みしめる。
「…なんだかちょっとだけ、寂しい気もするけどね」
そして、要いのりの聖なる夜は穏やかに過ぎていくのだった。

582 名前:要いのりのクリスマス ◆1IXdmMAgHc :2008/12/24(水) 03:54:17 ID:vsCBntom
これにて、クリスマス特別編は終了です。
『青き薔薇の巫女』の次回は年内に出せるといいなあ。

>>358
ガチの格闘術はプリキュアの嗜みですからw

>>360
その通り。そして敵の方は…

583 名前:だいすきなうた 1/3:2008/12/24(水) 06:41:32 ID:dNmmaCGM
12月24日、裏界・ベール=ゼファーの宮殿にて。

 ベル:ねぇ、リオン。
リオン:どうしました? 大魔王ベール=ゼファー。
 ベル:面白いことを思いついちゃった。だからちょっと付き合いなさい。
リオン:クリスマス……ですか?
 ベル:ええ、そうよ。察しが早くて助かるわ。

概要を説明するベル。

 ベル:……と、いうわけ。どうかしら?
リオン:そうですね、悪くないと思います。クリスマスはプラーナを集める絶好の機会でもありますし。
 ベル:でしょ? 名付けて……ジンg……
リオン:ジングル「ベル」作戦(ぼそっ)
 ベル:……。
リオン:ベル?
 ベル:……本、見たわね!? いいわよ、もうっ!
リオン:(……見てません)

非現実的なムードに包まれる一夜。
人間たちにとって、それは祝い事であると同時に、世界結界が脆くなる悪魔の刻でもある。
ちょっと突付けば歪みを広げることも出来るだろう。

 ベル:正直、あの時のニコラウスには苦労させられたわ。懐かしい思い出ね。
リオン:まさかこんな有名人になるとは思ってもいませんでしたが。

かつて魔王と戦ったウィザード、ニコラウスのことを思い出すベル。
彼の名は、サンタクロースとして現在も語り継がれているらしい。

 ベル:準備は出来たかしら?
リオン:いつでも大丈夫です。プレゼントも用意できました。
 ベル:じゃ、そろそろ行くわよ。子供たちの純粋なプラーナは格別だもの。
リオン:ええ。

「プレゼント」を抱え、夜の街へと繰り出すベルとリオン。
そして、夜が明けた。

 ベル:予想通り妨害もあったけど、まずまずの成功ね。リオン、あんたのおかげよ。
リオン:ありがとうございます。貴方から感謝の言葉が聞けるなんて珍しいですね。
 ベル:あによ、それ。
リオン:事実を言ったまでです。

回収したプラーナを分け合い、また少し力を蓄えるベルとリオン。

リオン:ところで、ベル。一つお聞きしてもよろしいですか?
 ベル:あんたがわたしに聞くことなんて無いでしょうに。
リオン:ふふっ、そうかもしれません。でも是非、ベルの口から答えが聞きたいのです。
 ベル:まあ、いいけど。で、何?

ここで一呼吸。

リオン:これのどこがクロスSSなんですか?
 ベル:そりゃあ、サンt……
リオン:あ、もし「サンタクロス」とでも言ったら、いくらベルでも軽蔑しますからね。
 ベル:……。

584 名前:583:2008/12/24(水) 06:45:09 ID:dNmmaCGM
げ、名前残ってた。
すいません、>583の名前は無視してください。ごめんなさい。


>572
投下乙です。
とりあえず最初の方の自堕落なお姉ちゃんぶりに吹いた。
つーかお姉ちゃんのお母さん役ってなんだ、妹よw


585 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/24(水) 10:20:36 ID:ojLIiWsj
>572
乙なんだけど先生誰と誰が話しているのかわかりません

586 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/24(水) 10:41:16 ID:oYbFCaDY
1番上が鈴木太郎夫婦、2番目がわからん
3番目がグランギニョルの姫宮と一狼、最後がイササカノカミのその従者

・・・かな?

あーこんな風にパーティの用意してくれる人いねかなぁ
ってことでGJ!でした

587 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/24(水) 12:51:29 ID:s+hC+w40
>>582
GJ!
なんだこのちょっぴりいい話はいいぞもっとやれw
要姉妹はいいキャラですねぇ。アニメに出番がなかったのが残念ですw

>>583
一発ネタかよっ!w
でもワロタのでおkw

588 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/24(水) 17:31:30 ID:zWCRWICJ
いやあGJ!
>>586バーレスクの二人じゃないか?

589 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/24(水) 20:07:05 ID:YB4GtnNI
>>582
乙〜と言いたいところだが…なんか今回やたら読みにくいっす。話は良いんだけど。

>>583
乙。ナイス小話。てか珍しく作戦成功してるしw

590 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/25(木) 06:46:54 ID:/hzUGVue
今更ながらふぃあ通聴いた………ちょっと白き異界の魔王読んでくるw
あの人マジでこっちで続き書いてくれないかなぁ……一年近く経ってるし、ムリっぽいけど

591 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/25(木) 11:01:01 ID:lH8hWpRJ
>>590
外伝のクリスマスの話が投下されていたぞ。

592 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/25(木) 11:02:43 ID:T1c9lLEX
>>591
ちょwあっちの本スレに無いから見逃してたwwwww
ちょっと見てくる!

593 名前: ◆6H85fs.r4o :2008/12/25(木) 23:55:09 ID:T2DL+Y2W
「神条皇子は、とても不幸な半生を送ったのよ。
 物心付く前に攫われ、養護施設で育てられ、やっと出来た唯一の家族は不思議生命体に育った上に大嫌いな柊蓮司に懐き、世界を
 滅ぼす者として命を狙われ、家族を目の前で傷付けられ、この世界にいられなくなるという悲劇だらけの、ね」
「ですが、それ全部ベルの所為なのでは?」
「ななな何言ってるのよ! アイツはもともとそーゆーうんめーにあったの! ああああたしのせいなんかじゃないわよ!」
「そこで動揺してしまうから『アンゼロットには威厳があるが、ベルには無い』と言われてしまうのですよ」



 「月と星と柊と」第6回を投下します。

 保管庫の方、いつもありがとうございます。
>275の前半は、挨拶文代わりの自己パロディです。今回はベル編を作ってみました。
 第4回のエルヴィデンス様とエレナの会話が元ですが、あまり印象に残ってはいらっしゃらなかったでしょうか?

 それと、前回投下分に間違いがありましたので訂正致します。
>(そもそも、裏界の魔王の長所は大規模な儀式魔法を行使能力できる点にあり、単体での戦闘力は“神の世界で
「行使能力できる点にあり」→「行使できる点にあり」 何度も書き直している間に文章が乱れました。お恥ずかしい。

 コイズミさんは、熱く、格好いい漢ですよ。敵を倒してる姿が想像できませんけど。
 90度異なる思想を持つ柊に心酔ながら、アンゼロット様に仕えるのは倫理的葛藤に苦しむ事が多そうです。
 ロンギヌスって、その名前と、敵との関係から魔王の転生体を覚醒前に殺すのが主な任務でしょうからね。
 ロンギヌス装備にアンゼロット様に逆らえなくなる効果があるのは、魔王の転生体である何の罪もない子供を手にかけなければ
ならない彼らの罪悪感を、少しでも減らす為かもしれないと言ったら穿ちすぎでしょうか? 

 柊お父さん発言は、アニメ放送時にも言われていましたね。
 柊がフラグをスルーするのは、彼にとって彼女らは、家族であって恋愛対象ではないからだと思いますよ。

 >541
 ・・・・・・あ、あれ? この、妙に見覚えのある、狂おしく、絶唱めいた、強烈な文体(褒め言葉)は・・・・・・
 どどどどどどどどっどっど、泥の人ですか!! そんな! 貴方に期待して貰えるなんて勿体無い!!
 こっちこそ続き待ってましたよ!!
 実は、私がSSを書き始めたキッカケは貴方の作品を読んだからなんです!!
 コレを書き始めたのは某所の聖人柊と乙女ロットを見たからですが。

 貴方のレスを見て、気合入れて書き直しましたよ!
 泥の人は冗談めかしていましたが、エル=ネイシアの人たちは本気でそんな感じらしいですよ。
 超女王3人に古女王、聖姫が基本5人(後に追加)、闇姫5人と絶大なカリスマを持った女神達が10人以上いて、神姫の特殊能力に

プリンセス・オーラ・・・圧倒的なカリスマでエキストラを支配する。
下僕玉・・・自分の下僕からプラーナを吸い尽くして消滅させながら自分のプラーナを回復させる。下僕達は大喜びで消えていく。

とか、ありますからね。

 しかし、泥の人は幼女よりも熟女がお好みですか。覚えておきます。



 エルヴィデンス様がベルの悪口を言いふらしているのは、ベルの所為でアンゼロット様と再戦しなければならなくなった腹いせですよ。
 アンゼロット様が軽く見ているのは・・・・DVDコメンタリーできくたけさんが、全力出したらベルよりアンゼのが強い、って言ってたからです。
 なんか、今度のファンブックでは、裏界魔王が冥魔王にうわーだめだーらしいですよ。CM冒頭でベル負けてるし。どうなるんでしょうね?

 前回のベルの扱いは怒られるかとビクビクしてましたが、かなり露骨な伏線を張った甲斐あって、反発もないようで安心しました。
 つーか伏線無視して素で笑ってる人ばっかな気が・・・・

 皆さん、ベルの逆襲を期待してるようですね。ええ、この後ベルは・・・・・・ベルは・・・・・・・(無言で目を逸らす)

では0時から投下します。


594 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/25(木) 23:57:46 ID:T2DL+Y2W
 初恋の相手の腕に抱かれ、その胸に顔を埋めたアンゼロットは、その魂から伝わる暖かいプラーナに心を癒され、ファー・ジ・アー
スに転生して以来、一度もなかった程の安らぎに包まれていた。

   ずっと、ずっとこのままでいられたら・・・・・

 誰かが、囁いた。

『ずっと、此の儘で居るが良い。お前は、もう休んで良いのだ。何もかも忘れ、此処で安らぎ続けるが良い』

 アンゼロットはその言葉に頷き、暗黒の海へと、甘美なる忘却の淵へと、自らの意識を投げ込もうとして―
 誰かが封印の間に入ってくる気配に気付き、顔を上げて戸口を見た。
 そこには、見るからに幸薄そうな、目付きの悪い、長身で茶髪の青年の姿があった。

「ひい・・・らぎ・・さ・ん・・・?」
「アンゼロット・・・・・・ッ! お前、右目が?!」
「えっ・・・・?」

 柊の瞳に映る自分の姿を見たアンゼロットは、その右の瞳が左目と同じ深い湖の蒼から、どこか禍々しい光を放つ金色に変わって、
否、“戻って”いるのを知った。忌まわしい、だが、懐かしい力。新たな命と引換えに幻夢神に封じられていた力が、戻っていた。

「あ、あら? これは・・・・・・・・・この力は・・・・・無くした・・筈の・・・金色の邪眼・・・・・・・」
「力が、戻ったようだな。この部屋の封印の魔法陣を書き換えて使った甲斐があった」
「これは、貴方が?」

 アンゼロットは驚いて初恋の相手の顔を見上げると、慌てて自分の身を調べて愕然とした。

「今や、君は幻夢神から開放された」
「そんな! 何故そんな勝手な事を―」
「君が、私の意志に配慮した事があったかな?」
「・・・・・・・・申し訳ありません、エルンシャ様」
「俺は夢でも見ているのか? なんで・・・なんでアンゼロットがあんなにしおらしくしてんだ?」

