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【柊】ナイトウィザードクロスSSスレ【NW!】Vol.16

1 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 21:26:18 ID:OGciGNlL
アニメでも大活躍し、過去リプレイ作品で異世界慣れした我らが“下がる男”柊蓮司……
そんな彼や他の登場人物達がもしも○○の世界に飛ばされたらor○○キャラが第八世界にやって来たら…?
そんなナイトウィザードのifストーリーを語るスレです。

■ 注意事項 ■
・不要な荒れを防ぐ為に、sage進行で御願い致します。
・冥魔(荒らし)に反応するあなたも冥魔です、スルーしましょう。
・次スレは>>975を踏んだ方、若しくは475kbyteを超えたのを確認した方に御願い致します。
 また、重複防止の為に次スレを立てる人は立てる前に宣言を御願い致します。
・荒らし、カッコ悪い。
・Q.ナイトウィザードって○○のパクリ?
 A.とりあえずほぼ全て何かのパクりです。初版が2002年3月発売なのでそこから判断してください。

■ SSを投下する方へのお願い ■
・NWキャラをクロスさせたい作品世界に送り込むも良し、
 逆にクロスさせたい作品のキャラをファー=ジ=アースを中心とした
 きくたけワールドに招いてNWキャラ達と掛け合い活躍させるも良し、
 SS創作者の想像の赴く儘に楽しめる物語を書き込んで下さいませ。
 但し、NW関連スレと云う事で片方は「ナイトウィザード」で御願い致します。
・801等、特殊なものは好まない人も居るので投下する場合は投下前にその旨を伝えましょう。
・各作品の初投下時は、クロスする作品名を最初に御願い致します。
 そうすれば読者も読み易いでしょう。
・SSの内容が18禁の場合は地下スレ(検索ワードは「卓上ゲーム」)へ。
・NW側からのホストキャラはNW公式作品に登場しているキャラを主軸として、
 SS創作者オリジナルのキャラをストーリーに絡める場合はあくまで脇役としての
 立場で参加させて下さいませ。
・御互いの作品を尊重しましょう。一方的なクロスは荒れる原因ですよ。

■前スレ
【柊】ナイトウィザードクロスSSスレ【NW!】Vol.15
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1235905912/l50

■関連スレ
ナイトウィザード -Night Wizard!- セッション43
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1231565440/l50
【ネタバレ】ナイトウィザードその17【卓ゲ雑談】
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/asaloon/1226916695/l50
菊池たけし セブンフォートレス ナイトウィザード83
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/cgame/1236948149/l50

■関連リンク
http://www.fear.co.jp/nw/(原作ナイトウィザード公式)
http://www.nightwizard.jp/(TVアニメ公式)
http://www42.atwiki.jp/nightwizard/(アニメ版まとめWiki)
http://www32.atwiki.jp/nwxss/(過去SS保管庫)





2 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 21:30:55 ID:OGciGNlL
非クロス作品の場合は、卓上ゲーム板の専用スレへの投下も検討してください。

卓上ゲーム板作品スレ その4
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/cgame/1226119982/



というのが過去スレにあったから追加しておこう。

3 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 21:37:52 ID:ftemuAPE
>>1乙!
……いやぁ、まさか1日であれだけ埋まるとは思ってなかったからなぁ。助かった。

最近執行部周りばっかりあるし、なんか別のものも見たいなぁ、バイトSSみたいに……
と思ったわけだが、学生用のたまり場みたいなのがあると便利だと思った。

ろんがぬすの支店出そうにも、あれ居酒屋だから健全なたまり場があるといいと思うんだ。

4 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 22:12:02 ID:oqlREIuq
>3
その為の、執行委員です。
とりあえず参加したり外部協力者だったり、天文部の二人がお弁当を届けに来たら不在だったり、
部員でも委員でもないOBが住み着くついでに夜勤の合間を縫って後輩の面倒をみたり、
助けられたお礼と称したり余所のクロスを口実にしたり……

【香椎先生に添い寝して?と言ったら、グイード先生が膝を叩きました】

5 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 22:13:26 ID:B2c+xrap
よそのクロス口実ありなんですか

6 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 22:22:32 ID:oqlREIuq
>5
あくまで口実、楽屋ネタみたいなものなので、生徒の経験が無いエリキャロが柊の前に出たりとかは多分無いでしょう。

因みに『しのキャラ何でも屋』の茉莉は、ウェブドラマでの柊とのフラグを大事にしたいのに上手くいかないと言う方向です。
他の人が書かなきゃ、エリスもそれに引きずられたり、ミナリがきゅんとしたりします。

7 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 22:50:42 ID:ut93WU8B
>3
アーカムのベル・カフェとかどーよ? 猫好きが集まるキャット・カフェだ。

あそこはミスカトニック大学の敷地内じゃないけど、アーカム自体が大学町だから問題ない、と主張してみる。

アゲハを連れた竜之介とコネコマタを連れたくれはと食事に来た旧神が入り浸ってて、緑茶飲んで、さるさんが、さるさんが見える
よ! っとか言ってるんだ。(後半のモトネタは、レ・ファニュの「緑茶」)

8 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 22:58:12 ID:ftemuAPE
ま、待って。
その「余所の」ってのはどこを指して「余所」?

学生じゃない人が混ざるって意味の「余所」?
それとも余所に保管されてるSSに登場してるキャラを混ぜるって意味の「余所」?

前者の場合はきちんと理由がある(柊・ノーチェなど)ならまぁ可では?
単にネタとかならお題が「学園世界」な以上やめた方がいいというのが個人的な判断。
後者の場合は正直「ハァ? 正気? 頭大丈夫?」と言いたい。

9 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 23:11:33 ID:oqlREIuq
>8
前者は、せめて学園物の登場人物なら通るでしょう。例えば卒業生とか。というかそれなら“余所”に当たらないや。

後者は著作権的にアカンでしょう。せめてこのスレ内部で、つまり柊とベホイミの関係。

作者さんがご自身で魔法先生とサフィを書くとかして頂いたりされたら、素敵だと思いませんか?

10 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 23:23:43 ID:ftemuAPE
>>9
おーけー、そういう意味な。
>>4-6の流れが「よそ」をどう定義してるのかがわからなかった(というかすれ違ってるように見えた)
ので、確認しておきたかっただけです。一安心。

なんか最近変なこと言い出す人が多いからきちんと確認しておかないと、と思うようになってしまって。

11 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 23:30:21 ID:oqlREIuq
>10
ま、“自分が余所で書いたネタを引っ張る”とか凄くやりたいんですけどね。
僕の場合、別HNなので堪えざるを得ないのですが。あっはっは。

12 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/22(日) 23:56:52 ID:qBzqwDYV
なぁに、余所の人が書いたSSに影響されて、その設定を持ってきた俺よりはずっとマシだと思うぜ
という訳で、投下待ってます

by前スレでトウガネタやらかした奴

13 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 00:17:51 ID:tdb5sCBT
>>12
うーん……正直な話さ、そういうのは口にすべきことじゃないと思うわけですよ<設定そのまま
この作品でもないものを、作者の許可もなく設定そのまま持ってきました、っていうのはさ。

文章そのままでなくとも、剽窃扱いで正直な話叩き出されても文句言えない発言だと思うですよ?
せめてオマージュしました、とか言おう?

14 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 01:29:31 ID:0U9gLmOy
まー、普通に馴れ合いっぽいことされてもウザいしねえ。

コテとかさ

15 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 02:21:11 ID:QwLtwycf
やっぱり短いですが、保健委員の第二回を30分から投下します。

16 名前:保健委員@学園世界:2009/03/23(月) 02:30:08 ID:QwLtwycf
「やっぱ言い過ぎたか……」
少し反省をしながら、保健委員長・七代 崇は副委員長の木梨 幸水と、ある場所へ向っていた。
「仕方ないんじゃないか? 君が言わなければ後で大変な事になってただろ? 『あそこ』が」
「……時間は稼げたと思いますか?」
「『気付いた』連中も暫くは静観するだろうな。問題は……」
深刻な表情を浮かべながら、二人は向っていた。
――赤羽 くれはの元へ

【輝明学園理事長室】
赤羽 くれはは困惑した。つい先程会議で爆弾発言をした二人が尋ねてきたからだ。
「はわっ、所で七代君達は何の用で来たの? いろいろと準備が忙しいんじゃあ……」
くれはが尋ねると、
「準備なんか会議に出る前から終わってる、つーか『検疫』は転移時から始めてるよ」
「でも、七代君に反発した人達が襲撃とか」
「それに関しては『学園都市・ツェルニ』がフロレンス傍に停泊、フローリア学園からはベリオ・トロープ教諭とヒイラギ・カエデ教諭、フォーティア魔法学園からはボガート・ニムバス教諭が来てくれている。守りに関しては問題ない」
間髪入れずに答える七代にくれはは舌を巻いていた。
「それより、ヤバイのはそっち(輝明学園)の方だぞ」
「はわっ?」
「気付いて無かったのか……」
「はわっ、一体何の事?」
少し声を落として七代が続ける。
「『輝明学園』の生徒は今の段階でも簡単に『帰れる』」
くれはは七代が何を言ったのか一瞬理解出来なかった。
「既に幾人かは気付いている。これを念頭に置いて聞いてくれ。
・学園世界はファー・ジ・アースとまだ繋がっている
・ファー・ジ・アースから人が来る
・学園に『籍』の無い人物に籍を与え、学園世界に取り込んでいる
……何か気付かないか?」
くれはは理解した。
「『籍』さえ抜けば学園世界に縛られる事なく帰還出来る」
固い声で言うくれはに今まで沈黙を保っていた木梨が付け加える。
「正確には『輝明学園』だけが」
くれはの顔からどんどん血の気が引いていく。その音が聞こえてくるようだった。
「下手をしなくても暴動は避けられない。そしてフォーティア魔法学園や神撫学園、物部学園などの世界間移動が可能な学校は他にもある。そう、座標さえ判れば旅立てる学校が」
くれはの脳裏にはある光景が浮かんでいた。そう、『方舟』を奪い合う学園間戦争の光景が。
「ま、暫くは大丈夫だろうけどな」
そんなくれはに明るい声に戻し七代は言った。それに続けて木梨が、
「今回の七代君の発言で、生徒の不満は七代君に集中するだろう。
それに、落ち着いて考えれば『検疫』は必要だと納得してもらえるだろうしね」
「『検疫』に納得さえしてもらえれば、そっちの問題もどうにか出来るしな。
俺達保健委が全生徒を帰還させる手段を所持し、納得せざるを得ない理由で『輝明学園』ごと帰還を制限していたら輝明の帰還手段に価値はないからな」
その言葉に安堵するくれはに七代は、
「とりあえず、対策はしたが、そちらでも気を付けておいてくれ」
と、締め括った。

【おまけ】
「所で、七代君って本当に全生徒の出身世界を把握してるの?」
「……そんなヒマあったと思うか?」
「はわっ、もしかしてハッタリだったの?」
「いや、必要ないだろ? 全学園を把握すれば事足りるんだし」
「……はわ、確かに『全生徒の出身世界数』≒『学園数』だね」


17 名前:保健委員@学園世界:2009/03/23(月) 02:33:32 ID:QwLtwycf
後書き
どうも、保健委の二回目です。ほとんど前回の補足です。
個人的には大半の生徒は「帰還」が保証されていたら学園世界に残り、学生生活を堪能してそうです。卒業しない蓬莱学園生の様に。
しかし、大事件が他の方の所で起こってしまっていますので一般保健委員の話に移れなかったorz


次回予告
学園都市で起きた惨劇、被害者数約●万。
それを許容して良いのか、良いわけがない。
かくして保健委達は立ち上がる。
そう、「死の定義」を決めるのは我々なのだ。
この戦場に委員長はあまり役には立たない。
だが、我々には『彼』がいる。

「先に言っておくよ。ボクは―――とてつもなく弱いんだ」

18 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 04:42:59 ID:5hBOHLSj
あー、そういう手は思いつかなんだ〉学園の籍

そう考えればノーチェがいるのも頷けるのね、素直に感心したわー
俺はむしろこの状況を“夢”と考えてたぜ、誰かが望んだ楽しい“夢”泡のように弾ける儚い“夢”
盲目白痴なる“誰か”が見ている学園世界という名前の“夢”


これでクトゥルフ系混ぜて幻夢神関係で一本いきたかったけど……どう考えても他の人が絡ませ辛いです、本当にありがとうございました

19 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 08:10:12 ID:tdb5sCBT
そーかなー……

学校には学生・教師以外にもいる人がいるだろ?
学園都市だの麻帆良だのなら、通常の学校どころの話じゃなくもっといる。
その人達も「学校に籍をおいてる」とするのは無理があると思うから、やっぱり多少無理のある話じゃないかなーと思うんだけど。
それに、新しく人が入ってもそこから出ることが出来ない「不可逆性」を持った結界だから出られないんだと思ってたけど。

単なる技術問題なら、技術確立すればいいだけなわけでさ。
それこそNWではとある奴が異世界旅行してるわけで。
技術でなんとかできるなら、帰れる技術力のある学園は極生なんぞに入らずにさっさと帰ってるでしょうに。

単純な技術問題ではこの「学園世界」の結界から抜け出すのは不可能だから、原因を探そうって流れになってるんじゃないのか?

あと、まだ連載中の人の途中展開のネタ拾おうとるのは非常に危険。
もしその人の展開潰したらどうしよう、とか考えたことありませんか?

20 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 08:24:29 ID:2CFgPlBZ
それで帰れるんだったら<まじしゃんず・あかでみい>あたりがさっさと帰ってるんじゃなかろうかと。
魔法を知らない一般人とはかかわり合いになりたくないと考えてる奴も多いし、そもそもあそこの教職員は洒落にならん実力者ばかりだぜ?


ハプシエルとか

21 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 10:56:47 ID:vHSRh5zW
ハブラレル?

22 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 13:20:29 ID:QwLtwycf
>>19-20
『籍』と言うのは比喩で、「学園での居場所」があると言う意味で書きました。
「執行委員の喧噪」の設定の「結界内に転移してしまった『学校』に『所属している』と認識されてしまった人間は結界外に出ることが不可能であると判明」から、
逆に、「学校に『所属していない』なら結界外に出ることが可能」と言うのも証明されているのではと思い、書きました。

>まだ連載中の人の途中展開のネタ拾おうとるのは非常に危険
……言い訳のしようもありません。騒動日程の作者様、誠に申し訳ありませんでした。

>帰れる技術力のある学園
逆にさっさと帰らずに、未知の知識・技術を収集に走る気が。
技術者・学者にとってパラダイスな環境でしょうし。
そうこうしている間に「検疫」問題浮上って流れで考えてます。

>それで帰れるんだったら<まじしゃんず・あかでみい>あたりがさっさと帰ってるんじゃなかろうかと
……何人かは速攻で帰っている気が。
「帰りたくない」って思って居座り続けるのも多そうですし、学園世界の噂を聞いて「転校生」「転任」とかで新たに参加してるヤツも多そう。

>魔法を知らない一般人とはかかわり合いになりたくないと考えてる奴
そう言う考えの人は「帰れる実力」がある人間は速攻帰って、ない人間は「トリスティン」や「ホグワーツ」に入り浸ってそう。
そんな気がします。

いろいろとご意見有り難う御座います。

23 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 13:21:33 ID:1sp4okhh
変態愛天使……!?

なんか相変わらず俺sugeeeeee臭がするようなのは気のせいだよね!?

24 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 15:35:38 ID:tdb5sCBT
認定してるのが誰なのかは不明なんだよな。おそらくは黒幕かそのシステムかって話だと思うが

つーか、学園世界内の居場所ってなくせるもんなのかね?
学生やめましたー。だから出られますー。ってのは、
やっぱり「学生・教員以外の住人」がいる以上難しいんじゃないかなー。
いやまぁ「執行委員の〜」の人も抜け道みたいな書き方してるからアレだけどね。
普通に考えて「誰(何)がそう認定していて、どう判断しているかもわからない。
(SSとして)実例がない。よってそれによって帰ることができるかは作者判断」
でいいと思う、が。

確かにこれ拾うかどうかは、他の作者さん次第だしね。

25 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 15:49:16 ID:wqhzTSN1
>>1さま、遅ればせながらスレ立て乙です。
流れを切ってしまいますけど、学園世界ものではないのですがネタを思い付いたので、昨夜書いていたSSの投下予告をさせて頂きに参りました。
内容はNWとDXのクロスもの。各設定の美味しいとこや作者の好みを摘み食いして書いてますので、時系列等細かい所はあまり気にしてません。
仕事を終えて帰宅後の投下になりますので、夜の十九時半から二十時頃になるかと思います。
その時間帯、お暇な方いらっしゃったら、支援などいただけると嬉しく思います。
数時間後、投下の時まで。
ではでは。

26 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 15:56:57 ID:tdb5sCBT
>>25
Yes! 楽しみに待ってるぜ!

27 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 18:10:09 ID:4cq6Go7q
>22
修正が効くなら時系列で一番初めの頃にすればいいんじゃないかな。
この辺だと調査も始めたばかりでよく判ってないし、
他の世界に渡れる人は気楽に帰れると思ってるだろう。
実際出ようとした人たちは、弾き返されるか、別の場所に飛ばされて行方不明とか。
なんだったら、敵に捕まってたりするも良し。
捕まえる理由は学校の召還と維持に使う生きた電池とか理由をでっち上げてみる。

28 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 19:05:40 ID:SFSltthr
学園世界ネタで○○と秘密の本みたいにオープニングだけのはいいんだろうか
オープニングだけだから出てくるキャラが一人だけでクロスというには微妙だけど

29 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 19:37:34 ID:d/e9efc3
>>19
>原因

だが、ふしぎなちからでうちけされてしまった!ですね。分かります。

30 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 19:39:59 ID:/+OvPNC9
予告通り、投下開始させていただきます。
ナイトウィザード×ダブルクロスもので、タイトルは「柊蓮司と銀なる石の少女」。
それでは、投下開始します。


31 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/23(月) 19:44:28 ID:/+OvPNC9
     ※

 柊蓮司がその少女と出会ったのは、初めて訪れた見知らぬ街での、ある日の早朝のことだった。

     ※

 周囲の大気に充満する、肌を刺すような殺気。
 澱のように沈殿する淀んだ気配が、足元から胸元までせり上がって来るような感覚に、ごくりと音を立てながら思わず生唾を飲み込む。
 自分を格好の獲物と見たものか ――― 取り囲むように包囲の輪を狭めてくるのは、不恰好にねじくれた姿をした、到底人間のパロディーとしか思えぬような異形の姿をしたものどもだった。
 あるものは二本足で直立する獣であり。
 あるものは四肢の先端に巨大な鉤爪だけがグロテスクに強調されて生え揃った、四足歩行の“人間だったもの”。
 見回せばそんな連中が、ざっと数十体。ぐるりと、自分のことを取り囲んでいるのである。
 依然振り切ることの出来ない悪寒と吐き気は、目の当たりにした怪物たちの姿に違和感と嫌悪を覚えた所為ではない。この程度のクリーチャーとはかつて幾度も交戦を重ねてきたし、見てくれだけなら彼ら以上のおぞましいモノとも戦ったことがある。

 だが ―――

 やはり、空気が濁っている。
 やはり、大気に淀んでいるものがある。

 かつて感じたことの無いこの感覚は、彼の戦闘能力を削ぐほど深刻なものではなかったが、それでも決して気持ちのよいものではない。
「なんなんだよ、こりゃ……エミュレイターじゃ、ねえのか……?」
 彼 ――― 柊蓮司の口から、歯軋りと同時に疑問の言葉が漏れ聞こえてきた。
 見上げた空には、燦燦と降り注ぐ太陽の光。紅い月は、見えない。
 ただ、辺りを包む空気の“濁り”だけが、深々と降り積む雪のように濃度を増していた。
「んなこと言ってる場合じゃ、ねえけどよ」
 脳裏を蝕む疑問を振り払うように、吐き捨てる。
 手を虚空に差し伸べ、なにも無いはずの空間から彼自身の武器を引き抜いた。
 魔剣の柄が。ルーンの刻まれた刀身が。
 するり、するりとなにも無い空間から突如として現出する。
 月衣から、文字通り魔法のごとくに剣を引き抜いた柊の動作に、異形どもがたじろいだ。
 容易く蹂躙できる相手ではないと、獣の本能で悟ったのであろうか。
 大上段に構えた剣に渾身の膂力を込め、大地に楔を打つように脚を根差した磐石の構えは、どことなく物語に聞く剣豪を髣髴とさせる。
 言うまでもなく、数多の戦いを生き抜いてきた歴戦の猛者だけが持ち得る迫力と風格を、いまの柊蓮司は身に纏っていた。


32 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/23(月) 19:46:11 ID:/+OvPNC9
「わけもわからず他所の街に放り出された挙句、また学校通い。しかも登校初日から戦闘とは、先が思いやられるぜ……」
 闘気が膨れ上がり、剣気が鋭さを増し。
 それでも口調だけは普段の彼がぼやくときの、いつもの口調で柊は言う。
 身を包む淡いグレーのブレザーは、これからしばらく彼が通うことになった、任地である学園の制服だ。たしか、私立瀬戸川学園 ――― そんな名前だったはずである。

 詳しい成り行きの詳細は割愛するとして。

 相も変わらず飽きもせず、任務という名目で柊をこき使うことに微塵の躊躇も感じることのない銀髪の美少女によって、柊は目出度く二度目の学園生活を送る羽目となったのだ。
 今回もご他聞に漏れず、連れてこられるまでの状況の詳しい説明は一切なし。街中をぶらついていたところを問答無用で拉致されて、連れて来られたのは毎度お馴染みアンゼロット宮殿。
 宮殿の主たる“世界の守護者”は、
「これからするわたくしのお願いに、ハイかイエスで」
 定番の台詞を最後まで言わずに、そのほっそりとした繊手を頭上に伸ばした。
 途中で言葉を切ったのは、ただ単に恒例の儀式を端折っただけであろう。
 最近では、こんなことまで手を抜きやがる ――― 後にこのときのことを思い出して、柊はひどく憤慨したものだった。
 兎にも角にも、いつもの“お願い”の台詞を中途半端なところで切ったところで、天井からぶら下がった飾り紐を、少女 ――― アンゼロットはぐいっと思い切り良く引っ張った。
 足元の床がパクリと音を立てながら底を抜き、異空間に浮かぶ宮殿から、柊の身体が宇宙空間へと思い切り放り出されたのは言うまでもない。
 ウィザード固有の個人結界、『月衣』の存在がなければ到底できない暴挙に、
「アァァァァァンゼロットォォォォォっ! 憶えてやがれぇぇぇぇぇっ!」
 これもまたお決まりの台詞を叫びながら、柊は真っ逆さまに母なる地球へと落ちて行った。
 現地で協力者を募れ、と最後に笑いながら言い放ったアンゼロットが、ひらひらとハンカチを振りながら自分を見送る姿が視界の片隅に入る。
 そして ―――
 お決まりの手順をお約束通りに踏み、見知らぬ街に叩き落された柊は、現地で待ち受けていたロンギヌスに新しい学生服を手渡され、任務の間、彼が住むアパートへと案内されたのである。
 ならば初めからここの住所を教えてくれればいいものを、と内心アンゼロットに悪態をつくのだが、これもいまに始まったことではないことに改めて気づき、諦めの溜息を吐く。
「追って、任務の詳しい内容は連絡が入るかと思われます」
 ロンギヌスの仮面の向こうから、そんな事務的な調子で言われると、もうぼやく気力も失せた。
 どうして初めに任務の説明をしておかないのか、という愚痴も、この状況では今さらのような気がしないでもない。
 こうして、なんだかんだでいつものように始まった新しい任務。
 任務初日の朝を迎え、任地である瀬戸川学園への通学路を歩む柊は、さっそく異形のものの襲撃を受け、戦いに巻き込まれたわけであるが ―――

「なんだか訳のわからねえことだらけだ ――― ぜっ、と!」
 刀身が閃き、その切っ先が空間を真一文字に薙ぎ払った。耳障りな絶叫と、血飛沫が上がる。
 言葉と同時に振り払われた魔剣の一撃が、踊りかからんとした異形の一体の機先を制し、その胸元を切り裂いたのである。


33 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/23(月) 19:48:47 ID:/+OvPNC9
 訳のわからないこと ――― それはこの異形のものたちの存在である。
 エミュレイターであれば、出現と時を同じくして空に昇るはずの紅い月が見えない。
 周囲に展開されるはずの月匣の存在も、感じられない。
 それなのにどういうわけか、この異様な感覚に満ち満ちた重苦しい大気は、所謂“結界”と同様の働きをしているようで、この戦いの喧騒が外部に漏れ聞こえている様子もないのである。
 しかし、この状況をいちいち検証している余裕は、さすがの柊にもない。
 とりあえず、こいつらをなんとかしなきゃな ―――
 そう思い定め、続く攻撃に備えるために剣の柄を握りなおした柊の視界に、そのとき突如として戦いの場に踊りこんできたものの姿が飛び込んでくる。
「……っ、おいっ! お前、こっち来るな! あぶねえぞっ!」
 柊の顔が一瞬にして青褪めた。彼の視線が捉えたものは、ひとりの少女の姿である。
 いったいなにを考えたものか。
 その少女は、人外のモノたちと、それに対峙しつつ剣を構える柊の姿を見て、逃げ去るどころかむしろこちらへと駆け寄ってきたのである。
 歳の頃は、柊よりも一つ、二つ年下であろうか。
 少し長めの後ろ髪を襟足の辺りで簡単に結んだ、快活そうな顔立ちの少女である。
 身に着けているものは、柊と同様の学校の制服。
 これから彼が通うことになった、瀬戸川学園の女子制服である、と柊は瞬時に察知した。
「私も、手伝うよ!」
 無謀にも、少女はそんな台詞を吐いた。
 その瞳には強い意志の光。迷いのない、よく通る声音。だが、しかし。
「馬鹿ヤロウっ! こっち来るんじゃねえよっ!?」
 つい、柊が叫んでしまったのも仕方のないことであっただろう。相手はなんといっても、見かけは普通の高校生の少女なのである。
(それに、あの手の顔つきと……この手の言動するヤツは ――― )
 困っているから助太刀しよう、大変そうだから私も協力しよう。
 そうやって、考えなしに飛び込んでくるような性格に違いないのである。
 柊は、普段の自分の言動は見て見ない振りをして ――― いや、彼のことだから本当に自覚がないのかもしれないが ――― 戦いの場に飛び込んできたこの少女に、随分と失礼な人物評を下したのだった。
(それにしたって、どう見てもここにいるのは化け物で、襲われている当の俺にしたって、物騒なモンを振り回しているんだぜ?)
 内心でそうぼやく。
(現地の協力者……アンゼロットの言ってたウィザード……ってことなら納得だが ――― )
 そうでもなければ危機管理意識のとことん欠如した、底抜けのお人よしだ。
 普段、自分が朴念仁だの、後先考えなしの猪武者だのと周囲に思われていることなど、彼は完全に度外視している。人間、他人のこととなると物事がよく見える、の良い見本であった。


34 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/23(月) 19:51:50 ID:/+OvPNC9
「おい、お前! 一応訊いとくが、ウィザードなんだろうな!?」
 それならそれで、少女と共闘したほうが簡単に事を済ませることができる。
 違うなら違うで、彼女にはやはりこの場は退場願わなければならない。
 どちらにしても、彼女がウィザードであるかどうかはキチンと確認しておかなければいけないことであろう。
 ところが柊の予想は悪い方向に当たったらしく。
「うぃざ………? なにそれ?」
 こちらに走りこみながら、少女は柊にしてみれば最悪の返答をしたのだった。
 きょとん、とそんな音が聞こえるほど。
 ? というマークが目にも見えるほど。
 ウィザードなんて私、知りません、とでも言うような、あまりにも朴訥そうな顔をして。
「だああああっ!? やっぱり来んなっ! 引き返せよ、おいっ!?」
 叫んでも、もう遅かった。少女の意外なほどの健脚は、ベースボールで二塁を盗むランナーよろしく、戦いの輪の中に滑り込み ―――
 結果として、むしろ柊よりも多くの人外に周囲を囲まれてしまったのであった。
 訂正。
 囲まれたのではない。
 少女は、わざわざ化物たちの密集する地点に、頼まれもしないのに飛び込んできたのである。
 最悪の想像が最悪の形で現実となり、柊の背筋に冷たいものが走った。
 自分の戦いに、なにも知らない善意の第三者(?)を巻き込んでしまった。もしそれで彼女に怪我でもさせてしまったら。いや、それどころか命に関わるような危機に陥れてしまったとしたら。
「……っ、それこそ、悔やんでも悔やみきれねえだろーがっ!!」
 叫んで、大地を思い切り蹴り。一足飛びに少女の立つ地点へと走る。疾風のごとく身を翻し、人外のモノたちの作る壁を突き抜ける。
 鉤爪が。牙が。凶器のごとき長い尾が。
 走る柊に襲い掛かる。
 それを魔剣で受け流し、巧みなステップでかわし、それでも避けきれなかった幾つかの打撃を身体に受けながら。痛みによって漏れそうになる呻きを噛み殺して、柊は走った。
 自分の身体の傷なんてなんということはない。それより一秒でも、いや何十分の一秒でも、あの人の良さそうな少女の前に立ち、自分が盾にならなければ ――― その想いだけで柊は走る。
 しかし。
 地の底から響くような咆哮と共に、少女の眼前に立つ化物のうち一体が、丸太のように太い腕を振り上げ、彼女の頭上へとその凶器を振り下ろした。
「くそっ、間に合わねえっ!?」
 身を切るような思いと共に、柊が叫ぶ。同時に、また“あの悪寒”が肌身を刺した。
 大気に満ちていく、微粒子のような不可視の異物。常識外の違和感。しかし、月匣やエミュレイターの放つ気配とは確実に異なる、未知の感覚。
 そして、柊は気がついた。
 その新しい違和感が、あの少女から発せられているのだということに。


35 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/23(月) 19:53:58 ID:/+OvPNC9
「なにっ……!?」
 思わず、柊の口から驚嘆の叫びが漏れる。

 少女は、身構えていた。
 けっして怖れることなく。背を向けることなく。

 腰に溜めた腕の先端。虚空に開かれた手のひらに無数の輝きが生まれ、また収束していく。
 それは次第に確かな形を形作り、輝きは美しい白銀へと色彩を変えていった。
 光が濃縮され、凝縮され、生まれ出ずるその形は。
 まさしく、柊が手にしたものと同じ ――― 一本の剣の形をしているのだった。
 眩いばかりに光り輝く、一振りの剣。
 それが、ウィザードのように月衣から取り出したものではないことは柊の目にも看破できた。
 周囲の光源を意志の力で掻き集め、戦うための武器を作り出した ――― そんな形容が正しいような気がする。
 あまりにも唐突な展開に息を飲む柊の眼前で、光の剣が煌いた。
 耳障りな悲鳴と共に、瞬く間に胴体を両断される化物たち。
 思わず安堵の息を吐きながら、柊が振り返りもせずに自身の魔剣を背後に突き出した。
 ずぶり、と柔らかいものを貫く感覚。そして新たなる断末魔の悲鳴。
 背後からの襲撃に、柊が無造作に繰り出した魔剣の刺突は、確実に彼に襲いかかろうとして迫り来た化物の急所を寸分狂わず刺し貫いた。
「ったく。戦えるなら言ってくれって」
 頭を掻きながらブツブツとぼやく。そして、
「……まあ、文句を言うのはこいつらを片付けてからにすっか!!」
 そう叫ぶと同時に駆け出した柊と、光の剣を振るう少女が、この戦いを終えるのに、そう長い時間はかからなかった ―――

     ※

 戦いは、思ったよりもあっけなく終結した。
 少女を無力な一般人と思い込み、彼女を助けようと防御や回避を度外視して駆け出した際に、多少のかすり傷を負いはしたが、それ以降柊が負傷することは決してなかった。
 また、少女は少女でこの手の戦いにはかなりの経験を積んでいるようで、怪我どころかわずかな汚れすら制服に負うこともなく、けろりとした顔をしているのである。
「おい、あのさ ――― 」
 聞きたいこと、確認したいことは山積みである。
 月衣に魔剣をしまいながら、柊が少女に声をかけた。
「あ、ごめん、ちょっとだけ待って」
 そんな柊を手で制しながら、少女は謝りつつポケットから携帯電話を取り出し、どこかへと連絡を取り始める。言葉の端々に、「戦いに巻き込まれて」とか、「結構大惨事だよ」とか、「処理をお願いしたいんだけど」とか、そんな言葉が漏れ聞こえてきた。
 おそらく、“この手の事情”に詳しい別の人間 ――― 事件の事後処理能力を持ったものか、そういった類いの人間や組織にコネのあるもの ――― と、話をつけているのであろう。
 わずか四、五分で会話は終わったようで、ふう、と深い溜息をつくと、少女はくるりと柊を振り向いた。


36 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/23(月) 19:56:14 ID:/+OvPNC9
「見かけない顔だよね? 制服も新しいし ――― って言ってもボロボロか ――― 、もしかして君、転入生?」
 こちらから質問をぶつけようとした柊の機先を制するように、少女はそう言った。
 なぜか、その瞳がキラキラと輝いている。期待に満ちた、というか、そんな目の色だった。
「お、おう……柊、柊蓮司ってんだ。今日から瀬戸川に通うことに……」
 こちらに身を乗り出すほどの勢いで尋ねてくる少女の迫力にたじろぎながら、柊は『仮の身分』を名乗ることにする。同じ学園なら、今さら取り繕って適当なことを言うより、半分は本当のことを話しておいたほうが面倒はないだろう。
 それに。
 ウィザードではないにせよ、この少女がなにもないところから光の剣を生み出し、怪物を叩き伏せたのは事実なのだ。いずれにせよ只者ではないだろうし、現地でさっそく協力を仰ぐことの出来そうな人間と出会えたことは幸運であるかもしれない。
「やっぱり! 転入生なんだ!」
 両手をぱちん、と打ち合わせ、彼女は実に楽しそうに、嬉しそうにそう言った。
「この街も来たばかりでしょ? 新しい学校にも慣れるまでは大変かもしれないよね? ね?」
 俺が新しい環境に慣れるのが大変だと、なにがそんなに嬉しいのだろうか?
 訝しむ柊などお構いなしに、少女は早口でまくし立てる。
「困ったことあったら、色々聞いてくれていいからね? それと、買い物代行、テストの準備に探し物、物の貸し借り、先生への交渉、なんでもやるよ?」
「お、おい待てよ ――― 」
「あ、お代は結構。いつか役に立ってもらえればそれでOK」
「そ、そうじゃねえって! 大体、お前、なにもんだっ!?」
 なんだこの女は!?
 どうして俺の周りに居る女や、関わり合いになる女ときたら、どこかこう世間の常識を微妙に逸脱したり、浮世離れした連中ばっかりなんだ!?
 新しい任地でさっそく戦闘に巻き込まれた挙句、最初に接触した人間が“こんな”一風変わった少女であるということに、柊はいつものことながら前途多難の空気を敏感に察知し、激しく落ち込んでいた。
 しかし彼女が柊の内心の煩悶になど、これっぽっちも気づいた様子はなく。
「そっか。私の自己紹介がまだだったね」
 屈託なく、朗らかな笑顔を満面に浮かべると、柊に向かって右手を差し出した。
 それは多分、握手を求める仕草なのだろう。
 差し出された右手と、少女のにこにこ顔を見比べていた柊の手を、少女はぐいっと無理矢理に掴みあげた。
 あまりにも強引な握手である。
 しかし、その一見図々しくさえ見られがちな行動も、彼女の持ち前の明るさのおかげか、決して悪い気分はせず、むしろその単刀直入さが好ましくさえある。
「私の名前は、七村紫帆。瀬戸川学園の何でも屋」
「なん……でも屋……?」
 唐突に耳慣れない単語を聞かされて柊は硬直する。
 七村紫帆と名乗った少女は、その笑顔をますます深めると柊の手を解放し、
「お役に立ちますっ!」
 そう言って自信満々にサムズアップをして見せたのである。

 これが ―――

 ウィザードである“魔剣使い”柊蓮司と、“オーヴァード”七村紫帆の、あまりにも唐突といえば唐突な出会いであった ―――


37 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 19:58:01 ID:/+OvPNC9
以上、投下でした。
晶とかレンのように、近接武器を持って(やっぱり剣状の武器が好み)、
柊と肩を並べて戦える女の子とクロスさせたいなー、という動機がメインで、
紫帆さんをチョイスさせてもらいました。
今回はとりあえず二人の出会い編。
ウィザードもオーヴァードもお互いよく分かっていない状態での邂逅というスタートを切りましたけど、どうなることやら。
それでは、次回投下まで。ではでは〜。


38 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 20:48:37 ID:tdb5sCBT
禁書

39 名前:37:2009/03/23(月) 20:53:19 ID:tdb5sCBT
誤爆……orz

まぁともあれGJー。
紫帆か。ってことはオアシスチワワといいんちょも出てくるのかな?

アライブ後なのか途中なのかは気になる。次回更新を楽しみにしてます。

40 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 21:35:46 ID:MHlVUfJy
乙〜。通常新連載来た、これで勝つるw
といってもまだまだ冒頭部なんであんま感想は書けないな。
紫帆は良いキャラだがそれより柊とメガネさんの絡みを期待w

41 名前:特攻野郎TRPG部@学園世界小ネタ:2009/03/23(月) 23:19:50 ID:cjvlaiEC
GF誌連載で鳴らした私達TRPG部は、次元の混乱に巻き込まれて学園世界に来てしまった。
しかし、トークもせずくすぶっているような私達じゃあない。
ルルブとダイスさえあればでどこでもやってのける命知らず、
不可能をそれなり可能にし巨大な悪を粉砕したりする、私達、学園世界TRPG部!

私は部長、瑞穂桃子。通称モモ。ボディランゲージと妄言の名人。私のような天才テーブルトーカーでなければ、百戦錬磨のつわものどものリーダーは務まらん。

私は瑞穂桜子。通称サクラコ。NPC萌えに、私はみんなにイチコロさ。悪役好きかまして、帝国人から落とし子まで、何でもそろえてみせるぜ。

烏丸サチ。通称サチピョン。キャラメイクの天才だ。ルールブック無しでもメイクしてみせらぁ。でもファンブルだけはかんべんな。

よぉ!お待ちどう。私こそ輪島フミ。TRPGとしての腕は初心者!人外好き?爬虫類萌え?だから何。

私達は、道理の通らぬ学園世界の中であえてトークする。
頼りになる神出鬼没の、学園世界TRPG部!
TRPGをしたいときは、いつでも言ってくれ。

42 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/23(月) 23:23:02 ID:cjvlaiEC
そんな訳で、GF誌連載、単行本一巻も好評発売中なくいっくすたーと!から小ネタでした。

昨日くいっくすたーと1巻を買ったんですが、読んでたらモモが「早くこの学校も異世界に跳ばないかな」とか言ってたんですよ。それじゃあ、と思って色々考えてたら、気が付いたらナイトウィザードと1ミクロンも絡まずこんな有り様に……正直スマンカッタ

ともあれ、きっと彼女達は、今日も学園世界で道行く生徒たちにかたっぱしからダイスを投げたり、生NPCに萌えたり、ファンブル振ってorzしたり、生ドラゴンに萌えたりしていることでしょう。

43 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 00:35:06 ID:vF/+6Wie
三沢大地「ふうう…さすがの俺でも全ての学園SSへの出演は疲れたぜ。
       だが、俺と蓮司ならどんな危機も乗り越えて行けるよな!」

44 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 00:54:46 ID:WA/2vhvX
>>19,24
仮に籍を抜くという手法で個人が帰れるとしても
・籍を抜いた者は学園で学んだりすることを諦めねばならない
・この手法では学園そのものを元の世界に戻すことはできない
・元の世界で新しく学園を作ってもそれが転移してしまう可能性がある
等の課題が残るからやっぱり原因究明が必要なのは変わらないと思う。

学生・教員以外の住人も、元々何らかの基準によって「学園の一部」
みたいに認識されたが為に「学園世界」に転移してきているのだから、
その基準から外れれば〜ってのは因果関係的に変ではない気がする。

>>37
乙。なんでもって実際どこまでしてくれるんだろう。

45 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 01:20:50 ID:zLjDcO7E
国内法と条例、校則に反しない事柄ならなんでも

46 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 01:49:11 ID:hBlFfYqe
>>44
問題点は二つ。
「因果関係が学校の籍にないものは、本当にこの世界からいつでも帰ることができるのか」という点。
「ある一定以上の技術が開発されればこの状態への対処をしなくていい」という点。

この作者氏は、「ある一定以上の技術を有する学校は帰ることができる」と明言してしまっている
その後、帰ることができる学校にそれを隠すように仕向けるようにしてしまっている。
なぜそんなことをする必要がある?
帰る技術さえ確立してしまえばみんなが帰れるのに。これだけ魔法とか超能力とかが公にされている世界にも関わらず、隠す必要はない。
感染症が拡大するから? 違うよな、それは単なる口実に過ぎないと本人が書いてる。
一時の混乱が拡大するよりも、その技術を開発するために今がんばっているというのをアピールするのは大事。
そもそも、帰れるのだという希望を見せるためにそれを公表してしまう方がよほど民衆はおとなしくなる。
帰る能力を持っている人間が複数存在するんだからな。知恵を出し合えば不可能ではないだろう。

そも、なんでこの話の主人公はそんなにみんなに対して不信感しか持っていない上に、他人を信じていないような奴にくれはが論破されてるんだ?


後者。確かに因果関係的にはOKという解釈ができないわけではないけれど。

まず、学生をやめたことを何に対してどう示せばそれは成功するのかが明文化されていない。
単に学校をやめただけで、本当に「その学校の学生でなくなった」と、この世界の律に認められるのか?
それに一般的な生徒は「転校すればいいや」ですんでしまうわけで
そうなった場合、彼らは学校をやめたあと単に技術開発を待てばいい。
新しい学園が―――といっても、まったく同じ方法をすればすぐに脱出できる。根本の解決にならなくても、当座の対策にはなる

そんな状態でこの状態の原因究明をなんとかしようというのは
「学校の運営に関わる者」・「学校という土地がないと不都合の起きる者」・「よほど今の学園生活に愛着を持つ者」・「好奇心旺盛な奴」のみになるな。

ぶっちゃけ緊迫感も足りない、愛着を持つべき日常が個人の考えでいつでも崩れる
その上いつでもその技術が開発されるのを待てばいい
モチベーション上がらないんじゃないかなぁとか言ってみよう。


>>45
……いいんちょとお嬢様とメイドごっこしてください、とかもか?

【馬鹿は生唾を飲み込んだ】

47 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 06:18:56 ID:2ipqZMsi
>>37

通常投下待ってたぜ!まだ出だしだけどかなり好きな組み合わせだから続きが待ち遠しいぜGJ!

ところでダブクロでアパートが出てくるとブラストハンドのアパートを真っ先に想像しちまったぜ
PC1紫帆
PC2レネゲイドいいんちょ
PC3柊蓮司
PC4元祖ブラストハンド

だと信じて疑わない、それが俺のジャスティス(馬鹿は寝ぼけ眼で妄想を垂れ流している)

48 名前:罵蔑痴坊(偽):2009/03/24(火) 08:48:53 ID:WuJNvxDx
籍を抜く、ったって、OBや備品やちょっと手伝っただけのまでいるのに何を今更。

 【誰が出したと思っている】

籍を抜いても、除籍名簿が残る以上は安心出来ない。
それよりは、学校を無くした方が確実だと思うなぁ。

 【ダスクフレアっ面で】

>41
グレッグ・D・白鳥院先輩と先生は?

49 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 09:43:54 ID:v0wMhKT2
学園世界からは居なくなるかもしれない。
けれど、それで元の世界に帰れるという保証はどこにもない。

よく考えれば、悪い人たちが言いそうなことばかりじゃないか。

50 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 10:17:42 ID:hBlFfYqe
>>49
それって、やっぱり保健委員もしくはそれに吹き込んだ誰かが悪役ってことになるんじゃね?
悪役もしくはただの道化ってのは……なんだかなぁ

51 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 11:12:26 ID:V0XZl7NU
>50
保健委員とは別にそれを示唆する悪役を出せばいいのさ。

52 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 12:53:15 ID:hBlFfYqe
>>51
「それ」っていうのは「籍を抜いても帰れるかどうかが実際は不明である」ってことか?

それを示唆する人が現れた場合、保健委員のやったことって単なる無駄じゃないか?
ていうか、帰れる、と明言した以上は確信あってのことじゃないのか?
そんな不確実なことを堂々と宣言した上に、実は不確実でしたってのはマジ暴動が起きる可能性が。

つか、今思ったんだけど「帰って違う学校に入っても、またそこが飲み込まれる可能性がある」なら、帰ることに意味なくないか?
根本を解決しなきゃ外に出ても安心できない、ってなら原因の究明は不可欠。
だったら「いつでも帰れる手段」を提示する意味は本気でどこにもないだろう。

だったら、
・この結界内へ一度入ったら出るのは不可能
・特殊ルールのため、ある一定の手順を踏まないと世界率を解除できない(メタ的な意味で)
・「学校」に所属してない奴は「極上生徒会に所属」扱いになる
とかの方が扱いが楽と思うがな。


拾うのは作家さんだけど。

53 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 13:49:46 ID:YcQvauIn
まぁたしかに、どんな優れた技術、知識、魔術の持ち主でも、一度学園世界に捕らわれたら抜け出せない。
って言い切ってしまうほうが簡単ではあるな。

54 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 16:13:41 ID:E4/dpTjV
そーいえば雛見沢分校が学園世界に来てたけど…
残された雛見沢村の方はやばいことになってるんじゃなかろーか…?

いや、心癒し編を立ち読みしてふと疑問に思ったんで。

55 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 16:36:51 ID:TdTMh1Wm
>>54
GS美神の机の付喪神の愛子に取り込まれた存在は中では年を取らなかったし、さらには元の時代に送り返されていたからなぁ。
確か、愛子がこの世界と融合してなかったっけ?

56 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 16:48:35 ID:E4/dpTjV
おお、そういえば愛子が融合してたな。
となると、事態が無事に収まったあかつきには各々の世界に影響を与えない形で帰還することが出来るのか。

…あれ、なにげに愛子超重要人物になってね?

57 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 17:03:37 ID:vnir/gnX
学校を愛するあまり、自分の世界(NW的に表現すると月匣)を作り出したからなぁ
ルーラーあるいは媒介の可能性は高いかもしれん

58 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 17:16:30 ID:hBlFfYqe
>>57
横島最終戦参加フラグが立ってしまったww

59 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 19:47:11 ID:DhutHZJ8
…何も問題はないじゃないか(NW的に
強いて言えば、現時点では最終戦に参加するモチベーション(というか出番)がない点くらいかねぇ…?

60 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 20:15:56 ID:brKfDtx4
そもそも最終戦まで続くのか?と疑問を持ってみる

61 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 20:25:27 ID:hBlFfYqe
そもそも、終わらせる類のその話を書こうとする人がいないと思われ。
リレーっていうよりもシェアっていうよりもお題ものクラスに繋がり薄いし、設定は固まってないし

62 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 21:47:23 ID:v0wMhKT2
個人的には居酒屋ろんぎぬすとかと同じように
短編でさくっと使える舞台として残ってくれてると嬉しい、かも。

63 名前:休日の過ごし方(同好会編)@学園世界:2009/03/24(火) 22:40:03 ID:aTTMg25d
>>61
まあ、非常に使いやすい設定の舞台だと思う。

>>62
短編からある程度の連載まで使えるしね。

てなわけで、50分から短編を投下します。

64 名前:罵蔑痴坊(偽):2009/03/24(火) 22:44:14 ID:WuJNvxDx
では、そのおおよそ10分後に小ネタを投下予約。

65 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 22:49:07 ID:hBlFfYqe
それはそれでいいんじゃないかな支援

66 名前:休日の過ごし方(同好会編)@学園世界:2009/03/24(火) 22:50:41 ID:aTTMg25d
休日。
学園が転移して出来たこの世界に、休日出勤などと言うサラリーマン的なものは存在しない(一部教師除く)
毎週1度、所により2度は訪れる休日。学園世界において、その過ごし方は様々である。

学園都市や真帆良、蓬莱など“学生の遊び場”が充実している学園に遊びに行くもの。
購買で依頼を受けたり、自主的にダンジョンに向かったりして“冒険”に明け暮れるもの。
“研究者の楽園”ザールブルグアカデミーで学業を忘れてひたすら研究に勤しみ、議論を戦わせるもの。
自らの学園で、次の“学園対抗競技大会”に向けて練習や部活動に勤しむもの。
学園海や学園都市で“アルバイト”に精を出すもの。

そして、彼女、“元ウィザード:至宝エリス”の選んだ、休日の過ごし方は…

―――学園世界輝明寮

「ふんふんふ〜ん♪」
寮のサロンで鼻歌を歌いながらエリスは準備にいそしんでいた。
「飾り付けもお茶の準備もOK。あとは…」
てきぱきと的確に準備を進めながら時計を確認する。
「もうそろそろ来るころだし、出しておこうかな」
とてとてと、寮に備え付けのキッチンに向かう。
完成させて、冷蔵庫で冷やしていたそれを取り出す。
艶やかな“黒”で覆われた、甘い匂いのケーキ。
「うん。ザッハトルテは初めてだったからちょっと不安だったけど、これならお2人にもお出しできそう…あ、生クリーム泡立てておかないと」
チョコレートケーキの王様と称されるそのケーキの出来栄えに満足し、エリスは“お客様”を迎える準備を再会する。
「ホタルさんとシャオちゃんは、今日はどんなお菓子を作ってくるのかな…?」
“お客様”の今日の“作品”に思いをはせながら…

“部活動”と“同好会活動”。この2つは学園世界においては、普通とは異なる意味を持つ。
部活動が“学園内のみで行われる活動”であるのに対し、同好会活動は学園の垣根を超えて集まった、趣味人たちの活動なのだ。
そんなわけで、学園世界には普通のものから奇妙なものまで含む同好会が多く存在する。

和洋中にとどまらず、ファンタジー系未来系魔界系など、様々な分野の料理人たちがその腕を磨き合う『美食倶楽部』
“俺よりも強い奴と戦いたい”をモットーにタイマン限定での真剣勝負を繰り広げる『新白連合学園世界支部』(最近武器の使用も認められた)
学園内に持ち込んでいた様々な世界の漫画、ゲーム、DVDを持ちよって鑑賞、堪能するオタクの聖地『異世界視覚文化研究会』
そこから派生し、分裂した“特殊な趣味”の女子の集団『柊蓮司総攻め同盟』&『柊蓮司総受け連盟』(両者は混ぜるな危険と言われている)

大小様々、玉石混交、多種多様。この学園世界の混沌っぷりを表すかのように、同好会は星の数ほど存在する。
そして、その中に1つに至宝エリスが所属する、幻と呼ばれる同好会があった。

様々な伝説、名勝負、阿鼻叫喚を生んだと語り継がれる大会、『学園対抗競技会パティシエ部門』
その大会において和、洋、中。それぞれの分野のお菓子において“最高点”を叩きだした“お菓子つくりの女王”たちの、たった3人の同好会。

67 名前:休日の過ごし方(同好会編)@学園世界:2009/03/24(火) 22:52:18 ID:aTTMg25d

輝明寮に2人が到着したのは、ほぼ同時だった。
「御苦労さま。軒轅」
美しい銀色の髪を持つ少女が彼女を乗せてきた“星神”をねぎらい、なでる。
「…少し、遅くなってしまいましたね」
寮から少し離れた露地の屋根から華麗に着地し、軽く服装を“着替え”て、ポニーテールの少女が歩き出す。
「こんにちは」
「こんにちは」
のほほんと挨拶をかわしあう、2人の少女。
そして。
「「ごめんください」」
いつものように2人で扉を開けて、中の少女に呼びかける。
「いらっしゃい!シャオちゃん!ホタルさん!」
その2人を、エリスは最高の笑顔で出迎えた。

精密極まりない匠の技と生活に根ざした温かい心使いを併せ持つ“和菓子の達人”雲隠ホタル。
神に祝福されたと評される溢れる才能を、常に努力を忘れない謙虚さで磨いた“洋菓子の天使”至宝エリス。
悠久の中国の歴史と共に歩み、料理の腕を磨き続けた“中華菓子の仙女”守護月天 シャオリン。

『お菓子作り同好会』
ごく普通の名前でありながら、伝説と言われる同好会の会合が、今日もまた始まった。

―――1時間後

「やっぱりシャオちゃんもホタルさんも凄いですね。私なんて、まだまだです」
こころなしシュンとして、エリスが2人に言う。
エリスは恥ずかしかった。お菓子の中でも特に難しいとされるケーキに挑戦して、うまくできただけで満足していた自分が。
やはり、この2人は凄い。エリスは2人のお菓子を食べて改めてそれを感じていた。
エリスが他の2人のお菓子を評する。

「シャオちゃんのお菓子、複雑なのにちゃんと1つにまとまっていて…凄く美味しかったです。それに、なんだか食べただけで元気が出てきたような気がします」
シャオが作って来たのは、八宝飯(フルーツを使った中国のおはぎ)だった。
中華菓子の宿命で見た目に派手さは無いものの、学園世界で取れる“異世界”のフルーツを数多く取り入れ、それを調和させた、絶品。
味だけで無く、食べた後のことまで考え抜かれた薬効の数々は、まさに数千年の歴史と知識の集大成とでも言うべき代物だ。

「ホタルさんのお菓子は…すごくシンプル。それなのに…私、食べた瞬間に“あ、私負けたな”って思っちゃうくらい、おいしさが伝わってきました」
ホタルが作ったのはごくごくシンプルな干菓子。口さがの無い人間なら“砂糖を固めただけ”と言うかも知れない。
だが、その余りのシンプルさはごく僅かなミスも許さない厳格さを持つ。最高の素材の、最高の瞬間。それをわずかでも間違えれば、ここまでの味には仕上がらない。
それを完璧に仕上げられるのは、やはりホタルの“心配り”と“鍛練”がなせる技と言えるだろう。

だが、そんなエリスの評価を聞いて、2人はそれぞれにそれを否定する。

「いいえ。そんなことないです。出来が良かったのは、私が作り慣れたお菓子なのと、材料集めを八穀に手伝ってもらったからだと思います。
 …私はあまり要領がよくないから、エリスさんのように新しいお料理には中々挑戦できないんです」
ふるふると首を振り、シャオが言う。それはシャオの素直な気持ちだった。常に新しいお菓子に挑戦し、確実に上達していくエリス。
今の“主”との交わりから生まれた、自らの“変化”を受け入れるまで大変な苦労をした経験から、シャオはその“変化”を恐れない姿勢に憧れすら抱いていた。

「…私も、今回はあまり自分を褒められないですね。エヴァさ…知り合いから最高級の和三盆を頂き、それを生かしたシンプルなお菓子に仕上げましたので、
 どちらかと言うと腕よりは素材の良さに頼ったものになっていたんじゃないかなって。やはりエリスさんは凄いと思います。
 私も、エリスさんのケーキを食べてどうせならば他のお菓子の材料に使えば良かったなあって思いましたもの」
ここまでの“高級素材”を扱うのは初めて。そのことが材料を無駄にしないことがモットーのホタルに餡に和三盆を使う事をためらわせた。
それが悔やまれる。餡子に和三盆を使って和菓子を仕上げれば、より上を目指せた。そこに踏み込む“勇気”が足りなかった。
“普通の食材”でここまでの味を出すエリスのケーキを食べ、それを痛感したからこそ、失敗を恐れずに挑戦していくエリスが、ホタルには眩しく見えた。

68 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 22:54:17 ID:hBlFfYqe
な……なんという美食家ども支援っ!

69 名前:休日の過ごし方(同好会編)@学園世界:2009/03/24(火) 22:55:35 ID:aTTMg25d
少しだけ、沈黙が訪れる。3人がお互いの味と評価を噛みしめる時間。
「…えへへ」
「…ふふ」
「…くす」
そして、誰からともなく笑いだして、その沈黙を破る。
それがいつものパターンだった。
“知識”のシャオに“技”のホタル。そして“努力”のエリス。タイプの違う達人3人。“友人”であり“ライバル”である3人がお互いに認め合い、高め合う。
その姿勢が、この同好会の最大の特徴である。

それからしばし世間話に花を咲かせる。
「そう言えばさっきのケーキ…どうやって作るんですか?」
きっかけは、その話の中で何気なく飛び出したホタルの発言。その言葉にエリスが首をかしげる。
「ザッハトルテの作り方ですか?」
「はい。マモル様はどちらかと言うと洋菓子の方が好きらしいんです。これだけおいしいケーキならば是非作って上げたいなって」
「あ、私も聞きたいです。太助様に作ってあげたいので」
ホタルの発言に乗る形で、シャオも頷く。よく見ると、2人とも少しだけ、顔が赤い。
その2人を見て、乙女の直感で何となく察したエリスが、自分も顔を赤らめて、言う。
「…そうですね。じゃあ、みんなで作りましょうか。私も、柊先輩に何か作って行きたいなと思っていたところなので」
そして、恋する乙女3人は、いそいそと厨房へ向かった。

―――更に数時間後

「…凄い」
完成した“ザッハトルテ改”の会心の出来栄えに試食したシャオは思わず息をのんだ。
「…そう言えば私たち全員で作るのは、初めてでしたね」
いずれ劣らぬ達人たちの、己の得意分野を最大限に生かした合作。
「…驚きました。お2人が凄いと言うのは十分に分かっていたつもりでしたけど。ここまでとは」
それはまさに最高傑作と言っても差支えない代物だった。
「と、とりあえず、私、部屋に戻ってラッピングの道具取ってきますね」
とにかく、これだけおいしく出来たのだから、柊先輩に早く食べてもらいたい。そう考えてエリスはいそいそと自室に戻る。
次にホタルがぶるぶると震える“任務用”の0-phoneに気づき、言う。
「…すみません。ちょっと電話がかかってきたので、少しだけ失礼します」
そう言うと文字通り疾風のごとく、ホタルが姿を消す。
「あ、そう言えば私も遅くなると伝えないと」
そのことに気づき、携帯電話を持っていないシャオが寮の入口にとてとてと据え付けられた電話へと向かう。
そして、厨房にはわずかな時間、誰もいなくなった。

「…うお!?こりゃすげえ!」
…“人間”は。

70 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 22:58:37 ID:hBlFfYqe
あ、あいつか……
死亡フラグ支援

71 名前:休日の過ごし方(同好会編)@学園世界:2009/03/24(火) 23:00:15 ID:aTTMg25d
そして数分後、事件は起こった。
「け、ケーキが食べられてる!?」
エリスが驚きの声を上げる。
みんなでつくったケーキが、何者かに食い荒らされていたのを見て。
「いったい誰が…」
(ルーアンさんは今から先生がたの飲み会に行くって張り切ってましたから、違いますよね?じゃあ…)
「ほかの人が入った形跡はありませんね」
(先ほどの電話では山芽さんと耳之介はタバサさんと任務に出ていると言う話ですし…となると…)
エリスの言葉を受けお互いやらかしそうな“身内”の顔を思い浮かべながら、シャオとホタルは考える。
そして。
((…部外者!?))
ほぼ同時に同じ結論に至る。
「とにかく、今は犯人を逃がさないようにしないと!」
「はい!任せて下さい!」
ホタルとシャオが頷き合い、連携して行動を開始する。
「…天、明らかにして、星、来たれ…」
懐から古びた“環”を取り出し、シャオが朗々と吟ずる。
「月天は心を読ませたり…」
心清きものの前に現れ、主を不幸から守ると言う月の精霊、守護月天。
「…来々、塁壁陣!」
彼女に仕える星神の一柱。何人たりとも通さぬ結界を作り出す星神で持ってシャオは辺り一帯を封鎖した。

「なんだこりゃ!?通れねえぞ!?」

ざっくばらんな口調の可愛らしい声をホタルは聞き逃さない。
傍らにあったケーキ用のフォークを取り、目を閉じる。
視覚など、必要ない。音の方向と気配…それさえ追えれば、外したりは、しない。
「はぁ!」
そして、弾丸の如く飛び出したフォークが。
ビィィィィン
床にささり“それ”を床に縫い止めた。

「くっそ!何しやがる!あぶねえじゃねえか!」

うまく見動きが取れず“魔法”が使えないことに焦りながらそれは悪態をつく。
手のひらに乗るくらいの小さな身体。三角帽子とぷくぷくとしたまんまるほっぺ、そして手にはマラカス。
それの正体は…
「「「妖精さん!?」」」
「…おい!?お前らもしかして俺が見えてるのか!?」
3人の言葉に“妖精の王子ミルモ”が驚愕して聞き返した。

72 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 23:01:45 ID:WuJNvxDx
ゴメン、誰だったっけ?支援。

73 名前:休日の過ごし方(同好会編)@学園世界:2009/03/24(火) 23:02:22 ID:aTTMg25d
―――学園世界B−38区画付近

「それにしても驚きましたね」
「ええ…まさか妖精さんの“学校”があるなんて」
「私も、精霊ですが精霊学校と言うのは聞いたことが無かったので、気づきませんでした」
この区画に昨日転移してきたと言う、その“学園”を訪れた3人が口々に感想を口にする。
妖精界にある“妖精学校”。当然通っているのは妖精のみだ。
本来妖精は妖精と契約した人間にしか見ることができないと言う。
だから“人間”がたくさんいても声をかけず、冒険していたところ、あのケーキを見つけてついつまみ食いをしてしまった。
それが先ほど出会った妖精、ミルモの弁だった。
あの後、ミルモに案内されて、3人は妖精学校を訪れていた。
今日作ってきた各々の“作品”と食い荒らされたケーキを持って。
妖精はみな、お菓子が非常に好きだと言う話で、大変喜ばれた。
「…そう言えば、お2人は、“これ”使いますか?」
ふと、何気ない様子を装ってはいるが少し赤い顔で、エリスは妖精たちに託されたものについて、2人に問う。
「…えっと」
「…ひ、秘密です」
他の2人も顔が真っ赤だ。

『あんがとな。お礼っつっちゃなんだが、こいつをもってけ。このマグカップがあれば、妖精を呼び出して契約できるんだ。
 …何ができるかって?そりゃあおめえ俺らがやる手伝いっつったら“恋”に決まってんじゃねーか。
 俺は楓の恋をかなえたから修業は終わってるが、他の奴はまだだからな。いつでも呼んでくれ』

そう言われて1人1つ妖精のマグカップを託された。使えば妖精が“恋”を応援してくれると言う。
恋する乙女であるところの3人には、とても嬉しい特典だ。
「ちなみに、エリスさんは…?」
ホタルがエリスに聞き返す。
「えっと、その…ひ、秘密です」
その問いに、耳まで真っ赤になりながら、エリスが俯いた。

全員、色々と考えながら、黙って居住区を目指し歩く。その空には、月と、いくつもの星が瞬いていた。

その後、彼女たちが妖精と契約したのか、恋の行方はどうなったのかは…秘密です。

―――― 一方その頃。

「ええい何をするこの下がる男め!それはわらわがヒョロ夫のために作ったものだぞ!貴様が食ってどうする!?」
「そ、そうですよ!それは神様のために作ったものです!柊さん、食べちゃ駄目です〜!」
「柊蓮司。それは命のためのもの。だから、食べちゃ、ダメ」

「黙れお前ら!ってかよく見ろ!どう見ても俺が“喰われて”んだろ〜がああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

様々な伝説、名勝負、阿鼻叫喚を生んだと語り継がれる大会、『学園対抗競技会パティシエ部門』
その大会においてそれぞれの分野のお菓子において“評価不能”を叩きだした“お菓子つくりの大魔王”たちの、たった3人の同好会。

その“作品”と某極上生徒会特別執行委員が文字通りの意味で喰うか喰われるかの戦いを繰り広げていたのだが、それはまた、別の話。

74 名前:休日の過ごし方(同好会編)@学園世界:2009/03/24(火) 23:04:09 ID:aTTMg25d
今日はここまで。
ちなみに作者にはお菓子の知識はあんましありません。wiki等を参考に書きました。

ところで。

次回、構想中のお話、“リオン=グンタ”がえらく弱体化しているって設定なんですが、書いても良いものですかね?

75 名前:罵蔑痴坊(偽):2009/03/24(火) 23:07:00 ID:WuJNvxDx
>74
乙。ミルモは……『ミルモでポン』だっけ?

リオン弱体化……そのくらいの設定は構わないでしょう。

さて、15分ごろに小ネタを投下します。

76 名前:特別執行委員異聞@学園世界:2009/03/24(火) 23:14:13 ID:WuJNvxDx
 極上生徒会特別執行委員。
 繰り返すようだが、異能者揃いの学園世界でもとびっきりの曲者達である。

  ※  ※  ※

『懺悔の値打ちもありゃしない』

 執行部棟には教会がある。主に回復用だが、懺悔室もある。例えばこう。

要いのり「懺悔します。風林館高校の久能校長と大門高校の藤堂校長を間違えてしまいました。てへ」
オデ娘「許します。てゆーか、あのグラサン親父どもは見分けなくても良いさね」

「懺悔します。ジジイ四天王に対抗したオヤジ校長四天王が、上の2人とメック戦士養成校のヤスダ校長から先思い付きません」
「代アニの元学院長、三遊亭楽太郎師匠など如何でしょう?」

カミジョー@エロバカ学級日誌「懺悔します。偶然佐々木絵真のパンチラを目撃したのに、撮影し損ねてしまいました」
ファンクラ部「「ゆ、許せるかぁぁぁっっっ!!!!」」

  ※  ※  ※

『対抗策』

 アゼルが絶賛ラブコメ中の『とある世界の騒動日程』、そんな彼女に対抗出来るとしたらという、ちょっとしたifの物語。
 作者さんがお気に召さなかったらゴメンなさい。

「やあ、R・田中一郎君だよ」
「ど、どうしてあなたは消えないの?」
「ふっふっふ、
 誰も、この僕がいる事を止める事は出来ないのだ」
「……いるだけじゃねーか!」

「ふっふっふ、この八神はやても消える訳にいかへんで。中の人的に」
「おお、コレは頼もしそうだ」
「ちゅーわけで、乳揉ませてもらおーかい」
「それが目的かよ!」

「えーい、中の人的に鈴木銀一郎先生をお呼びしよう」
「作家先生と学校の先生は違う!」

「DEAの中島純一郎先生は……」
「最早何の話だかわからなくなってませんか?」

77 名前:罵蔑痴坊(偽):2009/03/24(火) 23:17:37 ID:WuJNvxDx
はい、小ネタ終了。お気に召さなかったら流して流して。

オヤジ四天王、マジで四人目が思いつかないので、誰か補完して下さい。

それから、前スレ>385もまとめに入れて頂けると幸いです。

78 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 23:38:38 ID:hBlFfYqe
>>74
うーん、ガトーショコラは確かに難しい類のケーキだなぁ
卵白は別立て必要だし、ココアは二度は振るわないとダマになるし……
ぶっちゃけ個人的にはシフォンが一番難しいと思うけど。(別にどうでもいい)
中華菓子は確かに地味になりがちだなぁ。単色になるか、逆に雑多に色が入りすぎて地味になる。
ゴマ団子しかり、杏仁豆腐しかり、きちんと作るとめちゃくちゃ手ぇこんでたりするんだけどなー。おいしいんだが。

和菓子は……難しいっていうか、基本は職人芸だよな(汗)
家庭でやれるものとなると水羊羹とか、大学いもとかになる気が……つーか家庭で干菓子とかドンだけ級だと思われ。

ともあれ乙。出展も書くとよいのでは?

79 名前:休日の過ごし方(同好会編)@学園世界:2009/03/24(火) 23:44:10 ID:aTTMg25d
>>78
今回エリスがザッハトルテを作ったのは、ミルモにつなげるためだったりします。

そして出展は…

“和菓子の達人”雲隠ホタル@陰からマモル!
“洋菓子の天使”至宝エリス@ナイトウィザード!
“中華菓子の天女”守護月天シャオリン@護って!守護月天

“妖精の王子”ミルモ@わがままフェアリーミルモでポン!

“お菓子作りの大魔王”の3人@小ネタにつき割愛

となっております。

80 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/24(火) 23:47:14 ID:hBlFfYqe
>>79
ついでだから学校名も。
太助とかシャオとかすごい懐かしいww

81 名前:休日の過ごし方(同好会編)@学園世界:2009/03/24(火) 23:53:13 ID:aTTMg25d
ホタルが浅間山高校、エリスは言わずと知れた輝明学園、そしてシャオが鶴ケ丘中学校ですね。
…正直調べて初めて知ったわ月天の学校名ってw

82 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 00:11:46 ID:NGq/wW1t
護って!守護月天…懐かしいな。
中途半端に終わって残念に思った記憶がある。
最終回は見たけど、結局太助とシャオの恋の行方ってどうなったんだろうな?