 柊は自分の目が信じられず、自ら頬を抓った。痛かった。

「はっ! そんな事より、いったい何をしに来たのですか、柊さん!」
「・・・・・・差し入れを持ってきた」

 柊は月衣から大量の魔石を入れた袋を取り出し、エルンシャの足元に放り投げた。

「これと引換えに、アンゼロットを返せと?」
「んな事は言わねぇよ。まず、これを食え。話はそれからだ」
「わ、わたくしが食べさせて差し上げますわ!」

 その魔石が柊自身のプラーナから精製され、大量の柊力を含んだ特別製だと見抜いたアンゼロットは、柊達の計画を理解した。
 冥界の瘴気に汚染されたエルンシャの理性を取り戻すには、充分なプラーナを注いで瘴気の浄化を手伝えばいい。
 その際、柊力に満ちた柊のプラーナを吸収させれば全体的にレベルが下がるから、外から他の手段で瘴気を浄化する事も容易くなる。
 無論、レベルだけでなく理性が下がる危険性もあるが、取り合えずアンゼロットをあてがっておけば、それ以上何もしないのだから
副作用については心配しなくていい。
 そして、幻夢神から切り離された今のアンゼロットは無限のレベルと引換えに直接介入が可能となり、瘴気を浄化する役目を果たす
事が出来るようになっている。どうやら収まりがつきそうだと考えながら、アンゼロットは初恋の相手の口元に魔石を運んだ。

「はい、あーん」
「見ちゃいらんねぇなぁ」

 暫し恋人達の甘い時間が流れ・・・・・それを見せ付けられながら、柊はじっと待ち続けた。
 片方がアンゼロットだという事実が悪夢であり、あまりのおぞましさに耐えかね、柊は二人に声をかけた。

「・・・・・・・・・・なあ。お前等は、なんで別れる事になったんだ?」
「古代神との戦いで、我々は一旦滅びたのだよ。その後、別々に復活したために、最近までお互いが生きている事を知らなかったのだ」
「・・・・・そっか。なら、また会えて良かったな」

595 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/25(木) 23:59:07 ID:T2DL+Y2W

 柊は優しい瞳で二人を見つめ、心から二人の幸せを願い・・・・・・今度はエルンシャが問いかけた。

「ところで、柊君。君は、アンゼロットとはどういう関係なのかな? 下僕ではないようだが」

 エルンシャの質問に、アンゼロットはビクリと身体を震わせた。
 マズイ。在り得ないとは思うが、もしも柊が誤解を招くような発言を、或いは、何かエルンシャの気に障るような事(例えば、アン
ゼロットをおばはんと呼ぶとか。こっちの方がありそうだが)を言ったりしたら・・・・・・・・・
 だが、柊はアンゼロットの懸念を余所に、記憶を掘り起こして(彼の主観で)ありのままを口にした。

「どーゆー関係って、改めて聞かれると困るんだが・・・・・・えーと、腐れ縁?」
「出会ったきっかけは?」
「えーと、確か、ベルの奴がくれはを、つまり、裏界のぽんこつ蝿女が、俺の仲間を魔王にしようとした事があって、そんときにアン
ゼロットが先手を打とうとくれはを殺しにきたのが最初だったっけ?
 結局コイツは出遅れて、くれははベルに攫われちまって、俺がくれはを助けたわけなんだが。
そっから後は・・・・・・・・・なんか、俺でないと倒せない運命にあるとか言う魔王やら何やらが立て続けに現れて、気がついたら別に俺で
なくてもいい事件にまで散々扱き使われてたんだ。
 なあ、アンゼロット。なんで俺にばっか任務を押し付けるんだ? ロンギヌスとかがいるだろうに?」
「それは勿論、柊さんが大変有能なウィザードだからですわ。残念ながら、ロンギヌスは魔王に歯が立ちませんもの。
 柊さんの出席日数を犠牲にするのは大変心苦しい事でしたが、ロンギヌスに遣らせていたら、とても沢山の犠牲者が出ていた筈です。
 わたくしは少しでも犠牲を減らすため、涙を飲んで柊さんに依頼をしていたのですわ」
「ああ、アンゼロット。君はとても優しいな」

 しれっと悪びれた風もなく言った銀髪の幼女を、瘴気でトチ狂った異世界の“世界の守護者”は絶賛した。

「・・・・・・・信じねぇぞ」

 柊は呻くように呟いたが、面の皮の厚い外見だけ小娘は愛想笑いで受け流し、そんな女に惚れ込んだ物好きな莫迦は、愛しげにその
髪に頬を寄せた。
 その様は(アンゼロットの容姿が幼い事もあり)恋人同士というよりは、娘を溺愛する父親のように見えた。
 エルンシャがアンゼロット宮殿に来たときの会話から察するに(その場面を想像出来ないが)アンゼロットの方から告白し、エルン
シャが返事に困っている間に生き別れたようだった。
 この様子を見るに、確かに大事に思ってはいたのだろうが、それは家族としてであって、異性とは見ていなかったのだろう。

(・・・ま、俺とエリスみてーな間柄だったんだろうなぁ)

 エリスの事は大切に思っているが(有り得ない事ではあるが)もしもエリスに告白されたら、きっと自分は激しく戸惑うだろう。
 そして、そのまま返事をしないうちに生き別れ、冥界に突き落とされ、瘴気に理性を削り落とされ、たった一つの事しか考えられな
くなったならば、自分もこうならないとは言い切れない。

(もっとも、その相手が・・・この、底意地の悪い、根性のひん曲がったやーらしいおばはんだ、ってのが良く分かんねーんだが・・・・・・
 まあ、アンゼロットにだってガキだった頃はあっただろうし、この物好きな莫迦ん中じゃ、そんときの、本当に小さな可愛い女の子
だったときのまんまで止まってんのかもな・・・・・・・・・で、実の娘のように可愛がっている、と。
 ・・・・・・・・・ん、待てよ。アンゼロットの奴、ひょっとしてファザコンか?
 あのゲイザーもアンゼロットの前じゃおっさんのフリしてたらしいし、散々絡まれてる俺もコイズミに言わせりゃ父親ぶって見える
そうだし、ナイトメアなんかホントに子持ちだし。
 親父っぽければ何でもいいわけでもねーだろーけど、アイツが“その他大勢”扱いしない男って、みんな父親属性持ちのような気
が・・・・・・・・・まあ、“その他大勢”扱いしないだけで玩具扱いだったりするんだが。
 まさか、普通の人間よりは長生きしてるけど、天界の住人としてはまだ子供で父親が恋しいとか?)

 いや、それはないだろう。いくらなんでも。と、自分で自分にツッコミを入れる。

(そーいや、アイツの家族のこと、何にも聞いた事ねーな。第三世界にいるらしいけど)

 物思いに耽る柊に、再びエルンシャが語りかけた。

「ときに柊君。君には、恋人はいるのかな?」
「ええっ!」

 突然の問いに驚く柊に、アンゼロットから念話が飛んだ。

596 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/26(金) 00:00:26 ID:as5y/cdi

(いるって言いなさい! 嘘でも、誰でいいですから! 勿論、わたくし以外で、ですよ!)
(お、おおう、分かった。つか、いくら見栄を張るにしても、お前をそうだなんて言いわねぇよ!)
「ん、どうしたのかな?」
「いや、急に聞かれてびっくりしただけだ。ああ、いるよ。とびっきりの良い女が」

 アンゼロットの指示どおり、柊は調子を合わせる事にした。
 コイズミからも言われていたが、この物好きな莫迦を説得するためには、間違っても恋敵と誤解されてはならない。
 冥界の瘴気に汚染され、理性の下がった状態でそんな誤解をされては、纏まる話も纏まらなくなる。
 柊にしても、そんな屈辱的な誤解は絶対にされたくない。だが、相手は(繰り返すが)冥界の瘴気に汚染され、理性が下がっている。
 誤解の余地は出来る限り減らすべきだった。

「ふむ。どんな女性なのかな?」
「ああ、ええと、その・・・・・・いや、ガサツで乱暴で、すぐ殴りかかってきたり、秘密を握って脅したりする奴なんだけど・・・・・俺が任務から帰って来たとき、いつも暖かく迎えてくれるんだ・・・・・・・・・」

   あ、あれ? 俺、なんでくれはのこと話してんだ?

 話しながら柊は困惑したが、二人の“世界の守護者”達は、そんな柊を暖かく見つめた。

「それはそれとして、だ。イチャつくのかまわねぇんだが、ソイツが仕事をしないと世界が滅ぶんだ」

   あ、俺、珍しい事言ってんな。いつもなら自分が言われる側なのに。

 柊は、普段、自分がどんな気持ちでこの台詞を聞いているかを思い出し、言い方を変える事にした。

「ソイツがもう守護者を辞めたいってんなら、それはそれでしょーがねーけどよ。
 せめて、仕事の引継ぎぐらいはしてくれないと困るんだ。そーゆーわけなんで、一度、宮殿に戻ってくれねえか?」
「うむ。確かに引き継ぎは大事だな」

 いくらか理性が戻ってきたっぽい異世界の“世界の守護者”は、柊の言葉に頷いた。

「私とセフィスも、世界を受け継いだばかりの頃は勝手が分からず戸惑ったものだ。あの苦労を、君達に背負わせるのは忍びない」
「・・・・・・・・申し訳ありません、エルンシャ様」
「いや、君の所為ではないよ、アンゼロット」
「・・・・・・・・・おい、アンゼロット。俺に迷惑かけ倒してるときとは随分態度が違うじゃねぇか。
 普段は倣岸不遜で傍若無人で暴虐不訊(酷い仕打ちで他人を苦しめ、相手の返事を聞かない)だってのによ」

 見慣れない態度をとるアンゼロットを薄気味悪そうに眺める柊に、アンゼロットはいつもと同じ笑みを送って答えた。

「当然ですわ。わたくしが柊さんに迷惑をかけるのは世界を救うために必要だからですけど、エルンシャ様には本当にただの我儘で大
変な迷惑をかけてしまいましたもの」
「君はいつも、率先して自分の身を犠牲にして来た。あれは、そんな君のたった一つの我儘だった。
 責められるべきは、それを適えてやれなかった私の方だ」
「・・・・・・・・・・詳しい事情はわからねェけど、聖人ってのはアンタみたいな奴の事だと思うぜ?」

 “あの“アンゼロットが後悔する程の目に合わされて、尚怒るそぶりも見せないとは、この男の心は宇宙より広いのではないか。
 柊は感心を通り越して半ば呆れ返りながら、人型をした瘴気の塊を見つめた。

「口を慎みなさい、柊さん。エルンシャ様は聖人どころか神なのですよ。それも、父性愛と男性美の化身なのです。
 例えどんな目に遭わされようと、己が身一つの事で済むならば、決して相手を責める事のない、極めて寛大な心の持ち主なのです!」

   その優しさに・・・・・わたくしは、甘えてしまいました。

 柊を叱りながらも、アンゼロットは胸に鈍い痛みを覚え、更に、エルンシャの次の言葉で心臓が止まりそうになった。

「柊君。君は随分とアンゼロットと親しいようだね」

 マズイ。マズイ。マズイ。自分の失言で誤解させてしまった。まだ、完全に瘴気を取り除いていないのだ。ここで話が拗れたら・・・・・


597 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/26(金) 00:00:49 ID:7l+5mIqh
……聖人柊と乙女アンゼ?
なにそれどこの偽者支援

598 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/26(金) 00:01:35 ID:as5y/cdi
「エエエエエエエエルンシャ様! 柊さんはただの下僕ですわ! そんな、親しいだなんて―」
「俺は誰の下僕でもねぇ! てめぇは俺にとって疫病神以外の何者でもねぇよ!」
「なんてことを言うのですか、柊さん!」

 アンゼロットが顔を蒼く ―赤く、ではない― して叫び、柊も自分の失言に気付いた。
 この性悪な外見だけ小娘にベタ惚れなこの物好きな莫迦が、今の発言で怒るのではないか、と今更ながらに思い至り、慌ててフォロ
ーしようとして・・・・相手が、柊とアンゼロットの遣り取りを微笑ましく眺めているのを知った。

「フッ。アンゼロット。君は第八世界で孤独に過ごしているに思っていたが、良い友人を得ていたのだな。
 柊君。よくぞ、アンゼロットの苦しみを幾らかでも減らしてくれた。心から礼を言う。
 歯に絹着せることなく、率直に苦言を呈してくれる相手は、とても得難いものなのだよ」

 今度こそ、柊は目の前にいる男を聖人だと信じ、エルンシャは柊を、娘の一人、聖火姫に似ていると感じた。
 彼女もまた、アンゼロットやイクスィムに向かって臆する事なく不平を口にしていたものだったのだ。
 エルンシャの目に柊の魔剣が映り、ふと、思いついて声をかけた。

「柊君。一度、私と手合わせをしてくれないか?」
「ああ、いいぜ。漢同士語り合おうか。暴力言語で!」

 もとより、舌を回すのは得意な方ではない。魔剣使いたる者、剣で語った方がより良く意思を伝える事が出来るだろう。
 柊は魔剣を構え。エルンシャもアンゼロットを放すと瘴気を固めて錫杖を作り、それを見た柊は怪訝そうに眉を寄せた。

「その杖、どっかで見た事あると思ったら、星の錫杖にそっくりなんだな」
「おや、私の祭器を見た事があるのか?」
「元はお前のかよ! ちったぁ譲る相手を考えやがれ! 危うく叩き潰されるトコだったんだぞ!」
「あの錫杖を手放したのは何千年も前の事だ。今はどこにあるのか、知っているなら教えてくれないか」
「あー。すまん。冥界に落っことしちまった」
「・・・・・そうか」

 会話をしつつ、間合いを計る。


「ああ! エルンシャ様と柊さんがわたくしを巡って争うなんて―」
「寝言は寝て言え」「流石に、戯れが過ぎるのではないかな?」

 小暮さんのチャチャ入れに、矢野にゃんときくたけさんからツッコミが飛んだ。


(コイツ・・・・全然、実力が読めねぇ。一見隙だらけで、素人同然だが・・・・・・そんな訳がねぇ)

 相手はベルを一蹴したのだ。弱い筈がない。
 いくら身体を砕かれ、冥界に突き落とされ、瘴気で狂い、柊力で色々下がっているとはいえ・・・・・

(あれ? コイツ、ものすごく不幸なんじゃ?)

 柊の思考が逸れた瞬間、横殴りの一撃が振るわれた。

「―!」

 技も型もあったものではない、力任せの一撃。だがそれは、受け止めた柊の腕を痺れさせ。
 その身を、広大なエンディヴィエ封印の間の中央から壁近くまで跳ね飛ばすに充分な威力を持っていた。

「うぉっっっ、とっとっと」

 壁から1mのところで着地。床に片手と両膝を突いて落下の衝撃を殺し、杖を振るった姿勢のままの人型の闇に視線を送る。

「なんつー重い打撃だよ。やっぱ、その杖は好きになれそうにねぇぜ」

 柊はぼやいて床を蹴り、いくつかフェイントをかけ、体勢を崩そうと試みながら飛ばされた距離を駆け戻る。
 ほんの小さな、気配の揺らぎ。

599 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/26(金) 00:02:33 ID:as5y/cdi
 達人ならば意識して知覚して。
 並の腕の者なら無意識に感知し、その影響を受けるだろう、微細な、動きとも呼べない微かな動き。
 だがそれに対してエルンシャは、一切の反応を見せなかった。

「小細工はお見通しってか。なら真っ向からいくぜ!」

 間合いを詰め、鋭い突きを放つ。今度も無反応。切っ先を喉に突きつけ、止める。

「なんで避けない?」
「いや、君の突きが鋭くて、反応できなかったのだよ」
「へっ、よく言うぜ」

 剣を引き、再び対峙する。コイツはもしや、ベルの魔法と同様に物理攻撃も反射できるのか?
 だが、倒す必要はないのだ。自分達は“会話”をしているのだから。
 柊が再度切りかかろうとすると、想い人の戦いぶりを見たアンゼロットが呟いた。

「・・・・・・・・・エルンシャ様・・・・・・・本ッッ当ッッに戦闘は不得手ですわね・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・面目ない」
「いえ、よいのですよ、エルンシャ様。荒事はわたくし達が担当する筈だったのですから。
 エルンシャ様の仕事は、天地を巡る龍脈の乱れを整えたり、瘴気を浄化する事ですもの」
「いや、そう馬鹿にしたもんでもねぇだろ? 俺のフェイントが全く通じないんだぜ?」
「フェイント? いつかけていたのかな?」
「いや、いいんだ・・・・忘れてくれ・・・・・」

 どうやらフェイントが微細過ぎたらしい。さっき食わせた柊プラーナの影響かもしれないが。
 そんな事を柊が考えていると、錫杖を構えた人の形をした瘴気の塊は、顎に手を当てるような姿勢をして呟いた。

「ふむ。どうやら武器だけでは勝負にならないようだね」
「魔法か? 遠慮なく使えよ」

 ベルとの交戦を見るに、対魔法防御力は高いようだし、スタイルクラスで言えばキャスターかヒーラーなのだろう。
 いくら、神の身体能力が人間とは桁違いだとは言え、魔法抜きでアタッカーを相手取るのは難しいだろう。
 魔剣使いは魔法攻撃に弱いが、護法剣とプラーナで最低3回は凌げるはずだ。

「では、そうさせてもらおう。柊君。君も、遠慮なく当ててくれて構わないよ。蘇生の光もあるからね」
「わたくしからも治癒魔法を飛ばしますから、お互い、手加減なしで思いっきりやっちゃって結構ですわ」
「おし、再開だ!」

 柊が力強く叫び。
 様々なものが飛来した。
 魔力塊、レーザー、雷光、刃と化した木の葉の嵐、火球の弾幕、砂嵐、水の槍、マッドマンの頭、メタルゴーレム、金色のエネルギー波、超高速回転する水の円盤、カマイタチ等等。

 死にもの狂いで防いで避けて耐えた。合間を縫って攻撃を繰り出し、錫杖と防御魔法で対抗された。
 様々な攻撃魔法と愚直な斬撃の応酬をもって、少しずつ、漢達は互いへの理解を深めていった。

 床から伸びた無数の木の根が、柊の身体を絡めとらんと迫り来る。咄嗟にウィッチブレードを起動して飛び上がる。

「フライトキャンセ―」「ブレードアサルト!!」

 飛行能力を阻害される前に突貫。エルンシャは、その前面に泥の障壁を展開して迎え撃つ。
 柊の一撃は容易く障壁を打ち抜くも、その速度は僅かに下がり、錫杖によって受け流された。
 エルンシャの手の中で錫杖がくるりと回転し、石突きが柊のこめかみを狙って襲い来る。
 柊は素早く頭を下げて打撃を避け、ウィッチブレードから飛び降りて、それを振り上げようとして―
 エルンシャの手に魔剣を掴まれた。構わず引き剥がそうとしたが、魔剣はその位置に固定されていた。

「くっ、ビクともしねぇ」
「人と神とでは、基礎体力が違うからね」


600 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/26(金) 00:03:32 ID:as5y/cdi
 優しく囁くエルンシャの声。それは、柊に幼き日の思い出を呼び起こさせた。
 迷子になり、泣き喚き、泣き疲れたときに聞いた、自分を探しに来た父の声。そのとき感じた、歓喜を。安堵を。思い出させた。

「―――チェックメイト。これで、一勝一敗だね」

 気付けば、エルンシャが錫杖を剣に変え、柊の首筋に突き付けていた。

「・・・・だな。じゃ、第三ラウンドいくぜ」

 柊はニヤリと笑い、エルンシャの腕を掴むと一本背負いで投げ飛ばす。
 掴んだ腕から。背中に押し当てた胸から。優しく暖かいプラーナが伝わってくる。
 魔剣から手を放して受身を取ったエルンシャが起き上がるより先に、高々と魔剣を振りかぶる。
 柊力で、摩擦係数を下げる。音速を超える速度で振り下ろす。
 エルンシャの展開した多重防壁にぶち当てる。
 威力を下げられながら泥の障壁を打ち破り。
 速度を下げられながら魔力障壁を切り裂いて。
 錫杖によって受け止められた。

「今度は、取っ組み合いをしようか。柊君」

 人型の瘴気の塊は、その腕から無数の木の根を生やし、柊の腕に絡ませて。グイと引き寄せ、身体を入れ替えて組み伏せようとした。

「うおっ、やべぇッ!」

 純粋な力比べでは敵わない。柊は知る限りの体術で抵抗を試みた。
 相手の力を利用し、重心を操作し、タイミングを計って身を捻り、身体をもぎ放そうとした。
 だがしかし。
 人と神との、圧倒的な腕力の差が。人型の瘴気の塊の、その奥の魂から届く包容力が。
 次第に、柊から抗う力を奪っていく。

「・・・・・・・参った」

 ほどなく、柊はエルンシャに組み伏せられ、潔く降参した。その力よりもむしろ、その腕の、胸の感触の心地良さに、屈服した。
 柊蓮司は思い出す。幼き日、恐い夢を見た夜に。泣きながら縋った父の胸の感触を。そのとき感じた安らぎを。
 我知らず、柊は優しい笑顔でエルンシャの顔を見つめ―

「――――なんだか、とてもイケナイものを見ているような気分ですわ・・・・・」
「妙な事を言うんじゃねぇ!!」

 アンゼロットの無粋な発言に、浸っていた感慨をぶち壊された。

「柊君。次は、空中戦をしないか?」

 柊を放し、身を起こしながらエルンシャが言った。暖かいものが、離れていく。
 そこに名残惜しさを感じつつも、柊はわざとぶっきらぼうに答えた。

「・・・・いいのかよ。そんな、休みなしで戦って。さっきから、もの凄い勢いで魔法やら何やら連発してるじゃねぇーか」
「なに。神にとっては、このくらいどうという事はない。君は疲れたのかな、柊君」
「はっ! 抜かせよ! いいぜ。第四ラウンドだ」

 柊は、その身に纏った衣服状の魔道具・スターイーグルの能力を呼び起こし。
 エルンシャは、その背に光の翼を広げ。
 同時に宙に浮き上がり、再び魔法と斬撃を交わしあう。

 闘いながらエルンシャの戦闘パターンを分析し、柊はある結論に達した。

(こいつ、ホント、戦いに縁はなかったんだな。
 色んな魔法を知ってるし、戦い方の知識もあるけど、実戦経験はねえみてぇだ。
 けど、なんか楽しいな。ちっせぇ頃、親父にじゃれついたときのことを思い出すぜ)


601 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/26(金) 00:04:52 ID:as5y/cdi
 エルンシャが、その神気を解き放つ。
 恐らく、冥魔となった己が身を恥じ、アンゼロットを怯えさせないようにと気配を押さえていたのだろう。
 だが、瘴気を浄化したためか、或いは闘いの高揚感からか。全身から、それまでにない存在感が溢れだす。

「―! これは・・・・」

 まず最初に感じたのは、温もり。

 温かい。暖かい。あたたかい。

 心が、胸の奥が、魂の底から暖かくなる。
 総てを包容する優しさが、力強さが感じられる。
 幼い頃、父親の腕に抱き上げられたときのことを思い出す。
 
(・・・・なんて、あったかい、優しいプラーナなんだ。ああ、これが、“世界の守護者”のプラーナか・・・・・)

 感歎し、感動し、感激する。我知らず、涙が頬を伝う。

(コイツの守ってた世界は、世界全体がこの感じに包まれてたのか? それじゃ、まるで天国じゃねぇか。
 こんな奴が、雲の上から見守ってるって知ってたら、悪い事をしようなんて思うはずがねぇ。
 きっと、みんな、先を争って困ってる人を助けようとしてたんだろうな・・・・・・・・・
 それはそれは、素晴らしい、平和で、優しい世界だったに違いねぇ)

 だが、その世界も、冥界勢力の手に落ちた。
 悲しい事だが、現在、世界が求めている者は優しき慈父神ではなく、苛烈なる戦女神なのだ。
 世界は今、アンゼロットを必要としているのだ。

(分かってくれ・・・・エルンシャ!)