わがままフェアリーミルモでポン!…結構面白かったな、あのアニメ。
少女漫画も馬鹿には出来ないよな。
だぁ!だぁ!だぁ!とか。
NHK繋がりだと、学園戦記ムリョウやカードキャプターさくら、飛べ!イサミもあったな。

83 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 01:14:41 ID:bzKGtTQH
確か守護月天の小説を書いたのは
藤咲あゆな氏だったよな。

84 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 01:29:54 ID:zemWHVvv
>>74
ミルモが出てくるとは思わなかった。GJ!
たしか2年半ぐらいアニメやってたよなぁ<ミルモ
北斗…もとい、ひと美の怪演が面白かったなぁ

85 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 01:40:13 ID:VdkwdZ8H
太助とシャオは続編で両家の母親公認の仲になったのを憶えている。
そして藤咲あゆな氏、小説もか。脚本にいたのは知ってたけど

86 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 01:41:49 ID:e0FFKIUj
おおー、色々投下されとるー。

まずは>>1乙。

>保険委員
設定自体はよく考えてあるとは思うけど、細かいところで色々と気になる……というか、
くれはに対する説明の仕方とか、ぶっちゃけ「こんな簡単なことも気付かないのかねぇチミィ」と
いわんばかりの書き方でU−1臭が鼻につく。

>>37
新シリーズ投下乙です!
色々と楽しみな組み合わせで、今後とも期待しています。
次はウィザードとオーヴァードのコンタクトですね。
こーゆー、(ある意味)異文化交流でのすり合わせ、みたいなシーンは特に楽しみです。

>>41
先生 TRPGがしたいです……。
あ、間違えた。正しくは
先生「TRPGがしたいです……。」でした。

>>74
乙です!
サバイバルとかドタバタとかもいいですけど、こういう穏やかな交流も和みますなー。
ってか、魔王組……w





87 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 03:20:46 ID:vySPcQg9
シャオ! 俺の二次元の初恋の相手じゃないか!
あぁ、思えばここから道を踏み外したんだったなぁ……

88 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 09:23:05 ID:7zvyMeaB
ザッハトルテがなぜかジャバザハットに見えた俺は柊といっしょに食われて来よう……

89 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 10:36:02 ID:VqJAjyTs
遅レスだが。

>>53
個人のものならともかく、たくさんの人が関わるなら状況は簡単な方がいいと思う
イメージの共有がしやすいからね

90 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 11:41:33 ID:mAWmUmf9
ふむ・・・ザッハトルテで爆れつハンターを思い出したのは俺だけと見える

91 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/25(水) 18:43:35 ID:LhA5qfJQ
>66
>『柊蓮司総攻め同盟』&『柊蓮司総受け連盟』

ちょw

92 名前:平日の過ごし方(部活動?編)@学園世界:2009/03/26(木) 03:24:33 ID:1k3yzOjj
>>75の意見もあったので、短めのネタを投下。色々アレな設定が増えているので、駄目な人はスルーでお願いします。

とまあそんな前置きをしておいて。

“case2-3 平日の過ごし方(部活動?編)” 3時半に投下します。

93 名前:平日の過ごし方(部活動?編)@学園世界:2009/03/26(木) 03:30:21 ID:1k3yzOjj
休日。
学園が転移して出来たこの世界に、休日出勤などと言うサラリーマン的なものは存在しない(一部教師除く)
毎週1度、所により2度は訪れる休日。学園世界において、その過ごし方は様々である。

学園都市や真帆良、蓬莱など“学生の遊び場”が充実している学園に遊びに行くもの。
購買で依頼を受けたり、自主的にダンジョンに向かったりして“冒険”に明け暮れるもの。
“研究者の楽園”ザールブルグアカデミーで学業を忘れてひたすら研究に勤しみ、議論を戦わせるもの。
居住区で、出会った異世界の同好の士たちと様々な“同好会活動”を行うもの。
学園海や学園都市で“アルバイト”に精を出すもの。

だが、ちょっと待ってほしい。
実のところ、これらの活動は“平日”にも繰り広げられている。
授業終了から、寮に帰って寝るまでの時間。
学園世界の学生たちは各々好きなように様々なことをして過ごす。

これは、とある高校の“色々”の様子を現した物語。
そして、“彼女”の平日の過ごし方は…

―――県立北高校

ペラ…ペラ…

「平和だ…」
いつもの喧騒とはほど遠い、静かなSOS団の部室を眺めながら、俺は束の間の平和を噛みしめていた。
(ハルヒの奴、今頃あいつらと何やってるんだろうな…?)
放課後になってすぐ、我らの団長様こと涼宮ハルヒは鶴屋さんが連れてきた“他の学校”の奴らと出かけてしまった。
まあ、どうせどっかの学園都市か居住区にでも遊びに行ってるんだろう。
『キョンは留守番!今日は女の子の日だから!』
とまあよく分からない理由で置いてかれたわけだが、俺としてもハルヒにつきあうのは休日の“ガチで不思議が見つかる不思議探索”だけで正直お腹いっぱいなので問題はない。

ペラ…ペラ…

(…ま、平和なのは良いことだ。これで帰れれば文句は何一つなかったんだが)
内心の思いを胸に溜息をつく。
長門が言うには、今の俺らは“学園世界人”とでも言うべきものになってるらしい。
そのためか“世界を大いに変える”ハルヒの“能力”もその影響が及ぶのは“学園世界”の中のみであり、今の俺らにとっては“異世界”となる元の世界へは影響が与えられない。
まあ、俺には正直詳しいところは理解できないが、ものすごくかいつまんで言うと要するに“ハルヒの能力はそのままだがハルヒがいくら望んでもそれだけでは帰れない”らしい。
『また、今回の現象は涼宮ハルヒの能力の介在していない現象であると推測される。よって涼宮ハルヒに真実を明かすのは、危険』
そんなわけで相も変わらずハルヒの奴には色々と秘密にしておこう。
“宇宙人”も“未来人”も“超能力者”もいて、更に言えば住人の99%は“異世界人”である学園世界にいることと“SOS団の仲間”が実はそうでしたと言うのは別物。
それがハルヒを除くSOS団の5人で話し合って出した結論だった。


94 名前:平日の過ごし方(部活動?編)@学園世界:2009/03/26(木) 03:35:18 ID:1k3yzOjj
そして、本日。SOS団のメンバーはそれぞれに用事があって部室には来ていない。

ペラ…ペラ…

長門は執行部の助っ人として放課後早々に管理棟に出かけて行った。
『どこの学園組織にも属してなくて事務ができる人ってすっごく貴重なんです!お願いします!手伝ってください!』
まさかうちにあの極上生徒会の執行部がスカウトに訪れるとは思っていなかったから最初は驚いた。
何かどっかの集まりだか何だかで長門の素晴らしい処理能力を見てスカウトを決めたのだと言う。
それで、ハルヒの勧めもあって長門はそれを了承し、時々、執行部に手伝いに出かけている。
現場には出ない事務要員だが、長門ならば例え現場にでても余裕だろうから、問題無いだろう。

ペラ…ペラ…

古泉はいつものように携帯で連絡(最近機種変したらしい)を受け、“組織”の“アルバイト”があるとかで帰って行った。
最初はいつものことなので気にも止めて無かったがよく考えたら学園世界にいる古泉の“組織”の人間は、古泉をいれても5〜6人しかいない上に北高内部に全員いるということになる。
だったら一体こいつはどこでなにしてんだと疑問に思ったがどの道聞いてもはぐらかされるだろうし、そもそも元の世界の古泉の組織のことも俺はよく知らない。
つまりは今までとその辺はあんまり変わってないわけで、気にしてもしょうがない。
なので別段聞いたりはしていない。

ペラ…ペラ…

朝比奈さんは学園世界に山ほどある同好会の1つ、“メイド技術向上委員会”のとやらの集まりに出かけて行った。
最初はメイド趣味の男女がわいわいやっているものかと思っていたが、朝比奈さんが言うには“超本格派”だと言う話だ。
なんでも実際にトリなんちゃら学校で働いているメイドやらメイドの養成学校であるガルなんたら学園の生徒やらがいて、心遣いやらをなんやら磨いているとかどうとか。
冷静に考えると別に朝比奈さんはメイドでも何でも無いわけなのだが、まあ、朝比奈さんらしいと言えばらしい話である。

ペラ…ペラ…

そんなわけで、我らがSOS団の部室には静寂に満ちていた。
聞こえてくるのは時折ページをめくる音のみ。
メンバーが2人しかいないとこうも静かになるものなのか。
「…そう言えば、群田さんはどこか出かけたりしないんですか」
なんとなく暇を持て余し、今日唯一俺以外で部室に来ている、“6人目”のメンバーに話しかける。

ペラ…パタン。

「はい。今日は部室でゆっくりこれを読もうかと思っていましたので」
その言葉に反応し、いつもの本を傍らに置き、『蓬莱学園島内鉄道大百科』と書かれた本を読み終えた、
我らがSOS団の6人目にして“異世界人”、群田理生(むろたりお)さんが顔を上げて、俺の問いに答えた。


95 名前:平日の過ごし方(部活動?編)@学園世界:2009/03/26(木) 03:39:07 ID:1k3yzOjj
「そう言えば、群田さんは異世界人なんですよね?」
「はい?そうですけど、それが何か?」
本を読み終えて俺と同じく暇になった群田さんと俺はしばし雑談に興じていた。
その中で、ハルヒの奴がいないと言うチャンスを生かすべく、俺は前々から気になっていたことを聞いてみた。
まずは少し遠周りに、さりげなく。
「群田さんのいた“世界”の“学園”は転移してきてたりはしないんですかね?」
この、長門とは別方向でミステリアスな雰囲気を持つ異世界人。
その群田さんがいた“異世界”がどんなところなのか。少しは…いやかなり興味がある。
だが、群田さんは俺の問いにふるふると首を振る。
「いいえ。それは無いと思います」
完全否定。しかも断言された。
「そうなんですか?」
「はい。“私の世界”に“学園”と言うものはありませんでしたので」
「…あ、なるほど」
そもそも無いならそれが転移してくることも無いわな。海よりも深く納得し、ぽんと手を打つ。
考えて見れば当然の話である。
そりゃ異世界つったって色々あるのだ。その中には学校の無い世界ってのがあったっておかしくない。
群田さんはそう言うところの出身。つまりはそう言うことなのだ。
それが分かっただけでも少しは収穫があったのかも知れない。
「…ただ」
「ただ?」
そうして納得していると、群田さんがぽつりと呟く。
「“近しい世界”の学園なら転移してきてますが」
「へえ。どこなんですか?」
それなら群田さんがいた世界がどんなところかも分かるかな。
そう考えて、詳しく聞いてみる。
だが、そこで群田さんが答えた学園は、予想外のところだった。
「…A地区にある、輝明学園です」
「…マジですか」
「マジです」
あの“ウィザード”とか言う万国びっくりショーな方々のいる学園が近いと聞き、俺は驚く。
群田さんのいた世界って一体…
「…それと」
「まだあるんですか?」
「はい。実は…私の世界の“仲間”がこの世界に“転校”してきたみたいです」
んな無茶な。わざわざ転校て。
「なんでまた?」
「さあ?…ああ、“なぜならその方が面白いだろう?リオン”だそうです。そう、この書物に書かれていました」
いつもの本をしげしげと眺めながら、群田さんがまるで話しかけられているかのような文体を読み上げる。
「…実にあの方らしいですね」
そして、それを遠い目をして、どこか嬉しそうに言う群田さん。

そんなわけで俺の“群田さんのいた世界ってどんなところ?”と言う疑問は更に深まることとなったのだった…

96 名前:平日の過ごし方(部活動?編)@学園世界:2009/03/26(木) 03:44:46 ID:1k3yzOjj
以上○○と秘密の本case2-3。学園世界ネタ付きでお送りしました。

>>82&>>84
割と懐かしい話を引っ張って来るのが好みだったりします。

>>83&>>85
おや、意外なつながりがあるものですね。

>>86
3人とも『評価不能(訳:食べられません)』を『評価不能(訳:点数をつけられないほど素晴らしい)』と解釈したつわものばかりですw

>>87
ガンガンってマイナーだけど良い漫画が多い気がします。

>>88&>>90
人名に聞こえますよねあれ。

>>91
学園世界の有名人なもんで自然と…ちなみに両方とも本人にはばれないようにするのが鉄則らしいです。
彼がSANチェック失敗して動けなくなると、色々大変なのでw

97 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 07:07:09 ID:SlVVrw0Y
執事の学園…キースの通ってた「岬の楼閣」を想像して変態魔術に目覚める他の執事キャラを想像しちまった

98 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 13:31:58 ID:ZtT9R4qy
>>96
乙。
リオンとキョンのやり取りが目に浮かぶw

極普通に学生満喫してる彼女がまぶしいです。
このまま普通に生きていってほしいw

99 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 13:36:25 ID:TArGqCtY
>>96
GJ!! 読書好きな”宇宙人”はでかけてるっていうし、一体誰が……? と思ったら”異世界人”さん! あんたかよ!(大爆笑)

100 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 15:05:57 ID:+JCHiDQP
tesu

101 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 15:09:53 ID:+JCHiDQP
sage忘れた……orz

まぁともかくちょっと外伝的な話が思いついたのでネタ満載でお届けしてみます。
さぁ、君はいくつのネタがわかるかなっ!?

ではどぞー。

102 名前:「執行委員の〜」外伝・『報道委員の羽撃(はばたき)』@学園世界:2009/03/26(木) 15:11:30 ID:+JCHiDQP
 学園世界が成立し、しばらくたったある日のこと。
 全学校にモニターが配られ、それが配備される運びとなった。
 純粋にファンタジー的な学校にとってはそれは興味深いものだったらしいが、大本の科学技術に霊脈経路を備えるそのモニターは魔法学的な技術も取り入れられていた。

 学校の職員室や食堂、講堂など人々の溜まり場になる場所には必ず設置され、学生の居住区にも多く設置されたそのモニターは、
「極上生徒会」の命によってとりつけられたものだ。

 全区画がモニター設置に少し浮き立った雰囲気になっているその頃、学園世界内で最も大騒ぎになっている場所があった。
 その場所はB−1027というIDを持つ場所。
 建物の名を、『報道委員会棟』といった。


「カメラは配備OK!?」
「放送用原稿間に合ってるのかコレっ!?」
「はーいはいはいちょっとどいてー! キャスター様のお通りだよー!」

 普段、『週間極上生徒会通信』こと『ごくつぅ』の編集を行っているその場所は、今日はやけに騒がしい。
 この部屋で普段『ごくつぅ』の製作を行っているのは4人+1人だ。

「機材のセット、完了したよー」

 濃い浅葱色の髪の、赤い眼鏡を頭に乗せた少女―――火野国中学3年・通称『自白剤』森 あい。

「原稿の校正作業も終わった。……こういうのはこんなギリギリまで引っ張るのはよくないと思うのだがな」

 くすんだ灰色の髪の、銀縁眼鏡の落ち着いた様子の少女―――穂群原学園高等部3年・通称『軍師』氷室 鐘。

「おーし、なんとか間に合ったってことでオーケー?」

 やたらめかしこんだ赤い髪の勝気そうな少女―――麻帆良学園都市内麻帆良学園中等部3年・通称『ブンヤ』朝倉 和美。

「朝倉、早く席についてくれよー。中継先のリンクは大丈夫そうか?」

 制服のローブを邪魔そうに腰で縛っている少年―――エルクレスト=カレッジ2年・通称『リーダー』アルヴィン・ケンドール。
 朝倉に目線を向けたアルヴィンに、彼女は大きくサムズアップ。
 本人がそう言うなら、と大きく頷きアルヴィンはカメラに合図。麻帆良学園製のお手伝いロボ・チャチャU(ツヴァイ)がカメラを回す。
 氷室がストップウォッチを握り、森がスケッチブックを持った。アルヴィンが指でカウントを取る。
 そのカウントがなくなるのを確認すると同時、朝倉がとびっきりの営業スマイルとともになめらかな口調で喋りだす。

「―――さぁっ! いよいよ始まりました学園世界報道委員会TV略してGIT!
 わたくし、メインパーソナリティを務めさせていただきます麻帆良中等部3年・極上生徒会内報道委員会所属朝倉です。どうぞよろしく。
 今日からこの学園世界内で起きる事件から、各学校における有名人密着ドキュメントまで。
 学園世界における全ての情報はこのTVをつければわかる、くらいの勢いでいきたいと思いますっ!
 合言葉は―――」

 そこで朝倉は拳を握り締め、力強くウィンクしながらガッツポーズ。

「―――『それがどうした』っ!!!」



103 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 15:13:55 ID:ZtT9R4qy


104 名前:『報道委員の羽撃(はばたき)』@学園世界:2009/03/26(木) 15:14:07 ID:+JCHiDQP
 朝倉の唐突なその言葉に、しかし氷室は口元を緩め、森はまったくと溜息をつき、アルヴィンは楽しそうににやりと見せて笑う。
 その言葉は、この報道委員会が生まれた時に掲げたスローガンだ。

 どんな苦境に立たされても、真実を捻じ曲げる強力な圧力に対しても、全てを敵に回した時でも、諦めないきっかけをくれる言葉。
 『無冠の帝王』と呼ばれる報道に携わる者の1人として、真実を伝えることをけして諦めることのないように。
 そして、なによりも。

 朝倉がいっそわざとらしいほどににたり、と笑ってモニターに向けて語りかける。

「ん? どーしたのかな? 合言葉って言ってる以上、みんなも言わなきゃ。
 ほーらいくよ―――『それがどうした』!」


 この土壇場での諦めを捨てる言葉を、自分達の手で世界中に広げようと。


 うんうん、と頷いて朝倉はモニターの向こうに向けて、実際の原稿を読み上げる。

「さて。そんな感じで始まりましたGIVですが、実はかなーり人手不足です。
 正直な話、猫の手でもいいから借りたいくらい手が足りてません。この放送を見て力になってやろう、と思った方は是非ともこちらへご一報を」

 言いながら、テロップを指すつもりで空をなぞる朝倉の手。
 事実、放映されている映像はちゃんとテロップを指している。対した報道魂である。



105 名前:『報道委員の羽撃(はばたき)』@学園世界:2009/03/26(木) 15:15:11 ID:+JCHiDQP
「では、宣伝も終わりましたところで。GITの本日のプログラムを紹介させていただきます。
 この後9:10よりGIT発足に際し、『極上生徒会』の一員・陣代高校代表林水会長よりお言葉をいただきます。

  9:20より、『今日のニュース』
 私、朝倉がこの世界で昨日あったことをこちらのスタジオよりあっさりさっくりと振り返ります

 10:00より、『課外授業 ようこそ学校』。
 本日は学園世界でも屈指のマンモス校の4校『輝明学園』・『学園都市』・『麻帆良学園』・『ザールブルグアカデミー』のご紹介です。

 12:45より、『学園世界ノド自慢決定戦』。
 今回の会場は麻帆良学園都市世界樹前。麻帆良学園の皆さんも、そうでない皆さんもどうぞふるってご参加ください。

 14:00より、『命を守る! −明日を生きるための危険ブツ講座−』
 この学園世界には、楽しいこともあるにはありますが危険ブツも山ほどあります。
 そんな危険ブツどもに関して、銀魂高校国語教師『坂田先生』と謎のアドバイザー『ドクロ仮面』氏が熱弁を振るいます!

 15:00より、『魔法少女みこみこくれは −Ss(シューティングスターズ)−』
 輝明学園理事長代理・「赤羽くれは」女史によく似た少女が、街ごと敵を粉砕玉砕大喝采! 人気シリーズの第2期放送、はじまります!

 15:30より、『先生でいこう!』
 この学園世界にいるのは当然学生だけではありません。先生達だって、学生さんたちに言いたいことの一つや二つや三つはあります。
 先生達の熱い思いのたけを屋上から吐露してもらおうという特殊な企画、今日はE−57区にある高校の先生達に叫んでもらいます。
 谷崎先生と黒沢先生のお話は必聴! ばりばり本音トークが聞けます!

 16:30より、『学園世界謹製ユニット発信番組 ☆MAOYAN☆』
 この企画をふったらノリノリで答えてくれた謎の美少女P・『B・フライ』女史、巻き込まれた『真壁 翠』さん、『島』くんが、学園世界でユニット作成を画策。
 明日の世界のアイドルを目指すあなた、オーディションへのご応募待ってます!

 18:00より、『マスコット大集合・生物奇想天外』
 今回はC−03地区桃月学園の不思議なナマモノ達と、隣接しているC−42地区のある中学校内で大人気の神獣・『ポン太』くんの紹介です。

 19:00より、『相坂 さよの学校探訪』
 我が相棒、相坂 さよによる学校レポートです。本日は今、生徒会と不良グループが凄まじい抗争劇を起こしていると有名な「虹の瀬中学」の紹介です。
 ……アディオス、さよちゃん。

 19:45より、『学園世界の車窓から』
 このテレビ放送の開始が決まると同時、真っ先にオファーのあったNN(ナレーションネーム)『Y木R香』さんによる、鉄道の旅の風景です。

 20:00より、『夜のニュース』
 再びわたくし朝倉が、今日一日起こった出来事を振り返ります。

 えー、事実人手が足りないため、しばらくは朝9:00から夜21:00、そして緊急報道のみを行わせていただく流れになっております。
 チャンネルは、そのまま! って、変えようがないんですがねー!
 では、心行くまでお楽しみくださいっ!」

 朝倉の決めポーズと共に、画面を切り替えるチャチャU。

106 名前:『報道委員の羽撃(はばたき)』@学園世界:2009/03/26(木) 15:16:01 ID:+JCHiDQP
 氷室がストップウォッチを止める。
 森がスケッチブックを片付けて立ち上がる。
 朝倉が席を立つ。
 アルヴィンがにやりと笑うと、言った。

「始まっちまったな。まぁ―――はじめた以上は、全力を尽くそうか」
「リーダーはもうちょっと計画性があればいいのにねぇ」

 にひひ、と笑いながら朝倉。その割に、彼女の顔に咎める色はない。
 腕を組みながら氷室が言う。

「まったくだ。チャチャたちがいなければ今日この放送にたどり着くことはできなかっただろう」
「アルヴィンのやりたいことはわからないでもないけど、もうちょっと考えて動いてほしい。
 あとあたしの能力変なことに使わせないで」

 少し憤慨したように森。……ついたあだ名が『自白剤』なのはちょっと気にしてたらしい。
 とはいえ、彼女達はアルヴィンの考えに共感してここにいる。
 すなわち『好奇心に素直に』。『それが人の役に立てばなおよし』。
 興味深いこの世の全てのことを知りたい、という欲求。探求者のその衝動は、簡単に止められるわけもない。
 そして『報道』というのは、『人に正しいことを教えたい』という考えから生まれるものだ。

 アルヴィンは、照れたように笑って手を出し、円陣に手が載せられていく。

「じゃあ、これからも頑張ろうぜ『報道委員』!」
「望むところだよっ!」
「乗りかかった船だな」
「まぁ、嫌じゃないし」

 おー! と4つの声が報道部室に響いた。



 ここに、『無冠の帝王』たちは集う。
 あらゆることを知るために。
 あらゆることを伝えるために。
 そして、なによりも。

 この世界に、『諦めを捨てる』心を根付かせるために―――。


おしまい。

107 名前:『報道委員の羽撃(はばたき)』の中身こと夜ねこ:2009/03/26(木) 15:18:15 ID:+JCHiDQP
 なんとなく後輩を外食に誘ってみたら、後からうぞうぞ後輩ばっかりついてきやがった。財布の中身が一気に薄くなった。(挨拶)
 どうも、夜ねこです。くそう、一発ネタばっか思いつく自分の頭がちと切ない。
 ヒマ潰しに書いてみた代物。あんまり起承転結はない。ちょっとネタ詰め込んだだけ。つーかガチでネタオンリー。

 まぁともあれ出展ー。

朝倉 和美(あさくら かずみ)          麻帆良学園都市内麻帆良学園中等部@魔法先生ネギま!
相坂 さよ(あいさか さよ)           同上
林水会長 <林水 敦信(はやしみず あつのぶ)> 都立陣代高校@フルメタル・パニック
坂田先生 <坂田 銀八(さかた ぎんぱち)>   銀魂高校@小説版銀魂・3年Z組銀八先生
谷崎先生 <谷崎 ゆかり(たにさき ゆかり)>  @あずまんが大王(学校名調査未踏)
黒沢先生 <黒沢 みなも(くろさわ みなも)>  同上
島くん(しま)<下の名前不明>         浮世絵中学校@ぬらりひょんの孫
神獣・『ポン太』                @PON! とキマイラ(学校名調査未踏)
虹の瀬中学                   @オニデレ

 一応設定としては前回の『執行委員の楽観』から一ヶ月が経過。
 アルヴィンの集めた「報道委員」はあれから半月でようやく週刊誌が出せるようになり、さらに半月でテレビ番組が作れるようになった。
 さすがは麻帆良の科学力である。すばらしい。
 彼らは普通の報道をやりつつ、学園世界内で大きな事件があるとみるとすぐに現場に(特権とかはないが)急行。
 勝手に映像に収めだします。
 アルヴィンは意外に根性と人望があった模様。

 執行委員同様、好きに数増やして構わない機関です。つーか男子生徒求む。アルヴィン可哀想になってくる(笑)。
 ただし、基本的に『リーダー』の基本理念を理解できない人はお断り。
 まず溢れる好奇心と行動力が第一、そしてそれができるのなら人のためになったらいいんじゃねレベル。
 ただし、一番に伝えるのは『諦めない』こと。みたいなそんな感じ。

 こんな、自己中だけど根は悪くない連中がいてもいいと思う。
 
 ではまた、何か書きました時にでも。

108 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 21:33:57 ID:1X28rzZC
>107
ここは午前0時はマヨナカテレビ(ペルソナ4参照)デラックス版入れなきゃ。

マヨナカテレビ学園世界版
本家の見る条件は雨の日午前0時に電気のついてないテレビを見る。
だけどデラックスなので毎日見れることにします。←ここだけオリジナル設定
内容はテレビで紹介された有名人が有り得ないキャラ、もとい写る人の抑圧された欲求を歪んだ形で発散して、
ぶっ飛んだリポートをしつつダンジョンに突入していくバラエティー番組。
そういう光景がテレビに写るだけなので撮影スタッフはいません。
キャストがいるなら全部シャドウ。
乱入者がいても叫んでも戦っていても世界が取捨選択しているらしく乱入者は写りません。
本家では公式R15を越えようとする際どい描写も有り。
”ハッテン、ボクの町!”のように公式が病気といわれるほどぶっとんでいます。

本家公式テロップ例
やらせナシ!
雪子姫、 白馬の王子様さがし!

女人禁制!
突☆入!?愛の汗だく熱帯天国!

109 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 21:39:39 ID:ZtT9R4qy
>>108
よしわかった、それで学園世界もの書いてくれ。

当 然 N W 絡 め て な

110 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 21:50:28 ID:n8EkeAr9
>107
乙。いちいちネタが細けェ。

一つ聞きたいが、『チャンネルはそのまま』に学園ネタなんて含まれていたっけ?

111 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 22:47:34 ID:tibtTOtH
>>96
乙です。…なぜだかなごむなあこの二人の会話。
>>105『学園世界の車窓から』は蓬莱学園から始まるのかしら(勝手に混ぜるな)。

>>107
こちらも乙です〜。
こういう状況だと報道って超重要っすね。
武器を奮うのとは全く異なる「闘い」ですな。
 
>>108
柊が映るような気ががが。
番組の内容思いつかないけど。

112 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/26(木) 23:50:39 ID:ud/JIOBc
>>111
>『学園世界の車窓から』は蓬莱学園から始まるのかしら(勝手に混ぜるな)。
鉄道管理委員会門外不出品「列車砲」の出番ですね!わかります
門外不出品の癖にイベントで借りられるから問題ないし

113 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/27(金) 23:53:26 ID:eC7VTOZ9
全然関係ないけど、コナンとルパンのクロスはなかなかよかったな。
バランスとか演出とか。

114 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/27(金) 23:55:48 ID:oyCjGZs2
珍しいな、このスレが丸一日レスないとか。アレか、>>112がとんでもないスレストッパーなだけか。

学園世界ネタだけど、スポーツ大会とか楽しそうだなー……と思った後
剣道大会とかはじめたら超修羅の巷になるとゆーのが目に見えて頭から追い出した。

アレだね、能力使用アリの、必ず他校生徒と組んで行う宝探しゲームとか楽しそうだと思った。
ホントに宝探すわけじゃなくて、学園世界中に散らばってるヒントを右に左にしながら
最初にゴール地点についた奴に学園世界内全食堂1ヶ月フリーパスとか、そのへんを商品にしてみる。

115 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/27(金) 23:58:13 ID:fHUWsfDw
日が変わる頃に、投下します。

116 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/28(土) 00:00:14 ID:fHUWsfDw
―――光綾学園 魔法教室

放課後。
「…確かにかなり荒削りではあるが“爆炎”の使用痕で間違いないだろう」
光綾学園冒険科で“魔法使い”の指導を担当している倉沢篤胤は一狼たちの持ってきた写真を見て頷いた。
「そうですか…ありがとうございます」
タバサとエヴァの見立てが正しかったことを確認し、一狼はちょっとだけほっとする。

あの後、結局狐は見つからず、仕方が無いので例のモンスターを倒したらしい魔術師を探すことになり、
一狼はエヴァとタバサに鑑定を依頼した。
(正直、残留魔力の流れがどうとか言われてもさっぱりだったからな〜)
写真、実地検分、記録の確認、果てはいくつかの学園で使われている火属性魔法の動画鑑賞…
意外と凝り性な2人の魔法のプロの議論に付き合わされた一狼が遠い目をする。
これで間違いでしたとなったら…正直考えたくなかった。
「それで、その“爆炎”とやらを使用できる魔術師に心当たりはないかしら」
一狼と一緒に輝明学園のウィザードとして光綾学園を訪れているライズが単刀直入に尋ねる。
それに気を悪くした様子もなく、倉沢が自らの見解を述べる。
「…爆炎はかなり高度な魔法だ。冒険者学校の教師であっても、魔法専任でなければ扱えないだろう。
 事実光綾でも教師で爆炎を扱えるのは私と園長の2人だけだ。もちろん他の冒険者学校の魔法専任も扱えるだろうが、
 現時点では他の学校が転移したと言う話は聞いていない。あとは冒険者学校の魔法使いの卒業生ならば使えると思うが…」
「“学生”では?」
「今の時期に習得しているのはよほどの“天才”か“努力家”だろうな」
そう言うと何かに思い至った倉沢が傍らにあったメモと筆記用具を取り、さらさらと何かを書き始める。
「…ちょうどいい。1つ、私から“依頼”をしたいのだが」
書きながら、倉沢は2人に言う。
「依頼ですか?」
一狼が不思議そうに聞き返す。
「そんな暇は…」
「君たちのしている調査にも、関係している可能性がある」
にべもなく断ろうとするライズを制するように、倉沢が言葉を重ねる。
「まぁまぁ。とりあえず、話だけでも聞いてみましょう。それで、どんな依頼なんですか?」
一狼の再度の問いに、倉沢は頷いて依頼の内容を話す。
「…本日未明、爆炎を習得した私の生徒が魔力を喪失しているのが確認された。彼女の魔力を、取り戻して欲しい」
そう言いつつ渡されたメモに書かれた名は…


117 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/28(土) 00:03:21 ID:fHUWsfDw
―――光綾学園 女子寮

「まいったな…なんて言えばいいんだ?」
幼馴染、竜胆リナの部屋の前で、薙原ユウキは思い悩んでいた。
冒険者学校同士の競技会で魔法使い詠唱部門1位を取ったこともあると言うリナ。
そのリナが基本魔法の“火炎”すら使えなくなったと聞いたときには、流石に耳を疑った。
原因不明の魔力喪失。その事実を知ったあと、リナは早退し、部屋に引きこもっていた。
これまでにも何人か友人が訪れてはいるが、全員が会うことすらできず、追い返されている。
「…ダメだ。全然思いつかない」
魔法一筋で鍛えてきたリナにとって、魔法は自らの半身…否“冒険者としての自分”そのものだ。
もし戻らなければ…卒業どころか、普通科に再度編入もありえる。
冒険者になる道を断たれた自分…それを自らの身に当てはめて想像した後ではどんな慰めも空々しい。
ユウキはそう、感じていた。
「出直すべきなのか?だけど…」
答えが出ない問いに思い悩み続けていた、その時だった。
「…この部屋ね」
「ええ。そうです…あ」
聞きなれない少女の声と一度だけ聞いたことのある少年の声。ユウキはそちらを向く。
「…斎堂?それに…アンタは!?」
見覚えのある2人に驚きの声を上げる。
「薙原。何でお前が女子寮に…もしかして竜胆さんの知り合いなのか?」
「…ああ、あのときの執行委員…今は選抜委員と言うのだったかしら」
少し考えてそれぞれに納得する2人。
「光綾の薙原ユウキだ。あんときはありがとな」
ユウキはそのうちの、“あの時の剣士”にユウキは手を差し出す。
「…輝明の播磨ライズよ。ライズでいいわ」
ライズはユウキからわずかに目をそらし、“ウィザード生徒”としての偽名を伝えて手を軽く握り返す。
「OK。ライズか。よろしくな…んで、今日はどうして光綾に?何かリナに用事があるみたいな口ぶりだったけど」
「ああ、僕たちは、依頼を受けて来たんだ」
「依頼?」
「ああ、この学校の教師の倉沢様から依頼を受けたんだ。竜胆リナさんの魔力喪失の原因を調べて解決してくれってね」
「マジか!?助かる!」
一狼の言葉を聞き、ユウキが喜びの声を上げる。
「おい!リナ!開けてくれ!倉沢先生がお前の魔力取り戻してくれって依頼したって!それで、依頼受けたって奴が来てる!」
ユウキがドアに向かって声をかける。それからしばしして…

カチャ…ギィ…

ドアがゆっくりと開いた。


118 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/28(土) 00:04:47 ID:fHUWsfDw

―――5分後

(…かなり消耗しているわね)
リナの部屋のテーブルを囲み座りながら、ライズは冷静に観察していた。
「……」
「……」
「……」
お互い喋り出すタイミングがつかめず、嫌な沈黙が辺りを包んでいる。
「…なあ、リナ」
最初に口火を切ったのはユウキだった。
「思うんだが、何かあったんだとしたら、土曜日だと思うんだ」
何かを思い出すようにしながら、ユウキはリナに問いかける。
「土曜日?」
「ほら、あの日、お前1時間くらいダンジョンから戻って来なかっただろ?その前までは普通に魔法使ってたから、ありえるとしたらそんときだと思う」
噛んで含めるようにリナに伝え、ユウキはリナの返答を待つ。だが。
「…よく、覚えてないのよ」
その返答は要領を得ないものだった。
「あのとき、何か“怖いもの”に出会ったような気がするわ。だけど…それが何だったか…」
どんどん声が小さくなっていく。夢か現実か曖昧な出来事。だが、その痕跡は確かに異変として現れていた。
「何とか思い出せないか?何でもいい、手がかりがいる」
ユウキが熱心に畳みかける。だが、それが却ってリナを追いつめる。
「駄目…分からない…どうしよう…思い出せない!」
頭を抱え、取り乱すリナ。
(…時間の無駄ね)
それを見ながら、ライズはひたすらに冷めていた。
元々ライズはこの依頼には乗り気では無かった。今の自分たちは任務がある。
関係あるのかどうかも分からない“頼みごと”になど、構っている暇は無い。
「…ねえ。リナと言ったかしら?」
「…何ですか?」
そう考え、ライズは早々に“依頼”を諦めて“任務”へと頭を切り替える。
「貴方、小さい“狐”を見なかった?」
正直知っているとも思えなかったが、依頼で動いているよりはマシ。そう判断し、ライズはリナにいつもの質問する。
「…な!?」
いきなりの質問に一狼が驚いて息をのんだ。
(…まずいですよライズさん。今は依頼の方に集中してください)
他の2人に聞こえぬよう小声で注意する。だが。
「狐…?狐…ああ!?」
「おい!?リナどうした!?」
ライズの質問がトリガーとなり、弾かれるように状況が動き出す。
リナが突拍子も無い声を上げる。
「狐!そう、狐のお面をつけた女の子だったわ!土曜日に私が会ったのって!」
「なんだって!?マジか!?」
「そう…確かこんな感じの…」
「よっしちょっと待ってろ!今、鈴木を呼んでくる!似顔絵にして探すんだ!」
ドタドタドタ…
一気に動き出した状況についていけず、ライズと一狼がぽつりと蚊帳の外に取り残される。
「…もしかして、知ってたりしました?」
「…偶然よ」
偶然って怖い。


119 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/28(土) 00:09:07 ID:hVWYl66o
―――10分後

「こんな感じかしら?」
ユウキが連れてきた猫耳をつけた少女が描き上げた絵をリナに見せる。
「そう!まさにそんな感じ!流石はぼたん!」
どんぴしゃ。あの日見たままの姿に、リナが嬉しそうに叫ぶ。
「よかったですね。手がかりが見つかって」
「ああ、斎堂たちのお陰だ!ありがとう!」
「ありがとう、ライズ!あなたのお陰だわ!」
ぶんぶんと2人の手をとって振り回すユウキ&リナ。
微妙に似たもの同士の2人。それに…
「…別に、貴方のためを思って言ったわけじゃないわ」
真実なのだが、この状況ではツンデレ台詞にしか聞こえない発言をする、我らがライズ。
思いっきりリナから目をそらしている。ついでにちょっぴり顔が赤い。
こうもストレートに感謝されることに、ライズは慣れていなかった。

―――更に10分後

2人から絵の写しを貰い、一狼とライズは帰路についていた。
「とにかく、これで僕らも手がかりがつかめましたね」
思わぬ収穫に、一狼の声も弾む。
「そうね…恐らくは…ね。けれど」
一方のライズは何かに引っ掛かるように考え込んでいた。
リナのところに現れた狐の面をつけた少女。確証は無いが、狐が姿を変えている可能性は十分にある。
それならば、見つからないのも道理だ。道理なのだが…
「…ならば、あの狐は何を考えているのかしら?」
ライズが首をかしげる。
「どういうことですか?ライズさん」
「竜胆リナの魔力を奪い、自分のものにする。それはいいわ。けれどなぜそれを使って“味方”を焼き滅ぼしたの?」
そう、あの狐にとって、緑の液体を残すモンスターたちは味方のはず。それが何故?
「そういえば…何故なんでしょう?」
「分からないわ。けれど…何か、まだありそうね」
ライズが空を見上げる。そこには、既に日が落ちて、月が昇っていた。
夜の闇に紛れ、動く狐。その思惑は…まだ読めない。

…そして彼らはまだ知らない。
“狐”は今日も、月の下、闇を駆けていたことを。

120 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/28(土) 00:10:15 ID:hVWYl66o

―――学園世界特別居住区

「うふふふふ…」
煌々と輝く月の下、狐の面をつけ、和服をきた少女…チェフェイが嗤う。
「満ちる。満ちるわ。力が…満ちる」
体内を先ほど奪い取った“力”が満たし、チェフェイを高揚させる。
何度やっても快感だった。他人の力を“奪い去る”のは。
それが、本人にとって大切なものであるならば、なおさらだ。
このまま、力を奪い続けたい。そして、それを糧に“成長”を続けたい。
チェフェイは本能ではそう感じていた。だが。
「…残念だけど、そろそろおしまいにしなくちゃね」
チェフェイが仮面の下の笑みを消し、呟く。それではダメなのだ。“主”の命令には従わなければならない。
「奪うのは、おしまい。そろそろ次に行かないと」
自らに生えた“尾”の数を確認し、チェフェイは次の段階に移ることを決意する。
「…ねえ?ソフィア」
チェフェイは、愛おしげに少女の名を呼ぶ。
「あたし、あなたに“力”をあげたわ。だから、今度は、あなたの番」
ゆっくりと面へと手をやる。
「代わりにあなたの“心”をちょうだい。ソフィア・ロベリンゲ」
そして、面を外したチェフェイは、再び笑みを浮かべた。
…自らとの“契約者”であり“この身体の持ち主”である、少女の顔で。

その翌日。

「あれーカナちゃんどうしたの真っ白になって…ええ!?カナちゃんが“物理の小テスト”で8点!?」
「そ、そんな…このワタクシ様が…ワタクシ様の歌が“デスボイス”になるなんて…」

2つの学園で、同時に起こった“能力の喪失”
それが事件を終幕へと向かわせる、終わりの始まりだった。



今日はここまで。

121 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 00:55:18 ID:/tzvChZZ
>>114
そんなに怖いか?<剣道大会

宝探しゲームは楽しそうだけど、公正なチーム分けって難しいんじゃね?
デコボココンビが山ほどってのは楽しそうだけどww

122 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 06:59:29 ID:SbeTl5JS
理事長決定戦ネタを前スレで投げっぱなしにしたものですが。

心:?
体:スポーツ大会
技:迷宮探検

とかで競技してみると楽しいかも。

123 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 09:19:21 ID:/tzvChZZ
>>112
それだと能力とかなんもない学校参加できないじゃん<迷宮探索
全校参加できるもののがいいんじゃない?

スポーツ大会は「そういうもの」だから仕方ないとして、交流目的ならみんなが参加できるものの方がいいと思うな。

124 名前:罵蔑痴坊(偽):2009/03/28(土) 11:16:55 ID:m/m/W2JL
>122
心は芸を競い合うとか。

ヤスダ校長「では、ゲームマスターをしてしんぜよう」
柳昇「えー、私、この学園世界に一つしかないもの持っております。それは何かと申しますと……指紋です」
くれは「は、はわ……じゃあ……」
藤堂校長「ふ、宴会芸ならいくらでも(ニヤリ)」

名前忘れたけどGS美神で依頼人になった女子高の婿入り校長「ち……ちちしりふとももー!(テンパッてる)」

125 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 12:45:23 ID:hVWYl66o
「とゆーわけで、お題は日塔奈美さんに決めてもらうことになりました。普通っぽいもので決まるように」
「普通って言うな〜!」

>>124
あれって競い合うのは生徒じゃなかったっけ?一番すげえ生徒がいる学校が指導者No.1ってことで。

126 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 16:05:28 ID:5ce3a866
宝探しは情報収集だけでは出来ないようにしないといかんな。どっかのカエル軍曹っぽい
吸血鬼とかがしゃれにならんから。2〜3人のパーティで組んである程度禁止する能力を
決めれば良いんじゃないか?

127 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 17:42:31 ID:CjKycC+4
>>126
どっかの吸血鬼は生徒さんじゃないんで不参加ですよ

128 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 17:59:38 ID:A0VgPWBU
>127
「えー、この度ご家庭の事情でぇ〜」


129 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 18:20:34 ID:DX5sRh7g
>>126
何も考えず、各校代表を「死の罠の地下迷宮」にぶちこめばいいと思います!
「ベア・ダンジョン」「精霊寺院」でも可

130 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 18:48:53 ID:/tzvChZZ
>>129
だーかーらー、交流にならないだろそれじゃ。

キャラがひどい目見るだけじゃん、キャラ同士が交流できる舞台を作ろうぜ。
シェアワールドはキャラ同士の繋がりが見えるから楽しいのに。

131 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 18:50:33 ID:9I5Hxw2f
>114
剣道大会で旋風の橘の立花が他作品の剣道部からボコられるっつーネタのあった嘘予告を思い出した。

気になる人は「全国高校文化祭聖杯争奪コンテスト」で検索。
学園ネタ満載だからいろいろと刺激になるかも。

132 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 19:21:49 ID:jdZdYTNf
唐突ですが投下予告に参りました。
「柊蓮司と銀なる石の少女」の続きを二十時半頃から投下致したく思いますので、宜しくお願いします。
それでは後ほど、お会いしましょう。ではでは。

133 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 19:32:19 ID:Tq0uIR1H
>130
あれだ。
トル○コの大冒険みたいにHPが0になると身ぐるみ剥がされた上でダンジョンの外に叩き出されるんだよ。

134 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 19:41:47 ID:/tzvChZZ
>>133
……で、どこがどう「交流」なんだ?
つーかむしろ、だからなんですか?

>>132
待ってる、超待ってる。

135 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 19:53:57 ID:smwlodye
>>121
旋風の橘のこれが思い浮かぶ>剣道大会
  スパイラル!
  ∧_∧   .ミ∩
  ( ・∀・) ⊂⌒ |
  | つ==☆|⊃ |つ
  人  Y/  ミ(   )
 し(__)   ∨ ∨彡

136 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 20:02:27 ID:5ce3a866
宝探しで考えたんだが、まずパーティメンバーの一部能力を封印する。→宝へのヒントを
複数用意する(重複アリ)。→そのヒントを隠す。→参加者がヒントを見つけたら能力の
封印を一部解除。って感じのを考えたんだがどうだろう?先にヒントを見つけたパーティから
ヒントを奪うのはアリ。ただし封印の解除はなしってすれば面白くなると思うんだが。

137 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 20:09:17 ID:/tzvChZZ
ルール関連は何一つ決まってないし、いいんじゃないか?
特殊な能力のない人間が参加するのが難しいルールなのはちと難点だが。

138 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/28(土) 20:29:54 ID:rSiGwX6C
それでは予告通り、投下開始させていただきます〜。

139 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/28(土) 20:31:04 ID:rSiGwX6C
 七村紫帆と名乗る少女との早朝の邂逅 ―――
 それは柊蓮司にとっては、少々血生臭いものにならざるを得なかった。
 新しい任務という名目でアンゼロット宮殿から放り出され、右も左も分からない見知らぬ街で巻き込まれた、突然の戦闘。
 エミュレイターとは明らかに異質の、怪物の群れによる襲撃。
 なんの前触れもなく人外の化物どもとの戦いに突入する羽目となった柊は、突如として交戦の場に躍り出たこの少女と成り行きで共闘することとなり、ついには敵勢力を退けたのである。
 柊が任地で通うこととなった、瀬戸川学園の制服を身につけた少女。
 互いに名乗りを終えたすぐ後で、柊はこの正体不明の少女の姿を注意深く観察した。
 任務早々、自らが巻き込まれた事件である。現状はどうしても把握しておきたい。
 そのための情報は、なんとしてでも手に入れておこう。
 だとすれば、この化物どもとの戦いに手馴れた様子の彼女は、当然のことながら有力な情報源足りえるはずだった。
 それならば ――― と、紫帆から詳しい話を聞きだそうと、柊がその一歩を踏み出したところで。
 
 ――― その目論みは、いまこのときは果たされることはなかったのである。

     ※

「学校まで十五分、か。うん。間に合う、間に合う」

 不意に、紫帆がなにげなく漏らした一言を、柊は聞き逃さなかった。
 制服が同じであれば目的とする学び舎も同じ。向かう方角は一緒である。
 わずか十五分。されど十五分。しかし、たったそれだけでも。わずかそれだけでも会話の時間を取ることが出来れば、自分を取り巻くおおよその状況を、ある程度は説明してもらえるだろう。
 いまの彼は ――― なによりも“情報”に飢えていた。
 いつも傍若無人で、無茶な任務を自分に割り当てるアンゼロットだが、今回はいつにも増して、柊の任地への移送が急過ぎる。普段であれば、『だれそれを護れ』とか『あれこれを調査しろ』とか、少なくとも任務内容の概要程度は説明されるのだ。
 それが、今回に限ってはそれすらもない。
 任地で協力者と会え、瀬戸川学園という学校に通え、と言われただけではなにから手をつけたらいいのかも分からない。
 あえて好意的に捉えるとするならば、その手間すら省かねばならないほど、事態が切迫していたということか。
 しかし事情がどうであれ、紫帆から可能なかぎりの情報を得ることが、いまの自分にとっては最優先事項であろう。
 せめて、彼女が何者で。
 せめて、あの化物どもが一体なんであるのか。
 そのくらいのことは確認しておきたかった。
 
「あー、ごめん。放課後。放課後にしよ? 私じゃ上手く説明できないかもしれないし、そういうのが得意な人、ちゃんといるから。それに、せっかくだから君に紹介しておきたい人たちもいるんだ」

 しかし柊に返ってきた紫帆の答えは、なんとも拍子抜けするものであった。
 手をぱたぱたと振りながら、紫帆はそう言って柊の質問を遮るのである。
「お、おい、なんの説明もなしかよっ!?」
 慌てて柊が食い下がる。
 突然、化物に襲われたというのに、このままなにもなかったかのように過ごすことなどできはしない。第一、いまの自分にはなによりも情報が必要なのである。


140 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 20:31:45 ID:/tzvChZZ
さて、では一時の支援と参りましょう

141 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/28(土) 20:32:15 ID:rSiGwX6C
「ご、ゴメンね。でも、面倒くさいから説明しない、っていうんじゃないんだよ?」
 本当に申し訳なさそうな顔をして紫帆が謝る。
「あのさ……いまの私たちって、お互いがお互いのことをなにも分かっていないと思うんだ」
 ゆっくりと、言葉を選ぶように。とても真摯な表情を柊へと真っ直ぐ向けて、紫帆が言う。
「多分、私が私のことを君に理解してもらうのにも時間がかかると思うし、君が君のことを私に説明するのも大変なことだと思うんだ。だから」
 だからじっくりと腰を据えて、誤解や情報の齟齬がないように説明がしたい、と。
 紫帆は、そう言っているのだった。
 ふと、改めて冷静に考える。
 彼女の言う通りにしたほうがいいのかもしれない ――― そこで初めて柊も、そう思い直す心の余裕が出来た。
 いまは、紫帆が何者なのかも分からない。彼女の“力”のことも分からない。自分を襲撃してきた化物たちのことも分からない。とにかく、分からないことだらけなのである。
 情報は必要かもしれないが、その情報量は膨大なものになるのではないだろうか。
 加えて、紫帆の言葉を信ずるならば、彼女はウィザードではないという。
 少なくとも、ウィザードの存在を知らないという。
 だとするならば、自分も紫帆に解説してやらなければならないことが山ほどあるはずだった。
 世界結界。エミュレイター。月匣。プラーナ。月衣。そして、魔王たち。
 ウィザードとしての基礎知識を思いつくままに挙げただけでも、これだけの項目について説明しなければならないのである。もしかしたら、自分の考えが及ばないだけで、もっと解説を要することだってあるかもしれないのだ。
 そのことを考えるだけでも一瞬気が遠くなる。
 普段、自分では当たり前のように考えていることが、言葉にして説明しようとすると、簡潔に分かりやすく、登校中という短い時間で紫帆にすべてを伝えきれる自信はない。
 情報は確かに必要だ。
 だが、紫帆を急かして中途半端な知識を得たとしても、それは意味を成さないし、誤った認識を自分が持ってしまうことは、任務にあたってむしろ有害でさえある、と言えるだろう。
「……確かに、お前の言う通りかもしれねえな」
 ついには、柊もそのことについて同意せざるを得なかった。
 お互いの立場や世界を理解し合うには、確かに十分な時間が必要かもしれない。
「うん。だから放課後、ね? いきつけの喫茶店があるから、そこに行こうよ。あ、君に会わせたい人たちもそこで紹介するから ――― ええと、柊クン、でいい?」
「ああ。七村、っていったか ――― 紫帆、でいいか?」
 柊には、同年代の相手を姓で呼ぶ習慣があまりない。普段接する相手にしても、くれは、とかエリス、とか名前を呼び捨てにするのが常である。
 初対面の相手ではあるけれど、身についた癖はなかなか抜けないものなのだ。
 案の定、呼称について同意を求められ、少しだけ紫帆は目を丸くした。その気配を敏感に察したのか、
「……っと、悪りぃ。嫌なら七村、って呼ぶけどよ」
 柊はそう言った。
「えっ、う、ううん、嫌じゃないよ。そうじゃなくって、ただ少し驚いただけ」
 柊の妙な気遣いを柔らかく否定しながら、紫帆は両手をぶんぶんと振る。そして、わずかにはにかむような微笑を浮かべると、
「そうじゃなくって……ちょっと、思い出しちゃっただけ。そういうぶっきらぼうな言葉遣いが、私の知っていた人に少しだけ ――― 似てたから」
 そう言って、紫帆は笑った。本当に、ほんの微かだけ、笑った。
 紫帆が、彼女の言う“柊に似た人”のことを、『知っていた』と過去形で表現したことには、柊はあえて触れなかった。なんとなく、触れるべきではないような、そんな気がしたのである。


142 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 20:33:27 ID:Tq0uIR1H
いっその事一般人でも活躍できるようになる「なりきり衣装」でも出したらいいと思うんだ。

それはそうと支援

143 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/28(土) 20:35:28 ID:rSiGwX6C
「そうか……ならいいんだけどな」
「ううん……なんだか、ゴメンね」
 もう一度だけ謝ると、紫帆はすぐに快活な笑みを取り戻した。
 どちらからともなく頷き合い、二人は連れ立って瀬戸川学園への道程を歩き始める。
 歩みが進むにつれて、同じ色とデザインの制服姿が次第に目に付くようになり、新しい学び舎まではもう目と鼻の先なのだということを柊に教えた。
 その間、二人が交わした会話はとても他愛もないことである。
 学園周辺にはどういう飲食店があるのか、とか。
 気軽に買い物の出来るスーパーはここだよ、とか。
 紫帆が懇切丁寧に教えてくれる情報は、どこか所帯じみており。
 柊は柊で、学校に購買部はあるのか、あるとすればヤキソバパンは売っているのか、などとどうでもいいようなことを紫帆に根掘り葉掘り尋ねている。
 それがあるのとないのとでは、学園生活の潤いと彩りが段違いなのだ、と力説する柊の言葉を、紫帆は穏やかな笑顔で楽しそうに聞いていた。
 校舎の正門前に到着するまでの会話は、終始この調子で進められた。
 柊の『任務』に関わりそうな有益な情報が、まったく得られなかったのは、実はこういう経緯があってのことなのである。
「それじゃ、また放課後ね」
「おう」
 正門前に到着すると、数時間後の再会を約束して二人は別れる。
 紫帆に教えられた通りの道順で職員室へと向かい、自分の担任だという教師と二、三の会話をした後で、柊はそれこそ随分しばらくぶりに“朝のホームルーム”というやつへ出席した。
 見知らぬ土地。見知らぬ高校。そして仮初めのクラスメートが、不思議と新鮮に目に映る。
 いつかの任務ときのように、なぜか二年生、などという紹介をされなかっただけ、今回はいくらかマシだと言えた。
 瀬戸川学園での柊は、誰にとっても『未知の転入生』なのである。
 潜入にあたって、アンゼロットがおかしなちょっかいをかけてこなかったことだけが、ただひとつの救いであった。
(もっとも、アンゼロットもそんな暇がなかったのかもしれねえが、な)
 事前の事情説明も一切なしに自分が派遣されたという現実が、柊の脳裏には引っかかっている。
 アンゼロットが、柊をおちょくる暇も惜しむほどの切迫した状況であり任務なのだ、と考えると、それはそれで身が引き締まる想いであった。
(……まあ、放課後を待つしかねえんだけどな)
 答えの出ないことをいま考えても仕方がない ――― 柊はそう頭を切り替える。開き直った、と言い換えてもいい。
 すべては放課後。
 後のことを考えるのは、じっくり時間をかけて、紫帆と詳しい話をしてからにしよう。
 そうやって一度納得してしまえば、気持ちの整理もつく。担任に促され、与えられた窓際の席に着くと、しばらくして、ホームルームの終わりと、一時限目の開始を告げるベルが鳴り始めた。
 瀬戸川学園における学生生活を、当面は満喫しよう ―――
 真新しい教科書を鞄から引きずり出し、柊はそう思った。

     ※

 肩を揺すられる感触。
 自分の名前を呼ぶ声。
 真っ暗な意識の淵でまどろんでいた柊は、うつぶせていた顔をゆっくりと持ち上げると、ようやく深い眠りから覚醒したようだった。
 一瞬、ここがどこで、自分がなにをしていたのかも忘れて、
「んが……?」
 間の抜けた声を上げてしまう。


144 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/28(土) 20:37:59 ID:rSiGwX6C
「転入初日から居眠りなんて、大物だねー」
 笑いを含んだ呼びかけに、声のするほうを向く。
 ちょっと困ったような少女の笑顔とぶつかって、柊は慌てて身を起こした。
 たったいままで自分が枕にしていた机の、隣の席に腰掛けた紫帆が、「やれやれ」と言いたげな表情で溜息を吐く。教壇の頭上に掲げられた丸時計の針は、とっくに夕方の五時を指していた。
「げっ、もうこんな時間か!? ちっくしょう、誰も起こしてくれなかったのかよ!?」
 ガタン、と音を立てて席を立ち、柊が大声を張り上げた。すぐさま紫帆を振り返ると、
「悪りぃ、相当待たせちまったか?」
 斜め四十五度の角度で腰を折り、見るも惚れ惚れするような姿勢で頭を垂れる。
 あはは、と笑いながら立ち上がり、
「転入初日だもん。疲れてたんだねー。朝から、あんなこともあったし」
 そう言うと、紫帆は机に投げ出してあった自分の鞄を取り上げた。
 正門前で柊を待っていた彼女は、なかなか出てこない待ち合わせ相手を直接迎えに行こうと、わざわざ自分を探してくれたようだった。
 今日、転入生の来たクラスはどこですか、と教師に聞いたので、さほど探すのに手間はかからなかったらしい。紫帆はぐるり、と二人以外には誰も居なくなった放課後の教室を見回し、
「三年だったんだね。あのさ……柊クン、って呼んでも本当に良かった?」
 おずおずとそんなことを尋ねた。
 柊よりも年下 ――― つまりは後輩に当たるのであろう。
「いいって。変なことに気ィ回すなよ。それより、本当に悪かったな」
 柊も机の横にぶら下げてあった鞄を引っつかむと、それを無造作に肩へと担いだ。
「ううん、私は大丈夫だよ。だけど ――― 」
 待ち合わせの時間に遅れちゃったら、委員長に叱られるなあ、と。
 紫帆は、柊には意味不明の言葉を呟いたのであった。

     ※

 夕暮れの薄暗い街並みを二人で歩く。
 本当は、色々この街のことを紹介したり、案内してあげたいんだけど、それはまた今度にしようね ――― 紫帆は、心底残念そうにそう言った。
 早朝、自分の名乗りもそこそこに「お役に立ちます」と宣言してみせた彼女の台詞を思い出し、柊の口元が自然とほころぶ。
「面白れえ……っていうか、変わりモンだな、お前」
 率直に、そんな感想を柊が漏らすほどだった。
 登校時と同じような、なんでもない会話がしばらく続く。学園のある鳴島市の、とある商店街に足を踏み入れ、しばらくぶらぶらと歩いたところで、紫帆が一軒の喫茶店の前で立ち止まった。
「着いたよ。ここがみんなとの待ち合わせの場所」
 それはどことなくうらぶれた感じのする喫茶店であった。
 入り口の扉はなんとなく薄汚れているし、扉の硝子窓から覗くことのできる店内も照明が控え目で、なんとなく仄暗い印象を与える。よく見れば、その硝子窓にしたところで、手入れがまるで行き届いておらず、あちらこちらが煤けているのだ。
 ドアノブにかけられたプレートの消えかけた文字で、この喫茶店の名前が『ぺリゴール』であるということが辛うじて分かる。
「……大丈夫か、こんな店でコーヒーなんか飲んで」
 率直な感想がこれである。
 飲食店として、ここまで手入れが悪いと、なんだか衛生上の問題がありそうな気がする。
 大雑把な性格の柊でさえも、これにはさすがに二の足を踏んだ。


145 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/28(土) 20:39:30 ID:rSiGwX6C
「大丈夫、大丈夫。ここじゃ、コーヒーは飲めないから」
「それは大丈夫じゃねえってことだろうが」
 間髪入れないツッコミの鋭さは、常日頃の反復の賜物か。つまるところ柊の日常は、ツッコむ相手には常に事欠かないのである。
「いや、本当に大丈夫。ここ、メニューにコーヒーがないから」
「そういう意味かよっ! ていうか、なんで喫茶店でメニューにコーヒーがないんだ?」
 もっともな疑問を口にする。
 紫帆曰く、「ここのマスターは自分の淹れたコーヒーは自分で飲むために淹れる」ので、客にコーヒーは出さないから、だそうだ。
「そんなんで商売になるのか……?」
「あはは、言われてみればそうだよね。でも、マスターは本業じゃないからいいんじゃないかな」
 不可解なことを言いつつ、紫帆が入り口の扉に手をかける。
 カランコロン、とこれだけは奇妙に清涼感のあるベルの鳴る音が響き、二人を迎え入れた。
 やはり店内の照明は薄暗い。これは、ムードのために灯りを落としているのではなく、ただ単に蛍光灯が消えかかっているせいだ。ぐるりと店内を見回せば、紫帆が言うところの「待ち合わせの相手」、「柊に合わせたい人たち」の姿が視界に入る。
 黒いズボンに包まれた長い脚を無造作にテーブルに投げ出し、深く椅子に腰掛けた顎鬚の男。
 無気力そうな表情はどこか気だるげで、シニカルな微笑をたたえた口元に火がついたままの煙草をくわえている。歳の頃は三十前くらいであろうか。入店した二人をちらりと見ると、「おう、お疲れ」と紫帆に短く挨拶をして、軽く右手を上げた。
 待ち合わせのもうひとりの相手は、外見からすると紫帆と同年代の少女である。
 瀬戸川学園のブレザーを身につけた、長い髪の少女であった。大きな丸い眼鏡をかけ、なぜか腕組みをしたまま仁王立ちで二人を出迎えた彼女は、紫帆の姿を見止めると、
「紫帆、遅い」
 あからさまに不機嫌な顔をして彼女に文句を言った。時刻は夕方の六時をとうに回っている。
 放課後に待ち合わせる、と約束をしていたのだとしたら、確かにこの時間は少し遅いかもしれなかった。
「ごめんね、委員長」
 紫帆が眼鏡の少女に謝る。なんだか少し悪い気がして、柊は紫帆を押し退けるようにして一歩を踏み出すと、
「こいつを責めないでやってくれよ。時間に遅れたのは、俺のせいだ」
 そう言った。もともとは自分が放課後の待ち合わせ時刻を過ぎても、教室で寝こけていたせいなのだ。初対面の少女に向かって、紫帆をかばうようにそう口を挟むと、委員長と呼ばれた彼女が、そのとき初めてこちらを見る。
 眼鏡越しにこちらを窺う視線がどことなく硬い。
 それは、明らかに柊のことを警戒している内心の現れのようだった。
「紫帆の言っていた、オーヴァードじゃないのにジャームと戦える男、っていうのが彼?」
「うん。登校中、ジャームの群れに襲われていたところに私が駆けつけたっていうのは、委員長に昼間話したとおりだよ。ちょっと話を聞いたんだけど、彼、オーヴァードじゃないって」
 紫帆の言葉に、腕組みをしたままの姿勢で『委員長』が沈思黙考する。
 そのまま数分間、口の中でなにごとかをぶつぶつと呟きながら考え込む様子は、明らかに周囲のことなどお構いなしといった風情であった。
 自分の思考に没頭し始めた彼女を、紫帆は涼しい顔で黙って見ていたし、顎鬚の男にいたってはそちらを見向きすることもなく、欠伸混じりのだらけきった姿勢で二本目の煙草に火を点けていた。
 なんというか気まずい。他の二人は慣れているのだろうが、他所様のテリトリーに紛れ込んだままで放置されるというのは、これでなかなか気を使うものである。
 さすがに柊がこの雰囲気に耐え切れなくなった頃、
「分かりました。まず、基本的なことから説明させた貰ったほうが良さそうですね」
 ようやく顔を上げ、『委員長』が柊に向かってそう言った。
「まず、遅れましたけど自己紹介を。私は八重垣ミナリ。こちらは……」
 そう言いつつ、カウンターの顎鬚男を振り返り、
「九条柳也さん。喫茶店ぺリゴールのマスター兼UGN鳴島支部の支部長です」


146 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 20:40:42 ID:/tzvChZZ
柊はやっぱりアレだなぁ支援

147 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 20:41:44 ID:7Ym3LMot
有りそうで無かった交換留学と言うのはどうだろ?

とにもかくにも支援

148 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/28(土) 20:41:47 ID:rSiGwX6C
 よろしく、の言葉の代わりに軽く手を上げ、こちらに向かって振ってみせる顎鬚の男 ――― 九条柳也。せめて起き上がって挨拶したらどうですか、と委員長 ――― 八重垣ミナリが彼を叱り付けると、
「いちいち細かすぎるんだよお前は」
 柳也がぼやき、“三本目”の煙草に火を点けた。
 それに反論しようとして口を開きかけ、ミナリは柊を放置していたことに気がついて自制する。
「すいません。話の途中で」
「いや。でも、なにぶん“そっち”の領域に関しちゃあ俺は素人なんだ。色々聞きなれない言葉もあるし、とにかく分からないことだらけなんだよ。その、ゆー、じー……とか、支部長とか、そういうところから、もうさっぱりなんだ。だから、教えてもらえると助かる」
 苦笑しつつ、頭をかきながら柊は率直に述べる。
 ミナリの視線がわずかに和らぎ、警戒を少し解いたようだった。
 分からないことを分からないという素直さと、ミナリに教えて欲しいという謙虚な態度を、彼女は少し好もしく思ったようである。
「そうですね。元々、私も紫帆からそれを頼まれていましたから。さっそく、レクチャーを開始しましょうか? ええと ――― 」
「柊。柊蓮司だ。さっきコイツにも断ったんだが、悪いが下の名前で呼ばせてもらうぜ、ミナリ。習慣っていうか、癖なんだ」
「こだわりませんよ、柊さん。うん、私は柊さんって呼ばせていただきます。なんというか、このほうがしっくりきますから」
 笑いながらミナリは承諾の意を示す。笑顔を作り、表情から険しいものが取れると、歳相応に可愛らしい少女の顔になる。どこか張り切った調子で学生鞄からノートと鉛筆を取り出すと、
「これから、この世界を取り巻く現状について出来る限り詳しく、お教えします」
 ミナリは意気揚々と言うのであった。

     ※

 ミナリの語る、驚愕すべき世界の真実。
 十九年前に世界中にばら撒かれたレネゲイドウィルスのこと。
 感染者に超常的な力を与え、オーヴァードとして覚醒させるこのウィルスは、また『ジャーム』と呼ばれる怪物を生み出す危険性を秘めているということ。
 秘匿された真実の裏で、通常人とオーヴァードの間の軋轢を防ぐため、また日常を護るために結成された組織があること。ミナリたちが、その組織に所属しているということ。
 また、自分たちとは異質の、レネゲイド犯罪やテロリズムにその力を悪用するものたちもいるということ、そしてそんな連中とも戦っているのだ、ということ。
 シンドローム、エフェクト、エトセトラ、エトセトラ。
 かつて普通の人間だった紫帆が、オーヴァードとして覚醒したときと同じように、ミナリは柊に親切丁寧なレクチャーを施した。
 なにも知らない素の状態の人間に、こういう非常識な現実を事実として受け止めさせるということは、実はひどく大変なものなのである。
 だからこそ丁寧に。だからこそ、分かりやすく。
 紫帆のときは、彼女が幸い素直な性格だったし、非現実的なことでもそれを受け入れられるある種の図太さがあったから、さほど苦労はしなかった。
 それでは、柊蓮司の場合はどうであったか。
(紫帆の話だと、ジャームの群れにも物怖じせずに戦っていたというし、もともとレネゲイドとは異質の超常の力を持っていたみたいだから……)
 存外、簡単に私の話を理解してもらえるであろう、と。ミナリはそう考えていた。
 しかし。
 柊蓮司は、ミナリも予想していなかったところで理解につまずき、ミナリの頭を抱えさせる羽目になったのである。

「 ――― 紫帆が戦ってる姿を見てるから、お前らの力を疑うわけじゃないんだけど……」
 小難しい顔をしながら、柊が何度目かの唸り声を上げる。


149 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/28(土) 20:44:52 ID:rSiGwX6C
「また、そこに話を戻すんですか? この力はそういうものだ、って理解してもらえればそれでいいですよ。原理とか、そういうものは私にだって詳しいことは分からないんですから」
 ミナリが呆れ顔で言った。
 ウィルスに感染して力を使えるようになる、ということが柊にはいまいちピンと来ないようなのである。
「それを言うなら、“魔法使い”なんて単語が出てくるほうが、私にとっては不可解です」
 頬っぺたを膨らませながら、ちょっと拗ねたようにミナリがそっぽを向く。
 持てる力の源や置かれた立場が違えば、なかなかお互いを理解することは難しいものだ。
 初めに月衣やエミュレイターのことを簡単に柊が説明したときは、
『真面目に言ってるのか?』
『個人結界って、私たちのワーディングみたいなものナノカナ……?』
『テレビゲームのやりすぎじゃないんですか?』
 などと、オーヴァード三人組は口々に疑問形の台詞を柊にぶつけてきたし、柊は柊で、ミナリによる“もうひとつの変貌した世界”についての説明を、理解不能、という顔で初めは聞いていたものである。
 そして、レネゲイドと呼ばれるウィルスが、彼女たちの不可思議な力の源である、というくだりに関しては、
「なんでウィルスに感染してそうなるんだろう」
 と、いかにも不思議そうな顔をして、柊はしばしばミナリの説明を中断させたのである。
 『ウィルス』という常識的な概念が、『超常的パワーをもたらす』という非常識を内包しているというこの現実。
 『世間一般の常識に照らし合わせれば非現実な存在(エミュレイター)が、世界結界のほころびを縫って現世に侵入する』という理屈に照らし合わせると、矛盾を孕んでいるような気さえするのである。
 ウィザードの持つ感覚的な理性に反する、いわば咽喉につまった魚の小骨のような違和感を覚えるのであった。
 それに反してミナリたちはといえば。
 これは言うまでもなく、ウィザードでもオーヴァードでもない普通人が、『魔法使い』という単語に触れたときと同様の感想しか抱くことが出来なかったことも事実なのである。
 まして魔王などといわれた日には、ミナリのように『ゲームのやりすぎ』という揶揄が飛び出してしまうのも仕方のないことであった。
「わーかってるって。これは、ただ俺の感覚的な問題ってだけのことだ。どっちも非常識で、だけどどっちも現実なんだろ? そんなことは、あのジャーム……とかいう化物を目の当たりにしたら、疑う余地はねえ」
 ミナリをなだめるように柊は言う。それでもやっぱり、
「とは言うものの……やっぱりなあ ――― 」
 しきりに首をひねる柊なのであった。そんな二人のやり取りをじっと聞いていた紫帆が、おっかなびっくり手を挙げて、
「あの……柊クンは、“シンドローム”って、わかってくれた……?」
 そう柊に尋ねる。
「おう。紫帆のキュマイラとか、柳也さんのバロールとか、ミナリのサラマンダーとか……のことだろ?」
「わ、よく覚えたね。うん、その通りだよ。もし、柊クンが分かりにくいと思うなら、こう考えてみたらどうかな?」
 少し自信なさげに、それでも精一杯彼女なりに考えた結果として、紫帆が噛み砕いて解説する。


150 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 20:45:21 ID:Tq0uIR1H
>147
それは面白くなりそうだな

そして支援

151 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/28(土) 20:47:14 ID:rSiGwX6C
「あのさ、レネゲイドっていうのは柊クンが考えてる以上にすごいウィルスなんだよ。普通の、私たちの常識で知っているウィルスよりも、人体に及ぼす影響が大きいの。たとえばインフルエンザにかかると、すっごく熱が出るでしょ?」
「おう」
「あれのグレードアップヴァージョンが、サラマンダー。すごい熱を通り越して、身体から火が出ちゃうの」
「ちょっと、紫帆!?」
「おお、なるほどな! それなら分かるぜ!」
 完全に腑に落ちた顔をして、柊がポン、と手を叩いた。
 ミナリにしてみればたまったものではない。自分のシンドロームをすごいインフルエンザと乱暴にくくられた挙句に、あれだけ一生懸命説明してもどこか納得していなかった柊が、紫帆の解説であっという間に理解してしまうのだから。
「私の、私の説明はなんだったんですか!?」
 テーブルをバン、と叩いて激昂するミナリを、いつの間にか身を起こしてした柳也が笑いながらなだめる。
「はは。ミナリ、お前さんの説明はあまり初心者向きじゃねえんだよ。ちょっと話が長いし、それに一度に多くの情報を詰め込みすぎる」
 少し一息入れたらどうだ、と柳也が三人に缶コーヒーを手渡した。
 喫茶店のマスターなのに。
「なんですか、これ」
「商店街の福引で一年分当たった。さっさと処分しちまいたいんだが、あいにく俺にはこういうのは不味くて飲めやしない。金は取らねえから好きなだけ飲んでいいぜ。俺は ――― 」
 ミナリの質問に答えつつ、柳也はコーヒーサイフォンの準備を始める。自分が飲む分だけはキチンと淹れる。そういう腹積もりのようだった。
「まったく……本当に、お客さん来なくなりますからね」
「昔もいまも閑古鳥だ。これからだってそれでいい」
 呑気なことを言いながら、柳也はニヤリと口元だけで笑う。
「……それに、どうにもウチは、コーヒーを飲みに来る目的じゃない客が多くて、な」
 柳也の視線の先は、ぺリゴールの入り口の扉を凝視していた。
 ざわり、と一同に緊張が走る。
「千客万来、だな。今夜は」
 柊たちも柳也に数瞬遅れて、戸外に何者かの気配を感じて立ち上がった。
 微かに聞こえる車のエンジン音。そして停車する音は数台分。
 車のドアの開閉音が立て続けに聞こえ、ぺリゴールを囲む空気が微かに揺れたようだった。
 四対の視線が入り口を睨みつける。三人のオーヴァードがそれぞれ身構え、柊も自らの月衣に手を差し込み、握り慣れた魔剣の柄に手を伸ばした。
 そして、膨れ上がる緊張感の中、開かれた入り口から意外な人物たちが姿を現す。

「その警戒心の強さと鋭敏さ。UGNの一員としての貴方たちを頼もしくは思いますが、とりあえずは殺気を抑えていただけませんか」
 高価そうなスーツに身を包み、穏やかな笑みを浮かべたひとりの男が、そこには立っていた。

「あらあら。そんなに警戒しなくても、取って食べたりはいたしませんわ、柊さん?」
 シックな黒のドレスも目に麗しい、小柄で華奢な銀髪の美少女が後に続く。

「霧谷さん!」
「なっ!? あ、アンゼロットっ!?」
 三人のオーヴァードと柊蓮司が、違う名前を同時に呼ばわり硬直する。
 ユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク ――― UGNの日本支部長、霧谷雄吾と。
 ウィザードであれば知らぬものなし、“真昼の月”の異名をとる世界の守護者、アンゼロット。

 旧知の仲のごとく、二人連れ立ってぺリゴールに入店してきた二人の珍客を、紫帆たちと柊蓮司は、ただ口をあんぐりと開いて見つめたまま、しばらくの間言葉を失っていた ―――

(続く)


152 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 20:47:20 ID:/tzvChZZ
いいから支援しようぜ支援

153 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/03/28(土) 20:48:06 ID:rSiGwX6C
支援感謝&投下終了です。
書きながら、異文化交流の二者間描写って思ってたより難しいことを痛感しました。
あまりくどくど書いても読んでいる人には既知の情報だろうし、かといってまるでそこに触れないのも置いてけぼり感が出てきそうだし。
その辺のバランスが上手く取れていれば良いのですが……。
それでは、ひとまずここで筆を置きます。次回お目見えのときまで。ではでは。


154 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 21:01:13 ID:7Ym3LMot
GJです。

しかしそーゆー理解で良いのか?柊?