 柊は、祈りを込めて剣を振う。魔剣が風を纏い、火炎を発し、衝撃波を飛ばす。
 一振りごとに、エルンシャの胸の中を爽やかな風が吹き抜けていく。
 交えた剣と錫杖を通して、深い思いやりと温もりが伝わってくる。

(なんと・・・真っ直ぐで、気持ちの良い太刀筋だろう。剣技については素人の私ですら、見惚れてしまうほどだ・・・・・・・)

 柊を賞賛するエルンシャに、誰かが囁いた。

『何を暢気な事を言っておるか。この男は、お前からアンゼロットを奪いに来たのだぞ!』
(この声・・・・私の内心の声ではないな。・・・そうか、エルヴィデンス。お前か)

 瘴気が薄れ、理性を取り戻したエルンシャは、冥界からずっと自分を唆して来た声の正体に気が付いた。

(諦めよ。もう私は惑わされぬ)
『ええい、お前がやらんなら、私が手を下す迄だ!』「やめよ!!」

「声」が身体の制御を乗っ取り、人型の瘴気の塊は体表を鏡面化させ、魔力を纏った風の刃を増幅して跳ね返す。

「うわっッッ! やべっッッ!?」「柊さん!?」

 エルンシャは咄嗟に鏡面の角度を変え、衝撃波は寸でのところで柊の横を通り過ぎていった。

「い、今のは怖かった・・・・・・おい! アンタ、大丈夫かよ?!」
「ぐ・・・・が・・はっ・・・心配は無用だ。プラーナを・・・吸収すれば、すぐなおる・・・」
「エルンシャ様! 魔石はまだありますわ!」

 魂を蝕む瘴気を浄化しようとして現在の自分の肉体を痛め、苦鳴を洩らしながら杖に縋るエルンシャに、アンゼロットが慌てて駆け
寄り、柊もまた剣を下ろす。
 何個か魔石からプラーナを吸収し、破損した肉体を修復したエルンシャの耳に、微かに、子供の泣き声が聞こえた。

   ――― ぱぱー、ぱぱー、どこー ―――

602 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/26(金) 00:05:48 ID:as5y/cdi

「・・・・・・娘が、泣いている」

 エルンシャは、プラーナの吸収を止めて天井を見上げた。

「おう。上の階で、お前の娘・・・闇海姫だっけか? に、会ったぜ。
 今ちょっと具合が悪いんで、コイズミが介抱してる。会いに行ってやれよ」
「闇海姫が来ているのか? すまない、アンゼロット。私は、君だけを見つめ続ける事は出来ないようだ」
「それで良いのですよ、エルンシャ様、さ、瘴気を浄化して、その腕であの子を抱きしめて上げてくださいな」

 前世で闇姫達に半殺しにされたアンゼロットとしては闇海姫にあまりいい印象はないのだが、想い人が理性を取り戻しつつあるのは
喜ばしい。
 エルンシャはアンゼロットの言葉に頷き、その胸の奥の星の欠片を輝かせ―

 次の瞬間、白い繊手が背後から、人型をした瘴気の塊の胸を貫いて星の欠片を抉り出し。
 "核"を失った瘴気の身体が融け崩れ、ポンチョ姿の魔王が姿を現した。

「―! エルンシャ様!」「ベル!」
「ふふ、これが本体だったみたいね。やっと、今までの借りを返せるわ」

  なんで? 折角、収まりがつきそうだったのに。

「ベル! てめえ、今までどこにいやがった!」
「ふふん、アンタたちは気付かなかったみたいだけど、ずっとこの部屋で様子を見ていたのよ」

 勝ち誇る魔王は、柊の詰問に鼻で笑いながら答えた。

「さあ、残った瘴気も、あたしが有効利用してあげるわ。
 そして、このあたしがアンゼロットを倒す。アンタたちとのゲームも、今日で終わりよ」

  どうして? やっと・・・やっと会うことが出来たのに。

「アンゼロット。幻夢神の禁則事項からは自由になったようだけど、同時に幻夢神の加護も失い、レベルは無限で無くなった。
 つまり、今ならアンタを倒せるのよ」

  そんな・・・こんな・・・こんなことって・・・・

 ベルはアンゼロットの目の前で星の欠片を ―エルンシャを― 握り潰し。

「エルンシャ様ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 アンゼロットの心もまた ―かつて、実の父親によって、目の前でエルンシャを砕かれたときと同じように― 粉々に砕け散った。

「エルンシャ様・・・エルンシャ様・・・そんな・・・やっと・・・やっと会えたのに・・・」
「おい、アンゼロット、しっかりしろ!」
「あら? なんか、壊れちゃったみたいねぇ。この冥魔に吸収されてた守護者は知り合いだったのかしら?」

 床に膝を突き、大きく見開いた瞳に何も映さぬまま涙を流すアンゼロットの姿は、くれはを殺されたときのエリスにそっくりだった。

「許さねぇぞ、ベル!」
「ふふ、許しを請うのはアンタの方よ」

 怒りとともに振るわれる柊の剣を避けて空中に飛び上がり、ベルは残った瘴気を取り込み始めた。

「あはははははははははは、全身に力が漲るわ!」

 ベルがポンチョを脱ぎ捨てる。
 その幼い肢体が成熟した大人の女性のものとなり、その衣装が、煽情的なドレスへと変わる。
 冥界の瘴気を取り込んだ蝿の女王は、今、その本来の力をここに再現していた。


603 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/26(金) 00:16:55 ID:KD8VeG2k
出遅れ支援。きっと遅い

604 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/26(金) 00:19:43 ID:as5y/cdi


「へー、見直したわよ、クイーン・オブ・フライ。
 ちゃんと、自分がアンゼロットを倒せるように考えてたのね。
 セルヴィには、わらわに口止め料を払って『冥魔王はウィザードに倒された』って言わせればいいし。
 自分が冥魔王を倒す場面をわざわざ見せ付けた理由は良く分からないけど。
 んー。わらわが何処まで知ってるか、掌握しておきたかったって事なのかしら?」

 プリギュラは首を傾げながら、遠見のコンパクトをじっと見つめた。
 そこではベルが瘴気を取り込み、その力を高めていた。
 柊蓮司の力では、決して太刀打ち出来ないほどに。

「でもね、ぽんこつちゃん。
 今のアンタには、冥界の瘴気を扱うために必要不可欠な"魂を蝕む程に苛烈な、命よりも大事な妄執"が存在しない」

 天界に尻尾を振って冥界に沈められる事を免れた裏切り者が
 超至高神への復讐を諦めた臆病者が
 無力な人間を玩具とし、悦に入る見下げ果てた下司が
 自在に扱えるほど、冥界の瘴気は甘くない。

「瘴気に飲まれ、自滅するがいいわ」



「ふふっ、このまんまじゃ面白くないわね。さあて、どんなハンデを付けて上げ―」

―― 礼を言うぞ、ベール=ゼファー ――

「ウッ!?」

 勝ち誇るベルの台詞を遮って新たな声が広間に響き、ベルの口から苦鳴が漏れた。

―― これで漸く依り代を得る事が出来た。奴とは相性が悪くてな。乗っ取る事が出来なかったのだよ ――

「だ、誰? あたしの中に入ってく―ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「お、おい、どうしたんだよ、ベル!?」

 突然苦しみだしたベルへの対処に困り、思わず声をかけた柊の耳に、否、心に直接、「声」が響く。
 途方ない歳月に磨かれた、威厳を帯びた声が。

―― 自ら事を成すよりも他者の妨害を優先し ――
―― 常にゲームだのハンデだのと、負けたときの言い訳を用意してから事に当たる ――
―― 自分に都合の良い時にのみ運命を口にし ――
―― 自らの失策からは目を逸らす ――
―― 実に腐りきった精神だ。此処まで墜落した魂も珍しい ――

「それを言うなら堕落だろ?」

―― いや、この蝿に限っては、墜落の方が適切だ ――

 柊のツッコミを軽く受け流し、その声は重々しく続けた。

―― ディングレイも物好きな奴だ ――
―― よくもまあ、こんな下らぬ輩とつるんだものよ ――
―― 戦力的にも、エルオースの8分の1たる冥魔七王と同程度 ――
―― たかが守護天使1.5人分の力しか持たず、守護者の6分の1たる聖地姫に劣る ――
―― ディングレイの43分の1にもならぬではないか ――
―― 余程、暇だったのであろうな ――
―― 特に遣りたい事が無いならば、コヤツの愚行を生暖かく見守るのも愉しいのやもしれぬ ――
―― 或いは、単身、遠い異世界から流れ着き、孤独に苦しみ、他者との交流に餓えていたか・・・・・・ ――

605 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/26(金) 00:21:12 ID:as5y/cdi

「・・・・え?」

 その声に、ディングレイへの微かな同情を感じ取った柊の困惑に構うことなく、「声」はベルへと無情に告げた。

―― 暗愚なる蝿の女王よ。その未熟で脆弱な精神を裏界へと戻すが良い ――
―― 残った身体は、私が有効利用してやろう ――

   ミチリ

 ベルの骨格が歪み、背中を突き破って一対の黒き翼が現れる。

「あ゛あ゛あ゛あ゛ああああぁぁぁぁぁぁ!」

 黒翼がベルの身体を包み込み、そして再び開いた時、そこに銀髪金瞳の魔王の姿はなかった。

 其処にいたのは、一人の戦姫。
 
 歳の頃は十代半ば。
 漆黒の甲冑に包まれた肢体は成熟し、豊かな双丘が胸当てを押し上げ
 腰まで伸びた黒絹の如き髪は緩やかに波打ち
 長い睫に縁取られた黒い瞳は、見る者を引き込む星星の狭間の深遠を思わせながらも邪に満ちて
 鮮やかな紅い唇が、淫靡な雰囲気を醸し出し
 妖しくも美しい貌に、亀裂めいた禍々しき凶笑を浮かべ

 麗しさと凛々しさを兼ね備えた淫靡かつ妖艶な、暗黒の魅力に満ちた美姫が黒翼を広げて其処に居た。

 すなわち、108の古代神が1柱、古女王エルヴィデンスの写し身、闇風姫(シャドウ★ゼピュロス)が。


606 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/26(金) 00:21:52 ID:as5y/cdi
今日はここまで。御支援有難う御座いました。





全国のベルの落とし子さん達ごめんなさい!(平伏)

とりあえず、エルンシャ様にはリベンジしたからこれで許して!(哀願)

ではまた次回!(脱兎)


607 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/26(金) 00:43:09 ID:H8KE7BpN
むしろベルの扱いは本来このくらいがベストな気がする俺ゲボク(Not落とし子)
そしてGJ!

エルンシャ……お前は、柊のマトモな友になれるはずの男だった…

608 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/26(金) 14:11:11 ID:pALWmcyr
GJ!
ああ、柊のいいダチになれたのに…

609 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/28(日) 01:48:14 ID:kBV3UbBv
GJ!
しかし、ベルの扱いはどうしたものか
いいのかなぁ、と思いつつ、でもベルだからいいか、と思っている俺ガイル
ベルファンのひと、ごめんよ

610 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/28(日) 08:25:24 ID:M/1dzsXG
卓ゲのGMに相当するのがSSの職人だろうからな

原作アニメやルールブックとどこがどう変わっているのかを説明してくれていれば重度のベル落とし子の俺でも全然OKだ

611 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/28(日) 14:36:39 ID:AHZxc1Fo
つまり、設定やシナリオは考えるけどセッションはしない俺は……。


それはさておき、ここだと読者の感想とか展開予想とかあるから
それに応じて物語を変えたりできるのはTRPGっぽいかもね。
宝島みたいな感じ?