155 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 21:30:24 ID:f3Tv7oGw
乙〜。まだOPフェイズの最後かミドル1くらいかな?
しかし相変わらず頭が悪いな柊蓮司…
まぁ情報収集とか知力系は微妙に残念だからな仕方ないよねw
そして敵が見えてこないがどんなヤツがくるかwktk

156 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 21:34:01 ID:Tq0uIR1H
投下乙です。

簡潔かつ相手に解るように説明するのって結構難しいよな……

157 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 21:44:40 ID:smwlodye
GJ!
柊さんwww

158 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/28(土) 21:46:13 ID:/tzvChZZ
GJー。

で、チワワがチワワるのはいつかね?
ってのは冗談として、コーヒーの出ない喫茶店がちゃんと描かれたのは良かったです。
アライブ終了後のようで。あの人たちのことが異邦人に語られることはあるのかな?
次は任務説明かな?

次回更新を楽しみにしています。

159 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/29(日) 00:15:23 ID:ALPAvCbZ
学園世界ネタだが
一部の作家さんが使ってるコードを勝手にまとめてみた
拾うも拾わないも作家さん次第だとは思うけどな。

・学園世界に来た順番がはっきりしてるところ

03−桃月学園
09−楯神高校
13−アッシュフォード学園
21−アキハバラ第参中学校
38−妖精学校
42−PONとキマイラ(でいいのかな?)の学校
57−あずまんがの高校

・場所がはっきりしているところ

A区
輝明学園・極生管理棟
B区
アッシュフォード学園・楯神高校・妖精学校・報道委員会棟
(推測)牙の塔・南稜高校
C区
桃月学園
D区
アキハバラ第参中学
(推測)舞島学園高校
E区
あずまんがの高校


こんなとこかな? 作家さん達の資料になればいいんだが。
まぁ、あんまりガチガチに決めると大変なんじゃないかとは思うけどな
素人考えだが

輝明学園は一桁台だと思う。勝手に思ってるだけだけど

160 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/29(日) 00:55:49 ID:ZXEIJO35
一部過ぎる気がしなくもない。
まあ適当(いい意味で)でいいんじゃないかしら。
同じTRPGやってても卓やシナリオで設定が違うなんて良くあることですよ。

161 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/29(日) 00:58:07 ID:ALPAvCbZ
>>160
うん、二人くらいだった。<コード

適当でいいと俺も思う。

162 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/29(日) 10:56:57 ID:k6V1XNsQ
>>161
まあ、雰囲気付けだよね。
それはさておき。
さて、今回のPC1をクロス先のキャラにしたらNWキャラの影が薄くなってしまったのがあれですが、第4回を11時より投下します。

163 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/29(日) 11:01:48 ID:k6V1XNsQ
―――ドルファン学園 中庭

唐突に発生する、強烈な違和感と、消滅する人の気配…“異界化”の感覚に少女は溜息をついた。
また、だ。ここ数日で、何度も繰り返されたできごとなのだ。
(さあ、行きましょう。悪魔を倒さないと)
そうだ。悪魔を倒さないと学園にいる“普通の友達”にまで被害が及ぶ。
戦える力を持っている自分が、全部倒さなければならない。
そう考え、少女は悪魔が現れる兆候を待つ。焦らず、余裕を持って。
(大丈夫。あなたは、強いわ。決して負けない)
恐れはない。もう、慣れた。少女はゆっくりと準備を開始する。
そして。
「ヒャッハー!人間だあ〜!死ねえ〜!」
魔法陣と共に悪魔の群れが現れたのとほぼ同時に。
「…フレイムブラスト」
少女…“ソフィア=ロベリンゲ”の放った爆炎が辺りを焼き払った。

「な、なんだよ…話がちげえじゃねえか!?」
瞬時に焼き払われ、命を落とした“仲魔”たちを見て、小さな悪魔が狼狽して叫ぶ。
「女のガキ一匹殺してこいって…たかが人間が何でんな馬鹿みたいな威力の魔法を扱えるんだよ!?」
楽な仕事のはずだった。“主”より命じられた、簡単な仕事。
これだけの数で一気に挑んで負けるはずが無い。
そう、考えての襲撃だった。
だが、それはもろくも崩れ去った。会戦直後、不意打ちで放たれた、たった1発の魔法で。
「そんなはずがねえ。“あの方”でもねえ人間が…こんなにつええなんて…まさか!?」
悪魔の脳裏に、かつて“塔”にいた仲魔の言葉が思い出される。
「悪魔よりも、強い人間…てめえ、まさか“ガーディアン憑き”か!?」
かつて、“塔”において、幾多の悪魔を倒し、最上階にまでたどり着いたと言う“悪魔の加護”を受けた人間。
まさか、目の前の女がそれだと言うのだろうか?
「あれ?なんで生きてるんですか?」
そんな、悪魔の声を無視して、生き残った悪魔を見て、ソフィアはキョトンとする。
爆炎を受けて生きていられるような強い悪魔には見えない。と言うよりも“無傷”だ。
(―――堕天使ウコバク。相性、火炎吸収)
少しだけ考えて何かに“囁かれる”ように答えを見出したソフィアがにっこりとほほ笑む。
「ああ、炎が効かないタイプの悪魔だったんですか。道理で」
「ひぃ!?」
その表情に恐怖を感じ、悪魔が慌てて逃げ出そうとする。だが。
「だったら、こっちで行きますね」
すぅと息を吸い込み、そして…
キャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
盛大に悲鳴を上げる。その瞬間。
「げぼば!?」
その“叫び声”を受けた悪魔が身体中から血を吹き出して、倒れる。
「―――超音波崩壊励起(ハウリングボイス)って言うらしいんですよ。これ」
“叫び声”を止め、動かなくなった悪魔に、ソフィアが声をかける。
「使ったのは、今が初めてだったけど結構強いですね」
急速に消滅していく“異界”の気配を感じながら、ソフィアは呟く。
口元にかすかな、歪んだ笑みを浮かべて。


164 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/29(日) 11:02:37 ID:k6V1XNsQ
「…ふぅ」
終わった。そのことを確認し、ソフィアは緊張を解く。
「あ、大変!急がなくっちゃ」
次の授業は運動だったことを思い出し、ソフィアは焦る。
着替える時間を考えるとゆっくりもしてられない。
ソフィアは足早に更衣室に向けて歩きだす。
(まったく、悪魔も襲ってくるタイミングは考えて欲しいわ)
暇な時なら構わないが、こうして忙しいときに来られても、迷惑だ。
そんな“戦うこと事態への戸惑い”を完全に失った思考をしていた、その時だった。
(―――8時の方向)
思考に割り込み、囁くように思い浮かんだ考えにソフィアは反射的に振り向く。そこには。
「…ライズ、さん?」
氷のように冷たい目をした、クラスメイトが立っていた。
「…あら。ソフィア」
今気づいたとでも言うように、ライズはソフィアをまっすぐ見つめ、言う。
「こんなところで、どうしたの?もうすぐ、授業が始まるわよ」
それだけ言うとライズはソフィアを置いて、さっさと歩いて行ってしまう。
そして、1人残されたソフィアは…
「あの人…なんだか、怖い…」
ライズの氷のように冷え切った目を思い出し、震えた。

165 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/29(日) 11:04:20 ID:k6V1XNsQ
―――ドルファン学園運動場

その日の運動はマラソンだった。
(…ライズ。あの人は一体…?)
走りながら、ソフィアは無意識のうちに運動場の外で座っているライズを目で追っていた。
今日もライズは見学だ。制服のまま、運動場の外れに腰かけている。
(あの時、ライズは東洋人の男の子と一緒にいた…)
ライズを目で追いながら、頭の中でソフィアはライズについて考える。
(あの人の着ていた服って、輝明学園の制服よね…?)
学園世界でも屈指の有名校。特殊な力を持つ“ウィザード”がいる学園の制服を着た少年。
(…彼もウィザード?だったら、何でライズが一緒に?)
疑問が次々と思い浮かぶ。
(…そもそも、ライズは一体何者なの?)
そして、ソフィアはその疑問にたどり着いた。

昨年、外国からドルファンに入国し、ドルファン学園に入った、転校生。
誰ともロクに喋ろうとせず、学園内でも浮いた存在。
成績は全体的に優秀だが運動の授業は必ず“見学”で参加しないため、最低の成績。
真夏でも決して手袋を外さない。
それがソフィアの知るライズ・ハイマーのすべてだった。

(私、ライズのこと、ほとんど知らない)
彼女の素性は、謎に包まれていた。
“東洋人の傭兵”なら他にも何か知っていたかも知れないが、少なくとも学園内の生徒では、これ以上のことを知っている人間はいないだろう。
その事が、余計にソフィアを恐れさせる。
(やっぱり、怖い)
あの日、ソフィアの魔法で焼き払われた現場を見ても、ライズは驚きもせず、普通に少年と話をしていた。
まるでそれが“当たり前”であるかのように。
(一体、何を考えて…!?)
ライズの近くを通りかかり、ソフィアは思わず息を飲む。
視線が、重なった。
(私を見ている!?)
“観察”されている。あの、氷のように冷え切った目で。そのことを実感したソフィアが取り乱す。
(一体…どうして…あ)
慌てて周りを見て、ソフィアは気づいた。
いつの間にか、周りに人がいない。
先頭集団を大きく引き離し、ソフィアはトップを独走していた。
(嘘…いつの間に!?)
ソフィアは普段、肉体労働系のアルバイトばかりしている分、同世代の少女の中では体力がある方である。
しかし、それでも周りをたやすく引き離せるほどには肉体派ではなかった…つい最近までは。
(と、とにかく…今は“目立たない”でいないと)
そんな考えが思い浮かび、ソフィアは急速に減速する。
吐く息を荒くし、いかにも『途中でばてた』と言う“演技”をしながら。
(…うまく行った)
先頭集団の後ろの方まで下がったのを確認し、ソフィアは再び走り出す。
追い抜かないように、気をつけて。
そして、授業は過ぎて行った。いつもと同じように。
「…やはり、可能性は高いわね」
溜息と共に、呟いたライズの言葉は、誰の耳にも入らず、消えて行った。


166 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/29(日) 11:07:01 ID:k6V1XNsQ
―――特別居住区 通学路

「おーい、そこの子。ちょっといいか?」
帰り道。いつもの様に1人で帰っていたソフィアは赤毛の少年に声をかけられた。
「はい?どちら様ですか?」
見覚えのない少年に、ソフィアは怪訝そうな顔をして、尋ねる。
「っと、そうだな。まずは名乗らなきゃな。俺はA地区にある、光綾学園の選抜やってる薙原ユウキだ。よろしくな」
そんな言葉と共に、薙原と名乗った少年は手にしていたビラをソフィアに渡す。
「今、ちょっと探してるやつがいるんだ。そのビラに書かれたやつなんだが、知らないか?」
「えっと…ちょっと分かりませんね。これはなんなんですか?」
そのビラには狐の面をつけた少女が描かれていた。ソフィアには見覚えが無い。
「ああ、こいつはなモンスターだ」
ソフィアの問いにユウキは苦々しい表情で答える。
「モンスター…ですか?」
目の前の絵の少女とモンスターと言う言葉が結びつかず、ソフィアは困惑して問い返す。
「ああ、そうだ。結構やばい奴みたいでな、リナ…うちの学校の生徒がそいつに襲われたんだ。そんで、俺らで探してる」
「そうなんですか…あれ?」
ユウキの説明を聞き、ソフィアはその事に気づく。この子…何かに、似てる。
「ん?どうした?」
「いえ…なんでもないです」
思い浮かんだ考えを打ち消し、否定する。
「…?そっか。もし何か見かけたら教えてくれ。光綾か、極上生徒会に連絡してくれればいいから」
「はい。それじゃ、頑張ってくださいね」
悟られぬよう、笑顔でその場を立ち去る。
…少し離れ、ユウキが見えなくなったのを確認し、ソフィアは再びビラを取り出す。
「変だな。どう見ても、違うのに」
改めてビラに描かれた少女を見て、先ほど思ったことを再び思い出す。
「…チェフェイに似てるなんて、ありえないのに」

167 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/03/29(日) 11:08:15 ID:k6V1XNsQ
…一方その頃

「そっか。そっちも終わったか。あんがとな…いや、そっか。そうだよな。ごめん」
ビラの配布が終わったと言う友人の連絡を受け、ユウキは溜息をつく。
『ありがとうは変だろ?俺らもリナの為にやってんだ。お前に頼まれたから、ってわけじゃねー』
悪友の忍者志望の少年から言われた言葉に、ユウキは反省する。
「ついこの前1人で暴走して酷い目にあったばかりだろ?薙原ユウキ」
自分を戒めるように、言葉に出す。
必ず仲間と一緒に行動する。無茶をするのは、それが無理なときだけでいい。
それが、あの一件以降、ユウキが自らに課した、戒めだった。
「さてと。一旦戻るか。ビラも補充しないといけないし」
そして、自らの母校に戻ろうとした、その時だった。
「…光綾学園冒険科3年B組所属、極上生徒会光綾学園代表兼光綾学園選抜委員、薙原ユウキだな」
えらく長い正式名称で呼ばれ、ユウキは振り向く。
「うん?あんたは確か…えっと、誰だっけ?」
そこに立っていた1人の少年。彼にユウキは見覚えがあった。あるけれど、思い出せない。
「…相良宗助だ」
ユウキの疑問に答えるように頬に十字傷が走った少年がむっつりとしたまま言う。
「相良…ってあんた…」
その名前に、目の前の少年が誰なのか思いだしたユウキが少し驚いて言う。
「都立陣代高校生徒会安全保障問題担当・生徒会長補佐官兼2年4組ゴミ係兼傘係、そして極上生徒会執行部付執行委員。
 相良宗助だ。相良でも宗助でも好きなように呼ぶといい」
ユウキ以上に長い正式名称を執行部の“戦争ボケ”の異名を持つ男がユウキへと名乗る。そして、もう1人。
「あ、おった。あんたじゃろ?薙原さんて」
ユウキたちより幾分表情の幼い少女が、ユウキへと声をかける。
「うちは磯野三中の瀬戸燦言うもんじゃ。よろしゅうな」
ご近所でも評判の“極道バカ”な少女が方言丸出しでユウキへと名乗る。
「えっと宗助に…サンちゃん?俺に何か用か?」
突然の登場に首をかしげながら、ユウキは2人に問う。
それに2人は。
「俺は、千鳥を襲った狐の面をつけた女を追っている。お前も同じ対象を捜査していると聞いた。捜査への協力を依頼したい」
「うちは大事な友達のルナちゃん泣かせた、狐面のごんたくれを探しとうきん。
 そいでな、薙原さんも同じの探しとる聞いて、来たんじゃ。頼む。捜すの手伝ってもらえんじゃろか?」
ほぼ同時に、同じ内容の頼みを口にした。



今日はここまで。今回、NWキャラが出てないのは…本当にすいません。

168 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/29(日) 13:51:28 ID:/eZFtdca
乙。
宗助ー!
もしかして、噂はされてたけど、ちゃんとした登場は初めてでしたっけ?
NWキャラは……まぁこれからに期待。

169 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/29(日) 15:24:27 ID:ALPAvCbZ
>>168
リルカ初登場が宗介初登場じゃなかったっけ?

>>167
ともあれGJー。
つーか「その設定拾うのっ!?」みたいな設定ばかり狙って拾ってませんかw
書き始めとは違う話になってるのでは?と心配になったり。

次回楽しみにしてますー。

170 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/03/29(日) 19:54:45 ID:rtAxXSBI
こんばんわ。とある世界の騒動日程。ただいま終盤に向けて気合を入れなおして執筆しています。
もう少し、お待ちいただけると幸いです。
ちょっと思いついた嘘予告を投下します。
学園世界ネタでは在りません。

171 名前:嘘予告:2009/03/29(日) 19:55:43 ID:rtAxXSBI
 目が覚めると、庭に穴が開いていた。
 まるで漫画のように、上半身を地面にうずもれさせて、二本の足が天を向いている。

 いろいろと、変なことには慣れている積もりだったが、甘かった。

「夏目、これはなんだ」

 足元でニャンコ先生が言った。
 先生に解らないものが、おれに判るわけは無いと思う。

「人間? かな?」

 首を傾げている内に突き出していた下半身は、上半身を引き抜いた。

「ぶはっ! 畜生アンゼロットの奴っ! 覚えてろよっ!!」

 泥だらけで叫んだのは、おれと同じぐらいの男だ。
 青いブレザーに、濃紺のスラックス。ネクタイを緩めたその姿は、高校生のようだが、制服に見覚えがない。
 勿論、男の顔にも見覚えがない。
 その男は空に向って絶叫した後、おれたちの存在に気付き、
 
「あー、スマン。ここ何処だ?」

 頭をかきながら、そんなコトを言った。


172 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/29(日) 19:55:56 ID:ALPAvCbZ
どぞ

173 名前:嘘予告:2009/03/29(日) 19:57:16 ID:rtAxXSBI
ナイトウィザード×夏目友人帳 嘘予告

           妖(あやかし)が多すぎる 〜〜柊蓮司と夏目貴志〜〜


 ―――小さい頃から時々、変なものを見た。
    他の人には見えないらしいそれらは、おそらく、妖怪と呼ばれるものの類。

    

 事の発端は、何時もの事だった。

「アァァァァァンゼロットォオオオオオオオ!!!
 俺を学校に行かせろぉおオオオオオオオオ!!!」

 宮殿より排出された柊蓮司を拾ったのは、一人の少年。

「あんた、人間か?」
「失礼なっ!! 俺が人間以外の何なんだ!!」

 少年の名は夏目貴志。
 人在らざる妖をみる力を持つもの。
 故に、誰にも理解されず、親類をたらい回しにされ、藤原夫妻に引き取られた。
 そんな少年。
     
「へぇ。この辺には、結構妖怪がいるんだな」
「蓮司―――、あんた。妖(アレ)が見えるのか?」



 ―――今は亡き祖母レイコも、妖をよく、見ていたらしい、 
    人々に気味悪がられた彼女は、やがて妖相手にやつあたりをはじめた。

    

 のどかな田園に、伸びる魔の手。
 田沼が、多軌が、名取が、そして数々の妖たちが、次々と襲撃を受ける。
 そしてその牙は、ついに夏目に到達する。

「何だこいつらっ!? 妖じゃあないのか!?」
「逃げるのだ夏目!! コイツらは侵魔と呼ばれる連中だ!!」
「侵魔!? なんだそ―――!? うわぁああッ!!」
「夏目っ!!」

 襲い来る裏界の尖兵。
 見たことも無い異形に、立ちすくむ夏目。
 本性を現した斑の疾走も虚しく、侵魔の牙が夏目を捉えた。
 
 そう、誰もが思った瞬間。
  
 閃く銀光。
 肩口から脇腹まで、袈裟懸けに両断された異形が崩れ落ちる。

「大丈夫か? 夏目」

 断末魔に、恐る恐る目を開けてみれば、目の前には巨大な剣を担いだ男の影。
 魔剣使い―――柊蓮司。

「蓮司? あんた、一体何者だ?」


174 名前:嘘予告:2009/03/29(日) 20:00:20 ID:rtAxXSBI
 ―――妖をいびり負かし、子分になるよう証として紙に名を書かせ集めた。
    持つ者に名を呼ばれれば、決して逆らう事のできない契約書の束『友人帳』。

 

「魔王……だって?」

 0-Phoneを通して届いた言葉は、余りにも馴染がなく

『ええ。今回の黒幕は『女公爵』モーリー=グレイでしょう。
 彼の魔王は、財宝の類に強い執着を示します。
 恐らく夏目さんが受け継がれたレイコさんの『友人帳』を狙っているのだと思われます』

 得体の知れない恐怖が、全身を駆け巡る。

「なあ、蓮司。
 おれ、ココにいない方が良いのかな?」

 ふと、零れ落ちた言葉。

「夏目。お前は何も悪くない」

「蓮司?」
「悪いのは全部、お前にちょっかいをかけてきたエミュレイターだ。
 お前が、責任を感じなければないらないことなんて、何にもない!!」
「でも―――、おれが狙われてるんだ」

 襲撃された友人も、妖たちも、すべて夏目が狙われたとばっちり。
 その上、心優しい藤原夫妻まで巻き込んでしまったら。
 そう考えると、怖ろしくて仕方がない。

「―――だったら、俺が護る。
 お前も、お前の大切なモノも、全部俺が護ってやる!」

 強い眼光―――それがどれだけ困難か知っている。
 強い覚悟―――己一人の力は、ちっぽけなものだと知っている。

「それに夏目。お前は、一人じゃない」

 柊蓮司の瞳には、吹きぬける風に、燃え盛る炎のような意思が浮かんでいた。


175 名前:嘘予告:2009/03/29(日) 20:01:07 ID:rtAxXSBI
 ―――遺品としてそれを継いで以来、
    友人帳を狙う妖に襲われたり、希望者に名を返したり。と、てんてこまいの日々。




 ついに夏目の前に現れた魔王。

 白銀の光沢を放つ全身甲冑。
 鳥肌を覚えるほどの威圧を放つ両手剣。
 端正な相貌は、おぞましいほどに麗しく凛々しい。
 ありとあらゆる財宝を求めるもの。裏界の宝物庫番。『女公爵』モーリー=グレイ。
 月匣の中、夏目は一人きりでそれと相対する。

「さあ、友人帳を渡せ。それは人間風情には過ぎた宝。
 このモーリー=グレイが有効に活用してやろうではないか」 

 恐怖が、身体を駆け巡る。
 蛇に睨まれた蛙。蟷螂に出会った飛蝗。
 絶対的な捕食者を前に、指の先まで夏目は怖気に支配される。

「さあ」

 魔王が足を踏み出す。
 それだけで、魂の底まで震え上がった。

 断れば、命がないだろう。
 頷けば、命だけは助かるかもしれない。

 友人帳は妖との契約書。唯でさえ碌な事にならない妖との出会いを、加速させる厄介な代物。
 答えなど、解り切っていた。

「……る」
「ほう? 良く聞こえなかった。もう一度言え」

 うっすらと、魔王の貌に笑みが浮かんだ。
 足が震える、歯の根が合わない。それは絶対に賢い選択ではない。しかし、

「断るって、言ったんだっ!!」

 友人帳は、たった一つ、たった一つだけ祖母が残したもの。人と上手く付き合えなかった彼女の悲しみの記憶。
 顔も知らないけれど、唯一血縁の自分ぐらいは、遺品を大切にしたいし、繋がりを持っていたい。

「友人帳に名を連ねている妖たちは、ある意味で祖母の恩人たちだ。
 おれは、その名を預かっている。だから、おれには総ての名を妖に返さなければならない責任が在る!!
 ハイ、そうですか。と、簡単に渡せるか!!」

 たった一人で、それでも夏目は一歩も引かず、裏界の魔王を睨みつけた。 


176 名前:嘘予告:2009/03/29(日) 20:02:55 ID:rtAxXSBI
 ―――多くの妖を統べる友人帳。
    これを持つ限り、妖との縁は切れないだろう。


 振り上げられた剣が、落とされる。
 脆弱な人間如き、剣圧で押しつぶす断頭の刃。
 為す術なく、避ける事も受けることも、反応する事すらできず夏目の頭を直撃する。


 そんなコトを、一体誰が許すと言うのか。


 紅玉を砕くように、紅月を割る白い影。
 狐のような、猫のように優美なシルエット。
 陽光にも似た光の炸裂が、魔王の剣を吹き飛ばす。

「夏目は私の獲物で、友人帳は死後私が譲り受ける事になっている。
 横取りはやめて貰おうか」

 白い獣は、夏目を支えるように咆哮する。
「ニャンコ先生!!」

 ―――用心棒。斑。

 地を揺るがす衝撃。
 巻き上げられた土塊岩盤が魔王を直撃する。
「何者!?」
 大地の破片を両断し、声を挙げる魔王。

「キサマが、友人帳を持ったところで、面白くはない」

 巨大な影が、夏目の傍らに寄り添うように。
「ミスズ!?」

 ―――牛頭の巨人。三篠。

 空中で身を翻し、着地する魔王の足元に陣が展開する。
 わだかまる闇。伸展し、展開する黒の触腕が、甲冑の魔王を縛り上げる。
「嘗めるな!」
 魔力を解放、魔王は拘束を弾き飛ばし、術を放った者を睨みつける。

「良い女だが―――。夏目に手を出すコトは、許さないよ」 
 
 夏目を抱きかかえるように、その女は笑った。
「ヒノエ!?」

 ―――呪詛使い。ヒノエ。

「なんで、あんたたちが!?」

 驚きを隠せない夏目に、ヒノエが笑って言う。

「言っただろう。夏目。弱いお前を、私たちが護ってやるってな」

 今この場、月匣の最深部で魔王を取り囲むように並ぶ影。
 一つ目が、牛頭が、河童が、紅峰が、子狐が、ちょびが、

「夏目様! 夏目組犬の会!!
 参上しましたぁ!!」 


177 名前:嘘予告:2009/03/29(日) 20:03:35 ID:rtAxXSBI
 夏目が今まで関わってきた妖たちが、夏目を護るために集結した。

「みんな、何で―――」
「だから、お前は一人じゃないのさ」

 最後に、夏目の前に歩み出た柊蓮司が、己の魔器を魔王に向ける。

「皆、お前の為に集まったんだ。
 お前が、誰も傷ついて欲しくないように、皆お前に傷ついて欲しくないんだよ」

 神殺しの業を刻み、魔王の剣を取り込んだ魔剣。
 斑、三篠、ヒノエを中心とした妖たち。
 それらを前に、それでも魔王は、笑うことを止めない。

「面白い。面白いぞ貴様ら!!」

 魔王の疾走が爆発する。
 体重に魔力を上乗せした重たい一撃。
 叩き落される一撃を、同じく突進した柊が受け止める。
 軋む魔剣と魔剣。鍔迫り合いの下から、叫ぶ。

「言ってやれ、夏目!!」

 首を振る。横ではなく縦に、今この場に集まってくれた妖たちの思いに答える為に。

「皆、あいつを斃すぞ!!」 

 鬨の声、歓喜の咆哮が月匣をゆるがせる。
 赤き月の下、魔王の匣のその奥で、最後の戦いが始まった。 




 ―――それは、そんなある日の物語。
    妖を見る少年と夜闇の魔法使いの出会いの御話。











なお、本編は予告なくその内容が変更される場合があるので、あらかじめご了承下さい。


178 名前:嘘予告:2009/03/29(日) 20:04:54 ID:rtAxXSBI
以上です。スレ汚し申し訳在りませんでした。

179 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/29(日) 20:09:45 ID:ALPAvCbZ
あぁクソ、正統に面白れーわGJ!

嘘予告愉しく拝見しました。続くも続かないも作者さん次第なんでなんとも言えませんが。
夏目友人帳ってそんな話だったんだ、読んでみたいなーと思わせる嘘予告でした、面白かった。

さて、では禁書の次回を楽しみに待ってますよぅ。

180 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/29(日) 22:19:01 ID:6IpKVizC
GJっす。
けど、どーでもいいんですがモーリーってルーの部下でしたよね?
柊見たら問答無用で切り伏せそうな。あと、実は初対面ではなかったりするんだよな、
忘れがちだが。

181 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/29(日) 22:59:13 ID:/eZFtdca
柊……女顔だからって、男にまで無意識にフラグ立てなんでも……(マテ

それはともかく、グッジョブでしたー。
普通に読んでみたいっすー。

182 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/29(日) 23:45:12 ID:jdJvDLEP
ニャンコ先生と聞いてキャット空中三回転を思い出した。

183 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/30(月) 00:34:30 ID:LpO7Yh1g
>>180
そりゃーアレだ。

侵魔の群れが一度襲撃してきて、夏目を守りつつ戦う柊

片付いて一瞬気を抜いたところを、モーリー様不意打ち気味に怨みと特殊能力満載の一撃

柊重傷値になりつつなんとか撤退。

安全なところに逃げ込み、一息ついたと思ったらモーリーさん夏目だけをフォートレスにご招待。↓
仲間がかけつけラストに繋がる

と思えばなんともないよ!

184 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/30(月) 11:01:33 ID:jyx8/WbJ
だが、ニャンコ先生の姿を見て
あのモーリーが手出し出来るだろうか。

185 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/30(月) 13:10:23 ID:RaQZGTga
むしろ本来の姿に戻った瞬間に怒り狂うのではなかろうか

186 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/30(月) 23:25:57 ID:QWhb2WhV
学園世界の特別執行委員が、“特命”執行委員に見える事があるので。

「東大卒業の、杉下と申します」
「城南大OBの、亀山です」

「中の人が学習院中退の、米沢です」

187 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 06:56:18 ID:00DEBAfk
ここまで特命転校生ネタなし

188 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 08:21:43 ID:WQlXObDJ
自分で書いて出せばいいだけじゃね?

189 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 13:15:56 ID:4bevVwGC
転「校」生?

190 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:12:15 ID:PIcGyVgn
>>187
なにぶん公式的なものがルルブ、サプリの他は昔ファミ通文庫で出た小説1冊きりだからなあ。

極上生徒会みたいに名前だけ一緒の別物ってか制度の一種とかにした方がいいかも。
一見すると普通の交換留学だけど密かに色々と引き受けてる転校生。オーヴァードとウィザードがメインか?

191 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:32:57 ID:WQlXObDJ
書きたいなら書けばいい。書くほどの情熱がないならやめておけばいい。

192 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/03/31(火) 22:37:28 ID:h2hP4AaI
別に書かんでも雑談すればいいじゃん。

193 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 00:36:54 ID:aUU2cEwo
またこのパターンかよ! >SS保管庫

194 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 00:39:42 ID:yCblQrLS
アニメまとめwikiも楽しい事になってたw

195 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 00:59:59 ID:2VMfJSlr
パワーアップしたーーー!!

196 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 01:01:20 ID:Ft7WGAvg
ちなみに神田明神です。

197 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 01:01:46 ID:+RzVv3HO
またかよww
今年はないと思ってたw

よーし、今日はわたぬきの日だから今年書く予定のクロス先候補でも挙げるかー。

DXトワイライトステージでナチスが発掘した「夜を呼ぶ狼の牙」を巡り、快男児と肩を並べる話とか
KOFのエターナル高校生と補習で隣の席になる話とか
銀魂世界に落下して、一緒に万事屋やりながらエミュレイターへち倒す話とか
アルディオンにかっ飛ばされて色んな連中と戦ったり戦ったり戦ったりする話とか
任務で行った先のアパートの近くに「針山」って表札の家があったりする話とか
ドラまたにこき使われた挙げ句魔剣まで強請られる話とか

書く予定だぜ!(四月一日的な意味で)

198 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 02:22:56 ID:Ft7WGAvg
嘘の嘘は本当なのだ。


199 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 03:14:35 ID:+bpBBvxD
ホントNWは愛されてるなぁ〜

200 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 08:35:15 ID:61vZDEVT
今年も乙ってか中の人頑張りすぎだろw

201 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 17:23:43 ID:Iu18mGPk
そろそろ聖剣の人の続きが見たい

202 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:50:17 ID:tf2apZym
>>201
なんかPSが動かないらしいくて、
ゲームできないらしい。
ゲームしてシナリオ確認しながら書いてるから、しばらく無理かなーと言ってた。

203 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/01(水) 22:57:47 ID:+RzVv3HO
まーアレですよ、こーゆー時こそ「規制入ってるんだよ、気長に待とうぜ」って言うべきだと思うの。

作者さんをいつまででも待ってて、暖かく迎えられるような読者を目指そうぜ。
ついてはなんか話のネタないかな

204 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/04/02(木) 06:21:32 ID:LCTechYn
思ったよりも長くなりましたが、6時半から第5回を投下します。

205 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/04/02(木) 06:30:06 ID:LCTechYn
―――エヴァの茶室

ライズがエヴァの茶室を訪れたのは、日も落ちて辺りもすっかり暗くなった頃だった。

「それじゃあ…その、ソフィアさんって人が?」
エヴァの茶室を訪れたライズの“報告”を聞き、さつきが尋ね返した。
「ええ。ここ数日間、ソフィアが居住区内の食料庫で生肉の供出を受けている記録と、彼女が寮内の自室で何か生物を
 飼い始めたと言う証言を得ているわ。どうやら彼女に偽装の才能は無い…と言うよりその発想事態が無かったようね。
 そして今日、ドルファン学園で起こった“襲撃”。残された戦闘痕に爆炎の使用痕が含まれているのを確認したわ。
 あの時間帯、あの場所にいたのは、ソフィア1人。状況証拠としては十分よ。
 ソフィア=ロベリンゲがあの狐を匿っていることと、彼女がモンスターを倒した“魔術師”であることは、ほぼ間違いないわ」
自らの“隠密”の才能を使って調べ上げた事実を淡々とあげ、ライズは結論を述べて、他のメンバーの判断を聞く。
「…どう思います?エヴァさん」
頭に思い浮かんだ“自らの答え”に嫌悪感を覚えながら、一狼は“カゲモリ”のブレインに確認する。
「ふん。恐らくはその狐とやらと“契約”をして力を得たのだろう。魔術師の従者みたいなものだ。
 他の人間の能力を奪って自らのものとする能力、か。ゲスな力だが、それだけに有効でもある」
エヴァが自らの見解を述べる。やはり同じ答えか。その事に一狼は表情を堅くする。
「…どうした斉堂?あまり浮かない様子だが」
「ええ…これは僕の世界での話なんですが…」
前置きをして、自らが先ほど達した“自らの答え”を話し出す。
「僕らの世界でも侵魔…いわゆるモンスターの力を得て戦う力としている人たちがいます。同調し、お互いを唯一無二のパートナーとする“魔物使い”、
 正当な儀式を経て契約し、相応の対価を支払う事でその力を借りる“侵魔召喚術師”、魔王級の、極めて強力な侵魔から“力”を与えられた“落とし子”
 …このどれかなら問題は無いんです。輝明学園のウィザードにもいますから。ですが、それ以上に多いのが…“アモルファス”です」
「アモルファス?」
「…amorphous。一定{いってい}の形を持たない、不定形{ふていけい}の、無定形{むていけい}のと言った意味があります。
 また、ガラスなど、鉱物において一定の結晶体を持たないものを指します」
聞きなれぬ単語に首をかしげたさつきに、茶々丸が解説をする。
「…さしずめ“化け物と人間の混ざりもの”、と言ったところか?」
「そうです。侵魔に憑かれて、モンスターと化した存在のことをそう呼びます。もしソフィアさんがその類に属する場合…」
正解を当てたエヴァに対して一狼は堅い表情で頷く。
絶滅社の傭兵として戦ってきた一狼であるだけに、アモルファス化が発生したケースもごまんと聞いてきている。
だからこそ知っていた。アモルファス化した動物や人間との戦闘になった場合、大抵のその結末は…
「…助けるのは、難しいかも知れません」
悲劇で終わる。
部屋に沈黙が訪れる。嫌な沈黙だ。

206 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/04/02(木) 06:32:08 ID:LCTechYn
「…“ウチのじじぃ”から電話だ。少し話してくる」
最初にそれを打ち破ったのは、エヴァの0-Phoneの着信音だった。
エヴァが客室の1つに入り、ドアを閉める。
そして、その場に残された4人に、再び沈黙が訪れる。
「…どうやら少しでも早く仕留める必要がありそうね」
次にその沈黙を破ったのは、報告をしたライズ自身の発言だった。
「…ライズさん。それはつまり」
堅い表情のまま一狼は確認をとる。
「ソフィアを殺す。そう言ったのよ」
ライズがあっさりと、自らの答えを口にする。
「ええっ!?殺すって!?」
ライズの物騒な発言に、さつきが目を見開いた。
「何か問題が?」
むしろさつきが驚いていることに怪訝そうな顔をして、ライズは問い返した。
「え?だって、その、ソフィアさんってライズさんのクラスメイトで…」
「今は敵よ」
さつきの言葉に重ねるように言いきる。
「…やはり、ですか」
ライズの答えを予想していた一狼が、呟くように言う。
短いつきあいではあるが何となく分かる。
目の前の少女は、目的のためには自らの手を汚すことも厭わぬ、根っからの“プロ”であると。
「で、でも、斉堂くんも言ってたじゃない。“難しい”って。助けられないってわけじゃないんでしょ?」
さつきが助けを求めるように一狼に目を向けて問いかける。
考えていることは分かる。誰かを殺して解決するなど一狼としてもごめんだ。
「…アモルファスと同じなら、同化が浅ければ、引きはがして治療すれば助けられることもあります。
 ですが、もしもう分離できないほど同化が進んでいるのなら…ライズさんの言う通りにするしかありません」
「…そんな」
だが、嘘はつけない。一狼もまた、本来はライズと同じ側に立つべきものなのだから。
一狼は知らず知らずのうちに血の気が失せるほど手を握りしめていた。
(…しっかりしろ。斉堂一狼。お前は、守りたいものがあるから、ここにいるんだろう)
一狼の脳裏に浮かぶのは、1人の…誰よりも大切な少女の笑顔。それを守りたいから一狼は“カゲモリ”になった。
学園世界の危険を陰から陰へ葬り去る、裏の仕事である以上、この手の“任務”は十分にありえる。
その理解と、覚悟があったからこそ一狼はこの任務を引受け、少女…姫宮空を決して巻き込まぬと決めていた。


207 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/04/02(木) 06:33:45 ID:LCTechYn
「…なんにせよ。選べる選択肢は2つ」
部屋に電話を終えて戻ってきたエヴァの声が響き、部屋にいた4人の視線がエヴァに集中する。
「“動く”か“動かない”か、だ」
「どういうことです?」
エヴァの言うことの意味が分からず、問い返した一狼に、エヴァが0-Phoneを手に、答えを返す。
「被害者の友人が、個人的に動いているらしい。その中に“極上”の代表生徒と“執行委員”の相良宗助が混じっている。
 つまりは我々が動かずとも最悪“極上”どもが何とかするだろうと言うことだ。
 …さてガキども、どっちにするかさっさと決めろ。私はどっちでも構わないがな」
「あの、エヴァさん。ちなみに“極上生徒会”に任せるとどうなるんです?」
「ふん、なんだかんだ言ってあいつらは強い。その狐とやらがどれだけ強いか知らないが、負けることはまずありえないだろう。
 ただし、助かるかどうかは分からん。ついでに助かっても“正体”は露見することになる。あいつらはとにかく“目立つ”からな」
この学園世界において、『極上生徒会』の行動は常に学生たちに注目されている。
特に『執行部』が動くとなればその事実は瞬く間に学園世界中に広まる。

「…そう。それなら、私たちが動く必要は無いわね」
最初に結論を出したのは、ライズだった。
「彼らが代わりにやってくれると言うのなら、危ない橋をわざわざ渡ることは無いわ。
 今動くと言うことは、私たちの存在を知られるリスクを犯すことになるもの」
淡々と自らの考えを語り、静かに他の3人の意見を待つ。

「えっと。私は…やっぱり私たちで何とかしたいかな」
さつきがはっきりと自分の意見を言う。
「だって可哀そうだよ。ソフィアさんは悪くないのに、とりつかれたからモンスターにされちゃう、なんて。
 私はそのソフィアさんのことはよく知らないけど、普通の人間から“化け物”になると大変だって言うのは知ってる。
 何か、みんなには知らせたくないけど、大変なことが起こったとき、みんなには内緒で何とかするのが“カゲモリ”でしょ?
 だから、今回の事件は私たちが何とかしたい…ううん。しなきゃいけないと思う」
さつきは自らの過去を思い出していた。“化け物”となってから学園世界に来てカゲモリで“保護”されるまでの、文字通りの意味で死にかけた日々を。
辛い日々だった。だからこそ、見て見ぬふりはできないし、したくない。

「…私は、マスターの意思に従うだけです」
茶々丸がただ一言、呟く。これで、ほぼ全員の意見は出そろった。
4人の視線は自然とその場にいる最後の1人、一狼へと集まる。

「…僕は」
そして、一狼が自らの考えを口にした。


208 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/04/02(木) 06:35:47 ID:LCTechYn
―――???

…夢の中でも“私”は戦っていた。

「馬鹿な…銃弾をはじき返しただと!?」
頬に傷のある男の子が驚いて声を上げた。
無駄だよ。今の私には“ガン”は効かない。
「だったらこっちはどうじゃい!?」
あ、痛い。女の子の剣で腕を斬られた。速いなあ。まるで“人間”じゃないみたい。
痛かったからおかえし。焼けちゃえ。
―――フレイムブラスト!
“私の口”から言葉が漏れて、辺りに炎をまき散らす。
「くっ!?魔法か!?」
「熱ぅ!?」
傭兵さんと女の子が炎に包まれて火傷する。でも、倒れない。
「宗助!サンちゃん、大丈夫か!?」
離れた所にいた赤い髪の男の子が、持ってた鞄から何かを取り出して、投げつける。
地面に叩きつけられたそれが爆発して…
「薙原、感謝する!」
「あんがとな!薙原さん!」
中に入った癒しの力が宿った粉が撒き散らされて、2人の傷が回復する。
「こいつ、剣なら効くらしい!宗助!なんか刃物みたいな武器は持ってるか!?」
「…了解した!」
赤い髪の男の子に促されて、もう1人の男の子が銃をしまって切れ味の良さそうなナイフを構える。
う、2対1かあ。ちょっと大変かも。でもまずは…
「さっきから、うるさいよ」
さっきから後ろで色々とうるさい赤い髪の男の子に“尻尾”を叩きつける。
「ぐあ!?」
あはは。弱いなあ。まるでボールみたいに吹き飛んだ。
でも許さない。このまま、壊れちゃえ。
アアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーー!
大きな“声”を赤い髪の男の子にぶつける。
避けられる速度じゃない。これで、1人…だったはずなのに。
「さ、せ、ん、わあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
私の“声”が間に割りこんだ女の子の“声”で打ち消される。それどころか衝撃がこっちにまで返ってきた。
ちょっとだけ耳が痛い。威力は向こうの方が上かな。私には効かないけど。
「あんがとな!サンちゃん!」
その間に赤い髪の男の子が鞄から薬を取り出して、飲んで体勢を立て直した。
「まだだ!俺たちは、負けない!取り戻すまでは、負けられないんだ!」
…え?
「取り戻すって、何を?」
「とぼけんな!」
私が聞いたら、赤い髪の男の子に怒鳴り返された。
「お前がさっきから使ってる“力”…」
使ってる?もしかして、私の“力”のこと?
赤い髪の男の子がさらに言葉を重ねる。
「そいつは…リナの“魔法”はな、あいつが必死に努力して身につけたもんだ!そう簡単に、くれてやれるか!」
違うよ。奪ったんじゃない。
「…俺は、千鳥の“能力”を奪ったことは特に問題にしない。千鳥自身気にしないと言っていたし、日常生活を歩むには必要ない。そう言う類の力だ」
元から持ってた…あれ?違う?これは…
「だが、俺は千鳥の護衛だ。故に千鳥の安全を脅かすものには…相応の対処をさせてもらう」
これは…
「ルナちゃんの歌はルナちゃんのもんじゃ。それを奪って使うなんて真似、例えお天道さんが許しても、うちが許さん」
そう…
「人の道外れた“外道”にはきっちり落し前つけてもらう。任侠と書いて…人魚(にんぎょ)と読むきん!」
チェフェイが、くれた力?
(そろそろ頃合いね。楽しかったわよ。ソフィア)
そんな、知らないけど知ってる“誰か”の声がして…

私は、目を、覚ました。

209 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 06:46:38 ID:7nwNX/P5
…投下終了なのかしら?

210 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/04/02(木) 06:47:44 ID:LCTechYn
―――学園世界 特別居住区

「い、痛い!?これって…夢じゃないの!?」
突然先ほど燦に斬られた腕をおさえ、狐の仮面をつけた女が狼狽して叫ぶ。
「なんか変だな?」
ユウキは先ほどまでとのギャップに首をかしげる。
「…隙ができた!一気に攻めるぞ!瀬戸!」
「分かっとる!」
前で戦っている2人はそれどころじゃなく、畳みかけるように連携し、攻撃を仕掛けていく。
「きゃあ!?」
2人で繰り出される斬撃を必死でかわす。
先ほどまでの、恐ろしく強いモンスターと同一とは思えない、必死さだ。
「宗助!サンちゃん!ストップ!なんか、変…」
そして、ユウキが2人を止めようとしたときだった。
ボゥン!
「うわ!?なんじゃいこりゃ!?」
「くっ!?煙幕か!」
何かが投げ込まれ、辺り一体が煙で包まれる。
それで生まれた隙をつくように、女が逃走する。
「待て!逃がさ…!?」
慌てて追おうとした宗助が立ち止まる。その直後。
カカカカカ!
目の前に氷の塊が撃ちこまれる。
「何者だ?」
再び銃を抜きながら宗助は冷静にその氷…魔法を使った女に問いかける。
美しい金髪の、レザーのドレスを着た、大人の女。だが、そのつり上がった眼には、明らかな敵意が宿っている。
「なぁに。私たちはただの…“陰”さ」
女はにやりと不敵に笑う。
それに答えるように更に2人。狐の面をつけた少女たちが現れる。
「あんたら…あのごんたくれの仲間かい!?」
それを見て、燦が激昂して叫ぶ。
「仲間か…ふん。そんなつもりはないが、まあ好きなように思えばいい。あれを追うことを邪魔をするのには、変わらんからな」
そして、傍らにいる2人に声をかける。
「下僕1号2号。3対3だからと言って気を抜くなよ。油断すれば、こっちがやられるぞ」
「了解しました。マスター」
「うん!任せてエ…じゃなくてマスター!」
マスターと呼ばれた女に応えるように、2人の少女が構える。
「…さて、殺しはせんが…少しの間、大人しくしていてもらおうか」
そう言うとともに懐から魔法薬の詰まったビンを取り出して女が嗤う。
「お前たちが何物かは知らん。だが邪魔をするならば、排除する!」
「そこをどかんかい!うちらは行かなあかんのじゃい!」
宗助が銃を、燦が刀を構え、戦闘の態勢を取る。
「あんたらが、何物かは知らない。けれど邪魔するってんなら…」
そしてユウキも再度気合いを入れ直し…
「無理やりにでも、そこを通してもらうぜ!」

3対3の…“時間稼ぎ”が始まった。

211 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 06:50:37 ID:7nwNX/P5
失礼しました。では支援〜。

212 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/04/02(木) 06:50:59 ID:LCTechYn
―――居住区

居住区の外れ、人の滅多に通らないその場所を、ソフィアは必死に走っていた。
はぁ、はぁ、はぁ…
息が、切れる。腕がさっきから痛みでじんじんと痺れている。
(怖い。怖いよ…)
先ほどの、死への恐怖と、同じ“人間”から向けられた殺意にソフィアは震える。
その臆病さがチェフェイと出会ってから忘れていた“昔の自分”に戻ったみたいで、不快だった。
(そうだ、チェフェイ…あの子は、どこ?)
どの道これ以上は走れない。一旦足を止め、ソフィアはキョロキョロと辺りを見回す。
(寮にいるの…?でも気配が…!?)
姿は見えないが確かに気配を感じる。それを頼りにチェフェイを探していたソフィアが息をのむ。
窓ガラスに写った、自分の姿に。
(何で私、こんな格好をしてるの!?)
狐と人間を混ぜ合わせたような東洋風の面と東洋風の服。どちらもソフィアには覚えのないものだった。
(一体どうなって…!?)
慌てて自分の姿を確認して、ソフィアは更に混乱する。
(な、なにこれ!?)
爪は堅く、鋭くとがった“武器”と化し、尻からは6本の“尻尾”が生えている。
(これじゃまるで…)
今のソフィアの姿はまるで…
「私、悪魔じゃない…」
“悪魔”そのものの姿になっていることに気づいたソフィアが茫然と呟いた。
「どうしよう…どうすれば…!?」
ひゅんっと。
風きり音がソフィアを通り抜ける。
カラン…
奇麗に2つに断ち割られた面が地面に落ちる。そして。
「…やはり、あなたが“狐”だったのね」
聞き覚えのある声に、ソフィアが声の方を向く。
そこに立っていたのは、見覚えのある、少女だった。
その手には美しい装飾の施されたレイピアを持ち、着ている服も輝明学園の制服だったが、顔とトレードマークの“手袋”は、間違えようも無い。
「ライズ…さん?」
ソフィアが確かめるようにその名を口にする。
「…イチロー。この辺り一帯を“封鎖”してちょうだい」
ソフィアの問いかけには耳を貸さず、ライズは冷静にこの場の“もう1人”に声をかける。
「…分かりました」
そんな言葉と共に、ソフィアを慣れた感覚が包み込む。
「え…これって…異界化?」
「違う…これは“月匣”だ」
そんな声と共にあの日、ソフィアが見た東洋人の少年が降り立つ。
「今度は逃がさない。ソフィアさんは返してもらうぞ」
目の前の少女に、確固たる意志を込めて、一狼が言う。
「組織の決定である以上、努力はするけど…手は抜かないわよ。イチロー」
一狼にそんな言葉をかけながら、ライズがレイピアを構える。
「分かっています。僕だって、絶対に助けられるとは、思っていませんから」
そう、自分はあの“魔剣使い”みたいにはなれない。だったら、できる範囲で努力するしか無い。
そんなことを考えながら、クナイと刀の二刀流を準備して、一狼が戦闘態勢を取る。
(一体なにがど(ふぅん。なるほどね…)誰!?)
ソフィアの思考に“ソフィアじゃないもの”の思考が紛れ込み、ソフィアが混乱する。
(いいわ。こいつらには恨みもあるし…もう1回、力を貸してあげる)
ソフィアじゃない何かがそう“考える”と同時に。
(あ…なんだか…眠い…)
ソフィアの意識が混濁する。
自分とその何かが混ざり合い…同化する感覚。混乱が嘘のように消え、代わりに冷静に勝利までを計算する思考が宿る。
(そっか…これって…チェフェイだったんだ)
ソフィアがその中で“ソフィアじゃないもの”の正体に気づいたのは、“ソフィア”としての意識が消え去る直前。
そして。
「―――殺してあげる。あたしからの、愛を込めてね」
2人と“鬼女チェフェイ”の闘いが始まった。

213 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/04/02(木) 06:53:16 ID:LCTechYn
今日はここまで。後はクライマックスとエンディングで終わる予定です。

>>168
と、言うわけでようやく一狼のターンです

>>169
実は予定通りです。「極上とかちあったらカゲモリはどうするか」ってのが今回のテーマの1つだったりします。

214 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:06:04 ID:ny5vO2m/
      /: : : : : : : : : : : : : : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.::ヾヽ  【保管のお知らせ】
   , 、   ':: : : : : : : : : : : : : : :; ヘ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.::: ヘ  《学園世界》
   ! \{: : : : ___:_: : /   :.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.::.:l l  ●歌い手は魔に魅入られる #03 #04 #05
   l   `l ̄: : : : ::::::::::: ̄:l    l.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:l  l  ●とある世界の騒動日程(トラブルデイズ) #03
   l   l: : : : : : ::::::::::::::::::l    '.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/  ′  ●休日の過ごし方(同好会編)
   ヽ  l: : : :: : : ::::::::::::::::::l   〈.:.:.:.:.::.:.:.::.:/   /   ●平日の過ごし方(部活動?編)
   /   :: : : : : : ::::::::::::::::::l    ';:.:.:.:.::.:/  /    ●前スレ>629 ジャスティスV
  ,'    丶:: :: : : :::::::::::::::/     l─''´    /    ●前スレ>554 ペルソナ4
  l     ヽ: : : ::::::::::ノ      l     /     ●>16保健委員会 #02
  l  、      ̄ ̄       ,   l  , イ      ●>41 特攻野郎TRPG部
   、 ヾ ィ⌒r 、     ,ィヘ⌒> 〃 l r'        ●>76 特別執行委員異聞
   ,ヘ    ̄`ヽl)    V´ ̄    ' l         ●>186 “特命”執行委員
   { \ ニ     、,    ニ  / /          ●>581 執行委員壊滅す        
   \  >-、 t__人__ノ__,. イ ./          ●執行委員の楽観
      ヽ _ ミ)廴:::::::::リ(ミ  _/           ●報道委員の羽撃(はばたき)
        ̄   ̄´   ̄
《独立作品》
 ●妖(あやかし)が多すぎる 〜柊蓮司と夏目貴志〜
 ●柊蓮司と銀なる石の少女


【お願い】
 執行委員、保健委員、休日の過ごし方、特別執行委員異聞など、シリーズものだと思われる作品を投下した方へ。
 適当でいいのでシリーズ名をいただけると助かります。


……っていうか作品たまりすぎ。
エイプリルフールのネタ作りなんかやってたせいだ、きっと。

215 名前:214:2009/04/02(木) 15:06:52 ID:ny5vO2m/
リスト部分、曲がりすぎだろう。

216 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:07:08 ID:mNM31pm3
ちとネタ振り&質問。

機動戦士ガンダム00のGN粒子が
魔力の様に月衣も世界結界の干渉力も突破出来る謎パワーをも秘めていて、
00世界の地球に置いて世界結界を破壊しようと三大盟主国や
アロウズの裏の更に闇で暗躍する魔王達と、ヴェーダからの予言に拠って
00世界で唯一つ(当事者達は“イオリア計画”の建前通りの事項しか
知らずに行動しているだけとは言え)魔王と裏界を明確な仮想敵として
ソレスタル・ビーイングが戦いを繰り広げている
・・・・・・ってのもアリかな?

イオリアの盟友に、実は密かにアンゼロットとか居ても不思議じゃあ無ぇなぁ・・・・・・・w

217 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:14:29 ID:mNM31pm3
それにしても、ソウルアーツのメディウムの登場で
ペルソナ3&4やトリニティソウルやスクライドやジョジョとのクロスの
垣根もかなり低く出来る様になったよなぁ。

218 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:15:25 ID:uOzD/SDU
まとめサイトのコピペミス見つけたけど一行コメントで指摘するのは分量が多くて難しそう
どうしようか

219 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:21:28 ID:mNM31pm3
>>218
なら、作者とまとめ管理人に宛てて此処で指摘レス書き込めばどうかな?
まだスレ序盤だから、それなりに長い期間は人目に触れさせられるでしょ。

220 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:30:57 ID:ny5vO2m/
Wikiってのは、誰でも編集できるシステムなんだぜ…?


というのはさておき、ミスなどあれば受け付けます。
遠慮せずにどぞ。

221 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:36:54 ID:mNM31pm3
>>220
>>218の指摘して下さる方が携帯ONLYの方かも知れぬぞよ?
(※注:Wikiは、システム上の問題で携帯からでは一切の編集作業をさせて貰えない)

222 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 15:51:55 ID:uOzD/SDU
>220
そうでしたか
こちらで編集しておきます

223 名前:夜ねこ:2009/04/02(木) 15:53:17 ID:4tLQj25O
>>220
乙。いつもお世話になっています。
申し訳ないのですが、基本的に生活拠点に編集のできる端末がないもので、お願い出来ますでしょうか。

自分の書いたのは「執行委員の喧騒・楽観」および「報道委員の羽撃」ですが
これらを「『執行委員の〜』シリーズ」としてまとめていただけると助かります。
ついでに「報道委員の羽撃」は外伝扱いでまとめていただけると嬉しいです。

大変ご迷惑をおかけしますが、お願いできますでしょうか?

224 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 17:26:45 ID:ny5vO2m/
>222
まあ、どっちでもいいですよ。
Wikiの編集方法が分かるなら、自分でやった方が早いって言うだけなので。

>223
完了。


225 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 17:44:58 ID:PuuRIF2a
>214
これはおつとしか言いようが無い

226 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 18:25:15 ID:MukCeU9v
>>213
GJ
そうか、執行委員が『遊撃』でカゲモリが『隠密』か
考えてそうしたのか、図らずもそうなったのかは分からないが
実に『極上生徒会』らしい仕組みだ

>>214
乙です

227 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 19:50:12 ID:GeL5yGS8
保管庫の名前変わってない?

228 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 20:28:43 ID:MyVAB+4M
宜しければ20時40分過ぎから投下したいと思います。

>>214
保管ありがとうございます。
いつの間に超☆がついたんですか?ww

>>179‐185
嘘予告が意外と好評で驚きました。
柊じゃなくて天竜とゲシュペンストが活躍? する感じで組んだプロットが在ったりしますが(笑)



229 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 20:44:53 ID:ghfSqDBr
第四章 表裏の無環 _silly_go_round_

 1

 「はわっ?」

 何時もの口癖が、間抜けな声で口から漏れた。
 壁際に書架、中央に天然材の接客用のテーブルにソファー。その奥にマガホニー製の執務机。
 部屋の上座に据え付けられた机に、座っている巫女服の少女は、電話相手の言葉を正確に聞き取れなかった。
 
『だぁかぁらぁ、今回の命令をこっちに回してきた連中を教えろっつってんだ。
 それからっ、魔王監視部隊ってのがあったんだろ!? ソイツらについてもだ!!』

 巫女服の少女。世界の守護者代理見習心得兼輝明学園理事長代理。そして、極上生徒会対侵魔対策班長の赤羽くれはに、粗雑で乱暴で無礼な口を叩く男。
 彼女の幼馴染であらゆる意味で伝説的なウィザード、柊蓮司。

「はわ? どーゆーこと柊? 何で柊が監視部隊のこと知ってるの?」
『いいから答えろよ』
「いいから答えろって……、まぁいいか。
 今回のって、あのアゼル・イヴリスの話でしょ? それなら、『ガイドライン』に沿って出された筈だけど……。
 魔王監視部隊ってのも、その一つだよ」
『『ガイドライン』? なんだそりゃ』
「うん。柊も、ベルとかアゼルがこの世界に来てるのは知ってたでしょ? 特に何もする様子が無かったから、そっちからは手を出してないと思うけど―――」
『ああ。藪を突いて怪獣を出したくはねぇしな。で?』
「極上生徒会とか、ジジイ四天王とかもそういう考えだったの。リスクは排除するより管理しろってことだね。
 で、何か在った時早急に対応する為の決まりごとが、『ガイドライン』で、魔王の動向を逐一報告する為に必要だったのが『監視部隊』ってことだね。

 そ、れ、と。『監視部隊』にはチームが二つあるの。
 ベルとアゼルにプレッシャーをかける為に、表立って監視していた『囮チーム』と、気付かれないように監視していた『本命チーム』。
 で、この囮チームは学園都市の第六学区が消滅した時に、一緒に消息不明。たぶん、荒廃の力をもろに受けちゃったんだと思う。
 だから、今アゼルたちを追っかけてるっていうなら、それは本命チームのほうだね」

 机の奥から、資料を引っ張り出して書いてある情報を柊に伝える。

「で、この本命チームは、魔王たちに知られちゃいけないから、徹底した秘密主義でね。私だってリーダーの簡単な経歴以外知らないのよ。
 輝明学園の校長にでも聞けば判るかもしれないんだけど、あの爺さん、今連絡取れないしね」

 そして、くれははその言葉を口にした。

「今回の命令は、監視部隊から上がってきた情報を元に、極上生徒会が決定したことだよ」

 電話の向こうで、幾らかの沈黙が落ちた。

『じゃあ何か? 人質の命を不問にするとか、最終的にそんな判断下したのは極生なのか?』
「……そうだね。柊は嫌いだろうし、私も納得なんかしてないけど。
 でも、この学園世界を管理する極上生徒会としては、魔王級のエミュレイターなんていう世界ごと滅ぶ危険性のある場合に、それでも人質最優先とはいえないでしょう?」

 ソレこそ、ディングレイやシャイマールの時みたいにさ。
 くれはの唇は、意識せずに歪んだ。
 それは、かつて自分や友達を追い詰めた決断と同じものを降すのに、自分が関わったという、自嘲的に苦い笑みだった。


230 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:44:59 ID:4tLQj25O
支援。待ってる。

231 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 20:45:52 ID:ghfSqDBr
 
『……。すまん』
「柊が謝る事じゃないよ。
 それに、極生のみんなもこんな決断を下したくなんてなかったんだから。だから、皆、柊たちに期待してる。
 『みんな』を助けて―――私だって、協力は惜しまないからさ」

 そう言う笑顔は輝いていて、もしも、柊とくれはが電話越しにではなく、対面して話していたのなら。そのときのくれはの貌こそ、最高に最強だと思ったことだろう。
 きっと口にすることは無いだろうけれど。
 柊は強風に髪を弄られながら、大きく一つ頷くと、

『任せとけ、そのための『執行委員(おれたち)』だ。
 早速頼むな。ざっざざっンっざざあにざざああえてくれ』
「はわ? 柊? ゴメン良く聞こえない、アンタ一体何処に居るのよ?」
『今、学園都市の第一〇学区に向けて箒で飛んでる所だ。『魔王の人質』から電話があったんだよ』
 
 再び、幼馴染の言葉を世界の守護者見代理習い心得は、理解し損ねた。

「はわぁあ!? ソレどーゆーこと?」
『だから、そのまんまだ。
 本人は人質になってるんじゃなくて、アゼルの能力を抑えるために協力してるって言ってた。
 名前は『上条当麻』。なんでも『幻想殺し(イマジンブレイカー)』っつうありとあらゆる異能を否定する右手を持ってるらしい』
「はわあっ!! ちょ、ソレ初耳。
 じゃあ人質ごと殺せっての駄目じゃん!!」

 何かの間違いで、上条当麻だけが死亡した場合、幻想殺しが荒廃の力を抑え続けるとは思えない。
 その結果は……、火を見るよりも明らかだ。

『ああ、だからとっととその部分を撤回してくれ。現在進行形で監視部隊に命狙われてるらしくてな。これから保護しに行くところだ』
「は、はわわわ!
 わ、わかった、極生に議題として出してみる! ちょっと時間掛かるかもしれないけど!
 そうだ、なんか証拠無い!? だったら私の権限で仮命令出せるかもしれないから!」
『一応、電話のログなら部室に残ってる筈だ。初春にそっちに回して貰う、任せたぞ』
「オッケー、任された。急いで保護してね柊。迷ったりしないでね。
 その、カミジョウ、トウマ君。だっけ? 極生としても色々聞きたいから!」
『任せとけ。地元民(みちあんない)が一人いるし、今、第一〇学区に入ったところだ』

 流星のように、青い光の尾を引き、柊が跨るウィッチブレードは風を切り裂いて空を翔る。

「あ、そうだ柊。他の執行委員のみんなは何してるの?」
『ああ、アイツラなら―――』


232 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:46:43 ID:ny5vO2m/
しぇん

233 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 20:47:24 ID:ghfSqDBr
 2

 「はいはいー、皆さん急いでくださーい。でも決して走らないようにー走ると危ないですからねぇー」

 声を発しているのは、ピンクの柄と多面体の水晶の様な構造物の先に、五芒星の頂点を金と白のリングで囲み、一対の鳥の翼をあしらった杖。
 デザインといい色といい、ある意味完璧なそれは、科学(じょーしき)的に言って喋るようなものではないが、科学万歳なこの街の住人たちはとり立てて騒ぐ事もない。

「まだ大丈夫だよ。余裕あるから慌てないでね」

 何故ならその杖を持った女の子は、ピンクと白のある意味完璧なデザインの衣服をまとっているのだから。
 こと、科学バンザイな学園都市の住人たちも、異世界の事情に関してはそのまま受け入れる事をモットーとしているのだ。

「イリヤさん、そろそろ限界人数ですよー。転送の準備をしてくださいねー」

 ステッキが喋り、少女が杖を振るう。足元に広がる魔法陣が、ここに集まった人間みんなを別の場所へと誘った。

 執行委員のメンバーの一人、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
 愉快型魔術礼装『カレイドステッキ』によって、魔法少女カレイドルビー・プリズマイリヤに転身する、ニッチな小学生である。
 
 上条からの電話の後、行動指針を定めた執行委員は即座に行動に移った。
 イリヤと後数名が担当するのは、学園都市の住人たちの避難誘導である。

 第六学区が消滅した学園都市は、戦争状態に入ったことを示す、戒厳令(コード・ブラック)が発令されていた。
 本来ならば、各学区に設置されている避難用シェルターに、住民たちは避難するのだが、荒廃の魔王の能力を前にすれば、対核シェルターであっても紙屑同然である。
 ならば。と、極上生徒会は学園都市の住民全員を避難させることを決定した。受け入れ先は、麻帆良などの広大な敷地を持つ他所の学園。
 そして、すべての住人を避難させ終えた後、学園都市全域に多重複合結界を敷き、アゼル・イヴリスを閉じ込める。
 
 それで何処まで『出るかもしれない』被害を抑えられるか判らないが、少なくとも何もしないよりはマシである。

 転送魔法を使うこと十数回。かなりの人数を避難させ終えて、イリヤは息つく間も惜しんで0-phoneを手に取った。

「もしもし、初春お姉ちゃん? 第七学区は大体終わったよ」
『お疲れ様ですイリヤさん。此方でも確認しました』

 この街の風紀委員(ジャッジメント)は、部室で情報関係のバックアップを担当している。

『他の学区の皆さんも、大体誘導を終えています。具体的な人数確認はコッチでやりますから、逃げ忘れている人が居ないかどうか、確認をお願いしますね』

 分かったと頷いて、イリヤはその身を宙に浮かべる。魔法少女=空を飛ぶものという頼もしい思い込みによって、飛行は十八番なイリヤである。

 風を切って空を昇る。
 イリヤは上空に待機して、杖を掲げた。
 学園都市の第七学区は、第二三学区に続いて広大な区域である。
 様々な中学校、高等学校がひしめき、其処に通う学生たちの為の学生寮が乱立する入り組んだ街を、一人で見て回るのは効率が宜しくない。
 故に、杖から供給される強力な魔力にあかせて、魔法での広域探査を行おうというのだ。


234 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 20:48:28 ID:ghfSqDBr

「行きますよー」

 杖の発した能天気な声に伴って、巨大な魔法陣が第七学区にゆっくりと下りてゆく。

「むーむーむー」

 黙考するような杖。

「どう? まだ誰かいる?」
「ピコン! 第七学区の南東のほうに反応ありです!」
「わかった。南東だね」

 頷くと、イリヤは空を行く。
 残念な事に、この魔法は走査範囲を広げれば広げるほどに精度が落ちて行くという難点が在り、これだけの範囲だと、大まかな方角が分かるだけなのだ。
 だから、正確な場所を特定するには、探索範囲を狭めながら幾度か繰り返して、力技で何とかする他無い。
 幾度目かの探査の後、彼女はとある学生寮に辿り着いた。

 七階の部屋の、インターホンを押す。
 反応が無い。

「―――誰も出ないね」
「もしかしたら倒れてるのかもしれませんねぇー」
「って、大事じゃんソレ! 何暢気なこと言ってるの!!」

 反射的にドアノブをまわすと、果たして、ドアはすんなりと開いた。

「……、……」

 二時間サスペンス(さつじんげんば)のような都合のよさに、少々顔が引き攣る。

「おじゃましまーす」

 おっかなびっくり部屋の中をイリヤが覗けば
 
「イリヤさん、貴女がそんなにビクビクする必要ないんですから、ほらっ!!」
「わ、ちょっ!!」

 無責任な事をいってステッキが突撃し、引き摺られるようにイリヤもあがりこむ事になった。
 
「どなたかいらっしゃいませんかー!! 執行委員のものです!!」
「だから、ちょっと待ってば。 っ!? 黙って――」

 大声を張り上げるステッキを他人ん家の壁にたたきつけて黙らせてから、イリヤは耳を澄ます。
 先ほど、かすかに人の声がしたような気がしたのだ。

「………た」

「!」
「!」

 弾けるように室内に突入する。
 典型的なワンルームマンション。キッチンを廻って生活スペースを覗き込めば、

「………った―――」

 女の子が一人倒れていた。


235 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:48:39 ID:7nwNX/P5
しぇーん

236 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 20:49:27 ID:ghfSqDBr

「だ、大丈夫!?」

 年齢は、イリヤより幾らか上だろうか。全体的に白い印象を受ける女の子だ。
 銀色の髪に白い肌。典型的な白色人種の特徴に、真白な衣服。それは、十字教の修道女が着るカソックだ。
 ただ、布地の白を縁取る金色と織り込まれた繊細な刺繍が、高級なティーカップのようにも見える。

「ォ、―――――――」

 その、純白シスターの唇が動く。
 何を言っているのか聞き取ろうとして、イリヤは耳を近づける。
 神経を集中した聴覚は、かろうじてシスターの言葉を聞き取った。

「おなかへった」

 それは、酷い衝撃だった。
「…………」
 なんと言うか、いろんな何かがぶち壊しで在る。
「………」
 いつも五月蝿いカレイドステッキも、海のような沈黙を保っていた。

「おなかへった」
「………」
「………」
「おなかへった」
「………」
「………」
「おなかへった。って、いってるんだよー」
「………あ」
「………ハラペコロリっこキタァ―――――――――――――――――――――!!!!!!」

 突如ステッキが絶叫する。
 どうやら、なんだか変な方向に衝撃を受けて、変な方向に弾け飛んだらしい。

「なんですか、これはなんなんですか一体!! 神に仕え、清貧たるシスターが七大悪の暴食に犯されている!!
 何という、背徳的なシチュエーション!! 神は私に死ねというんですか――ぐぼげばぁ!!」

 なにやら興奮している魔法の杖(馬鹿ステッキ)を、床で殴って黙らせて、イリヤは純白シスターに肩を貸した。

「取り敢えず。ここは危ないから避難するよ」
「ヒナン? でも、とうまがまだ帰ってきてないから。帰ってきてわたしがいないと心配するかも」

 なんだか、最近聞いたことがあるような名前に一瞬イリヤは首を傾げたが、

「そのとうまって人も、貴女に何かあったら悲しむんじゃないかな?」

 だから、避難しよう? と優しく言う。
 純白シスターは、考えるように少し首を傾げた後、

「避難所では炊き出しもありますよー」
「行くっ!!!!!!!!」
 
 ステッキの言葉に、一も二も無く飛びついた。
 
「………。私、帰ってもいい?」

 そこはかとない疲労を感じて、イリヤはポツリと呟いた。


237 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:50:14 ID:4tLQj25O
なにこの今日の繁盛っぷり支援

238 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 20:50:39 ID:ghfSqDBr
 3
 
 キーボードを叩く指は淀む事無く、初春飾利は自らの仕事を遂行する。

―――イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、第七学区にて逃げ送れた少女を保護。
―――相良宗助、第一五学区の生徒を『説得』。のちに、保護。
―――美遊・エーデルフェルト、第一三学区の児童を保護。
―――警備員(アンチスキル)黄泉川愛穂より迷子捜索の依頼。
―――植木耕介、第二二学区の見回りを完了。逃げ遅れは発見出来ず。
―――ベホイミ、第一八学区の学生を『説得』。後に保護。
―――迷子の追加情報。名前は『打ち止め(ラストオーダー)』。外見年齢十歳程度。
―――柊蓮司、第一〇学区に侵入。『水穂機構・病理解析研究所』跡まで、約五六〇秒。
―――御坂美琴、同上。

 学園都市は彼女の住む街だ。その危機だというのだから、心情的には今すぐ飛び出したい。
 しかし初春の能力は低能力(レベル1)か、異能力(レベル2)程度。お世辞にも、この状況で役立つと言えるものではない。

 だからこそ、彼女は彼女に出来る事に全力を注ぐ。

 学園都市で風紀委員(ジャッジメント)をやっている頃からの得意分野、情報管理に寄る後方支援。
 逆流し、氾濫する黄河の水のような情報の渦を、一瞬で整理し理解。最も適した人物に指令を送る。
 激流を渡るように、すべての情報の流れを支配し、必要な情報を必要な人間に提供する。ソレが、彼女なりの戦い方だった。

「保護した一般人を所定の場所へ、イリヤさんと美遊さんの転送で避難区域に送ってください。その後、迷子の捜索をお願いします。
 名前は『打ち止め(ラストオーダー)』、外見年齢は十歳前後。茶色い髪に褐色の瞳。青色系ワンピースの上から、男物のワイシャツを羽織っているそうです。
 外見データは、夫々の端末に送っていますから、捜索の手がかりにして下さい」

 即座に、了解の返事が返ってくる。ここから先は、現場に出ている彼女たちに任せれば問題ないだろう。漸く一段落といったところだが、一息ついている暇は無い。
 避難場所に送った後からの誘導や、対応に当たる人たちへの指示など、やることはごまんとある。

 初春は、ディスプレイを睨みつけたまま、振り向きもせずに背後の人物に声をかける。

「ノーチェさん。そちらはまだ掛かりますか?」
 
 手伝って欲しいんですけど、と暗に匂わせた科白を吐けば、

「待ってくださいであります。流石にちゃちゃちゃっとは行かないでありますよ―――」

 自分の頭より大きな水晶球を睨みつけて、時に叩いたり撫でたりしながら、標示される情報を解析している、ゴスロリ吸血鬼。
 初春には上手く理解できないが、あれで『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』とまでは行かないものの、学園都市製スーパーコンピューター並の演算が可能だと言うのだ。
 その情報処理能力で、手伝いもせずにノーチェが何をしているかと言えば、

「―――くは、流石は東方王国の王女。一筋縄ではいかないでありますな」
 
 魔王、パール・クールの居所を探っていた。

 上条当麻から寄せられた情報。『東方王国の王女』パール・クールの存在。
 調査の結果、彼女が学園世界に入り込んでいる事を確認する事ができた。
 上条がアゼルから聞いた『東方王国旗』という魔導具も、それを運搬しているらしきデーモン映像から、かなり信憑性の高い情報だと判断できる。
 魔王が使う魔導具は、押しなべて洒落にならない能力を誇っている事を鑑みても、恐らく使われた瞬間に、学園世界が彼の魔王の手に落ちると考えた方がいいだろう。


239 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 20:51:46 ID:ghfSqDBr

 つまり、状況は非常に切迫している。
 迅速に対応と対処が求められるのだが、しかし、パール・クールの本拠地が何処なのか判っていなかった。

 否、正確に言えば、魔王が何処にいるかは判っている。
 極上生徒会の管理領域の外。揺らぎ続けるダンジョンの奥。学園世界の未踏地域、いわゆる不明領域の一画。
 パール・クールは、其処に月匣を張って潜んでいる。勿論そこまでの情報は、極上生徒会にも報告していた。

「――――しかし、場所が分かっても、行き方が解らないのでは意味が無いのでありますよ」

 ダンジョンは、常に揺らぎ続ける。見るものによって姿を変え、『変わったこと』に対する認識の変化によって、更に変化を繰り返す認識の迷宮。
 つまり。そこに誰かが居るだけで、何もかもが変わってしまうのだから、一度通った道がもう一度同じ場所に続いている保証は無い。
 目的地に辿りつこうと思えば、その変化を利用し、道を切り開く必要がある。
 既に誰かが到達した場所ならば、その結果を逆算し、変数nに代入すべき数値を算出することは可能である。
 しかし、それが未踏破の場所ならば、そもそもの前提条件である辿り着いた手段が無い為、試算(シミュレーション)すら不可能である。
 けれども、パールの月匣がある場所は、未踏破というわけではない。他ならぬパール・クール自身がその場所に辿り着いているのだ。
 ならば、同じ手段を使えば、其処にたどり着けるのは道理である。ダンジョン内を移動したのならば、その痕跡は必ず『変化』という形で残るのだから。
 その変化を逆算し、ルートを構築する。ノーチェからすれば、すぐに結果を導けるような演算である筈だった。しかし、

「ノーチェさん、まだですか!?」
「せっつかないで欲しいでありますよ!! 多すぎて本命が絞れないんでありますから!!」

 パール・クールが移動したと思しき痕跡は、全部で1000を越えていた。そのうちの一つ以外は、間違いなくダミーであろう。
 しかし、それで本物の痕跡がどれだか解る訳ではない。森に隠された木の葉のように、紛れ込んでしまって判別がつかない。

 結局、1000の痕跡を一つずつ逆算していく以外に道は無かった。

「えっと、コッチはコッチに代入して―――、この解はここに代入されて……これは、ちがうでありますな。
 次は、ベースがこうで……其処に――――」

 可能性の薄いものは計算途中で破棄し、次の可能性に取り掛かることで、少しでも演算完了までの時間短縮を企む。
 水晶球をにらみつけて、膨大な計算式を処理するノーチェ。しかし、普段の何処か抜けた言動のせいか、傍から見れば成果に繋がるのか怪しく見える。
 それは、初春飾利から見てもそうらしい。

 内心イライラしながらも、初春の指はキーボードを滑り続け、集まってくる情報を処理し続けていた。

―――イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、逃げ送れた面々を転送。
―――相良宗助、迷子の捜索。発見ならず。
―――美遊・エーデルフェルト、逃げ遅れた面々を転送。
―――植木耕介、第五学区の学生を保護。
―――ベホイミ、第八学区の住人を保護。
―――柊蓮司、第一〇学区を飛行中。『水穂機構・病理解析研究所』跡まで、約二七〇秒。
―――御坂美琴、同上。


240 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:52:42 ID:7nwNX/P5
インデックスさんww

241 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 20:52:50 ID:ghfSqDBr

 避難誘導は大方完了。現在、学園都市内での最大の懸念事項は、迷子の存在だろう。

(なんか、どっかで見たことのあるような子ですけど……)

 迷子の顔が意識の片隅に引っかかっているが、明確な記憶として像を結ぶわけでは無い。ただ、咽の奥に魚の小骨が引っかかったような、そんな不快感だけが存在する。
 うーん。と、頭を悩ませるヒマも無い。指はキーボードを打ち続け、両目はディスプレイを追い続ける。

―――イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、逃げ送れた面々を転送。
―――相良宗助、迷子の捜索。発見するも逃走される。
―――美遊・エーデルフェルト、逃げ送れた面々を転送。
―――赤羽くれはより通達。魔王アゼル・イヴリスは人質ごと拘束すること。特に人質の右手が離れることが無いよう留意せよ。
―――植木耕介、第九学区の学生を保護。
―――ベホイミ、第二二学区の学生を保護。
―――柊蓮司、第一〇学区を飛行中。『水穂機構・病理解析研究所』跡まで、約二〇秒。
―――御坂美琴、同上。
―――警備員(アンチスキル)より報告、学園都市内にデーモン出現。

 即座に、初春は全員に情報を飛ばした。

「緊急連絡。デーモンの出現を確認。
 皆さん、避難誘導と迷子の捜索を続けながら、デーモンの殲滅をお願いします!」

 了解の返事は間髪入れずに返ってくる。

「―――どうして。そんな反応、何処にも無かったのに」

 デーモンの反応は、突如として現れた。
 移動の痕跡も何も無く、ただ突然に。今までも、ダンジョンから迷い出たエネミーが市街地や居住区に出現することはあったが、そういった経験から『防犯カメラ』は設置されているのだ。
 それらに一切捉えられる事無く、学園都市(市街地)にエネミーが出現するなど、ありえない事だ。
 そして、避難誘導は大方終わっていると言っても全てではない。今もまだ、避難のために外に出ている人は沢山居るのだ。
 歯噛みする初春の目に、次々と執行委員が戦闘を開始する様子が、情報として飛び込んできた。




242 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 20:53:44 ID:ghfSqDBr
 4

 『―――意せよ。繰り返す、赤羽くれはより通達。人質ごとアゼル・イヴリスは拘束すること。くれぐれも人質の右手の効力を奪わぬよう留意せよ。繰り返―――』

 ブツリ。
 と、彼は無線機のスイッチを切った。飽き足らず、壁に向って投げつける。
 壁を凹ませて、跳ね返った機械は床の上でゴミに変わった。

「―――拘束……だと?」

 食いしばった歯の奥から、唸るような声が漏れた。
 『荒廃の魔王』アゼル・イヴリス。
 そこに居るだけで、『死』を撒き散らす怪物。同じ『害虫(エミュレイター)』共の間でも、忌み嫌われるバケモノ。
 そこに居ることに、万害こそあれ一厘ほどの益も無い、価値無き存在。

 それを、『討伐(ころす)』のではなく『拘束(つかまえる)』。

「………巫山戯るな」

 赤羽守護者代行の思考が、彼には理解できなかった。
 何故。何故、何故何故―――。
 代行は、あの木星域での戦闘を忘れたのだろうか、彼の魔王の力がウィザード側(みかた)に与えた損害を、知らないとでも言うのだろうか。

「――――俺は、忘れない」
 
 ドロリ。と、口の中に違和感が生まれた。
 食いしばりすぎた歯が、何処かの肉を破いたのだろう。

 赤い唾を吐き捨てて、彼はその部屋を出た。外には、部下たちが控えている。

「隊長? 如何なされましたか?」

 己の身を案じてくれる部下に、なんでも無い。と、返答する。

「魔王の居場所はわかったか?」

 勿論です。と、彼の部下はその情報を告げた。

「第一〇学区の廃墟だな。正確な場所は? お前たちはいつでも出られるか?」
「判明しております。そして全員の準備も済んでおります」
「よし、ならば行くぞ、今度こそ討ち滅ぼすのだ!!」

 彼は窓の外を睨みつける。その先に、憎き魔王が居る筈だった。


243 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 20:54:56 ID:ghfSqDBr
 5

 前髪が綿毛のようにふわふわ浮いていた。
 電撃(ビリビリ)の静電気(バチバチ)が起きているわけでも無いのに、髪がひとりでに動いているのは、正面から風が吹き付けているからだ。
 もっとも、風に関しては、これでも随分とマシな方のはずだ。目の前のデカイ背中が風除けの役割を果たしているのだから。
 御坂美琴は、柊蓮司の箒の後ろに乗って、学園都市の空を翔けていた。

「美琴! コッチでいいのか!!」
「ちょっとずれてる! 一時方向に軌道修正!!」

 美琴がついてきたのは、偏に道案内のためだ。
 上条当麻が電話をかけてきた場所は、美琴にとっても因縁の深い場所だった。
 『水穂機構・病理解析研究所』跡。
 かつて、『絶対能力進化(レベル6シフト)計画』を引き継いだため、美琴自身が潰した研究所だ。
 アレから幾らか経っているが、その場所の記憶が薄れるほど時間が経っている訳でも無い。

(待ってなさいよ。すぐに行ってとっちめてやるから!)

 柊の箒は、空を切り裂くように飛翔する。
 魔を斬り捨て、神を降し、形が変わっても彼と共にある相棒。青い魔力光を引く姿は、さながら流星のようだ。
 その先端は、魔王と共に命の危機に曝されている少年の居る方向に向いている。
 全く理不尽に、命を狙われる少年。そんなコトは、いままでに何度もあって、そしてその度に柊蓮司は手を伸ばしてきた。
 今回とて、例外ではない。
 スピードを上げる。月衣を持たない同乗者に配慮して最高速ではないが、それでもあと三十秒もしない内に、辿り着ける筈だ。

 その筈だった。

 突如として、大きな爆発が起る。
 熱風と衝撃に、箒がぐらりと揺れた。

「!?」

 爆風の波をやり過ごして、柊は目を凝らした。
 嫌な汗が噴出す。
 彼の距離感が正確ならば、爆心地は恐らく―――。
 
「―――。急ぐぞ、美琴」

 箒(ウィッチブレード)が急加速する。
 今までは、月衣のない美琴に配慮していた。しかし、その枷を外して柊は彗星となる。

「…………」
 
 辿り着いたその場所は、既に瓦礫の山だった。
 見れば判る。何者かが、ここに居た誰かを殺す目的で、攻撃を仕掛けたのだ。
 あちらこちらに造られたクレーター。中心部は未だに赤熱し、その周りには、熔けたコンクリートが引き攣り爛れた様な跡がある。
 かなりの大火力がこの場に叩き込まれた証拠であった。

 美琴は、この惨状に声も出ない。
 執念すら感じる容赦ない攻撃の跡に、最悪の結果をどうしても考えてしまう。

 即ち、上条当麻の―――。

 死の淵のような沈黙を引き裂いたのは、0-Phoneの着信だった。


244 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 20:58:38 ID:4tLQj25O
だりゃあ支援!
むだっぽいがな!

245 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 21:01:27 ID:gL7i5JIf
 
『柊!? 聞こえる!? ねぇ!!』
「くれはか!? そっちはどうなった!?」 
『取り敢えず、アゼル・イヴリスは人質ごと拘束すること。右手を離させないように。って仮命令出しといた。
 各方面に通達されてる筈なんだけど、監視部隊からのリアクションが無いのよ。
 それで、柊! 二人と合流できた!?』
「いや―――」
『いや。って、如何言うこと? まさか―――』
 言葉を濁す柊に、くれはの声は一瞬つまった。
「ああ、二人が隠れてたところは、完全に瓦礫の山だ。
 誰かに襲われたと見て間違いない。それも一人や二人じゃねぇな」
『はわ………。監視部隊のしわざ、かな?』
「今ん所それ以外考えられねぇな。
 監視部隊って、そんなスタンドプレーをするようなヤツらなのか?」

 だとすれば、人選に問題があったとしか思えないが。
 柊の疑念は、再変換された幼馴染の声に打ち消される。

『そんなこと無いよ。冷静沈着に監視出来るようにって、今まで魔王と関わった事のないメンバーのはずだもん。
 個人的な恨みとかは持って無い筈だよ』

 だったら、この状況はなんなんだと、問いたい。が、今はそれよりも重要なことがある。

「上条当麻が、無事だといいんだけどな」
『そうだね。アゼルの力は観測されてないから、無事である可能性はまだ在るんだけど……』

 もう少し、安心できる材料が欲しい。と、二人は言葉を失った。その時、

「柊!」

 柊の背後から声が飛ぶ。
 電話の相手に断って、柊は声の発生者を振り向いた。

「これ見て!!」

 美琴が突き出したのは、美琴自身の携帯電話。表示されているのは、今時珍しくも無いGPS画面だ。
 美琴のほうからサーチをかけたらしく、光点で現在地が標示されているのはここではない。
 現在進行形で動いている点は、まるで何者かの追跡を避けるように、裏道ばかりを選んで進んでいた。
 まさか。と、柊が視線で問えば、美琴は輝かんばかりの笑顔で、

「アイツから、GPSコードが送られてきたのよ!! まだ生きてる!! 助けられる!!」
「ナイスタイミング!! 聞こえたかくれは!?」
『聞こえたよ! とにかく柊と、えっと、だれさん?』
「御坂美琴、今追っかけてる上条当麻の彼女だ」
『へぇ――』
「違うわよ!! 何でアタシとあんなのが恋人同士なのよ!!」

 柊の説明に、美琴は真赤になって叫んだ。紅潮の理由は、本人曰く怒りだが、

「違うのか?」
「いいから違うの!! 私はあんなヤツ好きでもなんでも無い! それで納得しなさい!」

 一生懸命に好意を否定する。その表情、その仕草。全く持って、説得力が無い。  

『あー、うん。どんな関係か大体わかった。なんだか、美琴ちゃんとは仲良くなれそうな気がする。いろんな意味で』


246 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 21:02:24 ID:gL7i5JIf

 テレビ電話ではないので顔は見えていないが、その声、その言葉だけで十分である。むしろ魂の共感か。
 彼女(みこと)も苦労しているのだろう、自分(くれは)と同じように。

『と、そんなコト言ってる場合じゃなかった。とにかく、急いで追っかけて保護してあげて!
 それと、さっき連絡が入ったけど、今、学園都市中にデーモンの群が発生してるの! ……って柊、聞いてる!?』
「―――ああ、聞いてる」
『……柊? どうしたの』
「コッチもコッチでナイスなタイミングだ。安心しろ、すぐに片付ける」

 そう言って、柊は0-Phoneをポケットに突っ込んだ。 
 その間に、美琴は辺りに散らばる瓦礫を拾い上げていた。団子のように、極太ワイヤーにコンクリートを突き刺した、研究所の壁(鉄筋コンクリート)の破片。

「出て来なさい!」

 二人を囲んで、殺気の輪が現れた。
 十重、二十重に取り囲む影。影。影。
 それは、大昔の人間が、空想して描いたと謂われる姿そのままで。
 山羊の頭をつけた巨人。即ち、悪魔(デーモン)。

 全周三六〇度から、叩き付けられる殺気。
 しかし二人は、柊蓮司と御坂美琴は、顔色一つ変えずに、悪魔の群を睨み返す。

「そこを退きなさい」

 口火を切ったのは、美琴だった。
 悪魔たちは物言わず、唯二人に殺気を叩き付ける。

「私は、これから行かなくちゃならないところが在るの。
 あのバカを、一人で何でも抱え込むあの大バカを、とっちめなくちゃならないんだから」 

 無造作に、手にした瓦礫を放り投げる。
 一、二キロはありそうな鉄とコンクリートの塊は、

「どうせ、今回だって、パールとか言う魔王の居場所を突き止めたら、自分ひとりで突っ込む気に決まってんのよ―――」

 回転し、力を失い、放物線を描いて美琴の手元に、

「だからあんた達と遊んでる暇なんて無いし、足止めなんてされてやるつもりも無い―――」

 差し出した右手に、触れた瞬間、

「ええ。本当なら、こうやって喋ってる時間すら惜しいのよ。
 だから、退きなさい。さもなければ―――」

 音は無く。唯、煌橙色の奔流に、世界が激震する。

「―――力ずくで、退かせてあげるわ」

 まるで落雷のように。爆風と爆音は、遅れて発生した。

 超電磁砲(レールガン)。
 リニアモータカーのように、電磁誘導で砲弾を加速し発射する艦載兵器の名であり、最高位の電撃使いたる御坂美琴の威名。
 彼女の手から放たれるこの一撃こそ、その名の由来である。



247 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 21:03:40 ID:gL7i5JIf
 一キロ以上の質量は、それでも音速の三倍という高速に耐え切れず、数十メートルで焼失する。
 しかし、灼かれ砕かれ蒸発するまでに、超高温の衝撃波(ショックウェイブ)を撒き散らした。
 普段の『弾丸(コイン)』よりも、大きな『砲弾(ガレキ)』は、目前のすべてを平らげ消し飛ばす、圧倒的で荒唐無稽な暴力の嵐。

 しかし―――。

 巻き上がった粉塵のヴェール。それを透かして、黒山のようにそびえる影。影。影。

「うそ……」

 吹き荒れる烈風に、土埃のヴェールは取り払われた。
 現れたのは、傷一つ無い侵魔の群。

 この場で二人を取り囲むのは、数時間ほど前に蹴散らした、下級侵魔と同種のデーモンたち。
 超能力者(レベル5)に、手も足もでなかった雑魚たちと同じもの。

 だと言うのに。その最大の一撃(レールガン)を受けて尚、貴奴らは健在である。

 小さく呻くような音が聞こえた。
 音の発生点で、一体のデーモンが肩を震わせている。
 小さく、しかし確かに、人ならぬ声で、そのデーモンは嗤っていた。
 高く低く、心底可笑しいと。哄笑は、次第に群のすべてに伝播する。

 大気が震えた。

 嗤い続ける悪魔たち。
 眩暈がするほどの大喝采。吐き気を催す大合哂。
 その中で、最初に笑い出したデーモンが、人ならぬ声で宣告する。

「(我々を、今までの我々と同じだとは思わないことだな)」

 悪魔の哄笑は津波のように。
 一つにまとまり、練り合わさって、崩れ落ちる波頭のように、侵魔の群は二人を飲み込んだ。


248 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 21:03:45 ID:7nwNX/P5
シエンヌ

249 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 21:03:45 ID:4tLQj25O
しえーん

250 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 21:04:31 ID:gL7i5JIf
行間 四
 
『コッチもコッチでナイスなタイミングだ。安心しろ、すぐに片付ける』
「ちょ、柊!?」

 輝明学園秋葉原分校、校長室。
 いきなり切られた電話に向って、叫んだ声は虚しく消えた。
 電話口からは、ツー、ツー。と言う電子音。
 本来の主の落ち着いた趣味を伺わせる部屋で、赤羽くれはは、溜息を零した。

(ナイスなタイミングって……どーいうことよ。柊のところにもデーモンが現れたって事?)

 唐突ともいえる、下級侵魔の大量発生。
 此方の監視網一切をパスして、奴らは出現している。
 どうにかして、情報を偽装しているのだろうが―――。

(ま、柊なら大丈夫だよね)

 自分で言った事ながら、少々無責任に響きのような気もするが、その辺は幼馴染への信頼である。

(でも、どうしてこのタイミングで?)

 荒廃の力の解放に、学園都市第六学区の消滅。魔王パール・クールの暗躍、立てた場所の支配権を得る魔導具『東方王国旗』。
 日が落ちてから、つまり、最初の事件から、まだ三時間と経っていない。しかし、この世界を取り巻く状況は非常に深刻なモノとなっていた。
 それに加えて、デーモンの大量発生。一連の騒動に無関係とは思えないが、何故、学園都市にだけ出現したのだろう。

(学園都市でないといけない理由。それは何?)

 避難の妨害? 能力者(サイキッカー)の誘拐?

(いいや、違う)

 思考を否定する。
 『防犯カメラ』の映像からして、デーモン達は十中八九パール・クールの配下だ。パール・クールにとっては、『東方王国旗』とやらが、最大の関心ごとのはず。
 それが、どうして学園都市に配下を出現させる必要がある。

(発動に生贄が必要? でも、それなら学園都市である必要はない)

 大量の人間を攫いたいのなら、学園都市以外にも人間は沢山居る。それも特殊能力を持った人間ばかり。
 狩場を、学園都市に限定する必然性は感じられない。

(………はわぁ。ダメだ、ピースが少なすぎて絵にならない)

 思わず、大きな溜息が漏れた。

「何溜息なんてついてんのよ、アンタにはまだやることがあるでしょうが」

 唐突に声が響く。
 無責任な声に、人事だと思って。と、恨みがましい視線を向けるくれは。
 はたして、しかし声の主は、その視線に一欠片の痛痒も感じず、

「随分お困りのようね、赤羽守護者代行見習心得」
「何しに来たの?」


251 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 21:05:30 ID:gL7i5JIf

 疲れた目で問いかけるくれはに、

「ちょっと聞きたいことと、教えてやることがあってね―――」

 闖入者は高慢な態度で、薄ら笑いを浮かべた。
 微妙な表情で、くれはは先を促す。
 笑みをそのままに、『彼女』は口を開いた。

「あんたたちは、パールにどう対処するつもり?」
「どうって、本拠地が判ってるんだから、いつもどおり月匣に乗り込むつもりだけど」

 くれはの返答を聞いて、『彼女』は落胆の溜息を吐く。

「予想通りね。うわーだめだー。とか言うのがオチよ。ソレ」
「じゃ、どうしろってのよ」
 
 『彼女』は薄っすらと笑みを深くして、

「それが、教えてやりたいことよ。序でに、『東方王国旗』についても、ね」
「………。はわ?」

 何時もの口癖が、間抜けな声で口から漏れた。



252 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 21:05:49 ID:4tLQj25O
間に合うか支援!

253 名前:とある世界の騒動日程(トラブルデイズ)@学園世界ネタ:2009/04/02(木) 21:08:41 ID:gL7i5JIf
以上です。支援ありがとうございました。

はわで始まりはわで終わる回(笑)
取り合えず、最後のミドルフェイズでしょうか。
あと、二、三回で最終回に辿り着くと思います。

では、お付き合い頂きありがとうございました。

夏目は騒動日程が終わったら書くかも知れません。が、予定は未定なので流していただければ

254 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 21:58:42 ID:A42d2B35
>>253
おつですー、はわに挟まってる割にはクライマックスに向けてガンガン盛り上がってますなー
夏目の方も期待して待ってますー。
タキや委員長のフラグに気付かない夏目を、柊と対比させるか、柊が自分を棚に上げて呆れるの希望w

255 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 23:00:25 ID:O5/Es+9J
>>253
はわー・・・・

はわー・・・・・・・・(黙れ


閑話休題。おかしい、ぱーるちゃんさまが有能に見える・・・・w
あと、ぽんこつ様なんて美味しいところをwww

なんだかみんな生き生きしてる作品ですよね。
よく知らない作品のキャラでも、なんとなくどんなキャラかわかる気がします。

んでは、GJでした!

256 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 23:06:33 ID:MDX4D5De
乙〜。さて、学生側の動きも詰めに入ってきたがちゃん様はどう動くか…
それはそうと、冒頭のくれはの台詞にちっくら違和感が。
荻原校長は普通に校長先生で四天王はお爺ちゃんたちとか老人会とか長老会議とか
呼びそうな勝手なイメージがある。

257 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/02(木) 23:31:00 ID:4tLQj25O
描写が細かい……(笑)
乙です、非常に楽しく読ませていただいてます。

あと2〜3回で終わってしまうのがもったいないくらいだ。
次回の更新を楽しみにしています。

258 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:02:54 ID:YbjTdnVT
嘘予告投下しにきました。

嘘のクセして長いよ……(涙)。

259 名前:嘘予告:2009/04/03(金) 01:05:38 ID:YbjTdnVT
 拝啓 遠い昔にお空の向こうに行ってしまったご先祖様。
 わたくしも色々な場所に行った経験があるのでありますが、こんな事態は初めてでどうしたらいいかわかりません。

「お前、初めて見る」
「わ、わたくしもあなたに会うのははじめてであります。初めて同士でありますな」
「……可愛い」
「はい?」
「可愛い子、抱きしめる。私も幸せ。キュウ」
「いえいやあのキュウって、ちょっと待ってほしいでありますよーっ!?」

 ここがどこなのかを確認する間もなく、意外と大きな胸に挟まれて窒息しかけているこの状況を何とかする方法を、今すぐわたくしに届けてください。電波で。


 ***
「吸血鬼。ヴァンパイア。カインの使徒。
 呼び方なんてどうでもいいがネ、そういうものがいるとするなラ、彼らは非常に可哀想な生き物だと思わないかネ?」

 誰にともなくそう語るのは、『東の狂人』。
 彼はいつもと変わらない含みのある笑顔を浮かべながら、言葉を続ける。

「ニンニクが食べられないかラ、太陽が浴びられないかラ、十字架に触れば死んでしまうかラ。
 どれも違うヨ。彼らには最大にして最悪の弱点が存在すル」

 血のように赤いフルボディの注がれたグラスをくるりと回し、言葉は続く。

「それは『人間がいなければ生きていけない』という点サ。
 彼らは自分達がエサとする人間の血がなければ生きていけなイ。生まれてから死ぬまデ、一定期間にエサの血を摂取しなければ生きることすらかなわなイ。
 その生き方ハ、まるで先天性の重病を背負った人間が一生薬を飲まなければならないのと変わらなイ。
 そんな状態で不老不死なんて与えられたラ、私ならすぐにでも太陽を浴びて死にたくなるところだと言いたいネ!」

 クツクツとした笑い声。
 まるで、今までの自分の発言が全て笑い飛ばせる戯言である、とでも言うように。

「もっとモ、今回の『吸血鬼』は本当に人間の血を必要としているようには見えないんだがネ」




260 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:08:59 ID:tB5GVabb


261 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:09:29 ID:V8UoDEXu
えと、支援

262 名前:嘘予告:2009/04/03(金) 01:09:36 ID:YbjTdnVT
 ***
「これで17人目なんだってなー、まったく何やってんだよ。
 この島は平和な時は退屈で人が殺せるくらいに平和だっつーのに、平和じゃない時は人が死に続けるくらい平和じゃねーってぇのな!
 色々とあだ名持ってる連中は多いが、今度の『吸血鬼』クンはまた派手なデビューを飾ってんなぁ。
 つーかむしろあだ名しかないのってジョップリンのヤツくらいだと思ってたが、『吸血鬼』の野郎はアレと並ぶことでも考えてんのかね?
 ヒャハハハハハハ! どう思うよ、クズ!」
「『吸血鬼』が男か女かもわかってないわけだがな」

 白いワゴンにもたれかかった金髪女と、がっしりとした男がそんな会話をしていた。
 金髪の女は、この島唯一の「DJ」。
 そんな彼女と話している男は「自警団の番犬」。
 彼らが話をしているのは、この『島』で最近起きている連続殺人のことについてだ。
 金髪の女が、クズと呼んだ番犬に、やはり笑いながら話しかける。

「なんだ? クズは『吸血鬼』が女な方がいいってか?
 ヒハハ、この真性マゾ野郎。そういうこと言ってっと毛布ん中で噛みつくぜ」
「……まだ陽も高いうちから何を言ってる」
「しかしアレだな、『吸血鬼』ってヤツは風情がねぇな。
 そもそも吸っただけで殺しちまうくらい大量に血を奪うなんざ、よっぽど腹ペコなのかね!
 その空きっ腹に大量のニンニクぶち込んでやったら死ぬのかねあぁいう連中は?」

 そんな、女の意味のない問いに、男は本当にどうでもよさげに答える。

「さあな。どっちにしろ、俺のやることは一つしかない」
「ヒャハハハハハハ! それもそうだ、お前みたいなクズ野郎にできることなんざ一つしかないってのな!」

 男の言葉に、女は心底楽しげに笑った。


 ***
 おかしな『島』の中にある、おかしな連中の集まるラーメン屋。
 そこには今、虹色の頭の男と銀髪のゴスロリ少女が隣の席でラーメンをすすっていた。

「な、竹さんのラーメンは絶品だろ?」
「隼人の言ったとおりでありますなっ! ニンニクラーメンチャーシュー抜きがこんなにおいしいものだとは……!」
「戌井、今すぐその子にチャーシュー返せ。でなきゃ出てけ」
「ひでぇ! 俺今日は支払いの時に今までのツケ一緒に払おうと思ってたのに!」
「ツケだけ置いてさっさと出てけ」
「さらに容赦なくなった!」

 困ったね、と言わんばかりにぺちんと虹色頭の男は自分の額を叩く。
 そんな彼から目線を外し、このラーメン屋の店主・通称竹さんが迷惑な常連客の連れてきた少女に話しかける。

「にしても、見ない顔だな。お前さん最近この島に来たのか?」
「初めてお目にかかるでありますよ。わたくしノーチェと申す者であります。
 今は西と東の境目で、日がな一日占い師やって生計立ててるのでありますよ」

 戌井に奪われたチャーシューを返してもらいながらノーチェが言った言葉に、竹さんは眉をしかめる。

「占い師ねぇ……病院といい占い師といい、ここ最近これまで『島』になかった職業が増えてくな。
 どっちも生計立てられるような仕事なのか? 特にお前さんはトロそうだからな、売り上げを襲われそうな気がするんだが」
「病院のことはよくわからないでありますが、わたくしこれでも逃げ足には自信がありましてな。
 今日は、隼人が占いしたお礼にいいところに連れていってくれると言ったのでついてきたのでありますよ」
「いや、それはダメだろう」
「俺もそう思う」
「隼人までっ!?」



263 名前:嘘予告:2009/04/03(金) 01:11:52 ID:YbjTdnVT
 ***
 東区画、ある路地裏。
 死体の発見報告を聞いて、スペイン系の伊達男とプロレスラーのような体格のつり目の大男―――『東の護衛部隊』のうちの2人が現場に到着していた。
 ふむ、と色男が死体を見て一言。

「俺、男の死体をじっくり見る趣味はないんだけど」
「そんな奴がいるなら目の前からフランケンシュタイナーで消してやる」
「ゲ。あんなアクロバティックな技もできんの?」
「お前の体で試してやろうか?」
「冗談。お前の太ももに挟まれるくらいなら頭ブチ抜いて死んだ方がマシだ」

 もちろん、愛すべき女の子がしてくれるなら俺はどんなことでも受け入れるけどね、と色男。
 そんな軽口に苛立たしげに舌打ちしながら、大男が死体の首筋を覗き込む。
 そこにあるのは二つの小さな傷跡。
 それは、ここ最近島内で起きている連続殺人で殺された死体たちと同じ特徴だ。
 首筋に二つの小さな傷跡、そして体のほとんどの血液が奪われるという殺され方。
 日常的に人の死ぬこの島において、その死に方は非常に珍しい―――というよりも、ほぼ見られない死に方だ。
 銃で撃たれた死体、刃物で切られた死体、鈍器で潰された死体、関節がねじくれた死体、薬漬けの死体などは珍しくないが、血が抜き取られた死体などそうはない。

 まるで殺すのが目的よりも、別の目的があって結果的に死んでしまった、というような。
 だからこそ、この事件の犯人は『吸血鬼』というあだ名で呼ばれているのだった。

「確かに『吸血鬼』ヤロウの仕業みたいだな。
 ―――見てて気持ちのいいモンでもねぇ、さっさと死体処理屋に任せるか」
「オイオイ、死体処理屋じゃなくて医者だろ?」
「ウチの隊長に初対面で『ナースなメイド服着てわたしの天使になってくれないか』とか言う性格破綻者は医者とは言わねぇ」

 言いながら、彼はその性格破綻者に向けて連絡をとるために携帯を取り出した。




264 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:12:46 ID:tB5GVabb


265 名前:嘘予告:2009/04/03(金) 01:14:47 ID:YbjTdnVT
 ***
「つまりですね、事件なわけですよ!」
「……はぁ」

 ノーチェは、いきなり彼女の出している店の前までやって来てそう宣言した少女に面食らった。
 少女の顔はかなり整っており、可愛らしい、と言っても差し支えない。その隣にいる顔の似た少年は頭を抱えている。
 その2人をじっくりと見比べた後、ノーチェは少女の方に顔を向けて尋ね返す。

「で、何が事件なんでありますか?」
「何を言っているんです。今この島で一番の話題と言えば『吸血鬼』の事件に決まってるじゃありませんか!」
「えぇと……それで、その事件がどうかしたのでありますか?」

 当然と言えば当然のその質問に、少女―――シャーロットは答えた。

「吸血鬼と言えば不思議! 魔法とかそんな感じの生き物でニンニクとか十字架とか太陽がダメなはずです!
 えぇと、そんなわけで占い師とかいう不思議な職業をしてるあなたは吸血鬼なはずで太陽が苦手ですよね!?」
「姉さん、今真昼なんだけど……」
「お日様燦々でありますなー」

 沈黙。

「え、えぇっと……そう! ニンニク、ニンニクはお嫌いですよねっ!?」
「この間、ラーメン屋さんでニンニクラーメンチャーシュー抜きを食べてましたよね?」
「あぁ、あそこのラーメンおいしいでありますな」

 さらに沈黙。

「ふ、ふふふふふ。いいでしょうこれは私への挑戦と受け取りました!
 いつか必ずあなたが吸血鬼であると証明してみせましょう、私の名にかけて!」
「姉さん、また何か変なものに影響されたね……?」

 そして去っていく姉弟を見ながら、一人取り残されたノーチェは呟いた。

「うーん……凄い方でありましたなぁ。わたくしも気をつけねば」




266 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:16:23 ID:LGPFzrRX
うきっ!? 支援(さるさんの方を

267 名前:嘘予告:2009/04/03(金) 01:19:11 ID:YbjTdnVT
 ***
 西区画、幹部の私室。

「―――『吸血鬼』については、何かわかった?」
「すまない」

 自身の「影」である「忠犬」にそう告げた彼女は、しかし彼から望んでいた答えを返してもらえずに少し不満げに眉を寄せる。

「太飛からも情報が得られないというのは、流石に異常な事態ね。
 何か見落としていることでもあるのかしら。誠一、あなたは何か気づいたことは?」
「……少し、思ったことがある」

 珍しい、と思いながら彼女はその言葉をさえぎらない。
 「影」は発言を許可されたと考え、言葉を続けた。

「やはり、普通に殺すのならば血液を抜くのは時間がかかりすぎる。
 手段と時間はもちろんのこと、両陣営の手の入らない場所を確保してまでそんなことをする必要性がわからない」
「わからない、というのが思ったこと?」
「殺すのが目的ならば、そこまで時間をかける必要はない」

 その言葉に、西区画の幹部であるところの彼女は眉をひそめる。

「―――もしかして『吸血鬼』の仕業だ、なんて馬鹿なことを考えているの?」
「そうでないとするなら、『殺すこと』が目的ではないのだと思う。
 奪った血を目的とするのが吸血鬼だとするなら、案外死体でも目的なのかもしれないな」

 もっとも、この島では集めようと思えば死体なんていくらでも手に入るんだが、と皮肉気に笑いながら「影」は言った。

 ***
「大丈夫でありますかー? ねぇ、大丈夫でありますかってば」

 倒れているのは、成人に少し届かないくらいに見える少女。
 その少女に、ノーチェはぺちぺちとほっぺたを叩いて覚醒を促す。

「もう大丈夫でありますから、そろそろ起きてほしいのでありますよー……」

 ノーチェは、背後からはがいじめにされて襲われている少女を発見。助けようと駆け寄ると、襲っていた相手は逃げてしまったのだ。
 ぐったりとしているものの、外傷のない少女を起こして安全なところまで送り届けようと思っていたノーチェは、少女に語りかける。
 その時だ。

 バルルルルルルrrrr……

 遠くから、何かのうなりが近づいてくるのが聞こえる。
 まるでエンジン音のようだが、それは上の方から聞こえてくる。
 この島で車に乗って移動するものはいるが、さすがに空飛ぶ車なんて非常識なものを持っていた人間はいなかったはずだ。
 なんだろう、とノーチェが上に視線を向けると―――


 ―――ビルの屋上から木の板を斬りつけて減速しながら、両手に一本ずつのチェーンソーを持った非常識な女性が降りてくるところだった。


 彼女はまるで「猫」のように、しなやかに空中で一回転しながら音も立てずに着地し、ノーチェの鼻先に激しく回転を続けるチェーンソーを突きつける。
 いきなりの事態にぴぃっ!? となにやら可愛らしい悲鳴を上げるノーチェに、チェーンソーの爆音にも関わらず女性は話しかける。

「アハハッ、ねえねえ貴方美咲に何してるの? 何してたの? もしかして血を採ろうとしてたっ?
 ねえねえねえねえ答えてよ、答えてください。貴方がこの島に来た『吸血鬼』なの? 美咲も襲おうとしてたの? 答えてくださいよ!」
「ま、待ってぇぇぇぇええええっ!? わ、わたくしちょうど通りかかったただの占い師でありますからー!」
「すみませーん! 全然聞こえないですよぅ占い師さん!」
「聞こえてる! 絶対聞こえててやってるでありますよねっ!?」


268 名前:嘘予告:2009/04/03(金) 01:23:27 ID:YbjTdnVT
 ***
 月の下、島の中。

「……そろそろ、潮時というやつですか」

 1人。その人物はただ、海を見ていた。
 思ったよりも、追求の手が伸びるのは早かった。
 さすがは大きな組織の人間だ。もう少し、実験のための材料をそろえたかったのだが。

「―――仕方ありません。規格もそろったことですし、始めましょう」

 一陣の風が吹き抜ける。

「赤い、赤い血の夜を」


 ***
 すでに命を失い、体の中身すらもすでに人とはかけ離れたものにされた、『吸血鬼』の生み出した死者の群れが、島を埋め尽くす。
 そして―――その事態に動いた者達がいた。



「ハ―――ゾンビ映画は大抵パニックホラーものだから見たことがなかったんだが、いくら殺してもモブが湧いて吹き飛び続けるってのは盛り上がり所がねぇな!
 うん、俺今度からゾンビ映画も見るよ! んで対処法覚える! 今回くらいしかこんなことは起きないだろうけどな!」

 言いながら、2丁拳銃で死者を吹き飛ばす虹色の『狂犬』。


「どうせ、どこかにいるんだろう。このゾンビ共を見てはしゃがないはずもないからな。
 ついでに始末する機会ができた、と思っておくとしよう」

 死者の群れの向こうに、1人の男の姿を幻視する黒衣の『忠犬』。


「眠い、寝たい。邪魔する、眠れない。お前たち、可愛くない。
 だから殺す。壊す」

 無表情の中に、珍しく苛立ちを露にする白い白い『眠り姫』。


「島の中で空気を乱す者が死者とはな。目障りだ、もう一度獄卒のところに送ってやろう。
 ……まったく。貴様等のようなものが存在していては、愚か者が飛び込んだ時について頭を痛めなくてはならん」

 冷静の中に、形容しがたい感情を持て余す若き『西の長』。



269 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:27:38 ID:LGPFzrRX
支援。タイトルは何だろう…

270 名前:嘘予告:2009/04/03(金) 01:29:04 ID:YbjTdnVT
「貴方たちは、この島で生きようとしてる人じゃない。この島に生きてる人でもない。
 もう死んでる人たちに、この島を荒らされるのは我慢できないので―――私が、止めますね」

 凶暴な二つの爪に、エンジンを灯す護衛部隊の隊長の『猫』。


「あーあ、潤も皆も行っちゃったんだし―――出てきなよ、いるんでしょ?」
「……ゴメン。ナズナさんに、あんな連中が触るかもしれないのは我慢できないから、来たよ」

 護衛部隊の『刀使い』に呼ばれ、「島」で最高の『殺人鬼』が現れる。


「『洪水は、来る前に逃げろ。それができないなら出来る限り上に逃げろ』か。
 一食分の恩義にしては、やけに大きな恩返しがきたね」

 廃ビルの屋上から下を見る、『小ネズミ』たちと『鼠の王』。


「言葉が聞こえているはずもない連中と話をするのは馬鹿げたことだとケリーの奴には言われたが、これが俺の流儀なんでな。
 一応言うぞ―――全員、落ち着け」

 この島における、最強で最高のヒーロー。『番犬』。


 そして。



271 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:31:57 ID:tB5GVabb


272 名前:嘘予告:2009/04/03(金) 01:32:46 ID:YbjTdnVT
 ***
 空にかかるのはとろけたような三日月。島を埋め尽くす死者の群れ。
 死のニオイに満ちる島の中、そこだけは死者がいない。

 そんな場所で、1人月を見上げている人間がいた。まるで、自分にとっては死者の群れが脅威ではないとでもいうように。
 ただただ、そいつは月を見る。ふぅ、と軽い溜め息をついた。


 そんな、月を見ている人間に街灯を遮る影が差した。


 なんだろう、と思ってそちらを見れば、そこには同じく月を見上げる少女がいた。
 少女は、月を見上げたままそいつに話しかける。

「いい月夜でありますな。
 白いお月様は、わたくし大好きでありますよ」

 まるでそれ以外の月は嫌いだとでもいうように。
 少女は、あなたはどうでありますか? とたずねながら、目線を月からそいつへと移して続ける。

「ねぇ―――『吸血鬼』さん?」

 そいつは、少女の言葉に背筋を凍らせた。
 少女の顔には、まるで今宵の月のようにまがまがしくとろけた笑みがある。


 ***

 ナイトウィザード×越佐大橋シリーズ

『ごく×ごく(吸血×奪血)』

 公開未定!

 ***

「カン違いされがちなのでありますが。
 わたくし―――冤罪を受けて黙ってられるほど、甘くはないのでありますよ?」

273 名前:嘘予告:2009/04/03(金) 01:38:27 ID:YbjTdnVT
ふと気づけば、ノーチェばっかり書いていた休日(挨拶)。
どうも、夜ねこです。
最近のノーチェ熱が酷いなぁ、と思ってたら、なぜか「ゲシュペンストと柊の組み合わせって面白くね!?」という電波が飛んできて困っているところだったり。
まぁアレだ。色々なるようにしかなりませんね。

今回は電撃文庫・成田良悟氏の「越佐大橋シリーズ」の嘘予告。タイトルにはセンスが必要だと痛感した。
えーと……正直な話、群像劇の書ける人は凄いなぁ、と思った次第。
難しい。超難しい。
個人的に一番好きなのは護衛部隊の隊長。次点シャーロット。次が戌井と竹さんが同着。


じゃあアレです。報道委員〜のレス返しでもしましょうかねっと。

>>108
 ごめん、俺ペルソナやったことないんだ……。つーわけでペルソナネタはあなたに任せる。楽しみにしてる。

>>110
 ネタの細かさに定評いただきましたー。あざーす。 えーと、質問はよくわかんないッス。

>>111
 真正面からやるだけが戦いじゃないとアルヴィンは思ってます。

>>112
 あはは、ちょうど偶然かちあっちゃいました。
 まぁ、「群田先輩と声同じですよね、あのテレビ」「秘密です」「そうですか」みたいな会話があるんではなかろーか。


さて、自分の中のノーチェ熱もそろそろ落ち着かせておきたいところ。
書きたいものたくさんあるしな!

ではまた、何か書きあがった時にでもお邪魔しに参ります。

274 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 01:44:58 ID:LGPFzrRX
   <¨¨i,へ‐ '´ ̄ ̄` ヽ、「¨>
.   <// / ... ヽ ` //イフ ̄ヽ、
 / / /, '/{ ヾ三彡'<_」ヾ }`  }  【保管であります。】
 | { 〃{ {⌒`∨レ `ヽl.{ l || | ./
  i | |小| ●    ●亅|,―、jj .}  ●とある世界の騒動日程(トラブルデイズ) #04
  リ ノ| |l⊃ 、_,、_, ⊂⊃l、/リ j |   ●ごく×ごく(吸血×奪血) 予告
/⌒ヽ| |ヘ.  ゝ._)   | |/⌒i j.ノ
\r'^`ヽ_.l^^ヘヘ^^^/、| |'ー::〈ル
. └<ノ::::E| <,.ロ、> |ヨ::::レヾ./ 
.   `ヽ':E| <,.ロ、> |ヨ:::ヽ::;ノ 

275 名前:罵蔑痴坊(偽):2009/04/03(金) 11:38:28 ID:9lfKxCLb
>214
すいません、ジャスティスVは僕ですが、学園世界関係ありません。

特別執行委員異聞はそれがシリーズ名ですが、“特命”執行委員はシリーズに入りません。

小ネタに入っている、14-690、15-358は『しのキャラ何でも屋』です。>77はレス番間違えてました。

>273
あ、うん、イギリスの『Do Not Adjust Your Set(チャンネルはそのままで)(日本では「元祖モンティ・パイソン:絶倒編」)』というコメディの話。

276 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 15:11:02 ID:Tr+FSbLV
柊と美琴が兄妹に見えてきた俺

277 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 15:14:33 ID:AP+fwGbH
吸血大殲を思い出すなあw

278 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/03(金) 16:36:36 ID:TPnjfRbq
>>276
異様なほどに違和感無いな。イトコとかで書いてみたら面白そうだな。それで、
色々と鈍い男どものことでくれはと話す(美琴は否定する)ってのが良くないか?
そうすれば学園都市に入り込むことが出来るから任務を任され(押し付けられ)るって
感じでクロスできそうだし。学園都市って一応部外者はあんまり入れない設定だよな?
不法侵入されまくりではあるが。

279 名前:学園世界ネタ:2009/04/04(土) 02:35:02 ID:pHrD0Mhx
2時50分から投下よろしいでしょうか?
ネタは魁クロマティー高校とのクロスです。

280 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 02:52:22 ID:pHrD0Mhx
だれもいませんか?
とりあえず投下しておきます。そういえば初投稿だと付け加えるの忘れてました。


『前略。お袋様
私がここ都立クロマティ高校に入学してからしばらくたちました。
最初の内こそ見慣れない人たちに囲まれ、上手くやっていけるか不安もありましたが、今では友人もでき、青春を謳歌しております。ですが・・・・』
「おい!神山外見てみろよ!外!!」
「ロボだぜ!ロボ!!!」
「なんだよ。マジンガーとかゲッターとかじゃねぇのかよ!!?」
「んなのいるわけねーだろ馬鹿。レイバーだよ!パトレイバー!!」
「・・・・・もしかしてあれメカ沢じゃね?」
「い〜やガンダムだろ!」
「「「「「!それだ!!!」」」」」
『・・・・・・お袋様。私は今、一風変わった世界にきております。』

能天気に外を眺めて、やれパトレイバーだの、やれガンダムだのと一々大はしゃぎしているクラスメート達の姿に頭が痛くなる。
「はあ・・・。なんでこんなことに・・・。」
やっぱり授業開始前に全員登校していたのがまずかったんだろうか・・・・?
あの日に限ってみんな僕より先にきてたし・・・・。
「お!あっち見ろ!!ロボ同士の喧嘩だ!喧嘩!!」
「おいおい!!なんか武器もった連中が生身で突っ込んでったぞ!!!」
どうやら極上生徒会の執行部の人達が鎮圧に来たらしい。
あの人達も普通じゃないそうだし外の騒ぎもすぐ終わるだろう。
「やっちまえ−!!」とか「行け行けそこだ!!」とか「ああ〜俺も暴れて〜!!!」とか「がんばれメカ沢〜」とか皆口々に無責任な野次を飛ばしている。
一応言っておくとあそこで暴れてる中にメカ沢君はいない。
しばらくしてどうやら騒動も終わったようで完全に見物客と化していた皆もつまらなそうに「なんだよ〜もう終わりか〜?」だの「だらしね〜ぞ!こら〜!!気合みせろ!!!」だのと不満を述べながら好き好きに適当なイスやら机やらに座ってタバコすったり寝たりしている。



281 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 02:53:55 ID:pHrD0Mhx
「おいおい。もう終わっちまったのかよ。面白そうだから今から参加しに行こうとおもったのによ〜」
相変わらずバカな事言いながら、さっきまでトイレに行ってたらしい友人の林田君が僕の前の席に座る。
「あれ?そういや神山に行くなって言われてなかったっけ?」
ふと、思い出したように近くにいたマサさんが呟いた。
「そういやそうだったな。・・・おい神山〜。せっかくロボとかモンスターとかあっちこっちにいるのによぉ、なんでそいつらと喧嘩しちゃいけね〜んだ?」
「ってかなんでてめ〜がしきってんだよ!?」
「そ〜だそ〜だ〜!!」と口々に不満を述べてくる皆。
流石アホで有名なクロマティ〜高校・・・・こっちにきてからも不良の皆はいつもどおり喧嘩する事しか考えていないらしい。しかもロボだのモンスターだのあいてに。
まあ、異世界に来たことすら気づいてないだけかもしれないが・・・・。
「だから何度も説明したでしょう皆さん。あんなロボだのドラゴンだの悪魔だの相手にただの不良が喧嘩したらあっさり殺されるに決まってるじゃないですか。」
モヒカンにアホ面の親友林田君にでもわかるよう、もう一度しっかり説明しておく。ただでさえここの人たちは学習能力が無い獣みたいな人たちなのだから根気よく説明しないと理解してくれない。
「そうゆう危ない事は竹之内君に任せておけばいいんです「?!えっ??」何回言えばわかるんですか?まったく。」
その僕の説明でやっと理解してくれたらしく林田君が同意してくれる。
「そっか〜。やっぱ竹之内くらいじゃないと無理か〜。」「い!いやいやいや!!」
「そうですよ。あんなガンダムみたいなの相手に竹之内君以外が「って!!ちょ、ちょっとまてこらぁ〜!!」??おや、どうしたんです竹之内君?」
このクロ高のウラ番でありクラスメイトの竹之内君がいきなり話しに割り込んできた。
「何だよ竹之内。あ!わかった。お前、あいつらと喧嘩したくてウズウズしてきたんだろ?」
「さっすが竹之内だぜ!!」「ああ、なんたってウチのウラ番だからな!!!」
「やる時はよんでくれよな!竹之内!!!」クラス内に竹之内コールが響き渡る。
皆の応援に心打たれたらしい竹之内君は感動のあまり肩を震わせながら「って!!んなわけね〜だろうがぁ!!あんなの素手で勝てるわけね〜だろう!!お前等俺を殺す気か!!!」「そうか?」「あたりまえだ!」



282 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 02:55:27 ID:pHrD0Mhx
「でもよ〜。さっきも生身で突っ込んでった連中いたろ〜?」
「だから!あんな手からカミナリとか出すような化け物達と一緒にすんな!!!つーか他の奴等もでかい大砲だの、へんな刀だのやばそうなの使ってたろあいつ等!!!」
ふむ、どうやら流石の竹之内君にも分が悪いようだ。スキンヘッドに血管を浮かび上がらせながら必死に否定している。
「大体なサイズが違うだろうがサイズが!!どうやったって拳が届かねえよあんなの!!!」「あいつ等みたいに飛びゃあいいじゃね〜か?」「だ!か!ら!俺には出来ねえんだよあんな事!!!」「「「ええ!!まじか!?」」」
皆に衝撃が走る。・・・・なるほど。たしかにいわれてみれば何メートルもある巨大ロボ相手は流石の竹之内君でもハンデが大きすぎるか。
「いや〜おまえなら何とかなるかと思ったんだが・・・」「なるかっ!!」
「わかりました!つまり大きさをどうにかすればいいんですね!?」
「は?い、いや・・だからそうゆう問題じゃ・・・」
「流石だぜ神山!おまえ頭いいな」
「おい!!」
そうとわかれば話は早い。早速準備に取り掛かろう。
「では!・・・校庭でしばらくお待ちください!!」



三十分後・・・・校庭
「・・・・神山の奴何する気なんだ?」
「そりゃあお前。でかいロボの大きさをどうにかするんじゃないか?」
「・・・・・てめえに聞いた俺が馬鹿だったよ。」
クロマティーの校庭で竹之内と林田の二人が神山を待っている。
他の連中も付いてこようとしたのだが邪魔だったので竹之内が追い払った。
とはいえ神山が何をするのか予想も付かない以上ここで待ってるしかない。
しばらくすると走ってきたらしい神山がなにやら黒い物体を連れて帰ってきた。
「お待たせしました!こちらが今回、竹之内君の相手を勤めてくださいます『黒龍ガンダム』君です!!」
「よろしくお願いします♪」
ちょこーんと神山と共にやって来た黒い物体『黒龍ガンダム』が挨拶してくる。
幼稚園児くらいの大きさにランドセル、ご丁寧に胸元には『こくりゅう』とひらがなで書いた名札までしている。
「・・・おい神山。・・・なんだこいつは?」
「はい!竹之内君が戦える人間サイズのガンダム君です!!」
「名前は黒龍ガンダム!第三武者小学校5年刀組です!!よろしくお願いします♪」
元気にハキハキと黒龍ガンダムが答えるが・・・
「第三武者小学校って・・・小学生じゃね〜かぁぁ!!!」
「はい♪」
「そうですね」
淡々と答える神山



283 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 02:56:26 ID:pHrD0Mhx
「おいおいあのなぁ!!!何考えてんだ神山!!」
とにかく慌てて神山に詰め寄る。
「へー探せばマジでいるんだなガンダムって。あ、そうだアメ食うか?アメ」
「わ〜い!!」
林田からアメ玉もらって喜んでる黒龍ガンダム。
その姿はどう見ても喧嘩しに来た奴の姿ではない。ついでにガンダムにも見えない。
まあ、いくらガンダムが相手でもクロ高のウラ番がまさか本気で小学生相手に喧嘩するわけにも行かないのだが・・・。
「拳が届く範囲のガンダムと戦いたいとの事でしたので・・・」
「誰も、そんなこといってね〜よ!!ぶっころがすぞこの野郎!!!」
というか、だからといってなんで小学生なのだ。
もっと他に何かいなかったのだろうか。
「?もしかして・・・お気に召しませんでしたか??」
「あたりまえだ!!」
「ええ!?」
「ええ!?じゃねえだろ!!てかどこの世界に小学生と喧嘩して喜ぶ不良がいるってんだよ!?つーか喜んだらいろいろ拙いだろうが不良として!!!!」
まあ仲にはそういうゲス野郎もいるかもしれないが。
「いえ、彼も武者第三小学校の番長だそうなので。」
「はい!そうです!!」
自信満々に黒龍が返事する。小学校の番長って一体・・・・・・。
「はあぁぁ・・・ったく、頭痛くなってきた・・・・・。」
「おや?竹之内君風邪引いてたんですか?それならそうと先に言ってくれれば」
「頼むからもうだまってろお前は!!!とにかく!!とっととこのガキを元の学校に連れて帰れ!わかったな!!!」
「なんだよ竹之内。せっかく来てくれたんだからもうちょい遊んでやりゃいいだろ?」
「え〜せっかくきたのに〜。」
「い・い・か・ら!!さっさと帰れぇぇぇ!!」
校内に竹之内の怒声が響き渡る。
「やれやれ。仕方ね〜なぁ。おい坊主お前んとこの学校までの道覚えてるか?」
「はい。大丈夫です。」
「そか。んじゃ竹之内が暴れだす前にさっさと行くとするか。
あ、そうだ。途中のコンビニで何か奢ってやるよ。」
「本当ですか♪♪僕プリンが食べたいです!!」
「プリンだな?よ〜しわかった。おい神山、お前も来るか?」
「そうだね。林田君だけじゃ、ちゃんと送れるかどうか不安だし。」
竹之内が本気で暴れだす前に神山達が黒龍を連れていこうとする。
竹之内自身叫びすぎて疲れたがとにかくこれで一件落着かと思われた、そのとき
「まっちやがれ!!!」
皆を制止する声が校舎に響いた



284 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 02:57:39 ID:pHrD0Mhx
「今度はなんだ!?」
正直うんざりしながら声の聞こえた校門の方に目を向ける。
そこにいたのは茶色に染めたザンバラ髪、肘の所まで上げられた長袖のブレザーに首下をゆるくしたネクタイ、手にはフィンガーレスグローブというクロマティーの生徒達や黒龍の昔ながらの不良スタイルとは違う今風の不良スタイルで身を包んだ青年だった。
「極上生徒会執行部柊蓮司ただいま参上!!」
上げる声も高らかに柊蓮司と名乗った男がこっちの方にやってくる。
極上生徒会という事は、どうやらさっきのロボット達の乱闘騒ぎでやって来た執行部員の一人みたいだが
「やいやいお前ら!!他校の小学生なんて連れ込んで何してやがる!!高校生にもなって恥ずかしくねえのか!?てめえらみたいななさけない不良の風上にも置けない連中はこの俺元『輝明学園の不良学生』柊蓮司が相手になってやらぁ!!!」
言うが早いか宣言とともにダッシュでこっちに向かってくる。
・・・・なんか顔がすごく嬉そうなのが気になるが。
(よっしゃあ!ひさしぶりの喧嘩だ喧嘩。なんせ去年はアンゼロットだのベルだのに邪魔されまくって全然喧嘩なんてできなかったもんなぁ〜。・・・だが!今はベルもいねえしアンゼロットは向こうの世界!!邪魔する奴がいない以上だれにも俺の喧嘩はとめられねえぇぜ!!!!)
・・・別にバトルジャンキーというわけではないがやはり不良学生だった身としては不良同士の喧嘩が恋しい時もある。
どうやら小学生もまだ無事のようだし、さっきのアッシュフォード学園のナイトメアフレームとマジシャンズ・アカデミーのゴーレムとの乱闘は他の奴があっさり片付けてしまってこっちは暇だったし、たまには元不良学生らしく喧嘩するのも悪くないだろう。
いつもみたいな命のやり取りと、拳と拳、意地と意地をぶつけ合う喧嘩はやっぱ違うものだ。くれは達はあんま理解してくんねーけど・・・。
嬉しさのあまりだったかだったった〜♪だったかだったった〜♪と鼻歌交じりで突撃する柊。
(とりあえず!まずはあの小学生ガンダムを逃がして!!)
そっから喧嘩だ〜!!わっふう〜♪♪♪
・・・が、しかし
「おいおいちょっと待てよ。俺たちはただこれからコンビ二行ってプリン買ってこいつを小学校に送り届けようとしてただけだぞ?」
突っ込んできた柊に林田が待ったをかける。
「へ??」
「その通りです。僕たちはただこの黒龍ガンダム君と親睦を深めていただけですよ?」
「アメ玉もらった〜♪」
神山と黒龍がそれに続く。



285 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 02:58:33 ID:pHrD0Mhx
連れてこられたらしい本人まで嬉しそうに弁護してくる。
ということは彼等の言うとおり本当に何もおきてなかったというわけで・・・・。
「・・・・・マジで?」「マジです。」「マジだな」「マジ〜♪」
ひゅるるるる〜とむなしい風が通り過ぎる。
「え?じゃ、じゃあもう喧嘩なし?拳と拳の勝負は!?意地と意地のぶつかり合いは!??」
予想外の展開に思わず食い下がってみるが・・・。
「ないな。」「ないよ〜。」「ありません。」
・・・・ガックリ。
せっかく久しぶりの喧嘩に胸躍らせたというのに、柊蓮司どこまでも運のない男である・・・・。
「・・・あ〜。そこのバカが勝手にそのガキ連れてきたのは事実なんだが・・・・。
まあ、その・・なんだ・・・。ご苦労さん。」
よっぽど喧嘩したかったらしい柊を流石に気の毒に思ってぽん、と柊の肩に手をやって竹之内が慰める・・なんの慰めにもなっていないが。

微妙になってしまったこの空気をさてどうしたものか?と、落ち込んでる柊を尻目に神山達が悩んでいると校舎のほうから
「・・・・ひ、柊蓮司だと?ま、まさか!!!」
とやたら渋い声が聞こえてきた。
ん?と玄関のほうを見てみるとそこには、なにやらワナワナと震えている謎のドラム缶・・・もとい、神山達の友人(?)にしてどうみてもロボットであるメカ沢新一がおり、柊を指差しながらこちらに近寄ってきた。
「な、なんだあいつ?・・・ドラム缶??」
メカ沢を始めてみた柊が思わず疑問の声を上げる。
「おいおいなに言ってんだよ?あいつはうちの学校の生徒のメカ沢だぞ。」
「そうですよ。彼みたいな人なんて駅とか行けばよくみかけるでしょう。」
柊の失礼な発言に林田と神山が反論する。・・・・いつぞや似たような事言ってたのが何処の誰だったか・・・・突っ込む者は誰もいない。
(いや!あんな奴ふつういね〜よ!!)
と柊自信突っ込みたいが横には小学生ガンダムまでいるし。もしかしたらこいつ等の世界では当たり前の光景なのかもしれないと考えると下手な事は言えなかった。
「全く。ところでメカ沢君?こちらの彼を知っているんですか?」
あのメカ沢君がここまで驚いているというのもめずらしい・・・などと考えながら柊蓮司の事を尋ねてみる。
「知っているも何も・・・・。と言うより神山!お前こそ知らねえのか!?」