612 名前: ◆6H85fs.r4o :2008/12/29(月) 23:37:48 ID:BeKdknTZ
 「月と星と柊と」第7回を投下します。

どうしちゃたんでしょうね、この過疎っぷりは。
冬休みに入って、投下も増えると楽しみにしてたんですけど。

では11時50分から投下します。


613 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/29(月) 23:51:33 ID:BeKdknTZ
「赤羽代表代行。ラグシア城跡 最下層にて、強力な魔力反応を確認しました。反応の強さは・・・・・・計測器が振り切れて測定出来ません」
「ねえ、コジマメさん。その計測器、いっつも振り切れてる気がするんだけど、役に立つの?」

 アンゼロット宮殿 司令室。
 エルンシャの潜む忘却世界をモニターしていたロンギヌス・コジマメの報告を聞き、くれはは疑問に思った事を率直に聞いた。

「ロンギヌスが対応出来ないレベルだと振り切れるんです。魔力パターンの識別、完了しました。エルンシャです」
「はわっ、ひーらぎ、説得に失敗しちゃったの?」
「間接的な観測結果から推測される能力は、宮殿襲撃時及び、先程に比べて大幅に下がっています。
 少なくとも、柊プラーナを摂取させる事には成功しているものと思われます」
「はわー。どーなっちゃってるんだろーねー」
 
 つい先程も、ベルとエルンシャの魔力反応が一瞬だけ跳ね上がった。
 そして、まずベルの反応が消失し、ついでエルンシャの反応が弱まり観測出来なくなっていたが、その消え方から判断するに、後者はただ
気配を消したに過ぎなかった。
 つまり、その観測結果はベルがエルンシャと交戦し、敗退した事を示していた。

 しばらくして、今度は未知の巨大な魔力反応が第八世界の外から遣って来てラグシア城跡に突入した。
 その能力は、土星会戦時のベルの写し身と、シャイマールの中間程度であった。
 そして、その反応は忘却世界内で何者かとの交戦を示すように増大し・・・・・一瞬だけ、特に巨大に膨れ上がった後、急速に縮小していた。

 今まで確認されていなかった、極めて強大な力を持つ個体がこうも続けて現れるとは。
 世界は、大きく変わろうとしている。そんな予感に、くれはは身震いした。

「赤羽代表代行。ロンギヌス・コイズミに途中経過を報告させま―! エルンシャの魔力反応、消失しました!!」
「はわっ! ひーらぎが倒しちゃったの?」
「―!! 新たに別の魔力反応が発生! これはベール=ゼファーで―?! ベール=ゼファーの魔力反応、消失しました!」
「はわっ?! べっ、ベルったら、どーしちゃったの?!」

「また新たな魔力反応が発生。これは、今までに観測されたことのない個体で― え? 何、この計算結果?」
「はわ? どしたの?」
「例によって間接的な観測結果から能力を推測したんですが・・・・先日交戦したシャイマールに、楽勝出来そうな数字が出てきたんです」
「はわー。そりゃ計算間違ってるわ。そんなとんでもないもんいるわけないしー」

「そうですね。いるとしたら、アンゼロット様の父神か、そのライバルだった古代神くらいでしょう。
 以前、アンゼロット様が仰っておられました。
 アンゼロット様のお父上は、シャイマールの80倍強いのだとか。そして、そのライバルだった古代神も、同様に」




 柊蓮司の目の前に、一人の戦姫が立っていた。
 
 肉体的な年齢は、15歳くらいに見えた。
 無論、見た目通りの歳である筈などないが、ソレは「若々しく瑞々しい風情を湛えた、美しい少女」のカタチをしていた。
 「神の手による美術品の如く、整った容貌の少女」の姿をしていた。

 波打つ、黒絹のような髪を腰まで伸ばし
 決して長身ではないが、発達した肢体に漆黒の甲冑を纏い
 その背に、天界を嘲笑い冒涜する、瘴気を凝り固めた黒き翼を広げ

 顔の造りそのものは、清楚可憐な面差しなれど
 夜空のように黒い、大きな瞳を邪で満たし
 鮮やかな紅い唇に、裂けるような禍々しい笑みを浮かべ

 どこかアンゼロットを思わせる、だが、それを遥かに上回る古ぶるしい気配を発し
 想像を絶する歳月の重みに磨かれた、支配者の威厳に身を包み

 麗しさと凛々しさを兼ね備えた、淫靡かつ妖艶な、暗黒の魅力に満ちた美姫が立っていた。


614 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/29(月) 23:54:08 ID:BeKdknTZ
 美しい。美しい。美しい。
 麗しい。麗しい。麗しい
 怖い。恐い。こわい。
 古い。旧い。ふるい。
 綺麗。コワイ。旧い。
 遠い。大きい。凄い。
 麗しい。おぞましい。古ぶるしい。
 怖れる。恐れる。畏れてしまう。



 胸が締め付けられる。呼吸が浅く、早くなり、落ち着かない。
 視界が狭くなる。ソレから目を離せない。
 頭に霞がかかる。意識がはっきりしない。
 身体に力が入らない。手から魔剣が落ちそうになる。床に膝を突きそうになる。頭を下げそうになる。

 ソレは何もしていない。柊の方を見てすらいない。

 ソレは其処にいるだけだ。

 それだけで。
 ただ、それだけで。

 生きているのが苦しくなる。
 存在の違いを思い知らされる。
 己の卑小さを突き付けられる。

 ソレは人が相対しべきモノではなかった。
 天上の者達こそが、対処すべきモノだった。

 遥かな高みから、巨大なナニカが下りてくるように思える。
 とても古い、とても旧いナニカが其処に居る。
 圧倒的な存在力が、意識を精神を魂を塗りつぶす。



 かつて感じた事のない強烈な気配が伝わってくる。

 それは殺気ではなかった。
 それは鬼気ではなかった。
 それは神気。



 魂の根底から、ただひとつの感情が吹き上がってくる。

 それは恐怖ではなかった。
 それは嫌悪ではなかった。
 それは畏怖。



 ソレは魔王ではなかった。
 ソレは神。その力がではなく、その在り方が人を超えたる者

 ソレは脅威ではなかった。
 ソレは驚異。その力がではなく、その在り方がこの世ならざる者。




615 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/29(月) 23:55:33 ID:BeKdknTZ
 平伏せよ  定命なる人間よ
 賛美せよ  卑小なる人間よ
 信仰せよ  愚劣なる人間よ
 崇拝せよ  愚昧なる人間よ

 かの者が、かの者こそが神なれば。

 この界を、この界のみならず主八界総てを造りし創造神の一柱なれば。
 
 ソレは原初の火を齎す天
 ソレは底知れぬ深淵を隠す海
 ソレは悠久の歳月を過ごしせし古き巨木を揺らす風
 ソレは鍛え抜かれた刀金を振るう皇帝
 ソレは広大なる大地の底に広がる冥府

 ソレは混ざり合う色

 多色なる者の、多彩なる其の内から

 風が吹き荒ぶ。

 心を打ち据える、風が吹く。
 意思を吹き飛ばす、風が吹く。
 魂を消し去る、風が吹く。

 かの者こそが闇風姫(シャドウ★ゼピュロス)。108の古代神が1柱たる、古女王エルヴィデンスが写し身なり。



 柊の前に降り立った戦姫の、美貌とプラーナと瘴気とオーラは、常人を圧死させて余り有る― 否、存在を構成するプラーナの配列をかき乱
し、存在し続ける事すらも難しいほどだ。

 エル=ネイシアの民であれば、魂を捧げた主への信仰を支えに、その存在に抗する事も出来た。
 かの聖姫戦争の折、聖姫達に率いられた精鋭達は幾度となくこの者の軍を退けた。
 そして、遂にはその依り代を砕きすらしたのだ。200人の勇士が挑み、199人の犠牲と引換えに。

 それほどの存在を前にした柊は、如何なる神にも仕えぬ神殺しの魔剣使いは、卑小なる人の心のみで神の顕現に相対した青年は―

―主よ!―  「おおぅ!!」

 自らの魔剣からの自らへの信仰を受け取り、自らの“精神”という神への信仰を持って


 やっとの思いで、震える声を絞りだした。


「・・・・・・おい、アンタ・・・・いったい、誰なんだよ?」

 突然の事態の変化に理解の追いつかない柊に、闇姫は自らの絶大なる気配を押さえて妖艶な笑みを向けた。
 魂を押しつぶす重圧から開放され、ほっとする間もなく艶笑を向けられて、柊は思わず頬を染めた。
 自他供に認める朴念仁が見惚れるほどに、魅力的な笑みだった。

 そのとき感じた感情を、なんと呼べばよいだろうか?

 恋? 愛情? 肉欲? 劣情?

 否。それは同胞への仲間意識に近かった。共に、アンゼロットの幸せを願う者同士の共感だった。
 そのように、感じた。
 が、直後、猫を被っているときのアンゼロットを連想して警戒した柊に、闇姫は甘く、優しい声音で問いに答えた。


616 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/29(月) 23:57:17 ID:BeKdknTZ
「私は、アンゼロットと同郷の者だ。今迄、直接の面識は無かったがな。あやつの事は、此の儘そっとしておいて遣れ」

 未だ虚空を見つめて涙を流し続ける銀髪の少女に、黒翼の美姫は柔らかな視線を送った。

「エルンシャ様・・・・・・・・・エルンシャ様が・・・・・・・・・・・・」
「アンゼロットよ。エルンシャの仇は取って遣ったぞ。此れからは私が共に居よう。お前は何も考えず、心安らかに過ごすが良い」

 言って、アンゼロットに歩み寄る闇姫に、柊は慌てて声をかけた。

「待てよ! コイツを何処に連れてく気だよ! コイツがいなきゃ、世界を守れねぇんだ。連れてかせる訳にゃいかねぇんだよ!」
「お前は、アンゼロットに同胞の死を悲しむ暇すら与え無い心算なのか?」
「―――それは・・・」
「どうしてもアンゼロットが必要なら、私が代わりをしようか?」

 言葉に詰まる柊に、エルンシャに植えつけていた意識の一部でベルの写し身を乗っ取った古代神が妖しく囁き。

「断る! お前は信用できねぇ! ・・・・・・つか、あんだけ邪気剥き出しにしといて、今更何を言ってやがる」

 柊は、真正面から闇姫を見据えて言い返した。

 黒髪の闇姫は薄く哂い、柊からアンゼロットへと視線を移し。
 アンゼロットの金色の邪眼に、意志の光の消えた右目の奥に、渦巻く瘴気を認めて、柊へと目を戻す。
 柊は魔剣を構え、ゆっくりと間合いを詰め。
 対する闇姫は・・・・・・・腕を組み、胸を反らした。

「ベルの記憶が教えてくれる。お前はとても甘く、愚かな男だとな。お前に、無抵抗の相手が斬れるのか?」
「斬れる」

 一瞬の迷いもなく言い切り、超巨大魔剣箒を振りかぶる。

「ベルも、他の奴も皆、俺を誤解してる。英雄だの、聖人だの、甘いだの頭が悪いだの・・・・・・俺は自分が守りたいものしか守らねぇ。
 その為なら世界中を振り回しても一切気にしない、身勝手な男だ」
「そうなのか? ベルの記憶と違うようだが?」

「俺がくれはを斬らなかった所為で、他の男が自分の幼馴染を斬る羽目になった。
 アイツは入学初日だったよ。だから、俺が代わりに学校に行って、卒業する事で供養にしようと―
 いや、違うな。供養をしていると思い込む事で、アイツにツケを回した重荷から逃げようとしたんだ。

 俺は青葉がまだ小学生なのに、もう戦場に出ていると聞かされても、まるで気にしなかった。
 俺はくれはを助けるために、ベルに騙されてただけの連中を何人も斬った。
 俺は晶が行方不明になったとき、アイツの心配を全くせずに無くした魔剣の事ばかり考えていた。
 俺は灯が薬の副作用で寿命を削りながら戦っている事よりも、自分の出席日数の方が大事だった。
 俺がヒルコを取り込んだ所為で命は昏睡状態になったが、俺は一度も見舞いに行った事はねぇ。

 俺がエリスを殺させなかった所為で、シャイマールとの戦いで何人ものロンギヌスが犠牲になった。
 俺は奴等の葬式に出てないし、顔も名前も知らないし、知りたくもねぇ。

 俺が誰も犠牲にしたくないと言っているのは嘘だ。
 知らないところで、知らない誰かが犠牲になる分には全く構やしねぇ。
 俺は―」

「ひょっとして、私が身構えるのを待って居るのか?」
「!?」

 その言葉に凍りついた柊を、愉快そうに、闇姫は見つめた。

「やはり、な。お前の本能は私を邪悪と断じ、1秒でも早く滅ぼせと絶叫していよう。だが、お前に無抵抗の相手は斬れんのだ」

 邪に満ちた双眸が柊の瞳を覗き込み。
 背筋にゾクリとしたものを感じた柊は、ソレを己の精神への干渉だと、“攻撃”だと自分に言い聞かせた。

617 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/29(月) 23:58:33 ID:BeKdknTZ

 全身から金色のプラーナを吹き上げる。魔剣に命を注ぎ込む。
 刀身にIRYOKUZETUDAIKAMIGOROSINOKENの文字を輝かせる。
 箒に組み込んだエネルギー・ブースターを起動する。

 そして意識を空にして、渾身の力を込めて魔剣を振り下ろす。

 それは、柊蓮司の生涯において、過去最高の斬撃だった。
 安藤来栖といえど、その一撃を防ぐ事は出来なかっただろう。
 普段戦っている魔王の写し身なら、その一撃だけで裏界に追い返されるだろう。
 それほどの速度と威力を持った一撃が、闇姫の左肩に打ち込まれ。
 
 肌に触れる1mm手前で静止した。その身を包む、瘴気によって。

「攻撃力150、か。よくぞ、人の身で此処まで練り上げた。全く、大したものだ。但し・・・・・・人間にしては、だが」
「何・・だ・と・・・・・・」

 驚愕のあまり声も出ない柊に、闇姫は優しく囁いた。

「最強の魔剣使いなどと呼ばれて増長したか?
 鍛え上げても所詮は人間。
 神々の戦場においては、辛うじて捨て駒に成れるかどうか、といったところだ。
 参考までに教えてやろう。
 私の防御力は520だ。つまり、私にかすり傷の一つでも付けたくとも、今の3倍の威力でも、まだ足りぬ。
 とは言え、お前の真価は別のところにある。ソレに比べれば、お前の戦闘力など何の価値も無い」
「な・・・・・・何の・・・事・・・だ・・・・・・?」

   コイツは何を言っている? まさか、柊力の事を言っているのか?

「話は変わるがな、神殺しの魔剣使いよ。お前はアンゼロットをどうしたいのだ?」
「どう・・・って、どういう意味だよ?」
「つまり、連れ帰って傷心のアンゼロットに、今までと同様にロンギヌスを死地に送ったり、魔王の転生体の子供達を殺させたりさせたいのか、と
聞いているのだ」
「なっ!?」
「こう言い換える事も出来るな。
 世界を守る為に、アンゼロットを犠牲にしたいのか、と。
 苦しみが終らない分、アンゼロットの犠牲者達よりも遥かに悲惨だな。
 それに、死んだウィザードや魔王の魂は、まだ、狭界の一角に転生する事がある。
 つまり、“あの世で幸せになる” 可能性もあるのだ」

 苦しむ柊を見つめる闇姫の顔には、いつしか他者の苦しみを悦ぶ亀裂めいた笑みが浮かんでいた。

「なあ、柊蓮司。お前は、アンゼロットが自ら望んで“世界の守護者”を務めていたと思うのか?
 アンゼロットが、好きで部下や魔王の転生体の子供達を殺してきたと思うのか?」

 たっぷりと。舌の上に毒を載せ。この諦めの悪い、お人好しの、頭の悪い青年の耳に注ぎ込む。

「総てはゲイザーのかけた制約の呪いの所為だ。
 奴はアンゼロットに新たな命を与える際、決して自分に逆らえぬよう呪いをかけたのだよ。
 即ち、『如何なる犠牲を払ってでも、世界を守れ』という、な。
 世界を守る為の犠牲に、ゲイザー自身が含まれる事になったのは誤算であっただろうが。
 ゲイザーは消え、其の呪いも、もう解けた。アンゼロットは自由だ。これでやっと、一個人として己の幸せを追求出来るように成ったのだ。
 其れをお前は、世界の為に犠牲に成れと、罪も無い人々を犠牲にする苦しみを味わい続けろと言うのか?
 嗚呼、お前はなんと残酷な男なのだろうな。
 世界を守る為に、アンゼロットを犠牲にしようなどとは・・・・・」
「・・・せない」
「うん?」

 大仰に嘆いて見せる闇姫に向けて、柊は血を吐くように叫んだ。


618 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/29(月) 23:59:52 ID:BeKdknTZ
「そんな事はさせない! アイツに誰かを犠牲になんて、させない! 俺が!」
「お前はこれから、ラース=フェリアに往くのだろう?」
「!」
「何をするにも、それなりの代償が必要だ。総てを救うには、お前の血と汗と涙と、レベルと年齢と学年と出席日数だけでは到底足りぬ」
「そこで面白くするなよ! つーか、お前は何がしたいんだよ!」

 分が悪い事に気付いた柊は話題を反らしたが、闇姫は艶然とした笑みを浮かべてその問いに応じた。

「私はただ、エルンシャとアンゼロットの中を取り持って遣りたかっただけだ。見ていて、どうにも歯痒かったのでな」
「それで、あの物好きな莫迦にとり憑いて、けしかけたのか」
「そうだ」

   本当は、エルオースが復活して自分の本体の封印が解けるまで、足止めが出来れば充分だったのに。

「それが、こんな事になったのは、お前があの蝿を連れて来たからだ」

   全く、困ったものだ。こんなにも・・・・・・・都合の良い展開になってしまっては、つい、欲が出てしまうではないか。

 エルヴィデンスが胸の内で呟く一方、柊は胸を突かれた思いだった。

   俺はアイツに何をさせたい?
   世界を守る為に手を汚すように言うのか?
   いや待てよ、アイツはこれから里帰りするんじゃなかったか?
   だったら、こんなトコで一人で泣いてるより・・・・

「結論が出た」
「ほう?」
「アイツを故郷に返す。家族のいる故郷で、あの物好きな莫迦の墓守をさせるんだ」
「ならば、私が連れ帰ろう。さっきも言ったが、私はアンゼロットとは同郷だ。本人とは面識が無かったが、家族や友人とは付き合いがある」
「馬鹿言え! 魔王の写し身を乗っ取るような奴に任せられる訳ねーだろ!」

 柊は、再び、真正面から闇姫を見据えて言い返した。

「何故、そこまで警戒するのだ、柊蓮司?」
「お前こそ、俺を騙す気ねーだろ。遊んでんじゃねーぞ! そもそも、あの物好きな莫迦を冥界に突き落としておいて何を言ってやがる」
「其のくらいせんと、素直に成らなそうだったのでな。お前も、同じくらい往生際が悪そうだが」
「るせぇよ!」
「惚れた女は早めに口説いておけ。他の男に取られてから嘆いても遅いのだぞ」
「余計なお世話だ! とにかく! アンゼロットは俺が連れて行く!」
「そうか。では・・・・・・少し、試させて貰うぞ」

 闇姫が気配を“解き放つ”。気配を消していたのをやめる。
 それだけで、ただそれだけで、柊は心臓が止まりそうになった。
 膨大な神気を浴びて、魂が砕けそうになった。
 頭の中が真っ白になり、喉がからからになり、舌が上顎に張り付いた。
 全身を構成するプラーナの配列に乱れが生じた。
 以前、輸血され、未だ体内に僅かに残っていた九天玄女の血が誤作動した。
 人間と古代神の、圧倒的な存在レベルの差に精神が崩壊を始め― る直前、闇姫は再び気配を消した。

「良く耐えた。では、アンゼロットに話しかけるがいい」
「―――――――――お、おう・・・・・・・」

 荒い息をつきながら、心身に異常がないか、確認する。
 性別が変わっていたが、んなこたーどうでもいい。他は、特に問題はないようだ。
 面白そうに此方を見遣る闇姫を警戒しつつ、アンゼロットに近付いて。
 床にへたり込み、虚空を見つめて涙を流し続ける銀髪の少女の正面に立ち、その頬を軽く叩いた。

「おい、アンゼロット。しっかりしろ」
「・・・・・ひ・・い・・・・らぎ・・・さ・ん・・・・?」
「一緒に帰ろう。みんな心配してる。それから、故郷まで送ってやるよ」

619 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/30(火) 00:00:56 ID:BeKdknTZ

 柊はアンゼロットを優しく抱き寄せ、その頭を自らの胸に押し付けた。
 女性となった、その柔らかい感触を頬に受けたアンゼロットは・・・・・・不快げに、眉を顰めた。

「・・・・・・何ですか、この胸は。わたくしに対する嫌味ですか・・・」
「え」

 アンゼロットは紅葉のような小さな手で、柊の胸を掴み、握り潰すかのように力を込めて引っ張った。

「痛てて、痛いって! やめろ、潰れる、もげるだろ、おい!」
「もげてしまえばいいんですわ、こんなもの!」
「だから、やめろって!」

 少女の小さな手を掴み、胸から?ぎ放すと、アンゼロットは悔しげに俯き、肩を震わせながら呟いた。

「・・・・・柊さんはいつも、わたくしがどんなに望んでも得られないものを、いとも簡単に手に入れるのですね」
「アンゼロット?」

 只ならぬ気配を感じ、柊は悪い予感を覚えた。

「柊さん。貴方は、わたくしが何故、毎晩寝ないでネトゲをしていると思いますか?」
「い、いや、わからねぇけど・・・・」

   何だ? 何が起きようとしている? 何か、とてつもなく悪い事が起ころうとしている・・・・。

 アンゼロットは顔を上げ、金と蒼の瞳で柊を睨みつけ、叫んだ。

「怖いからですよ! 眠るのが! 魘されるんです! 夢に出てくるんですよ!
 今まで死なせて、いえ! 殺してきた部下が! 魔王の転生体の子供達が! ユウが! 晶さんが!
 恨み事を言いに来るんです! 自分達が犠牲になる必要はなかったって!!
 わたくしは今まで、世界を守るために大勢の人々を犠牲にしてきましたが、そんな必要はなかったって!
 柊さんは犠牲を出さずに世界を救ったじゃないかって!
 こんな事は・・・・・こんな事は、貴方に会うまでなかったのに!」
「・・・・・・・・・アンゼロット」

   コイツは、こんなにも苦しんでいたのか?
   優雅にティーカップを傾けながら、意地悪そうに俺を弄りながら。
   笑顔の下に、こんな苦しみを隠してしたのか?

 アンゼロットの右目の奥に、どす黒い瘴気が蟠り始める。

「わたくしが、何故、貴方にばかり任務を押し付けていたのか分かりますか?」

 瘴気に濁った瞳に、戸惑う柊の顔が映る。

「貴方が憎いからですよ! 幸運の女神に溺愛されてる癖に、不幸そうな顔をしている貴方が!」
「俺は自分を不幸だと思った事は一度もねぇ!」
「嘘おっしゃい! 顔に書いてありますよ! 自分は不幸だって! わたくしは貴方が憎い!
 わたくしが少しでも犠牲を減らそうとしているのに邪魔をしておいて、英雄面している貴方が!」
「ま、待てよ。お前、俺の事、気に入ってたんじゃないのか?」

 自分でも、らしくないっていうか、みっともない事言ってるな、と思いつつ抗議する。

「自惚れないでください!
 世界の守護者たるわたくしが、世界総てに等しく愛を注ぐ事を勤めとするわたくしが、一個人に心奪われるなどありえぬ事です!
 ですが、わたくしは貴方への憎しみを無視出来ませんでした。だから、せめてこの執着を恋だと思い込もうとしていたのですよ!
 その過ちなら、前科がありますからね。ですが! もう・・・・・・遠慮はしません!」

 アンゼロットの金色になった右目から、冥界の瘴気が零れ出す。


620 名前:月と星と柊と ◆6H85fs.r4o :2008/12/30(火) 00:03:08 ID:uzjZ5V3p
「わたくしは生まれたとき8人姉妹でしたが、今はもう、わたくししか残っていません!
 妹同然に可愛がっていた5人の聖姫達は、既に3人が殺されています!
 わたくしは命を投げ出してさえ、イクスを救えませんでした!
 しかも、その後で、わたくしは二回もイクスを殺させられました!