286 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 02:59:19 ID:pHrD0Mhx
「!?どう言う事だいメカ沢君??」
予想外のメカ沢の言葉にこちらが混乱してしまう。全く意味がわからない。
それともこの柊という人物はそれほど有名な人なのだろうか?
疑惑の目で柊を見つめる。目線の先の柊自身困惑しているようだが。
皆の混乱をよそにメカ沢が柊の事を語りだす。
「柊蓮司。こいつは、こいつこそは今までに数々の伝説を生み出してきた伝説の不良!!!」
「伝説の!?」
「不良だと!?」
皆の目が柊一人に集中する。
伝説の不良と言われてちょっと気を良くしたのか、困惑しながらも柊の顔には少し笑みが浮かんでいる。
どこぞの『世界の守護者』の所為でなかなか喧嘩にありつけなかったが、元々クロ高の連中と同じ不良学生の柊だ。当然他の不良達に不良として名前が知れ渡っているのは嬉しいものである。
・・・・なんかその知っている奴がどうみてもドラム缶ロボなのが気になるが。
「そう!こいつこそ、全国の不良達に恐れられる伝説の不良!!!『下がる男』ひぃ〜らぎれんじぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
「ってちょっとまってえぇぇい!!!!」
そのメカ沢の発言に皆が一斉に衝撃を受ける!
「な、なんだって!!」
「あの『下がる男』かよ!?」
「下がる男言うな!!下がる男って!!!!」
皆が驚愕の表情で柊を見る。当然であろう。生きた伝説として不良達に語り継がれているあの『下がる男』が目の前にいると言われて驚かない不良なぞ、まずいないだろう。
「本当にあの『下がる男』だってのかよ!?」
「噂には聞いていたが・・・・『下がる男』!実在したのか!?」
「ああ、間違いねえ。こいつこそ数々の伝説を生み出し、指名手配されたがついには警察の手に負えず軍の特殊部隊『ロンギヌス』と激戦を繰り広げたと言われるあの『下がる男』!!」
「ちょっとまて!!なんでロンギヌス知ってんだよ?お前等!!」
「『生意気な中坊を徹底的にしめたい』という理由だけでわざわざ自分も中学生に下がったというあの『下がる男』か!?」
「ふざけんな!!誰が好き好んで中坊なんぞになるかぁぁぁ!!」
「そのあまりの下がりっぷりから『よるな!さわるな!学年が下がる!!』と全国各校の落第ギリギリの不良達を震え上がらせたあの『下がる男』かよ!?」
「恐れられるってそうゆう意味かぁぁぁぁぁ!!!!!」



287 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 03:00:09 ID:pHrD0Mhx
それを聞いていたらしい校舎の方から一斉にぎゃあああ〜という不良達の悲鳴が上がる。
留年停学なんでもござれの彼等でも、どうやら学年が下がるのは恐ろしいらしい。
今、クロマティー高校は阿鼻叫喚の渦に飲み込まれていた。
しかし、そんな中
「なるほど、あなたがあの『下がる男』さんだったんですね!」
「おい!」
「お会いできて光栄です『下がる男』さん!」
「だから下がる男ってゆうな!!」
「そうだ!!サインをいただけませんか『下がる男』さん。」
「なんでだよ!?」
「記念にです。」
「何の記念だぁぁぁ!!!」
「お、おい神山お前『下がる男』が恐ろしくねぇのか!?」
不良達が下がる事を恐れて『下がる男』と距離を取る中、普通に『下がる男』と会話する神山に竹之内が思わず声を掛ける。
ちなみに林田は黒龍を連れてとっくに離れていた。
「運?・・・ああ。大丈夫ですよ。」
余裕の表情で神山が答える。
「なんで?」
当然の疑問に、いつもの真面目顔で拳を握り締め
「だって、僕は皆さんと違って不良じゃありませんから!!」
「「「「「・・・・・・お〜!なるほど!!!」」」」」
「って!納得すんのかよおまえら!!」
「と、いうわけで!さあ、お願いします『下がる男』さん!!」
ガコン!とメカ沢の頭部のフタを開けて中から数枚のサイン色紙をとりだす神山
「ビー!!警告!!エラー!!エラー!!!」
「おい!」
「さあ!このサイン色紙にお願いします『下がる男』さん!さあ!」
すでに柊に突っ込む暇も与えない。
「い、いや、だから・・・」
「あ!ここに『神山君へ』って入れてください!『下がる男』さん!!」
「お〜い。神山ぁ〜。俺の分も頼むわ。」
「ぼくも〜♪あ、そうだ後、『龍之介』と『ママさん』の分もお願い。」
離れた所にいた林田と黒龍が要求してくる。
「仕方がないなぁ二人とも。黒龍君『龍之介君へ』と『ママさんへ』でいいんだね?」
「うん♪」
「では。お手数ですが彼等の分もお願いできますでしょうか?『下がる男』さん。」
「・・・・・・」
返事が無い。



288 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 03:01:22 ID:pHrD0Mhx
プリン♪プリン〜♪と歌いながらスキップしてる黒龍を真ん中に三人が麻帆良の商店街に向かう。
その楽しそうな後ろ姿を見ながらクロ高に残った竹之内がボソリとつぶやいた。
「・・・・アイツは鬼か悪魔か何かか?」
「エラー!!エラー!!エラー!!エラー!!!!」
「メカラッタ!!メカラッタ!!!メカラッタ!!」
「うるせえぇぇぇ!!!!」
竹之内の叫びが誰もいなくなった校庭に響いた。
「?どうしたんですか『下がる男』さん?気分が悪いんですか『下がる男』さん?」
「・・・・・・しょう・・・・。」
「え?聞こえませんよ『下がる男』さん。もしかして、何か気に障ることでもしたでしょうか『下がる男』さん?何かあったのなら教えて下さい『下がる男』さん。
お願いします『下がる男』さん!!!」
「ちくしょおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
うわああああぁぁぁぁぁぁぁん!!と、涙を流しながらダッシュで柊は校門の方へ走って行った。
「ああ!?どうしたんですか『下がる男』さん!待ってください『下がる男』さん!!せめて、せめて黒龍君の分だけでもお願いします『下がる男』さん!!『下がる男』さああぁぁぁぁん!!!!」
「うるせえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」
そう捨て台詞を残しながら『下がる男』柊蓮司はクロマティー高校から去っていった。
「・・・・なんだよあいつ?サインくらいしてくれてもよかっただろ〜によ〜。」
「う〜サイン〜。」
サインしてもらえなかった不満を言いながら林田と黒龍が神山によってくる。
「・・・・もしかしたら彼くらいの有名人だと一々サインを頼むのも失礼だったのかもしれない。」
「でもよう。せめてこいつの分くらいしてくれてもよかったんじゃねーか?」
そう言ってサインもらえなくて落ち込んでいる黒龍の頭を撫でてやる林田
「サイン〜〜」
『下がる男』の事はよく知らなくても、有名人のサインと言うものはほしいものなのだろう。
黒龍は目に見えて落ち込んでいた。
「・・・・しかたないよ林田君。やっぱりココで僕等にだけサインしてしまったら不公平になるからね。有名人には有名人なりの苦労があるんだよ」
「ふ〜ん。そんなもんかねぇ。」
「僕とした事が有名人にあった嬉しさからはしゃぎすぎて失礼を働いてしまったようだ。」
己の軽率な行動を深く恥じる
「しかたない。期待させてしまったお詫びに麻帆良学園の有名店のプリンを奢ろう。」
「え!ほんとう!!」
「おいおいやけに太っ腹じゃねえか神山!!」
「せっかく来てもらったのに黒龍君には特に期待を裏切ってしまったからね・・・・さ、行こうか。今ならまだ他の学校も授業中だから店もすいているだろうしね。」
「まあそうだよな。よし、行くぞ黒龍。」
「うん♪」



289 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 03:02:23 ID:pHrD0Mhx



一時間後・・・・・・輝明学園理事長室
「・・・・・・・は、はわわぁ。・・・・どしたの柊?」
る〜る〜るる〜。
「ふ、ふふふ・・・・下がる・・・下がる男、下がる男・・・・下がるって・・・・下がるって。」
十分ほど前にいきなり理事長室の扉を開けてやって来た柊なのだが、入ってくるなり別に何かするでもなく理事長室の隅っこに行って三角座りしてずっとシクシク泣きながらブツブツ独り言を呟いているだけなのであった。
・・・・・正直仕事している横でブツブツ独り言呟かれるのは、ものすごく邪魔なのだが・・・・
まあ、ほっとく訳にもいかないし・・。
「は、はわあぁ・・・・・。まあ、何も言わないけど・・・・私も仕事急がしいからもうちょっと静かにしててよね?柊。」
あまり邪険に扱うことも出来ずやんわりと静かにするようお願いするくれはなのだが・・・・。
「下がる・・・下がった・・・下がる・・・・ふ、ふふふ。ふふふふふ・・・・。」
少なくとも今の柊には意味が通じてなさそうである。
「はわあぁぁ・・・・。ねえ一体どうしちゃったの柊ぃ〜?」
半分涙目で何があったか聞くのだが・・・・今の柊は答えてもくれないようだ。
「下がる・・・下がる・・・下・・・・下!!ふ、ふふふふふ、はははははは、あ〜ははははははははははははは」
「・・・・・あ〜もう!!柊!ちょっとうるさいよ!!」
ガッコン!!
流石に怒ったくれはがとりあえず黙らす為に理事長室に備え付けられた『柊蓮司落下用』の紐を引っ張って理事長室の地下に柊を放り込んだ。
なんでこんな物がここにまであったのかはくれはも知らないのだが。
(まあ、地下に放り込んだだけだし仕事終わった後に回収に行けばいいか。
柊が悪いんだからね?せめて何があったか言ってくれればさぁ〜。)
などと軽く考えながらとりあえず今残っている仕事を片付ける。
すると
「・・・・・あの、くれはさん・・・・?」
一部始終をみていたくれはの護衛である真行寺命が恐る恐る声を掛けてきた。
「何!今忙しいんだけど命君」
ただでさえオーバーワークで余裕がないのに柊が横でブツブツ言っていた所為でくれはのイライラは既にピークに達していた。
「い、いえ・・・なんでもないです・・・。」
くれはの発する不機嫌オーラに怖気づいた命が思わず口を紡ぐ。
「あ、そう?」
特に気にする事も無く、鬼気迫る表情で書類に判子を押す作業に戻るくれは。
「全く。柊の馬鹿。馬鹿。」
馬鹿馬鹿言いながら判子を押しいている。
「・・・・・。」
その表情に怖気づいた命はもう何も言わない。
そう、なにも言えない。
(ごめんなさい柊さん。・・・・どうかご無事で。)
さっきくれはが引っ張った紐。
くれはは理事長室の地下室に送ったつもりのようなのだが、命は見た・・・・。
そう、くれはが地下室のつもりで間違えて引っ張った紐に書かれていた文字。
すなわち『スクール・メイズ地下最下層行き』と書かれた紐の文字を。

「ちっくしょおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!なんで!!なんで俺ばっかこんな目にっぃぃぃぃ!!!!!!!!!」
・・・・・スクール・メイズ最下層に柊の悲鳴が木霊する。
周りには高レベルの魔物の群れ。
当然こんなとこに都合よく他のウィザードなぞいるわけもなく、逃げ惑う柊の叫び声だけが響いていた。
ちなみに、くれはが紐を間違えた事に気づいて柊が救出されたのは三日後だった事をここに付け加えておく。



290 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 03:08:06 ID:pHrD0Mhx
以上です。
初投稿の上にこんな時間に大変失礼いたしました。
よろしければまたそのうちギャグ系で何か書こうと思います。
それではまた。



291 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 05:12:35 ID:YK9fGz9W
乙!おもしろかったw

292 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 13:40:40 ID:SNzd/2Y5
GJ!
メカ沢www

293 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 16:38:12 ID:phCWefDD
流石は神山。精神攻撃が容赦ねぇ。

294 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 17:43:48 ID:4qfRRJVE
 皆さん、感想ありがとうございます。 

 今、こちらで見直して初めて行間あけてなかった事に気づいた
魁!!不良伝説の作者です。


≫291
 ありがとうございます。
 大変読みにくい本文を楽しんでいただけたようで幸いです。

≫292
 はたしてこの世界でこそ
メカ沢君に突っ込みを入れる剛の者は現れるのでしょうか(笑)
 
≫293
 ありがとうございます。
正直、やり過ぎたかな?とも思ったのですが
楽しんでいただけたようで何よりです。

初めての事だったとは言え、ご不便をおかけいたしました。
今後、ちゃんと読みやすい文章を心がけるよう気を付けさせていただきます。

・・・・投稿してしまったこれってどうしたらいいでしょうか?



295 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 17:56:12 ID:cP0BcDle
アンカーは「≫」じゃなくて「>>」
「〉〉」でもないので注意。

296 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 18:00:42 ID:4qfRRJVE
>>295
うわ、すいません。
基本的な事まで間違えて。
もう一回ガイドみなおしてきます。

297 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 18:29:34 ID:Thf4Zspg
>>296
乙ー。
wiki編集も自分でやりたいってなら保管庫に自力保管GO。

あと投下時のアドバイスとしては、一投下したあと次投下するまでのインターバルがやや短いことかな。
2分くらい空けることをオススメする。経験則だが。

あとは作者の好みだが、俺はもう少し句点(、)ある方が読みやすいかな。
あと台詞と地の文の間に空行ある方が好き。

298 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 19:48:16 ID:DUMIwKFK
>>273
越佐スキーな俺になんて素敵なネタ…遅ればせながらGJと!
ヴぁんぷ!シリーズにも繋がるのかしら?


>>277
懐かしいモノを思い出させやがってw
ダークマン素敵杉ー!

299 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/04/04(土) 20:03:18 ID:r31VBeMf
短いですが、クライマックスを投下します。8時半から。

300 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/04/04(土) 20:31:52 ID:r31VBeMf
特別居住区に生まれた“月匣”の中で、戦いが始まった。
「…っは!」
文字通りの神速でもって一狼がチェフェイを狙ってクナイを投げる。
「残念!効かないわ!」
それをその身に受けてなお、チェフェイは気にも留めずに動く。
「フレイム、アロー!」
チェフェイの放った炎の矢が一狼とライズに向かって真っすぐに飛んで行く。
「…甘い!」
「…っふ!」
その軌道を2人とも瞬時に見きってかわす。そしてライズが一気にチェフェイとの距離を詰める。
「ふふっ…あの時のように行くとは思わないことね!」
そのまま流れるように繰り出されたライズの突きを、尻尾の一本を使ってガードする。
キンッ!
鋭い音を立てて剣が弾かれ、ライズのボディがガラ空きになる。
「…砕けちりなさい!」
その勢いで別の尻尾をライズに力任せに叩きつける。
「かふっ…」
とっさに自ら後ろに飛び、ライズは派手に吹き飛ばされる。
軽減したと言っても強力な衝撃。内臓にダメージを受け、僅かに血を吐く。
「とど…!?」
追いうちを駆けようとしたチェフェイががくんと体勢を崩す。
身体が思ったように動かない。動きが鈍り、攻撃のタイミングを失う。
「―――忍法、影縛り」
一狼が静かに宣言し、同時に動く。
「斉堂一狼…参る!」
一気に加速し、チェフェイの横をすり抜けるように、走り抜ける。
「きゃあ!?」
一狼が走り抜けると同時にチェフェイの尻尾の1本が根元からすっぱりと切れ、ぼとりと落ちる。
「今です!ライズさん!」
「了解したわ」
吹き飛ばされた地点で剣を拾ったライズが自身の必殺技を繰り出す。
「…プレシズ・ヘル!」
高速で繰り出される連続攻撃。いくつかは尻尾で弾き返すものの、さばき切れなかった分がチェフェイの身体を切り裂く。
「…あの時のように行くとは思わないほうがいい、それはこちらのセリフよ」
憎悪に燃える瞳でにらむ、クラスメイトの顔をしたチェフェイを挑発するように涼しい顔で口元の血をぬぐい、ライズが言う。
「連携の取れた2人を同時に相手をしなければならないあなたの方が、状況は不利だもの」
傍らに立つ自らの“パートナー”の方をちらりと確認しながら。



301 名前:魁!!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 20:31:57 ID:4qfRRJVE
>>297
 アドバイスありがとうございます。

早速、修正したものを保管庫の方に上げたいとおもいます。
色々と多くの失態失礼しました。







302 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/04/04(土) 20:33:52 ID:r31VBeMf
数分後。

激しい戦いに決着の兆しが見える。
「…さすがに強いわね。元がソフィアだとは思えないわ」
度重なる魔法と音による攻撃、尻尾と爪を受けて満身創痍となったライズが、少しだけうんざりとして呟く。
今まで戦ったモンスターとは比べ物にならないほど丈夫で強い。
恐らくライズ1人で挑んでいたならば、敗北し、殺されていただろう。
「はい。ですがもう少しです。もう少しで、彼女を昏倒に追い込めるはずです!」
同じくボロボロになりながら、一狼がライズに声をかける。
殺さないように注意しながら体力を奪い動けなくして、連れ帰って治療する。
それが、ライズと一狼に与えられた任務である。
もっとも、手加減なんて言っていられるような甘い相手でもなく、既に2人とも完全に本気で戦っていたが。
「…そうね」
目の前の敵を冷静に見据え、ライズが肯定する。
数分間の戦いで、2人はチェフェイを追い詰めていた。
既に尻尾を数本断ち切り、腕や足、胴などに無数の傷痕が刻まれている。苦痛に顔を歪め、息も荒い。
「ふふふ…やはり、強いわね」
荒い息の下で、チェフェイがにやりと嗤う。
「でも、もうおしまい。まとめて、焼きつくしてあげる…熱く燃え猛る、炎のマナよ!」
朗々と詠唱を開始する。使用する魔法は…
「爆炎!?」
「どうやら、次で決着をつけるつもりのようね」
「くっ…発動したら、今の僕らでは耐えきれない!」
刀を構え、一狼がチェフェイへと突っ込む。
「うぉぉぉぉ!奥義、殺人舞!」
残ったプラーナをまとめて開放し、自身の必殺技を発動。チェフェイに斬撃を浴びせる。だが。
「くぅ!?…ふふ、踊り狂いて、全てを焦がし!」
一瞬だけ詠唱が止まるもののチェフェイの詠唱は完全には止まらない。
「くっ…浅かったか…ライズさん!後は頼みました!」
ここまで来たらあとはもう仲間を信じるしかない。一狼はライズが間に合う方に自らの命を託す。
「そのうちに飲みこみて、全てを滅ぼせ!」
異常なまでの熱気が漂うなか、ライズが必殺の構えを取る。
(私の剣の方がわずかに速い…さよならね、ソフィア)
手加減なんて甘いことを言っていては2人とも死ぬ。
そう判断し、相手を確実に“殺せる”必殺技を最後の一撃に選択する。
「プレシズ…」
ぴったりと剣先をチェフェイの心臓に向けて一気に駆け抜ける。そして。
「そうよ。それで良いわ…フレイム、ブラス「キル!」」
2人を嘲笑い、詠唱を終えようとしていたチェフェイの心臓めがけて、回避不能な一撃が放たれた。


303 名前:歌い手は魔に魅入られる@学園世界:2009/04/04(土) 20:37:53 ID:r31VBeMf
―――学園世界特別居住区

「…クソっ!見失ったか!?」
謎の女とその下僕1号2号を退かせ、ユウキたち3人は逃げた女を必死に追う。
「いや、向こうじゃ!向こうから変な気配がしとる!」
走っている途中、燦が何かに気づき、2人に言う。
「…この気配は“月匣”だな。どうやらウィザードが何かと戦っているらしい」
執行部にも何人かいるウィザードから聞いた知識を思い出しながら宗助が気配の方へ近づく。
「通行証を使用する。こっちだ」
何も無い一角で足を止め、宗助が懐からカードのようなものを取り出す。
「それは?」
「赤羽理事長代行殿の作った、執行部の通行証だ。ウィザードや弱いエミュレイターの作った月匣であれば、突入用の穴くらいは開けられる」
そう言いながらカードのようなもの…くれはの字で『月匣突破』と書かれた札をかざす。
ブワッ!
月匣に穴が開き、中から強烈な熱波が漏れ出す。
「…当たりだな!行こうぜ」
「了解した」
「まかしとき!」
3人が頷き合い、ウィザードの作る青い月匣へと足を踏み入れる。そこには…

「ふふふ…まさかこのあたしが出し抜かれるとは思わなかったわ」
小山ほどもある巨大な狐が輝明学園の制服を着た2人に怒りを込めて嗤う。
それに対峙する2人は、女の子を抱きかかえた男子生徒と、冷静に狐を見据える女子生徒。
その2人に、ユウキは見覚えがある。
「斉堂!ライズさん!」
「薙原か。無事だったようだな、よかった…」
一狼は大した怪我も無い様子のユウキたちを見てほっとした顔をする。
「ああ、ちょっとヤバかったが大丈夫だ。それよりなんで斉堂とライズさんが?」
「…前に言ったでしょう?私たちは“狐”を探していると」
ユウキの疑問にライズが答える。
「探索中、竜胆リナから聞いた外見の女と遭遇し、戦闘を仕掛けたわ。そして、追いつめたらあの姿に“変わった”のよ」
淡々と状況を説明し、再び“時空鞘”から剣を抜く。
「ちょうどいい。あなたたちに、支援を要請するわ…報酬は」
「ああ、あいつをぶっ飛ばすってので十分だ!」
「肯定だ」
「そうじゃ!って言うかむしろ嫌と言っても手伝わせてもらうきん!」
頷き合い、3人も戦闘態勢を取る。
「そうだ。薙原。ちょっといいか?」
「なんだ?」
一狼は抱きかかえた女子生徒をユウキに見せる。赤い制服を着た女の子を。
「うお!?酷い怪我じゃねえか!?」
「ああ、それで回復アイテムを持ってたら、分けて欲しい。あと、安全な場所まで運ぶ間、ここを頼む」
「ああそれは構わないが…その子は?」
鞄から回復アイテムを取り出しつつ、ユウキが一狼に尋ねる。
「…それは」
「襲われていたのよ」
一狼に代わり、ライズが説明をする。
「襲われていた?」
「ええ。そこの狐にね。どうやら彼女が今夜の“ターゲット”だったみたい。
 私たちが守ったけれど、それでも酷い負傷よ。すぐに治療しないと、危険だわ」
淡々と、顔色一つ変えること無く“ウソ”の説明を。
「そっか。あの野郎、リナたちだけじゃ飽き足らず…」
それを受けて、更に怒りを募らせる。
「もう逃がさねえ。今度こそ、リナたちの“力”返してもらうぜ!」
そう、ユウキが狐に向かって宣言し。
最後の戦いが始まった。

304 名前:歌い手は魔に魅入られる(エンディング)@学園世界:2009/04/04(土) 20:38:33 ID:r31VBeMf
報告書
作成者:ドルファン学園所属 ライズ・ハイマー
一連の能力喪失事件主犯は狐型のモンスター及びドルファン学園所属ソフィア・ロベリンゲ。
ソフィアは狐と同化し、モンスター化していた。ソフィアおよび狐の関与した事件については別紙参照。
その後、カゲモリ内部での会議により、ソフィアと狐の分離を行うことを決定。
○月◎日、学園世界特別居住区にて輝明学園所属斎堂一狼と共にソフィアと交戦。狐とソフィアの分離に成功する。
その後、光綾学園所属薙原ユウキ、陣代高校所属相良宗助、磯野第三中学校所属瀬戸燦の協力を得て、狐を撃退。
魔法的手段による狐の逃亡を許すも、学園世界内認識区域内からの消失を確認した。
また、狐の逃亡後、能力を喪失していた3名の能力が復活したことを確認。
なお、ソフィア・ロベリンゲは事件中の記憶及び収奪した能力を失っており、証言能力および危険性は無いと判断。
治療後、欺瞞工作を施して解放した。

以上をもって契約条項第3条2項補足3に該当と判断し、本件を解決とする。

―――真帆良学園応接室

「どうやら、こちらは無事に解決したようですな」
ドイツ語に良く似た、流麗な文字で書かれた報告書を読み、“ザールブルクアカデミー”学長、ドルニエがほっと息をつく。
「ライズちゃんと言ったらあれじゃろ?あの影のある美少女の。ええのう。乳も尻もあるしのう」
「そうじゃのう。将来はきっといい感じに峰不二子狙えるぞ。いやあ、異世界人じゃなかったらお見合い相手を探すんじゃが」
「峰不二子?なんじゃいそれは?」
「知らんのか…って知るわきゃないわな。昔やっとったTVまんがにそう言うのが…」
「…お二方。脱線はその辺にしておいていただきたい」
ドルニエに諭され、2人のジジイが雑談を中断する。
「堅いのう。無事死人も無しに片付いたんじゃから、おしゃべりくらいよかろうて」
洋梨にそっくりな禿頭と仙人のような髭を持つ“真帆良学園”理事長、近衛近衛門がドルニエに口をとがらせる。
「そうじゃよ。まったく、おぬしと宗ちゃんはどうも堅過ぎるわい。もっと力を抜いてどーんと構えとれ」
近衛門に乗っかって“トリステイン魔法学院”学院長、オスマンがこの場にいない“輝明学園”校長、荻原宗一郎を思いながら、ドルニエに言う。
「…オスマン殿。随分と落ち着かれているのですな。心配では無いのですか?」
同時に提出されたもう1つの“報告書”を見ながら、ドルニエが問いかける。
ライズの報告書とは対照的な、子供が書いたような雑な字で書かれた報告書。それには、よくない報告が書かれていた。

ほーこくしゅ
さくせーしゃ:トリステインまほうがくいんしょぞく ツルフィード

おねーさまがモンスターがでてくるへんなはこからでてきたおんなにさらわれたのね!
おねーさまはさらわれるまえに「だいじょうぶ」といってたけど、しんぱいなのね!
でもまずはこういうときはほーれんそーがひつよーだていちろがまえいってたから、かいたのね!
すぐにたすけにいってほしいのね!

同時期に現れた、『召喚者』を追っていたタバサが消息を絶ったと言う知らせを受けてなお、オスマンは落ち着いていた。
「ほっほっほ…心配はいらん」
朗らかに笑う。
「あの子は、多くの経験を積んどる。判断力も確かじゃ。1人で全部背負い込むようなことももう無い。そしてなによりこのワシ自らが選んだ創立メンバーじゃぞ?
 今のミス・タバサが大丈夫と言ったならば、それは心配する方が失礼ってもんじゃ」
そして、一転、真面目な顔になる。
「それよりも、まずは、こいつを調べんとのう」
報告書と共にシルフィードから提出された箱の写真を見る。
「近衛っち、何か分かったかのう?」
「いいや、うちと輝明が合同で調べちゃあいるが、解析にはまだ時間がいるらしいわい」
「せめて『召喚者』が生きていればもう少しマシだったのですが」
「しょうがなかろう。ボスが召喚されたら殺す。そう、命令を受けているらしいし、召喚者の連中も頭をやられとるみたいじゃからな」
モンスターを召喚する“軽子坂学園”の生徒たちのことを思いオスマンが溜息をつく。
「まったく、学生相手にとんでもないことをする奴じゃ」
「まったくじゃ。ここは学園世界」
「学生たちが、勉学に励み、多くの友を得る世界なのですからな…」
その学生たちを捨て駒にする“黒幕”に怒りを募らせながら。

305 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 20:41:09 ID:u6Y9mpSZ
志縁

306 名前:歌い手は魔に魅入られる(エンディング)@学園世界:2009/04/04(土) 20:44:49 ID:r31VBeMf
―――真帆良学園 喫茶店

「いやー歌った歌った。やっぱカラオケは良いわね。日本が生んだ文化の極みだわ」
朝から5時間ぶっ続けで歌い続け、おおいに楽しんだ“恋人にしたくないアイドル・ベスト・ワン”こと千鳥かなめがご機嫌で言う。
「カラオケバトルも白熱したしね。って言うかみんな歌、うますぎ。まさかあたしとかなめで最下位争いになるとは思わなかったわ」
“歌って踊れるアイドル冒険者”こと竜胆リナがちょっとだけ残念そうに口をとがらせる。
「ほ〜っほっほ。と〜ぜんよ!この私様に歌で勝とうなんて百億万年早いわ!」
地を出しまくりで高笑いするのは“現役アイドル”江戸前瑠奈。つい数日前まで超どん底だったとは思えない復活っぷりだ。
「…まぁ、第2位だけどね」
そんなルナをからかうようににやりと笑って呟くかなめ。
「…っく!?納得いかないわ!」
ルナがびしぃっと“本日の第1位”に指を突き付ける。
「そ、そんな…たまたまですよ。皆さん本当に上手でしたし、私なんて…」
指をさされた少女が恐縮して縮こまる。
「いやいや。アカペラ、マイクなしであそこまで響き渡る歌声とか、ちょっとすごすぎ」
「それに発音もものすごく奇麗だし。あ、もしかして演劇とか歌とか勉強してたり?」
「あ、あの…少しだけ…劇場でお手伝いを…」
しどろもどろになりながら、かなめとリナの言葉に応える少女。
「あ〜もう!とにかく、今日はアンタの勝ちなんだから、もっと胸を張りなさい!」
そんな煮え切らない態度に苛立って、ルナが宣言する。
「今回は油断してたからアンタが勝ったけど、次は私様が勝つわ!覚悟することね!ソフィア!」
「え…あ、あの…」
「返事は「はい」か「YES」のどっちか!OK!?」
「え!?それって選択肢が無いんじゃ…?」
「勝ち逃げは許さないって言ってんのよ!で、どっち?」
「えっと、じゃあ…はい」
年下の少女の気迫に気圧されるように少女…ソフィアが頷いた。

この4人が知り合ったのは、つい昨日のことである。
例の狐に襲われた“被害者”の4人。彼女たちは事件の後遺症などが無いか一度輝明学園に集められ、健康診断が行われた。
結果は特に問題なかったのだが、その途中、何気なく雑談に興じていた4人は、全員が歌が得意だと分って、盛り上がり、みんなでカラオケに行くことと相成ったのである。

「ま、流石に魔法が使えなくなったときには色々と終わったかと思ったけど無事に済んで良かったわ」
「そうねー。いや、まあアタシは別段アレいらないんだけどね」
「…その話はしないで。歌が歌えない私様なんて、無かったのよ。あれは何かの間違い」
突然その身に降りかかった能力の喪失も、過ぎてしまえばいい思い出だ。
そう思う事にした3人が、しみじみとその思い出を振り返る。
「えっと…その…すみませんでした」
それを見て、半ば反射的にソフィアが謝る。
「ん?なんでソフィアがあやまんの?」
「え?あれ?そう言えば…謝らなきゃって思ったんですけど、あれ?」
不思議そうに聞き返すかなめ。それに首をかしげながら、ソフィアが答える。
「ふ〜ん?ま。いっか。さてと、次はどこ行こっか?」
「あ、じゃあ世界樹に行かない?真帆良学園の名物みたいだし、なんか今度そこでのど自慢大会やるからって、参加者募集してるらしいわ」
「あ、そうなんだ?じゃあ、折角だし、4人で行きますか」
「そうね。ちょうどいいわ!だったら次はそこで勝負よ!覚悟なさい!ソフィア!」
「え!?私も出るんですか?」
「当然よ。それにさっき『はい』っつったでしょ!?今さら逃げるのは認めないわ!」
「よ〜し、そうと決まったら善は急げね」
早々に会計を済ませて外に出る4人。
「え〜っと、世界樹は…」
「…あ!ちょっとだけ、いいですか?」
辺りをキョロキョロと見まわすリナに、それに気づいたソフィアが声をかける。
「ん?どったの?」
「はい、実はクラスメイト…いえ、“友達”を見つけたので、ちょっとごあいさつをしてきます」
そう言って、ソフィアが見た、その先にいたのは…

307 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 20:47:29 ID:4qfRRJVE
すいませんでした!支援

308 名前:歌い手は魔に魅入られる(エンディング)@学園世界:2009/04/04(土) 20:48:29 ID:r31VBeMf
―――真帆良学園 街路樹ベンチ

爽やかな風が吹き抜ける、街路樹の下のベンチ。
昼下がりの陽光を受けながら、ライズは1人本を読んでいた。
パラパラとページをめくってはいるものの、考え事をしているためか内容が頭に入ってこない。
(…何故、私はあんな真似をしたの?)
頭の中に思い浮かぶのは、あの、ソフィアとの戦いのとき―――

「そう。それで良いのよ…」
ソフィアの死を予知し、それより一瞬早く身体を捨てたチェフェイが嘲笑う。
「その子には多くのものを貰ったわ。不安、諦念、劣等感、恐れ…積もり積もった“負の感情”をね」
生体エネルギー“マグネタイト”それは、チェフェイのような“悪魔”がこの世界で活動するためのエネルギーであり、
成長の“糧”となるもの。
「特にその子のように強い“負の感情”を持つ人間のマグネタイトは、あたしにとっては最高の“餌”よ。
 それに、最高に面白かったわ。力を持ったとたんに、どんどん欲望が強くなっていくのだもの」
もっとも、あたしが憑いてたからなんだけどねと嘲笑い、心底嬉しそうに言う。
「そして、あなたに殺されたことによる“怨念”と“死の恐怖”。これを頂けば、あたしは成長を終えられる。
 御苦労さま。お礼に、全力で殺してあげるわ。あの時の、お礼も込めてね…?」
哄笑したところで、チェフェイは気づいた。待ちに待った断末魔の感情が、流れ込んでこないことに。
「…1つだけ。忠告してあげるわ」
ソフィアを抱きかかえたまま、ライズがチェフェイに言う。
「切り札は、切るときまでは秘密にしておくものよ」
抱きかかえたソフィアをそばにほうり捨てる。
「…うん。これならすぐに治療すれば、すぐに元気になれるはずです」
一狼がソフィアを抱きとめて、容体を確認し、頷く。
満身創痍で酷い状態だが、“致命傷”は全く無い。これなら魔法治療ですぐ元気になれるはずだ。
「残念だったわね。あなたの思惑は、外れたようだわ」
一狼に1つ頷き返し、ライズがチェフェイをまっすぐ見据えつつ、言う。
「そんな!?なぜ!?あの攻撃は、もはやあたしでもどうすることもできなかったはずなのに!?」
予想外の事態にチェフェイが狼狽する。
あの、ライズの放った神速の突き。あのスピードではもはやそらすこともできず心臓は串刺しになる。
そう、判断したからこそチェフェイはソフィアを“捨てた”と言うのに。
「ありえないわ。一体どんなからくりを…!?」
そこまで言ったところで、チェフェイは気づいた。
「あなた、“剣”はどうしたの!?」
ライズの手に、剣が握られていないことに。
「…これが私の、切り札。簡単なことよ。私は命中の直前に、剣を“仕舞った”だけ」
手袋を撫でつつ、ライズがすまして言う。
この手袋を購入したときに購買で言われた言葉を思い出し、ライズはそれを使った。
万色学園と言うとある異世界の学園ではごく一般的な“クエスター”用アイテム、“時空鞘”。
その効果は…武器を“瞬時に出し入れ”できる、ごく小さな異空間を操ること。
「あなたの負けよ。あなたはこれ以上、強くはなれないわ。ここで、倒されるもの」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、ライズが言い放つ。
「…ライズさん!僕の月匣が“通行証”で開かれました。多分、薙原たちです!」
「そう。これで、形成逆転ね」
怒りで歪んだチェフェイを嘲笑い、ライズが更に追いうちをかけた。


309 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 20:50:01 ID:1L6IYJyD
紫煙

310 名前:歌い手は魔に魅入られる(エンディング)@学園世界:2009/04/04(土) 20:51:30 ID:r31VBeMf
あのとき、あの行動は賭けだったわ)
あれは、最後の“殺す”チャンスを捨てる行為でもあった。裏目に出ていたら自分たちは焼き尽くされていただろう。
勝算が無かったわけでは無い。あの“狐”がいざとなれば逃げを選ぶだけの頭の持ち主であることは、最初から知っていた。
だからこそ、追いつめればチャンスは生まれるとほぼ確信していた。かなり分の良い賭けだったと言ってよい。だが。
(賭け事態が、厳に慎むべきものだと言うのに)
どんな状況でも常に最悪を想定するライズにとって、その行動自体があり得ないことだった。
(どうして私は「ライズさん!」
思考が中断される。聞きなれた声だ。
「…なにかしら?ソフィア」
本から目を上げ、返事をする。
「あの…その…ありがとうございました」
ライズのストレートな物言いに少しだけ口ごもりながら、はにかんでソフィアが言う。
「…?あなたにお礼をいわれる、いわれが無いわ」
あのモンスターに憑かれている間の記憶が失われているのは確認している。
「え?…あ、そう言えばそうですね」
ソフィアがきょとんとする。だが。
「…でも、なんかお礼を言わなきゃいけないって思ったんです。理由は分からないけど。だから、本当にありがとうございました」
そう言って、ソフィアは笑う。何かをふっきったような、清々しい笑顔で。
「…そう。だったら、一応、受け取っておくわ」
そんなソフィアの笑みを直視できず、目をそらしてライズが言う。
「ソフィアー!まだなの?待ちくたびれたわ!」
「あ、ごめんなさーい!今行きまーす!」
ちょっとだけ慌てて、ソフィアがライズに言う。
「…それじゃ。今日は失礼します。それじゃあ、また明日!」
ぺこりと頭を下げ、少女たちの方へと走り去っていくソフィア。
「…また、明日、ね…」
1人取り残されたライズが本を読むのを諦め、空を見上げる。
「…まあ、いいわ。過ぎたことを気にしても、仕方がないもの」
そう言って見た、学園世界の空は、今日も晴れて、青かった。

―――魔界

「生きて戻ったか…いいだろう。貪欲界に戻り、傷を癒すがいい」
限界まで消耗し、ズタボロになったチェフェイを元の魔界へ送還する。
「…学園世界。中々に厄介なものが揃っているようだな」
ハザマの今の持ち駒でも上位に属する“チェフェイ”を退けた学園世界の学生たちを素直に称賛する。
「今の戦力で力押しは無謀と言うことか」
丸ごと、準備も無しに敵に回せば、恐らくは自らが出ても勝てない。
それを悟った魔神皇が“嗤って”呟く。
「…ならば、より入念に準備をする。それだけだ」
傍らに立つ男に呼びかける。
「…それで、準備の方はどうだ?」
「完璧です。魔神皇様」
その白衣を着て、眼鏡をかけた中年の男が言う。
「研究が完成すれば、あの世界そのものが貴方様のものになることは“科学的に”明らかです。完成まで、しばしお待ちください」
「そうか。分かった。下がれ」
「…は」
男が自らの研究所へと去り、一人になった部屋で、魔神皇は嗤う。
「…さて、次はどうするか」
次の一手に、思いを馳せて。

311 名前:歌い手は魔に魅入られる(エンディング)@学園世界:2009/04/04(土) 20:53:40 ID:r31VBeMf
今日はここまで。これにて第2話終了です。

>>226
割と必然的にそうなってます。
『敵国のスパイ』だの『アメリカで恐れられた伝説の暗殺者』だの『カレー臭のする聖職者に狙われてる薄幸の吸血鬼』だの、
正体がばれると非常にアレなメンツも多くいますのでw

312 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:00:18 ID:YK9fGz9W
投下乙です。
とりあえず気になったのが麻帆良学園が真帆良学園になってる罠。


313 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/04(土) 21:09:06 ID:4qfRRJVE
投下乙です。
失礼しましたといったそばから
投稿の頭に被せてしまい本当にすいませんでした!

314 名前:魁!不良伝説@学園世界ネタ:2009/04/04(土) 21:25:29 ID:4qfRRJVE
                     
●「魁!不良伝説」修正保管いたしました。

 本日は色々とご迷惑をたくさんかけてしまい申し訳ありませんでした。
 
特に冒頭被せてしまいました>>299さん大変失礼いたしました。



315 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 13:43:33 ID:cotBBytX
投下予告に参りました。
『柊蓮司と銀なる石の少女』第三回、午後二時半ごろから投下開始したいと思います。
後程投下時まで。ではでは。

316 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 13:47:47 ID:GIqLXU/f
眠いけど待ってるー。

317 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 13:55:44 ID:RkWmH+Fg
支援準備。
今気付いたんだけど、>314って保管庫の人じゃないよな?

318 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 14:16:23 ID:GIqLXU/f
>>317
作者氏当人みたいだな。
学園世界カテゴリからのリンクがないけど、自分の作品を自分でwiki登録しようってのは立派なことじゃねーの?

319 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/04/05(日) 14:42:31 ID:EBZyLHSP

     ※

 喫茶店ぺリゴールに突如訪れた二人の訪問客は、柊や紫帆たちにとっては図らずも驚くべき来訪者たちとなった。
 霧谷雄吾は日本におけるUGNの最高責任者だし、アンゼロットにしたところで、軽々しく“下界”に降りてくるのは、任務依頼にかこつけて柊をおちょくるときぐらいのものである。
 先程、戸外から聞こえた車の停車音は、おそらく霧谷を護衛するUGNエージェントのものであろうし、アンゼロットがここにいる以上はロンギヌスの護衛もぺリゴール周辺に控えているはずだ。
 空を飛ぶ、というけったいな機能がついているリムジン・ブルームはエンジン音がしないはずだから、たぶん戸外からの気配はわずかであるはずだった。
 それでも、アンゼロットがこうして自らしゃしゃり出てきたのであれば、きっとロンギヌスの精鋭たちに護られての登場に違いない。
 二つの組織のトップが揃って入店してきたことで、思わず呆気にとられていた柊たち。
 そんな彼らの内心の動揺など意に介した様子もなく、スーツの男 ――― 霧谷は店内を鷹揚に見回し、柊の顔の上でその視線を止めると、その頬に浮かべた柔らかな微笑をますます深めた。
「柊蓮司君ですね。始めまして、UGN日本支部長を務める霧谷雄吾と申します」
 静かな声色であった。
 大人の男の余裕、というか、一組織の長である重責を担うだけの貫禄、というか。
 そんなものに気圧されつつ、思わず柊がギクシャクと立ち上がる。
「柊、蓮司っス。えと、よ、よろしく」
 挨拶の言葉も、ついついどもりがちになる。
 自分がこの年齢に達したとき、果たしてこんな風に振舞えるだろうか ――― などと。
 そんなつまらない考えが頭の片隅をかすめ、なんだか俺らしくねえな、と内心苦笑する。
 霧谷の差し出した右手に誘われるように、柊は求められるがまま彼と固い握手を交わした。
「一度お会いしたいと思っていました。お噂はかねがね」
 霧谷が、柊の目を覗き込みながらそう言った。
「……下がるとか、落ちるとか、そんな噂っすか」
 こういう憎まれ口をつい叩いてしまうところも、まだまだ自分が子供である証拠か。
 そんな軽い自己嫌悪を感じるのも、柊にしては珍しいことである。
「……世間に流布する噂には、下世話な風評もつきものです。私は、君に関する噂や数多の報告の中から、真実の君の姿を見極めたい、と思っていますよ」
 握り締める霧谷の右手の力がわずかに増したようだった。
「曰く、世界の守護者の最も信頼厚き懐刀。曰く、最高クラスの魔剣使い。曰く、“神殺し”」
 霧谷の言葉が、柊の名に冠せられた数々の異名を数え上げる。
「乱れ飛ぶ揶揄や悪評から、私が君の真実の姿を見出すとしたら、さしずめそんなところです」
 世辞や社交辞令といった雰囲気ではなく、霧谷は心底からそう思っているようだった。
 柊の手を握る霧谷の力は存外強い。
 それでも、それは痛みを決して伴うことはなく、むしろ魔剣を振るう柊の手の形を確かめるような、熱い握手であった。
「や、その、なんつーか……」
 面と向かって褒められる経験に乏しいため、なんと言葉を返したらいいものか困ってしまう。
 だからついこの場の空気を紛らわせるように、
「おい、アンゼロット! 二人して俺のことからかってるんじゃねえだろうな!」
 霧谷の背後で済ました顔をしている銀髪の少女を怒鳴りつけた。アンゼロットは片目だけをちろりと開けて柊を見上げると、握手を交わす二人の男の真横をするりと通り過ぎる。
「わざわざそんなことのために、わたくしがご多忙を極める霧谷さんまで巻き込むはずないでしょう?」
 そんな台詞を吐きつつ、アンゼロットは紫帆たちのほうへと歩み寄っていく。


320 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/04/05(日) 14:44:06 ID:EBZyLHSP
「柊さんで遊ぶときは、それなりのやりかたというものがあるんです。それに、そういう面白いことは、ひとりの愉しみにとっておくのがわたくしの主義ですから」
「おいっ!? いま、お前さりげなくとんでもねえこと言いやがったな!?」
 世界の守護者と魔剣使いのやり取りを楽しげに聞きながら、霧谷がようやく柊の右手を離す。
「君への評価と、こうして出会ってみての感想は、まぎれもなく私の本心ですよ。それに、きっと彼女も ――― 」
 どこか笑いを含んだ霧谷の言葉に、アンゼロットが愕然と振り向いた。
 それは、余計なことを口にするな、とでも言いたげな表情である。
「信頼できるウィザードをひとり、今回のミッションにあたって紹介して欲しいとの私の要請に、躊躇なく君の名前を挙げたぐらいですからね」
「ちょっ……霧谷さん!? 余計なこと仰らないでください!?」
 霧谷の言葉に、慌てふためくアンゼロット ――― そんな世にも珍しい光景に、柊も面食らう。
「わ、わたくしはただ、現在任務に当たっていない、高校を卒業してのうのうと太平楽に過ごしている野良ウィザードが、柊さんひとりしか思い浮かばなかっただけですっ」
「……あー、あー、そーだろーよ……そういうことだろーと思ったぜ……」
 売り言葉に買い言葉、とでも言えばいいだろうか。
 言葉の表面上だけを捉えるならば、少々どぎつく、少々険悪な二人のやり取りである。
 それでも、アンゼロットと柊の憎まれ口の叩き合いを、霧谷も紫帆たちも生温かい目で眺めるにとどめておいた。
 当人たちは言葉の上では否定するかもしれないが、案外この二人、彼らの目から見ても悪くないコンビのように思えるのである。
「……コホン。汚見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした」
 気を取り直して、歩み寄った紫帆たちに向けて一礼をするアンゼロット。
 優雅に頭を垂れる様子は、まるで一枚の絵画を思わせる優美さである。外面だけなら絶世の美少女である彼女の仕草は、初対面の紫帆たちを容易くだまくらかせる程度には洗練されている。
「わたくしの名前はアンゼロット。こちらにいる柊さんを、霧谷支部長からの要請で派遣したものです。以後、お見知りおきを」
「こ、こちらこそ」
「ど、どうぞよろしく」
 紫帆とミナリがどもりながら挨拶を返す。
 自分たちよりも明らかに年下に見える銀髪の少女の、ひどく大人びた物言いや仕草、そしてなによりその美貌に圧倒されてしまったようだった。
 その中で柳也だけが、煙草をくゆらせながら胡散臭げな視線でアンゼロットを眺めている。
 紫帆やミナリたちと違って、見た目の若さや愛らしさなどに目を曇らせるほど、柳也は世間知らずではないようだった。
 そもそも、自分が属するUGNの最高意思決定機関である中枢評議会にだって、似たようなのがいるのだから。
 確かテレーズという名前の、アンゼロットと同年代程度の少女が、中枢評議会“アクシズ”の十二人のメンバーのうちの一人であるはずだ。
(……やなヤツのこと、思い出しちまったな)
 テレーズの名前と同時に、一番苦手とする“悪友”の面影を同時に連想してしまい、思わず柳也が顔をしかめる。
 銀目の鴉の事件を共に戦った後は音沙汰なしではあるが、アイツはきっといまでも自身の好奇心を満たす研究に、どこかで没頭しているのであろう ――― そう思う。
 上の空で柳也がそんなことを考えていると、脇腹を軽くつつかれた。


321 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 14:45:09 ID:GIqLXU/f
しえーん

322 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/04/05(日) 14:45:58 ID:EBZyLHSP
 いつの間にか隣に寄ってきていたミナリが、
「柳也さん、挨拶。挨拶、きちんとしてください!」
 こちらにそんなことを囁いている。
「ん?」
「もう! 鳴島市のUGNを、“一応は”預かる身なんですから、きちんとしてください!」
 柳也に向かって小声で叫ぶ、という器用な芸当をミナリが披露した。オーヴァード組の中では、性格が真面目で堅物な分、権威とか格式とかそういったものにミナリが一番弱い。
 日本支部長である霧谷が連れてきた外来の客人を前にして、いつもよりも舞い上がっているようだった。
「別に構うことはないっすよ、柳也さん。それに、ミナリも紫帆もいちいちそんなこと気にすんな」
 手をパタパタと振りながら柊が横から口を挟む。
「だけど、柊さん ――― 」
「あらあら、いいんですよ。あまり肩肘を張らずに、どうぞお気を楽になさってくださいな。そうでないと ――― 」
 なおも言いつのろうとするミナリに意味深な微笑みを投げかけ、
「 ――― いまからそんなに気を張っていては、この後、到底保ちませんよ?」
 聞きようによっては穏やかではない台詞を、アンゼロットが呟いた。
「……そろそろ本題に入らせていただきたいのですが」
 お互いの陣営の自己紹介があらかた終わった頃を見計らい、この場を仕切ったのはやはり霧谷である。その言葉に、辺りが水を打ったように静まり返った。
 一同が承諾の意を示し、その場の全員が首肯するのを確認すると、
「ことの始まりから、私の説明できる限り、すべてを説明させていただきます ――― 少し長い話に、なりますが……」
 このときばかりは深刻な表情を隠そうともせず、霧谷は重々しく口を開いたのであった。

     ※

 アンゼロットの補足説明を合間に挟みつつ、霧谷が柊たちにすべての話を終えた頃には、とっぷりと陽は暮れ、時刻はすでに午後二十時を回っていた。
 彼らの入店後、すぐに『CLOSED』のプレートをかけられたぺリゴールの入り口の扉の前で、柊たちの見送りを受けた霧谷とアンゼロットの二人は、示し合わせたかのように同時に振り返り、
「かつて前例のない事態であるということだけは理解してくださいね、柊さん」
「できる限りの協力や支援は惜しまないつもりです。どうか、よろしくお願いします」
 口々に、柊たちへの叱咤とも激励とも取れる言葉を最後に残すと、同じリムジンへと乗り込んでいったのである。
 仮面のロンギヌスが二人のために開いた後部座席のドアから、アンゼロット、次いで霧谷が車内へと滑り込む。
 わずかのときを置かずして空中にホバリングを開始したリムジン・ブルームの片側の硝子窓が音もなく開くと、そこから霧谷が顔を覗かせた。
 立ち尽くす四人の引き締められた表情を真正面から見据え、彼が最後に目を止めたのは、出会ったときと同じく柊の姿である。
 霧谷の視線が、しっかりと柊の視線を捕らえた。
 無言で、内心に秘めたなにごとかを彼に伝えたいと願うかのようであった。
「どうか。柊君、どうか」
 どこか祈りを込めるような面持ちで呟いた霧谷の姿が、ひどく印象的である。
「……任しといてください」
 たった、一言。
 任務に就くときと同じように。誰かに助けを求められたときと同じように。
 いつもそうしてきたように、柊が答える。
 いや、霧谷の真摯な目が、そう答えさせたといっても良かった。
 アンゼロット専用のリムジン・ブルームと、UGNエージェントたちの乗る数台の乗用車が続けざまに発進し、その影が夜闇の向こうに掻き消えて見えなくなった頃、一陣の風が吹き抜けた。
 冷たい夜気を孕んだ、身震いするような強い風である。
 走り去った車をいつまでも見送っていた四人のうち、最初に振り返ったのは柊であった。


323 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 14:46:31 ID:RkWmH+Fg
支援射撃

324 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/04/05(日) 14:47:08 ID:EBZyLHSP
 自分の後ろに立っていた紫帆の顔の上に素早く視線を走らせると、
「大丈夫だって。なにも霧谷さんの言うことが正しいって決まったわけじゃねえんだ。だから、あまり気にするなよ」
 短く、しかし温かい声音で呼びかける。

 紫帆の顔色は ――― 夜の戸外でもはっきりと見て取れるほどに、青褪めていた。

「へ、平気平気。なんとも思ってないよ、うん」
 柊の呼びかけに一瞬遅れて、強張っていた顔を無理矢理笑いの形に取り繕う紫帆。見ているだけで痛々しくなるほど気丈に振る舞い、わざとらしくガッツポーズを作ってみせた。
 無言で柳也がきびすを返し、ぺリゴール店内へと姿を消す。
 ミナリが、紫帆を気遣うように彼女の肩にそっと手を置いた。
「紫帆……中に、入ろう?」
「う、うん。外、寒いもんね」
 ミナリへ返す言葉も、どことなくギクシャクしている。
 無理をして作り上げた笑顔は、ともすればなにかの拍子に泣き出してしまいそうなほどに引きつり、唇は溢れ出る涙声を抑えこむようにふるふると震えていた。
 不意に、紫帆のもう一方の肩を柊の手が力強く捕まえた。
「柊クン……?」
「紫帆。ミナリの言うとおり、早く中に入ろうぜ。色々考えなきゃならねえことが多すぎるから、今夜はしばらくしたら解散にしよう。今夜はお互いにゆっくり休んで、明日また、な」
 けっして気張ることない、平素と替わらぬ柊の声色は、不思議と温かく紫帆の胸に染みこむようだった。その言葉を噛み締めるようにして、紫帆がゆっくりと頷く。
 そのとき、ぺリゴールの店内から、一足先に引っ込んだ柳也の、彼にしては珍しい大きな声が三人に呼びかけた。
「風邪ひきたいのか、お前ら。熱いコーヒー淹れてやるからさっさと戻れ」
 紫帆とミナリが、揃って顔を見合わせた。柳也が自分以外の誰かのためにコーヒーを淹れることは、それほど珍しいことなのである。
「……あはは……なんだか、柳也さんまで気を遣ってくれてるのかな……?」
 そうだとしたら、なんという不器用な気の遣い方であろうか。
 ミナリや柊たちの遠回しな励ましに、わずかに気力を取り戻したのか、紫帆の顔つきがようやく普段の明るさを取り戻す。
「うん、柳也さん特製のコーヒー飲んで、あとはまた明日にしよ。委員長、柊クン」
「……ええ」
「ああ」
 短く応じる二人に、ぺこり、と紫帆が頭を下げる。
「もしかしたら色々迷惑かけるかもしれないけど、そうなったらごめん。私、みんなに助けてもらわなきゃならなくなると思う。だから……」
 唐突に、紫帆の頭の上に大きな手が乗せられ、髪をぐしゃぐしゃと掻き混ぜられた。
 言うまでもなく、それは柊の手であった。
「そういうのはナシにしようぜ。もう、俺とお前は一緒に剣を取って戦った仲間なんだ。仲間だったら、そういう気遣いはすんなよ」
「持ちつ持たれつでいいじゃない。だから顔を上げて、紫帆」
 ミナリの声が柊に続く。
 霧谷のもたらした言葉の幾つかは、紫帆にとって大きな衝撃と不安をつのらせるものだった。


325 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 14:49:14 ID:GIqLXU/f
ありゃりゃ、多分そーゆーことなんかな支援

326 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/04/05(日) 14:50:56 ID:EBZyLHSP
 UGNが、ウィザードという外部の人間を招聘しなければならなかった理由。
 いまだ茫洋として輪郭の見えない、しかし、ただならぬ事態の発生を予感させる様々の事柄。
 そして、その『事件』の中心に“あのとき”と同様、またもや自分が置かれているのではないかという不吉な指摘に、紫帆は正直、狼狽しきっていたのである。

 だが ―――

「ありがとう。二人とも、よろしくね」
 力強く自分を支えてくれる仲間たちの存在に勇気づけられる。

 委員長。
 柳也さん。
 そして、今朝知り合ったばかりだけれども、柊クン。

 くるりと振り返ると、ぺリゴールの扉に紫帆が手をかける。
 開かれた扉の隙間から、店内の暖気に混じって、芳しく香ばしいコーヒーの香りが漂ってきた。

 すべては明日。明日、みんなと一緒に考えることにしよう。

 霧谷とアンゼロットの告げた、『我々が共闘しなければならない事態』のことなんて、自分ひとりの頭で考えたところで、簡単に解決できることではないはずだから。
 人知れず小さく頷くと、紫帆は、熱いコーヒーの待つ店内へと舞い戻る。
 柊とミナリが彼女の背中を追うように続き、ぺリゴールの扉が三人の姿を完全に店内へと飲み込んだ。
 夜は、ますます深く。
 風は、ますます冷たい。
 鳴島市を覆い始めた暗雲の分厚さに、このときはこの場の誰ひとりとして、気づくことはなかったのである ―――

     ※

「組織の長たるもの、勘、などという曖昧なものを判断材料にしてはいけないことぐらい、十分に心得ているつもりなのですが ――― 」
 自嘲気味に呟くと、リムジン・ブルームの車内で霧谷がほろ苦く笑う。
 豪奢な毛皮のシートに深々と腰掛けた霧谷は、ひどく疲れきった面持ちで、対面した銀髪の少女に目をやると、彼女の返答を待つかのように押し黙った。
 銀髪の少女 ――― アンゼロットは驚いたように目を見開いて、
「まさか、霧谷さんともあろうかたが、本当に“勘だけ”で動いているわけではないでしょう?」
 と、鈴を転がすような涼やかな声音で柔らかく反駁する。
 ぺリゴールでの柊たちとの会見の後、帰りの車中での二人の会話であった。
「まるっきりの勘というわけではありません。ですが、現状の事態の把握は、まだ私の推測の域を出ていません。贔屓目に見ても、ただの『憶測』というところがせいぜいではないでしょうか」

 貴女にウィザードの出動を要請したこと、私自ら七村さんたちに会いに行ったこと。
 これは軽率な行動だったと、実はいまでもそう思っています ――― そう、霧谷が言う。
「空が落ちてくるのではないかと無用の心配をした男の故事のように ――― ただ私の軽挙妄動だと笑われるだけならば、むしろその方が気は楽なのですが」
 目を伏せる霧谷を、アンゼロットが傷ましげに見つめている。


327 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/04/05(日) 14:52:21 ID:EBZyLHSP
「……鳴島市近郊におけるジャーム発生率や、レネゲイド犯罪の発生件数が“ある時期”を境にして激増している、という確かなデータがあっての推論なのでしょう?」
 アンゼロットの口調は、まるで憔悴する霧谷を励ましているようでもあった。
 これも、彼女にしては珍しいことである。
「ええ。ですがそのデータも、私の推論との因果関係を証明することができて初めて、説得力を持つものです。現状では、なんとも」
 霧谷の言葉はあくまでも自分に厳しい。
 アンゼロットの言う『鳴島市周辺のレネゲイド事件の増加』とは、ぺリゴールでまず初めに霧谷が紫帆たちに語った事柄であった。
 鳴島市に隣接する各市を含む一地帯において、日を追う毎、週を追う毎に事件の発生率が増大しているという詳細なデータを、まずは霧谷が紫帆たちに説明した。
 異変の始まった最初の週は二件。しかし翌週には二件が六件へと増え。
 六件が九件。九件が十三件。十三件が十六件と、その増大は止まるところを知らなかった。
 各週単位で増加するレネゲイド犯罪、ジャーム出現報告のリアルな数字に、紫帆たちは息を呑んでいた。
『先週は、鳴島市を含む周辺七都市で、計六十件の報告が寄せられました』
 霧谷の示した数字の大きさに、そのとき一同の表情に固いものが走ったものである。
 レネゲイドに関する知識は付け焼刃で、あまりに乏しいものであるとはいえ、さすがの柊ですらも、その数字の大きさに顔をしかめたほどだった。
 彼らの反応の顕著なさまに、言葉を続けることを一瞬躊躇った霧谷だが、先延ばしに出来ない以上は決意を固める、こう言うしかなかった。

『この増加傾向は、“ある日”を境にスタートしています……それは ――― 銀目の鴉事件の収束した、そのすぐ翌日からです』、と。

「……あのときの、七村さんの顔がまだ目に焼きついていますよ」
 ぺリゴールでは抑えていた焦燥や苦悩が、二人きりのリムジン内で一息に噴出したように、霧谷が言葉をこぼす。
「霧谷さんは、お優しすぎます」
 眉根を寄せるアンゼロットの声も、どこか苦渋に満ちているようだった。
 それは、従うものたちや、配下のものたちが居る場所では決して面に出せない心情の発露である。
 彼らの手前、人間的な弱味を見せるわけにはいかない組織の指揮官同士、奇妙なシンパシーが芽生えているかのようである。
「優しい、というのとは違うと思いますよ。やはり、これが私の弱さなのかもしれません。アンゼロット。貴女にも迷惑をかけます」
「そんなことは……霧谷さんの報告の内容を伺えば、わたくしが動くのは当然のことですわ」

 まったく同時期に、紅い月と月匣までもが“ジャーム出現と同じポイント”で観測されているという事実を指摘されては腰を上げざるを得ませんわ ――― アンゼロットが、霧谷の言葉の後をそう引き継いだ。
 UGNが、アンゼロットに協力要請をした理由。
 それは、『ジャームとエミュレイターが行動を共にしているとしか思えない』という、前代未聞の報告に所以している。


328 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/04/05(日) 14:53:29 ID:EBZyLHSP
 アンゼロットが柊を鳴島市に送り込んだ背景の説明としては、これで十分であっただろう。
 そして、この異変と紫帆の存在になんらかの因果関係があるのではないかという見解を霧谷がほのめかしたとき ―――

「彼女にあんな顔をさせるつもりはなかったんですが……これは、言い訳ですね。私はあまりにも無神経すぎたかもしれない」
 凍りついた紫帆の笑顔。崩れ落ちそうな膝。
 濡れた瞳が、そこから零れ落ちそうになるものを必死で引き止めるように、なけなしの力を込めて見開かれていたのを、霧谷は思い出している。
「誰かが言わなければなりませんわ。もし、霧谷さんがあそこで言葉を濁していたら、わたくしの口から言おうと思っていました」
 アンゼロットの脳裏にも、たぶん紫帆のあの顔が浮かんでいたに違いなかった。眉根を寄せて溜息をつく白皙の美貌が、深い憂いに満ちている。
 世界の危機を回避するためにはどんな手段も厭わないと陰口を叩かれることもある彼女とて、その判断を好き好んでしているわけではないはずだ。
「ですが、柊君に睨まれたときは、さすがに肝を冷やしましたよ」
 霧谷の話にじっと無言で耳を傾けていた柊は、見た目にもはっきりと分かるほど憤っているようだった。
 紫帆を中心として事件が展開しているのではないかという意見が、UGN内部でも沸き起こっていること。
 事態の進展次第では、大規模なオーヴァード部隊投入を視野に入れた作戦行動の手配が、一部の上層部の指示で準備されているということ。
 最悪、紫帆には少々窮屈な思いをしてもらうことになるかもしれない ――― 言葉は悪いが、監視付きでUGN施設内に軟禁という選択も在り得る ――― ということ。
 霧谷がここまで喋ったところで、柊の目付きがひどく険悪なものになっていたのを、さすがにアンゼロットはすぐさま気がついた。

『……という最悪の事態を防ぐべく、霧谷さんがわたくしにウィザードの派遣依頼をされたのです。この件に関しては、柊さんに全面的な信頼を寄せていますよ』
 霧谷に助け舟を出すようなアンゼロットの台詞に、
『あったりまえだっつーの! 言われなくてもそのつもりだ!』
 ふてくされたように柊が吐き捨てて、そっぽを向いた。

「放っといたら、霧谷さんの胸倉を掴みかねませんから、あのひとは」
「はは。ですが、彼も最後には納得してくれていましたからね……いい、若者ですね。彼は」
 霧谷とアンゼロットが、少しだけ笑う。
 重苦しく垂れ込めた車内の空気が、わずかに薄れたようだった。

「まだ、すべての情報を開示するときでは、ないのでしょうね」
「ええ。わたくしは、そう思います。霧谷さんの仰るとおり、この一件が杞憂に過ぎないのだとしたら、悪戯に混乱を招くだけですから」
 ふう、と霧谷の唇から溜息が漏れた。


329 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 14:54:26 ID:GIqLXU/f
支援を

330 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 14:55:08 ID:RkWmH+Fg
セットアップ《戦術》支援

331 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/04/05(日) 14:55:20 ID:EBZyLHSP
「……今夜は、ここでお開きにしましょう。根を詰めすぎるのもよくありませんから。“世界の守護者”の重責を背負っている貴女なら、なおさらです」
「あら、お気遣いいただいて。ですが、霧谷さんこそ、日本支部長ほど肩のこる仕事はないと、わたくしは思いますわよ」
 顔を見合わせて、微笑みあう二人。

「お時間があれば、秋葉原へ向かいませんか? 任務の一環で私が経営する喫茶店がそこにあるんです。よろしければ、私にお茶をご馳走させてください」
 トワイニングのアールグレー。
 それともフォーションのアップルティーなどいかがです? ――― 霧谷の言葉は、アンゼロットの微笑みに深みを増し、鬱蒼とした面持ちを吹き飛ばす効能があったようである。
「霧谷さんが直々に淹れてくださるのですか? それでしたら、秋葉原でも登別でもどこへでも向かいますわ ――― 行き先を変更します。秋葉原の……」
「ゆにばーさる、という喫茶店です」
 二人の指示を受けてリムジンを操るロンギヌスがハンドルを切った。
 時刻は二十時半。夜の茶会というのも悪くはないだろう。
「……彼女たちも、こうして今夜は息抜きをしてくれているといいんですが」
 霧谷が、空飛ぶリムジンのサイドガラスから下界を見つめながら、そう呟いた ―――

     ※

 暗い。昏い。どこまでも深く、無窮の暗黒が満ちている。

 場所は定かならず。時刻も確かならず。
 屋内なのか、戸外なのかそれすらも分からない。
 朝なのか、昼なのか、夜なのかそれすらも分からない。
 暗いのだから夜なのだろうと思うのは浅墓な見解だ。

 なぜなら、いくら夜でも“こんなに暗い”夜は存在しえぬはずであるからだ。

 暗すぎて、夜ではない。
 かといって、陽の光が指す余地もそこにはない。

 ひるがえって、ここは屋内なのか ――― いや、さきほどから辺りに湿った風が吹き抜けている。
 では、戸外なのか ――― それにしては、この閉塞感と息苦しさは、只事ではない。

 もはや存在しない場所。
 すでに失われた時刻の狭間。

 おそらく、ここはそういうところなのであろう。

 その闇の一角で、蠢く人影があった。
 漆黒よりもなお黒い空間の中にあって、なぜかその人影は、輪郭までもがはっきりと見て取れる。
 たおやかな少女の姿をしたそれは、歳の頃で言うなら十歳前後の幼さであった。
 しかし、その唇に浮かんだ、あるかなしかの薄い微笑みから漂う妖艶さはどうだ。
 子供の浮かべる類いの笑みでは ――― いや、浮かべていいような微笑では決して、ない。
 肩の辺りで綺麗に切り揃えられた髪は黒。切れ長の瞳は、やはり同じく闇の色。
 際限ない黒を湛えた瞳は、ただ真っ直ぐに前方を見つめている。


332 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/04/05(日) 14:56:52 ID:EBZyLHSP
「そこにいるのでしょう?」
 十歳の少女の姿で、幾星霜の年輪を経たものでなければ発し得ない声を発する。
 それに応えるように、粘つく大気を孕んだ風が巻き起こり、暗黒の空間の中にもうひとつの人影を生み出した。
 かさり、かさり、と乾いた音がする。
 紙を擦るような、そんな音がする。
 風が運ぶ匂いは黴の匂いだ。年月を経た古書のみが持つ、特有の黴の匂いである。
 それは新たに現れた人影が手に持った、いかにも古ぶるしく、重たげな一冊の書物から漂ってきているようである。
 愛しげに、まるで恋人を腕に抱く抱擁のごとくに、分厚い書物を胸に抱いた人影は、これもまた少女の姿を取っていた。
 腰まで覆う長い髪。眠たげに細められた紫色の瞳。
 表情に乏しく青白い顔は、細面ながらも美しい。こちらは ――― 十八、九歳の外見である。
 ローブのような、纏うものの国籍も分からぬ衣装を細身の身体に着こなした少女は、幼い呼び手の眼前にゆっくりと歩み寄る。
「ええ……貴女と行動を共にするようになってからは、いつでも。いつでも、側にいますよ……?」
 幼い少女はゆっくりと頷くと、長い髪の少女を見上げる。
「貴女の言葉通り、世界の守護者は柊蓮司をこの一件に介在させたようですね、“秘密侯爵”」
 聞くものが聞けば驚愕するに違いない禁忌の名。
 それは、ウィザードであれば肌に粟立つものを抑えることを禁じ得ぬ、裏界の魔王の名であった。
 “秘密侯爵”リオン=グンタ。それが、長い髪の少女の名前である。
 リオンは、年端も行かぬその少女の、異様に大人びた口調を咎めるでも、不審に思うでもなく。
「ええ……すべては、この書物に書いてある通り」
 そう、囁いた。
 リオンの言葉に、少女の笑みはますます凄艶さを増し、周囲を包む闇がいよいよ深まっていく。
「ここまではすべてが手筈どおり。私の揃えた役者たちが、上手く自分たちの役を演じてくれるといいのですが」
 期待を込めた口調は、しかしまったく揺るがぬ確信に満ちている。
 そんな彼女を、不思議な色の瞳で見つめながらリオンが小首を傾げた。
「……すべては、貴女の“プラン”通り、なのでしょう?」

 少女がリオンを振り仰ぐ。
 はっきりと見えていたはずの表情が、なぜかいまだけは暗黒の翳に隠されて見えなかった。

「ええ。この私 ――― “プランナー”の名にかけて」

 少女 ――― 都築京香の姿が、その言葉だけを残して掻き消える。
 その後を追うようにしてリオンの気配が失われると、その空間には闇と黴の匂いだけが残されたのだった ―――

(続く)


333 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 14:57:30 ID:RkWmH+Fg
ふむ、支援は要らぬようだな。

334 名前:柊蓮司と銀なる石の少女:2009/04/05(日) 14:58:02 ID:EBZyLHSP
投下終了です。
支援くださった方、有難うございました。
いままで単品世界のものしか書いた経験がないので、いまさらですけどクロスSSの難しさを痛感中です。
前回、『異なる世界』の住人たちの認識をどうやって、どこまで共通のものにさせていくかという問題に頭を悩ませたものですが、今回も産みの苦しみというヤツを味わいましたよ、ええ(笑)。
では、次回の投下時にお会いしたいと思います。ではでは。


335 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 18:21:49 ID:vq7/s77I
>>334
"プランナー"とリオン様か・・・・。
・・・・キャラ被ってね?w

ともあれ。GJでした。
軽くぱにくってるミナりんかわいいよミナりんw

336 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 20:24:26 ID:BQyuN1LT
被ってるからこそあえてのコンビだろうw
策略自体が失敗してもこれも私の思惑通り系黒幕

337 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 20:58:01 ID:J3DpuC0/
被ってると微妙に困ると言えば、口調とかw

338 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 21:51:15 ID:s1S5sz6n
それはつまり、
後ろで笑ってるのが、どっちがどっちか分からなくなったベルさまが
「どっちか分かるように話しなさいよ!」
とぶちキレるんですね。
分かります。

339 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/05(日) 22:15:38 ID:+d52/4OG
プ「…しかし、これもまた…」
リ「…あなたの計画のうち、とそうこの…」
プ「…書物に書いてある、でしょう?」
リ「あらあら…先読みされてしまいました」

ベ「…楽しそうね、あんた達」

340 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 00:35:19 ID:vJkAB+yb
ならばベルと春日の無限再生コンビを…

341 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 01:55:16 ID:WNs03hJS
ベル「あんたたち、あたしのここは空いているわよ」

342 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 09:38:29 ID:k/3GWvei
>>340
ゾンバルトも加えて三人乗り自転車こいでる姿が見えます。

343 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 11:49:27 ID:H44Lyh6a
>342
すげぇぴったりだあ!