 わたくしがどんなに努力しても、必ず犠牲者が出るのに!
 貴方はエリスさんもチハヤさんも救った!

 わたくしがどんなに代償を支払っても出来ない事を、貴方は容易く成し遂げる!

 わたくしが30レベルの超女王だったときは、敵も味方も60レベルで完全に戦力外だったのに!
 貴方は、たった10レベルで最強の魔剣使いと呼ばれる!

 わたくしは2回も目の前でエルンシャ様を殺されたのに!
 貴方は3回もくれはさんを助けた!!!

 ずるいです! 理不尽です! 不公平です! 
 わたくしは女神なんですよ! 貴方より、ずっと優れているんですよ!
 貴方より、ずっと努力してるんです!
 貴方より、ずっと多くの代償を支払って来たんです!
 そのわたくしに出来ない事を、貴方は容易く遣って見せて、当たり前のような顔をして!

 こんな・・・・・・こんな世の中・・・・・・間違っています!!!!
 こんな歪んだ世界など・・・・・・・・滅んでしまえ!!!!」

 アンゼロットの口調が変わり、金色の邪眼が輝いて、全身から膨大な瘴気が吹き上った。



「赤羽代表代行! また、強力な魔力反応を確認しました!!
 推測される能力は・・・・・シャイマールの8倍? 明らかに間違ってますね。この計算式、見直しましょう。
 魔力パターンの識別、完了しま― え? 嘘? こんなはずは・・・・・・・・・」
「はわ? どーしちゃったの、コジマメさん?」
「この反応は・・・・・・・・・・アンゼロット様です!!!!!」



 月光を束ねたが如き銀髪が波打ち、夜闇の如き黒へと染まる。
 小柄な身体が成熟し、背が伸びていく。
 痩せた体躯が、豊満な双丘を持つ大人の女性のそれへと変わる。
 目付きが鋭くなり、表情も大人びたものとなる。
 瘴気を凝り固め、星の錫杖と月の鎧のレプリカを生み出し身につける。

「な・・・・・・なんなんだよ・・・・何が・・・何が・・・起きてんだよ・・・・・・・」

 柊は自分の目が信じられず、呆然と、“彼女”を見つめた。

 そこにいるのは、外見年齢27歳の黒髪長身巨乳美女。

 10万年に及ぶ古代神戦争を生き延びた偉大なる戦女神
 エル=ネイシアの夜を治めた女王神
 アレイシア大陸の半分を支配した超女王

 月女王アンゼロット

 否、心身ともに瘴気に染まった、その者の名は―

「あっはっはっはっ、ハッピーバースディ、“冥魔王”アンゼロット! さあ、その胸の内に溜め込んだ、総ての憎悪を解き放つがいい!」

 封印の間に、歓喜に満ちた闇姫の凶笑が響き渡った。

621 名前: ◆6H85fs.r4o :2008/12/30(火) 00:04:55 ID:uzjZ5V3p
今日はここまで。

今回はいつにも増して反応が恐いです。次回はもっとヒドくなる予定ですが。

ではまた。


622 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 08:23:49 ID:DOXUeaOd
=三≪: : : :. :/     /   ,イ: i |   ||  ≪三三三三三三三
=三三|!: :. ://  ,'   ,'   / | i |   || i   }}三三三三三三=
=三三》: : /,'   i:   i   / | /| :! _ -ーi─'Ti :| !勹}三三三三三三 【(保管庫の)中に誰もいないじゃないですか】
.三三《 : :i i :  |  i: _厶‐ナ i/  ,rァ≠=≪| | 《三三三三三三=
=三三{{: :| | i   | イ´/___/  ,′   |   .〉 | |  ̄》三三三三三
=三三{{: :| | l      jf'' ̄〈`       !__/ | |  :}《三三三三三=  ●月と星と柊と #05-#07
=三三_!| |    \,八   }            ;, jノ| i/ _三三三三三  ●スクールデイズ >460
=三三三》 i ヽ.   \ゝイ´   、    '"'"   j/|   d三三三三  ●女神転生 >439
=三三三_   \   \     __     ,,;;'' /|     《三三三=
三三三三d\.  |\-=≦      ´    '" イ | i   | }}三三三
三三三三三}}: :\| |   \、 ;,     __..∠r┴-| i   | ii三三三
=三三三三三_: :| |   |┴ミ>'´ ̄       _| |   ト、 う)三三
=三三三三三三}_j : |i  :| /     _ -=  ̄ | |   | 《三三三
:=三三三三三三《 ,リ   ! |     /       | |   |  》三三三
:三三三三三三三≫   | |   /     -=.ニ二|ノ   |  _三三=

>571 「要いのりのクリスマス」作者さんへ。

この作品はどういう扱いにしましょうか?
独立した短編とするべきか、それとも他作品(たぶん赤毛の悪魔)の外伝とするべきか。

他にも「クリスマス」のお題投稿として扱うって方法もあります。
(こちらは2作品しかありませんが……今後の季節ネタの増加を期待して)


623 名前:要いのりのクリスマス ◆1IXdmMAgHc :2008/12/30(火) 08:33:25 ID:3g0mWIXo
お題投稿で良いのではないでしょうか?

…ふと思い浮かんだネタ。

赤羽神社にて、とある古文書が発見された。それによれば、○○年に一度、初詣に来たものの願いが必ずかなうと言う。それが、来年。
かくして、赤羽神社は過去最高数の初詣客を迎える…ウィザード、エミュレイター、そして…異世界人。
今、赤羽神社は混沌のるつぼと化した!

そんな話。

624 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 09:12:34 ID:KkigY7Aw
>>623
待って!?それはもしかしてGS美神ネタ!?

625 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 12:21:41 ID:TRF1N8qA
空にでっかい城が召喚されて、しゃちほこをつけるために皆で蹴落としあいをやればいいんだっけ?
【よくない】

626 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 14:25:50 ID:3982jycx
>>625 うっわ、ちょ〜懐かしい
その場合、城の争奪戦を部下に任せてスイカ割してるのは誰だ?

627 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 14:33:31 ID:I0Pj4fMY
空に浮かんだ巨大な城……
なんだかどっかで聞いたようなシチュだなー。

【リレーSSを読み返しつつ】

628 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 16:41:17 ID:DOXUeaOd
>623
じゃ、お題投稿扱いにしつつ、赤毛にもリンクを貼るって感じでおk?

629 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 17:26:29 ID:TRF1N8qA
>626
Tisとゲイザーと……
【三兄弟だからあと一人】

630 名前:要いのりのクリスマス ◆1IXdmMAgHc :2008/12/30(火) 17:46:07 ID:3g0mWIXo
おk

631 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 17:46:42 ID:2P34SgM0
>>629
キリヒトがいるジャマイカ
これで三兄弟!

632 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 18:16:09 ID:bjbtzxYG
スイカ割り殺法!と言って敵に斬りかかって同士討ちする彼らですね、分かります

633 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 18:38:32 ID:TRF1N8qA
>>631
いやいや、そいつは別キャラじゃねえし!
と思ったけどよくかんがえりゃ元ネタも似たようなもんだし問題ないか

634 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 20:07:00 ID:FCbgrCPo
>>625
どこの暴終空城だ?それわw

635 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 21:22:48 ID:xoSmZtbW
誰も>>621に反応しない事に泣いたww

NWじゃよくある事だが、助けに来たはずのヒロインがラスボス(推定)か……
さぁFateの凜のごとく黒化したアンゼ(英魔様と天)の暴走を止めるんだ柊(王子)!

636 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 21:45:22 ID:qbtRMpoK
>>621
乙〜。ストーリー自体はS=FやNWの王道っぽくっていいんだけど
間に挟んでる小ネタがなんつーか色々ダイナシな面白さが目白押しだよオイw

637 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/30(火) 21:55:33 ID:WopONmgf
>>621
GJ!
柊はやっぱりみんなの保護者だぜ!
ちょwwヒロインがラスボスかよ!はRPGじゃまああることだ。

638 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/01(木) 17:41:07 ID:eFz7Qa5s
アンゼ黒化も、小暮さんが矢野にゃん弄ってると思うと悲壮感の欠片もねぇww
そして、思いっきりベルを踏み台にして登場したのにスルーされる闇姫・・・・・・

にしても、柊がアンゼを説得する材料無くないか?


639 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/01(木) 21:12:57 ID:aiahj4w0
まずは狂気を下げないと・・・あれ?SAN値を上げるのか?

640 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/01(木) 21:24:26 ID:A3lpkcGB
おちつけ。ゲームが違う

641 名前: 【大吉】 【787円】 :2009/01/01(木) 21:46:48 ID:3mpNkVcd
>>638
矢野さんが小暮さんを説得すること自体がかなりの難物ではないかとw
「こんど晩ご飯おごりますから、いくらでも」くらい言わないとねww

642 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/01(木) 22:20:14 ID:cj881O7b
>>639
狂気点@ゴーストハンターなら下げてOK!

643 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/01(木) 22:57:07 ID:lE7X1eYX
ここからどうやって口プロレスに持ち込むかが、王子の見せ所だ。
クリティカル連発する小暮さんには勝てないからな

644 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/01(木) 23:04:25 ID:A3lpkcGB
判定したら負けの世界かよ

645 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/01(木) 23:39:18 ID:cj881O7b
ダイスを振らずに解決する方法はないものかと、付け耳ダークエルフもおっしゃっている

646 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/02(金) 01:34:59 ID:hJYm3lfh
ダークエルフは元からエルフ耳だろw

647 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/02(金) 01:59:41 ID:Rq7N7Vbv
それを言うなら白粉エルフだな。

アンゼ説得の鍵か…。なんか色々推理は出来そうな気がするような、しないような。
えー、とりあえずぽんこつ頑張れ超頑張れ。

648 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/02(金) 10:57:18 ID:P5PtWT9U
そりゃあ、高レベルキャラ+英魔様のダイス目には柊+王子のダイス目はまともに勝てんだろう



柊「お前がやってきた事は――決して意味のない事なんかじゃないんだ!」
とかくらいしか思い付かないな俺には

649 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/02(金) 13:05:25 ID:DWf7ju0e
意味があるかどうかはどうでもよくね?
アンゼロットは世界を救えるが、自分の家族は救えない。けど、柊はどっちも救える。だから気に入らんって話だし。
しかし、ここでぽんこつが戻ってきても守護者の幻影に瞬殺されるだけのような気が・・・・・・


650 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/02(金) 15:21:25 ID:a9VQIRiR
リプレイなら、
王子「どうすればいいんだ、こりゃ」
英魔様「どうすればいいんでしょうね(笑)、簡単には説得されませんよ」

こんな感じになるな

651 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/02(金) 18:54:31 ID:8naCxys7
政宗一成の声で「その時不思議な事が起こった」、もしくは増岡ひろしの声で「その時奇跡が起きたのです!」
とナレーションするか。

652 名前:って言う電波を受信した:2009/01/05(月) 06:29:18 ID:uxzzLS62
「…なるほど、事情は理解できました」
「はい。現在月匣…東京内部ではそれが常態化しています。このままではイノセントはおろか、ウィザードも取りこまれるでしょう。いかがなされますか?アンゼロット様?」
「分かりました。現在をもって今回のケースを“東京月匣”と命名。同時に事態が解決するまで、東京月匣を封鎖します。 東京在住の全ウィザードへ通達し、部隊を編成しなさい」
「は。では、中の普通の人々はいかがなされますか?」
「…極力巻き込まないように注意をして行動を」
「よろしいのですか?」
「仕方ないでしょう。下手に避難をさせて“混ざりこんでしまう”ような事態は避けねばならないのですから」
「分かりました。では、そのように」