344 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 12:02:41 ID:XSK6Drku
そいつらに誰が指令を送っておしおきするんだ

345 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 13:56:46 ID:UAhRWevY
>>344
メイドスキーならノリノリでやってくれそうだな

346 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 15:12:06 ID:vJkAB+yb
それぞれ作者が
きくたけ、王子、じゅんいっちゃんだから………社長?

347 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 19:18:35 ID:MneVgeIS
つまりブレカナから……しまった俺ブレカナ良くしらねえ

348 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 19:30:21 ID:5qZo7IC3
はいはいさすがにそれ以上は卓ゲ板行ってやってくれよー

そんなどーでもいい話は置いておくとして、ともかく>>334GJ。
アンゼロットがここまで強烈にヒロイン力を発揮したクロスは初めてだww
セントジョージが出なさそうなのはちょっと残念だけど、オアシス支部長の生ハードボイルドを期待してます。
では、次回更新を期待しています。

349 名前:もしも学園世界に2ちゃんねるがあったら@学園世界:2009/04/06(月) 22:57:31 ID:h8sq3zoY
柊蓮司板

1 :柊蓮司を見かけたらsagaるスレ 落下468回目(607)
2 :赤羽理事長代理と出来てるってマジ?part52(335)
3 :受け厨死ね。氏ねじゃなくて死ね(1001)
4 :学園世界最強の剣士って誰よ? 24本目(167)
5 :柊死ねで1000を目指すスレ7殺目(46)
6 :柊だけど蓮司じゃない奴集まれ〜(331)
7 :わっほう!柊蓮司だ!質問に答えるぜ!18問目(104)
8 :【被害】柊にフラグをへし折られた奴6人目【報告】(66)
9 :【蟹】柊蓮司の居場所を教えろ!今すぐにだ!(2)
10:柊が攻めとか言ってるやつは人間のクズ(1001)
11:柊蓮司ウォッチング同好会part75(116)
12:【譲って】柊蓮司の卒業証書【ください】(558)
13:なんで柊蓮司って制服着てんの?(289)
14:【下がるの?】上条当麻と柊蓮司が手をつなぐとどうなるの?【死ぬの?】(85)
15:柊蓮司にありがとうと言ってみるスレpart5(332)
16:1時間以内に1000まで行ったら柊蓮司のエロ画像うp(1001)
17:柊蓮司にタイマンで勝てる奴 7人目の侍(552)
18:執行部総合その92(177)
19:柊力で学年が下がったんだが…(80)
20:柊蓮司は銀髪の女が苦手らしい(771)

350 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 23:04:56 ID:8kIykBNL
メ欄に何も書かないで書きこむと下がるんですね、わかります

351 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 23:06:47 ID:MneVgeIS
むしろ目欄に柊と入れると下がる。

つーか柊単体で板一つあるのかよっ!w

352 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/06(月) 23:20:13 ID:WNs03hJS
055:柊つかさは入学式可愛い89
058:柊かがみはステージ衣装も可愛い50
182:柊潤を見守るスレ5【バカな子程可愛い】
186:柊恵一/ウサミミ仮面 9【遊びは終わりだ】
419:柊家総合 part10
620:柊蓮司は下がる男 期待値 -5


353 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 03:59:22 ID:aju5nnIA
他にも「実際にSSに登場した有名人」とかはファンクラブ板とかにスレ立てられてそうな気がw

瀬戸花組とかは華があるな。そして永澄死ねスレはきっと立つが、しばらくして豪ちゃんアク禁くらってすぐ落ちる。

他に人気ありそうな「実際にSSに登場した有名人」って誰がいるよ?

354 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 06:03:57 ID:JWcgvRhX
>>353
執行部の面々とは有名人だろうし専用スレはありそう(流石に板まであるのは柊だけだろうけどw)

あと学園世界でありそうな、学園世界ならではの板って言うと…
「試験」「学園」「先生」「魔法総合」「科学総合」「科学vs魔法」「極上生徒会」「同好会」「冒険情報」

この辺かな?グルメとかこっちにも普通にある板を抜くと。

355 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 15:26:54 ID:aju5nnIA
魔法少女板とかどうだろう?結構いたはず。

あとはまぁ能力板とか。
地下とかがすごいことになってそうで怖いなぁ。

356 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 16:13:15 ID:QN/ze8Id
魔法少女だと…現在学園世界に居ると明言されてるのがプリズマ☆イリヤ組・リリカルなのは組・ベホイミちゃんところの未来ちゃんあたりかな。
魔法少女系ネタの素みたいなのは頭の中にあるけど、NWキャラをどう絡ませるかになやんでおりますw。NWって意外に小中学生が少ないんですよねぇ。

あと人造人間系キャラクターのネタをやってみようかな、とかかんがえておりまふー。

357 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 20:00:29 ID:cw9zIgOt


358 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 20:35:22 ID:cw9zIgOt
またageちった……orz

ま。ともかく今日は学園世界ネタ2本立てで参りますねー。
先に短編の投下をします。俺の趣味全開だけどなっ!

ではでは。

359 名前:ノーチェさんの一日(学園世界編):2009/04/07(火) 20:36:16 ID:cw9zIgOt
 『学園世界』。
 多くの学校が、多次元融合現象を引き起こしている一つの結界内に広がる空間の通称。
 一つの世界を結ぶ結界が存在している以上、その空間は「世界」と呼ぶのが相応だろう。

 この学園だらけの世界にある存在は、当然学生・教員など学校関係者がほとんどを占める。
 ほとんど、というのは、数少ない例外として学校関係者でない者も何人かは存在するということだ。
 そういった存在は、この世界最高の権力を持つ『極上生徒会』の管轄となっており、例外なく『極上生徒会』直属機関の構成員となっている。
 そうでなければ『学校』以外のものを受け入れない律を持つこの世界に存在することが難しい、という点もあるのだが。

 これは、そんな数少ない『例外』の内の1人の、ある日のお話。


 ***
 朝―――AM6:00

 学園世界居住区E−1029。それは、あるアパートを指すIDである。
 二階建ての、なんだかややボロいワンルームアパート。
 そのアパートからは、毎日この時間になると定番の音楽が響いてくる。

 てんてーててっててて てんてーててっててて
 『腕を前から挙げて、背のびの―――』

 ……訂正。音楽と声が響いてくる。
 その部屋の中では、もぞもぞとせんべい布団が動いたかと思うと―――ばさり、と布団が一瞬ひるがえる。
 そこには、長い銀の髪をばさりと寝癖を放りっぱなしに、黒いリボンを足首につけた、ベビードールにかぼちゃパンツの、コウモリ柄の寝巻きを着た少女。
 彼女は慌てて掛け布団を吹っ飛ばしたまま、音楽に合わせて元気に体を動かす。

 5分後。
 彼女は今の今まで音楽と声を流していた、ガムテープの補修の見受けられる、ゴミ捨て場から拾ってきたラジオの電源を落とすと、溜息。

「……しまったでありますよ、また今日も最初に間に合わなかったであります」

 ……日課なのか、それは。

 閑話休題。
 彼女はその長い銀の髪をどこからともなく取り出したブラシで、鏡を見ることもなく器用に二つの束に分けて高い位置で足元の黒いリボンでくくる。
 俗に言うツインテールスタイルになった彼女は、やはりどこからともなく黒とフリルがふんだんに使われた服―――こちらも俗にゴスロリと呼ばれるものを取り出す。
 慣れたように袖を通し、ボタンを留め、ホックを上げる。ガーターベルトを留め、襟を正し、ホコリを払い、フリルを整える。
 これもまた鏡を見ずに完璧に整える。

 それを一通り終えてよし、と呟くと彼女はやはりどこからともなく大きな水晶玉を取り出してぺたりと手のひらをつけ、しばし目を閉じる。
 彼女はその鬼灯のような赤く大きな瞳を開くと、ぐっと拳を握る。

「今朝はエリーの工房にお邪魔でありますなっ!」

 そう言って、どこへともなく水晶球を片付け、部屋を後にする準備を即座に整えると、彼女はまだ陽が昇りだしたばかりの外へと駆け出した。
 そんな彼女の名は―――ノーチェと言った。



360 名前:ノーチェさんの一日(学園世界編):2009/04/07(火) 20:39:49 ID:cw9zIgOt
 ***
 朝―――AM6:30

 学園世界内・ザールブルグ王立魔法学校(アカデミー)近く。
 学生達に貸し出されている寮兼工房の近くにある、とある工房兼店舗。

 朝食を作るために台所に立っているのはこの工房の共同経営者の1人である錬金術士、エルフィール―――通称エリーだ。
 最後の一品を完成させて、切り分けた後リビングに持っていく。
 リビングの大きなテーブルについているのは、大きいのが1人と小さいのが2人。

「エリー、今朝はどこから覚えてきたの?」

 フォークを構えて臨戦態勢なのは長い卵色の髪の女性。
 ザールブルグアカデミーで教鞭をとり、この工房の共同経営者でもあるもう1人の錬金術士、マルローネ―――マリー。
 その隣の席に陣取る、黒い服の小さいの―――『妖精』と呼ばれる種族の男の子、パセックが歌うように言う。

「昨日は『トーフ』の入った『ミソシル』だったよね」
「その前は『ゾースイ』だった。卵がふわふわでおいしかったよ」

 それに被せるように言うのは、もう1人の小さいの。『妖精』の女の子、プルシャである。
 パセックとプルシャは、この工房に錬金術を学びにきているのだ。
 エリーが最後の一品を食卓に置く。タルト生地に卵と生クリーム、ほうれん草にベーコンを入れて、オーブンで焼いた一品。
 自慢げに彼女は言う。

「えへへ、昨日は委員会の帰りにちょっと遠出してみたんです。
 そしたら、そこでエリスさんに会っちゃいまして」
「エリスちゃんって、アレだっけ。お菓子作りがすごく上手で有名な」
「お菓子コンテストで3人同着1位になった子です。
 お菓子以外にもご飯も作ってるらしくって、教えてもらったんですよ。『キッシュ・ロレーヌ』っていうらしいです」

 8つに切り分けられたキッシュを一つずつとり、簡素なパンにハーブ入りのウィンナー。そして自家製ミスティカティ。
 今日は、学校が転移する前のザールブルグの朝食と大きくは変化のない食卓である。
 錬金術師の業というヤツなのか、彼女たちは新しいものへの好奇心でどこまでも動いていってしまう。
 それが、学園ごとザールブルグが転移してしまった後の朝食メニューにも出てしまったようである。

「なるほどエリス直伝でありましたかー。
 むむむ? けれどこのコクは生クリームだけではそうそう出るものではないと思うのでありますが……」
「あ、それは自家製のシャリオチーズを削って溶かしてあるんで、す……って」

 エリーがそんな評価を下した相手の方を見ると、立ち食いキッシュを行っているゴスロリ―――ノーチェがいた。
 ノーチェは口の中のものを飲み下し、おぉ、と呟く。

「これがザールブルグ名物シャリオチーズでありましたか。
 独特の風味と味わいが、どうやっても他の施設では出ないからと品薄になってる名産の」
「おや? あなたはノーチェちゃんだっけ?」
「その通りであります。そちらはマリーでありますな? いつもエリーからお話は聞いてるでありますよ」
「いやいやァ。あたしもエリーから色々聞いてる、なんかすごい水晶玉持ってるんだってね?」

 と、そこで世間話を展開しようとする2人に、エリーが割って入る。

「ま、待って! ノーチェ、なんでここにいるのっ?」
「なんでって……ご飯食べに来たでありますが」
「『当たり前』みたいな顔でそういうこと言わないっ!」



361 名前:ノーチェさんの一日(学園世界編):2009/04/07(火) 20:42:39 ID:cw9zIgOt
 むぐむぐ、とキッシュの残りを飲み下すとノーチェは月衣に手を突っ込んだ。

「冗談は置いておくとして、前にあげるって約束してたものをお届けしにきたでありますよ」

 言って取り出すのは、拳大の大きさの円筒状の物体。
 それを手渡しながら彼女はウィンナーをどこからともなく取り出した竹串で串刺しにしながら答える。

「ほら、前に言ってたでありましょう? 『練氣銃』っていう特殊な道具の話。
 銀之助とこの間あった時に、一個もらったのでありますよ。
 これを『練氣銃』に装填することで、複数回に分けて中に込めた『能力』を使用することが可能になるのであります」

 都立朝日奈高校に在籍する高校生、五十鈴 銀之助(いすず ぎんのすけ)の所有する、『能力者の力を込め、好きな時に好きな分量を放出する』道具が『練氣銃』である。
 エリーは、それをはじめて見た時からどういう原理で動いていて、どういう原理でその効果を発揮するのかをずっと知りたがっていたのだ。
 渡された練氣銃の弾を、目を輝かせて宝物のように見つめるエリー。
 ノーチェは半分以上かじり終えているウィンナーをぽい、と口の中に放りこみつつ続ける。

「それの中には『風』が今入ってるみたいでありますな。
 あと、銀之助に言ったらエリーと話がしてみたいとのことでありましたから、連絡先を渡すように言われてるであります。
 そこに挟まってるメモに携帯の番号があるでありますから、アカデミーに行った時にでもかけてみるといいでありますよ」
「あ……ありがとうノーチェ! 早速行ってくる! マリーさん、箒一本持って行きますね!」
「はーい、気をつけてねー」

 そう言うと、エリーは慌ててパンを一つくわえて、戸口に立てかけてある彼女謹製の「空飛ぶほうき」を手に取って、空へと飛び上がる。
 探究心がうずいたら、何をおいても駆け出してしまうのは錬金術士の 悪いクセ(さが)である。
 ともあれ、嵐のようにエリーが出て行った後。
 ノーチェはエリーの皿の上にあったキッシュに手を出そうとし―――マリーにその手を握られた。

「それはそれとして、エリーに届けものするのとウチで勝手にご飯食べてくことは別問題だよねェ」
「あ―――やっぱり、でありますか?」

 あいまいに笑ってごまかそうとするノーチェに、マリーはうん、と頷きながら笑顔で言った。

「錬金術士をなめるなヨ」

 結局。
 ノーチェは朝ご飯の代金としてどこからか手に入れた缶ビールと大吟醸『鬼嫁』、
そしてエルクレストのゴミ捨て場に捨てられていた魔導銃(キャリバー)を渡すことになるのだった。



362 名前:ノーチェさんの一日(学園世界編):2009/04/07(火) 20:46:11 ID:cw9zIgOt
 ***
 昼―――AM11:00


 極上生徒会管理棟内東棟5階、通称『執行部室』。
 その部屋でノーチェは、1人書類を整理していた。

 この時間帯は大抵学生の執行委員たちは皆授業中。
 よって、いつも彼女ともう1人しかこの部屋にはいないのだが、例によってというべきか、もう1人は本日3件目の事件の調停に向かっている。
 近くのカメラと水晶玉で過程を記録しているから、帰って来てから事情を聞き、改めて調書を作ってからの方が報告書の作成はしやすい。
 今のところ、報告書・始末書の類は昨日長門と初春が2人ともいてくれたお陰で一掃されている。
 実を言うと委員の中でもこういったことを任せられない人間がいるためちょっとたまりこんでいたのである。
 自分の分はなんとかできるのは、職務上覚えた宗介と美遊、実際は上流階級な教育を受けている美琴、授業で論文を書くことのあるエリーなど。
 逆に言えば、他の人間はできないと言っても過言ではない。そりゃあ溜まるってもんである。

 ともあれ今日の2件のうち1つは作ってしまっているし、もう1つはちょっと気になるところがあるので後回し。
 よって、今彼女はこれまで作られた書類の整理を行っているのだった。

 報告書の写しを案件・時期ごとにファイルに整理し、見出しをつける。
 たったそれだけの作業であるにも関わらず、発足してからの事件や掃討戦の数を考えると、すぐに終わることでもない。
 報告書・始末書の類は日ごとに増えるために、いつかやらねばと思いつつずっと放りっぱなしになっていたのである。
 ともあれ、片付けるだけならそれほどの時間を必要とはしない。作業そのものは2時間程度で終わった。
 最後のファイルを閉じ、棚に入れて大きく伸び。

「ん〜……一仕事終わったでありますよっ。
 じゃあ次は―――」

 呟きながら、ごそごそと月衣からいくつかの物品を取り出す。

「―――お仕事(ほんぎょう)、といくでありますかな。
 えーと、魔力を溜めた宝石と、CCDカメラと、悪魔の羽衣と、グラビ結晶と、簡易幻術(ステルス)の魔装スタンプと、魔力変換回路と、エーテライトと……」

 そう言って取り出したものを、組み合わせ、糸や回路でもの同士をつなぎ、最後に透明な半球状のカバーでそれをまとめる。
 そうしてできた3つの500円玉大の半球は、よく見れば微妙に浮いていて、半球の一点から半透明な紐状のものが出ている。その形はネズミのようにも見える。
 3つの半球に、ノーチェはぺたぺたぺた、と自分の血を落とす。
 血の雫が半球に落ちると、同時に小さく輝きを放って、やがて血の痕も残らず光は消える。
 それを見て、よし、と呟くと誰にともなく宣言する。

「簡易使い魔の、完成でありまーす!」

 厨房ですか?
 閑話休題。
 ともあれ、彼女は3つのネズミに人差し指を立てて語りかける。

「いいでありますか? これだけの強力な結界が張られているのでありますから、維持するエネルギーの発生する元があるはずであります。
 それをシステムの一つである愛子に流すルートがあるのはわかってるのでありますが、残念ながらそれをたどるのは難しいであります。
 これまでわたくしを含め、たくさんの住人がそれをたどろうとして、けどあまりに細分化されすぎてたどるのを断念したほどでありますからな。
 だったら発想を変えるであります。
 結界というのは世界をまとめるもの。一つの世界をまとめ、外とを区切る境を結界と呼ぶのであります。
 つまり、他世界への干渉と、結界によって行われているこの世界の世界律の維持は別の機構で行っていると考える方が自然。
 この二つが同じ存在によって行われているとするのならば、世界融合の際のエネルギーの発生源を調べれば結界維持を行っている方も芋づる式、というわけであります」



363 名前:ノーチェさんの一日(学園世界編):2009/04/07(火) 20:49:29 ID:cw9zIgOt
 もちろん、その二つが同じ存在によっておこなわれている、という確証があるわけではない。
 が、結界が「学園世界にいる者を外に出さない」ものであり、ここが「異世界から学校を転移させた世界」な以上、この二つが無関係という可能性は薄いと彼女は考えた。

 そこで作ったのがこのネズミ型の使い魔だ。
 次に学園が転移した時、そのエネルギーがどこから来ているものなのかを計測し、どこが学校を転移させているエネルギー源なのかを調べるもの。
 それがわかれば、この世界の成り立ちを理解するために大きな一歩となる。
 しかし、ここで彼女は大きく溜め息。

「……もっとも、ちょっと広くなりすぎたこの世界にたった3匹では無謀もいいところなわけでありますが。
 まだまだ学校転移は起きてるわけでありますし、気長に行くでありますかな。
 できれば量産したいところでありますが、あり合わせで組んだこの小ネズミも試験運転みたいなところがあるでありますし」

 手立てとして考え付きはしたものの、せめて小ネズミ型の偵察機が機能するか確認してからでないと量産もできない。
 せめて何かしらの実績が見られてから協力を申請しようと考えているわけなので、先の長い話である。
 気を取り直し、彼女は命令を続けた。

「ともかく、あなた達が上手くいけばこの世界の解明に一歩近づくであります。
 各自気合を入れて頑張るでありますよ。では、健闘を祈るであります!」

 彼女の言葉に小ネズミたちは一度回って肯定の意を示し、壁を伝って外に出て行った。
 あとは小ネズミたちがきちんと機能することを祈るしかない。
 そのまま、彼らが出て行った外をじっと見ていたその時、がらりと戸を開けて部屋の主が帰ってきた。

 さぁ―――始末書と報告書タイムの始まりだ。
 せめて他の委員が来るまでは自分1人でなんとかせねば。


 ***
 夜―――PM8:00

 始末書&報告書タイムを終え、いくつか仕事は明日回しにしたものの、ノーチェは朝出てきたアパートの前に帰ってきていた。
 他の委員も、東棟に寝泊りする1人を残して完全下校時間までに帰宅することが基本的に義務付けられているため、今日は早めに解散している。

 彼女の部屋は2階であるが、ちょうど自分の部屋の真下の部屋の前に立つと、こんこんとノックした。
 中から眠そうなふぁーい、という眠そうな声。どうやら中の彼女も起きているようだ。
 ドアノブを回し、中に入る。
 そこには、やけにファンシーな寝巻きを着た少女が眠そうに目をこすりながらベッドに座っていた。
 彼女の名は「弓塚さつき」という。

 基本的には彼女はザールブルグアカデミー内に居住スペースがあるのだが、ここ数日はとある任務のため、一週間の契約でノーチェの下の部屋を借りていたのだった。
 ノーチェは月衣の中から、さつきへの差し入れを取り出す。

「はい、調達してくるのにちょっと手間取ったでありますがA型の血でありますよー。
 他のご飯も調達したでありますが、とりあえずこれ飲んで目を覚ますであります」
「んー……ありがとー」

 渡された輸血パックにストローをつなぎ、ちゅうちゅうと吸うさつき。
 その姿は実に自然で、まるでオレンジジュースでも飲んでいるかのようである。
 一気に飲み干すと、彼女は笑顔をノーチェに向ける。



364 名前:ノーチェさんの一日(学園世界編):2009/04/07(火) 20:55:00 ID:cw9zIgOt
「おはようノーチェ。差し入れありがとね」
「いえいえ、さつきはお仕事どうでありますか? 確か契約はあと2日くらいでありましょう?」
「うん、なんとかなりそうかな。ノーチェの方は?」
「今日はまた大変だったのでありますよー……仕事上がりの間際にはどこからあらわれたのか『鬼』の軍勢が居住区近くに出てきましてな。
 帰ろうとしてた委員あわてて呼び止めてなんとか退治に協力してもらったのでありますよ」

 はぅ、と溜め息をつくノーチェに同情しつつ、さつきは制服を取り出す。
 彼女の活動時間帯は夜―――ほとんどの生徒が完全下校時間を迎えた後が彼女の仕事の時間である。
 ノーチェはそれを察したのか、月衣からごそごそと他の差し入れを取り出す。

「えーっと。こっちが朝ご飯の時にマリーに持っていくように言われたパンとチーズで、こっちが見知らぬお兄さんからいただいた○まい棒。
 あと、お水のペットボトルであります。さつきもお仕事の時間のようでありますし、わたくしはおいとまするでありますな」
「ありがとう。あ、それから昨日のきんぴらごぼうおいしかったよって作った人に伝えておいてくれると嬉しいな」

 言って、さつきはノーチェが昨日きんぴらごぼうを入れて持ってきたタッパーを渡す。

「昨日の、と言うと……あぁ、透(とおる)の作ったきんぴらでありますか。
 わたくしもお礼を言いに行きたいのはやまやまでありますが、朝ご飯を昨日いただきに行ったら、食べてる最中に夾(きょう)にたたき出されたでありますからなぁ……。
 器返しに行く時にでも言っておくでありますよ」

 答えてタッパーを受け取ると、ノーチェは月衣にそれを放り込む。
 そして彼女はガッツポーズをとりながら、さつきに告げる。

「じゃあ、頑張るでありますよさつき。
 困ったらいつでも電話するであります。わたくしもどちらかといえば夜行性でありますから、お手伝いはできると思うでありますよ」
「頼りにしてる。じゃあ、また明日ね、ノーチェ」

 さつきも同じくガッツポーズを取りながら、ノーチェに返す。
 それを見ながら、ノーチェはさつきの部屋を出た。


 ***
 そらを見上げながら、上の階に向かう階段を登る。
 空の月は白いまま、欠けた月を昇らせている。その月を見上げ、彼女は目を細める。

「また明日も、忙しそうでありますな」

 そう言って。『極上生徒会』所属・執行委員の1人は明日に思いをはべらせる。
 この世界に住みはじめて出会った人々と、まだ見ぬ明日がどんなものになるのかに期待を寄せながら。
 明日はどんな人々と、どんな話ができるのか。そんなことを期待しながら。

 吸血鬼の少女は帰途についた。


fin

365 名前:1本目終了。:2009/04/07(火) 20:58:12 ID:cw9zIgOt
2本目は21:30より投下予定。
こっちはちょっと長めなので、支援いただけるとうれしいです。

366 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 20:58:43 ID:UVkn1NzO
きてれぅー
支援〜支援〜

367 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 21:32:51 ID:cw9zIgOt
 極上生徒会管理棟内東棟5階、執行部室。
 授業が始まる前の、朝7:30。

 朝練の関係もあり、学生の外出は朝5時から認められている。
 さすがに登校可能時間からいるわけではないものの、授業が始まるまでにやることがある学生は、この時間帯には多く居住区から出てきている。
 この日の執行部室も、その例に漏れなかった。
 最近備えつけられた3台目のデスクトップ(1台目は初春専用機。2台目はその他執行部員が使えるように設定ナシ)に陣取る少女が1人。

 初春の本気速度に引けをとらない超高速ブラインド。
 というか、指先が分身してるとしか思えないほどの速度で、一度としてキーボードを見ることなく彼女はただキーボードを叩き続ける。
 そして―――少女が朝この執行部室にやってきてから一度も途切れさせなかったキータッチの音を、一際強くエンターキーを叩くことで終わらせた。
 たんっ! と、強い音が響きしばしの静寂。

 5秒ほどして、静かな部屋にがー、という無機質なプリンターの音がしばらく響き続ける。
 数十枚の紙が吐き出されたのを確認し、少女は無表情のまま、紙の束を案件ごとにクリップで留める。
 そしてそのまま、『風紀委員』の仕事をちょうど終わらせた初春と、その側で手伝いをしていたノーチェの方に持っていき、一言。

「……昨日までの未処理案件提出用書類、26件分。完了した」
「あ、そーなんですかそこに置いておいてくださ……って、えぇええぇぇぇっ!?」

 朝は少し弱いのか遅めにキーボードを叩いていた初春は、最近協力してくれるようになった少女に軽い礼を言いかけ―――
 ―――あっさりとそう告げた少女の言葉に、まだ寝ている人間を起こせそうな驚きの声を上げた。

 初春は立ち上がると、少女が抱えている重さを感じるほどの厚みをもった紙の束をひったくるように奪い取る。
 ぱらぱらぱらぱらといくつか紙をめくり、少女と紙束の間で視線を往復させ―――デスクにどさりと紙の束を置いて、少女に抱きつく。

「―――長門さん、愛してますっ!」
「わたくしも有希のこと大好きでありますっ!」

 ぎゅう、と2方向から抱きつかれている中心の少女は、しかしあくまで無表情に呟く。

「ユニーク」

 このヒューマノイド・インターフェース、つまるところの宇宙人に『百合』の概念を教えたのは誰だ。

 閑話休題。
 ノーチェと初春がどれだけ頑張っても、力及ばず少しずつ溜まっていった書類仕事をあっという間に終わらせた彼女の名は長門 有希(ながと ゆき)。
 北高に通う高校生とは仮の姿。
 実は世界を変える力を持ったとされる少女『涼宮 ハルヒ』を監視するため、情報統合思念体―――つまるところの宇宙人に派遣された派遣宇宙人である。
 ……正確には「対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース」というやけに長い名称の型の有機アンドロイドなのだが、派遣されたことに変わりはない。

 ともあれ、長門は北高が学園世界に転移した後もハルヒの監視を続行。
 いつも通りの生活をしていたところ、ひょんなことから執行委員にスカウトされた。
 所属するまでには至らなかったものの、熱烈な勧誘っぷりとハルヒへの手回しもあり、たまにふらりと手伝いに来てくれることになったのだった。

 そんな、朝っぱらから悪ふざけながらも百合百合しい空気の溢れる執行部室。


368 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:34:43 ID:uM+D2Wnc
支援

369 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:35:25 ID:LKisT8WN
スレ覗きざま即支援

370 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 21:35:39 ID:cw9zIgOt
 そこに空気を読まずにやってきたのは、なにやら疲れた様子の青年―――柊蓮司だ。
 彼は、戸を開けて3人の少女が絡み合っている光景を見て、半眼で呟いた。

「……朝から何やってんだ、お前ら」
「おはようでありますよ、蓮司ー」
「吸血鬼から聞ける台詞じゃねぇよな、忘れがちだけど」

 そんな軽口を叩きながら、柊が自分の首にかかっているタオルを月衣に放り込む。
 初春はいそいそと長門から離れながら、柊の髪が濡れているのを見て取ると、咎めるように言う。

「あ。朝から2階のシャワールーム使いましたね、ちゃんと掃除してくださいよ?」
「初春、学園都市から掃除ロボ一体まわしてもらえねぇ?」
「一風紀委員に何を頼んでるんですか。
 柊さんは執行委員の中でも一番『極上生徒会』に近い位置にいるんですから、自分で『極上生徒会(うえ)』に陳情してくださいよ」
「つったってなぁ……俺は『極上』の一員の、輝明学園(ウチ)のトップから突然辞令受けただけで、他の生徒会の連中なんて3、4人しか顔合わせたことないんだっての」

 柊蓮司は、この学園世界の揉め事を遊撃的に解決するのを『極上生徒会』から直接任じられた『特別執行委員』と呼ばれる肩書きを持っている。
 偶然輝明学園近くまでやってきていた柊は、輝明学園の学園転移に巻き込まれてこの学園世界にやってきた。
 その後、勝手に揉め事解決に駆け回っていたのをいくつもの学園の生徒に見られ、
『学生でもないのに学園世界にいて、好き好んで厄介事に首を突っ込む変わり者』という認識を全世界的に受けることになる。
 そして発足された『極上生徒会』の構成員たちは、その『変わり者』を完全にコントロール下に置いて手綱を握るのは非常に難しいと判断。
 命令を遵守する義務はないとした上で、『この世界で起こる危険を潰す』義務―――通称『調停執行義務』を課した。

 事実。柊は命令をきかないことはあっても、後者を守らなかったことはない。
 なんとも器用な任務のこなし方をする不器用な人間である。

 その彼に与えられる権利は、実質『東棟の所有権』くらいのものなのだったりする。
 所有権と言っても、単に『生活するための場所として使っていい』くらいの権利であり、居住権みたいなものなわけだが。
 しかし、その権利に対して柊は『極上生徒会』に本気で感謝した。
 彼の反応は、これまで受けた任務で、ほとんどまともに休息をとれる場所を用意されたことがなかったことからくるわけだが……
 そのエピソードを聞いて、『極上生徒会』の何人かが光るものを見せたのは秘密の話。

 ともあれ。
 数少ない権利に対し、義務は先に述べた『調停執行義務』だけではない。
 東棟を所有する権利を与える代わりに課せられる、東棟の管理責任。
 志願・スカウトなどで同じく『調停執行』を行う『執行委員』となる学生たちの管理責任。
 『調停執行』が行われた際の『極上生徒会』への報告義務。
 一応『執行部』は『極上生徒会』の下部組織となるため、活動報告会に参加する義務などなど。

 彼の背負うことは山ほどあるハズなのだが―――正直な話、柊自身が行っているのは、『調停執行義務』の他には前二つくらいだ。
 報告書の作成については彼が就任した後、あまりの適正のなさに、赤羽理事長代理がちょうどいいところに来た外部協力者を当てた。
 そして、活動報告会に柊蓮司が参加したことはない。というか、『執行部』が参加したことはない。
 そんなヒマがないと言った方が正しい。どんな活動環境なんだここは。


 閑話休題。
 そんな柊の前に無表情のまま長門が近づき、目の前で止まる。
 彼女はじっと柊を見上げる。そこには何かしらの感情があるわけではない。むしろ『観察』というのに相応しいガン見っぷりである。
 人間、あまり凝視されるとちょっと気後れするものだ。
 柊も例に漏れず、じり、と半歩退りながら意図を尋ねる。

「な、なんだよ。なんか言いたいことでもあるのか?」

 長門はその質問に答えることはなく。
 しかし観察の結果気が付いたことを、淡々と答えた。

「―――あなたに、大幅な疲労の蓄積が見られる」


371 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:37:30 ID:wkwGU9zz
支援

372 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 21:38:19 ID:cw9zIgOt
「あ? あぁ、そりゃ郊外に際限なく沸き続ける『死者』ども相手に朝まで生バトルなんてしてりゃ疲れもするだろ」

 こきこきと肩を鳴らしながら、こともなげにそう言う柊。
 『死者』というのは、吸血鬼の一種『死徒』によって血を吸って殺されたもののうち、適正があったものが長い時間をかけて動くことができるようになったものを指す。
 この学園世界に登録されている『死徒』は人を殺すような血の吸い方はしない以上、『学園世界の敵』の手の者だろう。
 初春があぁ、と納得した。

「だから朝からシャワーなんて浴びてたんですね」
「当たり前だろ。どこぞの飛び出しナイフ眼鏡みたいに斬っただけで消滅させるような無茶苦茶な力持ってないんだよ、こっちは」

 ほとんど外傷はないと言っても、さすがに死体の血飛沫や腐った肉の汚汁からも完璧に避けるのは無理があったらしい。
 昨日執行委員が全員帰宅の途についた後、すぐに発生したというその敵に夜明けまで付き合い続けた柊は、シャワーを浴びてから執行部室に直行したのだという。
 朝まで際限なく沸く人外を斬り倒し続ける体力は無茶苦茶な力って言わないんですかねー、と独り言のように呟く初春の隣で、ノーチェが首を傾げた。

「あれ? そういえば、その前の夜は朝まで『白駒』の群れを斬りまわってなかったでありませんか?」

 『白駒』―――正式名称『白駒陵守(しらこまのみささぎもり)』。2m半ほどの高さの、人の形をした『神』の尖兵。
 『天御門(あまのみかど)』と呼ばれる、『神』を名乗るオーバーテクノロジーを持った集団。彼らが地上世界へと侵略を開始した際に使った命なき殺戮の兵。
 それを寸分違わず再現した代物だ。天御門はすでに存在していないため、何者か―――おそらくはこちらも『学園世界の敵』の仕業だと思われている。
 斬り回ったってのも面白い表現だな、なんて言いながらノーチェの言葉をあっさり肯定する柊。
 彼のリアクションを見て、初春が思い出す。

「柊さん、一昨日の朝に下級エミュレイターの群れが現れた月匣に突入して夜明けまで戦ってたって言ってませんでしたっけ?」
「そんなこともあったな、そういえば」

 と、本人も今思い出したように頷く。
 長門が淡々と報告する。

「今処理した書類の中には、さらにその前日に『悪魔』の群れを相手に、1人で前日午後9時から当日午前6時まで交戦していたという記録があった」


 ……執行部室に、なんだか微妙に言い表し辛い沈黙が流れる。
 しばしの沈黙の後、初春が柊に尋ねた。

「……柊さん、一つ伺いますけど」
「なんだ?」
「寝てます?」

 初春の強張った笑みを前に、溜め息をついて半眼になる柊。

「んなヒマあると思ってんのかよ。昼間は大抵どっかで起きてるケンカ止めに行ってんだぞ?」

 あはははは、ですよねー。とごまかすように笑いながら……だんだん、その声が虚ろになっていき、やがて止まる。
 再び落ちる沈黙。
 その沈黙を破ったのは、先ほど柊に半ば答えがわかっていながら、答えが恐ろしくて聞き辛かった質問をした初春だ。
 彼女は柊に向けて一歩踏み出しながら叫ぶ。

「何やってるんですかっ! 四徹仕事漬けとかマズいにもほどがあるでしょうっ!?」
「労働基準法とかそういう話を、どこぞのミニ四駆アニメの弟機並みにカッ飛んで超えてるでありますよっ!
 ていうかむしろもう生命維持的な意味でマズいであります! 赤い妖精さんとお話でもしたいのでありますかっ!?」

 あまりに睡眠をとらないと幻覚作用が起きるのは医学的な事実である。
 ていうかそんなことを吸血鬼が言うな。



373 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:40:58 ID:ltg5Qy3X
支援

374 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:41:00 ID:UVkn1NzO
死縁…!

375 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:41:05 ID:uM+D2Wnc
支援

376 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:42:18 ID:nLQp/P65
支援ですっ!

377 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:43:04 ID:LKisT8WN
あたしの支援をくらえっ

378 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:44:27 ID:nLQp/P65
……さるさん来ちゃった?

379 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 21:44:37 ID:cw9zIgOt
 ともあれ。
 口々に休めと言ってくる少女達を目の前にしながら、しかし当人はいつもと変わらぬ様子で頭をかきつつ答える。

「そうやって言ってくれんのは嬉しいけどな。その間の俺の仕事は誰がやるんだよ?
 一日学校ないのなんて俺じゃなきゃノーチェくらいしかいねぇんだぞ。ノーチェは戦闘1人でこなせるほど火力があるわけじゃねぇしな。
 『極上生徒会(うえ)』から頼まれてる以上、俺は基本的に授業中の生徒に手伝いは求められないことになってんだし、
 『執行委員(お前ら)』じゃどうしても出動できない時間があるだろうが」

 そう言われて言葉に詰まる2人。
 ここにいたのが美琴やベホイミならば、有無を言わせず力づくででも寝かせるところだが、彼女たちはイマイチ押しが弱いところがある。
 しかし、ここにいるもう1人は退かなかった。彼女もたいがい頑固な娘である。
 長門は変わらず柊を見上げたまま、淡々と答える。

「足りない分は『お手伝い』として人員を調達すれば、一日くらいは保(も)つ」

 先も述べたように、この世界での柊の認識は『学生でもないのに学園世界にいて、好き好んで厄介事に首を突っ込む変わり者』である。
 彼が特別執行委員となるまでに、ただのお節介で助けられたものが数多く存在する。
 彼が特別執行委員となった後は、彼は『執行委員』の代表格のような存在となった。
 そんな彼に―――また、執行委員たちに恩義を感じている人間も多くいる。
 執行委員権限には『一般生徒による手伝いは、その生徒が了承した場合のみ可能とする』というものもある。
 執行部にはもろもろの事情によっては入れないものの、手伝いならばできる、という人間を片っ端から当たればその穴も埋められなくはないだろうということだ。
 長門は、やはり無表情のまま続ける。

「以前見せてもらった報告書の束から計算すると、あなたはこの委員の発足から丸一日休息をとっていたことがない。
 ノーチェ固有の情報集積式演算回路にアクセスした結果のあなたの世界の雇用条件から見ても違法性は明白」
「お前の涼宮の監視は365日体制じゃねーか」

 自分が悪いことをしているように感じたのか、少しむっとしたように長門にそう言い返す柊。
 しかし彼女は淡々としたままに真正面からその視線に応じる。

「家で休息はとっている。
 それに、監視とあなたのする仕事では、消耗が比較にならないと考える」

 それだけ言うと、長門は柊を変わらぬまま見る。見続ける。穴が空くほどに見る。それはもうじっくりと見る。
 柊としてはなにか言い返さなければと思うのだが、実質不眠5日目に突入している頭がきちんと働くはずもない。
 長門の無表情な視線にどこか責めるような色があるように感じ、根負けした。
 柊は観念したように両手を挙げると、こーさん、と呟いた。

「……わかった。
 実際そろそろ頭がまともに働かなくなってきてたとこだし、今日一日は休ませてもらう。
 ただ、俺じゃないとなんともならなくなったりしたら叩き起こせよ。いいな?」
「それでいい」

 そこだけ真剣な表情で尋ねた柊に、こくり、と頷く長門。
 そんな彼女の背後から、長門さんすごーい! 有希が蓮司を負かしたでありますー!と再び抱きつく少女2人。
 花畑娘とイタリア娘がハイタッチしながら長門を抱きしめる光景を見ながら、彼は溜め息。

「んじゃ2階(した)で寝てるから、頼んだ。授業には遅れんなよ、あんまり時間ねぇぞ」

 そう言って、柊は戸を開く。
 一度信頼してものごとを頼んだ相手を、柊はけして疑わない。
 彼の「信じる」という言葉は、確率などは丸無視で、「疑わない」のと同義なのである。
 そのまま、彼は2階にある仮眠室へと向かう。柊が東棟の管理を任されてから、休息を取れる時はそこで眠っている場所である。
 柊が執行部室から出て行き、階段を下りる音が響きだした頃、長門はノーチェと初春を振り返ると、呟いた。

「協力要請、手伝って」

 その言葉に、2人の少女は笑顔で答えた。


380 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:45:14 ID:uM+D2Wnc
支援

381 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:45:27 ID:14PYyGgN
おまいら支援集中させすぎ!w
バラさないと意味無いだろーがwwwwww

382 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 21:45:28 ID:cw9zIgOt
***
 授業のために学生のいなくなった居住区。
 そこに、30体ほどの『鬼』が現れた。
 ソレらは、負の想念を抱いた人間に憑き、心を食らって同化する精神寄生体にして同化した異形そのものの名。
 ある世界においては、神威を宿す刃―――『神剣』を操る者達の手により、すでに全ての鬼の王とされるものの消滅が確認されている。
 しかし、どう迷い込んだのか、彼らのいる世界からもう人には戻れない『鬼』が学園世界に紛れ込んだ。
 彼らは最も近しい存在を食らった後、手当たり次第に人間を殺し、食らっていく。
 『鬼』たちはまさしく人外と呼ぶに相応しい力を持っている。
 彼らが戦闘力を持たない学校にでも到達してしまえば、そこには大きな被害が出るだろう。

 と。『鬼』の群れが歩みを進めるその先の角を曲がり、黒の学ランの少年が2人、顔を出した。
 1人は黒髪つんつん頭、白いハチマキを巻いており、尻尾のように後ろに垂れており、一般的に「日本刀」と呼ばれる2尺ほどの白鞘を左手に持っていた。
 もう1人はぐるぐるビン底眼鏡。茶髪の長い髪を束ねたどう見ても文化系に見える少年で、引き金はあるものの銃というにはやや難しい形状の道具を手にしている。
 つんつん頭がよしっ、と拳を握りながら言う。

「『鬼』の群れ発見っ、ドンピシャじゃん!」
「ほら、だから言っただろ?
 地図見る限りこっち側通るってさ。まったく、留美奈(るみな)はもう少し人の言うこと聞いた方がいいよ」

 留美奈、と呼ばれた少年は茶髪の少年にそう諭されてぐ、とうめくものの、ともかく、と刀の柄に右手を伸ばし、構える。

「んなこと言ってる場合じゃねえだろうが、ほら行くぞ銀之助!」

 はいはい、とその言葉に応じながら茶髪の少年はビン底眼鏡を外して学ランの胸ポケットにしまう。
 お約束の一つというべきか、眼鏡を外した少年はとんでもなく美形だ。もうお前ずっとコンタクトで通せといいたくなるくらいには美形だ。
 少年―――銀之助は懐からもう一つ同じ形の道具を取り出すと、それぞれのトリガーに指をかける。
 それは『練氣銃』と呼ばれる代物で、彼らの世界に存在する『能力者』と呼ばれる者たちの能力を封じ込めた付け替え可能なカートリッジ弾を打ち出す道具だ。

 そして―――銀之助に声をかけた少年、留美奈は能力者の1人。
 その上、到底『鬼』に食われてやるようなかわいらしい性格をしていない。
 彼らはそのまま啖呵を切る。

「ちょっとした借りを返さなきゃならねえからな。ほら、ちゃっちゃと片付けてやるから来いよ!」
「『一日執行委員代行』浅葱 留美奈(あさぎ るみな)と五十鈴 銀之助(いすず ぎんのすけ)、お仕事開始します!」

 言って彼らは己の能力を解放し、引き金を引く。
 能力者唯一の『風使い』と、その友人の『化学者』は、同時に一歩を踏み出した。


 ***

 ノーチェは水晶玉に次々と映し出される学園の状況に頭を抱えつつ処理をしていた。

「D−0541居住区内近くの『鬼』の集団への派遣が完了。
 学園都市所属『打ち止め』が『神獣・ポン太』を拉致して一緒に姿をくらませた件については選抜委員にさりげなーく匿名で情報提供完了。
 それから……輝明学園生とリオフレードの生徒がメイドのことで口論になって衝突を開始っ!?
 方やウィザード方やカオスフレアでありますかっ!? そんな無茶を止められるのは―――っ!」

 即座にデスクトップで情報を検索。つい先ほど2限目の授業を終えた中学生の女の子の名前を発見し、即座に連絡。了承を得て向かってもらう。
 人の心を動かす―――むしろ操る―――歌声を持つ彼女ならばそんな馬鹿共を止めることも可能だろう。彼女自身の任侠道のためにも。
 あぁもう、とノーチェには珍しく悪態をつく。

「なんでこんな時に限って蓮司向けの仕事がバリバリ起こってくるのでありますか―――っ!?
 飾利ー、有希ー、早く帰って来てぇぇぇえええっ!?」

 ……まぁ、その、頑張れ。



383 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:51:03 ID:LKisT8WN
獅燕

384 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:51:50 ID:ltg5Qy3X
追加支援。
というか魔導銃、クラスチェンジで手に入るアイテムとはいえ
また妙なところから見つかったもんだ(−w−;)

385 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:54:11 ID:14PYyGgN
>>384
ってかあんな物騒なもんを持ち出すなwwwという支援



ってか、まさかさるさんか?

386 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:57:36 ID:cw9zIgOt
てす

387 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 21:58:57 ID:Rb7cjhbq
しーえーんー

388 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 22:00:06 ID:cw9zIgOt
 ***
 その頃の柊蓮司。
 ―――泥のように眠る。

 ***
『えー? 止める、までしかやっちゃいけないの? それじゃちょっと暴れ足りなくなりそうなんだけど』
「わたしたちはそれが仕事なんですよっ。執行委員はケンカ屋じゃないんです、お手伝いしてくださるならそこは守ってもらいませんと」

 初春が、協力を要請した『一日執行委員代理』相手に対して説明を続ける。
 ぶーぶー、と電話の先の彼女は文句を続ける。

『なんでだよー、烈火とみーちゃんは化け物退治に行ってるんだろー。
 風子ちゃんと愉快な仲間たちはそっちに行っちゃダメなわけ?』
「人手が足りないんですっ。
 今度近くに怪物が出てきたらお願いしますから、とりあえず目の前の魔法学術都市アリアドネーとエルクレスト・カレッジの学生の小競り合いをなんとかしてください!」

 言われ、電話の先の相手は少しばかり不満そうではあるもののそれに了承の言葉を出す。

『わかった。引き受けた以上は文句言わずにやりますか』
「やってくれるんですか? 助かります。すぐにエリーさんも着きますから、彼女が来たらその指示に従ってくださいね!」
『それまでは暴れていいってことだよね? じゃあ―――火影忍軍紅一点、『風神使い』の霧沢 風子とその他3名!
 行くよっ、土門、かおりん、葵っ!』

 ぶちん、と携帯の切れる音。それを聞いて盛大に溜め息をつく初春。
 片っ端から連絡をつけ続けたはいいが、なんだか執行委員を勘違いしている協力者もいる気がしてきた彼女である。
 傍らのノーチェもまた忙しそうだ。

「はい、そうでありますっ! 合流地点には『陰の者』に詳しい真神学園の生徒が5人いるはずでありますから、その中の龍麻に聞いてほしいのでありますよ。
 ってわけで、あとはお任せするでありますね。ちゃんとカズキと斗貴子を案内するのでありますよベホイミ!」
『りょーかいッス!』

 ベホイミへの通信を終えると同時、0-Phone の短縮を押して次の番号にかけている。
 お昼休みのこの時間、執行部室にいるのはノーチェと初春だけである。
 長門は昼休み開始と同時に北高近くの転送陣からすぐに執行部室まで来て即『少しの間席を外す。すぐに戻る』と言ってすでに10分ほど経っている。
 『一日執行委員』として、ある学園の生徒に協力を求めてなにやらやっているようだ。
 何をしているかまではわからないが、長門が無責任なことをする娘ではないと知っている2人は文句も言わずに状況を処理し続ける。
 少しばかり疲れた表情で、初春がノーチェに言う。

「ま、まさか柊さんがいないだけでこれだけ忙しくなるとは……。ちょっと甘く見てましたかね、これは」
「短時間で片付けるためには、普通それ相応の人手を要するでありますからなぁ……。
 その点、蓮司は火力特化な上機動力があるので、短期決戦にこれ以上向いた人材はいないくらいでありますよ。
 少し時間がかかっても、本人は学業がないでありますから問題ないでありますし」
「この世界にとっては、本当にありがたい人なんですねぇ……」

 はぁ、と溜め息。
 大事なものの価値は、それがなくなった時に気が付くものだ。
 今現在2階で眠っている人間の、この世界における重要性を改めて思い知る。

 ともあれ、そんなことに感慨を抱いていられないのが現状だ。
 ナビゲートが終われば、今度は報告書・始末書の作成に追われるのがデスクワーク担当である。
 再びモニターを見るために体を起こす。
 初春は真剣な表情でモニターを睨んで仕事をこなしだす。

「―――頑張りましょう、ノーチェさん。約束は破りたくないですからね」
「で、ありますな。わたくしも同感であります」

 苦笑しながら答えるノーチェも、腕まくりをして気合を入れる。
 そして、タイピングの音だけが執行部室に響きだす。
 そんな中で、ノーチェは内心小さく首を傾げた。


389 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 22:00:55 ID:cw9zIgOt
 ***

 その頃の柊蓮司。
 ―――死んだように眠る。

 すでに呼吸音すら聞こえないほど深い眠りについている模様。

 ***

『初春さんですか? こちら工具楽屋―――『こわしや』です。ご依頼の仕事、完了しました』
「はーい……國生さーん、お疲れさまですー……」

 舞台は変わらぬまま執行部室。
 午後4時過ぎ。
 授業終了までえんえんとノーチェが根性で1人デスクワークと『調停執行』のために人を派遣していたところ、ほぼ同時刻に初春と長門が執行部室に帰還。
 助かったー、と思ったところで、長門がノーチェを捕まえて耳打ち。
 それに同意したノーチェを、長門はドナドナしながら初春に一言。

『少しの間席を外す。すぐに戻る』

 またですかっ!? と文句を言う暇もなく、初春は1人で執行部室に取り残されることとなったのだった。
 そろそろ違う執行委員もやってくる時間帯ではあるのだが、『一日執行委員代行』達で学園同士のいさかいを調停させるのは非常に危険である。
 違う学校の生徒同士のいさかいの仲裁の場合、執行委員が『極上生徒会』の下部組織であるという世界的認識と、
執行委員個々人の類稀な能力に『逆らったらマズイ』という認識があるからこそ調停が上手くいく場合もある。
 昼間もエリーがいなかったらトラブルになっただろう。
 話しあいのできる交渉力のある彼女がいてくれたのは、あの場において僥倖と言えた。

 閑話休題。
 本当に疲れた様子の初春の言葉に、電話の相手は調子を変えないまま気遣いの言葉を口にした。

『初春さん?
 非常に疲れていらっしゃるようですが、大丈夫ですか?』
「だいじょうぶ、とは言いがたいですけど頑張ってますよ〜?」
『……そうですね、言葉から把握できます』

 そう答えるのは國生 陽菜(こくしょう はるな)。
 御川高校に通いながら、解体業者兼『こわしや』の唯一の秘書をやっている女子高生である。
 具体的には執行委員にスカウトしたいくらいの処理能力を誇る書類仕事適正がある。
 しかし社員4人とはいえれっきとした企業の秘書をしている人間をスカウトすることはできなかったわけで。
 初春はそれでもなんとか話を続けた。

「と、ともかく〜……國生さん、ありがとうございました。工具楽さん、いえ社長さんにもよろしくお伝えください……」
『……わかりました。では、今回の件はわたしが業務日報と一緒にそちらの提出用の報告書も作成しておきます。
 初春さんの携帯電話に添付メールを送っておきますので、どうぞ受け取ってください』
「ホントですかっ!? あ、ありがとうございます〜……!」
『持ちつ持たれつです。なにかの折には工具楽屋をどうぞよろしくお願いします』

 では、という言葉と共に通話が切れる。
 國生の気遣いに感謝しながら涙する初春であった。
 そして彼女はモニターに顔を戻し―――ふと気づく。

 そういえば、異界からの『敵』の進入報告がなくなっているような……?
 今日はやけに『敵』の進入報告が多い日だったけど、それがぱたりと止まっている……?

 と、そんなことを考えているとでまた地図に赤い光点が生まれる。
 またどこかの誰かがケンカを始めたようだ。溜め息をついて彼女はデータベースを漁りだした。



390 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 22:01:38 ID:LKisT8WN
>ポイ捨て魔導銃
無印サガ二巻でアルがポイ捨てしてたなあ…学園関係ないけど

>>386
おかえりなさい支援

391 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 22:05:37 ID:cw9zIgOt
 ***

 誰もいない居住区のあるマンションの屋上で、彼は1人舌打ちした。

「チ―――なかなかにしぶといな」

 その言葉には、苛立ちがこもっている。
 彼の名は『形作るもの』。
 プラーナによって物体を形成する人形師。正確な情報とものを作るプラーナさえあればどんなものでも複製する能力をもったエミュレイター。
 魔王にまでは届かぬものの、その側近程度の力を有するアモルファスである。

 彼は上昇志向の強いエミュレイターであり、この結界内の世界にやってきたのも名を上げるためである。
 そしてこちらにやってきた彼は、名を上げるための手段として選んだものがある。
 それは、ファー・ジ・アースと呼ばれる世界―――彼の侵略目標地の中の、数多くの侵魔を葬った有名なウィザードを殺すこと。

 もちろん彼自身がいきなり月匣に招待しても、相手にサイコロステーキにされるのがオチだ。
 そいつは、『形作るもの』が声をかけることも出来ないほどの高位のエミュレイターを、何体も手にかけた正真正銘のバケモノ(彼視点で)である。
 そんな相手に真正面からぶつかるのは下策中の下策。そもそも彼は正面切って戦うのには能力的に向いていない。
 だから、彼がこの世界に来て最初にやったのは各世界のアーティファクト集めだった。
 そいつを殺すのに充分な戦力(プラーナ)を確保できるだけのアーティファクトを集めた彼は、夢使いとしての能力で各世界の『脅威』について情報を集めた。

 準備が整ったと判断した『形作るもの』は各世界の脅威を再現した。
 『形作るもの』は、全戦力をつぎ込んで一体の人形を作ることはしなかった。
 目標の相手はけして侮れない。たとえ地力で勝る人形を作ったとしても、そいつは必ず隙を見出して人形を打倒するだろう。その程度には知恵が回ると認識している。
 ならばどうするか。
 簡単だ、相手はウィザードとはいえ人間。肉体の限界に必ず縛られる。
 そう強い人形を用意する必要はない。一撃で倒せる程度の強さでも構わない。ただただ、数を多く用意する。

 その人形共を、相手が休むだろう時間帯に継続して投入する。
 人形はもちろん形を毎度変えて、エミュレイターが黒幕であるということを悟らせない。
 そうやって休息をとらせず、消耗させ続ける。相手がいかに強かろうとも、底はあるのだ。
 力尽きたところに姿を現し、トドメをさせばそれで終わり。それが『には形作るもの』の立てた計略だった。
 さすがに4日も不眠不休で戦うというバケモノのような体力を見せられるとは思わなかったものの、さすがにそろそろ限界のはずだ。
 しぶとさがアレの身上とはいえ、肉体を持っている以上はそろそろ無理が出てこないはずがない。
 もう少しだ、もう少しでこの計画も終わる、と考えている『形作るもの』。


 そんな彼の敗因は、気づかれる可能性があるからと『目標』を直接監視しなかったことと―――何より広い世界の中で『目標』1人しか意識していなかったことだろう。


 突然虚空より吐き出された8つの黒い球。
 次の瞬間黒い球同士を闇のラインが繋ぐ。
 立方体が完成したと同時、中に『形作るもの』を閉じ込める形で紺碧の世界が生まれた。
 『形作るもの』が息を呑む。この世界は彼にとってもっとも馴染んだ異界の感触。すなわち―――

「融合型情報制御空間『月匣』、配備完了。目標の隔離を確認」
「それにしても、無防備すぎではありませんかー?
 罠じゃないってことは調査済みでありますが、あまりに間が抜けすぎで警戒したくなるでありますよ」

 淡々とした言葉と、呆れたような声。
 ざくざく、と後ろから歩いてくる小さな足音が二つ。
 恐ろしく自身の滅びを間近に感じながら、『形作るもの』はゆっくりと背後を振り返る。

 そこには2人の少女がいた。
 吸血鬼と宇宙人というなんともおかしな組み合わせである。


392 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 22:06:17 ID:ltg5Qy3X
さらに支援。
蓮司ぐっすりお休みタイムがなんか坪に入りかけた。

393 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 22:07:18 ID:cw9zIgOt
 宇宙人は言う。

「あなたの思惑はすでに解析済み。『彼』の消耗を狙い、その存在を抹消しようとしたのは明白」

 吸血鬼が続ける。

「意図はしていなかったかもしれないでありますが、あの人にいなくなられるとこの『世界』が非常に危ういものになるのであります。
 本人がこの世界の『鍵』というわけではないのでありますが、いなくなられると『維持』が難しい。
 つまり―――あなたは意図せず『世界の敵』になっていた、というわけでありますな」

 なにを。
 なにを言っているんだ、こいつらは。
 そんな言葉が喉の手前までやってくるのに、言葉にはならない。
 一歩距離を詰められる度、『形作るもの』は確かに己に残される時間が加速度的に減っていくのを感じる。
 心を覆う絶望と悪寒。それらは本来彼ら侵魔が与えるものであって、味わうものではけしてない。

 しかし、少女たちにはそんなこと知ったことではないのであった。
 無表情な少女が淡々と告げる。

「『彼』には、わたしも大切なものを守ってもらったことがある。
 そして。多くの住人の守りたいものをまとめて守っている人を、害する行為を認めるわけにはいかない」
「というかあなたのやっていることは、『この世界の住人全て』を人質にとって1人を殺そうとしてるってことであります。それはちょっと見過ごせないでありますな。
 あと―――わたくしこれでもウィザードでありましてな。
 あなたはご存知かもしれないでありますが、『ウィザード』っていうのは、『誰かの大事な何か』に害を及ぼそうとする侵魔を狩るものの総称なのでありますよ?」

 いつも陽気な少女は、赤い瞳を爛々と輝かせて、闇の眷属らしい笑みを浮かべている。
 その2人の少女に、思わず退ろうとしてしまう『形作るもの』。
 そして、自分のしかけたことに顔を紅潮させる。

 ありえない。
 ありえないありえないありえないっ! たかがこんな小娘2人に、この私が後退するっ!?
 認めてはならない。我が名は『形作るもの』。人を食らって力をつけ、固有の名すらも手に入れた強大なる魔の一欠片!
 簡単ではないか、まだ魔力を秘めたアーティファクトはある。人形を作ってこの小娘共を殺して、その力をあのバケモノを殺すための力としてしまえばいい!

 だからこそ、彼は一つの選択をする。
 すなわち己の能力を存分に用いて目の前の少女達を殺すということ。
 そして彼はアーティファクトから魔力を引き出す。
 一番最初に生まれるのは、プラーナで編まれたワイヤーフレーム。
 ワイヤーフレームにプラーナの糸を巻きつけていき、テクスチャを貼り付ける。
 そして最後に中身の造形を本物と寸分違わず作り上げ―――生まれるのは、異形の群れ。
 眼窩の抜け落ちた死人。四肢に力をみなぎらせる猛獣。人の形を模しただけのヒトガタ。不定形な塊。
 ありとあらゆる世界における、滅びや厄災の撒き手にして尖兵が、青い月匣を埋め尽くす。

 それこそが彼の異能。ありとあらゆる『悪夢』の再現者、『形作るもの』。
 その軍勢を見たノーチェがうわ、と呟いて、長門が少し眉を動かす。その様子を見て『形作るもの』は恐怖を狂喜で塗り替えた。
 いけ、と命令を下せば、当然彼の悪夢の軍勢は彼の命令どおりに動き、少女達に向けて雪崩こみ―――勝負は、一瞬でついた。




394 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 22:10:13 ID:uM+D2Wnc
支援

395 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 22:11:01 ID:cw9zIgOt
 絶叫が青い月匣に響く。
 声は一つ―――『形作るもの』からだった。
 背が高い方の少女に群れの先頭の一体が触れた瞬間、悪夢の軍勢の全てが消滅。同時、まるで外郭からやすりで削られていくように蝕まれだしたのだ。
 うひゃー、と能天気な声が響く。

「牙の塔の魔術士の『自壊連鎖』を参考に、有希と一緒に『自壊連鎖因子(プログラム)』を考えてみたわけでありますが……こういう相手には効果絶大でありますな」
「情報制御空間で相手に崩壊因子を仕込むよりも、より受動的ながら攻撃的。こちらの損害も軽微」

 『自壊連鎖』、という魔術は、魔術士が魔術を放ったカウンターに用いると効果的な魔術だ。
 相手の構成する魔術を自壊に追い込み、またその術者をたどって損壊を与える攻撃のことであり―――今回のように『自分の作ったもの』で攻撃する相手には有効手段だ。
 長門は、襲い来る群れの先頭の一匹に触れて因子を解放しただけ。
 それだけで、呆気なく戦いの趨勢はすでに決まってしまっていた。

 崩れる。壊れていく。失っていく。
 そんな彼を見て、ノーチェが少しだけ目を細めた。

「わたくしケンカは嫌いでありますが、大事なモノを傷つけられるのはもっと嫌いでありましてな。
 では。 ―――<ヴォーテックス>」

 幕切れは、一瞬。
 知らない内に『世界の敵』となっていたエミュレイター『形作るもの』は、自分の起こしかけていた事態に対して、あまりに自覚のないまま、その存在を終えた。

 消滅を確認し、月匣を解除。
 ノーチェは魔石を拾うと、大きく伸びをして長門に一言。

「んー……っ! いやぁ、これで蓮司も少しはまともに眠れるはずでありますな」
「あの敵がいなくなったからといって、完璧に安心できるわけではない。
 それでも、意図的に彼を害そうとする相手がいなくなったのだから、負担は軽減されるはず」
「まぁ、どうせ本人は無茶やらかすのでありますから―――こんなことがないように、誰かが見ていなければならないでありますなぁ」
「その通り」

 まったく困った『代表』でありますなぁ、とノーチェがぼやく。
 執行部の中に上下関係はない。もちろん、年齢や学年程度の上下関係はなきにしもあらずだが、役職としての上下関係は存在しない。
 一番初めの執行委員は『特別執行委員』柊蓮司だけであり、その彼が後にやってきた『執行委員』相手に命令したりするのを嫌がったためだ。
 それが彼ら特有のつながりにもなっているのだが――― 一応、柊は唯一学生ではない(肩書きは一応学生だが)ため、『執行部代表』という呼び方で呼ばれる場合もある。
 『委員長』ではなく、あくまで彼らの一員として対外的な場において『代表』とされるわけだ。本人はそんな場に参加したことはないが。

 そんな、誰かが後ろを守らないと危なっかしくて仕方のない、自分達の『代表』にノーチェが思いを馳せていたところ、長門が時計を見て淡々と告げた。

「―――作戦開始から、すでに15分が経過。
 相手の一つが消滅したとはいえ、これ以上初春飾利からの印象を悪くする必要はない」
「うわわ、これは飾利にお土産の一つでも買っていくべきでありますかねぇ……」



396 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 22:12:09 ID:vUAeHDxL
これは支援するしかない

397 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 22:12:57 ID:nLQp/P65
支援

398 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 22:16:14 ID:ltg5Qy3X
支援。
今じゃ貴重な魔石持ちという事はけっこう力溜めていたのか。
その割にはヴォーテックス一発ってどんだけ耐久力ないんだ(−w−;)

399 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 22:16:22 ID:cw9zIgOt
 額から大きな汗を流しつつ、一人奮闘を続けているだろう少女に思いを馳せる。
 出てくる前にも、かなりの書類が溜まっていたはずだ。初春1人に任せてきてしまったことに少しの罪悪感を感じて、ノーチェは近くの転送陣に向けて軽く駆け出す。
 それに長門も追従しだした頃、そういえばとノーチェは長門にたずねた。

「有希、そういえばお昼は何してたのでありますか?
 アッシュフォードと穂群原の生徒に連絡とってたのは知ってるのでありますが」

 昼に長門は『一日執行委員代行』を2人調達し、どこかに向かったのを彼女は知っている。
 どこに向かったかまでは知らない。偶然電話を聞いてしまったが、ノーチェは勝手に相手のプライバシーを覗くことはない。
 だから、長門が話してくれることなのかどうか、確かめるために聞いたのだった。
 長門が答える声は、やはり淡々と。

「大したことではない」
「そうなのでありますか?」
「そう」

 本人が言うのなら気にすることではないか、とノーチェは思い直す。
 長門の手を掴むと、急いで戻るでありますよっ! と言って彼女は転送陣に向けて駆けていく。
 手を引かれて走る少女はやはり無表情であったが―――ただ、手を引かれるままに一緒に走っていた。




400 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 22:20:07 ID:cw9zIgOt
 ***

 その頃の柊蓮司。
 ―――少し前に起きた。
 現在近所の銭湯で1人極楽気分。

 ***

 夕焼けが色濃くなっていく時間帯。
 執行部室からはえんえんとキーボードを叩く音が響く。
 事件そのものは格段に減りはしたものの、今日一日起きたことを3人がかりで報告書作成しているのだ。
 3人がかりとは言っても、体力のない初春はもはやぐったりしている。つーかもはや屍っぽい。

「け、今朝溜まってたものが全部なくなったと思ったのに……なんで今日はこんなに事件が多かったんですかね。それも討伐任務ばっかり」
「なんとかそれも収まったようでありますがな。ほら、できる限りのこと今日やっちゃうでありますよ」

 へんじがない、ただのしかばねのようだ。

 ともあれ、普段の3倍くらいの頻度で出現した外敵と、いつも通りの調停執行の件数という、かなりの量の書類仕事。
 その相手との戦いも9割方終わった頃、部屋の戸が開かれた。

「お疲れ。大丈夫だったか?」

 柊だ。
 ノーチェがたずねる。

「おはようでありますよ、蓮司。ちゃんと眠れたでありますか?」
「おう。ありがとうな、久しぶりにきちんと休んだような気がするわ」

 そう快活に笑って答える柊に、いつの間にか自分用のモニターの前から離れていた長門が詰め寄る。
 まるで朝の焼き直しのように近づいた長門は、朝と同じ場所で立ち止まるとやはり無表情に言った。

「今日一日は、まだ終っていない」

 だから休め、と言外に告げる彼女の言葉に、柊は困ったように頭をかきつつ答える。

「あぁ、知ってる。せっかくもらったモンを返すほど不義理じゃねぇよ。
 せっかくもらった休みなんだから、前から一度やりたかったことをやろうと思ってな」

 やりたかったこと? とノーチェ。
 柊は頷いて答えた。

「宴会みてーな?」
「宴会ですかっ!?」

 初春復活。
 その様子に苦笑しながら、柊が答える。

「色んな連中が集まって一緒に仕事してんだから、少しくらい全員で集まって遊ぶような日があってもいいと思ってはいたんだよな。
 もちろん、宴会中に何か起きて出動できないのは困るから酒はNGだけどな」
「学生しか集まってない世界な以上当然と思うでありますが。
 ……っていうか、蓮司も未成年でありましょう」

 不良学生らしいところもあったんですね柊さん。


401 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 22:21:10 ID:ltg5Qy3X
むう、ばらけさせようと思っていたのにいつの間にか支援が3連星に。
ジェットストリーム支援だと白い悪魔に踏み台にされるから縁起悪いな(−w−;)

402 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 22:23:34 ID:cw9zIgOt
 ともかく。
 そんなノーチェの言葉にうるせぇよ、とツッコミつつ彼は続ける。

「今日一日手伝ってくれた奴らも呼ぶか。世話になっちまったし」
「当然蓮司のおごりでありますな?」
「学生はともかくお前は地力で稼いでるだろうが、なんでお前の分まで払わなきゃなんねぇんだ」

 その言葉に、世の世知辛さに涙するノーチェと驚いたように身を乗り出す初春。

「え、じゃあノーチェさん以外はおごりなんですかっ!?」

 執行委員、という連中は基本的に無報酬である。
 学生の活動、の範囲だと上層部―――『極上生徒会』に判断されているからだ。
 一応保険として任務中に起きた負傷については『極生』が治療費を負担し、また任務中に消費した消耗品については請求を『極生』に回すことになっている。
 だが、日々の時間的拘束や危険に向かう手当てについては何一つ規約が存在しない。
 それは柊についても同じであり、特別な給付はなく(東棟はそうと言えるかもしれないが)、多くの人間を外食に誘えるような経済的な余裕はないはずだ。
 しかし、柊はこともなげに学園世界限定電子マネーカードを取り出す。

「問題ないだろ。どっかの誰かが頑張ってくれたおかげでな」

 彼は、なぁ長門?、と続けながら楽しそうに長門を見る。
 彼女はしばらく目線をさまよわせた後、少しだけ困ったような表情をしてから、また正面から無表情に柊を見上げた。

「……それはあなたの正当な報酬。実質の行為から考慮するのなら、それでも不足」
「俺のは半ば性分だから、そんな気を使う必要はねぇんだが。
 けど、他の連中にも同じことしてくれるってメール来てたからな。だから、ありがとうな長門」

 柊が銭湯から帰る際、彼の携帯へ直接『極生』からメールが届いた。
 その内容はえらく長くて事務的で面倒な文面だったものの、要約するならこういうことである。

 ・学校同士の争いを止めるのはもともとの執行委員の『学生の活動』の一つであるため、今後と変わらず報酬を下すことはない。
 ・『異界よりのもの』と戦うことは、もともとの『学生の活動』とは異なる治安維持行動であるため、報酬を用意する。
 ・相手を『学園世界』に対する危険度によりA〜Dに分類、それに応じた報酬を活動した委員個人に用意する。これまでの治安維持活動分の報酬はすでに入金済み。
 ・事務員は報告書一部ごとに報酬を用意する。これまでの分の報酬はすでに入金済み。(事務員扱いはノーチェ・初春飾利・長門有希の三名とする)
 ・柊蓮司は「肩書き:学生」であるものの、学生としての義務(就学義務)を必要としないため、他の執行委員の「保護管理義務」を負うこととなっている。
 ・「保護管理義務」が発生している日は、日給で報酬を支払うこととする。これは「特別執行委員」ではなく、「執行部管理者」としての権利とする。

 閑話休題。
 長門は、昼休みにアッシュフォード学園と穂群原学園から交渉・策謀・戦略のスペシャリストをそれぞれ1名ずつ調達。
 『極上生徒会』本部に乗り込んで交渉を成功させてきたのだった。

 彼女もまた、この世界で日夜誰かのために駆け回るこの青年に、なにかしら思うところがあったのだろう。


403 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 22:24:31 ID:LKisT8WN
支援
にしても、懐かしい面子がちらほらと…

404 名前:執行委員の互助:2009/04/07(火) 22:26:36 ID:cw9zIgOt
 礼を言われた長門は、しばらく柊の方を見た後、不意に視線を外した。

「……宴会参加者への連絡を開始する。
 今日一日『一日執行委員代行』を引き受けた人間への通達を」

 静かにそう告げた言葉に、他のメンバーが反応する。

「了解でありますっ! 飾利、今日はもう仕事うっちゃって皆で騒ぐでありますよ!
 蓮司、会場に心当たりはあるでありますかっ!?」
「ないな。ついでに手配しといてくれると嬉しい。食べ放題飲み放題のとこで頼むな」
「蓮司のケチー」
「どっちにしろお前には奢らねぇ」
「えーと、リストリスト……執行委員のみんなの他だと、花菱さんたちと、浅葱さんたちと、工具楽さんたち。
 それから植木さんのお友だちとクリスさんたち、上条さんとシスターさん、衛宮家の皆さんと遠坂さんと間桐(妹)さんとカレーの人。
 真神学園の皆さんと満潮さんたちとカズキさんと斗貴子さん。あとは友枝小のさくらちゃんと小狼くんですか。茶々丸さんと長瀬さん、ネギ先生と小太郎くんもですね。
 マリーさんやメディアさんがエリーさんとベホイミさんのお手伝いをしてくれたこともありますね」
「皆呼んじまえ。助けてもらったんだ、礼の一つもしなきゃな」

 その彼の楽しそうな表情を見て、一瞬長門は俯いて。
 小さく何事か、まんざらでもなさそうに呟いて―――すぐに再び連絡作業に戻った。



 いつも忙しい人に、小さな幸せを。
 誰かのために走り回る人に、少しの笑顔を。
 助けられた以上何かをしてあげたいけれど、立ち止まる性質の人間ではないから。
 だから、前に駆け出すことに憂いを残さないために、見えないところで立ち回る。

 大事な人を助けてくれた彼に、少しの休息を。

 fin

405 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 22:26:59 ID:symA4uPG
それにしても、烈火と東京UGってなんか微妙に被ってr


ハハハ、ワタシハシエンイガイナニモシテイマセンヨ

406 名前:執行委員の互助作者こと夜ねこ:2009/04/07(火) 22:30:50 ID:cw9zIgOt
今度久しぶりにGMをやることに(挨拶)。
ども、夜ねこです。
相も変わらず生活拠点にネットつながってないためネカフェ投下してたら、回線がいきなり切れてしまい「部屋を替わってください」と言われました。
うん、今日はさる食らわなかったよ!たよ!
なんと今回は二本立て! 何がしたいのか正直よくわかんなくなってきたぞ!?

ともあれ、まずやるべきは出展かな。

透 <本田 透(ほんだ とおる)>         都立海原高校@フルーツバスケット
夾 <草摩 夾(そうま きょう)>         同上
『死者』                     @月姫
カレーの人 <シエル>              同上
『白駒陵守』                   @神さまのつくりかた
『悪魔』                     @メガテン
『風使い』浅葱 留美奈(あさぎ るみな)      都立朝比奈高校@東京アンダーグラウンド
五十鈴 銀之助(いすず ぎんのすけ)        同上
『鬼』                      @華の神剣組
烈火 <花菱 烈火(はなびし れっか)>      (学校名調査未踏)@烈火の炎
みーちゃん <水鏡 凍季也(みかがみ ときや>   同上
『風神使い』霧沢 風子(きりさわ ふうこ)     同上
土門 <石島 土門(いしじま どもん)>      同上
かおりん <小金井 薫(こがねい かおる)>    同上
葵 <神楽 葵(かぐら あおい)>         同上
真神学園の5人                  真神学園@東京魔人学園剣風帳
カズキ <武藤 カズキ(むとう かずき)>     私立銀成学園高校@武装錬金
斗貴子 <津村 斗貴子(つむら ときこ)>     同上
國生 陽菜(こくしょう はるな)          御川高校@こわしや我聞
工具楽さん <工具楽 我聞(くぐら がもん)>   同上
クリスさんたち                  ヴィルアセム帝国帝立第13軍学校@帝立第13軍学校歩兵科異常アリ!?
さくらちゃん <木之本 桜(きのもと さくら)>  友枝小学校@カードキャプターさくら
小狼 <李 小狼(リ シャオラン)>        同上
マリー                      @マリーとエリーのアトリエ ザールブルグの錬金術士(漫画:越智版)
プルシャ                     同上
パセック                     同上
メディア                     桃月学園高等部@ぱにぽにその他
長瀬さん <長瀬 楓(ながせ かえで)>      麻帆良学園都市内麻帆良学園中等部@魔法先生ネギま!?
ネギ先生 <ネギ=スプリングフィールド>     同上
小太郎くん <犬上 小太郎(いぬがみ こたろう)> 同上
魔法学術都市アリアドネー             @魔法先生ネギま!?


次に嘘予告「ごく×ごく」のレス返しを。

>>275
全然知らない。単なるテレビネタです。 ふふふ学園世界ものだからって小ネタまで学園ネタが入っていると思ったら大間違いですのよ(何故誇らしげか)?

>>277
いつか手ぇ出してみたいです。

>>298
ヴぁんぷ!とは一切繋がりません。つーか、あの嘘予告にノーチェ以外の吸血鬼って実はいないんですよ?

407 名前:夜ねこ:2009/04/07(火) 22:35:09 ID:cw9zIgOt
今回のお話について。

アトリエシリーズについて。
申し訳ありません、自分ゲームはやったことないのです。参考文献はブロスコミックス刊の漫画です。
もしも、ゲーム版のアトリエシリーズで何かネタを書いていらっしゃる方がいらっしゃった場合にネタを潰したことになるかもしれないのが怖い。

今回やりたかったことは、いつもの方向とは違うものを書いてみようというコンセプト。
視点を変えてお送りしたのが「ノーチェの一日」。
ノーチェが作ったあの鼠ですが、正直な話3匹で効果を上げるのはほぼ無理。
彼女が作中でやってることで、世界が解決に向かうことはHPが−300まで突入した生死判定をプラス要素ナシ、クリティカル連続狙いのみで成功させるような行為です。
要はまぁ、無理があるってことですね。
ノーチェはこの世界の人たちとかなり交友関係が広いことになっていたりします。具体的に言うと行き倒れ的な感じで。

もう一遍が「執行委員の休息」。
表テーマが「つながり」、裏テーマが「間抜けな世界の敵」。
色んな人たちとのつながりが、一つの「世界の敵」を潰すこともあるんだよー、という話。
あと、馬鹿にも馬鹿なりに休みが必要ですよね、というお話。みんなは妖精さん見えない内に寝ようね!
というか、強い奴出すと絶対負けるから魔剣使いの苦手な持久戦に持ってこうとしたというのが今回の敵。
そして自分のやってることの大きさを認識できてなかった上に、他の人間を眼中に入れなかったのが今回の敵。
もともとは直接戦う力はあんまりない。自分の作る道具が強いタイプ。

実のところ、もともと長門には執行部室に来てもらってでえんえんとPCいじっててほしいなぁ、と思ってました。
まさか別の方が貸し出してくださるとは思ってませんでした。ありがとうございます「平日の過ごし方」の方。長門は週1ペースで来ます。

では。また何か浮かびました時にでも。

408 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 22:39:07 ID:ltg5Qy3X
>>406
GJ、二つとも学園世界ゆえにといった感じの話でおもしろかった。
そして「帝立第13軍学校歩兵科異常アリ!?」も混じっていたのか、気がつかんかった。

あと、GMに必要な事のひとつはやはり「みんなで楽しもうと思う心意気」だと思う。
ついでにいえば健康も入るんできっちり休息いれてくれ。
それではそのシナリオが良きセッションになる事を祈って……乙。

409 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/07(火) 22:46:55 ID:dOv1vU1c
>406
二連続おつとしか言いようが無い。
で、現在自分がイリスとマナケミア絡めたアトリエシリーズのネタを一回目書き終わったとこだけど、
ネタ潰しはないです。
ペルソナ4もついてるのでマヨナカテレビDXネタも絡む予定。
敵側のボスの一人決めて顔出してるし、学園関係者じゃない人も敵方だからなんでもありと出してるし、
さらに故人をそのまま出すわけにはいかないので、
オリジナルで代理を出してしまうのが心苦しくてまだ上げてません。

410 名前:罵蔑痴坊(偽):2009/04/07(火) 22:50:47 ID:AMmkagh2
>407
乙。
モンティ・パイソン系はオススメですよ。現代用誤の基礎知識的に。
アトリエシリーズはマリーのしかやってなくて、後は同じマンガを。僕は無問題だと思いますが。

こっちは次は『しのキャラ何でも屋』にかかる予定。
エリスと茉莉が柊とすれ違う話です。というか彼女ら延々そればっか。

追伸、『異聞』で出したうち、あ〜る君はありましたが、ベネットを拾う人は少ないだろうなぁ。
ベネット出すと無駄に喰われるしなぁ。

411 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 00:36:22 ID:dsnVHOIU
GJです。う○い棒くれたお兄さんって桂だよね、銀魂の。
東京UGとは懐かしいなあ。

あと今回の夜ねこさんのみて思ったんだが、「学園の敵」と戦い、報奨金をもらう賞金稼ぎみたいなのがいてもおかしくないんじゃね。
心意気や仁義で戦う人ばっかじゃないだろうし。そういった人じゃない奴もだしやすくなるんじゃね。

412 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 00:38:43 ID:Ex6HY3a/
GJ!

413 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 00:47:30 ID:GwqbuNwi
>>411
『カゲモリ』なんかはそっちのスタンスに近いんじゃないかな。いやまあ普通に心意気とか仁義とかで戦う人もいるけどさ。一狼とか。

あとは公然と賞金稼ぎができる学園って言うと…どこだろう?

414 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 01:04:42 ID:Bm6V28W3
>>413
>賞金稼ぎ
光綾なんかは「クエスト」の名目でOKかな
フローリア学園も「傭兵」科がある以上、OKだと思う

415 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 01:52:18 ID:pWHHUpXY
ってかちょっと定義付けをした方がよろしいのかもー。
夜ねこ氏風に言うと

「世界の敵」=シナリオボス
「異界よりのもの」=ランダムダンジョンのエンカウントクリーチャー

エンカウントクリーチャー狩りは成り立つかもしれんが、シナリオボスを狙って狩りするキャラはちとシュールだな。
個人でやるのは難しいんじゃないかな? 出現に法則性があるようには思えないし。
極生が設置するとも思えない(執行委員いるし)から、学校単位でやるのが自然な流れでは?<賞金稼ぎ

416 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 04:56:09 ID:K1ZYeBU1
一騎当千のアノ、三國志武将魂継承トンデモ高校生揃いの
高校群なら、ランク昇降とは関係無い異界からの敵に対しても闘士達を焚き付ける為に
公然と賞金稼ぎ制度を掲げていそうだな。
で、学園世界統一の為に、各高校毎に“学園世界の敵”に対しても
明確にサーチ&デストロイを画策していそうでも有る。

417 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 05:43:14 ID:dS4tKFRw
夜ねこ様GJです〜!
フルバ行間ちょい出しやろうと思ってたら先にやられたw
学園世界ならでは! って感じで素敵です!
柊オーバーワークにもほどがある(汗) ツッコまれなかったら、そのまま徹夜続けてたのか(汗)
……くれははどんくらい忙しいんだろうか……あ、これで一本書きたいw

でも、能力頼りの打たれ弱い敵って、今書いてる話のボスと被っちゃったんだぜ!
……よくいるボスだしね! ね!? パクリじゃないよ信じて〜!(<作品投下してから喚け)

……今週末には……今週末こそには、剣士ミーツ兵士を……!

418 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 06:04:43 ID:/qs/g5rC
アングラ懐かしいな。
単行本全部持ってるわ

419 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 12:19:16 ID:61qMTtQd
マリエリは越智版っぽいなぁと思ったら
やっぱりすっとこどっこいの方だったw

「だよねェ」とか「錬金術士をなめるなヨ」なんてのは特徴的だし
つまりあの二人は飲んベぇということかw
・・・ところで、ジラアスはいるのかしらん?

420 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 13:38:58 ID:HI+7TSli
おお、真神学園の面々もおりますか。
…なんか、黄龍妖魔學園紀の方の黄龍様と柊は気が合いそうだなぁと思ったり。
ろんぎぬす辺りで飲んだくれてそうなイメージが。

421 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 15:42:43 ID:J8krCceC
なんちゃって高校生には触れるなよ。

422 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/08(水) 20:14:45 ID:5ukACNYN
学園世界の結合ってネタ的にこんなにおいしいのかwwwともかくGJ&乙です!!

423 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 01:13:48 ID:3rozj50w
このGJの流れを不意にぶったぎりつつ、違うネタ振りをしてみよう

執行部の人気キャラ(最強キャラでも可)決定戦(本人達丸無視)で外野による大騒ぎとか
他の極生所属組織を妄想してみるとかどーよ?

424 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 11:54:30 ID:mLNV5fX4
最凶は、学食だろう。

あかりん的に。

425 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 12:11:44 ID:ZzJcyCPM
下手くそ料理選手権でもやらしたらあかり以上の奴がでてくるに違いない

426 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 12:37:23 ID:tyzLfFBo
いや、料理が人を襲うレベルを凌駕する奴はそういないと思うが…w
ちょっと前の短篇にあかりん以外で二人出てたけど>人を襲う料理の腕前

427 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 13:35:29 ID:cMONl5/H
半ば公式で、
下手な侵魔より強くて凶悪で尚且つ神の盾さえ貫いて胃袋にダメージを与えられるっつー
間違った意味で厨設定な料理だからな。


428 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 13:38:25 ID:KJMiwbpr

ふと、一度学園世界そのものを壊滅的に滅ぼしたくなった、一般生徒が暴動起こしたり、モンスターに襲われたり、カゲモリも極生も壊滅して絶望感を与える感じに

だがどう考えても最終回セッションです、本当にありがとうございましたw

多重クロスって絶望的な状況とか生み出し難いんだなぁって、改めて勉強になった気がする。
常に結構な楽勝モードな感じで

429 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 13:59:27 ID:BHr1QQiO
世界全体巻き込んでこその絶望的状況だからな。

ただ、多重クロスと言うよりは作者が複数いる場合の話だと思う

430 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 14:04:57 ID:T8R4mJUN
そんな状態になっちゃった未来から現代に向けて救援要請が、という話にするとか。

431 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 15:20:30 ID:3rozj50w
それやるんだったら自分一人の作品でやってくれって話じゃねーの?

それを勢いの力でやったのが例のリレーだな。
あれだって大量にクロスしてたがそれなりに楽勝じゃないシーンはあったとおもうぞ。

リミットができたからクライマックス始まったわけだが。
クライマックスやりたいなら他の人に許可もらうか、平行世界(隔離項目)にして一人でやれば誰も文句言わないと思うけど。
他の人が拾ってくれるかは知らん。まだ書きたい人もいるだろうしな

432 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 18:10:11 ID:Ay7ah78A
特殊な手段としてはある程度影響を残しつつも状況をリセットする、って手もあるが……
NWで言うなら「小さな奇跡でアゼルが転生しなかったことにした結果、両親や友人が消えたのも無かったことになる」的な。
でもまあイロモノだわなー

433 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 19:02:19 ID:xE+Kwfd5
ちょっとだけ影響残して状態リセットで思ったが
そういや時間ループネタも悪くない気もするな(学園時空(別名サザエさん時空)的に)

434 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 19:03:59 ID:UBVyV+MG
奇面組的に解決する方法もある。

学園世界の『作者』がタイムマシンで過去に行って、作者がまだ確認していないエピソードを書くのさ。

あれ?なんかメタ的に使えるシナリオフックのような気がしてきた、子の寝た。

435 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 19:14:56 ID:G+0W6hoV
>433
>そういや時間ループネタも悪くない気もするな
友引高校が転移してくると申したか。

436 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 19:22:33 ID:3rozj50w
>>434
だから、それがやれるのは作者が1人な時だろってーのに……


まぁいいや、作者の人たちが決めることだろうしな。
実際に書いてる人たちがそうするかスルーするか決めればいい。

それ以外の奴が何か言っていい権利はない。俺たちにできるのはほんの些細なGJくらいだ。

そんなことはさておいて、ネタ……じゃあアレだ。花見in学園世界とか。

437 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 19:29:32 ID:zMC/hd/s
某アーケードゲームのPS2版が発売されてさ、学園世界のネタにすっぞ!と意気込んでたんだが
予想以上に出来が悪くて泣きそうだ……

438 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 19:38:09 ID:UBVyV+MG
>>436
『学園世界をクリエイトした者』というキャラをメタ的に創造するという意味合いで言ったつもり。
まぁ、そういうのは難しいのは判ってるけど。

439 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 19:44:30 ID:3rozj50w
>>438
わかってるけど口に出したくて仕方ないほどそのシチュエーションをやりたいなら
自分でやればいいんじゃないかな、という返答でいいか?

>>437
なんのゲーム?
アーケードってことは……式神かジャス学かアンコかマジアカくらいしか出てこなかったが。

440 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 19:55:39 ID:JRc/8GOa
>>437
アルカナハートですね、わかります

441 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 20:26:28 ID:rJa2DLSr
この時期にPS2だからな・・・
1の時ですら散々言われてたのに何故このハード?というのはあるな

442 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 21:22:03 ID:XE442lwK
PSPなら数多くのまゆりん同士(塩おむすびファン)を作り出した某ゲームだろうと思うのだが。

【学園関係ねぇ】

443 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 22:23:11 ID:mLNV5fX4
>440
『ブレカナハート』という単語が浮かんだが、太古の遺物臭いナァ。

444 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 22:47:38 ID:m5bvUKji
>>443
舞台は這い出るランドですね

445 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 23:07:29 ID:zMC/hd/s
這い寄るらんどん?

446 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 23:12:58 ID:hvDF9OYX
ところで、幼稚園は学園に含まれますか?

447 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 23:17:12 ID:3rozj50w
>>446
含まれるじゃろ。輝明学園にはちゃんと幼稚舎があるぜ?

ただ、柊を「所属」させると世界全体が大変になるらしいから、それだけをしたいがためのネタならオススメしない。

で、どこの幼稚園をクロスさせたSSを書いてくれるんだ?

448 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/09(木) 23:17:15 ID:htC1Qn9f
>446
学園に幼等部があるなら学園に含まれる
乙ぼくの色々名前の変わってるお嬢様学校に話で出てた例がある

449 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 07:43:49 ID:8SOckmSD
CLAMP学園とか。摩陀羅幼稚園とか。

450 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 08:46:16 ID:ukDUpCiT
○○学園、とかに所属しない幼稚園で書きたいんかな?

悪くはないんじゃね? 学園世界ルールでは「学び舎」としての機能があることが参加の条件なんだし。

451 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 09:21:05 ID:gUmsD3aF
俺は嵐を呼ぶ5歳児や組長にしか見えない園長先生を呼びたいんだと思ったが。

452 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 11:33:02 ID:fMqJHkFG
>451
あの5歳児は普通に特別執行委員(肩書き:園児)だと思うが。

453 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 12:02:48 ID:TEZ+pvBO
あの園児は無自覚に行動していい結果を生み出すから役職を与えるのはダメじゃね。
後、野原一家は離れてちゃダメだと思うんだか家族で来るのか?

454 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 12:09:48 ID:GqyX2TLx
言い出しっぺの>>446に任せておけばいいんじゃないの?

455 名前:とある偽善使いの人 ◆CPytksUTvk :2009/04/10(金) 14:21:52 ID:wCEOcT5v
大変、お久しぶりです。

学園クロスで盛り上がっているところ悪いのですが。
とある魔術のインデックス×ナイトウィザードのクロスSSの続きを五十分から投下してもよろしいでしょうか?

学園都市だから、一応話題には乗れているの、かな?(笑)

456 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 14:23:14 ID:TT51pV+A
>455
大歓迎でゴザる

457 名前:とある偽善使いと魔剣使い ◆CPytksUTvk :2009/04/10(金) 14:51:52 ID:wCEOcT5v
投下開始します。
少し長いので、支援を出来ればお願いします。


 あーるひー、はーれたー昼下がりぃ。
 おいっちにい♪ さんっ、しい♪

「ふうー、今日もいい天気だ」

 死ぬにはいい天気だとサムズアップしたいぐらいに晴れ渡った空を見ながら、当麻はラジオ体操を行なっていた。
 自慢ではないが、毎日の柔軟運動と欠かさず続けているジョギングに、最後に飲み干す宅配の牛乳瓶を一口で飲む速度には誰にも負けない自信があった。
 狂ったような速度で体を廻し、あはははと笑っているのは何故か朝起きたらぶっ壊れていた電化製品の残骸と買っておいたアイスがデロデロに溶けていた冷凍庫の悲劇のせいではないのだ。
 おいっちに♪ さんっ、しい♪
 踊る、回る、狂う、エレガントに回転し――当麻は唐突に床に倒れこんで。

「ちぃきしょーっ!!」

 楽しみに取って置いたハーケンダッツのアイスのご臨終にもがいた。じたばた、じたばた。
 五分ほど奇声を上げながら暴れたのだが、不意に正気に戻り、恥ずかしくなったので起き上がる。

「あーくそ、とにかく飯食わないと死ねる」

 二十分前に掛かってきたロリ神に愛されて、いつか失うはずの甘酸っぱい少女時代を過ごし続ける担当からのラブコール。

『あははー、上条ちゃん。頭はそこそこですけど、出席日数と単位がやばいから補習デース☆』などという言葉があったので、多少はお腹を膨らませないと不味い。

 どうせ能力開発の粉末なり錠剤などを飲むのだろうから、胃になんか入れないと痛めるだろうし(食後服用とかいうな)、
 下手すると透視能力開発などをさせられて、夕方まで見えることのないトランプの柄を当てる嵌めになる。
 くーくーお腹を鳴らす時間など一秒でも短いほうがいい。
 故に、当麻はため息を吐きながら、台所から取ってきた鍋掴みを“右手に嵌めて”、寝室のベットにまで戻るとその上に乗っていたクッションを持ち上げた。
 ベットの下に隠しておいた金庫のような物体。
【内蔵式月匣発生器】
 昔のつてで手に入れて、友好関係を築いている某錬金術師が時たまメンテするたびに魔改造しているそれの取っ手を鍋つかみ越しに右手で掴んで、押し開く。
 中に広がるのは魔法のような広い空間に、詰め込まれたものの数々の物品。
 現代技術では多分製造出来ない【異世界の産物】
 そして、その中に上半身ごと入り込んで、目的の物体を何個か掴むと、当麻は自然な動作で這い出てきた。

「ふいー」

 手に持ったのは非常用のインスタント食品数個とエネルギーメイト。

「壊れてねえよな?」

 当麻は月匣発生装置の中を除き見るが、別段異常は無さそうだった。
 当麻の“特異体質”と呼ぶべきそれによる破壊。
 散々苦労したが、右手による直接接触が無ければ五分の耐久仕様を約束すると言われているそれ。
 とはいえ、やはり心臓に悪く、不安に煽られるが、今日もまた無事に壊さずに済んだようだ。
 月匣発生装置の蓋を閉じて、再び同じようにベットを戻すと、当麻はそれを台所に運び、水を入れた薬缶に火を掛けながら軽く首を動かして。

「布団でも干すかー」

 手に嵌めていた鍋掴みとテーブルの上において、丁度いいとばかりに外しておいた布団を抱えて、当麻はベランダに出た。
 チュンチュンと素敵に目障りな声で鳴り響く鳥の声を聞きながら、ベランダの窓を開けて、布団を干し――
 なんか白い布団のようなものが既にベランダに掛かっていた。
 具体的に言うと白い服を着た少女だった。

「あ?」


 こうして、上条当麻の不幸との遭遇は決定事項となった。

458 名前:とある偽善使いの人 ◆CPytksUTvk :2009/04/10(金) 14:54:22 ID:wCEOcT5v
 
 とある偽善使いと魔剣使い

 二章 迷子の迷子の少女ちゃん 貴方のおうちはどこかしら?



 七階のベランダ。
 周りに歩いて渡る場所などないベランダの手すりで圧し掛かっている少女を見た当麻の反応は呆然でも驚愕でもなく。

「少女、だ、と?」

 ――戦慄だった。
 激しく濃ゆさを感じさせる表情を作り、まるで「親方! 空から豚が落ちてきた! 紅い豚だ!」と叫ぶ少年のような顔つき。
 少女に手を伸ばすよりも早く、当麻は周囲を見渡し、身を屈めて、まるで狙撃にでも注意するかのような厳しい目つきをとる。

「やべえやべえ、激しくデンジャラスにやばい。こ、これはまさかついに世界の危機か!?」

 ダラダラと汗を掻きながらも、ついに来る時が来たのかとどこか納得した表情。
 持っていた布団を部屋に投げ飛ばすと、右手をきつく握り締めて、当麻は周囲の索敵を続ける。

「……うにゅ」

 その時だった。
 どこか蕩けるような甘い声がしたのは。

「ん?」

 当麻がようやく少女本人に注目する。
 のろのろと鉄棒の上に乗り掛かったような体勢で手すりに被さっていた少女が指を動かし、続けて顔を上げた。
 絹糸のように細く滑らかな銀色の髪、透けるように白い肌、緑色の瞳がゆっくりと焦点を当麻に合わせていく。
 まるで美しい人形のような少女。
 されど、当麻はどこか慣れ切ったような態度で少女の顔を見て、その服装を認識し、困ったように手を額に当てると。

「アー、どちら様でしょうか?」

 半眼とした目つきで訊ねる当麻。
 それに対し、少女は可愛らしい唇を動かして、掠れた声を洩らす。

「ォ、――」

「お?」


「おなかへった」


「…………」

 キュイーと薬缶の湧いた蒸気音が響き渡る。
 当麻は答える術を持たない。

459 名前:とある偽善使いの人 ◆CPytksUTvk :2009/04/10(金) 14:55:56 ID:wCEOcT5v
 
「おなかへった」

「……」

「おなかへった」

「……」

「おなかへった、って言ってるんだよ?」

 ムスッと少しだけ頬を膨らませて、正体不明の少女はそんなことを言いやがりました。
 それに優しい優しい上条当麻君はこう答えます。

「KA☆E☆RE」

 素敵なスマイルで即答だった。
 何でお前、外国人のスタイルと格好で超日本語ペラペラなんだよ。とか。
 なんでそんなとこにかかってるんだ。とか
 色々と突っ込みたかったが、全てをかるーくスルーして当麻は優しい笑みで切り替えした。

「ええー!」

 ガビーンとした顔を浮かべる少女。
 まあそれを無視して、当麻は床に落とした布団のシーツを“右手に”巻きつけると。

「で、なに? どう見ても行く途中にはないこのベランダにかかっていて、君は行き倒れとかおっしゃるつもりデスか?」

「倒れ死に、とも言う」

 ふてぶてしいな、おい。
 などと当麻は心の中で某親友にして恩人でもある魔剣使いから授かったツッコミ技術で、突っ込んだが口には出さない。
 多分話を聞かないやつだと即座に見抜いたから、というわけでもない。

「まああれだ」

「なに?」

「飯なら食わせてやるから――」

 ガンガンガンとヤバイ音を立てながら、お湯を噴いているだろう薬缶の断末魔が響き渡り。

「取りあえず中入れ。俺の世間体がやばいから」

 と、告げて当麻はシーツで覆った右手と左手で少女を持ち上げる。

「ほえ?」

「軽いなお前。まあいいや、てーいっ」

 ポーイと部屋に放り込んだ。

「あーれー」

「お代官様お許しを〜、じゃねえよ!?」

 何気に素敵なボケを発する少女に思わず突っ込み、彼らしい理不尽に対する悲鳴が上がった。


460 名前:とある偽善使いの人 ◆CPytksUTvk :2009/04/10(金) 14:57:35 ID:wCEOcT5v
 


 取りあえず五個ぐらいのカップヤキソバとカップラーメンにお湯を注ぎ込み、昨夜炊きすぎたので電源を落としていた電子ジャーから盛った冷や飯にお茶漬け用のふりかけとお湯を注ぎ込んだものを目の前に少女に与えた。
 ガツガツとグーで握った箸でお茶漬けを掻き込む少女に、餌付けという言葉が脳裏に過ぎったのは多分気のせいだ。
 京都風に言えばお茶漬け出されたら帰れという意味なのだが、多分知らないんだろうな、ははは。と、当麻は内心涙したのも内緒だ。

「まずは自己紹介しないといけないね」

 そして、少女が口を開いたのは丼に持ったお茶漬けを全て胃に収めてからだった。

「まずは、というわりには茶漬け喰い終わってるけどな」

「いいの! 細かい疑問は!」

 ベシベシと頬を膨らませて、ガラステーブルを叩く少女。
 お見合いという感じでガラステーブルを挟んで、正座をする少女を見下ろす当麻は胡坐を掻いていた。

「はいはい、んで?」

「なんかあしらわれているような気がするけど、まあいいや。私の名前はインデックスっていうの」

「……すっげえ人名じゃねえな、それ。どう見ても偽名だし。目次とか、そういう意味じゃなったっけ?」

 ――ん?
 インデックスってどっかで聞いたことがあるような?
 当麻が内心首を傾げるが、インデックスと名乗った少女は言葉を続ける。

「見ての通り教会のものです、ここ重要ね。あ、バチカンじゃなくてイギリス清教の方だから」

 当麻が思い出す前に、インデックスが言葉を続けたため、彼は思考を中断。
 言葉を返した。

「見ての通り……まあシスターだな」

 当麻がインデックスの上から下まで一瞥し、以前にも何度か見た修道服とでもいうのだろうか?
 そういった格好だと判断する。

「ちなみに俺は宗教には詳しくないので、区別を言われても分からん。仏教と密教の差もわからんぐらいだ」

「インデックスも分からない、かな?」

 ハハハ、駄目じゃねえか。

「それで目次でいいのか? 君、何者なんだ?」

「うーん目次じゃなくて、【禁書目録】。それと、教会のものだって」

 半眼になって訊ねる当麻に、話聞いてよーとばかりにプーと頬を膨らませるインデックス。
 当麻の目から見ても中々に可愛らしい仕草と思ったが、生憎美少女の類に表向きときめくような性根は持っていない。

「あのな。俺の知っているシスターは空を飛んだり、箒で人を斬殺しても、平凡な一般市民のベランダで行き倒れなんてしないですー」

「空飛んだり、斬殺するシスターの方が聞いたことないよ!」

 バシッとインデックスがガラステーブルを叩いた。
 ああ、やめて。それ普通の家具だから!

461 名前:とある偽善使いの人 ◆CPytksUTvk :2009/04/10(金) 14:59:11 ID:wCEOcT5v
 
「まったくもう、私が頑張って説明しているのに」

 プンプン怒りながら、インデックスはテーブルに置いておいたカップヤキソバの一つに手を付けて。

「おい、それ、まだお湯抜いてないんだけど」

「インデックス知ってるよ? これって、ラーメンっていうんだよね」

 お湯に入ったままのカップヤキソバを啜り始めました。
 味薄いけど、おいしいねー。と嬉しそうな顔で言うので、当麻は止めることも出来ずに。

「ああ、それは新発売の奴でな。まあそれとそれは喰ってていいぞ、オレはちょっとこれのお湯捨ててくるから」

 ぎこちない笑顔で、ふやかしタイムの終わったカップヤキソバをおぼんに乗せて、台所でお湯を捨てた。
 インデックスはちゅるちゅるとお湯漬けヤキソバを食べ終わると、当麻が指定したカップラーメンを食べ始める。
 その姿を当麻はお湯を捨てながら、欠伸をして。

(あーこれも、不幸かねぇ)

 災厄が飛び込んでくるのは当麻にとっては慣れっこだった。
 最大級の不幸といえば中学一年生の頃の失踪。

 ――“神隠し”

 一時期世間を賑わせた事件の被害者。
 二年間もの間消息不明となり、そして三年前に当麻はこの世界に帰還した。
 その頃にあった出来事を、当麻はこの世界では二名の人間にしか洩らしていない。
 両親にすらナイショにしている。
 その間の経験は当麻の常識を破壊し尽くし、友人を作り、得難い経験と共に彼を構成する大切な部分となって生きている。
 そして、その経験が囁くのだ。

 ――厄介ごとになるぞ、と。

「放置も出来ねえけどなぁ」

「なんかいったー?」

「なんでもねえよ」

 お湯を切ったカップヤキソバに、付いているソースをぶっ掛けながら当麻は答えた。
 あー、世界の危機にならないといいけど。
 そんな彼の願いは叶うだろうか。
 正直当麻本人すらも信じていない願いだった。



462 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 15:00:26 ID:TT51pV+A
支援

463 名前:とある偽善使いの人 ◆CPytksUTvk :2009/04/10(金) 15:00:55 ID:wCEOcT5v
 
 その後、ガツガツと家中の食料を食い終わったインデックスがゲプッと可愛らしい息を洩らしたのを見ながら、当麻はようやく確保した自分の分のヤキソバを胃に収めた。

「なあ、お前ちょっと食いすぎじゃねえ? 少し遠慮しろよ」

 ヤキソバ五個、カップラーメン二個を貪ったロリ顔シスターの顔を睨みながら、当麻はぼやく。

「んー、ごめんなさい。実はちょっと前からご飯食べてなかったから」

「ちょっとって、どれぐらい前からだ?」

「二日ぐらい、前、かなぁ?」

 小首を傾げながら告げたインデックスの言葉に、当麻は眉をゆがめた。
 不快そうな顔だった。

「欠食児童は関心しねえぞ。お金とか持ってなかったのか?」

「さ、財布は一週間前に落としたから」

 うぐぅ、などと声を洩らしてインデックスが視線を落とす。
 苦労したんだなぁ、と少し遠い目で同情した。財布を落とすのはまあ当麻にも何度か経験があったからだった。

「まあいいや。んで、お前うちのベランダに引っかかってたんだ?」

 気を取り直し、当麻は相対するインデックスの目を覗き込むような姿勢で言った。
 真面目に答えろよ、と前置をして。

「えーとね。本当はベランダに引っかかるつもりはなかったんだけど、落ちたの。多分」

「落ちた?」

「そう。屋上から屋上に飛び渡っていたんだけど、へまして落ちちゃったの、かな?」

 思わず当麻は上を見上げる。
 この周辺には同じような学生寮用のマンションやビルが乱立しており、まあ隙間は精々二メートルぐらいだから常人でも頑張れば飛び渡れるだろう。
 とはいえ。

「ここは八階立てのビルだぞ? 一般人だと落ちたらぐちゃーとなって、トマトみたいになっちまうじゃねえか。死ぬ気か、おまえ」

「そこはかとなく詳しい説明はやめてよ。私だって自殺して、お墓に入れなくなるのはいやだし」

 嗚呼、そういえばキリスト教だと自殺したら天国いけなかったんだっけ。でも、墓に入れなかったっけ?
 などと当麻が少し考えるが、インデックスは少しぶるっとした体を押さえて。

「けど、仕方なかったんだよ。あの時、ああするしか逃げる方法なかったし」

「に、逃げる?」

 不吉な言葉に、当麻の表情は少し固まった。
 インデックスはそんな当麻の顔を見て、「うん」と頷くと。


「追われてたから」


 と告げた。

464 名前:とある偽善使いの人 ◆CPytksUTvk :2009/04/10(金) 15:03:29 ID:wCEOcT5v
 
「……」

 当麻はしばしの間沈黙する。
 だけど、それはインデックスの予想していた驚愕でも、困惑でもなくて。

「……あ〜……あ〜……ああ、あるある。あるわな、うん」

 と、どこか諦めた顔で頷き出した。

「へ? なに? なんでそんな態度なの?」

 不可思議な当麻のリアクションに、インデックスが逆に困惑した。
 しかし、当麻は気にせずに顔を押さえたまま、左手を振って「いや、気にせずに話を続けてくれ」 と疲れた顔で呟いた。

「で、追われてたって、どこのどいつに追われたんだ? 世界を滅ぼすつもりの魔王に生贄にしてやるーとか? それとも悪の秘密結社か?」

「君、常識的に考えなよ。魔王とかいるわけないじゃん」

 悲しいけれどいるんだよなぁ。と内心思う当麻。
 後お前に常識的とか言われたくねえわ。

「でも、悪の秘密結社は近いかも」

「マジで?」

 キター!? とばかりに顔を上げる当麻を余所に、顎に指先を当てて考えるインデックス。

「多分薔薇十字(ローゼン・クロイツ)とか黄金の夜明け(S∴M∴)か。その手の集団だと思うんだけど、名前までは分からないかも……連中、名前に意味を見出す集団じゃないし」

「れ、連中?」

 複数形ですか。
 集団で、組織か。と当麻が厳しく目つきを変えて、インデックスを見つめた。
 銀髪の少女はおごそやかな口調で告げる。


「そう、連中は――魔術結社だよ」


「…………そうか」

 ならいいや。とばかりに、当麻は流した。

「へ? 驚かないの?」

「いや、まあ……うん。途中から諦めてた」

 そこはかとなく、諦めたような口調と目つきで当麻は淡々と告げて。

(まああれだよな。錬金術師がいるし、超能力もあるし、そういえば昨日侵入した魔術師がいるって言ってたよなぁ)

 などとボソリと口の中で噛み砕き、当麻の頭の中で大体の構図が形成される。
 激しく悲しいことだが、遭遇したくなかった魔術師との関係性を得てしまったようだった。
 一応当麻の住居には学園都市の誇るセキュリティがあるし、そこらへんを警備員(アンチスキル)が歩いているから治安は激しく安全だ。
 不法侵入者の魔術師が、彼の知るトップクラスの“魔法使い”レベルでなければあえなく逮捕されるだろうことは想像出来る。


465 名前:とある偽善使いと魔剣使い ◆CPytksUTvk :2009/04/10(金) 15:06:03 ID:wCEOcT5v
 
「まあいいや。魔術結社だか、聖王庁だが、そんなのはどうでもいいし」

「どうでもよくないよ!」

 こらーと怒るインデックスの頭を、当麻は左手でよしよしと撫でると。

「んで、まあ一応訊ねるけど、なんでお前狙われるんだ? なんか追われる理由とかあんのか?」

 金とか持ち逃げしたとかー、知ってはいけない秘密を知ったとか色々ありそうだが。
 原因次第では対処方法もあるだろう。
 そう思ってインデックスを見たのだが、彼女は静かに当麻の左手をどかして。

「私は禁書目録だから」

「あ?」

「私の持ってる十万三千冊の魔導書。それがきっと連中の狙い」

 ふむと、当麻は首を捻って。

「で、それどこにあるんだ? 金庫とかか?」

「……なんで、そんなに軽く流すかなぁ。結構ババーンと驚くことを言ってるつもりなんだけど、リアクション薄いよー」

「突っ込むのに疲れたからだ」

 そういって当麻は息を吐き出すと。

「で、どこにあるんだよ。隠し場所をお前が知っていて、それを吐かされるために狙われているとか?」

「ううん、違うよ? 十万三千冊全部今も持ち歩いているし」

「……お前月衣(カグヤ)持ちなのか?」

 その言葉にピーンと来て、思わず当麻が呟くが。

「へ? かぐや? なにそれ?」

 インデックスが逆に小首を傾げた。
 どうやら違うらしい。と当麻は判断。

「あ、いや。そういう名前の超能力があってな、この学園都市にはそういう物品を納めたまま持ち運べる力があるんだよ」

 正確には異能に当たるのだろうか。
 嘘はついてなーい。
 超える能力って書いて超能力だからだ。

「そうなのかー。でも、違うよ。そういうのじゃなくてね」

 インデックスは考えてから、答えようとして。

「いや。ごめん。これ以上は話せないよ」

「あー? なんで?」

「教えたら巻き込んじゃうから」

 少し喋りすぎちゃった、とインデックスは口元を押さえた。


466 名前:とある偽善使いと魔剣使い ◆CPytksUTvk :2009/04/10(金) 15:08:32 ID:wCEOcT5v
「すげえ今更な気もするんだが……色々知っちまったし」

「うぅっ」

 涙目になるインデックスに、はぁっと当麻はため息を吐き出して。

「まあいいけどな。こういう面倒ごとは慣れてるし」

 正真正銘本当のことを告げながら、当麻は立ち上がり。

「で、一つ聞きたいんだが」

「な、なに?」

「ここに来る時に、追っ手に姿とか見られてるか?」

「う、ううん。多分平気だと思う、多分だけど」

 自信なさそうに告げるインデックスを見下ろしたまま、当麻はガシガシと頭を右手で掻いて。

「んじゃあ、しばらくここにいていいぜ」

「え?」

「この学生寮ならオートロックだし、怪しい奴らが空でも飛ばない限り窓からは入ってこねえし」

 当麻はベランダの手すりを指差す。
 正確にはその脇にある非常用の脱出器具を指差して。

「なんかあったら其処から逃げろ」

「え、え?」

「それにな」

 立ち上がりながら、当麻は転がっていた学生服のシャツを羽織り。
 ズボンを掴みながら、軽く指を上げて。

「俺が一緒の時は守ってやるよ」

 大気に響かせるように声を上げた。

「で、でも。危ないんだよ! 私と一緒にいると! 君には迷惑はかけられないよ!」

「君じゃねえよ」

 右手を胸に押し付けて、インデックスに振り返り。

「俺は――上条 当麻。レベルゼロの無能力者で、少しだけ逃げ足に自信がある【偽善使い(フォックスワード)】」

 堂々と微笑んで、まるで世界でも殴り飛ばしてやると告げるかのように歯を剥き出しに。


「よろしくな」


 それが上条 当麻とインデックスの名前を交換した時であり。


 この学園都市で発生する世界の危機となる発端を叩き潰すための物語の開幕である。

467 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 15:10:09 ID:TT51pV+A
支援


468 名前:とある偽善使いの人 ◆CPytksUTvk :2009/04/10(金) 15:11:13 ID:wCEOcT5v
投下完了です。
原作でもこのシーンが長くて、ほぼ一話使っちまいました。
とはいえ、色々と異なっている上条当麻のリアクションの差異を楽しんでくださると幸いです。

幻想殺しを名乗らずに、ただの【偽善使い】。
彼の織り成す喜劇と悲劇破綻の物語をどうかお願いします。

支援ありがとうございましたー。

469 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 18:55:07 ID:GqyX2TLx
>偽善使いの人

まるで二週目プレイの如くトラブルに慣れた上条さんが面白いw
 
>>448見て瑞穂ちゃんの事思い出したが、
うっかり学園世界で大人気になったりしたら大変だろうなあ

470 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 20:23:13 ID:czUYEOJu
>469
瑞穂お姉さまなら学園世界淑女コンテストを開けば間違いなく優勝ですよ
そして沸いて出てくる男達に口説かれorzへ

471 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 20:38:45 ID:lh+x9lZU
学園世界を舞台に氷室の天地の3人娘でなにか出来ないかなー?とか考えてたら
「将軍」
「原人」
「教師」
とかがよぎったが、これは作者の同人誌じゃないかと慌てて考え直す。

472 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 20:43:51 ID:ukDUpCiT
>>468
乙ー。
いやいやGJ。禁書がやけにあしらわれ気味でかわいい。

俺の姫神と俺のミサカ19090号はこの頃何やってるのかと、いずれ出るかもしれない「ヤツ」が今何歳なのかが気になる。
かみやんがどんな軌跡でどんな話を紡ぐのか、楽しみにしています。

473 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 20:44:55 ID:vH485hOD
GJ!
>「やべえやべえ、激しくデンジャラスにやばい。こ、これはまさかついに世界の危機か!?」

世界の危機だ!→じゃあレベルを下げましょうよりはマシだと考えるんだ!
2年間に何があったか気になるぜ!

474 名前:446:2009/04/10(金) 20:49:44 ID:uxz5+8Da
>>451
ごめんね出すのはポーラスター幼稚園なんだ。
と言ってみるテスト。

475 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 20:58:10 ID:ukDUpCiT
>>471
氷室の天地ネタをやるには、

メガネを愛し、キン肉マンネタとB級映画ネタに通じてメガネを愛し、
最近のネタを嗜みながらメガネを愛し、何よりもアイテム「磨伸の魂」を手に入れた上でメガネを愛さないと再現不可能だと思うの。

いや、見たいけどね?
つーか、氷室は報道委員やってなかったっけ。

476 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/10(金) 21:23:13 ID:02Eawff1
GJ!
上条さんの登場により新クラスフラグマスターが(ry

477 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 00:15:10 ID:B9BYXSdW
>>475
バキと北斗の拳も忘れちゃなるまい。

条件多すぎる?大丈夫、Fateの知識はいらないから。


478 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 03:09:46 ID:gtsu7k1f
>>474
超能力者か。

479 名前:如月ジローの初恋@学園世界:2009/04/11(土) 08:41:57 ID:7YVaP1a2
>>478
その通り。おとなもこどももおねーさんも、なマザー2とのクロスです。8時50分から、投下します。

480 名前:如月ジローの初恋@学園世界:2009/04/11(土) 08:49:28 ID:7YVaP1a2
「いいかジロー。今はまだ早いかも知れん。だが、いつかは本当に守りたいものをもて。それさえあれば力などいくらでも湧いてくるぞ。どり〜む」
少年…如月ジローにとって敬愛する師匠である“おじちゃん”はよく彼にそう言っていた。
その言葉が嘘でないことを、ジローは知っている。
おじちゃんはいつだってジローも大好きなおばちゃんとマユリちゃんを守るために戦っていること。
そして、それゆえに“ナイトメア”と呼ばれる最強の夢使いなのだということを。

だからこそ、少年は誓っていた。自分もいつかは何よりも大切な“本当に守りたいもの”を持つと…
そして、そのときは訪れた。この“学園世界”で…

―――輝明学園小等部 3年4組

「知ってるか?5年2組に“転校生”が来たらしいぜ」
放課後、級友から初めてその話を聞いたとき、ジローは思わず耳を疑った。
「転校生…?この“世界”で?」
思わず聞き返す。
「うん。なんか『ごかてーのじじょう』とかってやつで来たんだって。ものすごい可愛い女の子らしいぜ」
「転校生で、ご家庭の事情で、可愛い女の子か…」
ジローは思わず考え込む。この世界に危機が訪れている可能性について。
“学園まるごと転移”なら日常茶飯事だが、“1人で転校”してくるなんて事例はジローはこれまでにたった2例しか聞いたことが無かった。
そして、もしその“女の子”が他の“2例”と同様のケースだったならば…
(確か、有名な魔王の中にも5年生くらいの女の子がいたはずだ…)
文字通りの意味で世界の危機なのかも知れない。
高等部に魔王が2人も“転校”して来たのはつい最近の出来事。
なんだかそのうちの片方が絡んで大変なことになったとも聞いている。
だからこそ、ジローはその子のことが気になった。
「なあその子のこと…」
「ああ、いたいた如月くん。悪いんだけどちょっと職員室まで来てくれるかな?」
タイミング悪く教室に入ってきた教師に声をかけられ、ジローは顔をしかめる。
「おっとついてねえな。じゃあ俺帰るわ。今日はみんなで遊ぶ約束してんだ。じゃあな!」
長くなるなと思ったんだろう。級友はさっさと行ってしまう。
「…それで、なんの用だ?」
子供らしい不機嫌さを隠そうともせず、ジローは横柄な口調で教師に問いかける。
「アンタがわざわざ来たってことは、厄介事なんだろ?“まほうせんせい”」
中等部の英語教師にして、ナイトメアの友人の親戚、“ヴァンスタイン”一族の魔術師である教師に。
「う〜ん。厄介かどうかはまだ分からないな。とにかく、会ってほしい人がいるんだ」
「…今日来たっていう5年の“転校生”のことか?」
「あれ?知ってるの?君は確か3年生だと思ったけど」
「…なぁ〜に。この程度の情報、僕ならばたやすくつかめるさ。どりぃ〜む」
つい先ほどたまたま聞いたと言うことは伏せて、ジローは“ドリームキッド”としての顔で言い放った。

ドリームマン一族と呼ばれる一族がいる。
“魔術師”の名門ヴァンスタインと並ぶ“夢使い”の名門。
覚醒を果たしたドリームマン一族はみな“天才”と呼ばれるだけ才能を持った夢使いとなる。

如月ジローは、大人びた少年である。
ある意味においてそれは仕方がないのかも知れない。
彼が“夢使い”として覚醒したのは、小学生に上がるかどうかの頃。
覚醒してからは最高クラスの夢使いである“おじちゃん”に鍛えられ、ウィザードとしての腕を磨き、敬愛するおじちゃんに似せた彼のセンスに
ぴったりの衣装に身を包んだ“ドリームキッド”として、幾多の修羅場を乗り越えてきた。
既に並みの大人のウィザードを遙かに凌駕する実力を持っており、魔王や冥魔との戦いの経験もある。
若干8歳にしてそこいらのウィザードなど足元にも及ばぬ、ベテラン。それがジローと言う少年であった。

数分後。
「さて、要件を聞こうか。どりぃ〜む」
いつもの衣装に着替え、子供らしい高い声を精一杯低くしながら、ジローはまほうせんせいこと静=ヴァンスタインに問いかける。
「うん。さっきも言ったけど、会ってほしい人がいるんだ。職員室に来てくれないかな?ドリームキッド」
それに少しだけ苦笑いをしながら、静が職員室に向かって歩き出した。


481 名前:如月ジローの初恋@学園世界:2009/04/11(土) 08:52:23 ID:7YVaP1a2
―――輝明学園 職員室

軽くウェーブのかかった金髪を肩口で切り揃え、真っ赤なリボンをつけた、碧い眼の少女。
奇麗な子だなと言うのが、ジローの第一印象だった。
「やあ。待たせたかい?」
「いいえ」
静の問いに少女は笑って首を横に振る。
「そっか。じゃあいいや。紹介するよ。小等部のウィザードの…」
「ドリームキッド、如月ジローだ。よく、覚えておくがよい。どりぃ〜む」
精一杯の大人らしい声を出して威厳を出そうとする。
大抵の人はジローの衣装を見て、首をかしげ、それを聞いた時点でそのギャップに吹き出す。だが。
「ええ。ドリームキッドのジローね」
少女は不思議に思う事も吹き出しもせず微笑を浮かべ、すっと右手を差し出す。
「私はイーグルランドのツーソンから来た、ポーラよ。よろしくね。ジロー」
「え?うん、よろしく…」
いつもと違う反応に内心混乱しつつもジローは手を握り返す。
「それで、なんだって僕が呼ばれた?」
それを誤魔化すように静に問いかける。
「うん。君には彼女と組んで貰いたい」
「そうか。だが護衛任務なら正直ダグラスにでもやらせて…組む、だと?」
静の言葉にジローは眉をひそめる。
まるで目の前の少女が“戦える”かのようないい草に。
「その通り。彼女にはご家庭の事情から転入してもらったんだ。…“ウィザード生徒扱い”でね。
 それで、輝明学園から1人、彼女に色々と教えるウィザードを出すことになってね。
 適正と、なにより年齢から、君に頼もうってことになったんだ。まあ僕でも良かったんだけど、僕はもうサフィーちゃんのお守りでいっぱいいっぱいだしね」
輝明学園がまだファー・ジ・アースにあった頃、勝手に侵入してきて大問題を起こし、すったもんだのあげくに静が保護することになった異世界人の“吸血鬼”少女の名をあげ静が苦笑する。
あの後、保護と監視をかねて、その少女は輝明学園の中等部、静の受け持つクラスに編入し、勉強することになった。
そのため、当然今回の異変にも巻き込まれていた。
「ポーラはこう見えても向こうじゃ“世界の危機”を救ったこともあるらしいんだ。実力もある。
 ざっと一通り試験をしてもらった感じじゃあ、ナイトメアに匹敵するってさ」
渡された資料に目を通し、静が簡潔に説明する。
「なん…だと?…いや、そうか。僕はサポートに徹せよと言うことか。それで、クラスは何だ?」
その説明に驚き、それじゃあ自分はいらないのではないかと考えたところで、ジローは思いなおした。
『実力は大事だが、すぐれた連携はそれよりも遙かに大事だ。1人で出来ることなどたかが知れている。
 例え駆けだしでも連携が取れたウィザードが4人いれば、ベテランをたやすく打ち破る魔王すら凌駕することを忘れるな』
そんな、ナイトメアの言葉を思い出したのだ。
「クラスか…まあ、元々が異世界人だから僕らみたいなウィザードに完全に当てはまるわけじゃあないんだけどね…」
そう言うと静はちらとポーラの方を見る。
「君から説明してくれないか?ポーラ」
静に促され、ポーラは頷く。
「私は回復系以外のPSI…超能力が扱えるの。それとテレパシーと未来予知が少しだけ。
 私はいわゆる超能力者…ウィザードの人たちは“異能者”って呼んでるみたいね」
自らの能力を簡潔に説明する。
「さて、自己紹介も終わったところで、君に1つ頼みたいことがある」
早速とばかりに静がジローに言う。
「頼みたいこと?何だ?」
「なに、最初だしそう難しいことじゃない。彼女を“家”まで送り届けて欲しいんだ」
「ふっ…無茶を言う」
それができれば苦労はしないと言うように、ジローは笑う。
学園世界で“家”に帰るのは、クエスターがアスガルドを見つけだすのに等しい高難易度任務であることは学園世界の人間なら誰でも知っている。
「いいや。無茶じゃないさ。少なくとも、ポーラに関して言えばね」
だが、それに静は笑って首を振り、答える。
「どういう事だ?」
「なあに行けば分かるさ。じゃあ頼んだよ」
ジローの質問にはまともに答えようとせず、静はジローとポーラを送り出した。


482 名前:如月ジローの初恋@学園世界:2009/04/11(土) 08:56:16 ID:7YVaP1a2
―――学園世界B−369地区

学園世界特別居住区にほど近い場所に、その建物はあった。
「…なるほど。確かに学ぶところと言えば、そうなるのかな?」
制服のまま“子供たち”と遊ぶポーラを横目に、普通の服に着替えたジローはその建物を見上げる。
こじんまりとした、だが普通の家よりは大きな建物。庭には遊具が設けられ、幼い子供たちが無邪気に遊んでいる。
「―――ポーラスター幼稚園、か」
その新たに転移してきた“学園”であり、ポーラの“家”であると言う建物を。
「ねぇねぇ。お兄ちゃんお兄ちゃん遊ぼうよ!」
ポーラと同じく、外国人らしき子供たちが新しくやってきた“お兄ちゃん”に群がる。
「ああ、いいよ。じゃあ、何をして遊ぼうか?」
ジローとしてもこの少し年下の子供たちと遊ぶのはやぶさかではない。
そう考え、小学生、如月ジローの顔でにっかりと笑い、ジローは問いかける。
「う〜んとね…じゃあ、世界の危機ごっこ!」
どうやら異世界でも子供たちの遊びは一緒らしい。
「今日は僕がネスをやるね!」「じゃああたしはポーラお姉ちゃん!」「ジェフ役はボクに任せてもらおう」「え…じゃあ俺プー?」
子供たちはあっという間に配役を決めて行く。
「さて、僕は何の役なんだい?」
一通り決まったところで、ジローはネス役の子供に聞く。
「えーとね…スターマンやって!」
「スターマン?」
異世界の世界の危機のことなんて知るわけも無いジローが不思議そうな顔で聞く。
「え〜?スターマンを知らないのかよ。しょ〜がね〜な〜。とくべつにおしえてやるよ」
子供たちが顔を見合せたあと、一斉に話し出す。
「スターマンはね、悪いうちゅ〜じんなんだ」「ぎんがのころしやなの!」「ネスたちをじゃましたり、にんげんをさらったりするんだ」「グーギだかギーギっていうおやだまのちゅーじつなしもべなんだって」
口々に喋られて、混乱しながらも、とりあえず必要なことは理解する。
「そうか…つまりは悪い奴、悪役か。エミュレイターみたいな」
「えみゅれいたー?」
「いや、なんでもない。さ、やろうか」
普段はお姉ちゃんに押し付けている悪役を振られ、ジローは思った。
(次来る時はエミュレイターのお姉ちゃんも連れてこよう)
と。


483 名前:如月ジローの初恋@学園世界:2009/04/11(土) 08:57:44 ID:7YVaP1a2

「みんなと遊んでくれてありがとう。助かったわ」
数時間後、遊び疲れて眠ってしまったこどもたちをベッドに入れ、ポーラがジローをねぎらう。
「いいや、僕も楽しかったし、いいよ」
「そう?そう言ってくれると、うれしいかな」
そう言って微笑むポーラに、ジローの胸はどきんと高鳴る。
「そ、それにしても…みんなよく寝てるね…」
それを誤魔化すようにジローは子供たちの方を見る。
子供たちはすやすやと安らかな寝息を立てて眠っている。
「ええ。みんな…疲れてるのよ。それに…寂しいの」
「寂しい?」
ポーラの言う事に首をかしげたときだった。
「…ママ」
子供たちの1人が、ポツリと呟く。
「ママ…パパ…僕はここだよ。ここにいるよ…はやく…迎えにきて」
ぽろぽろと涙をこぼしだす。
「…ああ、そっか」
それを見て、ジローはポーラの言ったことを何となく理解した。
この学園世界に輝明学園ができた当初、幼稚舎や小等部の生徒たちも中等部や高等部の生徒と一緒に寮で暮らすこととなった。
既に一人前のウィザードとして行動し、高等部に顔見知りもいるジローにとってはどうと言うことは無かったが、突然家に帰れなくなったクラスメイトが随分と寂しがっていたことを覚えている。
小学校3年生でもそうなのだから、小学校に上がる前だったら、余計にそうなんだろうなとジローは思う。
「…ポーラ?」
立ち上がったポーラを、ジローは不思議そうに見る。
「…だいじょうぶ。泣かないで」
ポーラは泣いた子供の手をとり、静かに歌い出す。
「…Take a melody…Simple as can be…」
透き通るような、きれいな歌声。
聞いているだけでジローの頭の中に父親と母親のことが思い浮かんで、きゅうと胸が締め付けられる。
「…ママ」
その歌声を聞いて、子供は泣き止み、またすやすやと安らかな寝息を上げる。
「…Sing a melody of love Oh love....」
歌い終え、ポーラは静かに子供のそばを離れる。
「…その歌は?」
子供たちを起こさないよう、小さな声で、ジローはポーラに問いかける。
「…ギーグの歌」
それに少しだけ複雑な表情で、ポーラは答える。
「ギーグ?」
「そう。ギーグ…全てを壊すだけの怖いものになってしまったギーグが、忘れないように心の中でずっと歌い続けていた歌。
 優しくて、温かくて…とっても切ない歌。ギーグが他の全てを失っても忘れなかった、たった1つのものだから、私だけでも覚えていてあげたいと思ったの」
そう言って憂いを帯びた表情をしたポーラを見て。
ジローの胸はさっきとは違う感じできゅうと締め付けられた。


484 名前:如月ジローの初恋@学園世界:2009/04/11(土) 09:00:25 ID:7YVaP1a2
―――学園世界居住区

学園世界にも侵魔の脅威は訪れる。
侵魔。それはジローたち“ウィザード”にとって倒すべき相手。
そして今日もジローは戦う。少女と共に。
「PKファイヤー…Ω」
少女が呟くようにその言葉を口にした瞬間、辺りの侵魔が一斉に劫火に包まれる。
「ディストーションハウル!」
とどめとばかりにいつもの衣装を着たジローが虚属性の最高レベル魔装を起動し、辛うじて生き残った侵魔にとどめをさす。
月匣が、晴れる。発生から1ラウンド持たずに。
「…やっぱりすごいなポーラは」
月匣が晴れ、元の喧騒が戻ってきた学園内で、ジローが感嘆し、呟く。
ポーラのPSIの強さは今までの戦いで何度か見て、理解している。
そこいらの雑魚魔王の魔法を遙かに上回る極めて強力な力だと。
ジロー自身高レベルの魔装を好んで使うからこそ嫌ってほど理解できる。
ナイトメアに匹敵する実力。それは嘘でも何でもなく、真実だと。
「こうも力の差があると、嫌になるね。僕が役立たずじゃないかって気分になるから」
やれやれと言うように、ジローが自嘲する。
「ううん。そんなこと無いわ。ジローがいたから、全部倒せたのよ」
そんなジローの言葉にポーラは笑顔で首を横に振った。
「私は丈夫な方じゃないから、攻撃されると辛いの。それに私、回復系のPSIは全然使えないから、怪我をしても治せない。
 だから、ね。ジローが一緒にいてくれて本当に感謝しているの」
にっこりと無邪気な笑みを向けられ、ジローは顔を赤らめる。
「べ、別に…組んでるんだから仲間のフォローをするのは当然だ。どりぃ〜む」
赤くなった顔を見られないように、仮面を目深に被る。
「大丈夫ジロー?顔が赤いわ。熱でもあるの?」
だが、それが却って目立たせることになったのか、ポーラが心配して、言う。
「な、なんでもない!」
なんだかそれがくすぐったくて、ジローは後ろを向いてしまう。
「そう?なら良いけど…困ったことがあったらすぐに言ってね。私とジローはもう“お友達”なんだから」
またいつもの、天使のような微笑みを浮かべ、ポーラが優しく、言う。
「お友達…か」
それを聞き、ジローは複雑な表情を浮かべた。
(なんだろう?嬉しいのに、残念な気もする…)
嬉しさと寂しさが入り混じったような不思議な感情。それはジローが8年生きてきて初めて感じる感情だった。
「どうしたの?」
「…何でも無い。行こう、ポーラ。もうすぐ授業が始まる。どりぃ〜む」
ポーラにそんな風に感じていることがなんだか酷く恥ずかしいことに思えて、ジローはわざとぶっきらぼうに言ってジローはさっさと歩きだす。
「…?変なジロー?あ、待って」
その様子に首をかしげついていくポーラ。

そんな2人はまだ、気づいていなかった。
「…見ツケタ」
2人を見つめる、金色の影に。


485 名前:如月ジローの初恋@学園世界:2009/04/11(土) 09:04:20 ID:7YVaP1a2
―――学園世界特別居住区 通学路

放課後、ジローとポーラは連れ立って幼稚園へと向かっていた。
「どう?こっちの生活にはもう慣れた?」
帰る道すがら、ジローはポーラに問いかける。
「ええ。割とすぐになじめたわ」
ポーラが頷く。ポーラがこちらに来てからはや1週間。
「ジローが色々と手伝ってくれたおかげね。ありがとう、ジロー」
いつもの優しいまなざしで、ポーラはジローを見る。
この1週間、連れ立ってモンスターの類と戦ったり、忙しくなったポーラの代わりに子供たちの世話をしてくれる人を探したり
(輝明学園や光綾学園の生徒が手伝ってくれることになった)
子供たちと一緒に夜まで遊んだり、ジローは献身的と言ってもよいほどポーラのために行動していた。
「な、なぁ〜に。仲間のために行動するのは当然のことだ。どりぃ〜む」
なんだかその視線がくすぐったくてジローは目をそらし、仕事用の口調になってポーラに返事をする。
「…ふふ。そんなに硬くならなくてもいいのに。変なジロー」
それがおかしかったのか、ポーラが鈴のなるような声で笑う。
それを見て、ジローがまた不覚にもどきっとしてしまった。
「と、とにかく急ぐぞ。菖子だけに園児を任せておくのは、危険だ」
ジローが見つけてきた、先に幼稚園に向かったお世話役の少女…真面目だけどかなり運が悪く、肝心なところで大ポカをやらかす少女の名をあげ、ジローは幼稚園へと急ぐ。
「あ、待って」
それを慌ててポーラが追いかけた。

―――ポーラスター幼稚園

「ポーラお姉ちゃん!ジロー!たいへんだ!」「ジョニーがいないの!」「おきたらベッドが空だったんだ!」「お姉ちゃんたちは心配しなくていいからここにいてって!」
帰って早々、ポーラとジローに子供たちがかけより、口々にピンチを訴える。
「おひるねのとき、何故か園長先生もポーラのママもねむっちゃったんだ。それで起きたら、ジョニーがいなくなってた。
 今はポーラのパパとママ、サイカお姉ちゃんとエミュレイターのお姉ちゃんが友達と一緒に手分けして探してる」
園児の中でも頭がいい子が状況をまとめて2人に説明する。
「…ただいなくなったんなら分かるが、ポーラのパパとママが仲良く2人とも居眠りとはな…」
その説明に、ジローは嫌な気配を感じる。何か、悪意のようなものを。
「…とにかく、私達も手分けして探しましょう。みんなはここにいてちょうだい」
さっきからずっと考え込んでいたポーラが顔をあげ、園児たちとジローに言う。
「…待て。何か嫌な予感がする。1人では…」
「駄目よ!いい?すぐに見つける必要があるの。一緒では、時間がかかるわ」
ポーラが珍しく声を荒げ、ジローの提案を一蹴する。
「…ね。お願い。ジローは向こうを探して。私は、こっちを探すわ」
まるっきり正反対の方向をさし、ポーラがジローに言う。
「…分かった。はやまるなよ?ポーラ」
仕方ないと言った感じでジローは頷き、子供たちに見えないところでウィザードの衣装に着替え、走り出す。
「…それじゃあ。私も行ってくるわ。良い子にして待っててね」
園児たちに精一杯の笑顔で笑いかけ、ポーラは走り出す。
「…私がなんとかしないと。お願い。勇気をちょうだい…ネス」
目的の場所へ一直線に駆けながら呟いた言葉は、誰にも届かず、消えて行った。



486 名前:如月ジローの初恋@学園世界:2009/04/11(土) 09:07:21 ID:7YVaP1a2
―――学園世界G地区

学園世界に点在するダンジョンの1つの前でポーラは足を止める。
「…ここね」
その奥から漂ってくる気配に、ポーラは身を固くする。
「…勝てるのかしら。私、1人で…」
弱音が口をついて出てくる。1人だけで何とか出来る相手なのか…
ポーラがそんなことを考えていた、そのときだった。
「…勝てるさ。2人ならな。どりぃ〜む」
すぐ後ろから聞こえた、聞きなれた声にポーラは思わず振り返り、驚いて言う。
「ジロー!?どうしてここに!?」
「…仲間の…友達のつきたくもないウソくらい、簡単に見破れる。これでも僕はウィザードなのだからな。どりぃ〜む」
澄ました顔でジローはうそぶく。
「だ、駄目!ジローは帰って!テレパシーの気配で分かったの!相手は危険なPSIの使い手よ!多分ジローじゃ…」
「…実力は大事だが、すぐれた連携はそれよりも遙かに大事だ。1人で出来ることなどたかが知れている。
 例え駆けだしでも連携が取れたウィザードが4人いれば、ベテランをたやすく打ち破る魔王すら凌駕することを忘れるな」
必死になってジローを帰らせようとするポーラを諭すようにジローがその言葉を口にする。
「僕の、尊敬する師匠の言葉だ。そりゃあ僕はポーラほど強くない。だけど、足手まといにはならない。そう、約束する」
言いたいことを言い終え、ジローはまっすぐにポーラを見つめる。
「…分かったわ。よく聞いて。多分この奥にいるのは…」
ジローの目に宿る、強い意志の光を見て、ポーラがため息とともに説明を始めた。

―――ダンジョン内部

「キタカ…何ヤラ余計ナモノモ一緒ノヨウダガ」
その金色の男は2人を睥睨し、言う。
「…まさか、こちらに来ているとは思わなかったわ」
奥で眠っているジョニーが無事なのを確認しつつ、ポーラが目の前の男を睨みつける。
「アノブタニ頼ンダノダ。オマエタチヲ倒スタメト言ッタラ、快ク応ジテクレタゾ」
「そう…やはり彼は…」
その言葉に1人の少年を思い出し、ポーラが悲しげな顔をする。
「とにかく、そこをどくのだ。でなければ、お前は“悪夢”を見ることになるぞ。どりぃ〜む」
目の前の男を挑発するようにジローが言う。
「悪夢カ…ソレナラモウ、見タゾ」
そんなジローの言葉に耳を傾け、男は一笑に伏す。
「私ノ一族ハ人間ニ2度破レ、ホロンダ。イマヤ“スターマン”一族ハ私1人。ナレバコソ、ヤレネバナラナイ」
辺りの空気が一変する。
「一族ノ無念ヲハラス。マズハオマエカラダ…4人ノ子供ノ1人ヨ!」
そして2人の前に…“さいごのスターマン”が立ちはだかった!