「…時間の圧縮。このようなことになるなんて」

――――192X年 銀座

「どうだ紅蘭?」
「…あかん。巴里とも紐育とも連絡が取れへん。どうなっとんねん」
「やっぱりダメか…」
「浅草の方とは通信できたんやけど、向こうもてんやわんやしとるわ。何か眉毛つながった警官がどうとか言っとったで」
「大神さん、大変です!」
「さくら君?一体どうしたんだい?」
「はい。さっきカンナとアイリスの三人で外を見て来たんですが…」
「今、さくらと一緒に外見て来たんだが、なんかすっげえでけえビルが建ってたぞ!それもごろごろ」
「それにね、外を歩いてる人たち、変な服着てたよ!」
「それはおかしいな。今、念のために帝都中で戒厳令を出してるはずなんだが」
「あの、隊長。今回の事件について知っていると言う方が来ています」
「いいっ!?本当かいマリア!?」
「はい。それも強力な霊力の持ち主です。それで、条件次第では今回のことについて教えてもよい、と。ですが、その条件と言うのが…」
「言うのが?」
「轟雷号1日乗り放題、それで手を打つ、と。どうしましょう?隊長」

――――203X年 新宿

「しかし一時期はどうなることかと思いましたが、無事戻れて良かったですね」
「ああ、東京も無事だったようだな。むしろ前より奇麗になってやがるぜ」
「ええ。ICBMが落ちたときにはもうダメかと思っていましたが」
「つっても悪魔がいるのはそのまんまだったけどな」
「そうですねえ…おや?どうしましたヒーローくん?」
「…え?アナライズの調子がおかしい。見たことのない種族が登録されてる?」
「んだよ。そんなの気にすんなって」
「まあまあ、それでなんて言う種族なんですか…侵魔と冥魔?夜魔の類ですかね?」

――――XXXX年 エトリア

――やあ、よく戻ってきてくれた。聖杯の探索は進んでいるかね?

――分かってる。すぐに事態の説明に移ろう。

――実は、第5階層が大きく様変わりしているらしい。モンスターが減った代わりに異常に広くなっているそうだ。
  それと、これは未確認だが、明らかにこの街の住人でも冒険者でもない“人間”がいるらしい。

――そうだ。人間だ。モリビトでは無い。それに、モンスターも見たことのない奴らが発生しているとのことだ。
  あの迷宮からもたらされるものは私たちには無くてはならないものだからね。だからこそ呼び戻したんだ。
  かつて、迷宮の謎を解き明かした、君たちを。もちろん報酬は出そう。お願いできるかな。

君たちはこのミッションを受けてもよいし受けなくてもよい。

東京月匣。それは“ありえるかも知れない未来”と“あったかも知れない過去”が混ざり合う場所。

『東京ダンジョン物語』

全ての元凶が現れるとき、東京の存続を賭けた、住人たちの戦いが始まる。

653 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 07:50:17 ID:ANKkdHvJ
「アンゼロット様、〈〈新宿〉〉ですが」
「区長に任せます。大丈夫です、あそこの《住人》は冥魔などに屈しません」

「アンゼロット様、東京湾埋立地の司政官が会談を申し入れて来ていますが」
「こう伝えなさい。『くたばれ、地獄で懺悔しろ』」

654 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 08:02:13 ID:4n9R54hH
>東京湾埋立地の司政官
ダンス・イン・ザ・ヴァンパイアバンドのほうが思い浮かんだんだZE!
ミナさまかわいいいよミナさま。でも腐女子趣味に嵌らないでくれー。

655 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 08:09:00 ID:mj+6DD3I

?これは多重クロスと考えりゃいいのかね?

しかし新☆アンゼロット転生に冥界樹の迷宮とは渋い所を選んだものだな(馬鹿は色々と間違えてる事に気づいてないようだ)

656 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 09:30:45 ID:n4lvM4y4
>轟雷号1日乗り放題
誰が来たか2秒で分かったぜw

657 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 11:40:57 ID:plD762LW
一つ聞きたい。
それは「鉄道」か?

658 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 19:14:40 ID:1fo7b3Hr
>東京湾埋立地の司政官
……色香と力にほだされて魔王に寝返ろうとして、
利用するだけ利用されて処分されそうになりつつも生き延びそうだな、オイ。

659 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 19:25:40 ID:dmpLtL/T
>>「こう伝えなさい。『くたばれ、地獄で懺悔しろ』」
「区長に任せます。大丈夫です、あそこの《住人》は冥魔などに屈しません」

非情に見えるが新宿にする対応としては間違ってないんだよな
せんべい屋やホモの院長相手に苦労する柊が思い浮かぶ


660 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 20:06:57 ID:qmRs6bgo
>>658
まぁ、あそこの住人も冥魔なんぞに負けないだろ。

「で、なんだって? メモリー」
「人の話をちゃんと聞かないから理解できないのです。いいですか、レイ。今、N◎VAは
 他の可能性の東京と入り混じった混乱した空間に落ちているのです。
 〈赤の魔術師〉によれば、空間だけでなく、時間さえもおかしくなっているとか」
「おいおい、メモリー、そんな与太話を信じろって言うのかよ?」

「おい、本土との国境がとかれたってのに、向こうは魔王が闊歩してる魔界だって?
 ばかばかしいにもほどがあるよな、ったく」
「ぶつくさ言ってるんじゃねえぞ、レンズ。切り応えのある奴がいそうじゃねえか。
 ん?おい、向こうから来る二人連れ、ウチの制服だが見慣れない顔だな」

「レイ、向こうから来る2人組の隊員、誰だかわかりますか? レイ?」
「そんな……オヤジ?!」

新旧最凶コンビ邂逅

661 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 21:20:02 ID:ok1UZxJp
>>652
多元世紀元年ですね。分かります。

662 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 21:39:29 ID:Vuvp7KhA
>>661
言われてみれば確かにww
東京限定だがね。
喰霊やGS美神、風の聖痕などもありそうだ。

663 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 22:02:33 ID:ok1UZxJp
東京月匣の霞が関にはZAT基地があるに違いない。

664 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 22:59:41 ID:LBX7NQpQ
すると地下には「能力」を得た人々が住む世界があるのか

665 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 23:44:21 ID:6l7WsQ/c
とんでもねえ危険地帯だな東京

666 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/05(月) 23:45:23 ID:bKOKOJiR
天の龍と地の龍がいたりするんですね
・・・連載再開しないかなあ

667 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 00:13:17 ID:sghbhQ73
475kbyte超えてるけど、次スレどうする?
前に、雑談系の板じゃなくて投稿系の板に移った方が投下しやすくなるからいいんじゃないかって話もあったけど。

668 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 00:40:47 ID:b5p7/wVh
創作発表板は過疎すぎね…

669 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 01:33:01 ID:rEtoMQGl
>>664>>666
金髪さんはおそらく虚属性だなw

670 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 07:06:04 ID:X8S1wjCQ
>>664
地下には人類殲滅を弾きだしたコンピュータだの世界樹の核だのヤバいのがごろごろ埋まってるからなあ。

671 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 11:34:21 ID:WLc4TOpi
長谷川平蔵と遠山の金さんが同時に出たら大変だ。住所一緒だから。

>664
地下には「竜神様」がうろうろしているんだよ。

672 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 13:44:33 ID:mERnGxw4
>>671

平蔵と金さんの二人は同居している事にすれば問題無いかと

673 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 17:30:37 ID:HtUgeRyk
>>661
そんなオーガス関連のシナリオが原作の伏線消化し始めたら
速攻で有名無実化した設定は縁起悪いかららめぇぇぇぇぇぇ!

674 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 17:41:06 ID:L9fa6VLQ
魍魎の(月)匣……いや、なんでもない

675 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 21:08:23 ID:Xw3QWfuL
東京はイワヤト地下の扉や龍穴だのあって三時間ごとに世界の危機が起こってそうだな

676 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 21:23:36 ID:wgR6JxMy
怪獣や巨大化怪人が毎日ぐらい暴れてそうです><

677 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 22:08:31 ID:X8S1wjCQ
秋葉原は安全地帯かな。輝明学園とゆにば〜さるがあるし、ローカル系魔女っ子もいるし、ドリーム○ャストのシェアも100%だし。

678 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 23:05:31 ID:WLc4TOpi
>672
二人とも「俺に貸せ、俺がやる!」とやかましいか、連れだって飲み歩くかだな。
>677
秋葉原は……某交差点の……
※南東に家電量販店ファイナルハーツ。
※北東のマンションの一階にメイド喫茶ゆにばーさる、下1/3がUGNの、上1/3がFHの寮やセーフハウス。真ん中あたりに柊家。
 オーナーの本業はネットゲーマーで趣味が声優。
※北西に赤羽神社。
※南西のユニオンビル一階にメイド喫茶天使の夢。

679 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/06(火) 23:07:23 ID:WLc4TOpi
>678
ミス、一番最後はユニオンビル工新ね。

680 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 03:15:29 ID:hJTVOji5
そしてFEARがあるビル!

681 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 07:29:49 ID:e5RlvYDT
世界の危機に王子やきくたけ、天やじゅんいっちゃんに社長などといった歴戦のベテランゲーマー達が立ち上がるんですね、わかります!

682 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 12:46:11 ID:cykIyyY7
フロシャイム本部って東京だったっけ?
…西東京支部はあるのか…本部どこだよw。

683 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 12:49:25 ID:v4GIrCtG
世界の危機になるとPLが各PCに変身するんですね!
……それなんて今俺が書いている嘘予告?


いや、ただ単にPLをクロスSSのストーリーに混ぜたかっただけなんだ

684 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 12:58:24 ID:mxfPoQuP
目の前で天がいのりに変身したらどうしてくれるw

685 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 13:17:14 ID:LlU8dGIJ
やっべぇwww
それはもう世界の危機じゃないか?

686 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 13:39:34 ID:abRXjWAo
KOFの97あたりとうまくクロスできねえかな…

687 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 19:40:58 ID:8cYH5srz
そう言えば最大トーナメントも東京で行われてるんだったな…恐ろしいメンツになりそうだw

688 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 20:18:30 ID:abRXjWAo
依り代とかオロチとかクロスさせやすい要素はあると思うんだ。
しかし、いざ書くとなると…はぁ〜

689 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 20:23:11 ID:Myx6QFU8
スーパー留年生草薙京とか。

690 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 20:24:04 ID:abRXjWAo
下げ忘れすんません

691 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 20:38:51 ID:FeivDmBi
FEAR本社ビル攻略戦ってJGCでどっかの公式卓がやってなかったっけ?

692 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 20:46:47 ID:7hKhYHnD
菊田健二と井の頭純吉のガチバトルですね!

693 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/07(水) 23:36:08 ID:RvM+uK8O
PC1:君は、ユニオンビル工新だ。
PC2:君は、奇跡の店だ。

以下任せた。

694 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/08(木) 03:38:01 ID:u8OUuQjF
次スレ大丈夫か?携帯だから立てられない…

695 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/08(木) 13:13:38 ID:fynQQv5/
>>694
立てといた。

【柊】ナイトウィザードクロスSSスレ【NW!】Vol.14
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1231387941/

696 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/08(木) 14:58:20 ID:h+uADJ8U
乙であります

697 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/08(木) 17:34:17 ID:8Q9MaGhB
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698 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/08(木) 17:35:38 ID:8Q9MaGhB
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699 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/08(木) 17:36:10 ID:8Q9MaGhB
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700 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/08(木) 17:36:46 ID:8Q9MaGhB
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701 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/08(木) 17:38:03 ID:8Q9MaGhB
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702 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/08(木) 17:38:37 ID:8Q9MaGhB
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