487 名前:如月ジローの初恋@学園世界:2009/04/11(土) 09:18:00 ID:7YVaP1a2
『よく聞いて。恐らくPSIと魔法は通じないわ…私が合図するまで、待機して』
プラーナを開放してスピードを上げつつ、ジローはじっとポーラの行動を待つ。
すぅっと息を吸い込んだポーラが一気にその力を開放する!
「お願い当たって…PKサンダー…γ!」
ポーラの掛け声と共に空から雷が降り注ぐ。
落ちてくる雷は3発。1発目と2発目は見当違いの場所に落ちる。そして3発目。
「グッ…サイコシールドガ!?」
轟音と共に直撃した雷がスターマンのサイコシールドごと貫き、シールドを破壊してダメージを与える。
「今よ!ジロー!」
「任せろ!…ディストーションハウル!」
その隙を見逃さず、ジローがありったけの特殊能力とプラーナを詰め込んだ自らの最大の攻撃魔装を起動する。
「グォォォォ…コノ音ハァ!?」
魂すらも削り取ると言う魔の音にスターマンが悶え、がっくりと膝をつく。
『もしジローが攻撃して、それでも倒せなかったら…逃げて。あとは私が、なんとかするから』
「やったか!?」
ありったけの力を出し切り、肩で息をしながら、ジローは攻撃をやめる。だが。
「ちっ!ダメか!」
倒れずに怒りの目を向けてくるスターマンに舌打ちをする。
「ジロー、逃げて!ここは私が引き受けるわ!」
「断る!」
ポーラの先ほどの忠告を一刀で切り捨て、スターマンを凝視する。
(僕にはまだ、できることがある!)
決意と共に。
「ヨクモ…ヤッテクレタナァー!」
怒りで逆上したスターマンが立ち上がってPSIを発動する。
「マトメテ…キエロ…PKスターストームΩァァァァァァ!」
ダンジョン内の空間が歪む。漆黒の空間が広がり、そこから“星”が無数に落ちてくる。
小型隕石の大雨。その威力は…
(恐らく、僕もポーラも耐えきれない…だったら!)
一瞬で判断しジローは彼がやれるであろうことをする。
ジローは両手を広げポーラを堂々と仁王立ちをする。
「ジロー!?ダメ!やめて!」
ポーラはジローから立ち上るプラーナを察し、何をしようとしているのかを悟ったポーラが必死の叫びをあげる。
「…大丈夫。一発だけなら…君には届かない…いや、届かせない!」
悲壮な決意を込めて言葉を絞り出す。
「あとは頼んだよ…ポーラ」
そして、ジローは残ったプラーナ全てを開放して、防御魔法を使用した。
我が身を犠牲にして…ポーラを守るために。


488 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 09:19:44 ID:f7UC4V6v
史炎!

489 名前:如月ジローの初恋@学園世界:2009/04/11(土) 09:19:45 ID:7YVaP1a2
「馬鹿!馬鹿ジロー!なんで…こんなこと…」
ポーラのPSIにより絶対零度の氷柱に閉じ込められ、凍りついたスターマンの前で、ポーラは倒れたジローを抱き、呼びかける。
「ふっ…大丈夫だ。これくらいあの冥魔の攻撃に比べれば…どうということは…ない」
ジローの本来の体力を軽く数倍上回る、“致命的なダメージ”を受けてなお、ジローは不敵に笑う。
(もっとも今回は、冴絵はいないがな…)
薄々は感じ取っていた。自分はまず間違いなく、ここで死ぬ。
「どうして…本当なら、私が守らなきゃならないのに…」
ぽろぽろと泣きじゃくるポーラを見て、ジローの心に生まれるのは、悲しみと…“満足感”。
「泣くな…ウィザードには…これは…ありえる…結末…なんだ…」
ナイトメアは言っていた。本当に守りたいものを持て、と。
そして自分は見つけることができた。そして、守れた。だから。
「…悪くない…結…ま…つ…さ」
声もとぎれとぎれとなり、息も弱くなっていく。
「おやすみ…ぽー…ら…」
そしてジローは動かなくなった。
「お願い。死んじゃいやよ!ジロー!!!!」
ジローを抱きかかえたポーラの青い瞳から、涙がぽろぽろと零れる。
ポーラの心が、荒れ狂う。悲しみと寂しさ。そして…後悔。
「なんで私には…回復のPSIが使えないの!?」
はがゆい。回復のPSIが使えれば…目の前の少年を助けることができるのに。
「どうして…どうして…」
徐々に体温を失っていくジローを少しでも冷やすまいと、ポーラはぎゅっとジローの身体を抱きしめる。
涙が止まらない。大切な人がいなくなる悲しみに、押しつぶされそうだ。
そんな心境だったからこそ、ポーラはそのときまで気づかなかった。
「…泣かないで。ポーラ」
ポーラの傍らに立つ、1人の少年に。

――リングγ
声が、聞こえた。
(…だれの、こえ?)
死を迎える直前の悪夢にまどろんでいたジローはその声に疑問を覚えた。
優しげで、強い…少年の声。その声の主を、ジローは知らない。
だが、その声がもたらしたものは、強力だった。
「う、うわあああああああああああああああ!?」
膨大なプラーナ…文字通りの意味で“死人だって生き返る”位の力が流れ込んできたことにジローは半ば恐怖すら覚える。
意識が急激に覚醒する。まどろんでいた悪夢が壊れ、現実に、引き戻される。
「ここは!?」
がばっと立ち上がり、辺りを見渡す。
「…あれ?」
てっきりどっかの病室にでもいるのかと思ったが、それは違った。
ここは、あのダンジョンの中だ。
「気がついたのね!良かった…」
今度は安心して、ポーラは涙を流す。
「僕は一体…」
状況が理解できず、ポーラに尋ねようとした、その時だった。
「…ウォノレェェェェェ!!!!!!!!!!!!」
凍りついた氷柱が割れ、スターマンが飛び出す。
「クソ!あいつまだ…!」
それを見て死の淵から生還したことを悟ったジローが憤り、攻撃態勢を取ろうとする。だが。
「ううん。大丈夫よ」
それは、ポーラに止められた。
「どうして!?あいつまだ…」
「大丈夫なの…見て」
抗議しようとするジローに対して首を振り、ポーラはスターマンの方を指さす。
「ネスが、来てくれたもの」
頬を赤らめて、ちょっぴり誇らしげに、ポーラはその名前を口にした。


490 名前:如月ジローの初恋@学園世界:2009/04/11(土) 09:21:22 ID:7YVaP1a2
「…ネス?」
どこかで聞いたような名に首をかしげつつも、ジローはポーラの指さす方向を見て…理解した。
「…ああ、そうか」
真っ赤なベースボールキャップにバッド、青と黄のストライプシャツと半ズボン。
それは、一見すればどこにでもいる普通の少年。だけど。
「あいつ…すごい力の持ち主だ」
膨大なプラーナを持っていることをジローはすぐに見抜く。
ナイトメア並み…いやナイトメアすら上回る、とんでもない力。まさに“勇者”と呼ぶに相応しい力だった。
「グゥ!?オマエハ!?」
スターマンが目に見えて狼狽する。過去の戦いを思い出して。
8つのパワースポットを巡り、自らの悪魔に打ち勝った、4人の子供のリーダー。
スターマンたちが束になっても敵わなかった…最強の少年。
「…こっちに来てすぐ、ポーラの声が聞こえた…だから、来たんだ」
普段は温厚な少年は、怒っていた。誰よりも大切な“友達”を泣かせた目の前の敵に。
「よくもポーラを泣かせたな…許さない」
だからこそ、ネスは力をこめる。一発で、終わらせるために。
「…PKキアイΩァァァァ!」
そして、そのPSIは、ネスの思惑どおり、スターマンを一撃でかき消した。

―――ポーラスター幼稚園

「やあ、遊びに来たよ」
あれから、ポーラは再び転校していった。
少年…ネスの通っている“オネット小学校”が、こちらへと来たから。
「まあ、ジロー!いらっしゃい!」
遊びに来たジローをポーラは笑いながら“2人で”出迎える。
「やあ、いらっしゃい」
ちょっぴり無口な少年…ネスは照れながら、それでも笑顔でジローを出迎える。
「あ、ジローだ!」「わーい!遊んで遊んで!」「きょうはショーコもサイカもいそがしくてこれないみたいなのですよ」
「ジローとネスとポーラお姉ちゃんがいれば、じゅ〜ぶんさ!」
口々にはしゃぎ、駆けよる子供たちに笑顔を向けながら、ジローはちらっと2人の方を見る。
「心配してたんだ。ツーソンでポーラと一緒にポーラスター幼稚園が消えたって聞いて。ジェフとプーも気にしてた」
「うん…ごめんね。ネスも帰れなくなったのにこんなこと言うのはあれだけど…ちょっとだけ、嬉しいかな。
 ネスと一緒に、勉強できるから」
柔らかな雰囲気で話す2人。ごく自然に、その手はつながれている。
「…どうしたんだ、ジロー?」
それを見るたび、ジローの胸はちょっぴり痛む。原因は分からないけど。
「…いや、何でも無い!何して遊ぶ?」
「んーと、じゃあね、世界の危機ごっこ!僕がひ〜らぎやるから、お兄ちゃんはナイトメアの役ね!」
「分かった!任せとけ!」

いつか、少年は気づくのだろう。その感情の正体に。いつか、どこか、誰か別の人と出会ったときに。
何年かして、懐かしく思い出すのかもしれない。これが彼のはじめての“恋”であり、“失恋”だったってことに。



以上です。ふと書きながら、思った。“あのブタ”は学園の敵ぽいなと。設定とか、性格とか、能力とかでw

491 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 10:32:13 ID:9d+IE/oL
>490
乙。

何を言ってるんだ、あの豚さんは素晴らしいPC2じゃないか!

【でも、どっちの豚か良くわかってない。多分どっちも違う】

492 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 12:22:26 ID:sMZViBbA
>490
投下乙です。


それはそうと“あのブタ”がフルボッコにされ、逃げることも出来ずに滅ばされていく
展開を見たいのは俺ぐらいだろうなぁ……

493 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 18:18:33 ID:VVOAx+Ds
>>490
GJ、乙です〜。
…ネスさんマジパネェ。
 
大切なものを守るために自らの身を投げ出すジローにぐっときたり…
でももう一度その場面を読み直したら
ジローのHPドラムがすごい勢いでカラカラカラカラーッ!と減少していく様を幻視してしまいましたw
ごめんよジロー。

494 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 20:05:03 ID:6QcD0rb8
学園世界にいるLv.5能力者にLv.4チューナーをチューニングして
ハイパーサイコガンナー召喚とか思いついた。

DSの遊戯王の新作プレイしてたら能力者たちが『サイキック族』に見えてきてさ。

495 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 20:39:53 ID:5PUWYNGQ
能力者でサイキックっつーと、学園都市か?
あそこのレベル5っつーと7人しかいない超レアなんだが……

まぁ、書きたいなら書けば?

496 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 21:41:53 ID:7YVaP1a2
>>495
そういやあLv5サイキックとLv7エスパーはどっちのが強いんだろうね?

497 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/11(土) 21:53:25 ID:5PUWYNGQ
>>496
どの作品の話してるんだ? そしてナイトウィザードはどう関係してくるんだ?

498 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 02:05:06 ID:ty4zyTWE
突如頭に浮かんだんだが小ネタOK?

499 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 02:14:30 ID:S37XJQVe
どんとこいっ!(にゃふぅっぽく)

500 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 02:19:04 ID:ty4zyTWE
では2レス程度の小ネタをひとつ。

501 名前:第一回緊急アンケート@学園世界:2009/04/12(日) 02:19:55 ID:ty4zyTWE
【第一問】
 あなたの今一番ほしいものは何ですか?

※回答者名は個人情報保護によりイニシャルになっております。











S・Sさん(女性)の答え
『知識』

教師のコメント
そうですね、学生の本分は勉強です。
また、このようなことが起こることはないと思われますので、
他の学校の先生に教わるのもいいでしょう。


502 名前:第一回緊急アンケート@学園世界:2009/04/12(日) 02:21:53 ID:ty4zyTWE

K・Bさん(男性)の答え
『単位』

教師のコメント
授業に出てください。


T・Kさん(男性)の答え
『人並みの幸運』

教師のコメント
涙が出るのは何故でしょう。


K・Sさん(女性)の答え
『お姉さまとの二人っきりの時間』

教師のコメント
コメントは控えさせていただきます。


M・Kさん(女性)の答え
『お姉さまとの二人っきりの時間』

教師のコメント
まさかもう一人いるとは。


K・Aさん(女性)の答え
『時間』

教師のコメント
なぜあなたが答えているのでしょう。
とりあえず仕事に戻ってください。


503 名前:第一回緊急アンケート@学園世界:2009/04/12(日) 02:25:04 ID:ty4zyTWE
以上です。

第一問てあるけど続きは未定。
てかこんな小ネタでもOKだったんだろうか?

ちなみに登場人物は
教師       バカとテストと召喚獣
神条紫杏     パワポケ11裏
カッツ・バルゲル アリアンロッド・リプレイ・ハートフル
上条当麻     とある魔術の禁書目録
白井黒子     とある魔術の禁書目録
恋町麻衣子    狂乱家族日記
赤羽くれは    ナイトウィザード
です。

504 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 02:25:44 ID:S37XJQVe
……正直なところ、上条さんと白井さんしかわからない俺はやっぱりダメな子

505 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 02:32:32 ID:Ah63WT17
誰一人わからなかった俺はアホの子。

506 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 07:19:52 ID:xFeORmEl
カッツしかわからなかった俺は……

507 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 08:54:29 ID:S37XJQVe
くれはの忙しさって、守護者代行やってるかそうでないかでだいぶ変わるよな

実際は守護者代行やってないと考える方が無難だけど。
この狭界、入ったら抜けられないんだろ?
世界の守護者がそんなとこ行くことが許されるとは思えん。また反感買いまくることうけあいだ。

508 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 09:13:04 ID:obylXeki
>507
この世界の中全てが写し身ということにすれば矛盾が無くなるね
本物は別にいて普通に生活しているが、中にいる人は自分たちが偽者とすら気がついてない
そんな感じの設定にすれば帰る場所も無いのに帰ろうとしている滑稽さが出ていい感じ

509 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 09:22:08 ID:bh6Esu1k
>>508

そこら辺はまだ確定情報にしてほしくないな

510 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 09:24:03 ID:v++jBazz
>>507

「理事長代理。本日の校内業務。8時半より全校集会が開かれます。会の中でスピーチを5分間お願いします」
「理事長代理。極上生徒会より報告書が来ています。新たに生徒会則を追加したとのことなのでご確認を。」
「理事長代理。極上生徒会執行部より柊特別執行委員の行った31件の調停の報告書が回ってきています。目を通しておいてください」
「理事長代理。本日は13時より万色学園にて学園長会議が開かれます。輝明学園としての意見をまとめたレポートを作成しました。目を通しておいてください」
「理事長代理。極上生徒会放送部から、インタビューの申込みが入っています。日程調整の結果、急ですが本日の16時より1時間お願いしたいのですが、よろしいですか?」
「理事長代理。校長より連絡。輝明学園“特別ウィザード生徒”学生証、新たに3枚発行したいとのことです。許可のサインをお願いします」
「理事長代理。ロンギヌスのコイズミ守護者代行代理よりノーチェ殿経由で相談書が回ってきています。ファー・ジ・アースにて世界の危機が発生したので、知恵をお借りしたいとのことです」
「理事長代理。本日は麻帆良学園にて、近衛様との会食の予定が19時より入っています。正装にてご出席ください」
「た、大変です!学園内ダンジョンにて魔王エリィ=コルドンらしき人物の目撃を確認したとのこと!すぐに対策会議を!」

「は、はわ〜!?」

511 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 09:26:01 ID:Ah63WT17
>>510
個人的にはコレがいいw
わたわたしてるくれはかわいいよくれはwwww

512 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 09:50:40 ID:S37XJQVe
>>510
俺も支持w
つか、その方がずっと面白いと思ったり

513 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 13:59:17 ID:rzYz2ftp
>>510
この忙しさは確かに死ねるw

514 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 16:34:09 ID:4x1/kEp5
>>508

まさか俺と同じネタ考えてる人がいるとは思ってもみなかったぜw

ラスボスに帰る場所すらないのにお前達は何処に帰るのだ?とか言われて絶望感たっぷりの中
それでも楽しくも騒がしい、学園世界のみんなと紡いだ思い出は決して偽物なんかじゃない!と立ち上がり希望を信じて戦う。
結構ナイトウィザードっぽくて良いと思ったが、確かに>>509の言う通り確定にしない方がいいんだろうな

今はどっちかといえば学園世界でのドタバタやイベント、小さな事件とかがメインで学園世界存続の危機とか核心はネタにしない方がいいとか決めた方がよさそうかな?

515 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 16:58:05 ID:nr9LH9Ph
>508を読んで、某ゲームの某キャンペーンシナリオ集を思い出したが
これ以上言うとどう見てもネタバレなんだよなあ。

516 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 17:43:27 ID:v++jBazz
>514
個人的にはその辺書いてもいいと思うよ。設定を拾うかどうかは作者次第ってのは明言されてるわけだし、エンディングが複数あるのも、それはそれで。
ま、ノリは○○さんの、○○エンド的な感じかな。世界の最後的なネタは定番だからね。

517 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 18:20:37 ID:/Y2fH/WJ
同じキャンペーンセッティングでも
エンディングが卓ごとに異なるなんてよくあることですよ

518 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 18:24:29 ID:ZolBota9
>>508
.hack//G.U. Vol2の最初ごろ思い出した。

>>510
うん、違和感無いな。
つか脳内で普通にフルボイス再生されるんだが。

519 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 18:25:19 ID:0e9NF67e
>>510
何故かアンゼロットが偉大に思えてきた

520 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 20:28:41 ID:a3mFw7Vb
でも>>510を見たあとにこんな光景を幻視した

アンゼロット 「さあ、柊さんくれはさんエリスさん翠さん、ついさっきロンギヌス・コジマメに買いに行かせたこのセイクリッド・ドラグーンで遊びますわよ」
コイズミ 「GMは不肖、このロンギヌス・コイズミが勤めさせていただきます」
柊蓮司 「ちょっと待てぇっ!おまえ守護者の仕事はどうしたっ!?出張は!?というかそもそも他社の作品じゃねえかソレ!!」
アンゼロット 「いいんですー。たまにはいきぬきしないとすとれすがたまるんですー。というかむこうのれんちゅういうこときかないしー」
柊蓮司 「愚痴かよ!というかそういうこと言っちゃダメだろうおい!」
くれは 「はわ〜…」
エリス 「あ、お茶入れてきますね?」
翠 (あたしの名前が一番最後に呼ばれたのは特に意味は無いよね…?)

521 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 21:09:29 ID:a3mFw7Vb
さらに幻視してみた

くれは 「はわ、そういえばあかりんは?こういうときは真っ先に呼びそうなのに」
アンゼ 「灯さんは本日命さんとデートだそうですので」
エリス 「ああ、なるほどー。それは邪魔しちゃいけませんね」
アンゼ 「一応『万が一があるやもしれないので所在は明らかにしておいてくださいね』と伝えたら『なら今日は部屋でのんびりしてる』という返事が来ましたので……」
柊蓮司 「あー、あの二人も忙しいからなぁ」
アンゼ 「ですので、こちらに灯さんの部屋に仕掛けた監視カメラ&盗聴器のモニタが」
柊蓮司 「おいっ!?」
アンゼ 「ではすいっちおーん、ぽちっとな」
柊蓮司 「突っ込み入れる隙なし!?って、いやちょまておま…え…」
くれは 「……(赤)」
エリス 「……(赤)」
翠 「……(赤)」
柊蓮司 「……けせ」
アンゼ 「はい」
コイズミ 「で、でははじめましょうか、セイクリッド・ドラグーン」
アンゼ 「いや驚きましたわね。まさか地下スレ的なナニが見れようとh……」
柊蓮司 「いいからお前ちょっと黙れよっ!?」

どっとはらい

522 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 23:42:22 ID:S37XJQVe
で、どこらへんがクロスオーバーなん?
違う作品絡ませてるからクロス、とか寝ぼけた話はなしな?

523 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 23:01:54 ID:FF41wuBS
>>522
その発言の趣旨には賛同するが、そうトゲのある言い方せんでも・・・・・


>>521
同刻 第三世界にて

影姫「ロンギヌスよ。お前たちにひとつ尋ねるが・・・・・・・・・もっとも強い絆とは何だ?」
ロンギヌス「決まっている! それは、“信頼”だっ!」
影姫「フンッ。虫唾が走るな・・・・・・・・」
人造天使「はっはぁッ! 全くだッ! 絆など無いッ! そうだろう、影姫よ?」

ズシャッッッ!

ロンギヌス「なっっ?!」
影姫「残念だよ、人造天使。お前がそんな考えだったとはな・・・・・・・・・・いいか、ロンギヌス。最も強い絆とは、“隷属”だ」
ロンギヌス「なんだとっ?!」
影姫「我が下僕たちを見よ。奴等が私を裏切る事は無い。何故だか分かるか? 私を畏れているからだ」
ロンギヌス「あっ、それは分かります。神姫とはアンゼロット様の量産型みたいなものなわけですね」

影姫「・・・・・・・・・・・フッ、今から貴様に、本物の絆と言うものを見せてやる。来い、下僕A!」
下僕A「ハハァッ!」
影姫「光栄だろう、下僕A? 私の所有物であるお前は、私の手によって冥界へと赴くのだからな」
下僕A「も、勿論ですッ!」

ズバァッッッ!

ロンギヌス「な・・・・・・・なんという・・・ことを・・・・・・・・・」
影姫「どうだ、ロンギヌス! これが“絆”だッ! 貴様は〈真昼の月〉の為に此処まで出来るのか? かかれ、我が下僕たちよッ!」
下僕たち「「「「「「ウラーッッッ!!」」」」」」
ロンギヌス「「「うわぁぁぁぁぁっぁぁぁ、だっ、だめっだッぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」



ロスト・キャンパス読むたびに、アンゼの実家ってこんな世界なのかな?って思うんだ。

524 名前:陰の休日@学園世界:2009/04/13(月) 23:10:00 ID:sbsIiih3
第3話までのインターミッションを書いていたら長くなりそうなので前後篇にすることにしました。
前編を30分より投下します。

525 名前:陰の休日@学園世界:2009/04/13(月) 23:31:19 ID:sbsIiih3
休日。
学園が転移して出来たこの世界に、休日出勤などと言うサラリーマン的なものは存在しない(一部教師除く)
毎週1度、所により2度は訪れる休日。学園世界において、その過ごし方は様々である。

購買で依頼を受けたり、自主的にダンジョンに向かったりして“冒険”に明け暮れるもの。
“研究者の楽園”ザールブルグアカデミーで学業を忘れてひたすら研究に勤しみ、議論を戦わせるもの。
自らの学園で、次の“学園対抗競技大会”に向けて練習や部活動に勤しむもの。
居住区で、出会った異世界の同好の士たちと様々な“同好会活動”を行うもの。
学園海や学園都市で“アルバイト”に精を出すもの。

そして、“人造人間:姫宮空”が選んだ休日の過ごし方は…

―――輝明学園 桜花寮

「で、デート?」
顔を真っ赤にして、人造人間の少女、姫宮空は問い返した。
「そう。デート。恋人同士なら、普通のこと」
空の持ってきたクッキーを高速で処理しながらそれに答え、こくりと頷くのは人造人間の少女、鈴鹿葉月。
「こ、恋人じゃないよ!…そりゃあ私は一狼君のこと大好きだけど、私は一狼君の所有物だしそれに一方的に片思いしているだけで…」
空は反射的に否定したあと、俯いてもごもごと言い訳をする。
そんな、真っ赤な顔で俯いた空を見て、最後の一枚を口に放り込んだ葉月は首をかしげ、言う。
「なら、諦めて身を引く?幸い今の斎堂一狼ならば相手には困らない。屋上の少女と「それはダメ〜!」
思わず反射的に空は大声を上げる。脳裏に浮かんだのは“屋上の少女”と一狼が互いに見つめ合うラブシーン。
正直、かなり似合いの2人っぽかったことが余計に空の頭を混乱させ、空の頭脳をオーバーヒートさせる。
「よろしい。ならばデートだ」
ぷすぷすとまた知恵熱でぶっ倒れそうな空を見てどこぞの少佐のようなセリフを言いながら葉月は立ち上がり、
備え付けのブックラックから1冊の薄い雑誌を持ってきて、パラパラとめくっていく。
「…あった。今週のごくつぅ24ページ。“イヴ先生の恋のお悩みSOS”コーナー。T学院のR・F・D・L・Vさんのお悩み相談」
正直イニシャルにする意味無いんじゃないかってくらい長いイニシャルな匿名の相談のページを開き、空に見せる。



うちのばかい…彼が相手をしてくれません。
最近…学園世界に来る前から騎士に任命されたり騎士隊の副隊長になったり姫様の護衛をしたり騎士隊の訓練で忙しいのは分ります。
学園世界に来てからは今度は執行部の仕事だとか言ってどっか別の学校に行ったりしてるし。
けど、いくらなんでも私をほっときすぎだと思います。
それに最近やたらもててるような気がします。うちの学院の生徒とか乳メイドとか、乳エルフとか、ガキんちょメイジとか、姫様とか。
そろそろ誰がご主人様なのかとか一番なのかとか、め、めめめメロメロなのかとかきっちり分からせないといけないと思うんですが、どうすればいいですか?



これはまたずいぶんなツンデレさんからのご相談ね。好きなのに素直に言えないって気持ち、ビンビン伝わって来たわ。
ただ…男の子の方がちょっぴり問題かも。
うちの学校にもいるけど、女の子を意識していないのにモテる男の子って、実はかなり怖いのよ〜。
本人は自覚なしに女の子に優しくするから、女の子の方がどんどん“ハマって”いくのに本人は自覚が無いから気付かない。
他の子にも平気で優しくするからそう言う女の子が次々と増えて行く。
大抵はそういう男の子って真面目で奥手だから、本当に好きな子がいてもなかなか自分から動くなんてこともしてくれない。
自然と女の子同士で牽制しあう泥沼の膠着状態に…なんてな感じにね。

じゃあ、どうすればいいか。簡単よ。テストに出るからちゃんと覚えててね。
いい?向こうから動いてくれないなら、自分から動くのよ。
誰にも邪魔されない場所ではっきりと“好き”って言って、相手からも“好き”だって言わせるの。
そうなったら、もう完全勝利は確定ね。なんでかって?
こういう男の子ってね、鈍いだけに、一度“好き”だって思ったらあとは一直線。
他の女の子たちにも今までと変わらず優しくするけど、一番の“恋人”としての顔はあなたにしか見せないわ。
…まあ、たま〜に本当は他の子が好きだって本人が気づいて残念なことになるけど、それならそれで諦めもつくしね。



526 名前:陰の休日@学園世界:2009/04/13(月) 23:33:46 ID:sbsIiih3
「は、葉月ちゃんこれって…」
「状況を整理すると、斎堂一狼の現状はこれに近いと思う」
モテモテ。本人に自覚なし。そして何考えてるか分からない。そんな相手なら。
「すなわち、今必要なのは2人きりで邪魔されない環境。すなわちデート」
「そ、そうなのかな…?」
「そう」
確信を込めて頷く。
「で、でも…デートって…どうすればいいの?」
「知らない?」
「う、うん…」
こくりと空が頷く。
姫宮空は元々が特殊な潜入ミッション用に製造された人造人間であるだけに、高校生らしい、学生同士の軽いつきあい方は“刷り込まれて”いる。
だが、本来のミッションでは必要ないであろうもの…“親友や恋人”との付き合い方は空にとってはまったくの未知の領域だった。
もちろん一狼とのここ数か月の学園生活でその辺もある程度は学んでは来ている。来ているのだが。
「デートって、1回しかしたこと無いから…」
恋人同士のデートと言えるようなものは、クリスマスにアキバランドに行ったっきり。
あの時は一狼は任務で疲れていたのか魂が抜けたような反応でラブラブとはいかなかった。
その後はスクールメイズに2人で潜ることもあったが、あそこでは侵魔や罠にてんてこ舞いで好きとか嫌いとか言っている暇は無かった。
「ねえ?葉月ちゃんは知ってる?で、デートの仕方とか」
「…知らない」
「…だよね」
ふるふると横に首を振る葉月を見て、やっぱりと言うように空は溜息をつく。
戦闘に関する技術と知識は2人とも豊富だし、オクタヘドロン製の葉月はアイテムの効能と料理にやたら詳しいが、肝心の一般常識は2人揃ってペケ。
戦闘用に製造された人造人間の悲哀だった。
「…ああ、そう言えばぴったりのものを貰っていた」
「え?ほんと?」
「デート初心者必見の書。アイテム価値は100V.程度。だから、空に上げてしまっても問題ない」
そう言って再びブックラックをがさごそと漁りメモ紙の束を取り出す。
「それは?」
「ナツミ・キャメロン著『斎香センパイのはじめてのラブラブデート計画なのさ!』使い終わっていらなくなったと言うので、貰った」
そう言いながら空にその紙束を渡し。
「…グッドラック」
ビッと親指を上げて見せた。

527 名前:陰の休日@学園世界:2009/04/13(月) 23:39:02 ID:sbsIiih3
―――輝明学園 廊下

「健康診断の結果は、肉体的にも魔法的にも全員問題なし。後遺症等の心配も無いみたい」
「そうですか。ありがとうございます」
魔法も使えるウィザードの保険医が言うなら本当に問題は無いのだろう。
そう判断し、一狼は保険医に礼を言って退出する。
(荻原様が“狐”事件の被害者を全員招集し、健康診断せよって仰ったときは何かあるのかと思ったけど…)
外を見る。健康診断を終え、和気あいあいと言った雰囲気で喋りながら帰って行く、4人の少女を。
(…もしかしてこれが狙いだったのかな?)
その中の1人、事件の被害者兼“加害者”の少女も他の3人に馴染んでいる様子を見て思う。
(そうなんだろうな。荻原様の慧眼にはいつも感服させられる)
少女たちの心のケアまで考えられる一狼の直属の上司への信頼と尊敬を、一狼はさらに深めた。
「あ…いたいた。一狼君」
(さてと…僕はどうしようかな)
今日は土曜日。輝明学園は週休2日制だから授業は無い。
「ちょっとだけ、いいかな?」
(一旦茶室へ行くか?タバサのことも何か分かったかも知れないし)
一狼が“狐”事件で戦っていた頃と同時期、別件にて“行方不明”となってはや3日。彼女の安否は未だ不明だ。
「…あ、ちょっと待ってよ」
(ノーチェに依頼してみようかな…なんか“カゲモリ”のことも気付かれてるみたいだし)
こと探し物に関しては学園世界でも屈指の能力の持ち主である吸血鬼であり、同じ絶滅社の傭兵であるウィザードに依頼することを検討する。
「ねえ、ちょっとだけでいいから、話を聞いて」
(でも、あっちは執行部付きだからな…あんまり関わりあうのは、危険か?でもこっちの手札で探すのも限界がある)
“執行部”と“カゲモリ”は互いに不可侵。
“カゲモリ”の秘密を守るためには、必要以上に学園世界の表側と関わりあうのは、避けたいところだった。
「……」すぅ…
(まあノーチェも秘密をペラペラ喋ったりはしないと思うけど、結構ドジだから、うっかりポロリと)
「一狼君ッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「のわぁ!?」
耳元で大声で呼ばれ、一狼は思わずビクッとする。
「ああ、びっくりした」
跳ね上がった心臓を抑え、一狼は声のした方を向く。
「…えっと、何か用?姫宮」
考え事をすると周りが見えなくなる悪い癖は治せねばなんて考えながら、一狼は空と向き合った。

528 名前:陰の休日@学園世界:2009/04/13(月) 23:41:33 ID:sbsIiih3
(うっ…どう言おう…)
いざ一狼と向き合って、空は動揺する。
(え、えっとまずは、まずは…)
昨日必死で考えた『デートの誘い方』を思い出しながら、空は喋り出す。
「えっと…その…一狼君、明日、ヒマかな?」
「え?いや…ちょっと任務で忙しい、かも」
「えっ!?」
しょっぱなから躓き、空は動揺する。
(ど、どうしよう!?暇じゃない場合ってどうすればいいの!?)
「そ、そっか…忙しいんだね!?分かった、じゃあ仕方ないよね…ってそれじゃあダメなの!」
こんがらがった頭とは裏腹に口から漏れた適当な言葉に、空は反射的に突っ込みをいれる。
「…え〜と。もしかして、何か頼みたいこととか?」
「え、あ、うん!そう!そうなの!」
一狼の思わぬ助け船に全力で飛び乗り、ブンブンと空は首を縦に振る。
「分かった。言ってみて。姫宮の頼みごとなら、何でも相談に乗るから」
「それはつまり『OK』ってことで良いんだよね!?」
「え〜、あ〜、うん。他ならぬ姫宮の頼みごとだし。で、どんな頼み?」
「よかった〜。断られたらどうしようかと…え?あ、そういえばまだ言って無かったよね。ごめん」
一狼に尋ねられ、空はそう言えば一狼に何にも言ってないことに気づく。

(よ、よし…言わなきゃ!)
堅く決意して、空はギュッと拳を握りしめる。
顔が真っ赤になる。頭がぐるぐるする。それでも、言わなきゃ、先に進めない。
(ふ、普通に誘うのは平気なのに〜)
デートだと意識したとたん、いきなり口が重くなった。
知らなかった。恋人的な付き合いって大変だ。
「一狼君…」
うるんだ瞳で一狼を見る。そんな空の様子にあてられたのか、一狼も赤くなっている。
そして、空はついにその言葉を口にした。
「明日、デートしよ?」
辺りに沈黙が訪れる。遠くからグラウンドで部活動に勤しむ生徒たちの声が聞こえるほかは、本当に静かだ。

「で、でーと?」
硬直が解けた一狼がまるで初めて聞いた言葉であるかのように、聞き返す。
「うん、デート」
「でーとって言うとあの仲の良い男女が2人で行うという?」
「うん。カップルでお出かけするの」
「えっと、誰が?」
「一狼君と私が。デートのプランはちゃんと考えたんだ。麻帆良学園都市に行こうと思うんだけど、いいかな?」
「そっかあ…なるほど」
「うん。それじゃあ、明日、10時に男子寮に行くから」
「分かった。準備しておくよ」
「それじゃあ、玄関に来てね」
「うん…って」

529 名前:陰の休日@学園世界:2009/04/13(月) 23:44:47 ID:sbsIiih3
「ええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
ようやく事態を飲みこんだ一狼が大きな声を上げる。
普通ならばものすごい勢いで注目を浴びるところだが、幸い今日は土曜日。他の生徒は廊下にはいない。
「ど、どうしたの!?」
いきなり素っ頓狂な声を上げた一狼に驚いて、空が声をあげる。
「デートって、それはまずいだろう!?」
「そ、そうなの!?」
「だ、だって…デートって好きな人同士が…」
デート。それは一狼にとっても未知の領域。最近は女の子との“任務”が多かったお陰で女の子と一緒に行動すること事態には流石に耐性がついたが、
それを好きな子と2人きりでやるのは、別問題。
そんなことを考えつつ、一狼はうっかり地雷を踏み抜いた。
「あ…そうだね。一狼君、私となんかじゃ、嫌だよね…」
一狼の口走った言葉に、空は目に見えてしょげかえる。
「ごめんね。今のことは、忘れて。デートもなし。一狼君にはもう屋上の少女さんがいるもんね…」
昨日考えた“ディープな逢引”が空の頭をよぎる。空の想像の中であの夜であった、黒いお下げ髪の少女と一狼がキスをする。
纏った雰囲気がどこか緋室灯を思わせる少女。あのちょっと世間ずれした雰囲気が一狼とは相性ぴったり。そう、空には見えていた。
「ごめん。今日はもう、帰るね。また来週。一狼君…」
とぼとぼと、真っ暗なプラーナをまといながら、空が歩いて行こうとした、その時だった。
ガシッ
空の手がつかまれる。鍛え抜かれた、少年の手に。
「一狼君?」
泣きそうな眼をして空は振り返る。その眼を見据え、一狼は言う。
「…い、いや、で、デートしよう…むしろ、してくだひゃい」
噛んだ。
「…いいの?」
「むしろ、姫宮以外とデートなんて、したくない。姫宮じゃなきゃ、嫌だ」
先ほど、泣きそうな表情の空を見て、一狼の決意は一瞬で固まっていた。
(僕は、姫宮を、悲しませたくない。それだけなんだ)
そう、誓っていたから。
空の目から、涙が一粒、つぅっと零れおちる。
空の表情が、花がほころぶように、変わる。真っ赤に照れた、でも嬉しそうな表情に。
「…うん。ありがとう」
囁くように、空が言う。
「それじゃあ、また明日」
「うん。分かった…また、明日」
お互い真っ赤になりながら、少年少女は、明日の約束を再度交わした。


530 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 23:50:02 ID:epE2Urj9
支援。

531 名前:陰の休日@学園世界:2009/04/13(月) 23:52:20 ID:sbsIiih3
―――輝明学園男子学生寮

「…しまった。早く準備をし過ぎた…」
時刻は8時。約束まで、あと2時間。
準備を完璧に終えてしまい、後は行くだけの状態になった一狼は暇を持て余していた。
「…身だしなみに、変なところは無い、よな?うん」
任務の関係上基本的にいつもどこでも呪錬制服で過ごす一狼にとってはほぼ一張羅と言ってもいい私服を確認する。
昨日洗濯して丁寧にアイロンをかけたので、パリッとしている。野暮ったいが、清潔ではある。
「…財布も大丈夫。結構余ってるし」
“カゲモリ”の案件には基本的に絶滅社の傭兵並みの報酬が支払われる。
特にこの前の“狐”事件は高難易度任務扱いとなったため、装備を新調してもかなり余っていた。
「万が一の備えも問題なし…と」
月衣に手を突っ込んで1つ1つ取り出して再度点検。買ったばかりの銘刀や呪錬制服、その他各種アイテムが一揃い入っていることを確認。やっぱり問題なし。

「…さて、どうしよう?」
点検を5分で終え、余りの手持ちぶたさに一狼は困り果てる。
「…まあ、いいや。2時間あるけど寮の前で待ってよう」
今さら何か別のことをしても多分身が入らない。
そう考え、一狼はさっさと部屋を出る。
1階までトントンと階段を降り、履きなれた靴に履き替えて…
「あ、おはよう一狼君」
「ああ、おはよう姫宮って…姫宮!?」
挨拶を交わしたところで空に気づいた。
「な、なんで…まさか僕待ち合わせ時間を間違えてた!?」
一狼は空に尋ねる。
「ち、違うの!なんだか一狼君とデートだと思ったら待ち切れなくなっちゃって…」
もじもじしながら、一狼に言い訳をする。
「そ、そうなんだ…」
「そ、そうなの…」
2人して赤面しながら、照れる。
「「あ、あの!」」
2人同時に喋ろうとして、声が重なる。
「あ、姫宮から、どうぞ…」
「う、ううん。一狼君から…」
沈黙。辺りに甘酸っぱい雰囲気が漂う。
「え〜と…じゃあ…」
一狼は困っていた。反射的に声を出しては見たが、何も思いつかない。
そわそわと視線をさまよわせる。なんか話題、話題…
「…っげ!?」
と、そのとき一狼は気づいた。
玄関側の廊下。
「お〜。朝っぱらからやってるな…そうだ。俺もねがいと出かけるからシャワー浴びとかねえと」
「おっと、オレもユリと出かける約束してるんだった。鳳来寺と葵先輩も一緒だからデートじゃないけど」
「ちぃ…う、うらやましくなんかないぞ!お、俺は今日も翠と一緒に海に行くのだ!」
「バイトでだろ?う〜ん。俺は正直羨ましいな。ったく、珠美にちゃんと言えるのはいつの日になることやら…」
「はっはっは。竜之介君。とりあえず落ち着いた方がいいよ?寝巻き姿のだらしない格好が変身してるせいでえらいことになってるから」
「ぬお!?しまった!?」
玄関の甘酸っぱい雰囲気に気づいてやってきた寮の男ども(若干1名美少女含む)から生温かい視線を向けられていることに。
「ひ、姫宮!とりあえず場所を変えよう!」
「え!?どうしたの一狼君!?」
姫宮の手を取り、一狼は駆けだす。
「あ、逃げた」「いや、あれは恥ずかしいだろ」「いや、パジャマの上からマントつけてるアンタも大概だけどな」
「ふっ…俺なら翠となら平気だぞあれぐらい」「…俺の場合それ以前の問題なんだよなあ」「あ、テンション下がって戻った」
忍びとして鍛えられた耳に廊下にいた男どもの声が飛び込んでくる。それを振り切るように、一狼は全力で走りつつ、誓う。
(こ、今度から姫宮と待ち合わせるときは寮はやめよう!危険だから!)
と。

532 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/13(月) 23:57:09 ID:7GLmAEE/
時雨とモガっちん(偽)とヴァリアブルか。

533 名前:陰の休日@学園世界:2009/04/13(月) 23:58:07 ID:sbsIiih3
―――学園世界特別居住区 広場

「はぁはぁ…ここまで来れば大丈夫…」
「はぁはぁ…は、恥ずかしい…」
全力疾走+羞恥心で心臓のビートが限界気味の一狼と、事態を飲み込んだ空が2人してはぁはぁと肩で息をする。
「さてと…うん、やっぱりこの時間だと静かだな」
居住区のど真ん中に作られたこの広場は休日の昼間ともなれば恋人や友達同士の待ち合わせでごった返すのだが、まだ朝の早い時間のせいか人影は無い。
「そうだね。2人きりだね〜…!?」
相槌を打った空とそれを聞いた一狼が同時に気づき、2人して真っ赤になる。
(ど、どうしよう…って言うか今日の姫宮、一段と可愛いし…)
改めて空の今日の服を見て、一狼はますます赤くなる。ピンクのワンピースと白のカーディガンを基調とした、女の子らしい可愛い服装だ。
可憐で純真な空の魅力が、いつも以上に引き出されている。
「と、とりあえず今日はどうするんだ?僕はデートとか言われてもどうすればいいのかさっぱりなんだけど」
誤魔化すように空に聞いてみる。そう言えば、今日の予定とか、さっぱり分からない。
「うん。今日はね、まず…あ〜!?まだ空いてない!?」
女の子らしい、可愛いバッグからピンク色の手帳を取り出し、予定を確認した空が驚いた声を上げる。
「ひ、姫宮…?」
「どうしよう…早すぎたんだ…私のドジ〜!」
ぽかぽかと自分の頭を叩く空。かなり可愛かった。
「え〜っと…」
ココは自分が何とかしないといけない流れだ。そう考え、一狼はその言葉を口にする。
「だったら、ちょっと付き合ってくれる?いいところを、知ってるんだ」
「へ?いいところ?」
きょとんとした表情で、空が首をかしげた。


534 名前:陰の休日@学園世界:2009/04/13(月) 23:59:30 ID:sbsIiih3
―――麻帆良学園 龍宮神社

「わあ…」
落ち着いた雰囲気と辺りをつつむ静寂に空は目を輝かせた。
「ここなの?一狼君の言ってたいいところって」
「うん。朝ならば静かで、落ち着くには良いって聞いてたんだ」
同じカゲモリのメンバーであるエヴァから聞いていた密かなくつろぎスポット。
一狼が空を連れて来たのは、そんな場所だった。
「へえ…誰から?」
「エヴァさんって言う、この学園に通っている人から。何度か任務で組んだことがあるんだ。趣味が似てるからお前も気にいるだろうって言ってた」
一狼のいた忍びの里にも似た雰囲気に不思議とリラックスして、一狼はごく自然に受け答えをする。
「そうなんだ…」
さわさわと流れる風に髪を揺らしながら、空もリラックスして返す。
「なんだか、分かる気がする…」
「だろ?こういう、喧騒を離れた場所って学園世界じゃ結構貴重だから、気になってたんだ」
基本的にどこに行っても若い学生であふれている学園世界では、静かな場所は少ない。
そんな状況だけに、この手の場所の方が落ち着いて好きな一狼は、その話をよく覚えていた。
しばし沈黙。今度は落ち着いているせいか、2人とも黙り込んでもそんなに気にならない。
ただゆったりと時間が流れていく感覚が、好ましい。

「…ねえ、一狼君?」
小一時間ぼうっとしたのち、空は何気なく一狼に尋ねる。
「…なに?」
「一狼君の“任務”って、一体どんなことをしているの?」
空は前々から気になっていた。一狼が、どこで何をしているのか。
もちろん、空にも分かっている。
「…ごめん。それは言えない」
一狼がそう、答えることを。
「…ううん。いいの。分かってた。多分私には言えない理由があるんだよね?」
「ごめん…」
首を振り、空は微笑んでみせる。
「いいよ。しょうがないもん。でも、1つだけ、約束して欲しいの」
柔らかな微笑みを浮かべたまま、空は一狼に言う。
「なに?」
「いつか本当に、どうしようもなく大変なことになったときは、私に言って。私、いくらでも力を貸すから」
言いたかったけど、今まで言えなかった言葉を。
「姫宮?」
「忘れないで。私は、いつだって一狼君の味方だから」
「う、うん…分かった。本当に困った時には、頼むよ」
交じりっけのない聖母のような空の笑みが眩しくて直視できず、目をそらして、一狼が答える。
「…っと。そろそろ10時か…」
そのまま時計を確認して、一狼が言う。
「あ、それじゃあそろそろ行こっか?確か、この近くだったはずだし、そろそろ開いてるはずだから」
「そう言えば、どこに行くんだ?」
「えっとね…」
空がまた例の手帳を取り出して確認を始めた。

535 名前:陰の休日@学園世界:2009/04/14(火) 00:05:56 ID:HMhXaZ6y
―――麻帆良学園 イグドラシル

学生が利用するにはちょっとお高い喫茶店。それが、空が最初に一狼を案内してきた場所だった。
「えっと、ここ?」
高校生カップルが利用するにはちょっぴりセレブな雰囲気に飲まれ、一狼が落ち着かなげに確認をする。
周りで利用しているのは、教師やいかにも金持ちそうな学生ばかり。庶民派の一狼には、今一つ居心地が悪かった。
「うん。最初はここでお茶をする予定なの」
そんなことは気にせず、嬉しそうに笑って空が言う。
(…うわ。やっぱり高いなー)
メニューに書かれた。コーヒー1杯が軽く1000円を超える値段設定に何となく場違いなものを感じながら一狼は空の方を見る。
「あ、一狼君、何頼むか決まった?」
にっこりと笑う空に、何も言えず一狼は俯く。
「え〜、あ〜、うん。空は?」
「私は来る前にもう決めてたから。あ、すみませ〜ん」
一狼が頷いたのを確認し、空がウェイトレスを呼ぶ。
「はい。御注文ですか?」
「はい。じゃあまずは一狼君から」
「えっと、じゃあ、僕には本日のケーキとコーヒーのセットを。空は?」
正直横文字でケーキの名前とか書かれても理解できないので、とりあえず無難なものを注文しておく。
「え〜っとね、私はコーヒーと…」
笑顔のままメニューを開いてウェイトレスに見せる。
「ここに書いてあるケーキとパフェ、全部1つずつお願いします!」
「「…は?」」
一狼とウェイトレスが2人揃って目を点にした。

1時間後。
「う〜ん…マジだったとは…」
目の前のテーブルいっぱいに並べられたケーキとパフェの山の甘いにおいに胸やけしそうになりながら、一足先に食べ終えた一狼がうめいた。
「…うん。おいしい、かな」
さっきから空は様々なケーキやらパフェを1口だけ口に運んでは手帳に何やら書き込み、次のケーキを試すと言うのを繰り返している。
女の子らしい慎ましい食べ方は非常に可愛らしい。可愛らしいのだが。
「あ、あの…姫宮さん?」
異常な状況に周りの客から注目されまくることに耐えきれなくなった一狼がおずおずとさんづけで空に声をかける。
「な〜に一狼君?」
「いったい何をしていらっしゃるのでしょうか?」
「何をって…メモには“一通り味見して感想を聞かせて欲しいのさ!”…って、ああっ!?」
何かに気づいたようにショックを受け、大声を上げる。
「…あ、あの〜姫宮さん?」
「私、ナツミさんって人の顔、知らないよ!?」
「…ナツミさんって誰?」
聞きなれない名前に一狼は首をかしげる。
「え、あ、ち、違うの一狼君!ただ私はメモに…」
激しく狼狽している空の手帳から何かが零れおちる。
「あ、姫宮。なんか落ちたよ」
反射的に地面に落ちる寸前で一狼はそれを拾い上げる。
「あ、み、見ちゃダメ〜!?」
空が狼狽したまま止めようとするが、遅い。
「うん?『斎香センパイのはじめてのラブラブデート計画なのさ!』って…何これ?」
「え…あ…う…え〜と…その…」
空が耳まで真っ赤になってどう言おうか考えていると。

536 名前:陰の休日@学園世界:2009/04/14(火) 00:09:11 ID:HMhXaZ6y
「―――私が渡した、デート初心者用のマニュアル。これさえあれば、初めてでも安心」
空たちの席に近づいてきた少女が助け船をだす。
「そ、そうなの!ほら、私、デートって何すればいいのか分からなかったから!」
ブンブンと首が取れそうな勢いで縦に頷き、再び空が助け船に飛び乗る。
「そうなんだ。いや、そっか。そう言えば僕もデートって具体的には何すればいいかよく知らないもんな」
納得して空にメモを返しつつ、一狼はごく自然に空の隣に座った少女の方を見る。
「で、鈴鹿さんは今日はどうしてここに?」
スクールメイズに潜っているうちに親しくなった、人造人間の少女を。
「今日、空がデートすると聞いた。それで、様子を見に」
葉月はこくんと頷いて、一狼に状況を説明する。
「見たところ、状況は良好に見える。この調子で、頑張って」
何を考えてるのか分かりづらい表情のまま、空の方を見て、ビッと親指を上げてみせる。
「あ、ありがとう…」
葉月の友情にじ〜んと感動しながら、空が葉月に感謝の言葉を述べる。
「そうですか。わざわざありがとうございました。鈴鹿さん」
「気にしないで。一狼と空はお得意様だから。特別」
ウェイトレスを呼び、紅茶を頼みながら、葉月が訥々と喋る。
「…休日もそんなには長くない。そろそろ次に行くことを、お勧めする」
「あ、そうですね」
「うん。そう言えば…じゃ、そろそろ行こうか?姫宮」
「うん!」
2人揃って立ち上がる。
「僕らは先に失礼します。あ、それと今日のお礼と言っちゃなんですが、お茶代位は僕にださせてください。鈴鹿さん」
伝票を手に取り、そこに記された軽く万単位になっている数字に溜息をつきながら、一狼は葉月に言う。
「そう?ならば好意は素直に受け取っておく、ありがとう」
普段から色々とおごられ慣れている葉月はこくんと頷き、感謝の意を表す。
「すみませんお会計をお願いします。あそこの席の人の分も一緒で」
「はい、全部で7万8300円になります…はい。確かに。ありがとうございましたー」
「さてと、次はどこに行くの?」
「えっとね、次は…」
遠ざかって行く2人の声。それを聞きながら。
「…さてと」
目の前に立ち並ぶ、ほとんど手つかずのケーキの山に、葉月はきゅぴーんと目を光らせる。
「イグドラシル特製ケーキ、全種類制覇…相手にとって、不足は、無い」
本日最大の目的を前に、葉月は気合いを入れ、プラーナを開放した。

…後日、麻帆良学園にて『イグドラシルのケーキを30分で全種類制覇した少女』が半ば都市伝説のように語られ、
某極上生徒会放送部員のもとに『この前のメモのお礼』と書かれた詳細に味を記したケーキのレビューが届けられ、ごくつぅにて好評を博すことになるのだが、それはまた、別の話。

537 名前:陰の休日@学園世界:2009/04/14(火) 00:10:26 ID:HMhXaZ6y
今日はここまで。後半に続く。

538 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 00:34:32 ID:Paz2EvDc
乙でした。
カゲモリの報酬あるとはいえ、結構な額だよな78300円ってのは。

539 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 00:38:23 ID:gWmIKBcB
arcadiaになんかきてるね。
クロスじゃないけど

540 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 00:48:43 ID:sjz0Jhx2
>>537
投下乙です〜。
一狼と空のカップル好きなんで嬉しいっす。かわいいなぁ彼ら。

あと私事で恐縮ですが、貴方の作品のせい…じゃなくておかげで
みつめてナイト買ってきてプレイしております。
機会に恵まれず未プレイだったんですが…もう10年以上も前だったかぁ。

541 名前:罵蔑痴坊(偽):2009/04/14(火) 10:35:53 ID:tttuLKCT
小ネタシリーズ、「しのキャラ何でも屋」一本おいてきます。

……えー、御本人の許可、取ってます。

542 名前:しのキャラ何でも屋@学園世界:2009/04/14(火) 10:37:02 ID:tttuLKCT
「お役に立ちます!」
 看板はこうだが、なかなかそうは行かないのが世の常。

『伝説の……』

 と言うわけで、輝明学園天文部内何でも屋への、今日の依頼人は……

「この学園の地下にあるという、『伝説のスクール水着』を探して欲しいのです」

……とおっしゃる、瑞穂坂学園の生徒、渡良瀬準。

 かくして、一行は『スクールメイズ』に向かった。

「あ、私、『アイン・ソフ・オウル』復活させました。だから一緒に行けますよ?(伝説のスク水……数多の男たちが虜になったという……)」
「わぁ、心強いね(でも、伝説のスク水で柊君のハートを掴むのは……)」

 若干名の思惑はさておき、一行がたどり着いた一室に『それ』はあった……

『かつて、グラビア撮影に使用したものを、この地に封印する。
 この品を欲する者、代価として女子高生使用済みの同等品を納める事。

                          テキスト学園 ワタナベ』


「申し訳ありません、渡良瀬さん。この依頼、無かった事にして下さい」

543 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 12:57:10 ID:B8W1BfZu
とりあえず、486kb確認です。
私は仕事中で携帯なので立てられませんので、誰か新スレお願いします。

544 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 14:49:45 ID:B8W1BfZu
追記:投下乙&GJです。

545 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 16:07:56 ID:gWmIKBcB
>>542
うーん……小ネタなのはわかるんだが、もうちょっと地の文書いてもらわないと状況がわからないんだけど。
どこがポイントなのかわからないからGJとも言いづらいわけですが、とりあえず投下乙。

さて、次が立つまでゆっくり進行で行きましょうか。

546 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 19:51:11 ID:AWD8W4cB
次スレ立てました〜

ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1239706201/

547 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/14(火) 20:48:02 ID:sjz0Jhx2
>>546
乙〜

548 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 10:05:59 ID:7gwJ78hX
      く__,.ヘヽ.
         | | |    , - 、
         { l |   {,.ヘ. \
        ,」_,i }, ̄ ̄||_ j|\ _j
       / /  ハ/     \ハヘ
       |i │ l |ノハヘ 人ノソリ从ハ
        |i | 从 ●    ● l小N   >>546さん乙なのです
       |i (| ⊂⊃ 、_,、_, ⊂li|ノ    続いて埋めるのです
       | i⌒ヽ j    V   ノi|__/⌒)
       | ヽ   ヽ>、 __, イl |  ヽ/.
       |  ∧__,ヘE{ <,.ロ、>}ヨ ハ l、_ノ
       | ヾ   ッE{ <ハ.>.}ヨ } ノ


549 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/15(水) 18:18:10 ID:jEEqeRRV
     ,.-――- 、  ┏━━━━━━━━━━━━━━━━┓
    /       ヽ ┃SSと こねたを ほかんした      ┃
  <二>r―┬─‐┤ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━┛
    |!  n`^¨´n  l|、
   (`i. `′,  `′ rノ  ●学園世界の戦い(魔神皇編)#02-06
    `ヽ  ー一'  /   ●『執行委員の〜』シリーズ #03
   x< >, -- イ t- 、  ●ノーチェさんの一日(学園世界編)
  / > /y' 三三 マV / 、 ●休日の過ごし方 幕間01-01
. ヽ y/ニニニニヽ マ 〉 ●しのキャラ何でも屋 #02 #03
   Y⌒} 二二二 r‐ '/ ●如月ジローの初恋
.  ノー ′    弋_,ハ  ●>339>349>501>507 学園世界小ネタ
   \___∧___/
    /ー|   |ー|   ●柊蓮司と銀なる石の少女 #03
  ∠二二!.   i二二ヽ ●とある偽善使いと魔剣使い #02

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ さらに いかの SSを しゅうせい!         ┃
┃  ジャスティスV                      ┃
┃  さきがけ!ふりょうでんせつ              ┃
┃  しのキャラなんでもや                 ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

550 名前:陰の休日@学園世界:2009/04/16(木) 05:39:52 ID:sXtJqihB
>>538
まあ、喫茶店で使う額では無いですねw

>>540
ほう。それは嬉しいですね。ちなみにお勧めは2人の姫様。両方攻略難易度が高めなのは、ご愛嬌w

551 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 09:52:03 ID:DNHfXDYJ
                            /.|
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     /::::::::::/.:.:.:./ハ.:.:',::|.:.::::_:ィオ示x、   /  .ィf示ぅv/.\{\/
    ./.:.:.:.:.:/.:.:.:./.:.:.:∧ :ヘ.:.:|.::.〈トイ.j }         トイi.}´/::/ .〉、 \
    ./:.:.:.:.:/.:.:.:./.:.:.:./ ヽ.:.:ヽ\弋zン      弋ン イ.! :.:/ r、\ \       会いたいのに会えないよ〜
   /::.:.:.:./.:.:.:./.:.:.:./    \.:.\ヽ::::::::    ,   :::::::: | | :/  〉 ̄ ̄ \
  ./.:.:.::/::::::/.:.:.:.:/      八ハ.    ┌‐┐    / .l/  { 二ニ    \
  /::::/.:.:.:.:./.:.:.:.:.,'.         \    、_ ノ    /     .{´_.      \
. /./:.:.:.:.:.:.:,'.:.:.:.:.:,'           >、..    _, イ.       \_>、.     \
/.:.:.:.:.:.:.:.:.,'.:.:.:.:.:.:l.          {"\| ` ̄´ .|¨ミ-、          `ー─ァ.  ハ
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.: |         /   \   / ハ \_          |     |
.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:::.:!        ./∨    ><   ハ    . ̄T=、.      |     |
.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|      ./   ∨   r-冂─、  ハ       |  .ハ.    |     |
.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|    ._ イ      .∨ / iO|  \ ハ     |   }ー--、.|     |
.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:| /ヘ        ∨  .|O|    `ヽ    |  ./     .} |     |
.:.::/..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/   \            |O|            |  /     L|_    |



552 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/16(木) 14:12:00 ID:sINXpn2J
>550
「休日〜」は勝手にタイトル付けてまとめちゃったけど大丈夫?
別の人の作品とか混ざってたりしません?

553 名前:休日の作者:2009/04/16(木) 22:15:07 ID:sXtJqihB
>>552
とりあえず今のところは無いみたいですね。
…誰か書いてくれんじゃろか。

554 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 00:14:03 ID:3sfVIQZv
うめ

555 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 00:51:08 ID:oA48Kb7u
umeme

556 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 04:19:06 ID:8hPzzUhy
        /   /         i    .! l  i         \
        .′  ,′        l   /l |  i    !        \
          ′  .          L厶_../ i i  l    !        ヽ
       i   ,          | l_Lムニミヽ、 .!   .! i           '
       | i i    八    lV ィ'て乙(`ヽ l    ! i    /    ,′
       | | |      \  |  h( ィ'リ  ヽ  f'うミメ、 .'  } i /
       | l 从       {ヽi   `ニ´´    ヽ hr!Y´ '   ' レ′   
       | i   八 ヽ、    !               lcリ | /  / 八     
       |    i イ\j\  \  :::::::::       ' ::::::|ノ  / /
       i   ! {  l  >ー ヽ          _     !厶イ /  …埋めましょう
       i   ヽ、`ー |   |           ´ ’   ハ  /
        '     `ア,|   |              .イ  |
      .′     // |   | へ、          イ l  |
      .'      /   |   |     .>ー ,---rく {  l │
.     /     /┌厂l   | ` ̄ ̄'L./   ノ   |  i  |
    /        { j. |   |      |/二ニミ. |  i  |

557 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 05:47:48 ID:zcXC22aT
あなたの光を埋めましょう

558 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 06:14:09 ID:5gFvqHdV
埋め草代わりに雑談ネタ振ってみる。

ふと、学園世界TRPGがNWのサプリとして、同人で出ねえかなと思った。
基本設定のまとめと他の学園のキャラの作成レギュレーション、サンプルキャラ(輝明学園以外のキャラ含む)&サンプルシナリオがついてるようなの。

559 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 09:51:45 ID:b0/JE9jR
           /  /   ' ,  | │ |  l  \ / ヽ、   \
       //  {    | |  | │ |  | / l /   \   )
        // /./{ l l L」L从l_│ |ノl/ムノ      ) /
      {// / ∧、l lrrt=k、 ヽ_/ ,xrt=k      / (   空に浮かんだ〜♪
       乂  乂/  〉\_ハ弋_ソ     廴ソ  ( ̄ `ー=ミ,\
      ( 厂)  )   `ーへ       ,    {   `ーn  ミv^ヽ)
        ̄廴ムィヘ/Vノノ>、   ー'   イハ`ーvム从ノノ
             ___〉辷≧=≦うLノ""ハルィ
            /: : : : : : `ミ>0<ニlく__
           /: : : : : : : : : : 《__八__》: : : :`ミx
            / ./: : : : : : : /: | {: :} |: : : : : : :.∧
        //: : : : : : : : :/: : l_{: :}.」: : : : : : : : }
        /: : : : : : : : _,/ ̄「Τス,.: : : : : : : : :.|
    .<: : :.____/.; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; :', : : : : : : : :.|
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        {| { : : : :|: :{:/l|-、 {|ヘ: {_>、:}ト; :}:リ: : : :}|
        {| i:|: : : :{: ly=!=-' ヽヽ{ =ヘ{= y: : : : :j:|
           {| }:} : : :{'、{          ,' : : : :/: l  月のいざない〜♪
         { }}: : : :.:ヽ    __'__   /: : : :/: : :l
         ヽ.}ヘ : : : :.i:`:...、 ` ´ ,..:':.{: : : :イ; : : :|
          .K.|: : : :.:|,..:.:.}:.:`..::.':´:.{:.:{: : : : } ヘ: : |
          { . |: : : : |`ヽ、:.:.:.:.:.:.:.:./|: : : :.} ,イ: :l
        /. .`.|: : : :.|. . ヽ:.:.:.:/. . |: : : :l'´. . ヽ}
        ヘ. . .|: : : :.!`ー -、.V.,. .-‐'l: : : :}. . . ∧
       { .ヽ. . |: : : :.! . . :,イト; . . |: : : l. . ./. }
       /. . ヽ |: : : :l . . //|ハ. . .{: : : i. . ./. ; }
      /ヘ. . ` l: : : :}. . ./〃| } }. . .{: : :.l. ./. . `、〉
      /. . .ヽ. . .l: : : }. . `'.{ l| ト'. . }: : :l. .レ . . . ヽ


560 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/17(金) 09:54:20 ID:b0/JE9jR


       r‐ 、,.  ´ ̄ ̄`ヽ _               ,: :´ ̄ ̄ ̄ ̄: :`.、 
.       /''"           ヽ            /(__: : : : : : : :/\
      /               ヽ  ',          /__.二二二二二. __i
     /       ((        ヘ  ハ         /: : : ,: : : : : : : : : : : : : :}: : : : :}
   /{       { ` ==       } い          / : : : :{∧;Aレ;{: : :/ヽA: :}: : :i : !
    { {   { 丶、 |ヽ l } j.ムィ´从 j. ! }    _人_  {j'{: : : ト┬‐┤|::./┬‐┐| : : | : |
    ,ハ{ 从ト'"ぅト {ヘjリ/ ィ'ラ"'ト、/  | )\  `Y´  {lヘ: : : { 弋丿 レ  弋丿イ: : :.|: :|  怪しくひ〜か〜〜♪
   んィノ`ム ゝ_,ノ  ´  ヒ. .ノ /  | )') `ァ     {| jハ ⊂⊃    ⊂⊃: : : :|: :|
  /()'/-┘⊂⊃      ⊂⊃′ 人 V{ {      l j{: : :}ヽ.  ヽフ   ノ:j: : : :i: :|
 ({乂} {‐个 .   ー-    {  レ'´  {乂}八      |.l: : :|: :,>;‐〈 ̄〆ヘ}: : : :| :.i
  〈ハ〉ゝ. `ヽ j/ ≧‐-r f'" 「ヽ.`ヽ  〈ハ〉        |:|:||三三三三:三:三{j: : :.|: :|
      ) ノ∧ー- 、Vr‐┘人 J.ノ⌒V           l: ||| 鉄道ビクトリアル ||: : : |: :|
        ¨´/  }{ ̄〉ハ〈 ̄}{  ヽ            j: :i||  ノ'(⌒j      l|: : : |: :|

                                _,--、_
                              , -―'――-- 、`r‐-、
          /ニ`,へ‐ '´ ̄ ̄` ヽ、/ニヽ   /         ヽ.‐-、ヽ
        〔` <// /     ヽ `,イフ ̄ヽ、 /    ,       \ i  `}
        / / /, '/{  ヾ ヾ }</ヾ }`  } j / ,ハ 、  ト、ヽ.  Y´ ̄,ハ
        | { 〃{ {⌒ ヾヽ| `ヽ { l || | /  i { j ⌒ヽ!\i`ヽヘ. /`ヽ./=}
         i | |小| ●    ●亅|. ||_ jj }  ヾ小{ ●   ● ル'ミ、 y'ミ、}
          リ(T)l⊃ 、_,、_, ⊂⊃l(T) l    {ミl⊃ 、_,、_, ⊂⊃-、 >'=_} j  る〜〜〜!
        /⌒ヽルヘ.  ゝ._)   リノ/⌒/⌒ヽ.トミ、}、  ゝ._)   ,i`ヽ./⌒i=、}
        \ / `ヽ_>,、 __, イ、. /  / \  j``ヽ_,.>、 __, イ、{=、j  /ミ/
          /    ハ  ヽ/  ,,ヘ、_∧  Y    ト} ヌ/_j_:j_|ヨ ゞ'、_,.ヘZ'
         {  ゝ j ヽ. /  /j    ´ヽ ´ ̄ヽk} K|≧≦/ヲ 、_彡'

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